(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045126
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】熱損失量算出システム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/20 20200101AFI20230327BHJP
E04B 1/348 20060101ALI20230327BHJP
G06F 30/13 20200101ALI20230327BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20230327BHJP
G01N 25/18 20060101ALN20230327BHJP
G06F 111/10 20200101ALN20230327BHJP
G06F 119/08 20200101ALN20230327BHJP
【FI】
G06F30/20
E04B1/348 ESW
G06F30/13
G06Q50/08
G01N25/18 B
G06F111:10
G06F119:08
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153359
(22)【出願日】2021-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】有富 由香
【テーマコード(参考)】
2G040
5B146
5L049
【Fターム(参考)】
2G040AA09
2G040AB08
2G040BA16
2G040GA01
2G040HA16
5B146AA04
5B146DJ01
5B146DL08
5L049CC07
(57)【要約】
【課題】ユニット式建物の外皮部における熱損失量を容易に算出することができる熱損失量算出システムを提供する。
【解決手段】熱損失量算出装置において、屋根面積算出部42は、建物の設計データに基づき屋根部の面積を算出し、大梁合計長さ算出部44は、建物の設計データに基づき屋根部において熱橋部を構成するすべての天井大梁の合計長さを算出し、熱橋ピッチ算出部45は、算出された屋根部の面積と天井大梁の合計長さとに基づき、屋根部において天井大梁が占める面積の比率を示す熱橋ピッチを算出し、熱貫流率算出部47は、熱橋ピッチ算出部45により算出された熱橋ピッチと、熱貫流率データベース46に記憶された熱橋ピッチと熱貫流率との対応関係とに基づき、屋根部の熱貫流率を算出し、熱損失量算出部48は、算出された屋根部の熱貫流率と面積とに基づき、屋根部における熱損失量を算出する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造材としての柱及び梁が直方体状に連結された枠体を含む複数の建物ユニットが互いに組み合わされることで構築されるユニット式の建物において、その建物の屋根部、床部及び外壁部のうちのいずれかである外皮部を対象とし、その外皮部における熱損失量を算出する熱損失量算出システムであって、
前記建物の設計データに基づき、前記外皮部の面積を算出する外皮面積算出手段と、
前記外皮部に含まれる前記構造材のうち隣り合う前記建物ユニットの対向する前記構造材は熱橋部を構成する熱橋構造材であり、前記建物の設計データに基づき、前記外皮部におけるすべての前記熱橋構造材の長さを合計した合計長さを算出する合計長さ算出手段と、
前記外皮面積算出手段により算出された前記外皮部の面積と、前記合計長さ算出手段により算出された前記熱橋構造材の合計長さとに基づき、前記外皮部において前記熱橋構造材が占める面積の比率を示す熱橋比率を算出する熱橋比率算出手段と、
前記外皮部における前記熱橋比率と熱貫流率との対応関係が予め記憶されている記憶手段と、
前記熱橋比率算出手段により算出された前記熱橋比率と、前記記憶手段に記憶されている前記対応関係とに基づき、前記外皮部の熱貫流率を算出する熱貫流率算出手段と、
