(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045118
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】目地カバー装置
(51)【国際特許分類】
E04B 1/68 20060101AFI20230327BHJP
【FI】
E04B1/68 100A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153348
(22)【出願日】2021-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】592094243
【氏名又は名称】カネソウ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】近藤 健治
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DH31
2E001FA04
2E001FA51
2E001FA71
2E001PA01
2E001PA08
(57)【要約】
【課題】遮蔽部材と建造物の側壁との固結部位に作用する負荷を軽減でき、該遮蔽部材を安定して保持し得る目地カバー装置を提案する。
【解決手段】目地83の幅方向に対して左右両方に夫々傾けて交差状に配設された第一伸縮杆35と第二伸縮杆36とによって、目地カバー体2の下方に配設された遮蔽部材21を下方から支持するものである。かかる構成によれば、第一伸縮杆35と第二伸縮杆36とを対角線とする広い範囲で遮蔽部材21を支持できることから、該遮蔽部材21を安定して保持できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する建造物間の目地に差し渡されて該目地を覆うカバー体を備え、該カバー体の一端を、一方の建造物の側縁に連結すると共に、該カバー体の他端部を、自由端として他方の建造物の側縁に摺動可能に乗載する目地カバー装置において、
前記カバー体の下方に配設され、両側端部が前記両建造物の側壁に夫々固結されて前記目地を遮蔽する、目地の幅方向に伸縮可能な遮蔽部材と、
前記遮蔽部材の直下に配設され、該遮蔽部材を下方から支持する遮蔽支持部材と
を備え、
前記遮蔽支持部材は、
前記目地の幅方向に対して水平方向で左右一方へ傾斜させて配設され、両端部が前記両建造物の側壁に夫々回動可能に連結された伸縮可能な第一伸縮杆と、
前記目地の幅方向に対して水平方向で左右他方へ傾斜させて、前記第一伸縮杆の下方で交差状に配設され、両端部が前記両建造物の側壁に夫々回動可能に連結された伸縮可能な第二伸縮杆と
により構成される筋交い支持対を、一又は複数備えてなるものであることを特徴とする目地カバー装置。
【請求項2】
複数の筋交い支持対が、目地の長手方向に複数配設されたものであって、
各筋交い支持対の第一伸縮杆が、相互に平行に配設されると共に、各筋交い支持対の第二伸縮杆が、相互に平行に配設されたものであることを特徴とする請求項1に記載の目地カバー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接する建造物間の目地を覆う目地カバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地震による被害を最小限に留めるために、緩衝機能を備えた免震装置によって下部を支持した建造物が多く建設されている。こうした免震構造の建造物間には、地震による変位を吸収し得る目地が形成されており、かかる目地を覆う目地カバー装置が配設されている。
【0003】
こうした目地カバー装置には、例えば特許文献1のように、目地を覆うカバー部材の下方に止水シートや耐火帯を配設した構成が知られている。こうした止水シートや耐火帯は、その両側端が両建造物の側壁に夫々固結されて、目地を閉鎖するように配設されている。これにより、止水シートを設けた構成では、雨漏りを防止できる一方、耐火帯を設けた構成では、建造物の耐火性能を高めることができる。尚、止水シートと耐火帯とが積層状に配設されたシートを配設する構成も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-66821号公報(
