IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機株式会社の特許一覧 ▶ 三菱電機照明株式会社の特許一覧

特開2023-45136照明システム、照明器具および照明制御装置
<>
  • 特開-照明システム、照明器具および照明制御装置 図1
  • 特開-照明システム、照明器具および照明制御装置 図2
  • 特開-照明システム、照明器具および照明制御装置 図3
  • 特開-照明システム、照明器具および照明制御装置 図4
  • 特開-照明システム、照明器具および照明制御装置 図5
  • 特開-照明システム、照明器具および照明制御装置 図6
  • 特開-照明システム、照明器具および照明制御装置 図7
  • 特開-照明システム、照明器具および照明制御装置 図8
  • 特開-照明システム、照明器具および照明制御装置 図9
  • 特開-照明システム、照明器具および照明制御装置 図10
  • 特開-照明システム、照明器具および照明制御装置 図11
  • 特開-照明システム、照明器具および照明制御装置 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045136
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】照明システム、照明器具および照明制御装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 47/16 20200101AFI20230327BHJP
   H05B 47/155 20200101ALI20230327BHJP
   H05B 47/17 20200101ALI20230327BHJP
   H05B 47/11 20200101ALI20230327BHJP
   A61M 21/02 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
H05B47/16
H05B47/155
H05B47/17
H05B47/11
A61M21/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153376
(22)【出願日】2021-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390014546
【氏名又は名称】三菱電機照明株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 健吾
【テーマコード(参考)】
3K273
【Fターム(参考)】
3K273PA01
3K273PA03
3K273PA04
3K273QA07
3K273QA13
3K273QA30
3K273RA02
3K273RA05
3K273RA12
3K273SA04
3K273SA06
3K273SA35
3K273SA38
3K273SA46
3K273TA03
3K273TA05
3K273TA15
3K273TA22
3K273TA27
3K273TA28
3K273TA52
3K273TA54
3K273TA62
3K273UA17
3K273UA22
3K273UA27
(57)【要約】
【課題】使用者の生体リズムを整えることができる照明システム、照明器具および照明制御装置を得ることを目的とする。
【解決手段】本開示に係る照明システムは、異なる発光スペクトルを有する複数の光源と、前記複数の光源の出力を制御するコントローラと、を備え、前記コントローラは、朝から夜にかけての時間経過に伴って前記複数の光源から得られる等価メラノピック照度を低下させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる発光スペクトルを有する複数の光源と、
前記複数の光源の出力をそれぞれ制御して、前記複数の光源から得られる等価メラノピック照度を変化させるコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、朝から夜にかけての時間経過に伴って前記複数の光源から得られる等価メラノピック照度を低下させることを特徴とする照明システム。
【請求項2】
前記等価メラノピック照度をEML、時間をt、定数をcとしたとき、前記等価メラノピック照度はEML=arctan(t)+cに従って変化することを特徴とする請求項1に記載の照明システム。
【請求項3】
前記複数の光源の色温度は同じであることを特徴とする請求項1または2に記載の照明システム。
【請求項4】
前記コントローラは、始業時間から終業時間まで、時間経過に伴って前記等価メラノピック照度を低下させることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の照明システム。
【請求項5】
9時から13時までの前記等価メラノピック照度は240メラノピックルクス以上であることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の照明システム。
【請求項6】
20時以降の前記等価メラノピック照度は120メラノピックルクス以下であることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の照明システム。
【請求項7】
前記等価メラノピック照度は、13時から20時の間に変曲点を有することを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の照明システム。
【請求項8】
前記等価メラノピック照度は、朝から夜にかけての時間経過に伴って連続的に低下することを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の照明システム。
【請求項9】
前記コントローラは、前記複数の光源の各々についてメラノピック比率と照度の情報を保持し、外部から入力された設定値と前記等価メラノピック照度が一致するように前記情報を用いて前記複数の光源の出力を制御することを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の照明システム。
【請求項10】
前記設定値が入力されるユーザインターフェース部を備えることを特徴とする請求項9に記載の照明システム。
【請求項11】
前記設定値は複数の時間帯についてそれぞれ入力され、
