(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045166
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置及び電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 1/00 20070101AFI20230327BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20230327BHJP
【FI】
H02M1/00 Z
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153424
(22)【出願日】2021-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】保坂 亮太
【テーマコード(参考)】
5H740
5H770
【Fターム(参考)】
5H740PP03
5H740PP05
5H740PP07
5H770AA21
5H770PA12
5H770QA02
5H770QA28
5H770QA35
(57)【要約】
【課題】本開示は、回路基板を収容する筐体を小型化、軽量化及び低コスト化することができるスイッチング電源装置及び電力変換装置を提供する。
【解決手段】本開示に係るスイッチング電源装置は、第1の回路基板と、第2の回路基板と、前記第1の回路基板と、前記第2の回路基板を収容する筐体と、を備え、前記筐体の一部は、前記第1の回路基板と、前記第2の回路基板と、を区画する障壁である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の回路基板と、
第2の回路基板と、
前記第1の回路基板と、前記第2の回路基板を収容する筐体と、
を備え、
前記筐体の一部は、前記第1の回路基板と、前記第2の回路基板と、を区画する障壁である、
スイッチング電源装置。
【請求項2】
前記障壁は、
前記第2の回路基板を覆う第1の障壁と、
前記第1の障壁から延出する第2の障壁と、を含み、
前記第2の障壁は、前記第1の回路基板と、前記第1の回路基板を冷却する冷却通路と、を区画する、
請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記筐体は、鋳造法により成型された鋳造品である、
請求項1又は2に記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記第1の回路基板は、ノイズが発生する回路を有し、
前記第2の回路基板は、前記第1の回路基板が発生したノイズを除去する回路を有する、
請求項1から3の何れか1項に記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
第1の回路基板と、
第2の回路基板と、
前記第1の回路基板と、前記第2の回路基板を収容する筐体と、
を備え、
前記第1の回路基板は、外部へ出力可能な電圧に変換する電圧変換回路と、を含み、
前記筐体の一部は、前記第1の回路基板と、前記第2の回路基板と、を区画する障壁である、
電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スイッチング電源装置及び電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電池を搭載したハイブリッド自動車や電気自動車等の車両が普及しつつある。車両には、外部電池や外部電源から車両に搭載されている電池へ充電する充電装置や、電池からの直流電流を交流電流へ変換するインバータ等を含む電力変換装置、変換された交流電流により車両のホイール等を回転させるモータが搭載されている。今後、電池を搭載した車両が普及するためには、例えば、車両価格が下がり、航続可能距離の伸長がさらに必要となってくる。
【0003】
上述した充電装置や電力変換装置等の装置は、パワー半導体を用いた回路基板を構成部品としており、その回路基板は金属から成る筐体に収容される。装置は、電力を安定的に供給するために、回路基板から発生するノイズを低減する必要がある。
【0004】
そこで、ノイズの低減技術として、ノイズが発生する回路を含む回路基板と、発生したノイズを除去する回路を含む回路基板と、を別々に構成し、鋳造物から成る筐体に収容することが行われている。この時、それぞれの回路基板は、筐体内に別部品で構成される金属で別々の区画に分けて収容される。従来、別部品の金属から成る遮蔽物を用いることで、ノイズの相互干渉を遮蔽する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の従来技術では、遮蔽物は、別部品で構成するため、装置の部品点数の増加や装置全体の大型化、重量化に繋がってしまう。また、別部品で構成すると、それに対応する部品のコスト等が発生してしまう。さらに、例えば、遮蔽物は、溶接加工された別部品で構成すると、溶接するためのコストが発生してしまう。
