IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ DMG森精機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-撮像ユニットおよび工作機械 図1
  • 特開-撮像ユニットおよび工作機械 図2
  • 特開-撮像ユニットおよび工作機械 図3
  • 特開-撮像ユニットおよび工作機械 図4
  • 特開-撮像ユニットおよび工作機械 図5
  • 特開-撮像ユニットおよび工作機械 図6
  • 特開-撮像ユニットおよび工作機械 図7
  • 特開-撮像ユニットおよび工作機械 図8
  • 特開-撮像ユニットおよび工作機械 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004512
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】撮像ユニットおよび工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/09 20060101AFI20230110BHJP
   B23Q 17/24 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
B23Q17/09 C
B23Q17/24 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106228
(22)【出願日】2021-06-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】弁理士法人インターブレイン
(72)【発明者】
【氏名】重兼 晃人
(72)【発明者】
【氏名】窪田 純一
【テーマコード(参考)】
3C029
【Fターム(参考)】
3C029DD04
3C029DD20
3C029EE20
(57)【要約】
【課題】カメラが加工室に設置されてもクーラントによる汚染を抑制する。
【解決手段】ある態様の撮像ユニットは、所定の撮像領域にある工具を撮像するためのカメラと、カメラと対向配置される照明部と、カメラと照明部とが結合した結合状態とカメラと照明部とが離れた離間状態との間で、照明部およびカメラの少なくとも一方を移動させる案内をするガイド機構と、を備える。離間状態において、カメラと照明部との間に撮像領域がある。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械に設置される撮像ユニットであって、
所定の撮像領域にある工具を撮像するためのカメラと、
前記カメラと対向配置される照明部と、
前記カメラと前記照明部とが結合した結合状態と前記カメラと前記照明部とが離れた離間状態との間で、前記照明部および前記カメラの少なくとも一方を移動させる案内をするガイド機構と、
を備え、
前記離間状態において、前記カメラと前記照明部との間に前記撮像領域がある、撮像ユニット。
【請求項2】
前記カメラおよび前記照明部が、結合の際に嵌合する嵌合構造を有し、
前記嵌合構造は、
前記カメラのレンズの前方において前記カメラのカバーにおける前記照明部との対向面に形成され、前記カメラの光軸を中心に同心状に形成された第1環状凹凸部と、
前記照明部のカバーにおける前記カメラとの対向面に形成され、前記照明部の光軸を中心に同心状に形成された第2環状凹凸部と、
を含み、
前記第1環状凹凸部と前記第2環状凹凸部とが互いに相補形状を有し、入れ子状態で嵌合する、請求項1に記載の撮像ユニット。
【請求項3】
前記カメラおよび前記照明部を支持するベース部材を備え、
前記照明部および前記カメラの少なくとも一方が、前記ベース部材にスライド可能に支持される、請求項1又2に記載の撮像ユニット。
【請求項4】
工具の形状を撮像する撮像ユニットを備える工作機械であって、
前記撮像ユニットは、
所定の撮像領域にある工具を撮像するためのカメラと、
前記カメラと対向配置される照明部と、
前記カメラと前記照明部とが結合した結合状態と前記カメラと前記照明部とが離れた離間状態との間で、前記照明部および前記カメラの少なくとも一方を移動させる案内をするガイド機構と、
を備え、
前記離間状態において、前記カメラと前記照明部との間に前記撮像領域がある、工作機械。
【請求項5】
上面にワークが固定されるテーブルを備え、