前記熱貫流率算出手段により算出された前記外皮部の熱貫流率と、前記外皮面積算出手段により算出された前記外皮部の面積とに基づき、前記外皮部における熱損失量を算出する熱損失量算出手段と、
を備える、熱損失量算出システム。
【請求項2】
前記建物には、隣り合う前記建物ユニットの間隔が小さい小間隔部と、隣り合う前記建物ユニットの間隔が大きい大間隔部とが含まれている、請求項1に記載の熱損失量算出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユニット式建物の外皮部における熱損失量を算出する熱損失量算出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギの観点等から、断熱性能に優れた建物が求められており、建物の断熱性能を算出するための断熱性能算出システムが一部で提案されている。例えば、特許文献1には、ユニット式建物の断熱性能として、屋根部や床部(一階床部)、外壁部といった建物外皮部における熱損失量を算出するシステムが開示されている。
【0003】
ここで、ユニット式建物は、周知の通り、複数の建物ユニットが互いに組み合わされることにより構築されている。建物ユニットは、柱、天井大梁及び床大梁が直方体状に連結されてなる枠体を有している。ユニット式建物では、外皮部に配置される建物ユニットの大梁や柱が熱橋部となる。例えば、屋根部においては、天井大梁が熱橋部となり、詳しくは隣り合う建物ユニットにおいて互いに対向する天井大梁が熱橋部となる。そこで、ユニット式建物においては、屋根部の熱損失量を算出するに際し、上記対向する2本の天井大梁を含む熱橋モデルを想定し、その熱橋モデルが屋根部において複数箇所に配置されているものとして算出する方法が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ユニット式建物では、隣り合う建物ユニットが互いに離間して設置される場合がある。このような建物では、隣り合う建物ユニットの離間スペースが階段の設置スペースとして利用されたり、物の収納スペースとして利用されたりするようになっている。そして、このような建物では、隣り合う建物ユニットの間隔(ひいては対向する2本の天井大梁の間隔)が小さい部位と、隣り合う建物ユニットの間隔が大きい部位とが存在することになる。また、近年、ユニット式建物のニーズの多様化等に伴い、建物ユニット間の間隔もさまざまなものがあり、建物のバリエーションが増加する傾向にある。
【0006】
ここで、対向する2本の天井大梁を含む熱橋モデルを用いた上述の熱損失量の算出方法では、熱橋モデルの熱貫流率が2本の天井大梁の間隔によって変わることになる。このため、隣り合う建物ユニットの間隔(ひいては対向する2本の天井大梁の間隔)が小さい部位と大きい部位とが存在するユニット式建物に対して上記の算出方法を適用する場合には、対向する2本の天井大梁の間隔ごとに熱橋モデルを複数用意する必要がある。
【0007】
しかしながら、対向する2本の天井大梁の間隔ごとに熱橋モデルを用意するのは手間であるし、熱損失量の算出に際しても、複数種類の熱橋モデルに基づき熱損失量を算出するとなると、算出の処理が複雑となってしまう。
【0008】
なお、かかる問題は、屋根部の熱損失量を算出する場合に限らず、床部(一階床部)や外壁部等、屋根部以外の外皮部における熱損失量を算出する場合にも同様に生じうる問題である。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ユニット式建物の外皮部における熱損失量を容易に算出することができる熱損失量算出システムを提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく、第1の発明の熱損失量算出システムは、構造材としての柱及び梁が直方体状に連結された枠体を含む複数の建物ユニットが互いに組み合わされることで構築されるユニット式の建物において、その建物の屋根部、床部及び外壁部のうちのいずれかである外皮部を対象とし、その外皮部における熱損失量を算出する熱損失量算出システムであって、前記建物の設計データに基づき、前記外皮部の面積を算出する外皮面積算出手段と、前記外皮部に含まれる前記構造材のうち隣り合う前記建物ユニットの対向する前記構造材は熱橋部を構成する熱橋構造材であり、前記建物の設計データに基づき、前記外皮部におけるすべての前記熱橋構造材の長さを合計した合計長さを算出する合計長さ算出手段と、前記外皮面積算出手段により算出された前記外皮部の面積と、前記合計長さ算出手段により算出された前記熱橋構造材の合計長さとに基づき、前記外皮部において前記熱橋構造材が占める面積の比率を示す熱橋比率を算出する熱橋比率算出手段と、前記外皮部における前記熱橋比率と熱貫流率との対応関係が予め記憶されている記憶手段と、前記熱橋比率算出手段により算出された前記熱橋比率と、前記記憶手段に記憶されている前記対応関係とに基づき、前記外皮部の熱貫流率を算出する熱貫流率算出手段と、前記熱貫流率算出手段により算出された前記外皮部の熱貫流率と、前記外皮面積算出手段により算出された前記外皮部の面積とに基づき、前記外皮部における熱損失量を算出する熱損失量算出手段と、を備える。
【0011】
第1の発明によれば、ユニット式建物の設計データに基づき、建物の外皮部(屋根部、床部又は外壁部)の面積が算出されるとともに、外皮部におけるすべての熱橋構造材の長さを合計した合計長さが算出される。そして、それら算出された外皮部の面積と、熱橋構造材の合計長さとに基づき、外皮部において熱橋構造材が占める面積の比率を示す熱橋比率が算出される。記憶手段には、外皮部における熱橋比率と熱貫流率との対応関係が予め記憶されている。そして、上記算出された熱橋比率と、記憶手段に記憶されている上記対応関係とに基づき、外皮部の熱貫流率が算出され、その算出された熱貫流率と上記算出された外皮部の面積とに基づき、外皮部における熱損失量が算出される。
【0012】
このような熱損失量の算出の流れでは、隣り合う建物ユニットの対向する各構造材(各熱橋構造材)をそれぞれ1つの熱橋部とみなして外皮部の熱損失量が算出される。そのため、対向する2本の構造材を含む熱橋モデルを用いて熱損失量を算出する場合と異なり、対向する構造材の間隔ごとに熱橋モデルをわざわざ用意する必要がない。また、熱橋モデルとしては1つのパターンのみ(つまり1本の熱橋構造材のパターンのみ)となっているため、熱損失量の算出の処理もそれほど煩雑となることがなく、結果として、熱損失量を容易に算出することが可能となる。
【0013】
第2の発明の熱損失量算出システムは、第1の発明において、前記建物には、隣り合う前記建物ユニットの間隔が小さい小間隔部と、隣り合う前記建物ユニットの間隔が大きい大間隔部とが含まれている。
【0014】
第2の発明によれば、ユニット式建物に、隣り合う建物ユニットの間隔が小さい部分と大きい部分とが存在している。すなわち、隣り合う建物ユニットの対向する熱橋構造材の間隔が小さい部分と大きい部分とが存在している。このような建物にあっても、上述したように、熱橋モデルとしては1パターンのみで熱損失量の算出を行えるため、熱損失量の算出を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図4】熱損失量算出処理の流れを示す機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、予め設計したユニット式建物を対象として、そのユニット式建物の屋根部における熱損失量を算出する熱損失量算出装置について具体化している。以下では、熱損失量算出装置の説明に先立ち、まず、ユニット式建物の構成について
図1及び
図2に基づき説明する。なお、
図1はユニット式建物を示す平面図であり、
図2は建物ユニットを示す斜視図である。
【0017】
ユニット式建物10(以下、略して建物10という)は、直方体状をなす複数の建物ユニット20が互いに組み合わされることにより構築されている。
図2に示すように、建物ユニット20は、その四隅に配設される4本の柱21と、各柱21の上端部及び下端部をそれぞれ連結する各4本の天井大梁22及び床大梁23とを備えている。それら柱21、天井大梁22及び床大梁23により直方体状の枠体24が形成されている。柱21は四角筒状の角形鋼よりなる。また、天井大梁22及び床大梁23は断面コ字状の溝形鋼よりなり、その開口部を水平方向の内側に向けて配置されている。なお、柱21、天井大梁22及び床大梁23がそれぞれ構造材に相当する。