【0007】
また、遮蔽性を向上するために、筐体と遮蔽物を別々の鋳造物で構成すると、更なる装置全体の大型化や重量化に繋がり、鋳造物を生産するためのコストがより発生してしまう。これにより、装置の部品点数の増加や、装置全体が大型化、重量化することで、装置が搭載される車両価格や車両の航続距離に影響を及ぼしてしまう。これらの課題を解決するために、遮蔽物の構成や形状を工夫する改善が求められる。
【0008】
本開示は、回路基板を収容する筐体を小型化、軽量化及び低コスト化することができるスイッチング電源装置及び電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係るスイッチング電源装置は、第1の回路基板と、第2の回路基板と、前記第1の回路基板と、前記第2の回路基板を収容する筐体と、を備え、前記筐体の一部は、前記第1の回路基板と、前記第2の回路基板と、を区画する障壁である。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係るスイッチング電源装置は、筐体の一部が第1の回路基板と、第2の回路基板と、を区画する障壁が一体成型されており、障壁は第1の回路基板の遮蔽物となるため、別体の遮蔽物が不要となり、回路を収容する筐体を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るスイッチング電源装置の構成の一例を模式的に示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係るスイッチング電源装置の断面の一例を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、比較例として、従来のスイッチング電源装置において、第2の回路基板の遮蔽物を別体の加工された金属で構成する場合の断面の一例を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、比較例として、従来のスイッチング電源装置において、第2の回路基板の遮蔽物を別体の鋳造部材で構成する場合の断面の一例を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態2に係る電力変換装置の構成の一例を模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下、図面を用いて具体的に説明する。
図1は、スイッチング電源装置の構成の一例を模式的に示すブロック図である。スイッチング電源装置100は、交流電源1からの交流電力を直流電力に変換し、外部へ出力する装置である。交流電源1は、単相交流電源に限らず、二相交流電源や三相交流電源でも良い。
【0013】
第1の回路基板2は、ノイズが発生する回路を有する。第1の回路基板2は第2の回路基板3が入力した交流電力を外部へ出力する。例えば、第1の回路基板2は、整流回路、力率改善回路及びコンデンサ等を有する(何れも図示せず)。なお、第1の回路基板2が有する構成や機能はこれに限定されない。また、以下では、第1の回路基板2を単に第1の回路2とも表記する。
【0014】
整流回路は、第2の回路基板3が入力する交流電力を全波整流して直流電力に変換し、力率改善回路に出力する。例えば、整流回路は、ダイオードブリッジ回路である。
【0015】
力率改善回路は、整流回路が入力する電力の力率を改善するとともに、入力された電力の電圧を昇圧する機能を有する回路である。
【0016】
コンデンサは、力率改善回路の出力側に接続され、力率改善回路が入力する直流電力を平滑化する。その後、平滑化された直流電力は外部へ出力される。なお、当該直流電力の電圧は、力率改善回路により昇圧されているため、コンデンサは、例えば、電解コンデンサのような比較的大容量のものとなる。
【0017】
第2の回路基板3は、第1の回路基板2で発生したノイズを除去する回路を有する。第2の回路基板3は交流電源1が入力した交流電力を第1の回路基板2へ出力する。より具体的には、第2の回路基板3は、第1の回路2で発生するノイズを交流電源1へ伝わらないように除去する。また、第2の回路基板3は、交流電源1から侵入するノイズを低減する。なお、第2の回路基板3に有する構成や機能はこれに限定されない。また、以下では、第2の回路基板3を単に第2の回路3とも表記する。
【0018】
図2は、実施形態1に係るスイッチング電源装置100の断面の一例を模式的に示す断面図である。本実施形態のスイッチング電源装置100は、第1の回路基板2と、第2の回路基板3と、第1の回路基板2及び第2の回路基板3を収容する筐体20と、を含む。
【0019】
本実施形態において、スイッチング電源装置100は、第1の回路基板2と、第2の回路基板3とを、別々の基板で構成する。本実施形態においては、筐体20は、鋳造法により成型された鋳造品であり、耐熱性及び剛性を有する。筐体20は、例えば、アルミ鋳造により成型される。