前記撮像ユニットが、前記テーブルの上面に固定される、請求項4に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械において工具形状を撮像する撮像ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械には、回転するワークに対して工具を移動させるターニングセンタ、回転する工具をワークに対して移動させるマシニングセンタ、およびこれらの機能を複合的に備える複合加工機などがある。工具主軸あるいは刃物台などの工具保持部に工具は固定される。工作機械は、予め用意された加工プログラムにしたがって、工具を交換しつつ、工具保持部を動かしながらワークを加工する。
【0003】
このような工作機械では、工具に欠損や折損などの異常があった場合、あるいは工具の摩耗が許容量を超えた場合、その工具(以下「不良工具」ともいう)を使用することはできない。このため、工具の使用に際して刃形状をカメラにより撮像し、その撮像画像に基づいて不良工具であるか否かを検査する技術が提案されている(特許文献1)。
【0004】
工具検査は一般に、照明部により工具を照らしながら撮像した画像に基づいて行われる。カメラと照明部とが工具に対してちょうど反対側に配置されることで、カメラは、工具の輪郭位置を把握しやすい、コントラストの高い撮像画像を取得できる。すなわち、工具とその背景とのコントラストの差から工具の輪郭を抽出し、工具形状データを生成する。このとき取得された工具形状に基づいて不良工具であるか否かを判定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-131357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
工作機械によっては、工具検査が加工室で行われるものがある。しかし、加工室内では、加工中における工具およびワークの除熱のためにクーラント(切削油)が噴射されるため、カメラのレンズがそのクーラントによって汚染されないようにしなければならない。また、クーラントの停止後も、霧状になったクーラント(「ミストクーラント」とよぶ)がしばらくは残留するため、ミストクーラントによる汚染も防ぐ必要がある。さらに、照明の汚染も防止できるのが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、工作機械に設置される撮像ユニットである。この撮像ユニットは、所定の撮像領域にある工具を撮像するためのカメラと、カメラと対向配置される照明部と、カメラと照明部とが結合した結合状態とカメラと照明部とが離れた離間状態との間で、照明部およびカメラの少なくとも一方を移動させる案内をするガイド機構と、を備える。離間状態において、カメラと照明部との間に撮像領域がある。
【0008】
本発明の別の態様は、工具の形状を撮像する撮像ユニットを備える工作機械である。撮像ユニットは、所定の撮像領域にある工具を撮像するためのカメラと、カメラと対向配置される照明部と、カメラと照明部とが結合した結合状態とカメラと照明部とが離れた離間状態との間で、照明部およびカメラの少なくとも一方を移動させる案内をするガイド機構と、を備える。離間状態において、カメラと照明部との間に撮像領域がある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、カメラが加工室に設置されてもクーラントによる汚染を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る工作機械の概略構成を表す斜視図である。
図2】撮像ユニットの外観を表す図である。
図3】撮像ユニットの矢視断面図である。
図4】撮像ユニットの作動を表す図である。
図5】カメラと照明部との結合状態を示す撮像ユニットの矢視断面図である。
図6図5のA部拡大図である。
図7】工作機械のハードウェア構成図である。
図8】画像処理装置の機能ブロック図である。
図9】工具検査処理の処理過程を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係る工作機械の概略構成を表す斜視図である。なおここでは、工作機械1を正面からみて左右方向,前後方向,上下方向を、それぞれX軸方向,Y軸方向,Z軸方向とする。
【0012】
工作機械1は、縦型のマシニングセンタであり、加工装置2を備える。加工装置2を覆うように図示しない筐体が設けられ、その筐体内に加工室4が形成される。その筐体の側面には操作盤が設けられている。加工装置2は、ベッド10と、ベッド10に立設されたコラム12と、コラム12に対して上下に移動自在に設けられた主軸頭14と、ベッド10上に前後左右に移動自在に設けられたテーブル16を備える。主軸頭14は、主軸18を回転可能に支持する。
