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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045324
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20230327BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20230327BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20230327BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/00
C09J4/02
C09J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153667
(22)【出願日】2021-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅尾 万智
(72)【発明者】
【氏名】瀬口 誠司
(72)【発明者】
【氏名】黒田 大輔
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA01
4J004AA10
4J004AB01
4J004AB07
4J004BA02
4J004CA06
4J004CB03
4J004DB03
4J004FA08
4J040DF021
4J040DF031
4J040FA142
4J040HB18
4J040JB09
4J040KA13
4J040KA15
4J040KA16
4J040LA01
4J040LA02
4J040LA06
4J040NA17
4J040PA32
(57)【要約】
【課題】硬化した後に紫外線に暴露されたとしても硬くなり過ぎるのが抑制され、紫外線暴露後においても段差追従性に優れる粘着シートを提供する。
【解決手段】本発明の粘着シートは、(メタ)アクリル系共重合体(A)と、2個以上のアクリロイル基を有する架橋剤(B)と、水素引き抜き型光開始剤(C)と、自己開裂型光ラジカル開始剤(D)とを含み、前記架橋剤(B)は、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して5質量部未満含まれており、前記水素引き抜き型光開始剤(C)は、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.3質量部以下含まれており、前記自己開裂型光ラジカル開始剤(D)は、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部あたりに対して0.2質量部以上含まれている。粘着シートは、
R=S(LED)/S(HTML)の値が0.8~1.2である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系共重合体(A)と、
2個以上のアクリロイル基を有する架橋剤(B)と、
水素引き抜き型光開始剤(C)と、
自己開裂型光ラジカル開始剤(D)と
を含み、
前記架橋剤(B)は、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して5質量部未満含まれており、
前記水素引き抜き型光開始剤(C)は、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.3質量部以下含まれており、
前記自己開裂型光ラジカル開始剤(D)は、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部あたりに対して0.2質量部以上含まれており、
下記式(1)
R=S(LED)/S(HTML) (1)
(ここで、S(HPML)は、粘着シートに対し、照度160mW/cmの高圧水銀ランプを用いて積算光量が3000mJ/cmとなるように光照射した後に、速度300mm/minで引張伸び率が500%となるまで引っ張った際の応力値[N/mm]を示し、S(LED)は、粘着シートに対し、照度160mW/cm及び波長365nmのLEDランプを用いて積算光量が3000mJ/cmとなるように光照射した後に、速度300mm/minで引張伸び率が500%となるまで引っ張った際の応力値[N/mm]を示す)
で表されるRの値が0.8~1.2である、粘着シート。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)は、ガラス転移温度が-50℃~-40℃であり、質量平均分子量が25万~45万である、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)は、その構造単位中にアクリロイル基を含まない、請求項1又は2に記載の粘着シート。
【請求項4】
熱架橋剤を含まない、請求項1~3のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の粘着シートを備える、積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着シートは、例えば、部材(被着体)どうしを貼り合わせる用途等に使用されており、種々の分において広く利用されている。このような粘着シートは、近年では液晶ディスプレイ(LCD)等の表示装置、あるいはタッチパネル等の入力装置等の用途にも使用されている。表示装置あるいは入力装置を構成する光学ディスプレイ等の各部材どうしの貼り合わせに粘着シートを使用することで、高精度、かつ、容易に各種装置を製造することができる。
【0003】
粘着シートが表示装置あるいは光学ディスプレイ等の用途に使用される場合、斯かる粘着シートには、部材を貼合固定する性能(粘着性)と同時に印刷段差を埋める性能(段差追従性)が求められる。さらに、これらの用途では長期間にわたって使用することが通常であるから、粘着シートには、その粘着力が安定的に長期にわたって保持されると共に被着体の収縮等による剥がれが起こりにくい性能(すなわち応力緩和性)を有することが求められる。この観点から、例えば特許文献1には、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体と、アクリル系架橋モノマーと、特定の光重合開始剤とを含有する粘着シートにより、経時的な保持力の低下を抑止すると共に界面に気泡が発生するのを抑制する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-292986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の技術のように、粘着シートに光重合開始剤が含まれる場合、部材(被着体)どうしを粘着シートによって貼り合わせて形成させた積層体に紫外線を照射すると更なる硬化(後硬化)が進行し、積層体における部材どうしがより強固に接着される。しかし、紫外線照射後においても水素引き抜き型光重合開始剤は粘着シート中に残存することから、使用時等において積層体がさらに紫外線に曝露されると粘着シートの硬化が進行し、粘着シートが硬くなり過ぎる。この結果、応力緩和性が低下し、粘着シートと被着体との界面などに気泡が発生するという問題を引き起こしていた。
