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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045204
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】鉄道車両
(51)【国際特許分類】
   B61F 19/04 20060101AFI20230327BHJP
【FI】
B61F19/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153473
(22)【出願日】2021-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】閔 子
(72)【発明者】
【氏名】石井 優治
(72)【発明者】
【氏名】小林 太一
(57)【要約】
【課題】鉄道車両において衝突時に作用する衝撃力の吸収性能の向上を図る。
【解決手段】実施形態の鉄道車両は、エネルギー吸収体を備える。エネルギー吸収体は、ベース部材と、複数の壁と、底部材と、複数の円柱部材と、を有する。複数の壁は、第1の方向および前記第3の方向と直交する第5の方向に間隔を空けて並びベース部材に固定された一対の端部から第5の方向の中央部に向かうにつれて第3の方向に向かう凸状に形成され、ベース部材に対して前記第3の方向側に互いに並んで配置され、第3の方向に隣り合う二つの間に収容室が設けられている。底部材は、収容室に対して第1の方向側に位置し、ベース部材に固定されている。複数の円柱部材は、第1の方向に延び、一対の端部の一方から他方に向けて壁に沿って一例に並んで収容室に収容されるとともに底部材に置かれている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台枠と、
前記台枠に対して第1の方向側に位置し、前記台枠に固定された台車と、
前記台枠に対して前記第1の方向の反対の第2の方向側に位置し、前記台枠に固定された中間構体と、
前記中間構体に対して前記第1の方向と直交する第3の方向側に並び、前記台枠に固定された先頭構体と、
前記中間構体に対して前記第3の方向の反対の第4の方向側に並び、前記台枠に固定された被保護構体と、
前記先頭構体の前記第3の方向側の端部と前記中間構体の前記第3の方向側の端部と前記被保護構体の前記第3の方向側の端部とのうち少なくともいずれか一つに対して前記第3の方向側に並んで固定されたエネルギー吸収体と、
を備え、
前記エネルギー吸収体は、
前記エネルギー吸収体が固定された前記端部に固定された板状のベース部材と、
前記第1の方向および前記第3の方向と直交する第5の方向に間隔を空けて並び前記ベース部材に固定された一対の端部から前記第5の方向の中央部に向かうにつれて前記第3の方向に向かう凸状に形成され、前記ベース部材に対して前記第3の方向側に互いに並んで配置され、前記第3の方向に隣り合う二つの間に収容室が設けられた、複数の壁と、
前記収容室に対して前記第1の方向側に位置し、前記ベース部材に固定された板状の底部材と、
前記第1の方向に延び、前記一対の端部の一方から他方に向けて前記壁に沿って一例に並んで前記収容室に収容されるとともに前記底部材に置かれた複数の円柱部材と、
を有した、
鉄道車両。
【請求項2】
前記エネルギー吸収体は、
前記ベース部材に対して前記第3の方向側に位置し互いに前記第3の方向に並んだ複数の板部材を有し、
前記板部材は、前記第5の方向に間隔を空けて位置し前記ベース部材に固定された一対の被固定部と、前記壁と、を有し、
前記壁の前記一対の端部は、前記一対の被固定部を介して前記ベース部材に固定された、
請求項1に記載の鉄道車両。
【請求項3】
前記壁は、湾曲状である、または、前記一対の端部の一方から他方に向けて一列に並び、曲部を介して接続された複数の平板部を有した、
請求項1または2に記載の鉄道車両。
【請求項4】
前記円柱部材には、肉抜き部が設けられた、
請求項1~3のうちいずれか一つに記載の鉄道車両。
【請求項5】
前記円柱部材の降伏応力は、前記壁の降伏応力よりも小さい、
請求項1~4のうちいずれか一つに記載の鉄道車両。
【請求項6】
前記壁は、前記収容室に対向する面を有した板状の基材と、前記収容室に対向する面を有し前記基材の前記面に積層された積層部と、を有し、