【0013】
コラム12の前面にガイドレール20が設けられ、主軸頭14がZ軸方向に移動可能に支持される。主軸頭14の移動は、図示略の送り機構とそれを駆動するサーボモータにより実現される。この送り機構は、例えばボールねじを用いたねじ送り機構である。
【0014】
主軸頭14は、Z軸方向の軸線Lを有し、その軸線Lを中心に主軸18を回転可能に支持する。主軸頭14には、主軸18を回転駆動するための図示略のスピンドルモータが設けられている。主軸18は、工具ホルダ22に保持された工具Tを同軸状に取り付け可能である。主軸18は、主軸頭14が駆動されることによりZ軸方向に移動自在である。
【0015】
一方、ベッド10の上面にガイドレール24が設けられ、サドル26がY軸方向に移動可能に支持される。サドル26の上面にガイドレール28が設けられ、テーブル16がX軸方向に移動可能に支持される。サドル26およびテーブル16の移動は、それぞれ図示略の送り機構とそれを駆動するサーボモータにより実現される。この送り機構は、例えばボールねじを用いたねじ送り機構である。
【0016】
テーブル16には、図示略の治具を介してワークWが固定される。ワークWは、サドル26およびテーブル16が駆動されることによりX軸方向およびY軸方向に移動自在である。すなわち、以上の構成により、ワークWと工具Tとの相対位置を三次元的に調整することができる。
【0017】
テーブル16には、また、所定の治具を介して撮像ユニット30が固定される。撮像ユニット30は、工具検査を行うためのカメラ32および照明部34を含む。カメラ32は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)、CCD(Charge-Coupled Device)などのイメージセンサ(撮像素子)を備える。本実施形態におけるカメラ32は約170万画素(1224×1024)の解像度を有する。また、カメラ32は1秒間に最大80枚の撮像画像を取得可能である。
【0018】
カメラ32は、その光軸がテーブル16の上面と平行となるように配置される。照明部34は、カメラ32と対向配置され、その光軸がカメラの光軸と一致するように配置される。照明部34による透過照明により、カメラ32は、工具Tの輪郭位置を把握しやすい、コントラストの高い撮像画像を取得できる。
【0019】
カメラ32と照明部34との間に検査領域Sが設けられる。工具検査の際には、主軸頭14が移動され、工具Tの先端部が検査領域Sにセットされる。そして、刃先の欠損や折損などの異常の有無、つまり不良工具であるか否かが検査される(詳細後述)。
【0020】
次に、撮像ユニット30の構造について詳細に説明する。
図2は、撮像ユニット30の外観を表す図である。図2(A)は斜視図であり、図2(B)は平面図である。
【0021】
図2(A)に示すように、撮像ユニット30は、ベース部材36にカメラ32および照明部34を組み付けて構成される。ベース部材36は、テーブル16の上面に固定されるベース38と、ベース38上に設けられたガイド部40を含む。ベース38は、撮像ユニット30をテーブル16に固定するための治具としても機能する。ガイド部40には、照明部34の駆動をガイドするガイド機構(後述)が設けられている。ガイド部40は、そのガイド機構の駆動部がある空間と、検査領域Sとを隔離する隔壁42を有する。
【0022】
ベース38は、カメラ32が載置される態様で固定され、その載置領域から外れた部分が大きく切り欠かれた構造を有する。隔壁42には、シャッタ44がスライド可能に支持されている。そのシャッタ44の側面から突出する支持部46に照明部34が固定されている。照明部34は、その光軸がシャッタ44と平行となるように支持され、シャッタ44と一体に移動する。隔壁42には、検査領域Sの近傍に開口48が設けられている。シャッタ44の作動により開口48が開閉される。なお、変形例においては、開口48を省略してもよい。
【0023】
図示のようにカメラ32と照明部34とが離間した状態において、検査領域Sが形成される。工具Tの三次元形状を計測するために、検査領域Sにおける工具Tの配置(X-Y平面における位置)は複数選択可能とされている(二点鎖線参照)。テーブル16の移動によりその位置を変更できる。
【0024】