図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記した止水シートや耐火帯等の遮蔽部材は、地震時による目地幅の拡縮に追従できるように、少なくとも目地の幅方向へ伸縮可能に設けられている。具体的には、前記目地の拡幅に追従可能とするために、該目地幅よりも長い幅寸法の遮蔽部材が配設される。こうした遮蔽部材は、前記した止水性能や耐火性能を発揮できるものであり、比較的重量物であることから、側端と建造物の側壁との固結部位に比較的大きな負荷が掛かる。特に、近年は、前記目地の幅が広くなる傾向にあることから、相対的に遮蔽部材の幅寸法が広くなって、該遮蔽部材の重量が増加する。そのため、遮蔽部材の側端と建造物の側壁との固結部位に作用する負荷が増大し、該固結部位に作用する負荷の軽減が求められている。
【0006】
本発明は、前記遮蔽部材の側端と建造物の側壁との固結部位に作用する負荷を軽減でき、比較的長期に亘って該遮蔽部材を安定して保持し得る目地カバー装置を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、隣接する建造物間の目地に差し渡されて該目地を覆うカバー体を備え、該カバー体の一端を、一方の建造物の側縁に連結すると共に、該カバー体の他端部を、自由端として他方の建造物の側縁に摺動可能に乗載する目地カバー装置において、前記カバー体の下方に配設され、両側端部が前記両建造物の側壁に夫々固結されて前記目地を遮蔽する、目地の幅方向に伸縮可能な遮蔽部材と、前記遮蔽部材の直下に配設され、該遮蔽部材を下方から支持する遮蔽支持部材とを備え、前記遮蔽支持部材は、前記目地の幅方向に対して水平方向で左右一方へ傾斜させて配設され、両端部が前記両建造物の側壁に夫々回動可能に連結された伸縮可能な第一伸縮杆と、前記目地の幅方向に対して水平方向で左右他方へ傾斜させて、前記第一伸縮杆の下方で交差状に配設され、両端部が前記両建造物の側壁に夫々回動可能に連結された伸縮可能な第二伸縮杆とにより構成される筋交い支持対を、一又は複数備えてなるものであることを特徴とする目地カバー装置である。
【0008】
かかる構成にあっては、筋交い支持対により遮蔽部材を支持することから、該遮蔽部材の両側端と建造物の側壁とを固結した部位に作用する負荷を軽減することができる。そして、筋交い支持対の第一伸縮杆と第二伸縮杆とが伸縮可能な構成であることから、地震時における両建造物の相対変位に適正かつ安定して追従することができる。そのため、遮蔽支持部材が、地震により伸縮する遮蔽部材を安定して支持できる。こうした筋交い支持対を備えることから、両建造物の間隔が広い目地に配設される場合にあっても、比較的長期に亘って遮蔽部材を安定して保持でき、該遮蔽部材の有する所望の性能が安定して発揮され得る。
【0009】
また、本構成の筋交い支持対は、第一,第二伸縮杆が夫々斜めに配設されていることから、各伸縮杆を対角線とする比較的広い領域で遮蔽部材を支持することができる。ここで、遮蔽部材を支持する領域の比較として、例えば、杆状の支持部材が目地幅方向に沿って設けられた構成では、本発明の筋交い支持対と同様の領域で遮蔽部材を支持するためには、多数の支持部材を目地長手方向に並設する必要がある。こうしたことから、本発明の構成では、前記した目地幅方向に沿う支持部材を配設する構成に比して、配設数を低減可能であり、配設に要するコストを低減することができる。
【0010】
尚、遮蔽部材の「目地の幅方向へ伸縮可能」とは、該遮蔽部材自体が伸縮性を有することに限らず、該遮蔽部材自体は非伸縮性(又は、低伸縮性)であるものの、その配設形態によって目地の幅方向への変位に追従して伸縮できることであっても良い。例えば、蛇腹形状に形成されたシート状の遮蔽部材や、目地幅よりも長い幅寸法の遮蔽部材などを適用できる。
【0011】
前述した本発明の目地カバー装置にあって、複数の筋交い支持対が、目地の長手方向に複数配設されたものであって、各筋交い支持対の第一伸縮杆が、相互に平行に配設されると共に、各筋交い支持対の第二伸縮杆が、相互に平行に配設されたものである構成が提案される。
【0012】