【0020】
なお、本明細書では、筐体20の左側面に向かう方向を左方向とし、右側面に向かう方向を右方向とする。また、筐体の上方に向かう方向を上方向とし、下方に向かう方向を下方向とする。以下、
図3及び
図4についても同様である。
【0021】
次に、筐体20の構成について説明する。筐体20は、中空の筐体である。筐体20は、第1の側壁21と、第2の側壁22と、を少なくとも含む。また、筐体20は、第1の回路基板2と、第2の回路基板3とを収容する空間を区画するための、筐体20と一体成型された障壁(第1の障壁23、第2の障壁24)を内部に有する。筐体20は、障壁によって筐体20内の空間を上下に分割する。
【0022】
障壁によって区画された筐体20内の上部の空間には、第1の回路基板2を収容するための第1の収容部31が設けられる。第1の収容部31は、第1の側壁21の一部、第2の側壁22の一部、第1の障壁23及び第2の障壁24から形成される。
【0023】
また、障壁によって区画された筐体20内の下部の空間には、第2の収容部32と、冷却通路25と、が設けられる。第2の収容部32は、第2の回路基板3を収容するための収容部である。第2の収容部32は、第1の側壁21の一部と第1の障壁23とで形成される。
【0024】
冷却通路25は、第2の側壁22の一部、第1の障壁23の一部である第2の部位232及び第2の障壁24から形成される。本実施形態において、冷却通路25は、例えば、水等の冷媒を使用して冷却する液冷方式で冷却する装置を収容する通路である。
【0025】
また、冷却通路25は、第2の障壁24を介して第1の収容部31を冷却する。また、第2の障壁24は、第1の障壁23と連通している。そのため、第2の回路基板3を収容する第2の収容部32の熱は、第1の障壁23を介して第2の障壁24へ伝導する。したがって、冷却通路25は、筐体20の第1の収容部31と、第2の収容部32とを含む、筐体内部全体を冷却することができる。
【0026】
さらに、筐体20は上下の蓋部材を備える。上下の蓋部材は、例えば、加工された金属である。より具体的には、筐体20は、筐体20の上部に第1の収容部31を覆うための第1の蓋材311を備える。また、筐体20は、筐体20の下部に第2の収容部32を覆うための第2の蓋材321と、冷却通路25を覆うための第3の蓋材251と、を備える。なお、上下の蓋部材は加工された金属に限定されない。
【0027】
次に障壁について説明する。障壁は、第2の回路基板3を覆う第1の障壁23と、第1の障壁23から図中左方向に延出された第2の障壁24と、を含む。第1の障壁23は、第1の回路基板2(第1の収容部31)と、第2の回路基板3(第2の収容部32)と、を区画する。第2の障壁24は、第1の回路基板2(第1の収容部31)と、第1の回路基板2を冷却する冷却通路25と、を区画する。
【0028】
第1の障壁23は、筐体20の一部であり、筐体20と一体成型される。第1の障壁23は、第1の側壁21の一部と、筐体20の第1の側壁21から第2の側壁22に向かって延出する第1の部位231と、第1の部位231の端部から筐体20の下方に向かって延出する第2の部位232と、から構成される。また、第1の部位231は、第1の回路基板2と第2の回路基板3を区画する。第2の部位232は、第1の回路基板2と第2の回路基板3と冷却通路25を区画する。
【0029】
第2の障壁24は、筐体20の一部であり、筐体20と一体成型される。第2の障壁24は、第2の部位232から第2の側壁22に向かって左に延出する。また、第2の障壁24は、第1の回路基板2と冷却通路25を区画する。
【0030】
次に、第1の回路基板2と第2の回路基板3との接続関係について説明する。第1の回路基板2と第2の回路基板3とは金属製の接続部材によって接続される。例えば、接続部材は、第1の接続部材41と第2の接続部材42とである。第1の接続部材41及び第2の接続部材42は、第2の回路3により出力される交流電力を第1の回路2へ出力する。
【0031】
また、第1の回路基板2と第2の回路基板3とは、第1の接続部材41及び第2の接続部材42を介して、隣接する位置に配置される。これにより、スイッチング電源装置100では、第2の回路3が出力する交流電力を第1の回路2へ短い経路で出力することができ、スイッチング電源装置100の小型化も可能となる。なお、第1の接続部材41と第2の接続部材42の数や配置はこれに限定されない。
【0032】
以上に説明したように、本実施形態のスイッチング電源装置100は、第1の回路基板2と、第2の回路基板3と、第1の回路基板2と、第2の回路基板3を収容する筐体20と、を備える。また、筐体20の一部は、第1の回路基板2と、第2の回路基板3と、を区画する障壁を形成する。
【0033】
