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特開2023-45127柱集合部における通気遮断構造の構築方法、及び柱集合部における通気遮断構造
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  • 特開-柱集合部における通気遮断構造の構築方法、及び柱集合部における通気遮断構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045127
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】柱集合部における通気遮断構造の構築方法、及び柱集合部における通気遮断構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/684 20060101AFI20230327BHJP
   E04B 1/348 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
E04B1/684 B
E04B1/348 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153360
(22)【出願日】2021-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】有富 由香
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DC02
2E001DD01
2E001EA06
2E001FA02
2E001GA66
2E001HD11
2E001HE01
2E001MA04
2E001NA07
2E001QA01
(57)【要約】
【課題】建物ユニットの柱が集合する柱集合部において、隣り合う柱間の隙間に通気遮断部材を好適に配設することができる柱集合部における通気遮断構造及び、その通気遮断構造の構築方法を提供する。
【解決手段】複数の柱21が集合する柱集合部16には、一対の気流止め42A,42Bが設けられている。各気流止め42A,42Bには、長さ方向に貫通する中空部43が設けられている。気流止め42Aは、各柱間隙間38a,38bに跨って配設され、自然状態において、幅が柱間隙間38a,38bの幅よりも大きく、厚みが柱間隙間38a,38bの幅よりも小さくなっている。気流止め42Aは、幅方向を柱間隙間38a,38bの幅方向に向けて配設され、幅方向に圧縮された状態とされている。気流止め42Bは、気流止め42Aと同様の構成で各柱間隙間38c,38dに跨って配設されている。各気流止め42A,42Bは、互いの交差部にて密着されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱及び大梁を有してなる複数の建物ユニットが並べて設けられることにより構成されたユニット式建物において、複数の前記建物ユニットの柱が集合する柱集合部に適用され、
前記柱集合部において隣り合う各柱の間の柱間隙間に当該柱間隙間を通じた上下方向への通気を遮断する通気遮断部材を配設することで通気遮断構造を構築する通気遮断構造の構築方法であって、
前記通気遮断部材は、弾性を有し、かつ所定の長さを有して形成されており、
前記通気遮断部材において、長さ方向と直交する第1方向の寸法は前記柱間隙間の幅よりも大きく、前記長さ方向及び前記第1方向とそれぞれ直交する第2方向の寸法は前記柱間隙間の幅よりも小さくなっており、
前記通気遮断部材には、前記通気遮断部材を長さ方向に貫通する中空部が形成されており、
前記中空部に棒状の操作用治具を前記中空部から一部はみ出すようにして挿入する治具挿入工程と、
前記はみ出した部分を持って前記操作用治具を操作しながら、前記通気遮断部材を、その長さ方向を前記柱間隙間の奥行き方向に向け、かつ前記第2方向を前記柱間隙間の幅方向に向けた状態で前記柱間隙間に挿し入れる挿し入れ工程と、
前記挿し入れ工程の後、前記操作用治具を操作して、前記通気遮断部材を長さ方向周りに回転させることで、前記通気遮断部材の前記第1方向を前記柱間隙間の幅方向に向け、前記通気遮断部材を前記第1方向に圧縮された状態とする向き変更工程と、
前記向き変更工程の後、前記操作用治具を前記中空部から抜き取る治具抜取工程と、
を備える、柱集合部における通気遮断構造の構築方法。
【請求項2】
前記中空部は、その断面が四角形状とされており、
前記操作用治具は、四角棒状に形成されている、請求項1に記載の柱集合部における通気遮断構造の構築方法。
【請求項3】
前記中空部は、その断面が前記第1方向に長い長方形状とされており、
前記操作用治具は、その断面が前記中空部の断面形状に対応した長方形状とされている、請求項2に記載の柱集合部における通気遮断構造の構築方法。
【請求項4】
前記中空部の断面における前記第2方向の寸法は、前記操作用治具の断面における短辺方向の寸法と同じか又はそれよりも小さくなっており、
前記中空部の断面における前記第1方向の寸法は、前記操作用治具の断面における長辺方向の寸法よりも大きくなっている、請求項3に記載の柱集合部における通気遮断構造の構築方法。
【請求項5】
4つの前記建物ユニットの柱が集合する前記柱集合部に適用され、
前記柱集合部には、隣り合う各柱の間ごとに形成された4つの前記柱間隙間を含む平面視十字状の十字空間部が形成され、その十字空間部に一対の前記通気遮断部材を互いに交差するように配設することで通気遮断構造を構築する通気遮断構造の構築方法であって、
前記4つの柱間隙間には、奥行き方向が互いに同一方向とされた2つの第1柱間隙間と、奥行き方向が前記第1柱間隙間の奥行き方向と直交しかつ互いに同一方向とされた2つの第2柱間隙間とが含まれており、
前記一対の通気遮断部材のうち一方は、前記第1方向の寸法が前記第1柱間隙間の幅よりも大きく、かつ前記第2方向の寸法が前記第1柱間隙間の幅よりも小さい第1通気遮断部材であり、他方は、前記第1方向の寸法が前記第2柱間隙間の幅よりも大きく、かつ前記第2方向の寸法が前記第2柱間隙間の幅よりも小さい第2通気遮断部材であり、
前記第1通気遮断部材について、
前記治具挿入工程として、前記第1通気遮断部材の前記中空部に前記操作用治具としての第1操作用治具を挿入する第1治具挿入工程を行い、
前記挿し入れ工程として、前記第1操作用治具を操作しながら、前記第1通気遮断部材を、その長さ方向を前記第1柱間隙間の奥行き方向に向け、かつ前記第2方向を前記第1柱間隙間の幅方向に向けた状態で、前記各第1柱間隙間に跨って挿し入れる第1挿し入れ工程を行い、
前記向き変更工程として、前記第1操作用治具を操作して前記第1通気遮断部材を長さ方向周りに回転させることで、前記第1通気遮断部材の前記第1方向を前記第1柱間隙間の幅方向に向ける第1向き変更工程を行い、
前記第2通気遮断部材について、