かかる構成にあっては、複数の筋交い支持対が、相互に平行な第一伸縮杆と相互に平行な第二伸縮杆とを夫々備えた構成であることから、地震時における両建造物の相対変位に各筋交い支持対の第一伸縮杆と第二伸縮杆とが円滑かつ安定して追従できる。これにより、地震時にあっても遮蔽部材を一層安定して支持することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の目地カバー装置によれば、地震の無い常態と地震時に両建造物が相対変位した場合とのいずれにあっても、筋交い支持対が遮蔽部材を安定して支持できる。これにより、遮蔽部材と両建造物の側壁との固結部位に掛かる負荷を軽減することができ、該遮蔽部材を比較的長期に亘って安定して支持できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】目地カバー装置1の施工状態を示す縦断面図である。
【
図2】目地カバー体2を省略して示す平面図である。
【
図3】目地カバー装置1を構成する遮蔽支持部材31の施工状態を示す平面図である。
【
図4】筋交い支持対を構成する第一伸縮杆35(第二伸縮杆36)を示す、(A)平面図と、(B)側面図である。
【
図5】建造物81,82が離間方向に相対変位した場合における目地カバー装置1の作用説明図である。
【
図6】同上の離間方向に相対変位した場合における、筋交い支持対32の作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明にかかる実施例を添付図面を用いて説明する。
本実施例の目地カバー装置1は、
図1に示すように、高さの異なる建造物81,82間に設けられた目地83に配設されて、該目地83を覆う目地カバー体2を備えたものである。建造物81,82はそれぞれ、緩衝機能を備えた免震装置(図示せず)によって下部が支持された免震構造の建造物である。目地83は、建造物81と建造物82との間に所定幅で形成され、地震の際に建造物81と建造物82との水平方向の相対的な揺れを吸収し得るようになっている。
【0016】
尚、本実施例にあって、目地83の長手方向(
図2の上下方向)が、目地カバー装置1の左右方向に相当する。また、高さの高い一方の建造物81から他方の建造物82に向かう方向(
図2の左方)を前方とし、該他方の建造物82から該一方の建造物81に向かう方向(
図2の右方)を後方として、以下で説明する。すなわち、本実施例の前後方向が、本発明にかかる目地の幅方向に相当する。
【0017】
図1に示すように、目地カバー装置1の目地カバー体2は、その後側縁が、高さの高い一方の建造物81の側壁84に連結され、前側縁が、高さの低い他方の建造物82のパラペット87に摺動可能に乗載されており、前記目地83を覆う。本実施例の目地カバー体2は、左右方向に所定間隔をおいて並設された複数のホルダー12と、該ホルダー12に支持されるカバー本体11とを備え、各ホルダー12が前後方向に沿って夫々配設されてものである。ホルダー12は、鋼板により形成され、後端から前端に向けて下方傾斜する上辺の略中央に段差が設けられた形態を成す。そして、このホルダー12の上辺に倣う形態のカバー本体11が、各ホルダー12の上辺に乗載されて螺子により夫々連結されており、各ホルダー12とカバー本体11とが一体化されて目地カバー体2が形成されている。尚、この目地カバー体2が、本発明にかかるカバー体に相当する。
【0018】
こうした目地カバー体2は、各ホルダー12の後端部が図示しない螺子により前記一方の建造物81の側壁84に固結される。また、各ホルダー12の前端部下部には、図示しないコ字形の鋼材を介して左右方向に長尺な緩衝部材15と、図示しないL字形の鋼材を介して左右方向に長尺な帯板状弾性部材16とが、カバー本体11の左右方向に亘って夫々配設されている。緩衝部材15は、所定形状のゴム製のものであり、前記した他方の建造物82のパラペット87に摺動可能に乗載されて、目地カバー体2の前端部を該パラペット87上に支持する。また、帯板状弾性部材16は、ゴム板から成り、目地カバー体2の前端下部から下方へ垂設されている。この帯板状弾性部材16は、前記緩衝部材15がパラペット87上に乗載された状態で、該帯板上弾性部材の下部が湾曲されて該パラペット87の上面に当接される。これにより、目地カバー体2とパラペット87との隙間を遮蔽することができ、外部から目地83内への小動物の侵入や風の吹き込み等を防止できる。
