IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 岡田 英明の特許一覧

<>
  • 特開-青果物の濃縮液汁の製造方法 図1
  • 特開-青果物の濃縮液汁の製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045261
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】青果物の濃縮液汁の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 19/00 20160101AFI20230327BHJP
   A23B 7/02 20060101ALI20230327BHJP
   A23L 2/04 20060101ALI20230327BHJP
   A23L 2/08 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
A23L19/00 A
A23B7/02
A23L2/04
A23L2/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153556
(22)【出願日】2021-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】521415066
【氏名又は名称】岡田 英明
(74)【代理人】
【識別番号】110002804
【氏名又は名称】弁理士法人フェニックス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 英明
【テーマコード(参考)】
4B016
4B117
4B169
【Fターム(参考)】
4B016LC02
4B016LC06
4B016LC07
4B016LE05
4B016LG01
4B016LG05
4B016LP01
4B016LP02
4B016LP05
4B016LP08
4B016LP13
4B117LC03
4B117LC04
4B117LG05
4B117LG08
4B117LP01
4B117LP03
4B117LP20
4B169AA04
4B169BA04
(57)【要約】
【課題】 乾燥温度管理および時間管理を巧みに行うによって、ビタミン成分を破壊することなく、かつ、旨味成分を増加させることができる青果物の濃縮液汁の製造方法を提供すること。
【解決手段】 洗浄した青果物を40~80℃の乾燥雰囲気下に12時間以上晒して、青果物の重量を30~70%減少せしめた後、
当該青果物を破砕して搾汁するという技術的手段を採用した。
【効果】 青果物の熟成(追熟)を促すと共に、ビタミン成分を破壊することなく、かつ、旨味成分を増加させることができる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄した青果物を40~80℃の乾燥雰囲気下に12時間以上晒して、青果物の重量を30~70%減少せしめた後、
当該青果物を破砕して搾汁することを特徴とする青果物の濃縮液汁の製造方法。
【請求項2】
異なる温度帯および乾燥時間からなる複数の乾燥工程を有しており、
第一温度帯の雰囲気下で、かつ、第一乾燥時間で処理する第一乾燥工程を行った後に、
前記第一温度帯よりも低い第二温度帯の雰囲気下で、かつ、前記第一乾燥時間よりも長い第二乾燥時間で処理する第二乾燥工程を行うことを特徴とする請求項1記載の青果物の濃縮液汁の製造方法。
【請求項3】
前記第一温度帯が55~65℃であり、かつ、前記第二高温度帯が45~55℃であることを特徴とする請求項2記載の青果物の濃縮液汁の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、青果物加工品の製造技術の改良、更に詳しくは、乾燥温度および乾燥時間を巧みに管理することによって、ビタミン成分の減少を防止して、かつ、旨味成分を増加させることができる青果物の濃縮液汁の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、野菜や果物など(青果物)の液汁を利用したジュースやピュレ、ペースト、ジャム、エキスなどの加工品があり、種々の製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来、かかる加工品の製造にあっては、運搬や保管等の問題から容積を小さくする必要があり、液汁を一旦濃縮させてから希釈できるようにする濃縮還元法がある。
【0004】