以上の本実施形態の構成によれば、筐体20内の一部は、第1の回路基板2と第2の回路基板3を区画する障壁であるため、第2の回路基板3を覆うことができる。これにより、障壁は第2の回路基板3の遮蔽物となり、筐体20は遮蔽物を一体成型する。そのため、別体の遮蔽物が不要となり、回路基板を収容する筐体20全体を小型化することができる。また、別体の遮蔽物が不要となることから、スイッチング電源装置100全体を軽量化することができる。さらに、遮蔽物を一体成型することにより、遮蔽物や遮蔽物を筐体に締結するねじ等の部品を削減でき、別体の遮蔽物の金型も不要となるため、スイッチング電源装置100全体の低コスト化を図ることができる。
【0034】
(従来のスイッチング電源装置の説明)
次に、
図3を用いて、本実施形態の筐体20の作用について説明する。
図3は、従来のスイッチング電源装置において、第1の回路基板の遮蔽物を別体の加工された金属で構成する場合の断面の一例を模式的に示す断面図である。上述の第1の実施形態と共通する部分については説明を適宜に省略する。上述の第1の実施形態では、同一筐体内に第1の回路基板と第2の回路基板を収容している。これに対して、
図3の従来のスイッチング電源装置では、同一筐体内に第1の回路基板と、第2の回路基板と、第2の回路基板を収容する別の筐体を収容している点が上述の第1の実施形態と相違する。
【0035】
まず、従来の筐体の構成について説明する。筐体50は、第1の側壁51と、第2の側壁52と、第1の側壁51と第2の側壁52を区画する区画部位53と、を含む。別体の筐体54は、第2の回路基板6を覆い、遮蔽物となる。筐体54は、第1の障壁541、第2の障壁542、第3の障壁543及び第4の障壁544から形成される。第2の障壁542は、第1の回路基板5と、第2の回路基板6との間に配置する。第4の障壁544は、筐体54の上部を覆う蓋部材である。
【0036】
区画部位53によって区画された筐体50内の上部の空間には、第1の回路基板5と、第2の回路基板6と、筐体54を収容するために収容部61が設けられる。収容部61は、第1の側壁51の一部、第2の側壁52の一部及び区画部位53から形成される。
【0037】
区画部位53によって区画された筐体50内の下部の空間には、冷却通路62が設けられる。また、筐体50は上下の蓋部材を備える。より具体的には、筐体50の上部は、収容部61を覆うための第1の蓋材611を備え、筐体50の下部は、冷却通路62を覆うための第2の蓋材621を備える。
【0038】
冷却通路62は、区画部位53を介して、収容部61を冷却する。第1の接続部材55と第2の接続部材56は、第2の回路6により出力される交流電力を第1の回路5へ出力する金属製の接続部材である。また、
図3に記載の支持部位57は、筐体54を収容部61の区画部位53から支える部位であり、また、回路動作の基準の電位となるグランドでもある。第1の回路基板5は、支持部位57を避ける必要があるため、支持部位57を避けるように第1の回路基板5の一部が切り欠かれるか、または第1の回路基板5は貫通される。そのため、第1の回路基板5は、支持部位57を避ける分だけ実装可能な領域が小さくなってしまう。
【0039】
図3に記載の筐体50と、
図2に記載の筐体20を比較した場合、筐体50は別体の筐体54を収容しているのに対し、筐体20は別体の筐体を収容しない。本実施形態は、筐体20の一部は、第1の障壁23を有することで、別体の筐体から構成される遮蔽物はないため、筐体20は小型化することができる。また、別体の筐体から構成される遮蔽物はないため、スイッチング電源装置100は部品点数を削減することができる。さらに、筐体の側壁の上下方向を低くすることができるため、スイッチング電源装置100は低背化することができる。また、例えば、スイッチング電源装置100を車両に搭載する場合、スイッチング電源装置100は小型化、低背化ができるため、車両への搭載自由度も高めることができる。
【0040】
また、
図3に記載の加工された金属で構成する別体の筐体54は、加工された金属からなる遮蔽物であり、曲げ加工等により、隙間が生じることがある。遮蔽物に隙間が生じると、隙間を生じさせないように、例えば、遮蔽物の全周に対して溶接を行う。一方、本実施形態では、筐体20と一体形成された障壁により、第2の回路基板3を遮蔽しているため、別体で構成された遮蔽物と比較すると、溶接を行うことが不要であり、コストを低減することができる。
【0041】
また、
図2に記載の本実施形態の冷却通路25と、
図3に記載の従来の冷却通路62と比較した場合、従来の冷却通路62は収容部61を冷却する。一方、本実施形態の冷却通路25は、第1の収容部31と、第2の収容部32を含む、筐体内部全体の冷却をすることができる。これにより、冷却効率を高めることができるため、従来と比べ、冷却通路は小さくすることができ、筐体の設計自由度を高くすることができる。
【0042】
本実施形態において、
図2に記載の第1の障壁23と、
図3に記載の筐体54と比較した場合、
