IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝電機サービス株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-情報処理装置 図1
  • 特開-情報処理装置 図2
  • 特開-情報処理装置 図3
  • 特開-情報処理装置 図4
  • 特開-情報処理装置 図5
  • 特開-情報処理装置 図6
  • 特開-情報処理装置 図7
  • 特開-情報処理装置 図8
  • 特開-情報処理装置 図9
  • 特開-情報処理装置 図10
  • 特開-情報処理装置 図11
  • 特開-情報処理装置 図12
  • 特開-情報処理装置 図13
  • 特開-情報処理装置 図14
  • 特開-情報処理装置 図15
  • 特開-情報処理装置 図16
  • 特開-情報処理装置 図17
  • 特開-情報処理装置 図18
  • 特開-情報処理装置 図19
  • 特開-情報処理装置 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045275
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01P 15/00 20060101AFI20230327BHJP
   G11B 20/18 20060101ALI20230327BHJP
   G11B 33/14 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
G01P15/00 C
G11B20/18 512Z
G11B20/18 570Z
G11B20/18 572B
G11B20/18 572F
G11B20/18 576B
G11B33/14 501W
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153580
(22)【出願日】2021-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沼田 優希
(57)【要約】
【課題】受けた振動および衝撃の詳細な分類を特定し、ログとして記録することができる情報処理装置を提供する。
【解決手段】情報処理装置は、加速度センサと、制御部とを備える。加速度センサは、加速度が少なくとも第1の閾値を超える場合に、加速度以降に計測された規定の計測回数分の加速度データ群を第1の記憶部に保存する。制御部は、加速度データ群のジャークノルムの傾きと加速度振幅と周波数とを算出する。また、制御部は、ジャークノルムの傾きと加速度振幅と周波数とに基づいて規定の計測回数分の加速度データ群を高周波振動、低周波振動、および衝撃のいずれかに分類し、振動または衝撃のレベルを判定する。制御部は、規定の計測回数分の加速度データ群の分類結果と動または衝撃のレベルの判定結果とを示すログを第2の記憶部に保存する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
規定の時間ごとに加速度を計測し、前記加速度が少なくとも第1の閾値を超える場合に、前記加速度以降に計測された規定の計測回数分の加速度データ群を第1の記憶部に保存する加速度センサと、
前記加速度データ群のジャークノルムの傾きと前記加速度データ群の振幅である加速度振幅の最大値または平均値と前記加速度データ群の周波数とを算出し、前記ジャークノルムの傾きが第2の閾値未満の場合であって前記加速度振幅の最大値または平均値が第3の閾値より大きい場合に第1のレベルの衝撃を示すログを第2の記憶部に保存し、前記ジャークノルムの傾きが前記第2の閾値未満の場合であって前記加速度振幅の最大値または平均値が前記第3の閾値未満の場合に第2のレベルの衝撃を示すログを前記第2の記憶部に保存し、前記ジャークノルムの傾きが少なくとも前記第2の閾値を超える場合であって前記周波数が少なくとも第4の閾値を超える場合に第1のレベルの高周波振動を示すログを前記第2の記憶部に保存し、前記ジャークノルムの傾きが前記第2の閾値未満の場合であって前記周波数が前記第4の閾値未満であり、かつ、前記加速度振幅が第5の閾値より大きい場合に第1のレベルの低周波振動を示すログを前記第2の記憶部に保存し、前記ジャークノルムの傾きが少なくとも第2の閾値を超える場合であって前記周波数が前記第4の閾値未満であり、かつ、前記加速度振幅が前記第5の閾値未満の場合に第2のレベルの低周波振動を示すログを前記第2の記憶部に保存する、制御部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記加速度センサによって前記第1の閾値を超える加速度が検出された場合、前記第1のレベルの衝撃を示すログ、前記第2のレベルの衝撃を示すログ、前記第1のレベルの高周波振動を示すログ、前記第1のレベルの低周波振動を示すログ、および前記第2のレベルの低周波振動を示すログのうちの少なくともいずれか1つを、前記第2の記憶部に保存されたログファイルに書き込む、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記ログファイルは、少なくとも、ログの書き込み時刻、振動パターン、および、衝撃および振動のレベルを含み、
前記振動パターンは、前記加速度データ群が、衝撃、低周波振動、および高周波振動のいずれの分類に該当するかを示す、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、情報処理装置のメインCPU(Central Processing Unit)である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記加速度センサを制御するマイクロコントローラである、
請求項1から3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記加速度データ群からジャークデータを算出し、
算出した前記ジャークデータからジャークノルムデータを算出し、
算出した前記ジャークノルムデータの移動平均を算出し、
平均化した前記ジャークノルムデータを線形近似することにより直線を求め、
前記直線と始線とがなす角の角度を求めることにより、前記ジャークノルムの傾きを得る、