こうした濃縮液を製造するためには、原料を破砕してから搾汁し、水分を蒸発させるためおよび殺菌処理のために加熱処理(煮詰処理)を行った後、裏漉し作業を行っていることが多い。
【0005】
しかしながら、このような煮詰めによる加熱処理は、ビタミン類(特にビタミンC)を減少させてしまうという問題がある。しかも、先に破砕を行ってから加熱して水分を減少させると、ビタミン類の減少がより顕著になってしまうという問題がある。
【0006】
更にまた、原料をそのまま搾汁しただけの液汁は、十分に熟成されておらず、味わいに深みが無く、旨味に今一つ物足りなさがあるという不満がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来の青果物加工品の製造技術に上記のような問題があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、乾燥温度管理および時間管理を巧みに行うによって、ビタミン成分を破壊することなく、かつ、旨味成分を増加させることができる青果物の濃縮液汁の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者が上記技術的課題を解決するために採用した手段を、添付図面を参照して説明すれば、次のとおりである。
【0010】
即ち、本発明は、洗浄した青果物を40~80℃の乾燥雰囲気下に12時間以上晒して、青果物の重量を30~70%減少せしめた後、
当該青果物を破砕して搾汁するという技術的手段を採用したことによって、青果物の濃縮液汁の製造方法を完成させた。
【0011】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、異なる温度帯および乾燥時間からなる複数の乾燥工程を有しており、
第一温度帯の雰囲気下で、かつ、第一乾燥時間で処理する第一乾燥工程を行った後に、
前記第一温度帯よりも低い第二温度帯の雰囲気下で、かつ、前記第一乾燥時間よりも長い第二乾燥時間で処理する第二乾燥工程を行うという技術的手段を採用することもできる。
【0012】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、前記第一温度帯を55~65℃にして、かつ、前記第二高温度帯を45~55℃にするという技術的手段を採用することもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、洗浄した青果物を40~80℃の乾燥雰囲気下に12時間以上晒して、青果物の重量を30~70%減少せしめた後、当該青果物を破砕して搾汁することによって、青果物の熟成(追熟)を促すと共に、ビタミン成分を破壊することなく、かつ、旨味成分を増加させることができる。
【0014】
したがって、本発明の製造方法によれば、短い工程で、旨味成分の増加を効率的に行うことができるため、人件費等のコストを削減することができる。また、日照不足で糖度等が上がらなかった場合であっても、付加価値を与えることができることから、産業上の利用価値は高い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態の製造方法を表わすフローチャートである。
図2】本発明の実施形態の製造方法の変形例を表わすフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態を図1および図2に基づいて説明する。本実施形態では、まず、青果物を洗浄する(ステップ〔1〕)。本実施形態における「青果物」とは、生鮮野菜および果実類の総称をいう。
【0017】
生鮮野菜としては、トマト、キャベツ、レタス、キュウリ、チンゲンサイ、白菜、もやし、セロリ、小松菜、茄子、カブ、ピーマン、パプリカ、オクラ、アスパラガス、インゲンマメ、カリフラワー、玉ねぎ、ほうれん草、マッシュルーム、生姜、ブロッコリー、シュンギク、長ねぎ、筍、椎茸、ナメコ、舞茸、シメジ、エノキダケ、エリンギ、里芋、南瓜、大根、人参、ゴボウ、ジャガイモ、長芋、蓮根、トウモロコシ等が挙げられる。
【0018】
また、果実類としては、ブドウ、イチゴ、桃、すもも、マンゴー、パパイヤ、スイカ、メロン、リンゴ、梨、柿、バナナ、枇杷、ザクロ、レイシ、プラム、無花果、金柑、アケビ、杏、パイナップル、キウイフルーツ、ドラゴンフルーツ、うめ、さくらんぼ、パッションフルーツ、クランベリー、ブラックベリー、ブルーベリー、ラズベリー、オレンジ、グレープフルーツ等が挙げられる。
【0019】
本実施形態における青果物は、特に、トマトまたはブドウを採用するのが好適である。また、洗浄方法としては、シャワー、バブリング、ブラッシング、研磨、超音波振動などを採用することができ、表面を損傷しないものが望ましい。