前記治具挿入工程として、前記第2通気遮断部材の前記中空部に前記操作用治具としての第2操作用治具を挿入する第2治具挿入工程を行い、
前記挿し入れ工程として、前記第2操作用治具を操作しながら、前記第2通気遮断部材を、その長さ方向を前記第2柱間隙間の奥行き方向に向け、かつ前記第2方向を前記第2柱間隙間の幅方向に向けた状態で、前記各第2柱間隙間に跨って挿し入れる第2挿し入れ工程を行い、
前記向き変更工程として、前記第2操作用治具を操作して前記第2通気遮断部材を長さ方向周りに回転させることで、前記第2通気遮断部材の前記第1方向を前記第2柱間隙間の幅方向に向ける第2向き変更工程を行い、
さらに、前記各向き変更工程の後、前記第1通気遮断部材及び前記第2通気遮断部材のうち少なくともいずれか一方を、当該一方に挿入された前記操作用治具を操作して上下方向に移動させることで前記各通気遮断部材を互いの交差部にて密着させる密着工程を行い、
前記治具抜取工程として、前記第1通気遮断部材の前記中空部から前記第1操作用治具を抜き取る第1治具抜取工程と、前記第2通気遮断部材の前記中空部から前記第2操作用治具を抜き取る第2治具抜取工程とを行う、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の柱集合部における通気遮断構造の構築方法。
【請求項6】
前記第1治具抜取工程及び前記第2治具抜取工程はいずれも前記密着工程の後に行う、請求項5に記載の柱集合部における通気遮断構造の構築方法。
【請求項7】
柱及び大梁を有してなる複数の建物ユニットが並べて設けられることにより構成されたユニット式建物において、複数の前記建物ユニットの柱が集合する柱集合部に適用され、
前記柱集合部において隣り合う各柱の間の柱間隙間には、前記柱間隙間を通じた上下方向への通気を遮断する通気遮断部材が設けられている柱集合部における通気遮断構造であって、
前記通気遮断部材は、所定の長さを有して形成され、その長さ方向を前記柱間隙間の奥行き方向に向けて前記柱間隙間に配設されており、
前記通気遮断部材には、前記通気遮断部材を長さ方向に貫通する中空部が形成されており、
前記通気遮断部材は、弾性を有しており、自然状態では長さ方向と直交する第1方向の寸法が前記柱間隙間の幅よりも大きく、長さ方向及び前記第1方向とそれぞれ直交する第2方向の寸法が前記柱間隙間の幅よりも小さくなっており、
前記通気遮断部材は、前記第1方向を前記柱間隙間の幅方向に向けた状態で前記柱間隙間に配設されており、その配設状態において前記第1方向に圧縮された状態とされている、柱集合部における通気遮断構造。
【請求項8】
4つの前記建物ユニットの柱が集合する前記柱集合部に適用され、
前記柱集合部には、隣り合う各柱の間ごとに形成された4つの前記柱間隙間を含む平面視十字状の十字空間部が形成され、その十字空間部には一対の前記通気遮断部材が互いに交差して配設されている通気遮断構造であって、
前記4つの柱間隙間には、奥行き方向が互いに同一方向とされた2つの第1柱間隙間と、奥行き方向が前記第1柱間隙間の奥行き方向と直交しかつ互いに同一方向とされた2つの第2柱間隙間とが含まれており、
前記一対の通気遮断部材のうちの一方である第1通気遮断部材は、自然状態において、前記第1方向の寸法が前記第1柱間隙間の幅よりも大きく、前記第2方向の寸法が前記第1柱間隙間の幅よりも小さくなっており、
前記一対の通気遮断部材のうちの他方である第2通気遮断部材は、自然状態において、前記第1方向の寸法が前記第2柱間隙間の幅よりも大きく、前記第2方向の寸法が前記第2柱間隙間の幅よりも小さくなっており、
前記第1通気遮断部材は、長さ方向を前記第1柱間隙間の奥行き方向に向け、かつ前記第1方向を前記第1柱間隙間の幅方向に向けた状態で、前記各第1柱間隙間に跨って配設されており、
前記第2通気遮断部材は、長さ方向を前記第2柱間隙間の奥行き方向に向け、かつ前記第1方向を前記第2柱間隙間の幅方向に向けた状態で、前記各第2柱間隙間に跨って配設されており、
前記各通気遮断部材は、互いの交差部において密着されている、請求項7に記載の柱集合部における通気遮断構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユニット式建物において、隣り合う建物ユニットの柱が集合する柱集合部における通気遮断構造、及びその通気遮断構造を構築する際の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物としては、建物ユニットを複数並べて構築されているユニット式建物がある。ユニット式建物では、複数の建物ユニットの柱が集合する柱集合部において、隣り合う柱の間に隙間が生じている。そのため、その隙間を通じて空気が上下に流れるのを防止すべく、気密処理を行う必要がある(例えば特許文献1)。かかる気密処理としては、例えば、グラスウール等の断熱材を柱間の隙間に押し込んで、隙間を塞ぐ方法が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-300778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、柱間の隙間は比較的小さいため、グラスウール等の断熱材を手で押し込んで隙間に入れようとしても、手が隙間に入らず、断熱材を上手く隙間に入れられないおそれがある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、建物ユニットの柱が集合する柱集合部において、隣り合う柱間の隙間に通気遮断部材を好適に配設することができる柱集合部における通気遮断構造及び、その通気遮断構造の構築方法を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、第1の発明の柱集合部における通気遮断構造の構築方法は、柱及び大梁を有してなる複数の建物ユニットが並べて設けられることにより構成されたユニット式建物において、複数の前記建物ユニットの柱が集合する柱集合部に適用され、前記柱集合部において隣り合う各柱の間の柱間隙間に当該柱間隙間を通じた上下方向への通気を遮断する通気遮断部材を配設することで通気遮断構造を構築する通気遮断構造の構築方法であって、前記通気遮断部材は、弾性を有し、かつ所定の長さを有して形成されており、前記通気遮断部材において、長さ方向と直交する第1方向の寸法は前記柱間隙間の幅よりも大きく、前記長さ方向及び前記第1方向とそれぞれ直交する第2方向の寸法は前記柱間隙間の幅よりも小さくなっており、前記通気遮断部材には、前記通気遮断部材を長さ方向に貫通する中空部が形成されており、前記中空部に棒状の操作用治具を前記中空部から一部はみ出すようにして挿入する治具挿入工程と、前記はみ出した部分を持って前記操作用治具を操作しながら、前記通気遮断部材を、その長さ方向を前記柱間隙間の奥行き方向に向け、かつ前記第2方向を前記柱間隙間の幅方向に向けた状態で前記柱間隙間に挿し入れる挿し入れ工程と、前記挿し入れ工程の後、前記操作用治具を操作して、前記通気遮断部材を長さ方向周りに回転させることで、前記通気遮断部材の前記第1方向を前記柱間隙間の幅方向に向け、前記通気遮断部材を前記第1方向に圧縮された状態とする向き変更工程と、前記向き変更工程の後、前記操作用治具を前記中空部から抜き取る治具抜取工程と、を備える。