前記コントローラは、前記複数の時間帯の各々で前記設定値と前記等価メラノピック照度が一致するように前記複数の光源の出力を制御することを特徴とする請求項9または10に記載の照明システム。
【請求項12】
ユーザインターフェース部を備え、
前記ユーザインターフェース部は、前記等価メラノピック照度の変化の速さを設定するための設定部を有することを特徴とする請求項1から9の何れか1項に記載の照明システム。
【請求項13】
ユーザインターフェース部を備え、
前記ユーザインターフェース部は、時間経過に伴って前記等価メラノピック照度を低下させるモードと、前記複数の光源の照度が一定に制御されるモードを切り替えるための切り替え部を有することを特徴とする請求項1から9の何れか1項に記載の照明システム。
【請求項14】
ユーザインターフェース部を備え、
前記ユーザインターフェース部は、前記等価メラノピック照度を低下させる際に、前記複数の光源から得られる色温度と照度のどちらを優先して変化させるかを設定するための設定部を有することを特徴とする請求項1から9の何れか1項に記載の照明システム。
【請求項15】
異なる発光スペクトルを有する複数の光源と、
前記複数の光源を点灯させる点灯回路と、
前記点灯回路を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、朝から夜にかけての時間経過に伴って前記複数の光源から得られる等価メラノピック照度を低下させるように前記点灯回路を制御することを特徴とする照明器具。
【請求項16】
異なる発光スペクトルを有する複数の光源から得られる等価メラノピック照度を朝から夜にかけての時間経過に伴って低下させる制御部を備えることを特徴とする照明制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、照明システム、照明器具および照明制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、所定空間に設けられた照明負荷の相関色温度を調節する調色、および照明負荷の光出力を可変として、所定空間の照度を調整する調光を行う照明制御装置が開示されている。この照明制御装置は、午前中の所定時刻から正午付近までの第1の時間帯において、照明負荷の相関色温度を第1の相関色温度に調節し、所定空間の照度を第1の照度に調節する。また照明制御装置は、第1の時間帯以降に設定した午後の第2の時間帯において、照明負荷の相関色温度を、第1の相関色温度から第2の相関色温度まで時間の経過に伴って低下させる。さらに照明制御装置は第2の時間帯において、所定空間の照度を、第1の照度から第2の照度まで時間の経過に伴って低下させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5895193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、メラトニンの分泌を考慮して各時間帯で好ましい色温度と確保すべき照度を規定している。しかしながら、近年、色温度が低くてもメラトニンの分泌抑制に寄与度が高い波長が発せられる発光装置が発売されている。よって、特許文献1のように相関色温度と確保すべき照度を想定した照明制御では、生体リズムに好ましい光環境を得ることが出来ない可能性がある。
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたもので、使用者の生体リズムを整えることができる照明システム、照明器具および照明制御装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る照明システムは、異なる発光スペクトルを有する複数の光源と、前記複数の光源の出力をそれぞれ制御して、前記複数の光源から得られる等価メラノピック照度を変化させるコントローラと、を備え、前記コントローラは、朝から夜にかけての時間経過に伴って前記複数の光源から得られる等価メラノピック照度を低下させる。
【0007】
本開示に係る照明器具は、異なる発光スペクトルを有する複数の光源と、前記複数の光源を点灯させる点灯回路と、前記点灯回路を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、朝から夜にかけての時間経過に伴って前記複数の光源から得られる等価メラノピック照度を低下させるように前記点灯回路を制御する。
【0008】
本開示に係る照明制御装置は、異なる発光スペクトルを有する複数の光源から得られる等価メラノピック照度を朝から夜にかけての時間経過に伴って低下させる制御部を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る照明システム、照明器具および照明制御装置では、朝から夜にかけての時間経過に伴って複数の光源から得られる等価メラノピック照度が低下する。このため、使用者の生体リズムを整えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】サーカディアン応答と視感度応答の曲線を示す図である。
図2】実施の形態1に係る照明システムを示す図である。
図3】実施の形態1に係る照明システムを示すブロック図である。
図4】実施の形態1に係る照明器具を示すブロック図である。
図5】等価メラノピック照度の時間変化の例を示す図である。
図6】等価メラノピック照度の時間変化の例を示す図である。
図7】等価メラノピック照度の時間変化の例を示す図である。
図8】初期設定の例を示す図である。
図9】等価メラノピック照度の設定の例を示す図である。
図10】ユーザインターフェース部に等価メラノピック照度の時間変化が表示された状態を示す図である。
図11】照度および色温度の設定の例を示す図である。
図12】色温度が同じでメラノピック比率が異なる光源の発光スペクトルの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施の形態に係る照明システム、照明器具および照明制御装置について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。以下に示す形態は本開示の技術思想を具体化するためのものであって、本開示を限定するものではない。なお、各図面が示す部材の大きさ、位置関係等は、説明を明確にするために誇張されていることがある。また、色名と色度座標との関係、光の波長範囲と単色光の色名との関係等は、JISZ8110に従う。
【0012】
実施の形態1.