請求項1から5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報処理装置に内蔵される補助記憶装置であるHDD(Hard Disk Drive)は駆動部品を有しており、また構造が複雑なため、外部からの衝撃や振動により磁気ヘッドや磁気ディスクの損傷、およびデータの破損やOS起動不良等が発生する可能性がある。このため、従来、情報処理装置が受けた振動および衝撃を、加速度センサにより計測された加速度に基づいて検出する技術が知られている。検出された振動および衝撃は、管理者により情報処理装置のメンテナンスおよび障害時の原因分析等に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-155169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術においては、情報処理装置が受けた振動および衝撃の詳細な分類までは特定していなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の情報処理装置は、加速度センサと、制御部とを備える。加速度センサは、規定の時間ごとに加速度を計測し、加速度が少なくとも第1の閾値を超える場合に、加速度以降に計測された規定の計測回数分の加速度データ群を第1の記憶部に保存する。制御部は、加速度データ群のジャークノルムの傾きと加速度データ群の振幅である加速度振幅の最大値または平均値と加速度データ群の周波数とを算出する。また、制御部は、ジャークノルムの傾きが第2の閾値未満の場合であって加速度振幅の最大値または平均値が第3の閾値より大きい場合に第1のレベルの衝撃を示すログを第2の記憶部に保存する。制御部は、ジャークノルムの傾きが第2の閾値未満の場合であって加速度振幅の最大値または平均値が第3の閾値未満の場合に第2のレベルの衝撃を示すログを第2の記憶部に保存する。制御部は、ジャークノルムの傾きが少なくとも第2の閾値を超える場合であって周波数が少なくとも第4の閾値を超える場合に第1のレベルの高周波振動を示すログを第2の記憶部に保存する。制御部は、ジャークノルムの傾きが第2の閾値未満の場合であって周波数が第4の閾値未満であり、かつ、加速度振幅が第5の閾値より大きい場合に第1のレベルの低周波振動を示すログを第2の記憶部に保存する。制御部は、ジャークノルムの傾きが少なくとも第2の閾値を超える場合であって周波数が第4の閾値未満であり、かつ、加速度振幅が第5の閾値未満の場合に第2のレベルの低周波振動を示すログを第2の記憶部に保存する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施形態に係る情報処理装置の構成の一例を示す図である。
図2図2は、実施形態に係る情報処理装置で実行される振動パターンおよび異常有無の判定処理全体の流れの一例を示すメインフローチャートである。
図3図3は、実施形態に係るマイクロコントローラによる加速度データの取得処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図4図4は、実施形態に係るCPUによる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5図5は、実施形態に係るCPUで実行されるジャークノルムの傾き、加速度振幅、および周波数の算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6図6は、実施形態に係るCPUで実行されるジャーク算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図7図7は、実施形態に係るCPUで実行されるジャークノルム算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図8図8は、実施形態に係るCPUで実行されるジャークノルム平均化処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図9図9は、実施形態に係るCPUで実行される振動パターンおよび異常有無の判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図10図10は、実施形態に係るログファイルの一例を示す図である。
図11図11は、実施形態に係る加速度センサで計測された加速度データの一例を示すグラフである。
図12図12は、実施形態に係る加速度センサで計測された加速度データの他の一例を示すグラフである。
図13図13は、図11の加速度データから算出されたジャークデータの一例を示すグラフである。
図14図14は、図12の加速度データから算出されたジャークデータの一例を示すグラフである。
図15図15は、図13のジャークデータから算出されたジャークノルムデータの一例を示すグラフである。
図16図16は、図14のジャークデータから算出されたジャークノルムデータの一例を示すグラフである。
図17図17は、図15のジャークノルムデータから算出された移動平均値の一例である。
図18図18は、図16のジャークノルムデータから算出された移動平均値の一例である。
図19図19は、図17の平均化されたジャークノルムデータを線形近似した直線の一例を示す図である。
図20図20は、図18の平均化されたジャークノルムデータを線形近似した直線の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(実施形態)
図1は、本実施形態に係る情報処理装置1の構成の一例を示す図である。図1に示すように、情報処理装置1は、加速度センサ11、マイクロコントローラ12、CPU(Central Processing Unit)13、ストレージ14、チップセット15、およびメインメモリ16を備える。
【0008】
加速度センサ11は、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical System)技術が適用されたMEMSデジタル加速度センサであり、X軸、Y軸、Z軸の3軸方向の加速度を計測する。
【0009】
加速度センサ11は、制御回路110と、バッファメモリ111と、センサ素子112とを備える。
【0010】
センサ素子112は、物体の動きを検出する素子である。具体的には、センサ素子112は、加速度センサ11の種類によって、圧電素子またはピエゾ抵抗素子等が用いられる。本実施形態においては、加速度センサ11の種類は特に限定されるものではない。
【0011】
制御回路110は、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の電子回路であり、加速度センサ11を制御する。より詳細には、制御回路110は、センサ素子112による物体の動きの検出結果に基づいて、X軸、Y軸、Z軸の3軸方向の加速度を計測する。
【0012】
制御回路110は、規定の時間ごとに加速度を計測し、計測した加速度が少なくとも第1の閾値を超える場合に、当該第1の閾値を超える加速度以降に計測された規定の計測回数分の加速度データをバッファメモリ111に保存する。第1の閾値の値は特に限定されるものではないが、情報処理装置1の開発者による事前評価やフィールドテストの結果に応じて決定されても良い。規定の時間は加速度の計測周期であるが、当該規定の時間の長さは特に限定されるものではない。なお、計測した加速度が第1の閾値と等しい場合には、「第1の閾値を超える」および「第1の閾値より小さい(未満)」のいずれか一方に含めてもよい。また、本実施形態における他の閾値との比較の際も同様に、閾値と等しい値は、「閾値を超える」および「閾値より小さい」のいずれか一方に含めてもよい。閾値と等しい値が「閾値を超える」および「閾値より小さい」のいずれに含まれるかは、特に限定されるものではない。また、本実施形態において、「以上」という記載は「を超える」と読み替えてもよい。また、本実施形態において、「以下」という記載は「未満」と読み替えてもよい。
【0013】
