(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045170
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】焼結鉱の製造方法、および、焼結鉱の製造装置
(51)【国際特許分類】
C22B 1/20 20060101AFI20230327BHJP
F27B 21/08 20060101ALI20230327BHJP
F27B 21/12 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
C22B1/20 X
F27B21/08 A
F27B21/08 Z
F27B21/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153429
(22)【出願日】2021-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】長田 淳治
(72)【発明者】
【氏名】松村 伸一
(72)【発明者】
【氏名】大田 晃久
(72)【発明者】
【氏名】岸野 友泰
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA10
4K001CA01
4K001CA49
4K001GA10
(57)【要約】
【課題】シンターケーキの裏シュートへの流れ込みを抑制でき、安定して焼結鉱の製造を行うことが可能な焼結鉱の製造方法を提供する。
【解決手段】走行する焼結パレット4内で焼結原料を焼結し、焼結パレット4内に形成されたシンターケーキをクラッシャーで破砕して焼結鉱を得る焼結鉱の製造方法であって、クラッシングガイド10を用いて、焼結パレット4から排鉱されたシンターケーキをクラッシャーへと案内する構成とされており、焼結パレット4内には、焼結パレット4の進行方向に平行に配設された支持スタンド4Cが立設されており、クラッシングガイド10には、焼結パレット4内に挿入される本体壁20が形成され、この本体壁20に支持スタンド4Cが通過するスリット25が形成されており、操業時において、焼結パレット4内に挿入された本体壁20の先端と焼結パレット4の底面4Aとの距離Lを150mm以下とする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行する焼結パレット内で焼結原料を焼結し、前記焼結パレット内に形成されたシンターケーキをクラッシャーで破砕して焼結鉱を得る焼結鉱の製造方法であって、
クラッシングガイドを用いて、前記焼結パレットから排鉱されたシンターケーキを前記クラッシャーへと案内する構成とされており、
前記焼結パレット内には、前記焼結パレットの進行方向に平行に配設された支持スタンドが立設されており、
前記クラッシングガイドには、前記焼結パレット内に挿入される本体壁が形成され、この本体壁に前記支持スタンドが通過するスリットが形成されており、
操業時において、前記焼結パレット内に挿入された前記本体壁の先端と前記焼結パレットの底面との距離を150mm以下とすることを特徴とする焼結鉱の製造方法。
【請求項2】
走行する複数の焼結パレットと、前記焼結パレット内で形成されたシンターケーキを破砕するクラッシャーと、前記焼結パレットから排鉱されたシンターケーキを前記クラッシャーへと案内するクラッシングガイドと、を有する焼結鉱の製造装置であって、
前記焼結パレット内には、前記焼結パレットの進行方向に平行に配設された支持スタンドが立設されており、
前記クラッシングガイドには、前記焼結パレット内に挿入される本体壁が形成され、この本体壁に前記支持スタンドが通過するスリットが形成されており、
操業時において、前記焼結パレット内に挿入された前記本体壁の先端と前記焼結パレットの底面との距離が150mm以下とされていることを特徴とする焼結鉱の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行する焼結パレット内で焼結原料を焼結し、前記焼結パレット内に形成されたシンターケーキをクラッシャーで破砕して焼結鉱を得る焼結鉱の製造方法、および、焼結鉱の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高炉に投入する原料として、鉄鉱石の粉末等からなる焼結原料を焼結した焼結鉱が使用されている。