まず、照明が人体に与える影響について説明する。近年、人の作業環境を形成する際に、作業環境が人体に与える影響を重視する動きがある。その一つに、IWBI(International WELL Building Institute)が定めるWELL認証(Well Building Standard)がある。WELL認証では、オフィスなどの建築物を、空気、水、食物、光、快適性などの項目から評価し、基準を満たすことで認証が与えられる。
【0013】
WELL認証における光の項目では、視環境への配慮、サーカディアンへの配慮、器具または太陽光のグレアへの配慮、演色性等が評価される。このように、人が作業する室内空間を照らす照明には、演色性に優れていることに限らず、人体の影響に配慮することが求められている。
【0014】
また、人のサーカディアンリズムは1日より長く約25時間である。これを24時間周期に合わせなければ、リズム周期が1日とずれる。リズム周期を24時間に合わせるための同調因子として、光が重要な役割を果たしている。太陽の光を浴びることで人の体内時計を24時間に調整することができる。これにより、人は朝起きて夜寝るといった1日のリズムの中で生活している。
【0015】
つまり、人間の体内には、24時間周期で生活するために、光を利用した同調機能が備わっている。具体的には、脳の視床下部に視交叉上核という非常に小さい領域がある。これがサーカディアンリズムを統率する体内時計の役割を担っている。また、この視交叉上核に光信号を与える細胞として、網膜上の内因性光感受性網膜神経節細胞(intrinsically photosensitive Retinal Ganglion Cell)がある。内因性光感受性網膜神経節細胞を以下ではipRGCと呼ぶ。
【0016】
ipRGCはメラノプシンという光受容タンパク質を含む。メラノプシンはサーカディアンリズムの光同調に関与することが明らかにされている。メラノプシンは、光の波長に応じた吸収特性を有しており、そのピークは480nm~490nm付近にある。
【0017】
また、メラノプシンは睡眠促進ホルモンであるメラトニンの分泌または抑制にも関与すると考えられている。例えばipRGCへの刺激量が増えることによって、メラトニンの分泌が抑制されると考えられている。通常、体内のメラトニンの分泌ピークは夜間に訪れ、メラトニンが分泌されることで睡眠が促進される。従って、日中はメラトニンの分泌は抑制されている。
【0018】
上述のWELL認証では、サーカディアンに配慮した照明設計であるかを評価するために、等価メラノピック照度(Equivalent Melanopic Lux)が導入されている。等価メラノピック照度を以下ではEMLと呼ぶことがある。等価メラノピック照度EMLは、サーカディアンリズムに影響する明るさの定量的単位である。EMLは、照度×メラノピック比率(式(1))で求められる。以下ではメラノピック比率(MeranopicRatio)をMRと呼ぶことがある。
【0019】
また、メラノピック比率MRは下記の式(2)で求められる。
【0020】
【数1】
【0021】
式(2)において、Lightは照明器具による光の分光分布、Circadianは上述した480nm~490nm付近にピークを有するメラノプシンの分光感度特性に基づくサーカディアン応答、Visualは視感度応答を示す。図1は、サーカディアン応答と視感度応答の曲線を示す図である。なお、ipRGCのピーク感度はおよそ480nmである。一方、図1に示されるサーカディアン応答は490nmにピークを有する。これは、長い波長の光を優先して伝達する成人の眼球の水晶体を考慮したことによる。
【0022】
図2は、実施の形態1に係る照明システム100を示す図である。オフィスの空間50で作業をする人は、椅子に座り机で作業をしている間、照明器具40による照明光を浴びる。このため、作業に適した一定以上の照度が得られるように照明器具40が配置されることが好ましい。例えば、空間50で一般的な事務作業が行われる場合、机上照度が500lx以上、より好ましくは750lx以上となるように照明光を照射する。
【0023】
なお、このような照度の基準は、建築物の用途または作業内容によって異なる。例えば、オフィス、工場、学校、商業施設などによって基準は異なることがある。さらに、国によっても基準が異なることがある。例えば日本国にはJISZ9110という基準がある。
【0024】
照明システム100は、オフィスの居室など空間50において、照明を行うシステムである。なお、空間50は、老人福祉施設などにおける談話室または食堂など、複数の利用者が同時に滞在することができる場所であっても良い。また、空間50は自宅の書斎などのプライベートな場所であっても良い。