本実施形態では、規定の計測回数は、例えば32回とする。つまり、加速度センサ11の制御回路110は、少なくとも第1の閾値を超える加速度を検出した場合に、当該検出した加速度を含む32回分の加速度の計測結果を、バッファメモリ111に保存する。なお、規定の計測回数は、32回に限定されるものではない。規定の計測回数分の加速度データは、本実施形態における加速度データ群の一例である。
【0014】
バッファメモリ111は、加速度データを一時的に保存する記憶装置であり、本実施形態における第1の記憶部の一例である。バッファメモリ111は、具体的にはFIFO(First in First out)バッファである。バッファメモリ111は、規定の計測回数分の加速度を保存するとフル(Full)状態になる。バッファメモリ111がフル状態になると、バッファメモリ111に保存された規定の計測回数分の加速度データがマイクロコントローラ12により読み込まれる。
【0015】
マイクロコントローラ12は、加速度センサ11を制御する制御装置である。より詳細には、マイクロコントローラ12は、バッファメモリ111を定期的に監視し、バッファメモリ111がフル状態になった場合、つまり、本実施形態においては32回分の加速度データがバッファメモリ111に保存された状態になった場合、バッファメモリ111から当該32回分の加速度データを取得する。
【0016】
マイクロコントローラ12は、加速度センサ11のバッファメモリ111から取得した32回分の加速度の計測結果を、チップセット15を介してCPU13に送出する。また、マイクロコントローラ12は、加速度センサ11のバッファメモリ111から取得した32回分の加速度の計測結果を、チップセット15を介してストレージ14に保存しても良い。
【0017】
また、マイクロコントローラ12は、加速度センサ11の起動時に、加速度センサ11の初期化処理を実行する。加速度センサ11の初期化処理では、マイクロコントローラ12は、マイクロコントローラ12内の記憶装置(不図示)に記憶された各種のパラメータおよび第1の閾値を、加速度センサ11に設定する。
【0018】
チップセット15は、CPU13、ストレージ14、およびマイクロコントローラ12の間のデータの受け渡しを制御する。
【0019】
CPU13は、情報処理装置1のメインCPUである。CPU13は、加速度センサ11のバッファメモリ111に保存された規定の計測回数分の加速度データを、マイクロコントローラ12からチップセット15を介して取得し、取得した規定の計測回数分の加速度データからジャークノルムの傾き、加速度振幅、および衝撃または振動の周波数を算出する。以下、本実施形態においては、衝撃または振動の周波数を単に周波数という。
【0020】
また、ジャークノルムの傾きとは、平均化処理が施されたジャークノルムデータを線形近似したことにより得られる直線の傾きである。より詳細には、CPU13は、取得した加速度データ群からジャークデータを算出し、算出したジャークデータからジャークノルムデータを算出する。そして、CPU13は、算出したジャークノルムデータの移動平均を算出する。CPU13は、平均化したジャークノルムデータを線形近似することにより直線を求める。CPU13は、当該直線と、0°を示す始線とがなす角の角度を求めることにより、ジャークノルムの傾きを得る。ジャークノルムの傾きの具体例については、図19、20で後述する。
【0021】
CPU13は、算出したジャークノルムの傾き、加速度振幅、および周波数に基づいて、計測された加速度データの振動パターンおよび異常の有無を判定する。CPU13は、本実施形態における制御部の一例である。
【0022】
振動パターンは、加速度データ群を「衝撃」、「低周波振動」、および「高周波振動」のいずれかに分類するカテゴリである。
【0023】
異常の有無は、衝撃または振動が異常なレベルであるか否かを示す。異常なレベルの衝撃または振動は、例えば、情報処理装置1の通常の運用で想定されている大きさを超える衝撃または振動とする。異常なレベルの衝撃または振動の基準となるジャークノルムの傾き、加速度振幅、および周波数の条件は、後述の第2~第5の閾値により定められる。第2~第5の閾値の値は特に限定されるものではないが、情報処理装置1の開発者による事前評価やフィールドテストの結果に応じて決定されても良い。異常なレベルは、本実施形態における第1のレベルの一例である。また、異常なレベルに満たないレベルは、本実施形態における第2のレベルの一例である。
【0024】
本実施形態においては、CPU13は、少なくとも第1の閾値を超える加速度が計測された場合であって、かつ振動パターンが「高周波振動」である場合には、振動の大きさに関わらず、「異常」に分類するものとする。
【0025】
一例を挙げると、本実施形態のCPU13は周波数が1000Hz以上の場合、振動パターンを「高周波振動」に分類する。1000Hz以上の振動は、情報処理装置1が設置される環境としては比較的高周波に該当する帯域の振動である。例えば、近年、サーバー室などに設置されるガス型消化設備の作動によるHDD故障や本体ビビり振動によるHDDパフォーマンスの低下などが報告されている。これらは周波数1000Hz前後から2000Hz程度の帯域の振動であり、この周波数帯域の振動は情報処理装置1では耐振動/衝撃仕様として考慮されていない場合がある。つまり、衝撃ほど急激な動きでなくとも、振動の周波数が高い場合は、情報処理装置1に何らかの影響がある場合がある。このため、第1の閾値を超える加速度が計測された場合であって、かつ振動パターンが「高周波振動」である場合は、CPU13は、計測された加速度を、情報処理装置1の設計者が想定していない異常なレベルの高周波振動に分類する。なお、振動パターンを「高周波振動」に分類する周波数の条件は上記の値に限定されるものではない。
【0026】
換言すれば、CPU13は、算出したジャークノルムの傾き、加速度振幅、および周波数に基づいて、計測された加速度データを「異常なレベルの衝撃」、「異常なレベルではない衝撃」、「異常なレベルの高周波振動」、「異常なレベルの低周波振動」、および「異常なレベルではない低周波振動」のいずれかに分類する。振動パターンおよび異常の有無の判定処理の詳細については後述する。
【0027】
CPU13は、振動パターンおよび異常の有無の判定結果を示すログを、ストレージ14に保存する。ストレージ14へのログの保存方法の一例として、CPU13は、振動パターンおよび異常の有無の判定結果を示すログを、ストレージ14に記憶されたログファイルに書き込む。本実施形態においては、ログファイルは、少なくとも、ログの書き込み時刻、振動パターン、および異常の有無を含む。また、ログファイルには、さらに、CPU13によって算出されたジャークノルムの傾き、加速度振幅、および周波数が書き込まれても良い。ストレージ14内のログファイルの保存先は特に限定されるものではないが、例えば、規定の権限を有する保守員のみがアクセス可能なフォルダを保存先とする。
【0028】