【0007】
第1の発明によれば、まず、通気遮断部材の中空部に棒状の操作用治具が挿入される。そして、その操作用治具が操作されることで、通気遮断部材が、その長さ方向を柱間隙間の奥行き方向に向けた状態で柱間隙間に挿し入れられる。この際、通気遮断部材は、第2方向を柱間隙間の幅方向に向けた状態で挿し入れられる。ここで、通気遮断部材の第2方向の寸法は柱間隙間の幅よりも小さくなっているため、この場合、通気遮断部材を柱間隙間に容易に挿し入れることができる。
【0008】
続いて、操作用治具が操作されることで、通気遮断部材が長さ方向周りに回転され、それにより通気遮断部材の第1方向が柱間隙間の幅方向に向けられる。ここで、通気遮断部材の第1方向の寸法は柱間隙間の幅よりも大きくなっているため、通気遮断部材は、第1方向に圧縮された状態で配置される。その後、操作用治具が通気遮断部材の中空部から抜き取られる。
【0009】
以上のように、第1の発明によれば、手の入らない柱間隙間に対して通気遮断部材を好適に配設することができる。
【0010】
第2の発明の柱集合部における通気遮断構造の構築方法は、第1の発明において、前記中空部は、その断面が四角形状とされており、前記操作用治具は、四角棒状に形成されている。
【0011】
第2の発明によれば、操作用治具を操作して通気遮断部材を長さ方向周りに回転させる際に、操作用治具だけが回転してしまう、いわゆる空回りが生じるのを好適に防止することができる。
【0012】
第3の発明の柱集合部における通気遮断構造の構築方法は、第2の発明において、前記中空部は、その断面が前記第1方向に長い長方形状とされており、前記操作用治具は、その断面が前記中空部の断面形状に対応した長方形状とされている。
【0013】
第3の発明によれば、操作用治具を操作して通気遮断部材を長さ方向周りに回転させる際に、操作用治具の空回りが生じるのをより確実に防止することができる。また、中空部の断面が第1方向に長い長方形状とされているため、通気遮断部材における中空部の周囲の厚みを均一にし易い。そのため、通気遮断部材に局所的な変形(潰れなど)が生じるのを抑制しながら、上記の効果を得ることができる。
【0014】
第4の発明の柱集合部における通気遮断構造の構築方法は、第3の発明において、前記中空部の断面における前記第2方向の寸法は、前記操作用治具の断面における短辺方向の寸法と同じか又はそれよりも小さくなっており、前記中空部の断面における前記第1方向の寸法は、前記操作用治具の断面における長辺方向の寸法よりも大きくなっている。
【0015】
第4の発明によれば、中空部の断面における第1方向の寸法が、操作用治具の断面における長辺方向の寸法よりも大きくなっている。この場合、操作用治具を操作して、通気遮断部材を柱間隙間に第1方向に圧縮された状態で配設した際に、操作用治具に第1方向への圧縮力が作用するのを抑制することができる。そのため、中空部から操作用治具を抜き取る際に、比較的容易に抜き取ることが可能となる。
【0016】
その一方、中空部の断面における第2方向の寸法は、操作用治具の断面における短辺方向の寸法と同じか又はそれよりも小さくなっている。この場合、中空部における長辺側の周面においては操作用治具が密着状態とされるため、中空部の断面における第1方向の寸法が操作用治具の断面における長辺方向の寸法より大きくされた上記の構成にあっても、操作用治具と通気遮断部材との一体感を保つことができる。そのため、操作用治具を操作して通気遮断部材を柱間隙間に挿し入れる際に、操作用治具が通気遮断部材に対してずれてしまうのを防止することができる。
【0017】
第5の発明の柱集合部における通気遮断構造の構築方法は、第1乃至第4のいずれかの発明において、4つの前記建物ユニットの柱が集合する前記柱集合部に適用され、前記柱集合部には、隣り合う各柱の間ごとに形成された4つの前記柱間隙間を含む平面視十字状の十字空間部が形成され、その十字空間部に一対の前記通気遮断部材を互いに交差するように配設することで通気遮断構造を構築する通気遮断構造の構築方法であって、前記4つの柱間隙間には、奥行き方向が互いに同一方向とされた2つの第1柱間隙間と、奥行き方向が前記第1柱間隙間の奥行き方向と直交しかつ互いに同一方向とされた2つの第2柱間隙間とが含まれており、前記一対の通気遮断部材のうち一方は、前記第1方向の寸法が前記第1柱間隙間の幅よりも大きく、かつ前記第2方向の寸法が前記第1柱間隙間の幅よりも小さい第1通気遮断部材であり、他方は、前記第1方向の寸法が前記第2柱間隙間の幅よりも大きく、かつ前記第2方向の寸法が前記第2柱間隙間の幅よりも小さい第2通気遮断部材であり、前記第1通気遮断部材について、前記治具挿入工程として、前記第1通気遮断部材の前記中空部に前記操作用治具としての第1操作用治具を挿入する第1治具挿入工程を行い、前記挿し入れ工程として、前記第1操作用治具を操作しながら、前記第1通気遮断部材を、その長さ方向を前記第1柱間隙間の奥行き方向に向け、かつ前記第2方向を前記第1柱間隙間の幅方向に向けた状態で、前記各第1柱間隙間に跨って挿し入れる第1挿し入れ工程を行い、前記向き変更工程として、前記第1操作用治具を操作して前記第1通気遮断部材を長さ方向周りに回転させることで、前記第1通気遮断部材の前記第1方向を前記第1柱間隙間の幅方向に向ける第1向き変更工程を行い、前記第2通気遮断部材について、前記治具挿入工程として、前記第2通気遮断部材の前記中空部に前記操作用治具としての第2操作用治具を挿入する第2治具挿入工程を行い、前記挿し入れ工程として、前記第2操作用治具を操作しながら、前記第2通気遮断部材を、その長さ方向を前記第2柱間隙間の奥行き方向に向け、かつ前記第2方向を前記第2柱間隙間の幅方向に向けた状態で、前記各第2柱間隙間に跨って挿し入れる第2挿し入れ工程を行い、前記向き変更工程として、前記第2操作用治具を操作して前記第2通気遮断部材を長さ方向周りに回転させることで、前記第2通気遮断部材の前記第1方向を前記第2柱間隙間の幅方向に向ける第2向き変更工程を行い、さらに、前記各向き変更工程の後、前記第1通気遮断部材及び前記第2通気遮断部材のうち少なくともいずれか一方を、当該一方に挿入された前記操作用治具を操作して上下方向に移動させることで前記各通気遮断部材を互いの交差部にて密着させる密着工程を行い、前記治具抜取工程として、前記第1通気遮断部材の前記中空部から前記第1操作用治具を抜き取る第1治具抜取工程と、前記第2通気遮断部材の前記中空部から前記第2操作用治具を抜き取る第2治具抜取工程とを行う。
【0018】