前記積層部の前記面は、前記基材の前記面よりも摩擦係数が大きい、
請求項1~5のうちいずれか一つに記載の鉄道車両。
【請求項7】
前記円柱部材は、前記収容室に対向する外周面を有した円柱状の基材と、前記収容室に対向する外周面を有し前記外周面に積層される積層部と、を有し、
前記円柱部材の前記積層部の前記外周面は、前記円柱部材の前記基材の前記外周面よりも摩擦係数が大きい、
請求項1~6のうちいずれか一つに記載の鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両は、衝突時に運転室や客室などに作用する衝撃力を吸収して緩和するエネルギー吸収体を備えるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平06-013978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の鉄道車両では、衝突時に作用する衝撃力の吸収性能の向上を図ることができれば有益である。
【0005】
本発明が解決しようとする課題の一つは、鉄道車両において衝突時に作用する衝撃力の吸収性能の向上を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の鉄道車両は、台枠と、台車と、中間構体と、先頭構体と、被保護構体と、エネルギー吸収体と、を備える。前記台車は、前記台枠に対して第1の方向側に位置し、前記台枠に固定されている。前記中間構体は、前記台枠に対して前記第1の方向の反対の第2の方向側に位置し、前記台枠に固定されている。前記先頭構体は、前記中間構体に対して前記第1の方向と直交する第3の方向側に並び、前記台枠に固定されている。前記被保護構体は、前記中間構体に対して前記第3の方向の反対の第4の方向側に並び、前記台枠に固定されている。前記エネルギー吸収体は、前記先頭構体の前記第3の方向側の端部と前記中間構体の前記第3の方向側の端部と前記被保護構体の前記第3の方向側の端部とのうち少なくともいずれか一つに対して前記第3の方向側に並んで固定されている。前記エネルギー吸収体は、ベース部材と、複数の壁と、底部材と、複数の円柱部材と、を有する。前記ベース部材は、板状であり、前記エネルギー吸収体が固定された前記端部に固定されている。前記複数の壁は、前記第1の方向および前記第3の方向と直交する第5の方向に間隔を空けて並び前記ベース部材に固定された一対の端部から前記第5の方向の中央部に向かうにつれて前記第3の方向に向かう凸状に形成され、前記ベース部材に対して前記第3の方向側に互いに並んで配置され、前記第3の方向に隣り合う二つの間に収容室が設けられている。前記底部材は、板状であり、前記収容室に対して前記第1の方向側に位置し、前記ベース部材に固定されている。前記複数の円柱部材は、前記第1の方向に延び、前記一対の端部の一方から他方に向けて前記壁に沿って一例に並んで前記収容室に収容されるとともに前記底部材に置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態の鉄道車両の例示的な斜視図である。
図2図2は、実施形態の鉄道車両におけるエネルギー吸収体の例示的な斜視図である。
図3図3は、図2のIII-III断面図である。
図4図4は、実施形態の鉄道車両の前端部の例示的な断面図である。
図5図5は、実施形態の鉄道車両における衝突シミュレーションの結果を例示的に示す図である。
図6図6は、実施形態の第1の変形例の鉄道車両におけるエネルギー吸収体の例示的な平面図である。
図7図7は、実施形態の第2の変形例の鉄道車両におけるエネルギー吸収体の例示的な平面図である。
図8図8は、実施形態の第3の変形例の鉄道車両におけるエネルギー吸収体の例示的な平面図である。
図9図9は、実施形態の第4の変形例の鉄道車両における円柱部材の例示的な斜視図である。
図10図10は、実施形態の第5の変形例の鉄道車両における円柱部材の例示的な斜視図である。
図11図11は、実施形態の第6の変形例の鉄道車両における板部材の一部の例示的な断面図である。