【0025】
照明システム100は、ユーザインターフェース部10と、照明器具40と、照明器具40を制御するコントローラ20を備える。コントローラ20は照明制御装置に該当する。照明システム100は複数の照明器具40を備え、コントローラ20は複数の照明器具40を制御する。後述するように、コントローラ20は、各照明器具40が有する複数の光源45a、45bの出力をそれぞれ制御して、複数の光源45a、45bから得られるEMLを変化させる。照明制御システム100が備える照明器具40は1つ以上であれば良い。コントローラ20は例えば空間50の天井に設けられる。
【0026】
また、オフィスビルには、空間50の他に、一般にオフィスビルを管理するための管理室が設けられる。管理室には、昇降機、空調、照明などのビル設備を管理するための設備が設けられる。コントローラ20は管理室に設けられても良い。
【0027】
図3は、実施の形態1に係る照明システム100を示すブロック図である。まず、ユーザインターフェース部10について説明する。ユーザインターフェース部10は、例えば電池駆動のタブレットである。ユーザインターフェース部10は、スマートフォンまたはタブレット端末などの汎用装置に専用のアプリケーションがインストールされることで実現されても良い。
【0028】
ユーザインターフェース部10は、居室のフロア管理者などが照明器具40を制御するために操作する装置であっても良い。ユーザインターフェース部10は、照明システム100に対する専用装置であっても良い。この場合、ユーザインターフェース部10は空間50内に設置される。ユーザインターフェース部10は、空間50以外の場所に設置されても良い。
【0029】
ユーザインターフェース部10は、操作受付部11と、制御部12と、通信部13と、表示部14と、記憶部15とを備える。
【0030】
操作受付部11は、後述するスケジュール設定のための設定操作などの操作を受け付ける。操作受付部11は、タッチパネルまたはハードウェアボタンなどによって実現される。
【0031】
制御部12は、操作受付部11によって受け付けられた設定操作に基づいて、スケジュール設定情報を記憶部15に記憶する。スケジュール設定情報は、通信部13によりコントローラ20に送信される。スケジュール設定情報に基づき、コントローラ20は照明器具を制御する。
【0032】
また、制御部12は、操作受付部11によって開始操作が受け付けられると、通信部13に開始指示信号を送信させる。これにより、コントローラ20はスケジュール動作を開始する。また、制御部12は、操作受付部11によって停止操作が受け付けられると、通信部13に停止指示信号を送信させる。これによりコントローラ20はスケジュール動作を停止する。制御部12は、例えばマイクロコンピュータまたはプロセッサによって実現される。
【0033】
通信部13は、制御部12の指示に基づいて、スケジュール設定情報、開始指示信号および停止指示信号をコントローラ20に送信する。通信部13は、具体的には、ユーザインターフェース部10がコントローラ20と通信を行うための通信回路または通信モジュールである。通信部13によって行われる通信は、有線通信であっても良いし、無線通信であっても良い。通信に用いられる通信規格についても特に限定されない。
【0034】
ユーザインターフェース部10とコントローラ20は常に通信し続けていなくても良い。通信部13が一度コントローラ20にスケジュール設定情報、開始指示信号または停止指示信号等の制御指令を送ると、コントローラ20は制御指令を記憶して、その後は制御指令に従って照明器具40を制御する。
【0035】
表示部14は、制御部12の制御に基づいて、設定者がスケジュール設定を行うために視認する表示画面を表示する。表示部14は、例えば、液晶パネルまたは有機ELパネルなどによって実現される。
【0036】
記憶部15は、制御部12によってスケジュール設定情報が記憶される。記憶部15には、制御部12が実行する制御プログラムも記憶される。また、ユーザインターフェース部10がスマートフォンまたはタブレット端末などの汎用の情報端末によって実現される場合、記憶部15には汎用の情報端末をユーザインターフェース部10として動作させるための専用のアプリケーションプログラムがインストールされる。記憶部15は、例えば不揮発性メモリ等の半導体メモリである。
【0037】
