(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004529
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】電動弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/04 20060101AFI20230110BHJP
H02K 5/10 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
F16K31/04 Z
H02K5/10 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106267
(22)【出願日】2021-06-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000204033
【氏名又は名称】太平洋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】林 久雄
【テーマコード(参考)】
3H062
5H605
【Fターム(参考)】
3H062AA02
3H062AA15
3H062BB22
3H062BB31
3H062CC01
3H062GG06
5H605AA02
5H605AA08
5H605CC01
5H605CC05
5H605DD32
(57)【要約】
【課題】従来よりモータの防水性が高い電動弁を電動弁を提供する。
【解決手段】本開示の電動弁10Aのステータ52は、一端有底、他端開放の筒形をなしている。そして、ステータ52がバルブボディ11に備えたロータケース17の外側に嵌合され、バルブボディ11に備えたステータ対向部11Dとステータ52との間に環状のシール部材58がバルブボディ11の軸方向で挟まれて、ステータ52の内側への浸水が規制される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流路(92)を有するバルブ取付対象部材(90)の外面に開口するバルブ装着孔(91)に先端側を挿入されかつ基端側に駆動源であるモータ(50)を有し、前記流路(92)を流れる流体の流量を変更することが可能な電動弁(10A~10F)であって、
前記バルブ装着孔(91)の軸方向(J1)に延びかつ基端側に前記モータ(50)のロータ(51)を収容するロータケース(17)を有するバルブボディ(11)と、
前記ロータケース(17)の外側に嵌合される一端有底、他端開放の筒形のステータ(52)と、
前記バルブボディ(11)の軸方向(J1)の途中位置を拡径してなり、前記ステータ(52)と前記軸方向(J1)で対向するステータ対向部(11D)と、
前記ステータ対向部(11D)と前記ステータ(52)との間に前記軸方向(J1)で挟まれて、前記ステータ(52)の内側への浸水を規制する環状のシール部材(58,58X)と、を備える電動弁(10A~10F)。
【請求項2】
前記シール部材(58,58X)は、発泡ウレタン製である請求項1に記載の電動弁(10A~10F)。
【請求項3】
(新規作成)
前記シール部材(58,58X)は、半連続気泡構造をなしている請求項2に記載の電動弁(10A~10F)。
【請求項4】
前記ステータ(52)及び前記ステータ対向部(11D)の一方から他方に向かって筒部(57,57Y,57Z)が突出し、
前記シール部材(58,58X)は、前記筒部(57,57Y,57Z)と、それとは別体である前記ステータ(52)又は前記ステータ対向部(11D)との間に挟まれている請求項1から3の何れか1の請求項に記載の電動弁(10A,10C~10F)。
【請求項5】
前記シール部材(58,58X)は、外径が前記筒部(57,57Y,57Z)の外径より大きく、内径が前記筒部(57,57Y,57Z)の内径と略同一か小さい円板状をなしている請求項4に記載の電動弁(10A,10C~10F)。
【請求項6】
前記筒部(57)は、前記ステータ(52)に一体に設けられ、
前記バルブボディ(11)には、
前記流路(92)に連通するバルブ内流路(92)を有する第1ボディスリーブ(21)と、
前記第1ボディスリーブ(21)の内側に組み付けられ、基端部に前記ロータケース(17)が固定されている第2ボディスリーブ(25)と、が含まれ、
前記第1ボディスリーブ(21)の内面と前記第2ボディスリーブ(25)の外面との間の嵌合隙間(21Z)が、前記ステータ対向部(11D)における前記ステータ(52)との対向面に開口しかつ前記シール部材(58)に覆われている請求項4又は5に記載の電動弁(10A,10D~10F)。
【請求項7】