図12図12は、実施形態の第7の変形例の鉄道車両における円柱部材の一部の例示的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下の複数の実施形態には、同様の構成要素が含まれている。それら同様の構成要素には共通の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される。また、本明細書では、序数は、部品や、部材、部位、位置、方向等を区別するためだけに用いられており、順番や優先度を示すものではない。
【0009】
[実施形態]
<鉄道車両の構成>
図1は、実施形態の鉄道車両10の例示的な斜視図である。図1は、斜め前方から見た鉄道車両の概略形状を示している。以下の説明では、鉄道車両10の進行方向を前方と称し、鉄道車両の後退方向を後方と称し、前方および後方を含む方向を前後方向と称する。以下、特に言及しない限り、上下方向、幅方向、および前後方向は、鉄道車両10の上下方向、幅方向、および前後方向である。
【0010】
また、以下の説明では、便宜上、三方向が定義されている。X方向は、前方に沿う。Y方向は、鉄道車両10の幅方向に沿う。Z方向は、鉄道車両10の上下方向(高さ方向)の上方に沿う。X方向、Y方向、およびZ方向は、互いに直交する。X方向は、第3の方向の一例である。X方向の反対方向は、第4の方向の一例である。Y方向は、第5の方向の一例である。Z方向は、第2の方向の一例である。Z方向の反対方向は、第1の方向の一例である。
【0011】
図1に示されるように、鉄道車両10は、車体11と、台車12と、エネルギー吸収体30とを備える。車体11は、台枠21と、先頭構体22と、中間構体23と、運転室構体(被保護構体)24と、客室構体25とを備える。運転室構体24の内部には、運転室が設けられ、客室構体25の内部には、客室が設けられている。
【0012】
台枠21の上部に、先頭構体22と中間構体23と運転室構体24と客室構体25とが配置されている。すなわち、先頭構体22と中間構体23と運転室構体24と客室構体25とは、台枠21に対して上方(Z方向)に位置している。先頭構体22と中間構体23と運転室構体24と客室構体25とは、台枠21に固定されている。先頭構体22は、後部に中間構体23が一体に設けられ、中間構体23は、後部に運転室構体24が一体に設けられ、運転室構体24は、後部に客室14が一体に設けられている。すなわち、先頭構体22は、中間構体23に対して前方(X方向)側に並び、台枠21に固定されている。運転室構体24は、中間構体23に対して後方(X方向の反対方向)側に並び、台枠21に固定されている。なお、台枠21の厚さ方向は、Z方向に沿う。運転室構体24は、被保護構体の一例である。
【0013】
鉄道車両10は、例えば、列車であることから、運転室構体24の後方に客室構体25が配置されている。但し、鉄道車両10は、列車に限らず、運転室構体24の後方に客室構体25以外の被保護構体が配置される車両であってもよく、先頭構体22の後方に直接客室構体25が配置される車両であってもよい。
【0014】
台車12は、台枠21の下部に、前後方向に所定間隔を空けて複数設けられている。台車12は、枕ばね(不図示)を介して台枠21の下部に装着されている。台車12は、複数の車輪26を有する。台車12は、前端部に連結器27が設けられている。
【0015】
鉄道車両10は、地面に敷設されたレール(不図示)上に配置され、レールに沿って前進および後退可能である。台車12は、レール100上に移動自在に配置される。
【0016】
エネルギー吸収体30は、先頭構体22のX方向側の端部22aに対してX方向側に並び、端部22aに固定されている。すなわち、エネルギー吸収体30は、先頭構体22の端部22aと中間構体23の端部23aと運転室構体24の端部24aと客室構体25の端部25aとのうち端部22aに設けられている。具体的には、エネルギー吸収体30は、先頭構体22の端部22aに含まれる壁22bの前面に固定されている。壁22bは、Y-Z平面に広がる板状である。
【0017】
<エネルギー吸収体30の構成>
図2は、実施形態の鉄道車両10におけるエネルギー吸収体30の例示的な斜視図である。図2に示されるように、エネルギー吸収体30は、ベース部材31と、複数の板部材32と、底部材33と、複数の円柱部材34と、を有する。なお、図2では、複数の板部材32のうち前方側の板部材32の一部が省略されている。
【0018】
ベース部材31は、板状であり、一対の被固定部31aと、一対の接続部31bと、板部31cとを有する。ベース部材31は、折り曲げ加工がされた板部材によって構成されている。ベース部材31は、鉄等の金属材料によって構成されている。