【0006】
また、水素引き抜き型光開始剤(例えば、ベンゾフェノン系)は主な吸収波長が350nm以下の短波長領域にあるため、短波長側の光も放出する高圧水銀やメタルハライドランプにより硬化した場合と365nm近傍の波長のみを放出するUV LEDランプにより硬化した場合とでは硬化性が異なる問題もあった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、段差追従性に優れ、硬化した後に紫外線に曝露されたとしても硬くなり過ぎるのが抑制され、紫外線曝露後においても応力緩和性に優れ、かつ、高圧水銀ランプとUV LEDランプによる硬化性の差が小さい粘着シート及び該粘着シートを備える積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の架橋剤(B)及び光重合開始剤を所定量で含有することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、例えば、以下の項に記載の主題を包含する。
項1
(メタ)アクリル系共重合体(A)と、
2個以上のアクリロイル基を有する架橋剤(B)と、
水素引き抜き型光開始剤(C)と、
自己開裂型光ラジカル開始剤(D)と
を含み、
前記架橋剤(B)は、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して5質量部未満含まれており、
前記水素引き抜き型光開始剤(C)は、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.3質量部以下含まれており、
前記自己開裂型光ラジカル開始剤(D)は、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部あたりに対して0.2質量部以上含まれており、
下記式(1)
R=S(LED)/S(HTML) (1)
(ここで、S(HPML)は、粘着シートに対し、照度160mW/cmの高圧水銀ランプを用いて積算光量が3000mJ/cmとなるように光照射した後に、速度300mm/minで引張伸び率が500%となるまで引っ張った際の応力値[N/mm]を示し、S(LED)は、粘着シートに対し、照度160mW/cm及び波長365nmのLEDランプを用いて積算光量が3000mJ/cmとなるように光照射した後に、速度300mm/minで引張伸び率が500%となるまで引っ張った際の応力値[N/mm]を示す)
で表されるRの値が0.8~1.2である、粘着シート。
項2
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)は、ガラス転移温度が-50℃~-40℃であり、質量平均分子量が25万~45万である、項1に記載の粘着シート。
項3
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)は、その構造単位中にアクリロイル基を含まない、項1又は2に記載の粘着シート。
項4
熱架橋剤を含まない、項1~3のいずれか1項に記載の粘着シート。
項5
項1~4のいずれか1項に記載の粘着シートを備える、積層体。
【発明の効果】
【0010】
本発明の粘着シートは、段差追従性に優れ、硬化した後に紫外線に曝露されたとしても硬くなり過ぎるのが抑制され、紫外線曝露後においても応力緩和性に優れる。また、本発明の粘着シートは、高圧水銀ランプとUV LEDランプによる硬化性の差が小さい。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0012】
本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値又は実施例から一義的に導き出せる値に置き換えてもよい。また、本明細書において、「~」で結ばれた数値は、「~」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。
【0013】
1.粘着シート
本発明の粘着シートは、
(メタ)アクリル系共重合体(A)と、
2個以上のアクリロイル基を有する架橋剤(B)と、
水素引き抜き型光開始剤(C)と、
自己開裂型光ラジカル開始剤(D)と
を少なくとも含む。
【0014】
本発明の粘着シートにおいて、前記架橋剤(B)は、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して5質量部未満含まれており、前記水素引き抜き型光開始剤(C)は、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.3質量部以下含まれており、前記自己開裂型光ラジカル開始剤(D)は、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部あたりに対して0.2質量部以上含まれている。
【0015】
本発明の粘着シートは、下記式(1)
R=S(LED)/S(HTML) (1)
で表されるRの値が0.8~1.2である。ここで、S(HPML)は、粘着シートに対し、照度160mW/cmの高圧水銀ランプを用いて積算光量が3000mJ/cmとなるように光照射した後に、速度300mm/minで引張伸び率が500%となるまで引っ張った際の応力値[N/mm]を示す。S(LED)は、粘着シートに対し、照度160mW/cm及び波長365nmのLEDランプを用いて積算光量が3000mJ/cmとなるように光照射した後に、速度300mm/minで引張伸び率が500%となるまで引っ張った際の応力値[N/mm]を示す)
【0016】
本発明の粘着シートは、段差追従性に優れ、硬化した後に紫外線に曝露されたとしても硬くなり過ぎるのが抑制され、紫外線曝露後においても応力緩和性に優れる。また、本発明の粘着シートは、高圧水銀ランプとUV LEDランプによる硬化性の差が小さいので、後硬化時に使用するランプの種類によらず性能が安定する。
【0017】
((メタ)アクリル系共重合体)
本発明の粘着シートは、(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成成分として含有する。(メタ)アクリル系共重合体(A)は、本発明の粘着シートの主たる成分であり、いわゆる粘着シートのベースポリマーである。
【0018】
(メタ)アクリル系共重合体(A)の種類は特に限定されず、例えば、公知の粘着シートを構成するために使用されている(メタ)アクリル系共重合体を広く適用することができる。
【0019】
(メタ)アクリル系共重合体(A)は、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位を有することができる。本明細書において、「単位」は重合体を構成する繰り返し構造単位(単量体単位ともいう)である。(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸n-ウンデシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボロニル等が挙げられる。(メタ)アクリル系共重合体(A)に含まれる(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位は1種を単独とすることができ、2種以上を併用することもできる。