前記第2ボディスリーブ(25)の外面には、前記第1ボディスリーブ(21)の内面に密着するOリング(25N)を受容したOリング溝(25M)が形成され、
前記第1ボディスリーブ(21)の内縁部には、前記Oリング(25N)を導入するためにテーパー状の導入面(22G)が形成されて、前記嵌合隙間(21Z)における前記シール部材(58,58X)側の端部が広くなっている請求項6に記載の電動弁(10A,10B,10C,10D)。
【請求項8】
前記筒部(57Y)は、前記ステータ対向部(12)に一体に設けられ、
前記ステータ(52)のうち前記ステータ対向部(12)との対向面に、前記シール部材(58X)を受容する凹部(54Z)が形成されている請求項4又は5に記載の電動弁(10C)。
【請求項9】
前記ステータ(52)及び前記ステータ対向部(11D)に挟まれる中間スリーブ(57X)を備え、
前記シール部材(58,58X)は、前記中間スリーブ(57X)と前記ステータ(52)との間と、前記中間スリーブ(57X)と前記ステータ対向部(11D)との間とのぞれぞれに設けられて挟まれている請求項1から3の何れか1の請求項に記載の電動弁(10B)。
【請求項10】
前記ステータ(52)から前記ステータ対向部(11D)側に張り出し、前記バルブボディ(11)に固定される連結片(63)を備える請求項1から9の何れか1の請求項に記載の電動弁(10A~10F)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バルブ取付対象部材の外面に開口するバルブ装着孔に先端側を挿入されかつ基端側に駆動源であるモータを有する電動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電動弁として、モータのロータを収容するロータケースを有し、そのロータケースの外側に筒形のステータが嵌合されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-65595号公報(
図1,3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の電動弁に対し、モータの防水性の強化が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1の発明は、内部に流路(92)を有するバルブ取付対象部材(90)の外面に開口するバルブ装着孔(91)に先端側を挿入されかつ基端側に駆動源であるモータ(50)を有し、前記流路(92)を流れる流体の流量を変更することが可能な電動弁(10A~10F)であって、前記バルブ装着孔(91)の軸方向(J1)に延びかつ基端側に前記モータ(50)のロータ(51)を収容するロータケース(17)を有するバルブボディ(11)と、前記ロータケース(17)の外側に嵌合される一端有底、他端開放の筒形のステータ(52)と、前記バルブボディ(11)の軸方向(J1)の途中位置を拡径してなり、前記ステータ(52)と前記軸方向(J1)で対向するステータ対向部(11D)と、前記ステータ対向部(11D)と前記ステータ(52)とに前記軸方向(J1)で挟まれて、前記ステータ(52)の内側への浸水を規制する環状のシール部材(58,58X)と、を備える電動弁(10A~10F)である。
【発明の効果】
【0006】
本開示の電動弁(10A~10F)のステータ(52)は、一端有底、他端開放の筒形をなしている。そして、ステータ(52)がバルブボディ(11)に備えたロータケース(17)の外側に嵌合され、バルブボディ(11)に備えたステータ対向部(11D)とステータ(52)との間に環状のシール部材(58,58X)が軸方向(J1)で挟まれて、ステータ(52)の内側への浸水が規制される。これにより、モータ(50)の防水性が従来より向上する。ここで、ステータ(52)内への浸水を規制するために、シール部材がステータ(52)の内面とバルブボディ(11)の外面とに径方向で挟まれるシール構造が考えられるが、そのようなシール構造に比べて、本発明のようにシール部材(58,58X)が軸方向(J1)で挟まれるシール構造とすれば、ステータ(52)の嵌合抵抗が増加が抑えられ、モータ(50)の防水性の強化を図りつつステータ(52)の組み付けを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図6】第2実施形態の電動弁におけるシール構造の側断面図
【
図7】第3実施形態の電動弁におけるシール構造の側断面図
【
図8】第4実施形態の電動弁におけるシール構造の側断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第1実施形態]
以下、
図1~
図5を参照して、本開示の第1実施形態の電動弁10Aについて説明する。