図3は、撮像ユニット30の矢視断面図である。具体的には、カメラ32の光軸を含む高さ位置の断面を上方からみた図を示す。
カメラ32は、光学機構を収容する本体50と、本体50の前端部を閉止するように組み付けられたレンズユニット52を有する。レンズユニット52は、レンズ54を保持する。レンズユニット52および本体50の前端部を覆うようにカバー56が取り付けられている。本実施形態において、カバー56はアルミニウム合金からなる。カバー56は段付円筒形状をなし、その前端部にシール構造58を有する(詳細後述)。
【0025】
一方、照明部34は、光学機構を収容する本体60と、本体60の前端部を閉止するように組み付けられたレンズユニット62と、レンズユニット62を覆うように組み付けられたカバーユニット64を備える。レンズユニット62は、レンズ66を保持する。カバーユニット64は、内側カバー68と外側カバー70を含む二重構造を有する。本実施形態において、内側カバー68および外側カバー70はアルミニウム合金からなる。カバーユニット64は段付円筒形状をなし、その前端部にシール構造72を有する(詳細後述)。照明部34の光軸L1は、カメラ32の光軸L2と一致する。
【0026】
ガイド部40には、照明部34を光軸L1の方向に移動させるためのガイド機構74が設けられている。ガイド機構74は、ガイドレール76およびエアシリンダ78を含む。ガイドレール76は、カメラ32および照明部34の各光軸と平行に延在し、作動体80が摺動可能に取り付けられている。エアシリンダ78のロッド79の先端に作動体80が固定され、作動体80に支持部46が固定されている。このような構成により、エアシリンダ78は、照明部34を光軸L1に沿って往復駆動する。
【0027】
なお、ガイド部40には、撮像ユニット30と後述する画像処理装置110(図7参照)とを接続するためのケーブル(通信ライン)や、エアシリンダ78にエアを供給するための配管(チューブ)などが配設されている。
【0028】
図4は、撮像ユニット30の作動を表す図である。図4(A)はカメラ32と照明部34との離間状態を示し、図4(B)はカメラ32と照明部34との結合状態を示す。図5は、カメラ32と照明部34との結合状態を示す撮像ユニット30の矢視断面図である。
【0029】
図4(A)に示すように、工具検査の際には、ガイド機構74が照明部34を開位置に移動させ、カメラ32と照明部34とが離間状態となる。それにより、カメラ32と照明部34との間に検査領域S(「撮像領域」に対応する)が形成される(図2参照)。
【0030】
一方、図4(B)に示すように、工具検査を行わないときには、ガイド機構74が照明部34を閉位置に移動させ、カメラ32と照明部34とが結合状態となる。このとき、図5にも示すように、照明部34の外側カバー70がカメラ32のカバー56の前端部にオーバラップする態様で結合する。シール構造58,シール構造72の協働により、カメラ32と照明部34との間のシール性が確保される。それにより、カメラ32および照明部34の各レンズが外部環境から保護される。すなわち、加工中に飛散するクーラントによってレンズが汚染されることが防止又は抑制される。また、このときシャッタ44により開口48が閉じられる。
【0031】
次に、シール構造58,72の詳細について説明する。
図6は、図5のA部拡大図である。図6(A)~(C)は、カメラ32と照明部34との結合過程を示す。
【0032】
図6(A)に示すように、カメラ32のカバー56は、前端部に外径が一段小径化された環状嵌合部82を有する。カバー56の前面には、レンズ54を露出させる開口端84と環状嵌合部82との間に環状の凹状嵌合部86が形成されている。環状嵌合部82は、開口端84よりも前方に延出している。
【0033】
このような構成により、カバー56は、レンズ54の前方において照明部34との対向面に光軸L2を中心に同心状に形成される環状凹凸部(第1環状凹凸部)を有する。凹状嵌合部86には、シール用のVリング88(シールリング)が嵌着されている。シール構造58は、その環状凹凸部とVリング88により実現される。
【0034】
なお、本体50とカバー56との間のシールは、本体50の外周面に嵌着されたOリング90(シールリング)により確保されている。レンズユニット52と本体50との間のシールは、レンズユニット52の外周面に嵌着されたOリング92(シールリング)により確保されている。
【0035】