次に、コントローラ20について説明する。コントローラ20は、照明器具40の複数の光源45a、45bの出力を制御する照明制御装置である。コントローラ20には、例えば商用電源が供給されている。コントローラ20は、照明器具40と無線または有線で接続される。コントローラ20は、ユーザインターフェース部10からの制御指令に応じて、照明器具40に対して後述する点灯回路42の出力を制御する制御信号を送信する。コントローラ20は、通信部22、26と、照明制御部23と、計時部24と、記憶部25とを備える。
【0038】
通信部22は、ユーザインターフェース部10によって送信されるスケジュール設定情報、開始指示信号、および停止指示信号を受信する。通信部22は、具体的には、コントローラ20がユーザインターフェース部10と通信を行うための通信回路または通信モジュールである。
【0039】
照明制御部23は、通信部22によって受信されたスケジュール設定情報を記憶部25に記憶する。その後、通信部22によって開始指示信号が受信されると、記憶部25に記憶されたスケジュール設定情報に基づいて照明器具40の光源部45の発光を制御する。後述する通り、照明制御部23は、複数の光源45a、45bから得られるEMLを朝から夜にかけての時間経過に伴って低下させる。照明制御部23は、照明器具40が発する光の空間50における照度および色温度の少なくとも一方を制御してEMLを制御する。
【0040】
照明制御部23は、例えば、プロセッサ、マイクロコンピュータ、または専用回路などによって実現される。なお、スケジュール設定情報は、例えば、時刻と、当該時刻におけるEMLである。スケジュール設定情報は、光源部45が発する光の強度の値または色温度の値であっても良い。照明制御部23は、記憶部25に記憶されたスケジュール設定情報を読み出して使用する。
【0041】
計時部24は、現在時刻を計測する計時装置であり、計測した時刻を照明制御部23に通知する。計時部24は、照明制御部23が照明器具40をスケジュール設定情報に従って発光させるために用いられる。計時部24は、具体的には、リアルタイムクロックなどであるが、どのような態様であっても良い。
【0042】
記憶部25は、スケジュール設定情報などが記憶される記憶装置である。記憶部25には、照明制御部23が実行する制御プログラムも記憶される。記憶部25は、例えば不揮発性メモリ等の半導体メモリである。
【0043】
通信部26は、コントローラ20が照明器具40と通信を行うための通信回路または通信モジュールである。通信部26によって行われる通信は、有線通信であっても良いし、無線通信であっても良い。通信に用いられる通信規格についても特に限定されない。
【0044】
図4は、実施の形態1に係る照明器具40を示すブロック図である。照明器具40は、点灯装置41と光源部45とを備える。照明器具40は、例えば空間50の天井に取り付けられて空間50を照明するベースライトである。照明器具40は例えば平面視で矩形であるが、平面視で円形であっても良い。照明器具40は、シーリングライト、ダウンライトまたはスポットライトであっても良い。点灯装置41は、光源部45が有する複数の光源45a、45bを点灯させる点灯回路42と、点灯回路42を制御する制御部43と、外部と通信する通信部44とを備える。
【0045】
通信部44はコントローラ20からの制御信号を受信する。通信部44は、照明器具40がコントローラ20と通信を行うための通信回路または通信モジュールである。
【0046】
制御部43は、通信部44が受信した制御信号に応じて点灯回路42を制御する。具体的には、制御部43は、朝から夜にかけての時間経過に伴って複数の光源45a、45bから得られるEMLを低下させるように点灯回路42を制御する。制御部43は、例えばプロセッサ、マイクロコンピュータまたは専用回路などによって実現される。また、制御部43は記憶部を有する。記憶部には、制御部43が実行する制御プログラムが記憶される。記憶部は、例えば不揮発性メモリ等の半導体メモリである。
【0047】
点灯回路42は、光源部45を点灯させる電力を供給する電源回路である。点灯回路42は例えばスイッチング回路である。
【0048】
光源部45は、異なる発光スペクトルを有する複数の光源45a、45bを有する。図4では2種の光源45a、45bが示されているが、光源部45は異なる発光スペクトルを有する3つ以上の光源を有しても良い。光源45a、45bは、互いに異なるメラノピック比率MRの光を発する。光源45a、45bのMRは、例えば1.2と0.4である。光源45a、45bは例えばLEDから構成される。光源45a、45bの各々は、例えば発光素子としてLEDを用いたSMD(SurfaceMountDevice)型の発光モジュールである。光源45a、45bの各々は、COB(ChipOnBoard)型の発光モジュールであっても良い。