図1に示した本実施形態の電動弁10Aは、バルブ取付対象部材90の外面90Aに開口するバルブ装着孔91に先端側を挿入されて使用されるものである。
【0009】
なお、
図1,
図2等では、バルブ装着孔91及び電動弁10Aの軸方向は、上下方向を向いているが、電動弁10Aは、その軸方向を上下方向以外の方向に向けて使用してもよい。また、以下の説明では、バルブ装着孔91の軸方向を「上下方向J1」ということとし、
図1、
図2等における上側を単に「上側」、その反対側を単に「下側」ということとする。
【0010】
バルブ取付対象部材90は流体機器の一部品であり、内部に流路92を有する。
図2に示すように、バルブ装着孔91は、下端寄り位置に段差部91Dを有し、その段差部91Dより上側が大径部91Aをなす一方、下側が小径部91Bをなしている。また、流路92には、小径部91Bから下方延長線上に延びる第1流路92Aと、大径部91Aのうち段差部91D寄り位置から側方に延びる第2流路92Bとが含まれている。さらには、バルブ装着孔91の開口縁には、後述するOリング13Eをバルブ装着孔91に導入するためのテーパー状の導入面91Gが形成されている。
【0011】
なお、バルブ取付対象部材90は、具体例としては、エアコン、ガスコンロ、油圧機器等が挙げられるが、流体機器であればどのようなものでもよい。また、流路92を流れる流体は、気体でも液体でもエアコンの冷媒のような液体と気体との中間体でもよい。
【0012】
電動弁10Aは、上下方向J1に延びるバルブボディ11を有する。バルブボディ11は、上下方向J1の途中位置から側方に張り出すフランジ部12を有し、フランジ部12より下側が、バルブ装着孔91に挿入される挿入部13になっている。挿入部13には、バルブ装着孔91の大径部91Aと小径部91Bとに対応する大径部13Aと小径部13Bとが備えられている。また、大径部13Aのフランジ部12寄り位置と、小径部13Bの上下方向J1の略中央部とには、Oリング13E,13Fを受容したOリング溝13C,13Dが設けられている。そして、挿入部13の小径部13Bがバルブ装着孔91の小径部91Bに嵌合し、挿入部13の大径部13Aがバルブ装着孔91の大径部91Aに嵌合する。
【0013】
また、バルブボディ11の内部には、バルブ装着孔91の第1流路92Aと第2流路92Bとの間を連絡するバルブ内流路14が備えられている。そして、上下方向J1に直線移動する弁体16がバルブ内流路14の途中位置に突入して、バルブ内流路14を通過する流体の流量が制御される。
【0014】
弁体16を直線移動させるための駆動源として、電動弁10Aの上端部にはモータ50が備えられている。そのモータ50のロータ51は、バルブボディ11のうちフランジ部12より上側に備えたロータケース17内に収容され、モータ50のステータ52は、ロータケース17の外側に嵌合されている。
【0015】
具体的には、ロータケース17は、上下方向に延びる薄肉円筒構造をなし、その上端部はキャップ17Aによって閉塞されている。バルブボディ11は、ロータケース17の下端部をバルブボディ本体18の上端部に固定してなる。
【0016】
バルブボディ本体18は、第1ボディスリーブ21の内側に第2ボディスリーブ25を組み付け、さらに、その第2ボディスリーブ25の内側に第3ボディスリーブ26を組み付けた構造をなしている。
【0017】
第1ボディスリーブ21は、前述のフランジ部12と挿入部13とを有する。
図1に示すように、フランジ部12は、例えば、円板状をなして第1ボディスリーブ21の上端部から側方に張り出し、その外径はステータ52の外径より大きくなっている。また、フランジ部12のうちステータ52の外径より外側となる範囲には、周方向を複数等分する位置に、上下方向J1に貫通する複数の取付孔12Lが備えられると共に、ステータ52をバルブボディ11に固定するための螺子孔12Nが設けられている。さらに、
図4に示すように、フランジ部12の上面には、内縁部を段付き状に突出させなる台座部12Zが備えられ、台座部12Zの側面と台座部12Zより外側のフランジ部12の上面との間の角部はR面取りされている。なお、フランジ部12は、円形で限定されるものではなく、楕円形や多角形等であってもよい。また、取付孔12Lは、座繰り孔であってもよい。
【0018】
図3に示すように、第1ボディスリーブ21の内側は、上側から順番に第1内径部22A、雌螺子部22B、第2内径部22C、テーパ部22Dになっている。また、第1内径部22Aから第2内径部22Cに向かって段階的に縮径され、テーパ部22Dは、第2内径部22Cから離れるに従って拡径している。また、第2内径部22Cのうちテーパ部22D側の端部には、弁座部材23が嵌合固定され、その弁座部材23にはテーパ部22Dに連続するテーパ状の貫通孔23Aが形成されている。さらに、第2内径部22Cから側方に分岐孔22Eが延びている。そして、テーパ部22Dと第2内径部22Cと貫通孔23Aと分岐孔22Eとにより、前述のバルブ内流路14が形成され、弁座部材23の貫通孔23Aの上端が弁口15をなし、その弁口15に前述の弁体16が第2内径部22C側から突入するようになっている。