【0020】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの中でも、粘着性が高くなることから、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルからなる群より選ばれる少なくとも1種類が好ましい。
【0021】
(メタ)アクリル系共重合体(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位以外の他のアクリル系単量体単位を有してもよい。他のアクリル系単量体単位としては、架橋性官能基を有するアクリル系単量体単位を挙げることができ、例えば、ヒドロキシ基含有アクリル系単量体単位、カルボキシル基含有アクリル系単量体単位を挙げることができる。これら単量体単位は(メタ)アクリル系共重合体(A)中に1種含むことができ、あるいは、2種以上を含むこともできる。
【0022】
ヒドロキシ基含有アクリル系単量体単位は、ヒドロキシ基含有アクリル系単量体に由来する。ヒドロキシ基含有アクリル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(メタ)アクリル酸モノ(ジエチレングリコール)などの(メタ)アクリル酸[(モノ、ジ又はポリ)アルキレングリコール]、(メタ)アクリル酸モノカプロラクトンなどの(メタ)アクリル酸ラクトンが挙げられる。カルボキシル基含有アクリル系単量体単位は、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。
【0023】
(メタ)アクリル系共重合体(A)が、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位以外の他のアクリル系単量体単位を有する場合、他のアクリル系単量体単位の含有量は(メタ)アクリル系共重合体(A)の全質量に対して0.01~20質量%であることが好ましく、0.5~10質量%であることがより好ましい。中でも、架橋性官能基を有するアクリル系単量体単位の含有量が上記範囲内であることが好ましい。他のアクリル系単量体単位の含有量が上記下限値以上であれば、凝集力を十分に高めることができ、上記上限値以下であれば、十分な粘着力を確保しやすくなる。
【0024】
(メタ)アクリル系共重合体(A)は、その構造単位中にアクリロイル基を含まないことが好ましい。これにより、(メタ)アクリル系共重合体(A)の製造が容易になる。
【0025】
(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は特に限定されない。例えば、(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は-50℃~-40℃とすることができる。この場合、粘着シートの段差追従性をより効果的に高めることができ、また、粘着シートの凝集力をより高めることができ、耐久性と粘着性にも優れ、加えて、粘着シートのハンドリング性を高めることができるので加工がしやすくなる。(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、-49℃以上であることが好ましく、-48℃以上であることがより好ましく、また、-41℃以下であることが好ましく、-42℃以下であることがより好ましい。
【0026】
(メタ)アクリル系共重合体(A)の質量平均分子量(Mw)は特に限定されない。例えば、(メタ)アクリル系共重合体(A)の質量平均分子量は25万~45万とすることができる。これにより、はトレードオフの関係にある段差追従性と耐久性を両立させることができる。(メタ)アクリル系共重合体(A)の質量平均分子量(Mw)は26万以上であることが好ましく、28万以上であることがより好ましく、30万以上であることがさらに好ましく、また、43万以下であることが好ましい。
【0027】
(メタ)アクリル系共重合体(A)は、ガラス転移温度が-50℃~-40℃であり、かつ、質量平均分子量が25万~45万であることが特に好ましい。
【0028】
(メタ)アクリル系共重合体(A)の質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定し、標準ポリスチレン換算で求めた値である。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)の測定条件は以下のとおりである。
溶媒:テトラヒドロフラン
カラム:Shodex KF801、KF803L、KF800L、KF800D(昭和電工(株)製を4本接続して使用した)
カラム温度:40℃
試料濃度:0.5質量%
検出器:RI-2031plus(JASCO製)
ポンプ:RI-2080plus(JASCO製)
流量(流速):0.8ml/min
注入量:10μl
校正曲線:標準ポリスチレンShodex standard ポリスチレン(昭和電工製)Mw=1320~2500000迄の10サンプルによる校正曲線を使用した。
【0029】
(メタ)アクリル系共重合体(A)は、例えば、公知の方法で製造することができ、例として、アクリルモノマーの重合反応によって製造することができる。この場合、各種の重合方法を採用することができ、例えば、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法等が挙げられる。また、(メタ)アクリル系共重合体(A)は、市販品から入手することもでき、例えば、アイカ工業社製のOP-9200-1、OP-9200-23、OP-9200-3、OP-9200-4、OP-9200-5、OP-9200-7等が挙げられる。
【0030】
(架橋剤(B))
本発明の粘着シートは、2個以上のアクリロイル基を有する架橋剤(B)を構成成分として含有する。2個以上のアクリロイル基を有する架橋剤(B)は、いわゆる、多官能モノマーである。2個以上のアクリロイル基を有する架橋剤(B)を単位「架橋剤(B)」と表記する。
【0031】
架橋剤(B)の種類は特に限定されず、例えば、公知の2個以上のアクリロイル基を有する重合性モノマーを広く適用することができる。架橋剤(B)としては、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,3-ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,4-ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,9-ノナンジオール、ジアクリル酸1,6-ヘキサンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ポリブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジアクレート、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、トリ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール、テトラ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類、メタクリル酸ビニル等が挙げられる。
【0032】