【0019】
一対の被固定部31aは、上下方向(Z方向)に間隔を空けて並べられている。被固定部31aは、Y-Z平面に沿って広がる板状である。被固定部31aには、幅方向(Y方向)に間隔を空けて並べられた複数の孔31dが設けられている。孔31dは、被固定部31aを、被固定部31aの厚さ方向(X方向)に貫通している。
【0020】
一対の接続部31bは、一対の被固定部31aにおける互いに対向する端部から前方(X方向)に延びている。接続部31bは、X-Y平面に広がる板状である。
【0021】
板部31cは、一対の接続部31bのそれぞれの前端部間に亘っている。板部31cは、Y-Z平面に沿って広がる板状である。
【0022】
図3は、図2のIII-III断面図である。図3に示されるように、複数の板部材32は、ベース部材31に対して前方(X方向)側に位置し、互いに前後方向(X方向)に並んでいる。換言すると、複数の板部材32は、X方向に積層されている。板部材32は、一例として、三つ設けられている。複数の板部材32は、一対の被固定部32aと、壁32bと、をそれぞれが有する。板部材32は、例えば、鉄等の金属材料によって構成されている。
【0023】
一対の被固定部32aは、幅方向(Y方向)に間隔を空けて位置している。被固定部32aは、Y-Z平面に沿って広がる板状である。複数の板部材32の一対の被固定部32aは、X方向に重ねられた状態で、ベース部材31に固定されている。
【0024】
壁32bは、一対の被固定部32a間に亘っている。壁32bは、Y方向(第5の方向)に間隔を空けて並んだ一対の端部32baを有する。一対の端部32baは、一対の被固定部32aに接続され一対の被固定部32aを介してベース部材31に固定されている。壁32bは、当該壁32bの一対の端部32baから当該壁32bのY方向の中央部32bbに向かうにつれてX方向に向かう凸状に形成されている。すなわち、壁32bは、当該壁32bの幅方向(Y方向)の中央部62bに向かうにつれてX方向に向かう凸状に一対の被固定部32aからX方向に突出している。具体的には、壁32bは、一対の端部32baから中央部32bbに向かうにつれてX方向に向かう湾曲板状である。複数の壁32bは、ベース部材31に対してX方向側に互いに並んで配置され、X方向に隣り合う二つの間に収容室35(空間)が設けられている。壁32bは、凸部とも称される。
【0025】
複数の壁32bは、ベース部材31に対してX方向側に互いに間隔を空けて並んで配置されている。X方向に隣り合う二つの壁32bの間に収容室35が設けられている。換言すると、X方向に隣り合う二つの壁32bによって収容室35が形成されている。本実施形態では、板部材32が三つ設けられているので、収容室35は、二つ設けられている。
【0026】
底部材33は、収容室35に対してZ方向の反対方向側に位置している。換言すると、底部材33は、収容室35の下端部を閉塞している。底部材33は、X-Y平面に沿って広がる板状である。底部材33は、ベース部材31に固定されている。一例として、底部材33は、後端部がベース部材31に溶接等によって直接固定されている。
【0027】
各収容室35には、複数の円柱部材34が収容されている。複数の円柱部材34は、Z方向の反対方向に延び、一対の端部32baの一方から他方に向けて壁32bに沿って一例に並んで収容室35に収容されるとともに底部材33に置かれている。複数の円柱部材34は、直径が互いに同じであってもよいし、直径が互いに異なっていてもよい。例えば、複数の円柱部材34は、それらの列の中央部に位置する円柱部材34に径よりも、それらの列の両端部に位置する円柱部材34の径の方が小さくてよい。このとき、複数の円柱部材34は、それらの列の中央部から両端部に向かうにつれて径が小さくなってもよい。円柱部材34は、一例として中空である。換言すると、円柱部材34は、円筒状である。なお、円柱部材34は、中実であってもよい。円柱部材34は、例えばアルミニウム等の金属材料によって構成されている。円柱部材34の降伏応力は、板部材32の降伏応力よりも小さい。すなわち、板部材32の降伏応力は、円柱部材34の降伏応力よりも大きい。
【0028】