【0019】
第2ボディスリーブ25の外面は、上側から順番に、第1外径部25A、第2外径部25B、雄螺子部25Cになっている。
図4に示すように、第2外径部25Bの外径は、第1外径部25Aの外径より僅かに大きく、第1外径部25Aと第2外径部25Bとの間には、段差面25Dが形成されている。また、第2外径部25Bには、Oリング25Nを受容したOリング溝25Mが設けられている。そのOリング25Nを第1ボディスリーブ21内に導入するために、第1内径部22Aの内面とフランジ部12の上面(詳細には、台座部12Zの上面)とが交差する角部をC面取りして導入面22Gが形成されている。そして、
図3に示すように、第2ボディスリーブ25の雄螺子部25Cが第1ボディスリーブ21の雌螺子部22Bに螺合されて、第2ボディスリーブ25の第2外径部25Bと第1ボディスリーブ21の第1内径部22Aとの周面間がOリング25Nによってシールされている。また、第2ボディスリーブ25が第1ボディスリーブ21に組み付けられた状態では、
図4に示すように、第2ボディスリーブ25の段差面25Dと第1ボディスリーブ21のフランジ部12の台座部12Zの上面とが略面一になる。
【0020】
第2ボディスリーブ25の内側は、第1外径部25Aの内側が大径部25E、第1外径部25Aより下側が小径部25Fになっている。そして、大径部25Eの内側にロータケース17が嵌合されて大径部25Eと小径部25Fとの段差面25Gに突き当てられている。また、小径部25Fには、第3ボディスリーブ26が嵌合した状態に固定されている。
図3に示すように、第3ボディスリーブ26の下端部は、第2ボディスリーブ25の下面から第2内径部22C内に突出し、第3ボディスリーブ26の上端部は、第2ボディスリーブ25の段差面25Gより上方に突出している。また、第3ボディスリーブ26の中心部には、上側から順番に第1内径部26A、雌螺子部26B、第2内径部26Cが備えられ、上から下に向かって段階的に縮径している。バルブボディ11に関する説明は以上である。
【0021】
前述のとおり、モータ50のロータ51は、バルブボディ11に備えられたロータケース17の内側に収容されている。ロータ51は、下端有底の円筒形状をなした磁石であって、周方向にN極とS極とが交互に並ぶように着磁されている。
【0022】
ロータ51の底壁51Aの中心部には、回転スリーブ30が固定されている。回転スリーブ30は、大径筒部30Aから下方に小径筒部30Bが延長された構造をなしている。そして、大径筒部30Aの上端寄り位置がロータ51の底壁51Aを貫通した状態に固定され、大径筒部30Aのうちロータ51より下側部分が第3ボディスリーブ26の第1内径部26Aに回転可能に支持され、さらに、小径筒部30Bの外面に形成された雄螺子部30Nが第3ボディスリーブ26の雌螺子部26Bに螺合している。これにより、ロータ51及び回転スリーブ30は、バルブボディ11に対して回転しながら直線移動する。
【0023】
回転スリーブ30の上端は詰栓27により閉塞されている。また、詰栓27から上方に支柱27Aが起立している。そして、支柱27Aに線材を巻き付けてなる螺旋ガイド27Bと、キャップ17Aの中心からずれた位置から垂下された当接バー17Bと、螺旋ガイド27Bに螺合しかつ当接バー17Bに当接する螺合部品17Dと、からなる公知なストッパ機構によりロータ51の回転可能な範囲が制限されている。
【0024】
回転スリーブ30の小径筒部30Bの内側には、センターシャフト31が通されている。センターシャフト31の下端部には、弁体16が設けられる一方、センターシャフト31の上端部にはヘッド部31Hが備えられ、そのヘッド部31Hは大径筒部30Aに受容されている。また、ヘッド部31Hの上には、ボール32が配置され、ボール32と詰栓27との間に設けられた圧縮コイルバネ33により、ヘッド部31Hが大径筒部30A及び小径筒部30Bの内面間の段差面に押し付けられている。
【0025】
弁体16は、センターシャフト31より外径が大きな円柱状のベース部16Aから下方にベース部16Aより小径の突入部16Bが突出した構造をなしている。また、突入部16Bは、下方に向かうに従って緩やかに縮径したテーパ状になっている。そして、ベース部16Aの下端が弁口15の開口縁に当接して弁口15を全閉し、ベース部16Aの下端が弁口15の開口縁から離れると、突入部16Bの弁口15への突入量によって弁口15の開口面積が変更されて弁口15を通過する流量が変わる。そして、モータ50により弁体16の上下方向J1における位置が制御されて、弁口15を通過する流量が制御される。