架橋剤(B)は、例えば、公知の方法で製造することができ、あるいは、市販品から入手することもできる。市販品の例としては、新中村化学工業社製のATM-4PLや、A-TMM-3L、日本化薬社製のPET-30、大阪有機化学工業社製ビスコート#230等を挙げることができる。
【0033】
(水素引き抜き型光開始剤(C))
本発明の粘着シートは、水素引き抜き型光開始剤(C)を構成成分として含有する。水素引き抜き型光重合開始剤(C)は、活性エネルギー線の照射により光励起した開始剤と系中の水素供与体とが励起錯体を形成し、水素供与体の水素を転移させることにより重合を促進する光重合開始剤である。従って、水素引き抜き型光開始剤(C)は、本発明の粘着シートに含まれる架橋剤(B)及びその他含まれ得る重合性成分の重合反応を開始させ、そればかりか(メタ)アクリル系共重合体(A)に対しても作用して架橋構造を形成させることができる。
【0034】
ここで、「活性エネルギー線」とは電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味し、紫外線、電子線、可視光線、X線、イオン線等が挙げられる。中でも、汎用性の点から、紫外線または電子線が好ましく、紫外線が特に好ましい。
【0035】
水素引き抜き型光開始剤(C)の種類は特に限定されず、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、チオキサンソン、2-クロルチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、2,4-ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、カンファーキノン、ジベンゾスベロン、2-エチルアンスラキノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ベンジル、9,10-フェナンスレンキノン等を挙げることができる。中でも、水素引き抜き型光重合開始剤(C)は、ベンゾフェノン系の光重合開始剤であることが好ましい。ベンゾフェノン系の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン及び2,4,6-トリメチルベンゾフェノン等を挙げることができる。
【0036】
水素引き抜き型光重合開始剤(C)は、公知の方法で製造することができ、あるいは、市販品から入手することもできる。市販品の例としては、IGMレジン社製のTZT、MBFやLambson社製の「SPEED CURE MBP」(例えば、「4MBP」等を挙げることができる。
【0037】
(自己開裂型光ラジカル開始剤(D))
本発明の粘着シートは、自己開裂型光ラジカル開始剤(D)を構成成分として含有する。自己開裂型光ラジカル開始剤(D)は、活性エネルギー線の照射により、本発明の粘着シートに含まれる架橋剤(B)及びその他含まれ得る重合性成分の重合反応を開始させる。自己開裂型光ラジカル開始剤(D)は前記水素引き抜き型光重合開始剤(C)以外である。
【0038】
自己開裂型光ラジカル開始剤(D)の種類は特に限定されず、例えば、アセトフェノン系開始剤、ベンゾインエーテル系開始剤、ヒドロキシアルキルフェノン系開始剤、チオキサントン系開始剤、アミン系開始剤、アシルフォスフィンオキシド系開始剤等が挙げられる。
【0039】
アセトフェノン系開始剤として具体的には、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。ベンゾインエーテル系開始剤として具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等が挙げられる。ヒドロキシアルキルフェノン系開始剤として具体的には、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン等が挙げられる。チオキサントン系開始剤として具体的には、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン等が挙げられる。アミン系開始剤として具体的には、トリエタノールアミン、4-ジメチル安息香酸エチル等が挙げられる。アシルフォスフィンオキシド系開始剤として具体的には、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド等が挙げられる。
【0040】
自己開裂型光ラジカル開始剤(D)は、例えば、波長220~450nmに吸収波長ピークを有することができる。特に340~390nmに吸収波長ピークを有するものが好ましい。自己開裂型光ラジカル開始剤(D)の吸収波長ピークが340nm未満である場合には、適切な増感剤を使用することが好ましい。
【0041】
自己開裂型光ラジカル開始剤(D)は、公知の方法で製造することができ、あるいは、市販品から入手することもできる。市販品の例としては、IGM RESINS B.V製のEsacureOne、Omnirad 184、Omnirad 819、Omnirad 1173、Omnirad 2959、Omnirad 127、Omnirad 907、Omnirad 369、Omnirad 379G、Omnirad TPO、Omnirad TPO H、Irgacure OXE01、Irgacure OXE02等を挙げることができる。
【0042】
(粘着シート)
本発明の粘着シートは、上記のように、(メタ)アクリル系共重合体(A)、架橋剤(B)、水素引き抜き型光開始剤(C)及び自己開裂型光ラジカル開始剤(D)を含むので、いわゆる後硬化することができる。例えば、被着体どうしを粘着シートで貼り合わせた形成した積層体に、紫外線等の活性エネルギー線を照射することで、後硬化が進行し、被着体どうしがより強固に接着される。
【0043】
本発明の粘着シートは、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、前記架橋剤(B)の含有量が5質量部未満であり、前記水素引き抜き型光開始剤(C)の含有量が0.3質量部以下であり、前記自己開裂型光ラジカル開始剤(D)の含有量が0.2質量部以上である。これによって、本発明の粘着シートは、硬化した後に紫外線に曝露されたとしても硬くなり過ぎるのが抑制され、紫外線曝露後においても応力緩和性に優れ、加えて、高圧水銀ランプとUV LEDランプによる硬化性の差を小さくすることができる。このため、本発明の粘着シートは、後硬化時に使用するランプの種類によらず性能が安定する。
【0044】
前記架橋剤(B)の含有量が前記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して5質量部以上の場合、後硬化後の粘着シートが硬くなり過ぎるため、応力緩和性が不足し、気泡等の発生が起こりやすくなる。また、前記水素引き抜き型光開始剤(C)の含有量が前記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.3質量部を超過する場合、粘着シートは、硬化した後に紫外線に曝露されることで硬くなり過ぎるため、応力緩和性が悪化し、気泡等の発生が起こりやすくなる。なお、前記水素引き抜き型光開始剤(C)が含まれない粘着シートは、後硬化によっても硬化が進行しにくいので、応力緩和性が悪化し、気泡等の発生が起こりやすくなる。また、前記自己開裂型光ラジカル開始剤(D)の含有量が前記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.2質量部未満である場合、粘着シートに含まれる架橋剤(B)等が十分に硬化せずに、粘着力の低下等を引き起こし、また、Rの値も小さくなる。