【0049】
制御部43は、点灯回路42を介して複数の光源45a、45bの発光状態を独立に制御できる。発光状態は、例えば色温度と光束である。制御部43は、複数の光源45a、45bの出力バランスを制御して光源部45が発する光のEMLを制御できる。
【0050】
次に、EMLの制御方法について説明する。EMLは、MRと照度から式(1)を用いて算出できる。まず、各光源45a、45bのMRを算出する方法について説明する。MRは、各光源の出力と式(2)から算出できる。まず、各光源の出力を例えば5nm刻みで取得する。出力は製造元が示す仕様値から取得しても良く、分光計で測定しても良い。次に、各光源の出力を図1に示されるサーカディアン応答と視感度応答の曲線の値で積算して、メラノピック反応と視覚反応を導出する。最後にメラノピック反応の合計を視覚反応の合計で除算して、指数1.218で積算する。
【0051】
また、各光源の照度を取得する。照度の測定の例として、床上1.2mの鉛直面での計測を行う。これは、おおむね座位における人の目線の高さに該当する。また、部屋の中心の位置で計測を行う。各箇所の反射率は天井70%、壁50%、床10%を想定している。
【0052】
このようにして得られたMRと照度は、例えばコントローラ20に予め設定される。コントローラ20の記憶部25は、複数の光源45a、45bの各々について、MRと照度の情報を保持している。照明制御部23は、この情報を用いてEMLを算出する。照明制御部23は、外部から入力された設定値と、複数の光源45a、45bから得られるEMLが一致するように、MRと照度の情報を用いて複数の光源45a、45bの出力を制御する。この設定値は、ユーザインターフェース部10から入力される。
【0053】
光源45a、45bは互いに異なるMRを有する。光源45a、45bのそれぞれの出力つまり光束を変えることでEMLを制御できる。光源部45のEMLを制御する際には、光源部45の照度が一定になるように制御しても良いし、光源部45の照度を変化させても良い。
【0054】
これまでの研究により、日中に強い光を浴びることにより生体リズムが整えられ、夜間に質の高い睡眠を得られることがわかっている。具体的には、午前9時から13時を含む4時間以上において240メラノピックルクスを浴びることが好ましい。WELL認証においては、9時から13時を含む4時間以上でEMLが240メラノピックルクス以上で加点3点、150メラノピックルクス以上で加点1点が得られる。
【0055】
また、WELL認証によれば、20時以降は高いEMLの光を浴びないことが好ましい。メラトニンの分泌は、朝に光を浴びた後、14~16時間後に大きくなる。仮に朝6時頃に光を浴びると、20時で14時間経過する。この場合、20時以降に高いEMLの光を浴びるとメラトニンの分泌が抑制され、睡眠を妨げることになる。20時以降はEMLを抑えることで、メラトニンが分泌されて睡眠を促進することができる。従って、サーカディアンリズムを整えることができる。また、WELL認証によると、日中のEMLが高い照明状態において、120メラノピックルクス以上で加点される。
【0056】
本実施の形態のコントローラ20は、外部から入力される設定値に応じて、朝から夜にかけての時間経過に伴って複数の光源45a、45bから得られるEMLを低下させる。このため、照明器具40の使用者の生体リズムを整えることができる。
【0057】
照明システム100がオフィスで使用される場合は、コントローラ20は、始業時間から終業時間まで、時間経過に伴ってEMLを低下させる。始業時間から終業時間までの時間経過に伴って、EMLが1/3~半分に低下することが好ましい。上述の通り、9時から13時までのEMLは240メラノピックルクス以上であると良い。オフィスにおいては、始業時間から13時までのEMLを240メラノピックルクス以上としても良い。また、20時以降のEMLは120メラノピックルクス以下であると良い。
【0058】
図5図6図7は、等価メラノピック照度EMLの時間変化の例を示す図である。等価メラノピック照度をEML、時間をt、定数をcとしたとき、等価メラノピック照度はEML=arctan(t)+c(式(3))に従って変化しても良い。色温度の変化によって空間の見え方は変化する。このため、ある一定の色温度に慣れた使用者は、色温度が変化したときに違和感を覚えることがある。つまり、EMLが定められた時刻を境に異なる直線もしくは曲線に従って制御される場合、制御の切り替わりによって使用者に違和感を与えるおそれがある。これに対し本実施の形態では、始業から終業にわたって、EMLをアークタンジェント曲線に従って制御する。これにより、滑らか且つ連続的にEMLを低下させることができる。従って、使用者の違和感を抑制できる。