図4は、実施形態の鉄道車両10の前端部の例示的な断面図である。詳細には、図4は、X-Z平面での鉄道車両10の前端部の断面を示す。図4に示されるように、複数の板部材32は、ボルト43とナット44とによってベース部材31に固定されている。ボルト43の頭部は、互いに重ねられた複数の被固定部32aの前方(X方向)側に位置している。ボルト43の軸部は、各被固定部32aの孔32cと、ベース部材31の板部31cに設けられた孔31eとに挿通されて、一部が板部31cからX方向の反対方向に突出している。このボルト43の軸部の一部にナット44が結合されており、ボルト43とナット44とによって、複数の被固定部32aが板部31cに締結されている。
【0029】
また、ベース部材31は、ボルト41とナット42とによって先頭構体22の端部22aの壁22bに固定されている。ボルト43の頭部は、ベース部材31の被固定部31aの前方(X方向)側に位置している。ボルト41の軸部は、被固定部31aの孔31dと、壁22bに設けられた孔22cとに挿通されて、一部が壁22bからX方向の反対方向に突出している。このボルト41の軸部の一部にナット42が結合されており、ボルト41とナット42とによって、被固定部31aが壁22bに締結されている。孔31eは、板部31cの厚さ方向(X方向)に貫通している。
【0030】
<エネルギー吸収体30の作用>
図5は、実施形態の鉄道車両10における衝突シミュレーションの結果を例示的に示す図である。図5の衝突シミュレーションは、鉄道車両10の前端部が障害物と衝突して、衝撃力がエネルギー吸収体30に加わった場合のシミュレーションである。図5の(a)は、鉄道車両10の前端部が障害物と衝突する前の状態である、図5(b)は、鉄道車両10の前端部が障害物と衝突して衝撃吸収過程の状態である。図5(c)は、鉄道車両10の前端部と障害物との衝突が完了した後の状態である。すなわち、鉄道車両10の前端部が障害物と衝突する際には、エネルギー吸収体30は、図5の(a)の状態から図5の(b)の状態を経て図5の(c)のような形状となる。
【0031】
鉄道車両10の前端部が障害物と衝突して、鉄道車両10の前端部に衝撃力が加わった場合、先頭構体22の壁22bに衝撃力が伝わる前に、エネルギー吸収体30が衝撃力を受ける。エネルギー吸収体30では、衝撃力は、まずは複数の板部材32のうち最も前方に位置する板部材の壁32bに伝わり、その後、この壁32bの後方に位置する円柱部材34、この円柱部材34の後方に位置する壁32b、この壁32bの後方に位置する円柱部材34、この円柱部材34の後方に位置する壁32bに順に伝わる。このとき、壁32bがつぶれ変形するとともに、壁32bと円柱部材34とが相対的に滑る。また、円柱部材34はつぶれ変形し、隣りの円柱部材34と相対的に滑る。この際、鉄道車両10に入力された初期エネルギーE0は、少なくとも、板部材32の変形エネルギーE1、板部材32と円柱部材34と間の摩擦エネルギーE2、円柱部材34同士の摩擦エネルギーE3、円柱部材34の変形エネルギーE4に消費され、それらの分だけ先頭構体22の壁22bに伝わる量が減少する。すなわち、衝撃力がエネルギー吸収体30を経由し、先頭構体22の壁22bに伝達される時刻には、初期エネルギーE0は、E´まで減少する。ここで、E´=E0-E1-E2-E3-E4である。E1、E4は、各部材の材質や板厚によって決まり、E2、E3は、部材の表面粗さや粘性減衰によって決まる。このように、エネルギー吸収体30は、板部材32および円柱部材34の変形と、板部材32と円柱部材34との摩擦と、円柱部材34同士の摩擦にエネルギーを消費することにより、衝撃力を吸収する。このように、衝撃力が吸収され、先頭構体22の端部22aに衝撃力が到達するまで時間がかかることで、先頭構体22の端部22aにかかるピーク荷重が低減し、運転室の急激な減速を低減することができる。
【0032】