一方、照明部34のカバーユニット64は、内側カバー68が外側カバー70に同軸状に組み付けられている。外側カバー70は、内側カバー68よりも前方に延出している。内側カバー68の前端面には、レンズ66を露出させる開口端94の径方向外側に環状の凹状嵌合部96が設けられている。内側カバー68の外周面には環状溝98が形成されている。
【0036】
このような構成により、カバーユニット64は、レンズ66の前方においてカメラ32との対向面に光軸L1を中心に同心状に形成される環状凹凸部(第2環状凹凸部)を有する。凹状嵌合部96には、シール用のVリング100(シールリング)が嵌着されている。シール構造72は、その環状凹凸部とVリング100により実現される。
【0037】
なお、内側カバー68と外側カバー70との間のシールは、内側カバー68の外周面に嵌着されたOリング102(シールリング)により確保されている。本体60とカバーユニット64との間のシールは、本体60の前端面に嵌着されたOリング104(シールリング)により確保されている。
【0038】
以上の構成において、カバー56の環状凹凸部(第1環状凹凸部)と、カバーユニット64の環状凹凸部(第2環状凹凸部)とにより、カメラ32と照明部34との嵌合構造が実現される。これらの環状凹凸部は、互いに相補形状を有する。
【0039】
すなわち、図6(B)に示すように、照明部34を閉方向に移動させると、カバー56の環状凹凸部と、カバーユニット64の環状凹凸部とが入れ子状態で嵌合する。図6(C)に示すように、外側カバー70の前端面がカバー56の前面(環状嵌合部82の基端面)に当接することで結合が完了する。
【0040】
このとき、Vリング100がカバー56の前端面(開口端面)に密着し、Vリング88が内側カバー68の前端面に密着する。また、嵌合状態にある外側カバー70と環状嵌合部82との間隙、環状嵌合部82と内側カバー68との間隙が、各カバーの内側に向けて拡大と縮小を繰り返すいわゆるラビリンス構造が実現される。このため、シール構造58、72による良好なシール性能が実現される。
【0041】
このラビリンス構造において、内側のラビリンスは、各カバーユニットの外周部端面よりも奥まったところに配置されている。Vリングについても同様である。すなわち、カメラ32に関し、環状凹凸部の内側凸部の前端面(開口端84が位置する端面)は、カバー56の内方、つまり環状嵌合部82の前端面よりも軸線方向後方に位置する。Vリング88も環状嵌合部82の前端面よりも軸線方向後方に位置する。同様に照明部34に関し、環状凹凸部の内側凸部の前端面(内側カバー68の前端面、開口端94が位置する端面)は、外側カバー70の前端面よりも軸線方向後方に位置する。Vリング100も外側カバー70の前端面よりも軸線方向後方に位置する。
【0042】
また、カメラ32の光学機構(レンズ54などの保護ガラスも含む)は、カメラ32の外周部端面よりも内側に配置される。すなわち、光学機構は、環状嵌合部82の前端面よりも軸線方向後方に位置する。同様に、照明部34の光学機構(レンズ66などの保護ガラスも含む)は、照明部34の外周部端面よりも内側に配置される。すなわち、光学機構は、外側カバー70の前端面よりも軸線方向後方に位置する。
【0043】
なお、図示を省略するが、カメラ32および照明部34は、常時エアパージがなされており、外部からのミストの侵入が防止されている。すなわち、シャッタ44の開閉状態にかかわらず、カメラ32および照明部34のそれぞれにおいて、レンズ(保護ガラス)の付近から、最内側のVリングよりも中心領域に向けて、パージエアを噴出するパージ機構が設けられている。それにより、シャッタ44の開状態においてもカメラ32や照明部34の保護ガラスにミストが付着しないようにされている。
【0044】
図7は、工作機械1のハードウェア構成図である。
工作機械1は、操作制御装置120、加工制御装置122、加工装置2、工具交換部126および工具格納部130を含む。工作機械1には、工具検査を実行するための画像処理装置110が通信可能に接続される。なお、画像処理装置110を工作機械1の一部としてもよい。
【0045】
数値制御装置として機能する加工制御装置122は、加工プログラムにしたがって加工装置2に制御信号を送信する。加工装置2は、加工制御装置122からの指示にしたがって主軸18(主軸頭14)およびテーブル16を動かしてワークを加工する。
【0046】
操作制御装置120は、図示略の操作盤を含み、加工制御装置122を制御する。工具格納部130は工具を格納する。工具交換部126は、いわゆるATC(Automatic Tool Changer)に対応し、加工室4の外側に設けられている。工具交換部126は、加工制御装置122からの交換指示にしたがって、工具格納部130から工具を取り出し、主軸18にある工具と取り出した工具を交換する。