焼結鉱を製造する焼結機は、例えば特許文献1-3に記載されているように、給鉱部側と排鉱部を繋ぐレール部と、レール部に沿って走行する複数の焼結パレット台車と、給鉱部後方の焼結パレット台車の上方に配置された点火炉と、焼結パレット台車の下方に配置された吸引部と、焼結パレット台車から排鉱されたシンターケーキを破砕するクラッシャーと、排鉱部後方において焼結パレットから排鉱されたシンターケーキをクラッシャーへと案内するクラッシングガイドと、を備えている。
【0003】
このような焼結機においては、点火炉で焼結原料の表層中の炭材に点火した後、焼結原料を充填した焼結パレット台車を排鉱部側に移送しながら、焼結パレット台車下方の吸引部によって吸引することで、焼結パレット台車内の焼結原料における炭材の燃焼点を移動し、焼結原料の上部側から下部側に焼結反応を進行させてシンターケーキと呼ばれる焼結塊を生成する。このシンターケーキは、排鉱部においてクラッシングガイドによりクラッシャーへと排鉱され、シンターケーキはクラッシャーによって破砕され、高炉で使用する焼結鉱の所定粒度とされる。
【0004】
焼結パレット台車内に形成されたシンターケーキは、排鉱部においてスプロケットの外周に沿って焼結パレット台車が移動し傾動した際にクラッシングガイドへと落下し、このクラッシングガイドによってクラッシャーへと案内される。
ここで、特許文献1-3に記載された焼結機においては、焼結パレット台車の内部には、焼結の過程において上部に形成されたシンターケーキを支持し、焼結原料充填層下部の通気性を維持するための支持スタンドが配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平04-168234号公報
【特許文献2】特開平11-108564号公報
【特許文献3】特開2011-179754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のように、焼結パレット台車内に支持スタンドを配設した場合には、焼結機排鉱部におけるシンターケーキの焼結パレット台車からの離脱が、クラッシングガイドの頂部により近い位置で行われる。このため、クラッシングガイドの頂部にシンターケーキが焼結パレット台車から離脱しないまま接触することになる。このとき、焼結機の排鉱部ですべてのシンターケーキが排出されずに、支持スタンド間に一部のシンターケーキが残留し、それがクラッシングガイド通過後に落下し、シンターケーキの一部(シンターケーキ片)がクラッシングガイドの背面側に設けられた裏シュートへ流れ込みやすくなり、裏シュートの詰まりが発生し、焼結機の安定稼働を阻害する問題点が判明した。
【0007】
本発明は、前述した状況に鑑みてなされたものであって、シンターケーキの裏シュートへの流れ込みを抑制でき、安定して焼結鉱の製造を行うことが可能な焼結鉱の製造方法、および、焼結鉱の製造装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、本発明者らが鋭意検討した結果、裏シュートに流れ込むシンターケーキ片の大きさが150mm程度であることが分かった。
そして、本発明者らが実機試験を繰り返して、スタンド焼結において、クラッシングガイドと焼結パレット間の隙間を適正化することにより、シンターケーキの裏シュートへの流れ込みを抑制できるとの知見を得た。
【0009】
本発明は、上述の知見に基づいてなされたものであって、本発明に係る焼結鉱の製造方法は、走行する焼結パレット内で焼結原料を焼結し、前記焼結パレット内に形成されたシンターケーキをクラッシャーで破砕して焼結鉱を得る焼結鉱の製造方法であって、クラッシングガイドを用いて、前記焼結パレットから排鉱されたシンターケーキを前記クラッシャーへと案内する構成とされており、前記焼結パレット内には、前記焼結パレットの進行方向に平行に配設された支持スタンドが立設されており、前記クラッシングガイドには、前記焼結パレット内に挿入される本体壁が形成され、この本体壁に前記支持スタンドが通過するスリットが形成されており、操業時において、前記焼結パレット内に挿入された前記本体壁の先端と前記焼結パレットの底面との距離が150mm以下とすることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る焼結鉱の製造装置は、走行する複数の焼結パレットと、前記焼結パレット内で形成されたシンターケーキを破砕するクラッシャーと、前記焼結パレットから排鉱されたシンターケーキを前記クラッシャーへと案内するクラッシングガイドと、を有する焼結鉱の製造装置であって、前記焼結パレット内には、前記焼結パレットの進行方向に平行に配設された支持スタンドが立設されており、前記クラッシングガイドには、前記焼結パレット内に挿入される本体壁が形成され、この本体壁に前記支持スタンドが通過するスリットが形成されており、操業時において、前記焼結パレット内に挿入された前記本体壁の先端と前記焼結パレットの底面との距離が150mm以下とされていることを特徴とする。