4つの建物ユニットの柱が集合する柱集合部では、各柱間隙間に奥行き方向の一方側からしかアクセスすることができないため、柱間隙間に通気遮断部材を配設するのが特に困難であると考えられる。その点、第5の発明では、かかる柱集合部において、第1通気遮断部材を第1操作用治具を用いて2つの第1柱間隙間に跨って配設し、第2通気遮断部材を第2操作用治具を用いて2つの第2柱間隙間に跨って配設するようにしている。そして、これら各通気遮断部材を互いの交差部にて密着させるようにしている。これにより、4つの柱が集合する柱集合部において、各通気遮断部材を、4つの柱間隙間を含む十字空間部に好適に配設することができる。
【0019】
第6の発明の柱集合部における通気遮断構造の構築方法は、第5の発明において、前記第1治具抜取工程及び前記第2治具抜取工程はいずれも前記密着工程の後に行う。
【0020】
第6の発明によれば、各通気遮断部材の中空部にそれぞれ操作用治具を挿入した状態で各通気遮断部材を密着させることができる。そのため、各通気遮断部材を密着させ易くすることができる。
【0021】
第7の発明の柱集合部における通気遮断構造は、柱及び大梁を有してなる複数の建物ユニットが並べて設けられることにより構成されたユニット式建物において、複数の前記建物ユニットの柱が集合する柱集合部に適用され、前記柱集合部において隣り合う各柱の間の柱間隙間には、前記柱間隙間を通じた上下方向への通気を遮断する通気遮断部材が設けられている柱集合部における通気遮断構造であって、前記通気遮断部材は、所定の長さを有して形成され、その長さ方向を前記柱間隙間の奥行き方向に向けて前記柱間隙間に配設されており、前記通気遮断部材には、前記通気遮断部材を長さ方向に貫通する中空部が形成されており、前記通気遮断部材は、弾性を有しており、自然状態では長さ方向と直交する第1方向の寸法が前記柱間隙間の幅よりも大きく、長さ方向及び前記第1方向とそれぞれ直交する第2方向の寸法が前記柱間隙間の幅よりも小さくなっており、前記通気遮断部材は、前記第1方向を前記柱間隙間の幅方向に向けた状態で前記柱間隙間に配設されており、その配設状態において前記第1方向に圧縮された状態とされている。
【0022】
第7の発明によれば、通気遮断部材の中空部に棒状の操作用治具を挿入し、その挿入状態で操作用治具を操作して通気遮断部材を隣り合う柱の間の柱間隙間に配設することができる。通気遮断部材は、自然状態において第1方向の寸法が柱間隙間の幅よりも大きく、第2方向の寸法が柱間隙間の幅よりも小さくなっている。そのため、通気遮断部材を柱間隙間に配設する際には、まず、通気遮断部材の第2方向を柱間隙間の幅方向に向けた状態で柱間隙間に挿し入れるようにする。この場合、通気遮断部材を柱間隙間に容易に挿し入れることができる。次に、通気遮断部材を長さ方向周りに回転させることで、通気遮断部材の第1方向を柱間隙間の幅方向に向けるようにする。これにより、通気遮断部材が第1方向に圧縮された状態で柱間隙間に配設される。そして、その後、通気遮断部材の中空部から操作用治具を抜き取る。
【0023】
以上のように、第7の発明によれば、手の入らない柱間隙間に対して通気遮断部材を好適に配設することができる。
【0024】
第8の発明の柱集合部における通気遮断構造は、第7の発明において、4つの前記建物ユニットの柱が集合する前記柱集合部に適用され、前記柱集合部には、隣り合う各柱の間ごとに形成された4つの前記柱間隙間を含む平面視十字状の十字空間部が形成され、その十字空間部には一対の前記通気遮断部材が互いに交差して配設されている通気遮断構造であって、前記4つの柱間隙間には、奥行き方向が互いに同一方向とされた2つの第1柱間隙間と、奥行き方向が前記第1柱間隙間の奥行き方向と直交しかつ互いに同一方向とされた2つの第2柱間隙間とが含まれており、前記一対の通気遮断部材のうちの一方である第1通気遮断部材は、自然状態において、前記第1方向の寸法が前記第1柱間隙間の幅よりも大きく、前記第2方向の寸法が前記第1柱間隙間の幅よりも小さくなっており、前記一対の通気遮断部材のうちの他方である第2通気遮断部材は、自然状態において、前記第1方向の寸法が前記第2柱間隙間の幅よりも大きく、前記第2方向の寸法が前記第2柱間隙間の幅よりも小さくなっており、前記第1通気遮断部材は、長さ方向を前記第1柱間隙間の奥行き方向に向け、かつ前記第1方向を前記第1柱間隙間の幅方向に向けた状態で、前記各第1柱間隙間に跨って配設されており、前記第2通気遮断部材は、長さ方向を前記第2柱間隙間の奥行き方向に向け、かつ前記第1方向を前記第2柱間隙間の幅方向に向けた状態で、前記各第2柱間隙間に跨って配設されており、前記各通気遮断部材は、互いの交差部において密着されている。
【0025】
第8の発明によれば、4つの建物ユニットの柱が集合する柱集合部において、4つの柱間隙間のうち、2つの第1柱間隙間に跨って第1通気遮断部材が配設され、2つの第2柱間隙間に跨って第2通気遮断部材が配設されている。ここで、各通気遮断部材には中空部が形成されているため、中空部に操作用治具を挿入することで、操作用治具を操作して各通気遮断部材を柱間隙間に配設することができる。
【0026】
また、第1通気遮断部材は、自然状態において、第1方向の寸法が第1柱間隙間の幅よりも大きく、第2方向の寸法が第1柱間隙間の幅よりも小さくなっている。また、第2通気遮断部材は、自然状態において、第1方向の寸法が第2柱間隙間の幅よりも大きく、第2方向の寸法が第2柱間隙間の幅よりも小さくなっている。これにより、各通気遮断部材を柱間隙間に配設する際には、上記第7の発明で説明した手順で、通気遮断部材を柱間隙間に挿し入れ、その後、通気遮断部材の向きを変更することで、各通気遮断部材を好適に柱間隙間に配設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】建物ユニットの配置を示す平面図。
図2】建物ユニットの構成を示す斜視図。
図3】建物の構成を示す断面図。
図4】柱集合部における通気遮断構造を示す斜視図。
図5】柱集合部における通気遮断構造を示す横断面図。
図6】(a)が気流止めを示す斜視図であり、(b)が気流止めを柱間隙間に配設する際に用いる操作用治具を示す斜視図である。
図7】柱集合部における通気遮断構造を構築する際の作業手順を説明するための図。
図8】(a)が一対の断熱材付きの気流止めを示す斜視図であり、(b)が一対の断熱材付きの気流止めを組み合わせた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、住宅等の建物が二階建てのユニット式建物として構築されている。建物の一階部分及び二階部分はそれぞれ複数の建物ユニットが並べられることで構成されている。ここでは、まず、建物ユニット20について図2を参照しながら説明する。図2は建物ユニット20の構成を示す斜視図である。
【0029】