【0047】
画像処理装置110は、主として、工具形状認識等の画像処理を行う。画像処理装置110は操作制御装置120の一部として構成されてもよい。画像処理装置110は、一般的なラップトップPC(Personal Computer)あるいはタブレット・コンピュータであってもよい。
【0048】
図8は、画像処理装置110の機能ブロック図である。
画像処理装置110の各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)および各種補助プロセッサなどの演算器、メモリやストレージといった記憶装置、それらを連結する有線または無線の通信線を含むハードウェアと、記憶装置に格納され、演算器に処理命令を供給するソフトウェアによって実現される。コンピュータプログラムは、デバイスドライバ、オペレーティングシステム、それらの上位層に位置する各種アプリケーションプログラム、また、これらのプログラムに共通機能を提供するライブラリによって構成されてもよい。以下に説明する各ブロックは、ハードウェア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。
【0049】
なお、操作制御装置120および加工制御装置122も、プロセッサなどの演算器、メモリやストレージといった記憶装置、それらを連結する有線または無線の通信線を含むハードウェアと、記憶装置に格納され演算器に処理命令を供給するソフトウェアやプログラムを画像処理装置110とは別個のオペレーティングシステム上で実現される形態でもよい。
【0050】
画像処理装置110は、ユーザインタフェース処理部140、データ処理部142、データ格納部144および通信部146を含む。
ユーザインタフェース処理部140は、ユーザからの操作を受け付けるほか、画像表示や音声出力など、ユーザインタフェースに関する処理を担当する。通信部146は、操作制御装置120との通信を担当する。データ処理部142は、ユーザインタフェース処理部140により取得されたデータおよびデータ格納部144に格納されているデータに基づいて各種処理を実行する。データ処理部142は、ユーザインタフェース処理部140、データ格納部144および通信部146のインタフェースとしても機能する。データ格納部144は、各種プログラムと設定データを格納する。
【0051】
ユーザインタフェース処理部140は、入力部150および出力部152を含む。
入力部150は、タッチパネルあるいはハンドル等のハードデバイスを介してユーザからの入力を受け付ける。出力部152は、画像表示あるいは音声出力を介して、ユーザに各種情報を提供する。出力部152は、報知部154を含む。報知部154は、交換対象となる工具の異常(不良工具が検出されたこと)など、所定の異常条件が成立したときにユーザに各種事象の発生を報知する。
【0052】
通信部146は、操作制御装置120からデータを受信する受信部180と、操作制御装置120にデータおよびコマンドを送信する送信部182を含む。
【0053】
データ処理部142は、移動制御部160、撮像処理部162、形状再現部164、工具管理部166および判定処理部168を含む。
移動制御部160は、ガイド機構74を駆動制御して照明部34の移動を制御する。撮像処理部162は、カメラ32を制御して工具Tを撮像させる。形状再現部164は、撮像画像に基づいて工具Tの形状を示すデータである「工具形状データ」を生成する。工具管理部166は、工具Tごとに工具IDと工具形状データとを対応づけてデータ格納部144に登録する。
【0054】
判定処理部168は、工具Tの撮像画像に基づき、あるいは、工具形状データに基づいて、工具Tに欠損や折損あるいは切屑の巻き付きなどの異常が生じていないか(不良工具であるか否か)を判定する。判定処理部168が工具Tの異常が判定されたとき、報知部154がユーザにその旨を報知する。判定処理部168は、操作制御装置120にその旨を操作盤に表示させるよう指示してもよい。工具Tが不良工具であると判定された場合、工具管理部166は、その不良工具であるとの情報を工具IDに対応づけ、工具情報としてデータ格納部144に登録する。
【0055】