【0059】
また、アークタンジェント曲線によれば、定められた時刻より前でEMLを予め定められた値以上に維持できる。また、アークタンジェント曲線によれば、時間が十分に経過してもEMLは下限値に漸近する。従って、EMLが下限値を下回ることを防ぐことができる。このため、労働安全衛生法で必要な照度を保つことができる。
【0060】
また、ユーザインターフェース部10からEMLの変化の速さが設定できるものとしても良い。図5はEMLの変化が速い場合、図6はEMLの変化が遅い場合、図7はEMLの変化が中程度の場合を示す。
【0061】
また、EMLの設定値は複数の時間帯についてそれぞれ入力されるものとしても良い。図5~7に示される例では、13時および20時でEMLの設定値が定められている。コントローラ20は、複数の時間帯の各々で設定値と光源部45のEMLが一致するように、複数の光源45a、45bの出力を制御する。
【0062】
また、EMLは、例えば13時から20時の間に変曲点を有する。変曲点は式(3)でx=0となる時刻である。ユーザインターフェース部10からは変曲点の時刻が入力可能であっても良い。変曲点は、例えば13時と20時の中間である16時半である。
【0063】
図5~7に示される例では、照明システム100は3つの時間帯に対応する動作モードを備える。3つの時間帯は、朝から昼過ぎまでの第一時間帯と、一日の折り返し地点となる第二時間帯と、夕方から夜にかけての第三時間帯である。具体的には、第一時間帯は朝から13時までの時間帯であり、第二時間帯は13時から20時までの変曲点を含む時間帯であり、第三時間帯は20時以降の時間帯である。
【0064】
なお、EMLを滑らかに制御できれば、式(3)以外の数式に従ってEMLが制御されても良い。例えばEMLは、アークタンジェント曲線に限らず、変曲点、つまり曲線において上に凸の状態と上に凹の状態とが滑らかに変わる点を有する曲線に従って制御されても良い。また、始業時間から予め定められた設定時刻までEMLを定められた値以上に設定し、設定時刻から終業時間までEMLを低下させるような制御が行われても良い。
【0065】
次に、ユーザインターフェース部10を用いたスケジュール設定について説明する。図8図11は、ユーザインターフェース部10の表示部14の状態を示す図である。本実施の形態の表示部14はタッチパネルであり、操作受付部11を兼ねている。
【0066】
図8は、初期設定の例を示す図である。図8に示される初期設定画面では、複数の光源45a、45bの各々についてのMRと照度の情報を入力するための設定部14aが表示される。照度は、光源45a、45bをそれぞれ調光率100%で点灯させた場合の測定値である。
【0067】
図9は、等価メラノピック照度EMLの設定の例を示す図である。表示部14には、EMLの設定値を入力するための設定部14bが設けられる。また、表示部14には、折り返し時刻、つまり、EMLの変曲点を入力するための設定部14cが設けられる。さらに、表示部14には、EMLの変化の速さを設定するための設定部14dが設けられる。EMLの変化の速さは、例えば、ゆっくり、適度、速くの3段階が選べる。設定部14b、14c、14dから入力される情報は、上述したスケジュール設定情報に該当する。
【0068】
ユーザインターフェース部10によって、オフィスのフロア管理者等の設定者は、上述した3つの時間帯でのEMLについてスケジュール設定を行うことができる。ここで、ユーザインターフェース部10へ入力される値には、居室内の在席者の生体リズムを考慮して一定の制限が設けられても良い。
【0069】
例えば、第一時間帯のEMLは240メラノピックルクス未満に設定できないものとしても良い。また、ユーザインターフェース部10は、第一時間帯のEMLが240メラノピックルクス未満に設定された場合、設定値を赤字等で表示することで、予め定められた範囲外であることを設定者に通知しても良い。同様に、第三時間帯のEMLは、120メラノピックルクスより大きい値に設定できないものとしても良い。また、ユーザインターフェース部10は、第三時間帯のEMLが120メラノピックルクスより大きい値に設定された場合、設定値を赤字等で表示することで、予め定められた範囲外であることを設定者に通知しても良い。これにより、施設の利用者の生体リズムを改善可能な設定を促すことができる。また、第一時間帯におけるEMLの設定値の初期値は、光源45a、45bの調光率が共に100%の時の値であっても良い。