本実施形態においては、加速度センサ11によって第1の閾値を超える加速度が検出された場合は、常に、CPU13によって振動パターンおよび異常の有無の判定処理が実行されてログファイルへの書き込みが行われる。つまり、CPU13は、加速度センサ11によって第1の閾値を超える加速度が検出された場合、異常なレベルの衝撃を示すログ、異常なレベルではない衝撃を示すログ、異常なレベルの高周波振動を示すログ、異常なレベルの低周波振動を示すログ、および異常なレベルではない低周波振動を示すログのうちの少なくともいずれか1つを、ストレージ14に保存されたログファイルに書き込む。
【0029】
ストレージ14は、情報処理装置1に内蔵される補助記憶装置であり、例えばHDD(Hard Disk Drive)である。ストレージ14は、CPU13により生成されたログファイルを記憶する。また、ストレージ14は、CPU13により実行される各種のプログラムを記憶する。ストレージ14は、本実施形態における第2の記憶部の一例である。
【0030】
メインメモリ16は、例えばRAM(Random Access Memory)等の読み書き可能な記憶装置であり、情報処理装置1の主記憶装置である。また、情報処理装置1は、図1に図示した構成に加えて、さらにROM(Read Only Memory)等を備えても良い。
【0031】
次に、以上のように構成された情報処理装置1で実行される処理の流れについて説明する。
【0032】
図2は、本実施形態に係る情報処理装置1で実行される振動パターンおよび異常有無の判定処理全体の流れの一例を示すメインフローチャートである。
【0033】
まず、情報処理装置1が起動すると、マイクロコントローラ12が加速度センサ11の初期化処理を実行する(S1)。具体的には、マイクロコントローラ12は、マイクロコントローラ12内の記憶装置(不図示)に記憶された各種のパラメータおよび第1の閾値を、加速度センサ11に設定する。
【0034】
そして、加速度センサ11は、情報処理装置1の加速度を計測する(S2)。
【0035】
次に、加速度センサ11の制御回路110は、計測した加速度と第1の閾値とを比較する。計測した加速度が第1の閾値未満の場合(S3“No”)、制御回路110は、計測した加速度を保存しない。そして、加速度センサ11は、前回の計測から規定の時間が経過するまで待機し(S4“No”)、前回の計測から規定の時間が経過すると(S4“Yes”)、S2の処理に戻り、情報処理装置1の加速度を計測する。
【0036】
また、加速度センサ11の制御回路110は、計測した加速度が第1の閾値より大きい場合(S3“Yes”)、当該加速度の計測結果である第1の加速度データをバッファメモリ111に保存する(S5)。
【0037】
そして、加速度センサ11は、前回の計測から規定の時間が経過するまで待機し(S6“No”)、前回の計測から規定の時間が経過すると(S6“Yes”)、加速度センサ11は情報処理装置1の加速度を計測する(S7)。
【0038】
そして、加速度センサ11の制御回路110は、計測した加速度の計測結果である加速度データをバッファメモリ111に保存する(S8)。バッファメモリ111に保存された加速度データが規定の計測回数分(本実施形態では32回分)になるまで、S6~S9の処理が繰り返される。S5~S9の処理により、加速度センサ11は、第1の閾値を超えた加速度以降に計測された規定の計測回数分の加速度データ群をバッファメモリ111に保存する。
【0039】
ここで、マイクロコントローラ12は、バッファメモリ111を定期的に監視し、バッファメモリ111がフル状態になった場合、つまり、本実施形態においては32回分の加速度の計測結果がバッファメモリ111に保存された状態になった場合(S9“Yes”)、マイクロコントローラ12により、加速度センサ11のバッファメモリ111から規定の計測回数分の加速度データが読み込まれる。マイクロコントローラ12により規定の計測回数分の加速度データが読み込まれると、加速度センサ11の制御回路110は、バッファメモリ111内の加速度データを削除する(S10)。
【0040】
そして、S2に戻り、情報処理装置1が稼働している間は、S2~S10の処理が繰り返し実行される。情報処理装置1の電源がオフ状態になると、このフローチャートの処理は終了する。
【0041】
図3は、本実施形態に係るマイクロコントローラ12による加速度データの取得処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0042】
マイクロコントローラ12は、加速度センサ11にアクセスし(S21)、加速度センサ11のバッファメモリ111に規定の計測回数分の加速度データが保存されている場合(S22“Yes”)、加速度センサ11のバッファメモリ111から規定の計測回数分の加速度データを読み込む(S23)。マイクロコントローラ12は、加速度センサ11のバッファメモリ111から取得した規定の計測回数分の加速度データを、チップセット15を介してCPU13に送出する。そして、S21の処理に戻る。
【0043】
また、加速度センサ11のバッファメモリ111に規定の計測回数分の加速度データが保存されていない場合(S22“No”)、S21の処理に戻る。情報処理装置1が稼働している間は、S21~S23の処理が繰り返し実行される。情報処理装置1の電源がオフ状態になると、このフローチャートの処理は終了する。
【0044】
なお、図5では、待機時間については図示を省略したが、バッファメモリ111は一定時間ごとにS21のアクセスをするものとしてもよい。
【0045】
図4は、本実施形態に係るCPU13による処理の流れの一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、マイクロコントローラ12により加速度センサ11から規定の計測回数分の加速度データがCPU13に送出された場合に開始する。
【0046】
CPU13は、加速度センサ11のバッファメモリ111に保存された規定の計測回数分の加速度データを、マイクロコントローラ12からチップセット15を介して取得し、取得した規定の計測回数分の加速度データに基づくジャークノルムの傾き、加速度振幅、および周波数の算出処理を実行する(S11)。ジャークノルムの傾き、加速度振幅、および周波数の算出処理の詳細は図5図8で後述する。
【0047】
次に、CPU13は、算出したジャークノルムの傾き、加速度振幅、および周波数に基づく、振動パターンおよび異常有無の判定処理を実行する(S12)。CPU13は、振動パターンおよび異常有無の判定結果を、時刻情報と共にストレージ14のログファイルに書き込む。
【0048】
次に、図4のフローチャートにおけるS11のジャークノルムの傾き、加速度振幅、および周波数の算出処理について説明する。
【0049】
図5は、本実施形態に係るCPU13で実行されるジャークノルムの傾き、加速度振幅、および周波数の算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。当該フローチャートは、図4のフローチャートにおけるS11に対応するサブルーチンである。
【0050】
まず、CPU13は、加速度センサ11のバッファメモリ111に保存された規定の計測回数分の加速度データを、マイクロコントローラ12からチップセット15を介して取得する(S1110)。
【0051】