データ格納部144は、工具情報格納部170および形状データ格納部172を含む。工具情報格納部170は、工具格納部130に収納される各工具Tの情報(工具情報)を工具IDに対応づけて格納する。工具情報には、例えば工具の種類や形状、大きさ、長さなどの情報が含まれる。さらに、累計使用時間や累計使用回数などの情報を含めてもよい。データ格納部144はまた、撮像画像を一時記憶する。
【0056】
工具情報格納部170は、工具交換がなされるごとに工具情報を更新する。上述のように工具Tが不良工具であると判定された場合には、工具情報としてその旨を追加する。工具管理部166は、その判定以降、不良工具にかかる工具Tの使用、つまり工具交換部126により工具交換することを禁止する。
【0057】
形状データ格納部172は、形状再現部164が生成した工具形状データを工具IDに対応づけて格納する。形状データ格納部172は、また、各工具Tについて、使用前に登録した工具形状データを「参照データ」として工具IDに対応づけて格納する。判定処理部168は、同一の工具について加工に使用後の工具形状データと参照データとを比較することで、工具Tが不良工具であるか否かを判定できる。
【0058】
図9は、工具検査処理の処理過程を表すフローチャートである。
工具検査処理においては、まず、加工制御装置122が主軸頭14およびテーブル16を移動させることで、工具Tを待機位置に移動させる(S10)。本実施形態において、「待機位置」は検査領域Sの直上位置とされている。工具検査開始当初は、カメラ32と照明部34とが結合状態にあり、クーラントによる汚染が防止されている。
【0059】
続いて、移動制御部160がガイド機構74を駆動し、照明部34を開方向に移動させ、カメラ32から離間させる(S12)。そして、照明部34が予め設定された照明位置に到達すると(S14のY)、照明部34の移動を停止させる(S16)。こうして検査領域Sが開放される。
【0060】
続いて、加工制御装置122が主軸頭14を降下させ、工具Tの刃先を検査領域Sに移動させる(S18)。撮像処理部162は、カメラ32を制御して工具Tを撮像する(S20)。このとき取得された撮像画像が記憶される。この撮像に際しては、工具Tの三次元画像を取得するために複数回の撮像が実行される。
【0061】
工具Tの撮像が終了すると(S22のY)、加工制御装置122が主軸頭14を上昇させ、工具Tを待機位置に移動させる(S24)。一方、移動制御部160がガイド機構74を駆動し、照明部34を閉方向に移動させ、カメラ32に近接させる(S26)。そして、照明部34がカメラ32と結合する閉止位置に到達すると(S28のY)、照明部34の移動を停止させる(S30)。こうして再び、カメラ32および照明部34のレンズが保護される。
【0062】
形状再現部164は、こうして取得された撮像画像に基づいて工具形状データを生成する(S32)。工具管理部166は、この工具形状データを形状データ格納部172に一時記憶する。
【0063】
判定処理部168は、この工具形状データと工具IDが同じ参照データを読み出し、それらの工具形状データを比較する(S34)。すなわち、同一の工具について工具形状を比較する。このとき、両工具形状の類似度が所定値以下の不良工具であれば(S36のY)、報知部154にその旨を報知させる(S38)。すなわち、報知部154がアラート画面を表示させる。不良工具でなければ(S36のN)、S38の処理をスキップする。
【0064】
以上、実施形態に基づいて工作機械1について説明した。
本実施形態では、撮像ユニット30において照明部34が可動とされ、カメラ32と照明部34との結合状態および離間状態を実現可能とした。結合状態においては、照明部34がカメラ32の保護カバーとして機能する。離間状態においては、カメラ32と照明部34との間に検査領域S(撮像領域)が開放される。
【0065】
本実施形態によれば、カメラ32と照明部34とを結合状態とすることにより、カメラ32が加工室4に設置されてもクーラントによる汚染を防止又は抑制できる。照明部34の移動が制御され開閉方向に自動で動かされるため、カメラ32のレンズを保護するためのカバー部材を別途用意する必要もなく、またオペレータによるカバー部材の着脱作業も要しない。このため、工具検査における作業効率が向上する。
【0066】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【0067】
上記実施形態では、撮像ユニット30においてカメラ32を固定し、照明部34を移動させる構成を例示した。変形例においては逆に、照明部34を固定し、ガイド機構74によりカメラ32を移動させる構成としてもよい。あるいは、カメラ32と照明部34の双方を移動させる構成としてもよい。その場合、カメラ32を移動させるためのガイド機構74を設けることとなる。