図2に示すように、建物ユニット20は、その四隅に配設される4本の柱21と、各柱21の上端部及び下端部をそれぞれ連結する各4本の天井大梁22及び床大梁23とを備えている。それら柱21、天井大梁22及び床大梁23により直方体状の枠体が形成されている。柱21は四角筒状の角形鋼よりなり、その横断面が正方形状とされている。また、天井大梁22及び床大梁23は断面コ字状の溝形鋼よりなり、その開口部を水平方向の内側に向けて配置されている。
【0030】
建物ユニット20の長辺部の相対する天井大梁22の間には、所定間隔で複数の天井小梁25が架け渡されている。また、建物ユニット20の長辺部の相対する床大梁23の間には、所定間隔で複数の床小梁26が架け渡されている。例えば、天井小梁25はリップ溝形鋼よりなり、床小梁26は角形鋼よりなる。天井小梁25によって天井面材27が支持され、床小梁26によって床面材28が支持されている。
【0031】
次に、複数の建物ユニット20により構築された建物10について図1及び図に基づき説明する。図1は建物ユニット20の配置を示す平面図であり、図3は建物10の構成を示す断面図である。なお、図1及び図3はいずれも建物10の一階部分を示している。
【0032】
図1に示すように、建物10の一階部分には、複数の建物ユニット20が横並びに設けられている。これらの建物ユニット20は、各柱21が基礎11の上に載置されることにより設置されている(図3参照)。隣り合う建物ユニット20の柱21が集合する部分は柱集合部15,16となっている。柱集合部15,16としては、2つの建物ユニット20の柱21が集合する柱集合部15と、4つの建物ユニット20の柱21が集合する柱集合部16とがある。
【0033】
図3に示すように、建物10の一階部分には、複数の部屋31が設けられている。部屋31は、床面材28により床下空間32と仕切られており、天井面材27により天井裏空間33と仕切られている。床面材28は、床大梁23の上面側に根太34を介して取り付けられ、天井面材27は、天井大梁22の下面側に野縁35を介して取り付けられている。なお、図3では、柱集合部16の周辺を示している。
【0034】
柱集合部15,16を構成する各柱21は、床面材28よりも下方に延びているとともに、天井面材27よりも上方に延びている。柱集合部15において隣り合う柱21の間には、所定の隙間(以下、柱間隙間37という)が形成されており、柱集合部16において隣り合う柱21の間には、所定の隙間(以下、柱間隙間38という)が形成されている。各柱間隙間37,38は、床面材28よりも下方において床下空間32に通じているとともに、天井面材27よりも上方において天井裏空間33に通じている。
【0035】
柱集合部15には、柱間隙間37を通じた空気の流れを遮断する気流止め41が設けられている。また、柱集合部16には、柱間隙間38を通じた空気の流れを遮断する気流止め42が設けられている。これらの気流止め41,42は通気遮断部材に相当する。これにより、各柱集合部15,16では、柱間隙間37,38を通じた床下空間32と天井裏空間33との間の空気の流れが阻止されている。そこで、以下においては、各柱集合部15,16における通気遮断構造について説明する。
【0036】
まず、柱集合部16における通気遮断構造について図3に加え図4図6を用いながら説明する。図4は、柱集合部16における通気遮断構造を示す斜視図であり、図5は、同構造を示す横断面図である。図6は、(a)が気流止め41を示す斜視図であり、(b)が気流止め41を柱間隙間38に配設する際に用いる操作用治具50を示す斜視図である。
【0037】
図3図5に示すように、柱集合部16には、隣り合う柱21の間ごとに4つの柱間隙間38(38a~38d)が形成されている。各柱間隙間38a~38dは、平面視における柱集合部16の中央部において互いに連通されている。そのため、柱集合部16には、それら各柱間隙間38a~38dを含む平面視十字状の十字空間部39が形成されている。
【0038】
各柱間隙間38a~38dには、奥行き方向が互いに同一方向とされた2つの柱間隙間38a,38bと、奥行き方向が互いに同一方向とされた2つの柱間隙間38c,38dとが含まれている。各柱間隙間38a,38bの奥行き方向と各柱間隙間38c,38dの奥行き方向とは互いに直交する方向となっている。また、各柱間隙間38a~38dの幅Wはいずれも同じ大きさとされている。なお、柱間隙間38の奥行き方向とは、柱間隙間38の幅方向及び上下方向のいずれにも直交する方向のことである。また、各柱間隙間38a,38bが第1柱間隙間に相当し、各柱間隙間38c,38dが第2柱間隙間に相当する。
【0039】
柱集合部16には、柱集合部16を構成する各柱21をまとめて囲む化粧パネル45が設けられている。化粧パネル45は、四角環状をなしており、各柱21の外面に取り付けられている。詳しくは、化粧パネル45は、周方向に分割された複数のパネル部からなり、それら各パネル部が柱21の外面に取り付けられることにより構成されている。
【0040】
柱集合部16には、十字空間部39を通じた空気の流れを遮断する一対の気流止め42が、床側と天井側とにそれぞれ設けられている。床側の一対の気流止め42と、天井側の一対の気流止め42とはいずれも、十字空間部39において十字をなして配置され、化粧パネル45の内側に位置している。
【0041】
一対の気流止め42はいずれも同じ構成を有している。気流止め42は、弾性及び気密性を有する材料により形成され、例えばEPDM等のゴム材料により形成されている。そのため、気流止め42は、圧縮変形可能とされているとともに、圧縮変形した状態から元の大きさに復元可能となっている。気流止め42は、図6(a)に示すように、四角棒状に形成され、その長さL1が柱21の幅を2倍した値と柱間隙間38の幅Wとを足し合わせた値に設定されている。
【0042】
気流止め42は、その断面、詳しくは長さ方向と直交する横断面が長方形状をなしている。気流止め42の幅W1は柱間隙間38の幅Wよりも大きくなっており、気流止め42の厚みT1は柱間隙間38の幅Wよりも小さくなっている。なお、気流止め42の幅方向と気流止め42の厚み方向とは互いに直交する方向となっており、これら各方向はいずれも気流止め42の長さ方向と直交する方向となっている。この場合、気流止め42の幅方向が第1方向に相当し、気流止め42の厚み方向が第2方向に相当する。
【0043】
気流止め42には、気流止め42を長さ方向に貫通する中空部43が形成されている。中空部43は、気流止め42を柱間隙間38に配設する際に用いる操作用治具50を挿入するための挿入孔となっている。ここで、操作用治具50について説明すると、操作用治具50は、図6(b)に示すように、四角棒状をなしており、例えば木製又は金属製の角材からなる。操作用治具50の長さL2は、気流止め41の長さL1よりも長くなっている。また、操作用治具50は、その断面、詳しくは長さ方向と直交する横断面が長方形状をなしている。そのため、操作用治具50の幅W2は、操作用治具50の厚みT2よりも大きくなっている。なお、操作用治具50の幅W2が、「操作用治具の断面における長辺方向の寸法」に相当し、操作用治具50の厚みT2が、「操作用治具の断面における短辺方向の寸法」に相当する。