【0018】
建物ユニット20の長辺部の相対する天井大梁22の間には、所定間隔で複数の天井小梁25が架け渡されている。また、建物ユニット20の長辺部の相対する床大梁23の間には、所定間隔で複数の床小梁26が架け渡されている。例えば、天井小梁25はリップ溝形鋼よりなり、床小梁26は角形鋼よりなる。天井小梁25によって天井面材27が支持され、床小梁26によって床面材28が支持されている。
【0019】
図1に示すように、建物10は二階建てとされ、一階部分及び二階部分にそれぞれ横並びに設けられた複数の建物ユニット20を備える。二階部分(換言すると最上階部)の上方には、外皮部としての屋根部13が設けられている。屋根部13は、陸屋根として構成されている。屋根部13は、二階部分の各建物ユニット20の天井大梁22と、それら天井大梁22により下方から支持された屋根材(図示略)と、建物ユニット20の4本の天井大梁22により囲まれた内側領域に配設された断熱材とを含んで構成されている。
【0020】
建物10の二階部分における各建物ユニット20の天井大梁22には、隣り合う建物ユニット20の互いに対向する天井大梁22Aが含まれている。屋根部13においては、これらの天井大梁22Aが熱橋部を構成している。したがって、天井大梁22Aが熱橋構造材に相当する。なお、
図1では、各天井大梁22Aにドットハッチを付して示している。
【0021】
建物10の二階部分には、横並びで隣り合う建物ユニット20の間隔が小さくされた小間隔部14と、上記間隔が大きくされた大間隔部15とが存在している。この場合、大間隔部15を介して隣り合う建物ユニット20の対向する天井大梁22Aの間の間隔L1は、小間隔部14を介して隣り合う建物ユニット20の対向する天井大梁22Aの間の間隔L2よりも大きくなっている。
【0022】
次に、屋根部13における熱損失量を算出する熱損失量算出装置30について
図3に基づき説明する。
図3は、熱損失量算出装置30の概略構成を示す図である。
【0023】
図3に示すように、熱損失量算出装置30は、パーソナルコンピュータにより構成され、建物を設計するCADプログラムを有している。熱損失量算出装置30は、例えば建物メーカに設けられ、同メーカの設計者により使用される。熱損失量算出装置30は、制御部31と、操作部32と、表示部33と、記憶部34とを備えている。
【0024】
制御部31は、屋根部13における熱損失量を算出する熱損失量算出処理を実施するものである。操作部32は、その算出処理に際し必要な各種操作を行うもので、キーボードやマウス等を有して構成されている。表示部33は、熱損失量算出処理の結果等、各種情報を表示するもので、ディスプレイからなる。また、記憶部34には、熱損失量算出処理に必要な各種情報が記憶されている。
【0025】
続いて、熱損失量算出装置30により行われる熱損失量算出処理の流れについて
図4に基づき説明する。
図4は、熱損失量算出処理の流れを示す機能ブロック図である。なお、
図4中の各ブロック41~45,47~49は制御部31により実現されている。また、以下では、上述した建物10を対象に熱損失量算出処理を行うことを想定しており、熱損失量算出装置30の記憶部34には、建物10の設計データ(CADデータ)があらかじめ記憶されているものとする。
【0026】
図4に示すように、設計データ取得部41は、記憶部34より建物10の設計データを読み出して取得する。この場合、設計データ取得部41により取得される建物10の設計データには、屋根部13の設計データが含まれている。
【0027】
屋根面積算出部42は、設計データ取得部41により取得された建物10の設計データ、詳しくは屋根部13の設計データに基づき、屋根部13の面積Sを算出する。なお、屋根面積算出部42が外皮面積算出手段に相当する。
【0028】
大梁長さ算出部43は、設計データ取得部41により取得された屋根部13の設計データに基づき、屋根部13において熱橋部を構成するすべての天井大梁22Aの長さを算出する。