【0011】
上述の構成の焼結鉱の製造方法および焼結鉱の製造装置によれば、前記クラッシングガイドには、前記焼結パレット内に挿入される本体壁が形成され、この本体壁に前記支持スタンドが通過するスリットが形成されており、操業時の高温状態において、前記焼結パレット内に挿入された前記本体壁の先端と前記焼結パレットの底面との距離が150mm以下とされているので、支持スタンド間に位置するシンターケーキをクラッシングガイドの本体壁によって排出を促進することができ、シンターケーキの裏シュートへの流れ込みを抑制することができる。よって、裏シュートの詰まりを抑制でき、安定して焼結鉱を製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、シンターケーキの裏シュートへの流れ込みを抑制でき、安定して焼結鉱の製造を行うことが可能な焼結鉱の製造方法、および、焼結鉱の製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態である焼結鉱の製造装置の概略説明図である。
【
図2】
図1に示す焼結鉱の製造装置において使用される焼結パレットの説明図である。
【
図3】
図1に示す焼結鉱の製造装置において使用されるクラッシングガイドの正面図である。
【
図5】
図1に示す焼結鉱の製造装置において、操業時の焼結パレットとクラッシングガイドの位置関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の一実施形態である焼結鉱の製造方法、および、焼結鉱の製造装置について、添付した図面を参照して説明する。
本実施形態である焼結鉱の製造方法、および、焼結鉱の製造装置は、高炉へ投入される原料である焼結鉱を製造するものである。
【0015】
本実施形態である焼結鉱の製造装置1は、
図1に示すように、給鉱部側と排鉱部側にそれぞれ配置した一対のスプロケット2A、2Bと、これらスプロケット2A、2B間を繋ぐレール部3と、レール部3に沿って車輪によって走行する複数の焼結パレット台車4と、焼結パレット台車4の底面4Aに床敷鉱を供給して床敷層を形成する床敷ホッパー5と、床敷層の上に焼結原料Mを充填する原料装入ホッパー6と、搬送される焼結パレット台車4の上方に配置された点火炉7と、焼結パレット台車4の下方側に位置する下方吸引部8と、焼結して得られたシンターケーキSを破砕するクラッシャー9と、焼結パレット台車4から排鉱されたシンターケーキSをクラッシャー9へと案内するクラッシングガイド10と、を備えている。
【0016】
焼結パレット台車4は、
図2に示すように、焼結の過程において上部に形成されたシンターケーキSを支持し、焼結原料充填層下部の通気性を維持するための支持スタンド4Cが配設されている。すなわち、この焼結パレット台車4においては、側壁部4Bと支持スタンド4Cとが幅方向に間隔をあけて立設されている。なお、焼結パレット台車4の底面4Aには、グレードバーが配設されている。
【0017】
クラッシングガイド10は、
図1に示すように、排鉱部側のスプロケット2Bとクラッシャー9との間に配設されるものであり、
図3に示す正面図は、クラッシャー9側から見た図である。
また、
図4の断面図においては、クラッシングガイド10の左側に排鉱部側のスプロケット2Bが位置し、クラッシングガイド10の右側にクラッシャー9が位置することになる。
【0018】
このクラッシングガイド10は、
図3および
図4に示すように、台座フレーム部11と、この台座フレーム部11の背面側(
図4において左側)部分から立設された本体壁20と、この本体壁20の上部から台座フレーム部11の正面側(
図4において右側)部分に向かうように延在するガイド部30と、を備えている。
本実施形態では、本体壁20は、台座フレーム部11から上方に向かうにしたがい漸次正面側に向かうように傾斜して設けられている。また、ガイド部30は、台座フレーム部11から上方に向かうにしたがい漸次背面側に向かうように傾斜して設けられている。
【0019】