図3において筐体54を筐体50の収容部61に収容するために、収容部61から筐体54を支持部位57で支える必要がある。また、
図3の構成では、筐体54のグランドを強化するために、支持部位57が必要である。一方、
図2に記載の本実施形態の構成では、筐体20の一部に、第2の回路基板3を覆う第1の障壁23を有するため、別体の筐体から構成される遮蔽物はなく、遮蔽物を筐体内部で支える必要も、グランドを強化する必要もない。そのため、本実施形態の構成では、支持部位を不要とすることができ、スイッチング電源装置100全体の小型化を図ることができる。
【0043】
また、
図2に記載の本実施形態の構成では、別体の筐体54が不要となるため、スイッチング電源装置100を軽量化できるとともに、スイッチング電源装置100全体の低コスト化を図ることができる。さらに、
図2に記載の本実施形態の構成では、支持部位57がないため、支持部位57を避けて第1の回路基板2を設ける必要がなく、実装可能な領域を最大限有効に使うことができる。これにより、第1の回路基板2は小型化することができる。
【0044】
また、
図4を用いて、本実施形態の筐体20の作用について説明する。
図4は、従来のスイッチング電源装置において、第1の回路基板の遮蔽物を別体の鋳造部材で構成する場合の断面の一例を模式的に示す断面図である。上述の第1の実施形態と共通する部分については説明を適宜に省略する。上述の第1の実施形態では、同一筐体内に第1の回路基板と第2の回路基板を収容している。これに対して、
図4の従来のスイッチング電源装置では、同一筐体内に第1の回路基板、第2の回路基板及び第2の回路基板を収容する別の筐体を収容している点が上述の第1の実施形態と相違する。
【0045】
また、
図3と
図4の従来のスイッチング電源装置の相違点は、
図3の場合は、第1の回路基板を収容する筐体が加工された金属であるのに対し、
図4の場合は、第2の回路基板を収容する筐体が鋳造部材である点が相違する。
【0046】
まず、従来の筐体の構成について説明する。筐体70は、第1の側壁71と、第2の側壁72と、第1の側壁71と第2の側壁72を区画する区画部位73と、を含む。別体の筐体74は第2の回路基板8を覆い、遮蔽物となる。別体の筐体74は、第1の障壁741、第2の障壁742、第3の障壁743及び第4の障壁744から形成される。第2の障壁742は、第1の回路基板7と、第2の回路基板8との間に配置する。第4の障壁744は、筐体74の上部を覆う蓋部材である。
【0047】
区画部位73によって区画された筐体70内の上部の空間には、第1の回路基板7と、第2の回路基板8と、筐体74を収容するために収容部81が設けられる。収容部81は、第1の側壁71の一部、第2の側壁72の一部及び区画部位73から形成される。
【0048】
区画部位73によって区画された筐体70内の下部の空間には、冷却通路82が設けられる。また、筐体70は上下の蓋部材を備える。より具体的には、筐体70の上部は、収容部81を覆うための第1の蓋材811を備え、筐体70の下部は、冷却通路82を覆うための第2の蓋材821を備える。
【0049】
冷却通路82は、区画部位73を介して、収容部81を冷却する。第1の接続部材75と第2の接続部材76は、第2の回路8により出力される交流電力を第1の回路7へ出力する金属製の接続部材である。また、
図4に記載の支持部位77は、筐体74を収容部81の区画部位73から支える部位であり、また、回路動作の基準の電位となるグランドでもある。第1の回路基板7は、
図3の構成と同様に、支持部位77を避ける必要があるため、支持部位77を避けるように第1の回路基板7の一部が切り欠かれるか、または第1の回路基板7は貫通される。そのため、第1の回路基板7は、支持部位77を避ける分だけ実装可能な領域が小さくなってしまう。
【0050】
本実施形態において、
図2に記載の第1の障壁23と、
図4に記載の鋳造部材で構成する筐体74と比較した場合、
図4において重量物となる筐体74を筐体70の収容部81に収容するために、収容部81から筐体74を支持部位77で支える必要がある。また、
図4の構成では、筐体74のグランドを強化するために、支持部位77が必要である。一方、
図2に記載の本実施形態の構成では、筐体20の一部に、第2の回路基板3を覆う第1の障壁23を有するため、別体の筐体から構成される遮蔽物はなく、遮蔽物を筐体内部で支える必要も、グランドを強化する必要もない。そのため、本実施形態の構成では、支持部位を不要とすることができ、スイッチング電源装置100全体の小型化を図ることができる。
【0051】
また、
図2に記載の本実施形態の構成では、鋳造部材で構成する別体の筐体74が不要となるため、スイッチング電源装置100を大幅に軽量化することができる。また、
図2に記載の本実施形態の構成では、別体の筐体74が不要となるため、別体の筐体74を鋳造する金型も不要となり、スイッチング電源装置100全体の低コスト化を大幅に図ることができる。さらに、