【0045】
前記架橋剤(B)の含有量は、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して4.5質量部以下であることが好ましく、4質量部以下であることがより好ましく、3.5質量部以下であることがさらに好ましい。前記架橋剤(B)の含有量は、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、1質量部以上であることがさらに好ましい。
【0046】
前記水素引き抜き型光開始剤(C)の含有量は、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.25質量部以下であることが好ましく、0.2質量部以下であることがより好ましい。前記水素引き抜き型光開始剤(C)の含有量は、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.1質量部以上であることがさらに好ましい。
【0047】
本発明の粘着シートは、水素引き抜き型光開始剤(C)が所定の量以下で含まれることから、後硬化後にさらに長時間紫外線が曝露されても、水素引き抜き型開始剤の過剰反応が抑制されて粘着シートが硬くなり過ぎない。この結果、本発明の粘着シートは、応力緩和性の低下による気泡の発生を顕著に抑制することができる。
【0048】
前記自己開裂型光ラジカル開始剤(D)の含有量は、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.25質量部以上であることが好ましく、0.3質量部以上であることがより好ましい。前記自己開裂型光ラジカル開始剤(D)の含有量は、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して1質量部以下であることが好ましく、0.8質量部以下であることがより好ましい。
【0049】
本発明の粘着シートは、(メタ)アクリル系共重合体(A)、架橋剤(B)、水素引き抜き型光開始剤(C)及び自己開裂型光ラジカル開始剤(D)以外に、本発明の効果が阻害されない程度において、他の成分を含むことができる。
【0050】
例えば、本発明の粘着シートは、単官能モノマーを含むことができる。単官能モノマーは、分子内に反応性二重結合(特には、重合性二重結合)を1つ有するモノマーである。単官能モノマーとしては、例えば、粘着シートに含まれる公知の単官能モノマーを広く挙げることができ、(メタ)アクリルエステル化合物、(メタ)アクリルアミド化合物、その他のビニル化合物を挙げることができる。
【0051】
(メタ)アクリルエステル化合物としては、イソボルニルアクリレート、イソステアリルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、4~6員環の環状エーテル構造を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。(メタ)アクリルアミド化合物としては、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド等が挙げられる。その他、おしては、アクリロイルモルホリン、ビニルピロリドンなどを挙げることができる。
【0052】
本発明の粘着シートが単官能モノマーを含む場合、その含有量は特に限定されず、たとえば、(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対し、単官能モノマーを30質量部以下含むことが好ましく、20質量部以下含むことがより好ましく、10質量部以下含むことがさらに好ましい。
【0053】
本発明の粘着シートは、必要に応じて熱架橋剤を含むこともできるが、段差追従性が特に優れるものとなりやすい点で、本発明の粘着シートは、熱架橋剤は少量であることが好ましく、含まないことが特に好ましい。従って、本発明の粘着シートは、(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対する熱架橋剤の含有量が1質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以下であることがさらに好ましく、0質量部以下であることが特に好ましい。なお、ここでいう熱硬化剤とは熱によって硬化を進行させることができるものをいい、例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、アジリジン化合物、金属キレート化合物、ブチル化メラミン化合物などの公知の熱架橋剤を意味する。
【0054】
本発明の粘着シートは、必要に応じて、粘着シートの添加剤として用いられ得る添加剤を含むこともでき、例えば、増感剤、可塑剤、酸化防止剤、金属腐食防止剤、粘着付与剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤等が挙げられる。前述のように、吸収波長ピークが340nm未満である自己開裂型光ラジカル開始剤(D)が粘着シートに含まれる場合には、適切な増感剤を使用することが好ましい。
【0055】
本発明の粘着シートは、片面粘着シートであってもよいし、両面粘着シートであってもよい。また、本発明の粘着シートは、片面又は両面に剥離シートが設けられていてもよい。剥離シートとしては、剥離シート用基材とこの剥離シート用基材の片面に設けられた剥離剤層とを有する剥離性積層シート、あるいは、低極性基材としてポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。
【0056】
剥離性積層シートにおける剥離シート用基材には、紙類、高分子フィルムが使用され得る。剥離剤層を構成する剥離剤としては、例えば、汎用の付加型もしくは縮合型のシリコーン系剥離剤や長鎖アルキル基含有化合物が用いられる。特に、反応性が高い付加型シリコーン系剥離剤が好ましく用いられる。シリコーン系剥離剤としては、具体的には、東レ・ダウコーニングシリコーン社製のBY24-4527、SD-7220等や、信越化学工業(株)製のKS-3600、KS-774、X62-2600などが挙げられる。また、シリコーン系剥離剤中にSiO単位と(CHSiO1/2単位あるいはCH=CH(CH)SiO1/2単位を有する有機珪素化合物であるシリコーンレジンを含有することが好ましい。シリコーンレジンの具体例としては、東レ・ダウコーニングシリコーン社製のBY24-843、SD-7292、SHR-1404等や、信越化学工業(株)製のKS-3800、X92-183等が挙げられる。
【0057】
剥離性積層シートとして、市販品を用いてもよい。例えば、東洋紡(株)製の離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムである重セパレータフィルムや、東洋紡(株)製の離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムである軽セパレータフィルムを挙げることができる。