【0026】
なお、弁体16は上記形状に限定されるものではない。また、弁体16は、例えば、弁口15を通過する流量を制御せずに、単に弁口15を開閉するだけのものであってもよい。さらに、弁体16は、弁口15を閉じた状態で僅かに流体が弁口15を通過する構造としてもよい。
【0027】
図2に示すように、モータ50のステータ52は、電機子53の外側を防水カバー54で覆った構造になっている。電機子53は、複数の電磁コイル53Aと磁路を形成する継鉄53Bとを含んでなり、全体が円筒状をなしている。また、電機子53の外周面からは、電機子53に給電するためのコネクタ部53Cが突出している。
図1に示すように、コネクタ部53Cは、樹脂製のフード53Dの内部に端子金具53Kを備えた構造をなしている。なお、電機子53は、継鉄53Bを有しなくてもよい。
【0028】
防水カバー54は、電機子53の外側にモールド成形され、上端有底、下端開放の筒状をなしている。詳細には、防水カバー54は、上述のコネクタ部53Cを除き、電機子53の上下の両面と側面とを被覆する円筒状の大径部55と、大径部55の上面中央部から突出し、電機子53の内周面と面一の内周面を有する上端有底の円筒状の小径部56とを有する。また、コネクタ部53Cは、大径部55を側壁55Aを貫通して外側に突出している。
【0029】
電機子53の下面を覆う大径部55の底壁55Bの中央部には、電機子53の内径よりより僅かに大きな開口が形成され、その開口縁から筒部57が垂下している。筒部57は円筒状をなし、その内径は、第1ボディスリーブ21における第1内径部22Aの内径と略同一で、外径は、台座部12Zの外径より小さくなっている。
【0030】
ステータ52は、ロータケース17の外側に嵌合される。具体的には、筒部57の下端開口からロータケース17がステータ52内に嵌合され、正規嵌合位置に至ると
図2に示すように、ロータケース17の上端部がステータ52内の上面に当接するか隣接した状態になる。すると、筒部57の下面が台座部12Zの上面から僅かに離れた上方に位置される。
【0031】
図4に示すように、ステータ52と、バルブボディ11のうちステータ52に上下方向J1で対向するステータ対向部11Dとの間には、シール部材58が挟まれている。ここで、本実施形態では、バルブボディ11のうち第1ボディスリーブ21及び第2ボディスリーブ25のうちロータケース17の外側面より側方に位置する部分の全体がステータ対向部11Dに相当する。また、シール部材58は、円板状をなし、ステータ対向部11Dのうち台座部12Zの上面とそれと面一の段差面25Dとに跨がって敷設されている。また、シール部材58の外径は、ステータ52の筒部57の外径より大きく、内径は筒部57の内径より僅かに小さい。さらに、シール部材58の厚さは、筒部57がロータケース17に対する正規嵌合位置に配置された状態における筒部57の下面と台座部12Zの上面との間隔に対し、2~4倍程度になっている。
【0032】
詳細には、シール部材58は、ポリウレタンフォームのシートを打ち抜いてなる。このポリウレタンフォームは、半連続気泡構造をなし、圧縮率50~75%まで圧縮させることができる。また、このポリウレタンフォームは、半連続気泡構造であるので、低応力で圧縮することができ、圧縮後は独立気泡構造化して空気や水を通さないようになる。これにより、ステータ52をロータケース17に嵌合する際に、シール部材58を押し潰すための大きな力を要せずに正規嵌合位置まで嵌合することができる。そして、押し潰されたシール部材58により筒部57とフランジ部12との間がシールされると共に、第1ボディスリーブ21と第2ボディスリーブ25との間の嵌合隙間21Zもシールされる。また、嵌合隙間21Zの上端部は、導入面22Gにより広くなっているので、その嵌合隙間21Zの上端部にシール部材58が入り込んだ状態になり、高いシール性を得られる。
【0033】
なお、シール部材58は、半連続気泡構造のポリウレタンフォームであるが、これに限定されるものではなく、筒部57とフランジ部12との間で押し潰されるものであれば、どのようなものでもよく、例えば、半連続気泡構造のポリウレタン以外のエラストマーの発泡体でもよいし、独立気泡構造のポリウレタン、その他の部材の発泡体であってもよいし、さらには、非発泡のエラストマーであってもよい。
【0034】
ステータ52をバルブボディ11に固定するために、