図2に記載の本実施形態の構成では、支持部位77がないため、支持部位77を避けて第1の回路基板2を設ける必要がなく、実装可能な領域を最大限有効に使うことができる。これにより、第1の回路基板2は小型化することができる。
【0052】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。上述の第1の実施形態と共通する部分については説明を適宜に省略する。上述の第1の実施形態では、第1の回路基板2と、第2の回路基板3と、前記第1の回路基板2と、前記第2の回路基板3を収容する筐体20と、を備え、前記筐体20の一部は、前記第1の回路基板2と、前記第2の回路基板3と、を区画する障壁である。
【0053】
これに対して、本実施形態では、第1の回路基板2と、第2の回路基板3と、前記第1の回路基板2と、前記第2の回路基板3を収容する筐体20と、を備え、前記第1の回路基板2は、外部へ出力可能な電圧に変換する電圧変換回路と、を含み、前記筐体20の一部は、前記第1の回路基板2と、前記第2の回路基板3と、を区画する障壁である点が上述の第1の実施形態と相違する。
【0054】
第2の実施形態の電力変換装置200について
図5を用いて説明する。
図5は、電力変換装置200の構成の一例を模式的に示すブロック図である。
【0055】
第1の回路基板2は、ノイズが発生する回路を有し、電圧変換回路4を含む回路を有する。電圧変換回路4は、外部へ出力可能な電圧に変換する回路で、例えば、DC/DCコンバータが含まれる(図示せず)。なお、電圧変換回路4に有する構成や機能はこれに限定されない。
【0056】
DC/DCコンバータは、力率改善回路からの直流出力を外部へ出力可能な電圧に変換する回路である。DC/DCコンバータは、電力変換回路、トランス及び整流部を有する(何れも図示せず)。
【0057】
電力変換回路は、力率改善回路が入力する直流電力を交流電力に変換する回路である。トランスは、電力変換回路が入力する交流電力を整流部に出力する。整流部は、トランスが入力する交流電力を直流電力に整流する。また、整流部は整流した直流電力を外部へ出力する。
【0058】
なお、本実施形態に係る電力変換装置200の電圧変換回路4は、DC/DCコンバータに限定されず、AC/DCコンバータ、DC/ACコンバータ、また、これらの組み合わせ等で構成されるものであり、種々のパワーエレクトロ二クスに関して適用することができる。
【0059】
以上に説明したように、本実施形態の電力変換装置200は、第1の回路基板2と、第2の回路基板3と、第1の回路基板2と、第2の回路基板3を収容する筐体20と、を備える。第1の回路基板2は、外部へ出力可能な電圧に変換する電圧変換回路4と、を含む。筐体20の一部は、第1の回路基板2と、第2の回路基板3と、を区画する障壁である。
【0060】
以上の本実施形態の構成によれば、筐体20内の一部は、第1の回路基板2と第2の回路基板3を区画する障壁であるため、第2の回路基板3を覆うことができる。これにより、障壁は第2の回路基板3の遮蔽物となり、筐体20は遮蔽物を一体成型する。そのため、別体の遮蔽物が不要となり、回路基板を収容する筐体20全体を小型化することができる。また、別体の遮蔽物が不要となることから、電力変換装置200全体を軽量化することができる。さらに、遮蔽物を一体成型することにより、遮蔽物や遮蔽物を筐体に締結するねじ等の部品を削減でき、別体の遮蔽物の金型も不要となるため、電力変換装置200全体の低コスト化を図ることができる。
【0061】
(変形例1)
本実施形態においては、筐体20は、鋳造法により成型された鋳造品で、筐体の材質(素材)はアルミダイカストとするが、これに限定されるものではなく、他の材質であってもよい。
【0062】
(変形例2)
本実施形態においては、冷却通路25は、水等の冷媒を使用して冷却する液冷方式で冷却する装置を収容するが、空冷方式で冷却する装置を収容しても良い。本開示に係る技術は、空冷方式やヒートシンクを用いる方式の冷却装置を冷却通路25に収容することにより実現することもできる。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、筐体20内に収容する回路基板の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。回路基板の実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0064】
1 交流電源
2 第1の回路基板
3 第2の回路基板
4 電圧変換回路
20 筐体
21 第1の側壁
22 第2の側壁
23 第1の障壁
24 第2の障壁
25 冷却通路
31 第1の収容部
32 第2の収容部
41 第1の接続部材
42 第2の接続部材
100 スイッチング電源装置
200 電力変換装置
231 第1の部位
232 第2の部位
251 第3の蓋材
311 第1の蓋材
321 第2の蓋材