【0029】
大梁合計長さ算出部44は、大梁長さ算出部43により算出されたすべての天井大梁22Aの長さを合計することにより、それら天井大梁22Aの合計長さLtを算出する。なお、大梁長さ算出部43と大梁合計長さ算出部44とにより、合計長さ算出手段が構成されている。
【0030】
熱橋ピッチ算出部45は、屋根面積算出部42により算出された屋根部13の面積Sと、大梁合計長さ算出部44により算出された天井大梁22Aの合計長さLtとに基づき、屋根部13において天井大梁22Aが占める面積の比率を示す熱橋ピッチP(熱橋比率に相当)を算出する。熱橋ピッチPは、換言すると、屋根部13において熱橋部が占める面積の比率を示す。なお、熱橋ピッチ算出部45が熱橋比率算出手段に相当する。
【0031】
熱橋ピッチ算出部45では、屋根部13の面積Sを天井大梁22Aの合計長さLtで割ることにより熱橋ピッチPを算出する(P=S/Lt)。この場合、熱橋ピッチPとは、
図5に示すように、互いに等しい長さLaからなり、かつ合計長さが天井大梁22Aの合計長さLtと同じとなるn本の天井大梁Hを想定し、かつ、1辺の長さが天井大梁Hの長さLaと同じであり、かつ面積が屋根部13の面積Sと同じである四角形状の屋根部Yを想定した場合に、その屋根部Yにn本の天井大梁Hを上記1辺と直交する方向に等間隔(等ピッチ)で並べた際の天井大梁Hのピッチに相当する。
【0032】
屋根部13の熱橋ピッチPは、屋根部13の熱貫流率Uと相関関係を有する。屋根部13の熱橋ピッチPが小さいと、屋根部13において天井大梁22A(換言すると熱橋部)が占める割合が大きくなるため、屋根部13を介して屋内外の間で熱が伝わり易くなる。そのため、この場合、屋根部13の熱貫流率Uは大きくなる。一方、屋根部13の熱橋ピッチPが大きいと、屋根部13において天井大梁22Aが占める割合が小さくなるため、屋根部13を介して屋内外の間で熱が伝わりにくくなる。そのため、この場合、屋根部13の熱貫流率Uは小さくなる。なお、屋根部13の熱貫流率Uは、屋根部13における熱損失量Qを屋根部13の面積Sで割った値に相当する。
【0033】
屋根部13における熱橋ピッチPと熱貫流率Uとの対応関係は予め建物メーカにより予め求められており、その求められた対応関係が熱貫流率データベース46に記憶されている。具体的には、建物メーカで製造する屋根部13において想定される熱橋ピッチPごとに、その熱橋ピッチPと対応する熱貫流率Uが予め求められており、それら熱橋ピッチPごとの熱貫流率Uが上記対応関係として熱貫流率データベース46に記憶されている。なお、熱貫流率データベース46は記憶部34により構築され、記憶手段に相当する。
【0034】
熱貫流率算出部47は、熱橋ピッチ算出部45により算出された熱橋ピッチPと、熱貫流率データベース46に記憶された上記対応関係とに基づき、屋根部13の熱貫流率Uを算出する。具体的には、熱貫流率算出部47では、熱橋ピッチ算出部45により算出された熱橋ピッチPに対応する熱貫流率Uを熱貫流率データベース46の上記対応関係を参照して算出(抽出)する。なお、熱貫流率算出部47が熱貫流率算出手段に相当する。
【0035】
熱損失量算出部48は、熱貫流率算出部47により算出された屋根部13の熱貫流率Uと、屋根面積算出部42により算出された屋根部13の面積Sとに基づいて、屋根部13における熱損失量Qを算出する。具体的には、熱損失量算出部48では、屋根部13の熱貫流率Uと屋根部13の面積Sとを乗算することにより、屋根部13の熱損失量Qを算出する。なお、熱損失量算出部48が熱損失量算出手段に相当する。
【0036】
出力部49は、熱損失量算出部48により算出された屋根部13の熱損失量Qを表示部33に出力する。これにより、表示部33に屋根部13の熱損失量Qが表示される。なお、出力部49が、屋根部13の熱損失量Qを表示部33に出力することに代えて、又は加えて、プリンタ等、表示部33以外の出力先に屋根部13の熱損失量Qを出力するようにしてもよい。
【0037】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0038】