以上のように、本実施形態の鉄道車両10は、台枠21と、台車12と、中間構体23と、先頭構体22と、運転室構体24(被保護構体)と、エネルギー吸収体30と、を備える。台車12は、台枠21に対してZ方向の反対方向(第1の方向)側に位置し、台枠21に固定されている。中間構体23は、台枠21に対してZ方向(第2の方向)側に位置し、台枠21に固定されている。先頭構体22は、中間構体23に対してZ方向と直交するX方向(第3の方向)側に並び、台枠21に固定されている。運転室構体24は、中間構体23に対してX方向の反対方向(第4の方向)側に並び、台枠21に固定されている。エネルギー吸収体30は、運転室構体24の端部22aに対してX方向側に並んで固定されている。エネルギー吸収体30は、ベース部材31と、複数の壁32bと、底部材33と、複数の円柱部材34と、を有する。ベース部材31は、板状であり、端部22aに固定されている。複数の壁32bは、それぞれ、Z方向およびX方向と直交するY方向(第5の方向)に間隔を空けて並びベース部材31に固定された一対の端部32baからY方向の中央部32bbに向かうにつれてX方向に向かう凸状に形成されている。複数の壁32bは、ベース部材31に対してX方向側に互いに並んで配置され、X方向に隣り合う二つの間に収容室35が設けられている。底部材33は、板状であり、収容室35に対してZ方向の反対方向側に位置し、ベース部材31に固定されている。複数の円柱部材34は、Z方向の反対方向に延び、一対の端部32baの一方から他方に向けて壁32bに沿って一例に並んで収容室35に収容されるとともに底部材33に置かれている。
【0033】
このような構成によれば、壁32bが、一対の端部32baから当該一対の端部32ba間のY方向の中央部32bbに向かうにつれてX方向に向かう凸状に形成されているので、壁32bの全体が平坦な形状の構成に比べて、鉄道車両10の衝突時において壁32bの変形量が大きくなりやすい。よって、鉄道車両10において衝突時に作用する衝撃力の吸収性能を向上させることができる。また、複数の円柱部材34が、壁32bに沿って一例に並んで収容室35に収容されていることにより、鉄道車両10の衝突時において、板部材32と円柱部材34との相対移動や、隣り合う円柱部材34のすべりが発生しやすい。よって、鉄道車両10の衝突時において、板部材32と円柱部材34との間の摩擦力や、隣り合う円柱部材34の間の摩擦力が大きくなりやすい。したがって、鉄道車両10において衝突時に作用する衝撃力の吸収性能を向上させることができる。
【0034】
また、エネルギー吸収体30は、ベース部材31に対してX方向側に位置し互いにX方向に並んだ複数の板部材32を有する。板部材32は、Y方向に間隔を空けて位置しベース部材31に固定された一対の被固定部32aと、壁32bと、を有する。壁32bの一対の端部32baは、一対の被固定部32aを介してベース部材31に固定されている。
【0035】
このような構成によれば、複数の板部材32を重ねることにより収容室35を形成することができる。
【0036】
また、円柱部材34の降伏応力は、板部材32の降伏応力よりも小さい。
【0037】
このような構成によれば、円柱部材34の強度限界前に板部材32が変形する。この円柱部材34の変形により、衝撃力を吸収することができる。別の言い方をすると、上記構成によれば、板部材32の降伏応力が円柱部材34の降伏応力よりも小さい構成に比べて、衝撃力が入力された場合に円柱部材34の後側の板部材32が突っ張ることができるので、円柱部材34の変形が促進される。
【0038】
また、エネルギー吸収体30は、ボルト41とナット42とによって先頭構体22の端部22aの壁22bに固定されている。
【0039】
このような構成によれば、物体との衝突後のエネルギー吸収体30の交換がしやすい。
【0040】
なお、本実施形態では、エネルギー吸収体30が先頭構体22の端部22aに設けられた例が示されたが、これに限定されない。例えば、エネルギー吸収体30は、中間構体23のX方向側の端部23aに対してX方向側に並び、端部23aに固定されていてもよい。この場合、エネルギー吸収体30は、中間構体23の端部23aと、先頭構体22のX方向の反対方向側の端部とに挟まれる。すなわち、エネルギー吸収体30は、中間構体23と先頭構体22との間に介在する。また、エネルギー吸収体30は、運転室構体24のX方向側の端部24aに対してX方向側に並び、端部24aに固定されていてもよい。この場合、エネルギー吸収体30は、運転室構体24の端部24aと、中間構体23のX方向の反対方向側の端部とに挟まれる。すなわち、エネルギー吸収体30は、運転室構体24と中間構体23との間に介在する。また、エネルギー吸収体30は、客室構体25のX方向側の端部25aに対してX方向側に並び、端部25aに固定されていてもよい。