【0068】
上記実施形態では、図2に示したように、ベース38においてカメラ32の載置領域から外れた部分(照明部34および検査領域Sの下方)が大きく切り欠かれた構造を例示した。変形例においては、照明部34の下方までベースを延在させる一方、そのベースにおける検査領域Sの下方位置に開口部を設けてもよい。その開口部から工具Tに付着した切屑を下方に排出できるようにしてもよい。それにより、検査領域Sにおける切屑の堆積を抑制できる。
【0069】
上記実施形態では、工作機械1としてマシニングセンタを例示したが、上記工具の検査技術をターニングセンタや複合加工機にも適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0070】
1 工作機械、2 加工装置、4 加工室、14 主軸頭、16 テーブル、18 主軸、30 撮像ユニット、32 カメラ、34 照明部、36 ベース部材、40 ガイド部、42 隔壁、44 シャッタ、52 レンズユニット、54 レンズ、56 カバー、58 シール構造、62 レンズユニット、64 カバーユニット、66 レンズ、68 内側カバー、70 外側カバー、72 シール構造、74 ガイド機構、76 ガイドレール、78 エアシリンダ、82 環状嵌合部、84 開口端、86 凹状嵌合部、88 Vリング、94 開口端、96 凹状嵌合部、98 環状溝、100 Vリング、L1 光軸、L2 光軸、S 検査領域、T 工具、W ワーク。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2021-10-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械に設置される撮像ユニットであって、
所定の撮像領域にある工具を撮像するためのカメラと、
前記カメラと対向配置される照明部と、
前記カメラと前記照明部とが結合した結合状態と前記カメラと前記照明部とが離れた離間状態との間で、前記照明部および前記カメラの少なくとも一方を移動させる案内をするガイド機構と、
を備え、
前記離間状態において、前記カメラと前記照明部との間に前記撮像領域があり、
前記結合状態において、前記照明部の外側カバーが前記カメラのカバーの前端部にオーバラップする態様で結合する、撮像ユニット。
【請求項2】
工作機械に設置される撮像ユニットであって、
所定の撮像領域にある工具を撮像するためのカメラと、
前記カメラと対向配置される照明部と、
前記カメラと前記照明部とが結合した結合状態と前記カメラと前記照明部とが離れた離間状態との間で、前記照明部および前記カメラの少なくとも一方を移動させる案内をするガイド機構と、
を備え、
前記離間状態において、前記カメラと前記照明部との間に前記撮像領域があり、
前記カメラおよび前記照明部が、結合の際に嵌合する嵌合構造を有し、
前記嵌合構造は、
前記カメラのレンズの前方において前記カメラのカバーにおける前記照明部との対向面に形成され、前記カメラの光軸を中心に同心状に形成された第1環状凹凸部と、
前記照明部のカバーにおける前記カメラとの対向面に形成され、前記照明部の光軸を中心に同心状に形成された第2環状凹凸部と、
を含み、
前記第1環状凹凸部と前記第2環状凹凸部とが互いに相補形状を有し、入れ子状態で嵌合する、撮像ユニット。
【請求項3】
前記カメラおよび前記照明部を支持するベース部材を備え、
前記照明部および前記カメラの少なくとも一方が、前記ベース部材にスライド可能に支持される、請求項1又2に記載の撮像ユニット。
【請求項4】
工具の形状を撮像する撮像ユニットを備える工作機械であって、
前記撮像ユニットは、
所定の撮像領域にある工具を撮像するためのカメラと、
前記カメラと対向配置される照明部と、
前記カメラと前記照明部とが結合した結合状態と前記カメラと前記照明部とが離れた離間状態との間で、前記照明部および前記カメラの少なくとも一方を移動させる案内をするガイド機構と、
を備え、
前記離間状態において、前記カメラと前記照明部との間に前記撮像領域があり、
前記結合状態において、前記照明部の外側カバーが前記カメラのカバーの前端部にオーバラップする態様で結合する、工作機械。
【請求項5】
上面にワークが固定されるテーブルを備え、
前記撮像ユニットが、前記テーブルの上面に固定される、請求項4に記載の工作機械。