【0058】
本発明の粘着シートは、剥離力が互いに異なる1対の剥離シートを有することが好ましい。一方からの剥離性と他方からの剥離性とが異なると、剥離性が高い方の剥離シートだけを先に剥離することが容易となる。
【0059】
本発明の粘着シートを後硬化する方法は特に限定されず、例えば、公知の方法を広く採用することができる。例えば、後記する積層体に活性エネルギー線を照射する方法によって、後硬化することができる。
【0060】
(粘着シートの物性)
本発明の粘着シートは、下記式(1)
R=S(LED)/S(HTML) (1)
で表されるRの値が0.8~1.2である。
【0061】
S(HPML)は、粘着シートに対し、照度160mW/cmの高圧水銀ランプを用いて積算光量が3000mJ/cmとなるように光照射した後に、速度300mm/minで引張伸び率が500%となるまで引っ張った際の応力値[N/mm]を示す。S(LED)は、粘着シートに対し、照度160mW/cm及び波長365nmのLEDランプを用いて積算光量が3000mJ/cmとなるように光照射した後に、速度300mm/minで引張伸び率が500%となるまで引っ張った際の応力値[N/mm]を示す。
【0062】
S(HPML)は、以下の手順で測定する。両面に剥離力の異なる2枚の剥離シートが貼り合わされた粘着シートを縦50mm、横(幅方向)Ammとなるように切り出す。この際、横(幅方向)のAの値は、粘着シートの厚み(mm)×Amm=6mmとなるように決定する。次いで、照度160mW/cmの高圧水銀ランプを用いて積算光量が3000mJ/cmとなるように光照射することで後硬化する。その後、剥離力が低い方の剥離シートを剥離し、粘着シートのみを剥離力が高い方の剥離シート上で幅方向に丸め、円の直径2.8mm、高さ50mmの円柱状サンプルとする。円柱状サンプルの上端及び下端のそれぞれ10mmまでの領域を、厚み188μm、縦25mm、横50mmのPETフィルム2枚(合計4枚)で挟みこむ。この後、PETフィルム2枚で挟み込んだ領域を引張試験機のチャック部分とし、チャック間距離が30mmとなるように固定する。その後、測定温度23℃、相対湿度50%の環境下で引張速度300mm/分の条件で引張伸び率が500%となるまで引っ張り、この際の応力値をS(HPML)とする。
【0063】
S(LED)は、以下の手順で測定する。両面に剥離力の異なる2枚の剥離シートが貼り合わされた粘着シートを縦50mm、横(幅方向)Ammとなるように切り出す。この際、横(幅方向)のAの値は、粘着シートの厚み(mm)×Amm=6mmとなるように決定する。次いで、照度160mW/cmの及び波長365nmのLEDランプを用いて積算光量が3000mJ/cmとなるように光照射することで後硬化する。その後、剥離力が低い方の剥離シートを剥離し、粘着シートのみを剥離力が高い方の剥離シート上で幅方向に丸め、円の直径2.8mm、高さ50mmの円柱状サンプルとする。円柱状サンプルの上端及び下端のそれぞれ10mmまでの領域を、厚み188μm、縦25mm、横50mmのPETフィルム2枚(合計4枚)で挟みこむ。この後、PETフィルム2枚で挟み込んだ領域を引張試験機のチャック部分とし、チャック間距離が30mmとなるように固定する。その後、測定温度23℃、相対湿度50%の環境下で引張速度300mm/分の条件で引張伸び率が500%となるまで引っ張り、この際の応力値をS(LED)とする。
【0064】
前記式(1)で表されるRの値が0.8~1.2の範囲を外れると使用するランプ種によって粘着シートの硬化度の違いが大きく生じている状態となり、結果として、製品の性能の安定性に問題が生じる。従って、前記式(1)で表されるRの値が0.8~1.2の範囲であることによって、粘着シートに照射するランプが高圧水銀ランプであってもLEDであっても後硬化後の粘着シートの性能に大きな変動が無いので、安定な製品を提供することができる。
【0065】
前記式(1)で表されるRの値は、0.82以上であることが好ましく、0.85以上であることがより好ましく、0.87以上であることがより好ましく、また、1.1以下であることが好ましく、1.05以下であることがより好ましく、1.0以下であることがさらに好ましい。S(HPML)及びS(LED)はいずれも、好ましくは0.05N/mm以上、より好ましくは0.1N/mm以上である。この場合、粘着シートは硬化不十分になりにくい。また、S(HPML)及びS(LED)はいずれも、好ましくは0.4N/mm以下、より好ましくは0.3N/mm以下である。この場合、粘着シートの後硬化による硬化が過剰になりにくいので十分な応力緩和性を有することができる。
【0066】
本発明の粘着シートは、被着体の段差間の間隔が狭い場合や、段差を構成する凹凸形状の高さもしくは深さが大きい場合であっても、このような被着体に対して優れた段差追従性を発揮する。また、本発明の粘着シートを段差部に貼合して紫外線等の活性エネルギー線で後硬化させ、その後に紫外線曝露されたとしても、変質が起こりにくく、段差部に気泡等の発生も抑制される
【0067】
従って、本発明の粘着シートは、凸部及び凹部から選択される少なくとも1種を有する被着体貼合用の粘着シートであることが好ましい。中でも、本発明の粘着シートは、2つの被着体へ貼合されるための粘着シートであることが好ましく、具体的には、凸部を有する第1の被着体と、凸部及び凹部から選択される少なくとも1種を有する第2の被着体への貼合用であることが好ましい。
【0068】
本発明の粘着シートの後硬化前のゲル分率(初期のゲル分率)は、例えば、5.0%以下であり、4.5%以下であることが好ましく、4.0%以下であることがより好ましく、3.5%以下であることがさらに好ましく、2.5%以下であることが特に好ましい。粘着シートのゲル分率の下限値は特に限定されるものではなく、例えば0%であってもよい。光架橋前の粘着シートのゲル分率を上記範囲内とすることにより、段差追従性に優れた粘着シートとすることができる。
【0069】
粘着シートのゲル分率は、以下の方法で測定した値である。まず、粘着シート(粘着剤層のみ)約0.1gをサンプル瓶に採取し、酢酸エチル30mlを加えて24時間振とうする。その後、このサンプル瓶の内容物を150メッシュのステンレス製金網でろ別し、金網上の残留物を100℃で1時間乾燥して乾燥重量W(g)を測定する。得られた乾燥重量から下記式
ゲル分率(%)=(乾燥質量W/粘着シートの採取質量)×100
から算出される値をゲル分率(%)とする
【0070】
本発明の粘着シートを、照度160mW/cmの高圧水銀ランプを用いて積算光量が3000mJ/cmとなるように光照射して後硬化した場合、そのときのゲル分率は、例えば、5%以上になることが好ましく、10%以上になることがより好ましく、20%以上になることがさらに好ましい。
【0071】
また、本発明の粘着シートを照度160mW/cm及び波長365nmのLEDランプを用いて積算光量が3000mJ/cmとなるように光照射して後硬化した場合の後のゲル分率は、5%以上になることが好ましく、10%以上になることがより好ましく、20%以上になることがさらに好ましい。
【0072】
本発明の粘着シートの厚みは特に限定されず、使用目的に応じて適宜の範囲とすることができ、例えば、5~500μmであることが好ましく、30~300μmであることがより好ましく、50~200μmであることがさらに好ましい。粘着シートの厚みを上記範囲内とすることにより、段差追従性と耐久性を十分に高めることができる。