図5に示すように、ステータ52には連結部材60が固定されている。具体的には、連結部材60は、板金を打ち抜きかつ折り曲げてなり、ステータ52の下面のうち筒部57より外側部分に重ねられるリング部61を備える。また、ステータ52の下面からは、複数の固定突部55Tが突出していて、それら固定突部55Tがリング部61に形成された貫通孔61Aに通されかつ熱カシメされることで、リング部61が大径部55に固定されている。そして、リング部61のうちステータ52の下面の外縁部と重なる部分から連結片63が垂下している。また、連結片63の下端部は、ステータ52の外側に張り出すように直角曲げされ、そこには上下に貫通する取付孔63Aが設けられている。そして、ステータ52が正規嵌合位置まで嵌合されると、連結片63の下面がフランジ部12の上面に重なり、フランジ部12の螺子孔12N(
図1参照)に取付孔63Aを重ねることができる。その状態で取付孔63Aに通したボルトが螺子孔12Nに締め付けてステータ52がバルブボディ11に固定される。なお、本実施形態では、連結部材60に連結片63が1つのみ備えられているが、複数であってもよい。
【0035】
本実施形態の電動弁10Aの構成に関する説明は以上である。次に、この電動弁10Aの作用効果について説明する。電動弁10Aは、バルブ取付対象部材90に取り付けるには、例えば、電動弁10Aをバルブボディ11とステータ52とに分離し、バルブボディ11をバルブ装着孔91に挿入する。その際、バルブボディ11の分岐孔22Eがバルブ取付対象部材90の第2流路92Bに連通するように回転位置を合わせて、バルブボディ11をバルブ装着孔91に押し込む。また、フランジ部12を加圧してバルブボディ11をバルブ装着孔91に押し込めば、ロータケース17に負荷をかけずに、強い力でバルブボディ11をバルブ装着孔91に押し込むことができる。そして、フランジ部12の取付孔12Lに通したボルトを、バルブ取付対象部材90のバルブ装着孔91の周囲に形成されている螺子孔93に締め付けてバルブボディ11がバルブ取付対象部材90に固定される。
【0036】
次いで、ステータ52をバルブボディ11のロータケース17に嵌合する。すると、筒部57がシール部材58にて押し潰されてフランジ部12と筒部57との間がシールされる。ここで、シール部材58は、半連続気泡構造の発泡体であるので、容易に押し潰され、シール部材58を押し潰すことがステータ52の嵌合操作の邪魔になることはない。そして、ステータ52の連結部材60に備えた連結片63の取付孔63A(
図5参照)にボルトを通してフランジ部12の螺子孔12Nに締め付けることで、ステータ52がバルブボディ11に固定される。
【0037】
なお、上記手順と異なり、バルブボディ11にステータ52を組み付けておいてから、バルブボディ11にバルブ装着孔91に挿入してバルブボディ11をバルブ取付対象部材90に固定してもよい。
【0038】
上述したように本実施形態の電動弁10Aのステータ52は、一端有底、他端開放の筒形をなしている。そして、ステータ52がバルブボディ11に備えたロータケース17の外側に嵌合され、バルブボディ11に備えたステータ対向部11Dとステータ52との間に環状のシール部材58がバルブボディ11の軸方向で挟まれて、ステータ52の内側への浸水が規制される。これにより、モータ50の防水性が従来より向上する。ここで、ステータ52内への浸水を規制するために、シール部材がステータ52の内面とバルブボディ11の外面とに径方向で挟まれるシール構造が考えられるが、そのようなシール構造に比べて、本実施形態のようにシール部材58がバルブボディ11の軸方向で挟まれるシール構造とすれば、ステータ52の嵌合抵抗が増加が抑えられ、モータ50の防水性の強化を図りつつステータ52の組み付けを容易に行うことができ、小型化も図られる。しかも、本実施形態では、ステータ52にシール部材58より外径が小さい筒部57が設けられて、その筒部57がシール部材58に当接して食い込むので、高いシール性をえることができる。
【0039】
[第2実施形態]
本実施形態の電動弁10Bは、
図6にされており、第1実施形態の電動弁10Aのステータ52の筒部57の代わりに、ステータ52とステータ対向部11Dとの間に挟まれた円筒状の中間スリーブ57Xを備えている。また、ステータ52の下面の内縁部に凹部54Zが形成され、そこには、台座部12Z上のシール部材58と同様に材料(例えば、半連続気泡構造のポリウレタンフォーム)で構成された円板状のシール部材58Xが受容されている。そして、中間スリーブ57Xとステータ対向部11Dとの間でシール部材58が押し潰されると共に、中間スリーブ57Xとステータ52との間でシール部材58Xが押し潰されて、ぞれぞれの間がシールされるようになっている。本実施形態の構造によれば、中間スリーブ57Xをステータ52と別体としたことで、電機子53の発熱時に電機子53と防水カバー54との熱膨張率の相違により内部応力の発生を緩和することができる。