【0044】
中空部43は、その断面、詳しくは気流止め42の長さ方向と直交する横断面が長方形状をなしている。この場合、中空部43の断面は、操作用治具50の断面形状に対応した長方形状とされている。そのため、中空部43における気流止め42の幅方向の寸法S1(以下、開口幅寸法S1という)は、中空部43における気流止め42の厚み方向の寸法H1(以下、開口高さ寸法H1という)よりも大きくなっている。詳しくは、中空部43の開口幅寸法S1は操作用治具50の幅W2よりも大きくなっており、中空部43の開口高さ寸法H1は操作用治具50の厚みT2と同じか又はそれよりも小さくなっている。なお、中空部43の開口幅寸法S1が、「中空部の断面における第1方向の寸法」に相当し、中空部43の開口高さ寸法H1が、「中空部の断面における第2方向の寸法」に相当する。
【0045】
ここで、気流止め42に関する上述の各種寸法、すなわち気流止め42の幅W1及び厚みT1の各寸法と、中空部43の開口幅寸法S1及び開口高さ寸法H1とはいずれも、気流止め42に外力が付与されていない自然状態における寸法となっている。
【0046】
図3図5に示すように、一対の気流止め42は、上述したように十字空間部39において十字をなすように配設されている。一対の気流止め42のうち、一方の気流止め42Aは、十字空間部39において各柱間隙間38a,38bに跨って配設され、他方の気流止め42Bは、各柱間隙間38c,38dに跨って配設されている。
【0047】
気流止め42Aは、その長さ方向を柱間隙間38a,38bの奥行き方向に向け、かつ、その幅方向を柱間隙間38a,38bの幅方向に向けた状態で配設されている。ここで、上述したように、気流止め42Aの幅W1は柱間隙間38a,38bの幅Wよりも大きくなっているため、この場合、気流止め42Aは、各柱間隙間38a,38bにおいて幅方向に圧縮された状態で配置されている。また、気流止め42Aは、その長さ方向の両端部がそれぞれ化粧パネル45の内面に密着している。
【0048】
気流止め42Bは、その長さ方向を柱間隙間38c,38dの奥行き方向に向け、かつ、その幅方向を柱間隙間38c,38dの幅方向に向けた状態で配設されている。ここで、気流止め42Bの幅W1は柱間隙間38c,38dの幅Wよりも大きくなっているため、この場合、気流止め42Bは、各柱間隙間38c,38dにおいて幅方向に圧縮された状態で配置されている。また、気流止め42Bは、その長さ方向の両端部がそれぞれ化粧パネル45の内面に密着している。
【0049】
各気流止め42A,42Bは、十字空間部39の中央部において互いに交差しており、その交差部において上下に重なった状態で互いに密着している。この場合、気流止め42Aが下側、気流止め42Bが上側に位置している。なお、気流止め42Aが第1通気遮断部材に相当し、気流止め42Bが第2通気遮断部材に相当する。
【0050】
続いて、柱集合部15における通気遮断構造について図3に基づき説明する。
【0051】
図3に示すように、柱集合部15において隣り合う各柱21の間の柱間隙間37は、その幅が柱集合部16における柱間隙間38の幅Wと同じとなっている。また、柱間隙間37には、上述したように気流止め41が配設されている。気流止め41は、その長さが柱21の幅と同じとなっており、その長さ方向を柱間隙間37の奥行き方向に向けて柱間隙間37に配設されている。気流止め41は、その長さが柱集合部16における気流止め42と相違するものの、それ以外の構成は気流止め42と同じとなっている。したがって、気流止め41は、自然状態において、幅が柱間隙間37の幅よりも大きくなっており、そのため、柱間隙間37において幅方向に圧縮された状態で配設されている。また、気流止め41には、操作用治具50を挿入するための中空部46も形成されている。
【0052】
続いて、上述した柱集合部15,16における通気遮断構造を構築する際の作業手順について説明する。この作業は、施工現場において、一階部分の各建物ユニット20を設置した後に行う。まず、柱集合部16における通気遮断構造を構築する際の作業手順について図7に基づき説明する。図7は、かかる作業手順を説明するための図である。
【0053】
まず、図7(a)に示すように、気流止め42Aの中空部43に操作用治具50を挿入する第1治具挿入工程を行う。この工程では、操作用治具50を中空部43から一部はみ出すようにして中空部43に挿入する。操作用治具50において上記はみ出した部分は、操作用治具50を操作する際に把持される把持部50aとなる。なお、以下では、気流止め42Aの中空部43に挿入される操作用治具50の符号にAを付し、後述する気流止め42Bの中空部43に挿入される操作用治具50と区別することとする。また、操作用治具50Aが第1操作用治具に相当する。
【0054】
次に、図7(b)に示すように、把持部50aを持って操作用治具50Aを操作することで、気流止め42Aを柱集合部16の各柱間隙間38a,38bに跨って挿し入れる第1挿し入れ工程を行う。この工程では、気流止め42Aの長さ方向を柱間隙間38a,38bの奥行き方向に向け、かつ気流止め42Aの厚み方向を柱間隙間38a,38bの幅方向に向けた状態で、気流止め42Aを各柱間隙間38a,38bに挿し入れる。上述したように、気流止め42Aの厚みT1は柱間隙間38a,38bの幅Wよりも小さくなっているため、この場合、気流止め42Aを柱間隙間38a,38bに容易に挿し入れることができる。
【0055】
次に、図7(c)に示すように、操作用治具50Aを操作して、気流止め42Aを長さ方向周りに回転させることで、気流止め42Aの幅方向を柱間隙間38a,38bの幅方向に向ける第1向き変更工程を行う。上述したように、気流止め42Aの幅W1は柱間隙間38a,38bの幅Wよりも大きくなっているため、この場合、気流止め42Aは、各柱間隙間38a,38bにおいて幅方向に圧縮された状態で配設される。
【0056】
なお、第1向き変更工程により配設された気流止め42Aの位置が、所定の配設位置に対して上下にずれている場合には、第1向き変更工程の後、操作用治具50Aを操作して気流止め42Aを上下に移動させることで所定の配設位置に配置する。
【0057】
上述した各工程(第1治具挿入工程、第1挿し入れ工程及び第1向き変更工程)により、気流止め42Aを各柱間隙間38a,38bに跨って配設した後、気流止め42Bを各柱間隙間38c,38dに跨って配設するための各工程を行う。ここで、気流止め42Bを配設する際の各工程は、気流止め42Aを配設する際の各工程と基本的に同様であるため、以下では、簡単な説明にとどめる。