【0073】
2.粘着シートの製造方法
本発明の粘着シートの製造方法は特に限定されず、特定の成分を含む限りは、例えば、公知の製造方法を広く採用することができる。例えば、粘着剤組成物を塗工する方法を用いて本発明の粘着シートを製造することができる。
【0074】
この場合、粘着剤組成物に含まれる成分は、前述の粘着シートに含まれる成分と同様であり、その含有割合も粘着シートと同様である。従って、粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系共重合体(A)と、架橋剤(B)と、水素引き抜き型光開始剤(C)と、自己開裂型光ラジカル開始剤(D)とを少なくとも含み、前記架橋剤(B)は、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して5質量部未満含まれており、前記水素引き抜き型光開始剤(C)は、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.3質量部以下含まれており、前記自己開裂型光ラジカル開始剤(D)は、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部あたりに対して0.2質量部以上含まれている。粘着剤組成物は、例えば、公知の方法で調製することができる。
【0075】
粘着剤組成物は、例えば、基材上に塗工して塗膜を形成することで粘着剤層を形成することができる。このように形成される粘着剤層を、そのまま粘着シートとして得てもよい。粘着剤組成物の塗工は、公知の塗工装置を用いて実施できる。塗工装置としては、例えば、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター等が挙げられる。
【0076】
粘着剤組成物の塗工後の厚みも特に制限されず、目的とする粘着剤層の厚みに応じて適宜設定することができる。粘着剤組成物が後記する溶剤を含む場合は、適宜の方法で溶剤を除去することができる。
【0077】
粘着剤組成物の塗工性を向上すべく、粘着剤組成物は溶剤を含むこともできる。溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素類;ジクロロメタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロプロパン等のハロゲン化炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酪酸エチル等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコルモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート等のポリオール及びその誘導体が挙げられる。
【0078】
粘着剤組成物が溶剤を含む場合、その含有割合は特に限定されず、例えば、公知の粘着剤組成物と同様の範囲とすることができる。
【0079】
粘着剤組成物を塗工するにあたって、使用する基材は、特に限定されない。例えば、粘着剤組成物は、樹脂製の基材、ガラス製の基材等の各種基材に塗工することができる。基材が前記した剥離シートである場合、この剥離性積層シート上に粘着剤組成物を塗工することもでき、また、粘着剤組成物は接着対象とする部材上に直接塗工することもできる。
【0080】
基材が前記した剥離シートである場合は、前述の片面に剥離シートを有する粘着シートを得ることができる。また、片面に剥離シートを有する粘着シートの粘着面を、剥離性が同じ又は異なる剥離シートで保護することで、両面に剥離シートを有する粘着シートを得ることができる。
【0081】
上記のように得られる粘着シートは、(メタ)アクリル系共重合体(A)、架橋剤(B)、水素引き抜き型光開始剤(C)及び自己開裂型光ラジカル開始剤(D)を少なくとも含むので、いわゆる半硬化状態であり、後硬化性を有する。
【0082】
3.積層体
本発明の積層体は、前記粘着シートを備える。例えば、積層体は、第1の被着体と、粘着シートと、第2の被着体とがこの順に積層した構造を有する。積層体において、粘着シートは、例えば、粘着剤層のみである。粘着シートを被着体に貼り合わせる方法は特に限定されず、例えば、ロール貼合方法、真空貼合方法等の公知の方法を採用することができる。
【0083】
本発明の積層体において、粘着シートは後硬化性を有するので、例えば、活性エネルギー線を照射することで、粘着シート(粘着剤層)の硬化反応が進行し、これにより、第1の被着体及び第2の被着体が粘着シートに強固に接着する。活性エネルギー線を照射する方法は特に限定されず、例えば、公知の方法と同様の方法を広く採用できる。また、積層体への活性エネルギー線の照射は、第1の被着体及び第2の被着体のどちら側からも行うことができる。
【0084】
第1の被着体及び第2の被着体は、凸部及び凹部から選択される少なくとも1種を有していてもよい。また、第1の被着体及び第2の被着体は、それぞれ光学部材であることが好ましい。光学部材としては、タッチパネルや画像表示装置等の光学製品における各構成部材を挙げることができる。
【0085】
タッチパネルの構成部材としては、例えば透明樹脂フィルムにITO膜が設けられたITOフィルム、ガラス板の表面にITO膜が設けられたITOガラス、透明樹脂フィルムに導電性ポリマーをコーティングした透明導電性フィルム、ハードコートフィルム、耐指紋性フィルムなどが挙げられる。第1の被着体及び第2の被着体は透明樹脂フィルムにITO膜が設けられたITOフィルム、ガラス板の表面にITO膜が設けられたITOガラス、透明樹脂フィルムに導電性ポリマーをコーティングした透明導電性フィルムが好ましい。
【0086】
画像表示装置の構成部材としては、例えば液晶表示装置に用いられる反射防止フィルム、配向フィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルムなどが挙げられる。これらの部材に用いられる材料としては、ガラス、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンナフタレート、シクロオレフィンポリマー、トリアセチルセルロース、ポリイミド、セルロースアシレートなどが挙げられる。中でも、第1の被着体はガラスもしくはポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートを使用したタッチパネルであり、第2の被着体は偏光板や有機ELディスプレイ等の画像表示装置であることが好ましい。
【0087】
積層体に照射する活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、可視光線、X線、イオン線等が挙げられ、中でも、汎用性の点から、紫外線または電子線が好ましく、紫外線が特に好ましい。紫外線の光源としては、例えば、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、キセノンアーク、無電極紫外線ランプ等を使用できる。
【0088】