そして、CPU13は、取得した規定の計測回数分の加速度データからxyz各軸のジャーク(加加速度)を算出する(S1120)。当該ジャーク算出処理の詳細については、図6で説明する。
【0052】
次に、CPU13は、算出したxyz各軸のジャークからジャークノルムを算出する(S1130)。当該ジャークノルム算出処理の詳細については、図7で説明する。
【0053】
そして、CPU13は、算出したジャークノルム平均化処理を実行する(S1140)。ジャークノルム平均化処理は、例えば、ジャークノルムの移動平均値を求める処理である。当該ジャークノルム平均化処理の詳細については、図8で説明する。
【0054】
そして、CPU13は、平均化したジャークノルムを線形近似する(S1150)。平均化したジャークノルムを線形近似することにより、ジャークノルムの変化率が直線の傾きとして表される。
【0055】
そして、CPU13は、線形近似されたジャークノルムの傾き(変化率)、加速度振幅、および周波数を算出する(S1160)。
【0056】
具体的には、CPU13は、取得した規定の計測回数分の加速度データを、ジャークデータの場合と同様にノルムの算出および平均化を行い、そのデータを線形近似した直線の切片の値を、加速度振幅の大きさとして算出する。規定の計測回数分の加速度データの平均化の処理は、規定の計測回数分の加速度データの移動平均値を求める処理である。規定の計測回数分の加速度データの移動平均値の求め方は、図8で説明するジャークノルム平均化処理と同様である。本実施形態においては、加速度データ群が移動平均化された上で絶対値化されたデータ群を線形近似した直線の切片の値を、加速度振幅という。
【0057】
衝撃により発生した加速度の場合、一般に、線形近似した直線が右肩下がりとなるため、切片の値は、規定の計測回数分の加速度データにおける振幅の最大値または最大値に近似した値となる。また、振動により発生した加速度の場合、一般に、線形近似した直線が水平に近くなるため、切片の値は、規定の計測回数分の加速度データにおける振幅の平均値または平均値に近似した値となる。
【0058】
なお、加速度振幅の求め方は、ジャークの振幅の求め方と同様の求め方であればよく、これに限定されるものではない。例えば、CPU13は、加速度データ群の振幅の最大値を加速度振幅として求めてもよい。また、CPU13は、衝撃の場合には振幅の最大値、振動の場合には振幅の平均値を、後述の異常の有無の判定に用いてもよい。
【0059】
また、CPU13は、加速度振幅とジャーク振幅とに基づいて、加速度の周波数を算出する。以下の式(1)~(3)を用いて加速度の周波数を算出する。式(1)~(3)では、加速度をP、ジャークをQ、周波数をfと定義する。式(1)のAは加速度振幅、式(2)の2πAfはジャーク振幅を表す。なお、式(1)~(3)では計算を簡略化するため、位相のずれを考慮していない。なお、加速度の周波数の算出式は、式(1)~(3)に限定されるものではない。
【0060】
【数1】
【0061】
一般に、情報処理装置1に与えられた衝撃により生じた加速度の場合は、最初に大きいジャークノルムが発生し、その後急激に減少する特徴がある。このため、線形近似されたジャークノルムの傾きはマイナス方向に大きくなる。これに対して、情報処理装置1に与えられた振動により生じた加速度の場合は、線形近似されたジャークノルムの大きさの変化は小さく、傾きも0°に近い値となる。
【0062】
本実施形態においては、線形近似されたジャークノルムが水平の状態を0°とし、負の角度を負の値、正の角度を正の値で表す。線形近似されたジャークノルムが負の角度で傾いている場合、傾きの度合が強いほど、水平状態から離れるため、線形近似されたジャークノルムの傾きを示す角度は小さくなる。
【0063】
具体的には、衝撃により生じた加速度から算出されたジャークノルムを線形近似した直線は、振動により生じた加速度から算出されたジャークノルムを線形近似した直線よりも大きく右下がりとなるため、衝撃により生じた加速度から算出されたジャークノルムを線形近似した直線の傾きは、振動により生じた加速度から算出されたジャークノルムを線形近似した直線の傾きよりも小さくなる。このような線形近似されたジャークノルムの傾きの特徴により、情報処理装置1の加速度の要因を、衝撃と振動に分類することが可能となる。
【0064】
ここで、このフローチャートの処理は終了し、図4のS12の処理へ進む。
【0065】
次に、図5のフローチャートにおけるS1120のジャーク算出処理について説明する。
【0066】
図6は、本実施形態に係るCPU13で実行されるジャーク算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。当該フローチャートは、図5のフローチャートにおけるS1120に対応するサブルーチンである。
【0067】
まず、CPU13は、処理回数のカウント用の変数iに“0”を代入する(S1121)。変数i=“0”は、規定の計測回数分の加速度データにおける1回目のデータを表す。
【0068】
次に、CPU13は、X軸、Y軸、およびZ軸ごとに、i回目の計測における加速度とi+1回目の計測における加速度との差分を求める(S1122)。当該差分の値がi番目のジャークである。
【0069】
具体的には、図6に示す“j(i)”はi番目のX軸方向のジャークを示す。“α(i)-α(i+1)”はi回目の計測におけるX軸方向の加速度とi+1回目の計測におけるX軸方向の加速度との差分を求める式である。同様に、“j(i)”はi番目のY軸方向のジャークを示し、“j(i)”はi番目のZ軸方向のジャークを示す。
【0070】
次に、CPU13は、変数iに“i+1”を代入する(S1123)。
【0071】
そして、“i+1”を代入した後の変数iの値が“N-1”未満である場合は(S1124“Yes”)、S1122の処理に戻り、CPU13は、次の計測回数に対応する加速度と、次の次の計測回数に対応する加速度との差分を次のジャークとして算出する。Nは、加速度の計測回数を示す。本実施形態ではN=32である。なお、このフローチャートではi=0のときのデータを1回目のデータとみなしているため、N=32の場合は、i=31が最後のデータとなる。
【0072】
“i+1”を代入した後の変数iの値が“N-1”以上である場合、つまり、“i+1”を代入した後の変数iの値が31以上である場合は(S1124“No”)、CPU13は、i番目のX軸、Y軸、およびZ軸のジャークの値“j(i)”、“j(i)”、および“j(i)”のそれぞれに、1つ前に算出したi-1番目のX軸、Y軸、およびZ軸のジャークの値を代入する(S1125)。ジャークはi回目に計測された加速度とi+1回目に計測された加速度の差分であるため、最後に計測された加速度には差分を求める対象が無い。このため、S1125の処理では、最後のジャークの値として1つ前のジャークの値を代用している。
【0073】
ここで、このフローチャートの処理は終了し、図5のS1130の処理へ進む。
【0074】
次に、図5のフローチャートにおけるS1130のジャークノルム算出処理について説明する。
【0075】