【0019】
また、目地カバー装置1は、前記目地カバー体2の下方に、シート状の止水帯22と耐火帯23とが積層状に重ねられた遮蔽部材21が目地83を遮蔽するように配設されており、さらに、該遮蔽部材21の直下に該遮蔽部材21を下方から支持する遮蔽支持部材31が配設されている。
【0020】
止水帯22と耐火帯23とは、
図1,2に示すように、断面略台形状の凹凸部が前後方向に複数繰り返された畝状構造で夫々構成されており、各後端部が一方の建造物81の側壁84に夫々固結され、各前端部が他方の建造物82の側壁86に夫々固結されている。この止水帯22と耐火帯23とは、前後方向へ引張られることによって各凹凸が小さくなるように(直線状に近づくように)変形して伸びることができる一方、前後方向で押し付けられることによって各凹凸が大きくなるように変形し得る。さらに、止水帯22と耐火帯23とは、前記凹凸部を前後方向に直線状に伸ばした場合における前後長が、地震の無い常態における目地83の前後長よりも長く設定されており、地震により両建造物81,82が離間した際に、前記凹凸が前後方向に伸びることによって目地83の遮蔽状態を保つことができるようにしている(
図5参照)。このように止水帯22と耐火帯23とは、前後方向へ伸縮できることから、地震による両建造物81,82の相対変位に追従して、目地83を遮蔽した状態で安定して保持できる。尚、止水帯22と耐火帯23とは、本実施例で用いた形状寸法を除き、従来から公知のものを適用できることから、その詳細を省略する。
【0021】
前記遮蔽支持部材31は、
図3に示すように、前後方向に対して左右一方へ傾斜された第一伸縮杆35と左右他方へ傾斜された第二伸縮杆36とから構成される筋交い支持対32が、左右方向に所定間隔をおいて二組配設されたものである。第一伸縮杆35は、一端がジョイント部材34を介して一方の建造物81の側壁84に取り付けられ、かつ他端がジョイント部材34を介して他方の建造物82の側壁86に取り付けられることによって、両建造物81,82間に差し渡されている。同様に、第二伸縮杆36は、両端がジョイント部材34,34を介して両建造物81,82に取り付けられて、両建造物81,82間に差し渡されている。そして、第一伸縮杆35と第二伸縮杆36とは、常態で夫々水平方向に沿って配設されており、第二伸縮杆36が第一伸縮杆35の直下に所定間隙を介して設けられている(
図1参照)。
【0022】
こうした第一伸縮杆35と第二伸縮杆36とは、常態における該第一伸縮杆35の前後方向に対する左右一方への傾斜角(換言すると、側壁84,86の各壁面と交差する角度)と、該第二伸縮杆36の前後方向に対する左右他方への傾斜角とが、略同一となっている。すなわち、第一伸縮杆35と第二伸縮杆36とは、目地83の前後方向中央で左右方向に沿った仮想中心線に対して線対称に配設されている。
【0023】
第一伸縮杆35と第二伸縮杆36とは、
図4に示すように、内径と外径とが相互に異なる二個の長尺な鋼製パイプ37,38により夫々構成され、一方の鋼製パイプ37に他方の鋼製パイプ38が長手方向へ摺動可能に嵌入されてなるものであり、両パイプ37,38を相対的に摺動させることによって、夫々の長手方向に伸縮自在となっている。そして、第一伸縮杆35と第二伸縮杆36との両端には、前記ジョイント部材34に回動可能に連結される連結部39,39が夫々設けられている。
【0024】
前記ジョイント部材34は、上下方向に回動可能な蝶番状を成すものであり、第一,第二伸縮杆35、36の連結部39が回動可能に連結されている。こうしたジョイント部材34を介して側壁84,86に連結されていることにより、第一,第二伸縮杆35,36が上下方向と左右方向とに回動可能となっている。尚、こうしたジョイント部材34は、従来から公知のものを適用できることから詳細な説明を省略する。
【0025】
二組の筋交い支持対32,32とは、
図3に示すように、夫々の第一伸縮杆35、35とが平行に配設され、夫々の第二伸縮杆36,36とが平行に配設されている。これにより、各第一伸縮杆35,35同士の間隔と各第二伸縮杆36,36同士の間隔とが等しい。