【0020】
次に、青果物を40~80℃(より好ましくは50~60℃)の乾燥雰囲気下に12時間以上晒す(ステップ〔2〕)。40℃よりも低いと雑菌が繁殖しやすくなり、80℃よりも高いとビタミン類(特にビタミンC)を減少させてしまうからである。また、12時間より短いと旨味成分が十分に増加しない。温度と時間は、青果物の種類や分量、個体差(果皮の状態、全体の重量・含水量など)によって条件が異なる。
【0021】
本実施形態では、自然乾燥できない温度帯であることから、乾燥機械(乾燥庫)を使用して強制的に乾燥工程を行う。具体的には、電力加熱した熱風を密閉した庫内に送入するとともに、青果物から出た水分(湿気)を庫外に排出する。庫内には青果物を載置可能なトレイが配設されており、熱風が循環して庫内環境を均一にすることができる。また、庫内温度や乾燥時間は電気的に制御可能である。
【0022】
なお、このように乾燥機械内に青果物を静置することもできるし、コンベア式に青果物を搬送しながら乾燥できる装置を使用しても良い。また、熱風循環式であるものが好ましいが、表面の焼け(火が通ってしまう)の防止を管理できれば、輻射熱式のヒーターを使用することもできる。
【0023】
そして、青果物の重量を30~70%に減少せしめる。30%よりも小さいと体積があまり減少せず、70%よりも大きいと粘度が高くなって取り扱いがしにくくなるからである。なお、この数値は、全体重量における減少率を示すものである。したがって、ある青果物(例えばトマト)の含水率が95%である場合、水分量の減少率は31~74%となる。
【0024】
然る後、当該青果物を破砕する(ステップ〔3〕)。本実施形態では、ミキサーやハンマークラッシャー、チョッパー、スクリュープレス機などの公知の破砕機を使用することができる。
【0025】
そして、破砕物を搾汁して液汁を得る(ステップ〔4〕)。搾汁機としては、破砕物から果皮や種子、芯、ヘタ等の除去やパルプ粒子の調整などを行うことができる裏漉し機(パルパーフィニッシャー)等を使用することができる。
【0026】
以上のようにして、青果物の濃縮液汁を製造することができる。本実施形態では、青果物の形態のままで所定の時間乾燥させてから、破砕して搾汁することにより、ビタミン類の減少を防止することができるとともに、青果物の熟成を短時間で促進することができ、かつ、青果物中の旨味成分(グルタミン酸、アスパラギン酸、アルギニン酸など)を増加させることができる。
【0027】
こうして製造された濃縮液汁は、乾燥して水分が減少することによって体積を縮小することができるので、嵩張らず、貯蔵や運搬に便利である。そして、この濃縮液汁を希釈することによって、ジュースやエキスなどの加工品にすることができる(濃縮還元)。また、貯蔵や運搬の便宜向上のために、適宜、凍結させることもできる。
【0028】
本実施形態では、濃縮液汁は、必要に応じて、加熱殺菌処理を行う必要があるが、予め乾燥工程において雑菌の繁殖しにくい高温化に晒されていたため、再加熱の時間が短くても良い。
【0029】
本実施形態の変形例について説明する。この変形例では、異なる温度帯および乾燥時間からなる複数の乾燥工程を有する。即ち、第一温度帯の雰囲気下で、かつ、第一乾燥時間で処理する第一乾燥工程を行った後に(ステップ〔2-1〕)、前記第一温度帯よりも低い第二温度帯の雰囲気下で、かつ、前記第一乾燥時間よりも長い第二乾燥時間で処理する第二乾燥工程を行う(ステップ〔2-2〕)。
【0030】
この際、前記第一温度帯を55~65℃にして、かつ、前記第二高温度帯を45~55℃にすることができる。また、第一乾燥時間を1~5時間、第二乾燥時間を12~24時間にすることができる。こうすることによって、乾燥時間全体を短縮できるとともに、旨味成分の増加をより促進することができる。
【0031】
この乾燥工程の後は前記と同様にして、青果物を破砕して、搾汁することによって濃縮液汁を得ることができる(ステップ〔3〕〔4〕)。
【0032】
本発明は、概ね上記のように構成されるが、図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、青果物はトマトやブドウに限らず、他の種類を選択することができる。
【0033】
また、洗浄、乾燥、破砕、搾汁に使用する装置は、青果物の種類や分量、個体差(果皮の状態、全体の重量・含水量など)によって、最適な組み合わせに変更することができ、これら何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
図1
図2