図7は、本実施形態に係るCPU13で実行されるジャークノルム算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。当該フローチャートは、図5のフローチャートにおけるS1130に対応するサブルーチンである。
【0076】
まず、CPU13は、処理回数のカウント用の変数iに“0”を代入する(S1131)。このフローチャートにおいても、変数i=“0”は、規定の計測回数分の加速度データにおける1回目のデータを表す。
【0077】
次に、CPU13は、下記の式(4)により、X軸、Y軸、Z軸のi番目のジャークから、i番目のジャークノルム“||f(i)||”を求める(S1132)。“j (i)”はi番目のX軸方向のジャークの2乗を示す。同様に、“j (i)”はi番目のY軸方向のジャークの2乗を示し、“j (i)”はi番目のZ軸方向のジャークの2乗を示す。
【0078】
【数2】
【0079】
次に、CPU13は、変数iに“i+1”を代入する(S1133)。
【0080】
そして、“i+1”を代入した後の変数iの値が“N-1”未満である場合は(S1134“Yes”)、S1132の処理に戻り、CPU13は、次の計測回数に対応するジャークノルムを算出する。図6と同様に、Nは、加速度の計測回数を示す。本実施形態ではN=32である。
【0081】
“i+1”を代入した後の変数iの値が“N-1”以上である場合、つまり、“i+1”を代入した後の変数iの値が31以上である場合は(S1134“No”)、CPU13は、i番目のX軸、Y軸、およびZ軸のジャークノルムの値“||f(i)||”に、1つ前に算出したi-1番目のジャークノルムの値を代入する(S1135)。
【0082】
ここで、このフローチャートの処理は終了し、図5のS1140の処理へ進む。
【0083】
次に、図5のフローチャートにおけるS1140のジャークノルム平均化処理について説明する。
【0084】
図8は、本実施形態に係るCPU13で実行されるジャークノルム平均化処理の流れの一例を示すフローチャートである。当該フローチャートは、図5のフローチャートにおけるS1140に対応するサブルーチンである。
【0085】
本フローチャートにおけるジャークノルム平均化処理では、CPU13は、スライディングウィンドウ法によるジャークノルムの移動平均値を求める。本実施形態におけるウィンドウサイズ“n”は、一例として“4”である。すなわち、CPU13は、連続する4つのジャークノルムのデータごとに、平均値を求める処理を繰り返す。本実施形態においては、ジャークノルムの平均という場合、移動平均のことを示す。
【0086】
まず、CPU13は、処理回数のカウント用の変数iに“0”を代入する(S1141)。このフローチャートにおいても、変数i=“0”は、規定の計測回数分の加速度データにおける1回目のデータを表す。
【0087】
次に、CPU13は、合計値を表す変数sumに“0”を代入する。また、CPU13は、移動平均の算出ための加算処理の対象となるジャークノルムを指定するための変数kに“i”を代入する(S1142)。
【0088】
そして、CPU13は、変数sumに、sumとk番目のジャークノルム“||f(k)||”の加算結果を代入する(S1143)。
【0089】
次に、CPU13は、変数kに“k+1”を代入する(S1142)。
【0090】
そして、“k+1”を代入した後の変数kの値が“i+n”未満である場合(S1145“Yes”)、つまり現在の処理対象のウィンドウに含まれるジャークノルムの加算処理が完了していない場合、S1143の処理に戻り、現在の処理対象のウィンドウに含まれる次のジャークノルムを、変数sumに加算する。現在の処理対象のウィンドウに含まれる全てのジャークノルムを加算するまでS1143~S1145の処理が繰り返される。例えば、ウィンドウサイズ“n”が“4”の場合、初回のループ処理では、1番目から4番目までのジャークノルムを加算するまでS1143~S1145の処理が繰り返される。
【0091】
そして、“k+1”を代入した後の変数kの値が“i+n”以上である場合(S1145“No”)、CPU13は、変数sumをnで除算することにより、i番目のジャークノルムの移動平均値“||jsmooth(i)||”を算出する(S1146)。
【0092】
次に、CPU13は、変数iに“i+1”を代入する(S1147)。
【0093】
そして、“i+1”を代入した後の変数iの値が“N-(n-1)”未満である場合(S1148“Yes”)、つまり、最後のウィンドウに達していない場合には、S1142の処理に戻り、CPU13は、次のウィンドウにおけるジャークノルムの移動平均値を算出する。
【0094】
“i+1”を代入した後の変数iの値が“N-(n-1)”以上である場合(S1148“No”)、このフローチャートの処理は終了し、図5のS1150の処理へ進む。
【0095】
なお、ウィンドウサイズ“n”が“4”でジャークノルムの全サンプル数“N”が“32”の場合、ウィンドウを1サンプルデータ分ずつずらしながら移動演算をすると、このフローチャートで得られるジャークノルムの移動平均値のサンプル数は29個となる。
【0096】
なお、本フローチャートではウィンドウサイズを“4”として説明したが、当該ウィンドウサイズは一例であり、これに限定されるものではない。
【0097】
次に、図4のフローチャートにおけるS12の振動パターンおよび異常有無の判定処理について説明する。
【0098】
図9は、本実施形態に係るCPU13で実行される振動パターンおよび異常有無の判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。当該フローチャートは、図4のフローチャートにおけるS12に対応するサブルーチンである。
【0099】
まず、CPU13は、ジャークノルムの傾きと第2の閾値とを比較する。本実施形態では、線形近似されたジャークノルムの傾きは、水平の状態を0°とし、線形近似されたジャークノルムが右上がりになると正の数、右下がりになると負の数で表される。つまり、本実施形態においては、線形近似されたジャークノルムの傾きが、0°を示す始線から反時計回りに離れるほど大きくなり、0°を示す始線から時計回りに離れるほど小さくなる。ジャークノルムの傾きについては、図19、20で具体的に説明する。
【0100】
衝撃波形は単発的な事象のため、最初に大きな振幅の加速度が記録され、それ以降は急速に減衰していく特徴を有する。一方、振動波形は、衝撃ほどは急速に減衰せず、連続した波形になるという特徴を有する。このため、衝撃により生じた加速度から算出されたジャークノルムを線形近似した直線の傾きは、振動により生じた加速度から算出されたジャークノルムを線形近似した直線の傾きよりも小さくなる。
【0101】
ジャークノルムの傾きが第2の閾値より小さい場合(S1201“Yes”)、CPU13は、計測された加速度の振動パターンを「衝撃」に分類する(S1202)。
【0102】
次に、CPU13は、加速度振幅と第3の閾値とを比較する。加速度振幅が第3の閾値より大きい場合(S1203“Yes”)、CPU13は、当該衝撃を「異常」に分類する(S1204)。
【0103】