【0026】
このように配設された遮蔽支持部材31は、第一伸縮杆35と第二伸縮杆36との夫々の両端を対角線とする範囲で、遮蔽部材(止水帯22および耐火帯23)21を下方から支持できる。そして、本実施例では、二組の筋交い支持対32を設けた構成であることから、比較的広い範囲を一層安定して支持することができる。このように本実施例の遮蔽支持部材31は、第一伸縮杆35と第二伸縮杆36との比較的少ない配設数によって、比較的広い範囲を安定して支持できる。さらに、本実施例では、前記遮蔽部材21が左右方向に沿った凹凸部を前後方向に複数並んで設けた構造としていることから、複数の凹部が遮蔽支持部材31上に乗載されて支持される。これにより、遮蔽支持部材31に掛かる遮蔽部材21の重量を分散できることから、該遮蔽支持部材31への応力集中を抑制できると共に該遮蔽支持部材31による支持安定性を高めることができる。
【0027】
尚、遮蔽部材21は、重量物であり、その重量が各第一,第二伸縮杆35,36に掛かる。そのため、第一伸縮杆35と第二伸縮杆36とが撓み易く、常態で第一伸縮杆35と第二伸縮杆36とが接触してしまうこともあり得る。
【0028】
次に、本実施例の目地カバー装置1の作動態様について説明する。
図5,6に示すように、地震時に、建造物81と建造物82とが相対的に離間する方向に変位すると、目地カバー体2の前端部下部に配設された緩衝部材15が該建造物82のパラペット87上を摺動する。この際に前記離間方向への変位が比較的大きく、帯板状弾性部材16がパラペット87よりも後方に位置すると、パラペット87との当接が解除されて該帯板状弾性部材16が垂れ下がった状態となる。こうした両建造物81,82の相対変位に伴って、遮蔽部材(止水帯22および耐火帯23)21が前後方向に伸びると共に、該遮蔽部材21を支持する遮蔽支持部材31の各伸縮杆35,36が伸長する。ここで、遮蔽部材21を構成する止水帯22と耐火帯23とは、前後両端部が各建造物81,82の側壁84,86に固結されていることから、前記離間方向への相対変位によって該止水帯22および耐火帯23の凹凸が小さくなるように(直線状に近づけるように)変形して前後方向へ伸びる。そして、第一,第二伸縮杆35,36は、夫々の両端が前記ジョイント部材34を介して側壁84,86に取り付けられていることから、前記離間方向への相対変位によって、前後方向に対する傾斜角が変化すると共に伸長する。このように両建造物81,82の離間方向への相対変位に遮蔽部材21と遮蔽支持部材31とが追従できることから、該相対変位の際にも該遮蔽支持部材31によって該遮蔽部材21を安定して支持することができる。
【0029】
こうした離間方向への変位後に常態(地震の無い状態)へ復帰する際には、両建造物81,82が相対的に近接する方向に変位する。これにより、目地カバー体2の緩衝部材15が建造物82のパラペット87上を摺動し、帯板状弾性部材16が屈曲変形して該パラペット87上に当接する。こうした相対変位に伴って、遮蔽部材21が、前記した前後方向に伸びた状態から縮み、遮蔽支持部材31の各伸縮杆35,36が傾斜角を変化すると共に収縮する。このように常態へ復帰する相対変位(近接方向への相対変位)の場合も、遮蔽部材21と遮蔽支持部材31とが追従できることから、該遮蔽支持部材31が該遮蔽部材21を安定して支持できる。
【0030】
また、地震の際には、前述した両建造物81,82の前後方向への相対変位以外にも、左右方向や上下方向へ相対変位し得る。こうしたいずれの方向に相対変位した場合にあっても、遮蔽支持部材31が該相対変位に応じて伸縮すると共にその向きをスムーズに変化でき、該相対変位に追従できる。そのため、地震時の相対変位の際に、遮蔽部材21を遮蔽支持部材31が安定して支持できる。
【0031】