この場合、エネルギー吸収体30は、客室構体25の端部25aと、運転室構体24のX方向の反対方向側の端部とに挟まれる。すなわち、エネルギー吸収体30は、客室構体25と運転室構体24との間に介在する。この場合、客室構体25は、被保護構体の一例である。また、エネルギー吸収体30は、先頭構体22の端部22aと中間構体23の端部23aと運転室構体24の端部24aと客室構体25の端部25aとのうち一つに設けられていてもよいし2つ以上に設けられていれていてもよい。すなわち、エネルギー吸収体30は、先頭構体22の端部22aと中間構体23の端部23aと運転室構体24の端部24aと客室構体25の端部25aとのうち少なくとも一つ設けられていればよい。
【0041】
また、本実施形態では、板部材32が一対の被固定部32aと壁32bとを有した例が示されたが、これに限定されない。例えば、板部材32は、一対の被固定部32aを有さず、壁32bだけを有していてもよい。この場合、壁32bの端部32baが、ベース部材31に直接固定されてよい。また、Z方向に並ぶ二つの壁32bのうちZ方向側の壁32bの端部32baは、Z方向の反対側の壁32bに固定され、当該Z方向の反外側の壁32bを介してベース部材31に固定されていてもよい。
【0042】
また、本実施形態では、複数の壁32bが複数の板部材32に設けられた例が示されたが、これに限定されない。例えば、複数の壁32bは、互いに一体に形成され、一つの部材を構成していてもよい。
【0043】
また、本実施形態では、底部材33がベース部材31に溶接等によって直接固定されて例が示されたが、これに限定されない。例えば、底部材33は、壁32bに溶接等によって固定され、壁32bを介してベース部材31にされていてもよいし、ベース部材31と壁32bとの両方に溶接等によって固定されていてもよい。
【0044】
[実施形態の第1の変形例]
図6は、実施形態の第1の変形例の鉄道車両10におけるエネルギー吸収体30の例示的な平面図である。第1の変形例では、板部材32は、二つであり、収容室35は、一つである。
【0045】
[実施形態の第2の変形例]
図7は、実施形態の第2の変形例の鉄道車両10におけるエネルギー吸収体30の例示的な平面図である。第2の変形例では、板部材32の壁32bは、一対の被固定部32aの一方から他方に向けて一列に並んだ複数の平板部32mを有する。複数の平板部32mは、び、曲部32nを介して互いに接続されている。すなわち、壁32bは、一対の被固定部32aの一方から他方に向けて一列に並び、曲部を介して接続された複数の平板部32mを有する。また、第2の変形例では、板部材32は、三つであり、収容室35は、二つである。
【0046】
[実施形態の第3の変形例]
図8は、実施形態の第3の変形例の鉄道車両10におけるエネルギー吸収体30の例示的な平面図である。第3の変形例では、第2の変形例と同様に、壁32bは、一対の被固定部32aの一方から他方に向けて一列に並び、曲部を介して接続された複数の平板部32mを有する。ただし、第3の変形例では、第2の変形例では、板部材32は、二つであり、収容室35は、一つである。
【0047】
[実施形態の第4の変形例]
図9は、実施形態の第4の変形例の鉄道車両10における円柱部材34の例示的な斜視図である。第4の変形例では、円柱部材34には、当該円柱部材34の径方向に当該円柱部材34を貫通した複数の孔34cが設けられている。孔34cは、円柱部材34の外周面34aと内周面34bとに開口している。このような構成によれば、孔34cが設けられていない構成に比べて、円柱部材34を軽量化することができる。孔34cは、肉抜き部の一例である。なお、肉抜き部は、凹部や溝であってもよい。
【0048】
[実施形態の第5の変形例]
図10は、実施形態の第5の変形例の鉄道車両10における円柱部材34の例示的な斜視図である。第5の変形例では、円柱部材34は、中実である。また、円柱部材34には、当該円柱部材34の径方向に当該円柱部材34を貫通した複数の孔34cが設けられている。このような構成によれば、孔34cが設けられていない構成に比べて、円柱部材34を軽量化することができる。孔34cは、肉抜き部の一例である。なお、肉抜き部は、凹部や溝であってもよい。
【0049】
[実施形態の第6の変形例]