【0058】
まず、気流止め42Bの中空部43に操作用治具50(以下、操作用治具50Bという)を挿入する第2治具挿入工程を行う。次に、操作用治具50B(第2操作用治具に相当)を操作して気流止め42Bを各柱間隙間38c,38dに跨って挿し入れる第2挿し入れ工程を行う。この工程では、気流止め42Bの長さ方向を柱間隙間38c,38dの奥行き方向に向け、かつ気流止め42の厚み方向を柱間隙間38c,38dの幅方向に向けた状態で、気流止め42Bを柱間隙間38c,38dに挿し入れる。また、この工程では、気流止め42Bを気流止め42Aの上方において各柱間隙間38c,38dに挿し入れる。次に、操作用治具50Bを操作して、気流止め42Bを長さ方向周りに回転させることで、気流止め42Bの幅方向を柱間隙間38c,38dの幅方向に向ける第2向き変更工程を行う。これにより、気流止め42Bが柱間隙間38c,38dにおいて幅方向に圧縮された状態で配設される。
【0059】
次に、図7(d)に示すように、操作用治具50Bを操作して、気流止め42Bを下方に移動させることで、気流止め42Bを気流止め42Aと互いの交差部において密着させる密着工程を行う。この工程では、気流止め42Aがずれないように操作用治具50Aを持って気流止め42Aを保持しながら、両気流止め42A,42Bを互いに密着させる。
【0060】
密着工程の後、気流止め42Aの中空部43から操作用治具50Aを抜き取る第1治具抜取工程と、気流止め42Bの中空部43から操作用治具50Bを抜き取る第2治具抜取工程とを行う。これにより、柱集合部16における通気遮断構造が構築される。
【0061】
続いて、柱集合部15における通気遮断構造を構築する際の流れについて簡単に説明する。
【0062】
まず、気流止め41の中空部46に操作用治具50を挿入する治具挿入工程を行う。この場合、操作用治具としては、必ずしも気流止め42と同じ操作用治具50を用いる必要はなく、操作用治具50よりも長さの短い操作用治具を用いてもよい。
【0063】
次に、操作用治具50を操作して、気流止め41を柱集合部15の柱間隙間37に挿し入れる挿し入れ工程を行う。この工程では、気流止め41の長さ方向を柱間隙間37の奥行き方向に向け、かつ気流止め41の幅方向を柱間隙間37の幅方向に向けた状態で、気流止め41を柱間隙間37に挿し入れる。
【0064】
次に、操作用治具50を操作して、気流止め41を長さ方向周りに回転させることで、気流止め41の幅方向を柱間隙間37の幅方向に向ける向き変更工程を行う。これにより、気流止め41は、柱間隙間37において幅方向に圧縮された状態で配設される。その後、気流止め41の中空部46から操作用治具50を抜き取る治具抜取工程を行う。これにより、柱集合部15における通気遮断構造が構築される。
【0065】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0066】
上述したように、柱集合部16における通気遮断構造を構築するにあたり、気流止め42Aを操作用治具50Aを操作して柱間隙間38a,38bに配設し、気流止め42Bを操作用治具50Bを操作して柱間隙間38c,38dに配設した。気流止め42Aの配設に際しては、まず気流止め42Aの厚み方向を柱間隙間38a,38bの幅方向に向けた状態で気流止め42Aを柱間隙間38a,38bに挿し入れ、その後、気流止め42Aを長さ方向周りに回転させることで、気流止め42Aの幅方向を柱間隙間38a,38bの幅方向に向けるようにした。また、気流止め42Bの配設に関しても、これと同様の手順で行うようにした。これらにより、各気流止め42A,42Bを柱間隙間38a~38dにおいて幅方向に圧縮された状態で配設することができる。よって、以上より、柱集合部16において手の入らない柱間隙間38a~38dに対して気流止め42A,42Bを好適に配設することができる。
【0067】
また、柱集合部15における通気遮断構造を構築するにあたっても、上記同様の手順で、操作用治具50を用いて柱間隙間37に気流止め41を好適に配設することができる。
【0068】
4つの柱21が集合する柱集合部16では、各柱間隙間38に奥行き方向の一方側からしかアクセスすることができないため、柱間隙間38に気流止め42A,42Bを配設するのが特に困難であると考えられる。その点、かかる柱集合部16に、上述した気流止め42A,42Bの配設方法を適用しているため、かかる柱集合部16においても、気流止め42A,42Bを好適に配設することができる。
【0069】
また、気流止め42Aを2つの柱間隙間38a,38bに跨って配設し、気流止め42Bを2つの柱間隙間38c,38dに跨って配設するようにしたことで、4つの柱間隙間38a~38dに個別に気流止め42を配設する場合と比べ、気流止め42を配設する作業を大いに容易とすることができる。
【0070】
気流止め41,42の中空部46,43を断面四角形状に形成し、操作用治具50を四角棒状に形成した。これにより、操作用治具50を操作して気流止め41,42を長さ方向周りに回転させる際に、操作用治具50だけが回転してしまう、いわゆる空回りが生じるのを好適に防止することができる。
【0071】
中空部46,43の断面を気流止め41,42の幅方向に長い長方形状とし、操作用治具50の断面を中空部46,43の断面形状に対応した長方形状とした。この場合、操作用治具50を操作して気流止め41,42を長さ方向周りに回転させる際に、操作用治具50の空回りが生じるのをより確実に防止することができる。また、中空部46,43の断面が気流止め41,42の幅方向に長い長方形状とされているため、気流止め41,42における中空部46,43の周囲の厚みを均一にし易い。そのため、気流止め41,42に局所的な変形(潰れなど)が生じるのを抑制しながら、上記の効果を得ることができる。
【0072】
中空部46,43の開口幅寸法S1を操作用治具50の幅W2よりも大きくした。この場合、操作用治具50を操作して、気流止め41,42を柱間隙間37,38に幅方向に圧縮された状態で配設した際に、操作用治具50に上記幅方向への圧縮力が作用するのを抑制することができる。そのため、中空部46,43から操作用治具50を抜き取る際に、比較的容易に抜き取ることができる。
【0073】
その一方、中空部46,43の開口高さ寸法H1を操作用治具50の厚みT2と同じか又はそれよりも小さくした。この場合、中空部46,43における長辺側の周面においては操作用治具50が密着状態とされるため、中空部46,43の開口幅寸法S1が操作用治具50の幅W2よりも大きくされた上記の構成にあっても、操作用治具50と気流止め41,42との一体感を保つことができる。そのため、操作用治具50を操作して気流止め41,42を柱間隙間37,38に挿し入れる際に、操作用治具50が気流止め41,42に対してずれてしまうのを防止することができる。
【0074】