本実施例の目地カバー装置1は、前述したように、前後方向に対して左右両方に夫々傾けて配設された第一伸縮杆35と第二伸縮杆36とから構成される筋交い支持対32によって、目地カバー体2の下方に配設された止水帯22および耐火帯23とを下方から支持するようにしたものである。本構成によれば、止水帯22および耐火帯23の重量によって両建造物81,82の側壁84,86との固結部位に作用する負荷を軽減することができ、止水帯22および耐火帯23を比較的長期に亘って安定して支持できる。そして、筋交い支持対32は、その第一伸縮杆35と第二伸縮杆36とを対角線とする範囲で、止水帯22および耐火帯23を支持できるものであり、本実施例では、この筋交い支持対32を二組配設した構成であるから、遮蔽部材21の比較的広い範囲を安定して支持することができる。このように本実施例の遮蔽支持部材31は、各伸縮杆35,36の比較的少ない配設数(合計4個)で、遮蔽部材21の比較的広い範囲を支持できる。
【0032】
さらに、筋交い支持対32の第一伸縮杆35と第二伸縮杆36とは、伸縮自在に構成されると共に、夫々の両端部が前記側壁84,86にジョイント部材34を介して回動可能に取り付けられていることから、地震時における両建造物81,82の相対変位に円滑に追従することができる。これにより、地震の際にも遮蔽支持部材31が遮蔽部材21を安定して支持可能である。特に、遮蔽部材21は、止水帯22と耐火帯23とが左右方向に沿った凹凸部を前後方向に複数繰り返し設けた構成であることから、地震の無い常態と地震時の前記相対変位により伸縮した場合とのいずれであっても、前記筋交い支持対32に安定して支持される。詳述すると、遮蔽部材21は、前後方向に並ぶ複数の凹部で筋交い支持対32上に支持され、地震時に伸縮した際にも該複数の凹部で支持され得る。そのため、遮蔽部材21の伸縮によって、筋交い支持対32の一部で局所的に支持されてしまうことを抑制でき、該局所的な支持による負荷の集中を抑制できることから、遮蔽支持部材31による支持安定性に優れる。こうした本実施例の遮蔽支持部材31によれば、目地83の幅(両建造物81,82の間隔)が比較的広い構造であっても、筋交い支持対32の配設組数を適宜設定することにより遮蔽部材21を安定して支持することができる。
【0033】
また、本実施例の筋交い支持対32は、第一伸縮杆35と第二伸縮杆36とが上下方向に所定間隙を置いて配設されるようにしていることから、地震時に遮蔽部材21が該間隙に挟まってしまうことを抑制でき、この挟まることにより該遮蔽部材21の伸縮と各伸縮杆35,36の伸縮とが作動し難くなることを抑制できる。これにより、地震時にも両建造物81,82の相対変位に円滑に追従でき、前述した本実施例の作用効果が安定して発揮され得る。尚、遮蔽部材21の重量によって各伸縮杆35,36が撓むことによって、両伸縮杆35,36が接触してしまうことも考えられるが、この場合には地震時の相対変位により遮蔽部材21が挟まったとしても伸縮作動中に解消できるため、該伸縮作動し難くなるという前記問題を生じ難い。
【0034】
本発明は、前述した実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更することが可能である。
例えば、本実施例では、二組の筋交い支持対32を配設した構成であるが、これに限らず、一組の筋交い支持対32を配設した構成や三組の筋交い支持対32を配設した構成とすることも可能である。尚、筋交い支持対32を三組以上配設する場合には、隣合う第一伸縮杆35同士の間隔を全て同じとし且つ隣合う第二伸縮杆36同士の間隔を全て同じとする構成が好ましい。さらには、隣合う第一伸縮杆35同士の間隔と隣合う第二伸縮杆36同士の間隔とを同じすることが好適である。
また、第一伸縮杆35を配設した傾斜角と第二伸縮杆36を配設した傾斜角とは、適宜変更することが可能である。そして、第一伸縮杆35の傾斜角と第二伸縮杆36の傾斜角とは、実施例と同様に同じであっても良いし、異なっていても良い。
また、実施例は、本発明を屋根用の目地カバー装置1に適用したものであるが、これに限らず、例えば床用の目地カバー装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 目地カバー装置
2 目地カバー体(カバー体)
11 カバー本体
12 ホルダー
15 緩衝部材
16 帯板状弾性部材
21 遮蔽部材
22 止水帯
23 耐火帯
31 遮蔽支持部材
32 筋交い支持対
34 ジョイント部材
35 第一伸縮杆
36 第二伸縮杆
37,38 構成パイプ
39 連結部
81,82 建造物
83 目地
84,86 側壁
87 パラペット