そして、CPU13は、振動パターンおよび異常有無の判定結果を示すログを、ストレージ14に保存されたログファイルに書き込む(S1205)。具体的には、この場合、CPU13は、異常なレベルの衝撃を示すログをログファイルに書き込む。
【0104】
また、加速度振幅が第3の閾値以下の場合(S1203“Yes”)、CPU13は、当該衝撃を「異常なし」に分類する(S1206)。この場合、S1205の処理に進み、CPU13は、異常なレベルではない衝撃を示すログをログファイルに書き込む。
【0105】
また、ジャークノルムの傾きが第2の閾値以上の場合(S1201“No”)、CPU13は、計測された加速度を「振動」と特定する。そして、CPU13は、振動の周波数と第4の閾値とを比較する。振動の周波数が第4の閾値以上の場合(S1207“No”)、CPU13は、計測された加速度の振動パターンを「高周波振動」に分類する(S1208)。第4の閾値は例えば1000Hzである。
【0106】
CPU13は、第1の閾値以上の加速度が計測された場合であって、かつ振動パターンが「高周波振動」である場合には、振動の大きさに関わらず、「異常」に分類する(S1209)。この場合、S1205の処理に進み、CPU13は、異常なレベルの高周波振動を示すログをログファイルに書き込む。
【0107】
振動の周波数が第4の閾値より小さい場合(S1207“Yes”)、CPU13は、計測された加速度の振動パターンを「低周波振動」に分類する(S1210)。
【0108】
次に、CPU13は、加速度振幅と第5の閾値とを比較する。加速度振幅が第5の閾値より大きい場合(S1211“Yes”)、CPU13は、当該低周波振動を「異常」に分類する(S1212)。この場合、S1205の処理に進み、CPU13は、異常なレベルの低周波振動を示すログをログファイルに書き込む。
【0109】
なお、本実施形態においては、第5の閾値は、第3の閾値よりも小さい。第3の閾値は、情報処理装置1における耐衝撃仕様に即した閾値とする。また、第5の閾値は、情報処理装置1における耐振動仕様に即した閾値とする。なお、第3の閾値と第5の閾値との大小関係はこれに限定されるものではなく、第3の閾値と第5の閾値を同じ値としてもよい。
【0110】
また、加速度振幅が第5の閾値以下の場合(S1211“No”)、CPU13は、当該低周波振動を「異常なし」に分類する(S1213)。この場合、S1205の処理に進み、CPU13は、異常なレベルではない低周波振動を示すログをログファイルに書き込む。
【0111】
ここで、このフローチャートの処理は終了し、図4の処理へ戻る。
【0112】
次に、本実施形態のストレージ14に保存されるログファイルについて説明する。
【0113】
図10は、本実施形態に係るログファイル90の一例を示す図である。図10に示すように、ログファイル90は、例えば、カンマ区切りのファイル形式で、時刻、振動パターン、異常有無、ジャークノルムの傾き、加速度振幅、および周波数が対応付けられている。時刻は、CPU13による当該ログの書き込み時刻である。異常有無は、本実施形態における衝撃および振動のレベルの一例である。
【0114】
ストレージ14に保存されたログファイル90は、例えば、メンテナンスなどのタイミングで保守員が収集および確認を行う。保守員は、ログファイル90に記載されたログを、ユーザーへの環境改善などの提案に活用しても良い。
【0115】
なお、ログファイルのファイル形式および項目は図10に示す例に限定されるものではなく、一般的なログファイルの仕様を適宜採用してよい。
【0116】
次に、本実施形態における加速度センサ11で計測された加速度データ、および加速度データから算出されるジャークデータ、およびジャークノルムの具体例について説明する。
【0117】
図11は、本実施形態に係る加速度センサ11で計測された加速度データの一例を示すグラフである。図11の横軸はデータサンプル数、縦軸は加速度である。図11では、加速度センサ11で規定の時間間隔で32回計測された32点の加速度のサンプルデータを折れ線グラフで図示する。図11に示す加速度の波形は、衝撃によって発生したX軸、Y軸、Z軸の加速度の一例である。衝撃波形は単発的な事象のため、最初に大きな振幅の加速度が記録され、以降は急速に減衰していく特徴を有する。
【0118】
図12は、本実施形態に係る加速度センサ11で計測された加速度データの他の一例を示すグラフである。図11と同様に、図12の横軸はデータサンプル数、縦軸は加速度である。なお、図12に示す波形は図11に示す波形よりも加速度の値が小さいため、表示の都合上、図12の縦軸の目盛を図11よりも細かい単位で表示している。
【0119】
図12に示す加速度の波形は、振動によって発生したX軸、Y軸、Z軸の加速度の一例である。振動波形は、衝撃ほどは急速に減衰せず、連続した波形になるという特徴を有する。実フィールドで発生する振動/衝撃は複数の成分が複合されたランダムな波形になることも多いが、一般的に、上述の特徴は維持される。
【0120】
図13は、図11の加速度データから算出されたジャークデータの一例を示すグラフである。図13の横軸はデータサンプル数、縦軸はジャークである。ジャークデータでは、衝撃波形における最初に大きな振幅の加速度が記録され、以降は急速に減衰していくという特徴が、図11の加速度データよりもさらに強調されて表れている。
【0121】
図14は、図12の加速度データから算出されたジャークデータの一例を示すグラフである。図13と同様に、図14の横軸はデータサンプル数、縦軸はジャークである。ジャークデータにおいても、振動波形における、減衰の程度が緩やかで、連続した波形が続くという特徴が表れている。
【0122】
図15は、図13のジャークデータから算出されたジャークノルムデータの一例を示すグラフである。また、図16は、図14のジャークデータから算出されたジャークノルムデータの一例を示すグラフである。図15、16の横軸はデータサンプル数、縦軸はジャークノルムである。CPU13によってX軸、Y軸、Z軸のジャークデータからジャークノルムデータが算出されることにより、図13、14では3本に分かれていたグラフが、図15、16では1本に統合される。
【0123】
次に、ジャークノルムデータの平均化処理の例について説明する。
【0124】
図17は、図15のジャークノルムデータから算出された移動平均値の一例である。また、図18は、図16のジャークノルムデータから算出された移動平均値の一例である。図17、18の横軸はデータサンプル数、縦軸は平均化されたジャークノルムである。CPU13によってジャークノルムデータに平均化処理が施されることにより、波形の乱れが平滑化され、その後の線形近似が容易になる。
【0125】
次に、平均化されたジャークノルムデータの線形近似の例について説明する。
【0126】
図19は、図17の平均化されたジャークノルムデータを線形近似した直線L1の一例を示す図である。図19の横軸はデータサンプル数、縦軸は平均化されたジャークノルムである。また、図19では、直線L1の傾きについて説明するため、始線L0、および第2の閾値“-g°”を例示する直線L3を図示する。
【0127】