各気流止め42A,42Bを互いの交差部で密着させた後、各気流止め42A,42Bの中空部43から操作用治具50A,50Bを抜き取るようにした。これにより、各気流止め42A,42Bの中空部43にそれぞれ操作用治具50A,50Bを挿入した状態で各気流止め42A,42Bを密着させることができる。このため、各気流止め42A,42Bを密着させ易くすることができる。
【0075】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0076】
(1)例えば、図8(a)に示すように、各気流止め51(51A,51B)の厚み方向の片面に断熱材52を貼り付けてもよい。断熱材52は、例えばウレタン樹脂により形成され、気流止め51の上面に貼り付けられている。この場合、十字空間部39における通気の遮断に加え、断熱性の向上を図ることができる。断熱材52は、気流止め51と同じ長さで、かつ気流止め51と同じ幅で形成されている。また、断熱材52は、気流止め51の厚みよりも小さい厚みで形成され、断熱材52の厚みと気流止め51の厚みとの和が柱間隙間38a~38dの幅よりも小さくされている。この場合、気流止め51と断熱材52とを有して通気遮断部材が構成されている。
【0077】
また、図8(a)の例では、各気流止め51A,51Bのうち一方の気流止め51Bに切り欠き部54が形成されている。切り欠き部54は、気流止め51Bにおいて気流止め51Aと交差する交差部に形成され、気流止め51Bの下面及び両側面にてそれぞれ開放されている。詳しくは、気流止め51Bの上記交差部においては、気流止め51Bの下面から中空部43の上面までの範囲が除去されており、それにより切り欠き部54が形成されている。
【0078】
図8(b)に示すように、気流止め51Bの切り欠き部54には、気流止め51Aと断熱材52とが入り込んでいる。各気流止め51A,51Bは、この状態で互いに密着されている。詳しくは、気流止め51Bにおける切り欠き部54を挟んだ両側の面が気流止め51Aの側面に密着されている。これにより、気流止め51に断熱材52を貼り付けた構成においても、各気流止め51A,51Bの交差部において気密性を確保することが可能となる。
【0079】
上述した断熱材付きの通気遮断構造を構築する際には、まず、上記実施形態と同様の手順で、断熱材52付きの各気流止め51A,51Bについて、治具挿入工程、挿し入れ工程及び向き変更工程をそれぞれ行う。これにより、断熱材52付きの各気流止め51A,51Bが柱間隙間38a~38dに圧縮状態で配設される。そして、その後、気流止め51Bの中空部43から操作用治具50Bを抜き取る第2治具抜取工程を行う。その後、操作用治具50Aを操作して、気流止め51Aを上方に移動させ気流止め51Bの切り欠き部54に入り込ませることにより、各気流止め51A,51Bを密着させる密着工程を行う。その後、気流止め51Aの中空部43から操作用治具50Aを抜き取る第1治具抜取工程を行う。これにより、断熱材付きの通気遮断構造が構築される。
【0080】
(2)上記実施形態では、密着工程の際、操作用治具50Bを操作して気流止め42Bを下方に移動させることで、各気流止め42A,42Bを密着させたが、これを変更して、操作用治具50Aを上方に移動させることで、各気流止め42A,42Bを密着させるようにしてもよい。また、各操作用治具50A,50Bを操作して気流止め42Bを下方に、気流止め42Aを上方に移動させることで、各気流止め42A,42Bを密着させるようにしてもよい。
【0081】
(3)上記実施形態では、密着工程の後、第1治具抜取工程及び第2治具抜取工程をそれぞれ行ったが、例えば第1治具抜取工程については密着工程の前に行ってもよい。その場合にも、操作用治具50Bを操作することで、各気流止め42A,42Bを密着させることができる。また、第1治具抜取工程を密着工程の前に行う場合としては、例えば第1治具抜取工程を第1向き変更工程の直後に行うことが考えられる。その場合、第1治具抜取工程で気流止め42Aから抜き取った操作用治具50を、その後の第2治具挿入工程において気流止め42Bに用いることが可能となる。そのため、操作用治具50の流用が可能となる。
【0082】
(4)気流止め41,42の断面形状は必ずしも長方形状である必要はなく、例えば楕円形状であってもよい。この場合、気流止め41,42の断面の長軸方向(第1方向に相当)の寸法を柱間隙間37,38の幅よりも大きくし、気流止め41,42の断面の短軸方向(第2方向に相当)の寸法を柱間隙間37,38の幅よりも小さくする。そして、気流止め41,42の断面の長軸方向を柱間隙間37,38の幅方向に向けた状態で、気流止め41,42を柱間隙間37,38に配設するようにする。
【0083】
(5)上記実施形態では、中空部43,46の断面を長方形状としたが、例えば正方形状としてもよい。この場合にも、向き変更工程の際に、操作用治具50が空回りするのを好適に防止することができる。また、中空部43,46の断面を楕円形状等、四角形状以外の形状としてもよい。
【0084】
(6)上記実施形態では、柱集合部16における各柱間隙間38a~38dの幅Wが同じであったため、柱間隙間38a,38bに配設される気流止め42Aと、柱間隙間38c,38dに配設される気流止め42Bとを同じ構成としたが、柱間隙間38a,38b(第1柱間隙間)の幅と、柱間隙間38c,38d(第2柱間隙間)の幅とが互いに異なる場合には、柱間隙間38a,38bに配設する気流止め(以下、第1気流止めという)と、柱間隙間38c,38dに配設する気流止め(以下、第2気流止めという)とを、異なる寸法で形成する必要がある。この場合、第1気流止めについては、その幅を柱間隙間38a,38bの幅よりも大きくし、その厚みを柱間隙間38a,38bの幅よりも小さくする。また、第2気流止めについては、その幅を柱間隙間38c,38dの幅よりも大きくし、その厚みを柱間隙間38c,38dの幅よりも小さくすればよい。なお、第1気流止めが第1通気遮断部材に相当し、第2気流止めが第2通気遮断部材に相当する。
【0085】
(7)上記実施形態では、建物10の一階部分における柱集合部15,16に本発明の通気遮断構造を適用したが、建物10の二階部分における柱集合部に本発明の通気遮断構造を適用してもよい。
【符号の説明】
【0086】
10…建物、15…柱集合部、16…柱集合部、20…建物ユニット、21…柱、22…大梁としての天井大梁、23…大梁としての床大梁、37…柱間隙間、38a,38b…第1柱間隙間としての柱間隙間、38c,38d…第2柱間隙間としての柱間隙間、39…十字空間部、41…通気遮断部材としての気流止め、42…通気遮断部材としての気流止め、42A…第1通気遮断部材としての気流止め、42B…第2通気遮断部材としての気流止め、43…中空部、50…操作用治具。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8