【0040】
[第3実施形態]
第1実施形態の電動弁10Aでは、シール部材58に突き当てられる筒部57がステータ52に設けられていたが、本実施形態の電動弁10Cは、
図7にされており、筒部57Yがステータ対向部11Dに設けられている。具体的には、筒部57Yは、円筒状をなして、ステータ対向部11Dにおける台座部12Zから上方に突出している。また、ステータ52の下面には、前記第2実施形態と同様の凹部54Zが形成され、そこにシール部材58Xが収容されている。そして、筒部57Yとステータ52の電機子53との間でシール部材58Xが押し潰されてそれらの間がシールされる。本実施形態の構成によっても第2実施形態と同様の効果を奏する。また、シール部材58Xがステータ52の凹部54Zに収容されて保護されるという効果も得られる。
【0041】
[第4実施形態]
本実施形態の電動弁10Dは、
図8にされており、第1実施形態の電動弁10Aの筒部57の内側面に複数の係合凹部57Kを備えた構造の筒部57Zを備えると共に、それら係合凹部57Kと係合する係合突部25Tをバルブボディ11から突出させた構造をなしている。そして、ステータ52をバルブボディ11の正規位置まで嵌合すると、複数の係合突部25Tと係合凹部57Kとが互いに係合して、ステータ52がバルブボディ11に固定されるようになっている。
【0042】
[他の実施形態]
(1)
図9に示した電動弁10Eのように、フランジ部12の複数の取付孔12Lは、フランジ部12のうちステータ52に上方から覆われる位置に配置されていてもよい。また、同図に示した連結部材60の連結片62のようにフランジ部12の外周面に重なって螺子止めされる構造であってもよい。
【0043】
(2)
図11に示した電動弁10Fのように、第1実施形態で説明した連結部材60の連結片63の取付孔63Aを、フランジ部12の取付孔12Lに通されるボルトB1を通せる大きさにして、ボルトB1が、取付孔63Aと取付孔12Lとに通してバルブ取付対象部材90の螺子孔93に締め付けられるようにしてもよい。
【0044】
(3)バルブ取付対象部材90におけるバルブ装着孔91の内面に雌螺子を形成し、そこに、挿入部13の外面に形成された雄螺子を螺合して、バルブボディ11がバルブ取付対象部材90に固定されるようにしてもよい。
【0045】
(4)前記第1実施形態の電動弁10Aでは、ステータ52の防水カバー54に固定される連結部材60に連結片63が備えられていたが、連結片63が防水カバー54に一体形成されていてもよい。
【0046】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【符号の説明】
【0047】
10A~10F 電動弁
11 バルブボディ
11D ステータ対向部
17 ロータケース
21 第1ボディスリーブ
21Z 嵌合隙間
22D テーパ部
22G 導入面
25 第2ボディスリーブ
25M リング溝
25N Oリング
50 モータ(
51 ロータ
52 ステータ
57,57Y,57Z 筒部
57X 中間スリーブ
58,58X シール部材
62,63 連結片
90 バルブ取付対象部材
90A 外面
91 バルブ装着孔
92 流路
J1 上下方向(軸方向)
【手続補正書】
【提出日】2021-10-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流路(92)を有するバルブ取付対象部材(90)の外面に開口するバルブ装着孔(91)に先端側を挿入されかつ基端側に駆動源であるモータ(50)を有し、前記流路(92)を流れる流体の流量を変更することが可能な電動弁(10A,10D~10F)であって、
前記バルブ装着孔(91)の軸方向(J1)に延びかつ基端側に前記モータ(50)のロータ(51)を収容するロータケース(17)を有するバルブボディ(11)と、
前記ロータケース(17)の外側に嵌合される一端有底、他端開放の筒形のステータ(52)と、
前記バルブボディ(11)の軸方向(J1)の途中位置を拡径してなり、前記ステータ(52)と前記軸方向(J1)で対向するステータ対向部(11D)と、
前記ステータ(52)に一体に設けられ、前記ステータ対向部(11D)に向かって突出する筒部(57,57Z)と、
前記ステータ対向部(11D)と前記筒部(57,57Z)との間に前記軸方向(J1)で挟まれて、前記ステータ(52)の内側への浸水を規制する環状のシール部材(58)と、を備え、
前記バルブボディ(11)には、
前記流路(92)に連通するバルブ内流路(92)を有する第1ボディスリーブ(21)と、