ここで、本体壁20は、その上端部分が、排鉱部側のスプロケット2Bの外周に沿って移動する焼結パレット台車4の内部に挿入されるように構成されている。
また、本体壁20の上端部分には、
図4に示すように、幅方向に複数のスリット25が形成されている。このスリット25は、前述の支持スタンド4Cが通過するために設けられたものである。
【0020】
このような構成とされた焼結鉱の製造装置1においては、次のようにして焼結鉱を製造する。
まず、
図1に示すように、レール部3に沿って車輪によって走行する焼結パレット台車4に対して床敷ホッパー5から床敷鉱を供給し、焼結パレット台車4の底面4Aに床敷層を形成する。さらに、原料装入ホッパー6から焼結原料Mを供給する。焼結原料Mを充填した焼結パレット台車4が移送され、点火炉7において焼結原料Mの表層中の炭材に点火される。焼結パレット台車4が排鉱部側に移動する間に下方吸引部8によって吸引することにより、焼結原料Mの上部側から下方側に向けて炭材の燃焼点を移動し、焼結が進行していき、シンターケーキSが製造される。
【0021】
そして、焼結パレット台車4が排鉱部側のスプロケット2Bに沿って移動することで傾斜し、焼結パレット台車4内のシンターケーキSがクラッシングガイド10のガイド部30に向けて落下することになる。
落下したシンターケーキSは、クラッシングガイド10のガイド部30を摺動してクラッシャー9へと案内される。そして、シンターケーキSがクラッシャー9で粉砕されることによって焼結鉱が製出される。
【0022】
なお、本実施形態では、焼結パレット台車4内に支持スタンド4Cが配設されていることから、スプロケット2Bにおいて焼結パレット台車4が大きく傾動するまでシンターケーキSが落下しないことがある。このような場合には、シンターケーキSが本体壁20の先端に接触した際に、その衝撃によって落下することになる。
【0023】
ここで、本実施形態である焼結鉱の製造装置1においては、操業時には、例えば400℃以上に加熱されることから、レール部3等が熱伸びすることになる。
本実施形態では、操業時の熱伸びした状態において、焼結パレット台車4内に挿入されたクラッシングガイド10の本体壁20の先端と焼結パレット台車4の底面4Aとの距離Lが150mm以下となるように構成されている。
【0024】
なお、焼結パレット台車4内に挿入されたクラッシングガイド10の本体壁20の先端と焼結パレット台車4の底面4Aとの距離Lは、120mm以下とすることが好ましく、100mm以下とすることがより好ましい。
また、焼結パレット台車4内に挿入されたクラッシングガイド10の本体壁20の先端と焼結パレット台車4の底面4Aとの距離Lの下限に特に制限はないが、焼結パレット台車4と本体壁20との干渉を確実に抑制するために、50mm以上とすることが好ましく、70mm以上とすることがより好ましい。
さらに、焼結パレット台車4内に挿入されたクラッシングガイド10の本体壁20の先端と焼結パレット台車4の底面4Aとの距離Lは、支持スタンド4Cの高さHとに対して、1/8×H≦L≦1/2×Hの範囲内とすることが好ましい。
【0025】
以上のような構成とされた本実施形態である焼結鉱の製造装置1および焼結鉱の製造方法によれば、クラッシングガイド10には、焼結パレット台車4内に挿入される本体壁20が形成され、この本体壁20に支持スタンド4Cが通過するスリット25が形成されており、操業時の高温状態において、焼結パレット台車4内に挿入された本体壁20の先端と焼結パレット台車4の底面4Aとの距離Lが150mm以下とされているので、支持スタンド4C間に位置するシンターケーキSをクラッシングガイド10の本体壁20によって排出を促進することができ、シンターケーキSの裏シュートへの流れ込みを抑制することができる。よって、裏シュートの詰まりを抑制でき、安定して焼結鉱を製造することが可能となる。
【0026】
以上、本発明の実施形態である焼結鉱の製造装置、および、焼結鉱の製造方法について具体的に説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、給鉱部側と排鉱部側の両方にスプロケッットを有するドワイトロイド式焼結機を具体例として説明したが、これに限定されることはなく、排鉱部側(従動側)のスプロケッットのないコッパース式にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 焼結鉱の製造装置
4 焼結パレット
4A 底面
4C 支持スタンド
10 クラッシングガイド
20 本体壁
25 スリット