図11は、実施形態の第6の変形例の鉄道車両10における板部材32の一部の例示的な断面図である。第6の変形例では、板部材32は、基材32dと、積層部32e,32fを有する。基材32dは、板状である。基材32dは、X方向と反対方向側の面32gと、X方向側の面32hと、を有する。三つの板部材32のうちX方向側の板部材32の基材32dは、面32gが収容室35に対向する。三つの板部材32のうち真ん中の板部材32の基材32dは、面32g,32hがそれぞれ収容室35に対向する。三つの板部材32のうちX方向の反対方向側の板部材32の基材32dは、面32hが収容室35に対向する。
【0050】
積層部32e,32fは、基材32dの面32g,32hに積層されている。積層部32e,32fは、X方向と反対方向側の面32jと、X方向側の面32iと、を有する。三つの板部材32のうちX方向側の板部材32は、面32iが収容室35に対向する。三つの板部材32のうち真ん中の板部材32は、面32i,32jがそれぞれ収容室35に対向する。三つの板部材32のうちX方向の反対方向側の板部材32は、面32jが収容室35に対向する。積層部32e,32fは、例えば、無機塗料や有機塗料、錆等である。積層部32e,32fの面32i,32jは、基材32dの面32g,32hよりも摩擦係数が大きい。摩擦係数は、例えば円柱部材34に対するものである。
【0051】
以上のように、本変形例では、板部材32は、収容室35に対向する面(面32gと面32hとの少なくとも一方)を有した板状の基材32dと、収容室35に対向する面(面32iと面32jとの少なくとも一方)を有し基材32dの面(面32gまたは面32h)に積層された積層部32e,32fと、を有する。積層部32e,32fの面32i,32jは、基材32dの面32g,32hよりも摩擦係数が大きい。
【0052】
このような構成によれば、板部材32に積層部32e,32fが設けられていない構成に比べて、板部材32と円柱部材34との間の摩擦力を大きくすることができるので、鉄道車両10において衝突時に作用する衝撃力の吸収性能をより一層向上させることができる。
【0053】
[実施形態の第7の変形例]
図12は、実施形態の第7の変形例の鉄道車両10における円柱部材34の一部の例示的な断面図である。第7の変形例では、円柱部材34は、基材34dと、積層部34eと、を有する。基材34dは、中空または中実の円柱状である。なお、図12では、中空の基材34dの例が示されている。基材34dは、収容室35に対向する外周面34fを有する。積層部34eは、基材34dの外周面34fに積層されている。積層部34eは、収容室35に対向する外周面34aを有する。積層部342eは、例えば、無機塗料や有機塗料、錆等である。積層部34eの外周面34aは、基材34dの外周面34fよりも摩擦係数が大きい。摩擦係数は、例えば他の円柱部材34や、板部材32に対するものである。
【0054】
以上のように、本変形例では、円柱部材34は、収容室35に対向する外周面34fを有した円柱状の基材34dと、収容室35に対向する外周面34aを有し外周面34fに積層される積層部34eと、を有する。円柱部材34の積層部34eの外周面34aは、円柱部材34の基材34dの外周面34fよりも摩擦係数が大きい
【0055】
このような構成によれば、円柱部材34に積層部34eが設けられていない構成に比べて、板部材32と円柱部材34との間の摩擦力や隣り合う二つの円柱部材34の間の摩擦力を大きくすることができるので、鉄道車両10において衝突時に作用する衝撃力の吸収性能をより一層向上させることができる。
【0056】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
10…鉄道車両
11…車体
12…台車
21…台枠
22…先頭構体
22a…端部
23…中間構体
23a…端部
24…運転室構体(被保護構体)
24a…端部
25…客室構体(被保護構体)
25a…端部
30…エネルギー吸収体
31…ベース部材
32…板部材
32a…被固定部
32b…壁
32ba…端部
32bb…中央部
32d…基材
32e,32f…積層部
32g,32h,32j,32i…面
32m…平板部
32n…曲部
33…底部材
34…円柱部材
34a…外周面
34c…孔(肉抜き部)
34d…基材
34e…積層部
34f…外周面
35…収容室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12