【0070】
また、ユーザインターフェース部10は、EMLを低下させる際に、複数の光源45a、45bから得られる色温度と照度のどちらを優先して変化させるかを設定するための設定部を有しても良い。照度を優先する場合は色温度の変化量が抑制され、色温度を優先する場合は照度の変化量が抑制される。
【0071】
図10は、ユーザインターフェース部10に等価メラノピック照度EMLの時間変化が表示された状態を示す図である。表示部14には、設定されたEMLの制御カーブを確認するための制御カーブ表示部14eが設けられても良い。
【0072】
図11は、照度および色温度の設定の例を示す図である。ユーザインターフェース部10は、時間経過に伴ってEMLを低下させるモードと、複数の光源45a、45bの照度が一定に制御されるモードを切り替えるための切り替え部14gを有しても良い。切り替え部14gによってEML制御がオンになることで、上述した開始指示信号がコントローラ20に送信される。これにより、EMLのスケジュール制御が開始される。切り替え部14gによって照度一定制御がオンになることで、停止指示信号がコントローラ20に送信される。これにより、照度一定の制御が開始される。また、表示部14には、照度一定制御における照度および色温度を入力するための設定部14fが設けられる。
【0073】
図12は色温度が同じでメラノピック比率MRが異なる光源45a、45bの発光スペクトルの例を示す図である。光源45a、45bはMRが異なっていれば良く、色温度が同じであっても良い。図12に示される例では、光源45a、45bの色温度は共に5000Kである。また、光源45a、45bのMRはそれぞれ0.985と0.785であり、光源45aのMRが光源45bのMRよりも25%程度が高い。なお、図12上には、サーカディアン応答の曲線も示されている。
【0074】
色温度が異なる複数の光源の出力を調整してEMLを制御する方法、または、各光源の色温度を調整してEMLを制御する方法では、照明器具の色温度が変化して使用者が違和感を覚える可能性がある。これに対し、図12に示されるような光源45a、45bを用いれば、EMLを変化させても光源部45の色温度が変わらない。従って、使用者が覚える違和感を抑制できる。
【0075】
上述した240メラノピックルクス、120メラノピックルクス等のEMLの下限値、上限値は一例である。一般に、EMLに下限の規定値はない。ただし、オフィスの最低照度は、労働安全衛生法で定められている。労働安全衛生法によると、「普通の作業」における作業面の照度の基準が150lx以上と定められている。ここで、作業面の照度は床面から0.8mの水平面照度である。上述した通り、EMLは鉛直面で計測される。水平面での計測によって定められた基準を鉛直面に変換すると、照度は約50lxとなる。このため、EMLは、鉛直面での照度が50lx以上になるように制御されても良い。
【0076】
また、本実施の形態では照明システム100がオフィスで使用される場合において、EMLのスケジュール制御の開始時間を始業時間とした。これに限らず、EMLのスケジュール制御の開始は午前中であれば良い。
【0077】
また、本実施の形態では、MRと照度の情報はコントローラ20の記憶部25が保持している。これに限らず、MRと照度の情報はユーザインターフェース部10の記憶部15が保持していても良い。この場合、ユーザインターフェース部10がコントローラ20の機能を兼ねても良い。また、照明器具40の制御部43がMRと照度の情報を保持しても良い。この場合、照明器具40がコントローラ20の機能を兼ねても良い。また、コントローラ20は、ユーザインターフェース部10の一部であっても良く、照明器具40の一部であっても良い。
【0078】
なお、本実施の形態で説明した技術的特徴は適宜に組み合わせて用いても良い。
【符号の説明】
【0079】
10 ユーザインターフェース部、11 操作受付部、12 制御部、13 通信部、14 表示部、14a~14d 設定部、14e 制御カーブ表示部、14f 設定部、14g 切り替え部、15 記憶部、20 コントローラ、22 通信部、23 照明制御部、24 計時部、25 記憶部、26 通信部、40 照明器具、41 点灯装置、42 点灯回路、43 制御部、44 通信部、45 光源部、45a、45b 光源、50 空間、100 照明システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12