前記第1ボディスリーブ(21)の内側に組み付けられ、基端部に前記ロータケース(17)が固定されている第2ボディスリーブ(25)と、が含まれ、
前記第1ボディスリーブ(21)の内面と前記第2ボディスリーブ(25)の外面との間の嵌合隙間(21Z)が、前記ステータ対向部(11D)における前記ステータ(52)との対向面に開口しかつ前記シール部材(58)に覆われている電動弁(10A,10D~10F)。
【請求項2】
前記シール部材(58)は、外径が前記筒部(57,57Z)の外径より大きく、内径が前記筒部(57,57Z)の内径と略同一か小さい円板状をなしている請求項1に記載の電動弁(10A,10D~10F)。
【請求項3】
前記第2ボディスリーブ(25)の外面には、前記第1ボディスリーブ(21)の内面に密着するOリング(25N)を受容したOリング溝(25M)が形成され、
前記第1ボディスリーブ(21)の内縁部には、前記Oリング(25N)を導入するためにテーパー状の導入面(22G)が形成されて、前記嵌合隙間(21Z)における前記シール部材(58)側の端部が広くなっている請求項1又は2に記載の電動弁(10A,10D~10F)。
【請求項4】
内部に流路(92)を有するバルブ取付対象部材(90)の外面に開口するバルブ装着孔(91)に先端側を挿入されかつ基端側に駆動源であるモータ(50)を有し、前記流路(92)を流れる流体の流量を変更することが可能な電動弁(10B)であって、
前記バルブ装着孔(91)の軸方向(J1)に延びかつ基端側に前記モータ(50)のロータ(51)を収容するロータケース(17)を有するバルブボディ(11)と、
前記ロータケース(17)の外側に嵌合される一端有底、他端開放の筒形のステータ(52)と、
前記バルブボディ(11)の軸方向(J1)の途中位置を拡径してなり、前記ステータ(52)と前記軸方向(J1)で対向するステータ対向部(11D)と、
前記ステータ対向部(11D)と前記ステータ(52)との間に前記軸方向(J1)で挟まれて、前記ステータ(52)の内側への浸水を規制する環状のシール部材(58,58X)と、を備え、
前記ステータ(52)及び前記ステータ対向部(11D)に挟まれる中間スリーブ(57X)を備え、
前記シール部材(58,58X)は、前記中間スリーブ(57X)と前記ステータ(52)との間と、前記中間スリーブ(57X)と前記ステータ対向部(11D)との間とのぞれぞれに設けられて挟まれている電動弁(10B)。
【請求項5】
前記シール部材(58,58X)は、発泡ウレタン製である請求項1から4の何れか1の請求項に記載の電動弁(10A,10B,10D~10F)。
【請求項6】
前記シール部材(58,58X)は、半連続気泡構造をなしている請求項5に記載の電動弁(10A,10B,10D~10F)。
【請求項7】
前記ステータ(52)から前記ステータ対向部(11D)側に張り出し、前記バルブボディ(11)に固定される連結片(63)を備える請求項1から6の何れか1の請求項に記載の電動弁(10A,10B,10D~10F)。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1の発明は、内部に流路(92)を有するバルブ取付対象部材(90)の外面に開口するバルブ装着孔(91)に先端側を挿入されかつ基端側に駆動源であるモータ(50)を有し、前記流路(92)を流れる流体の流量を変更することが可能な電動弁(10A,10D~10F)であって、前記バルブ装着孔(91)の軸方向(J1)に延びかつ基端側に前記モータ(50)のロータ(51)を収容するロータケース(17)を有するバルブボディ(11)と、前記ロータケース(17)の外側に嵌合される一端有底、他端開放の筒形のステータ(52)と、前記バルブボディ(11)の軸方向(J1)の途中位置を拡径してなり、前記ステータ(52)と前記軸方向(J1)で対向するステータ対向部(11D)と、前記ステータ(52)に一体に設けられ、前記ステータ対向部(11D)に向かって突出する筒部(57,57Z)と、前記ステータ対向部(11D)と前記筒部(57,57Z)との間に前記軸方向(J1)で挟まれて、前記ステータ(52)の内側への浸水を規制する環状のシール部材(58)と、を備え、前記バルブボディ(11)には、前記流路(92)に連通するバルブ内流路(92)を有する第1ボディスリーブ(21)と、前記第1ボディスリーブ(21)の内側に組み付けられ、基端部に前記ロータケース(17)が固定されている第2ボディスリーブ(25)と、が含まれ、前記第1ボディスリーブ(21)の内面と前記第2ボディスリーブ(25)の外面との間の嵌合隙間(21Z)が、前記ステータ対向部(11D)における前記ステータ(52)との対向面に開口しかつ前記シール部材(58)に覆われている電動弁(10A,10D~10F)である。