ユニット式建物10の設計データに基づき、建物10の屋根部13の面積が算出されるとともに、屋根部13におけるすべての天井大梁22Aの長さを合計した合計長さLtが算出される。そして、それら算出された屋根部13の面積Sと、天井大梁22Aの合計長さLtとに基づき、屋根部13において天井大梁22Aが占める面積の比率を示す熱橋ピッチPが算出される。熱貫流率データベース46には、屋根部13における熱橋ピッチPと熱貫流率Uとの対応関係が予め記憶されている。そして、上記算出された熱橋ピッチPと、熱貫流率データベース46に記憶されている上記対応関係とに基づき、屋根部13の熱貫流率Uが算出され、その算出された熱貫流率Uと上記算出された屋根部13の面積Sとに基づき、屋根部13における熱損失量Qが算出される。
【0039】
このような熱損失量の算出の流れでは、隣り合う建物ユニット20の対向する各天井大梁22Aをそれぞれ1つの熱橋部とみなして屋根部13の熱損失量が算出される。そのため、対向する2本の天井大梁22Aを含む熱橋モデルを用いて熱損失量を算出する場合と異なり、対向する天井大梁22Aの間隔ごとに熱橋モデルをわざわざ用意する必要がない。また、熱橋モデルとしては1つのパターンのみ(つまり1本の天井大梁22Aのパターンのみ)となっているため、熱損失量の算出の処理もそれほど煩雑となることがなく、結果として、熱損失量を容易に算出することが可能となる。
【0040】
ユニット式建物10に、隣り合う建物ユニット20の間隔が小さい小間隔部14と、上記間隔が大きい大間隔部15とが含まれている。すなわち、隣り合う建物ユニット20の対向する天井大梁22Aの間隔が小さい部分と大きい部分とが含まれている。このような建物10にあっても、上述したように、熱橋モデルとしては1パターンのみで熱損失量の算出を行えるため、熱損失量の算出を容易に行うことができる。
【0041】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0042】
・上記実施形態では、建物10の屋根部13における熱損失量を算出する場合に本発明を適用したが、建物10の一階部分の床部(外皮部に相当)における熱損失量を算出する場合に本発明を適用してもよい。この場合、一階床部に含まれる床大梁23のうち隣り合う建物ユニット20の対向する床大梁23(以下、床大梁23Aという)が、一階床部において熱橋部を構成する。そのため、床大梁23Aが熱橋構造材に相当する。
【0043】
この場合、上記実施形態における「屋根部13」を「一階床部」に置き換え、「天井大梁22A」を「床大梁23A」に置き換えることで、上記実施形態と同様の手順で、一階床部における熱損失量を算出することができる。
・建物10の外壁部(外皮部に相当)における熱損失量を算出する場合に本発明を適用してもよい。この場合、外壁部に含まれる柱21、天井大梁22及び床大梁23のうち、隣り合う建物ユニット20において互いに対向する柱21(以下、柱21Bという)と、上下に隣り合う建物ユニット20において互いに対向する天井大梁22(以下、天井大梁22Bという)及び床大梁23(以下、床大梁23Bという)とが、外壁部において熱橋部を構成する。そのため、柱21A,天井大梁22B及び床大梁23Bが熱橋構造材に相当する。
【0044】
この場合、上記実施形態における「屋根部13」を「外壁部」に置き換え、「天井大梁22A」を「柱21B,天井大梁22B及び床大梁23B」に置き換えることで、上記実施形態と同様の手順で、外壁部における熱損失量を算出することができる。
【符号の説明】
【0045】
10…建物、13…外皮部としての屋根部、20…建物ユニット、22…構造材としての天井大梁、22A…熱橋構造材としての天井大梁、30…熱損失量算出システムとしての熱損失量算出装置、31…制御部、42…外皮面積算出手段としての屋根面積算出部、45…熱橋比率算出手段としての熱橋ピッチ算出部、46…記憶手段としての熱貫流率データベース、47…熱貫流率算出手段としての熱貫流率算出部、48…熱損失量算出手段としての熱損失量算出部。