一般に、衝撃により生じた加速度から算出されたジャークノルムデータを線形近似した直線L1の傾きは、右下がりになる。このため、図19に示すように、始線L0と直線L1とのなす角θ1の角度は、負の角度“-d°”となっている。当該負の角度“-d°”が、直線L1の傾きである。
【0128】
図19に示す例では、始線L0と直線L3とのなす角θ3の角度“-g°”を第2の閾値の一例とする。始線L0とジャークノルムデータを線形近似した直線L1とのなす角θ1の角度“-d°”は、第2の閾値“-g°”より小さい。この場合、図9で説明したように、CPU13は、直線L1の算出元の加速度の振動パターンを「衝撃」に分類する。
【0129】
また、図20は、図18の平均化されたジャークノルムデータを線形近似した直線L2の一例を示す図である。図20に示す始線L0、および直線L3は図19と同様である。
【0130】
始線L0と直線L2とのなす角θ2の角度は、負の角度“-e°”となっている。当該負の角度“-e°”が、直線L2の傾きである。一般に、振動により生じた加速度から算出されたジャークノルムデータを線形近似した直線L2の傾きは、衝撃により生じた加速度から算出されたジャークノルムデータを線形近似した直線L1の傾きよりも、緩やかに右下がりになる。このため、始線L0と直線L2とのなす角θ2の角度“-e°”は、負の角度ではあるものの、始線L0と直線L1とのなす角θ1の角度“-d°”よりも大きい。また、始線L0と直線L2とのなす角θ1の角度“-e°”は、第2の閾値“-g°”より大きい。この場合、CPU13は、直線L2の算出元の加速度の振動パターンを「高周波振動」または「低周波振動」に分類する。
【0131】
また、CPU13は、直線L1,L2の切片の値を、それぞれ、ジャークデータの振幅の大きさとして算出する。図19、20においては、横軸のデータサンプル数が“1”から開始するため、横軸“1”における縦軸の値がジャークデータの振幅の大きさである。なお、ジャークデータの振幅の求め方は、加速度振幅の求め方と同様の求め方であればよく、これに限定されるものではない。例えば、CPU13は、加速度データ群の振幅の最大値を加速度振幅とする場合は、ジャークデータ群の振幅の最大値をジャークデータの振幅の大きさとして求める。また、CPU13は、加速度データ群の振幅の平均値を加速度振幅とする場合は、ジャークデータ群の振幅の平均値をジャークデータの振幅の大きさとして求める。
【0132】
このように、本実施形態の情報処理装置1は、加速度センサ11とCPU13とを備え、加速度センサ11は、規定の時間ごとに加速度を計測し、計測した加速度が第1の閾値以上である場合に、第1の閾値以上の加速度の計測結果である第1の加速度データを含む加速度データ群をバッファメモリ111に保存する。また、CPU13は、当該加速度データ群を取得し、当該加速度データ群からジャークノルムの傾き、加速度振幅、および衝撃または振動の周波数を算出する。CPU13は、算出したジャークノルムの傾きおよび周波数に基づいて、計測された加速度データを、衝撃、高周波振動、および低周波振動のいずれかの振動パターンに分類する。CPU13は、振動パターンが衝撃および低周波振動のいずれかに分類された場合には、さらに、加速度振幅に基づいて異常の有無を判定する。CPU13は、振動パターンおよび異常の有無の判定結果をストレージ14に保存する。このため、本実施形態の情報処理装置1によれば、情報処理装置1が受けた振動および衝撃の詳細な分類をログとして記録することができる。
【0133】
一般に、情報処理装置1が社会インフラシステムなどの分野で使用される場合、長期安定稼働が求められる。本実施形態の情報処理装置1のように情報処理装置1が受けた振動および衝撃の詳細な分類の特定結果をログとして記録することにより、保守員が、情報処理装置1が受けた衝撃または振動を詳細に分析することが可能となる。これにより、衝撃または振動の記録に応じたメンテナンス、および発生した不具合の原因の分析の精度を向上させることができ、情報処理装置1の長期安定稼働に寄与することができる。
【0134】
また、本実施形態の情報処理装置1は、加速度センサ11によって第1の閾値以上の加速度が検出された場合、異常なレベルの衝撃を示すログ、異常なレベルではない衝撃を示すログ、異常なレベルの高周波振動を示すログ、異常なレベルの低周波振動を示すログ、および異常なレベルではない低周波振動を示すログのうちの少なくともいずれか1つを、ストレージ14に保存されたログファイルに書き込む。本実施形態の情報処理装置1によれば、第1の閾値以上の加速度が検出された場合は常にログを残すことにより、異常と判定した場合だけではなく、情報処理装置1に影響を及ぼす可能性のある衝撃および振動の記録を詳細に残すことができる。
【0135】
また、本実施形態のログファイル90は、少なくとも、ログの書き込み時刻、振動パターン、および異常の有無を含む。このため、当該ログファイル90を確認する保守員は、これらの情報を情報処理装置1の不具合の原因等の分析に活用することができる。
【0136】
(変形例)
上述の実施形態でCPU13が実行する処理として説明した処理を、マイクロコントローラ12が実行しても良い。この場合、マイクロコントローラ12が制御部の一例となる。当該変形例の情報処理装置1によれば、上述の実施形態と同様の効果を奏した上で、CPU13の処理負荷を低減することができる。
【0137】
本実施形態の情報処理装置1で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0138】
また、本実施形態の情報処理装置1で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態の情報処理装置1で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0139】
また、本実施形態の情報処理装置1で実行されるプログラムを、情報処理装置1のROM(不図示)等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0140】
本実施形態の情報処理装置1で実行されるプログラムは、上述したCPU13の機能を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU13がストレージ14等の記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより上記各部がメインメモリ16等の主記憶装置上にロードされ、上述したCPU13の機能に相当するモジュールが主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0141】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0142】
1 情報処理装置
11 加速度センサ
12 マイクロコントローラ
13 CPU
14 ストレージ
15 チップセット
16 メインメモリ
90 ログファイル
110 制御回路
111 バッファメモリ
112 センサ素子
L0 始線
L1~L3 直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20