特に本発明の粘着シートが自己開裂型光ラジカル開始剤(D)を所定量含むことから、LEDランプ(例えば、365nm)を使用したとしても反応性が高く、積層体において後硬化が進行しやすい。
【0089】
従って、本発明の粘着シートを備える積層体に対しては、例えば、従来の高圧水銀やメタルハライドUVランプを使用できることに加えて、LEDランプも使用できるので、積層体の製造がしやすく、導入コストも抑えられる。すなわち、本発明の粘着シートを備える積層体は、後硬化に使用するランプの種類によらず、安定した性能を有することができる。
【0090】
その上、これらの開始剤の含有量が適切な範囲に調整されているので、後硬化後にさらに長時間紫外線が曝露されても、水素引き抜き型開始剤の過剰反応が抑制されて粘着シートが硬くなり過ぎないので、応力緩和性の低下、気泡の発生が顕著に抑制される。
【実施例0091】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
【0092】
(実施例1)
表1に示す配合に従って、粘着剤組成物を作製した。具体的に、(メタ)アクリル系共重合体(A)として、アイカ工業社製「OP-9200-3」(固形分濃度が40質量%である酢酸エチル溶液)を固形分換算で100質量部、架橋剤(B)として、プロポキシ化ペンタエリスリトールトリおよびテトラアクリレート(新中村化学社製:ATM-4PL)を3質量部、水素引き抜き型光開始剤(C)として、4-メチルベンゾフェノン(LAMBSON社製「SPEED CURE MBP」、以下、「4MBP」と表記)を0.2質量部、及び、自己開裂型光ラジカル開始剤(D)として、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド(IGM RESINS B.V製「Omnirad TPO H」)を0.5質量部混合して粘着剤組成物を作製した。
【0093】
この粘着剤組成物を、シリコーン系剥離剤で処理された剥離剤層を備えた厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(第1の剥離シート)(王子エフテックス社製:38RL-07(2))の表面に、乾燥後の塗工膜厚が150μmになるようにアプリケーターで均一に塗工した。その後、100℃の空気循環式恒温オーブンで10分間乾燥し、第1の剥離シートの表面に粘着剤層を形成した。次いで、この粘着剤層の表面に厚さ38μmの第2の剥離シート(王子エフテックス社製:38RL-07(L))を貼合して、粘着剤層が剥離力差のある1対の剥離シートに挟まれた第1の剥離シート/粘着剤層/第2の剥離シートの構成を備える剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0094】
(実施例2)
(メタ)アクリル系共重合体(A)、架橋剤(B)、水素引き抜き型光開始剤(C)、及び、自己開裂型光ラジカル開始剤(D)の使用量を表1のように変更したこと以外は実施例1と同様の方法で剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0095】
(実施例3)
架橋剤(B)を大阪有機化学工業社製「ビスコート#230」に変更すると共に(メタ)アクリル系共重合体(A)、架橋剤(B)、水素引き抜き型光開始剤(C)、及び、自己開裂型光ラジカル開始剤(D)の使用量を表1のように変更したこと以外は実施例1と同様の方法で剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0096】
(実施例4)
(メタ)アクリル系共重合体(A)、架橋剤(B)、水素引き抜き型光開始剤(C)、及び、自己開裂型光ラジカル開始剤(D)の使用量を表1のように変更したこと以外は実施例1と同様の方法で剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0097】
(実施例5)
単官能モノマーとして大阪有機化学工業社製「MEDOL-10」を5質量部併用すると共に(メタ)アクリル系共重合体(A)、架橋剤(B)、水素引き抜き型光開始剤(C)、及び、自己開裂型光ラジカル開始剤(D)の使用量を表1のように変更したこと以外は実施例1と同様の方法で剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0098】
(実施例6)
自己開裂型光ラジカル開始剤(D)をIGM RESINS B.V製「Omnirad184」)に変更し、かつ、増感剤として川崎化成工業社製「UVS-2171」を0.1質量部併用すると共に(メタ)アクリル系共重合体(A)、架橋剤(B)、水素引き抜き型光開始剤(C)、及び、自己開裂型光ラジカル開始剤(D)の使用量を表1のように変更したこと以外は実施例1と同様の方法で剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0099】
(実施例7)
(メタ)アクリル系共重合体(A)、架橋剤(B)、水素引き抜き型光開始剤(C)、及び、自己開裂型光ラジカル開始剤(D)の使用量を表1のように変更したこと以外は実施例1と同様の方法で剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0100】
(実施例8)
(メタ)アクリル系共重合体(A)、架橋剤(B)、水素引き抜き型光開始剤(C)、及び、自己開裂型光ラジカル開始剤(D)の使用量を表1のように変更したこと以外は実施例1と同様の方法で剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0101】
(比較例1)
(メタ)アクリル系共重合体(A)、架橋剤(B)、水素引き抜き型光開始剤(C)、及び、自己開裂型光ラジカル開始剤(D)の使用量を表1のように変更したこと以外は実施例1と同様の方法で剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0102】
(比較例2)
(メタ)アクリル系共重合体(A)、架橋剤(B)、水素引き抜き型光開始剤(C)、及び、自己開裂型光ラジカル開始剤(D)の使用量を表1のように変更したこと以外は実施例1と同様の方法で剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0103】
(評価)
<S(HPML);500%引張応力>
S(HPML)は以下のようにして測定した。まず、実施例及び比較例で得た剥離シート付き両面粘着シートを縦50mm、横(幅方向)Ammとなるように切り出した。この際、横(幅方向)のAの値は、粘着シートの厚み(mm)×Amm=6mmとなるように決定した。次いで、照度160mW/cmの高圧水銀ランプを用いて積算光量が3000mJ/cmとなるように光照射することで後硬化した。その後、第1の剥離シートを剥離し、粘着シートのみを幅方向に丸めながら第2の剥離シート上から剥離し、円の直径2.8mm、高さ50mmの円柱状サンプルとした。円柱状サンプルの上端及び下端のそれぞれ10mmまでの領域を、厚み188μm、縦25mm、横50mmのPETフィルム2枚(合計4枚)で挟みこんだ。この後、PETフィルム2枚で挟み込んだ領域を引張試験機のチャック部分とし、チャック間距離が30mmとなるように固定した。その後、測定温度23℃、相対湿度50%の環境下で引張速度300mm/分の条件で引張伸び率が500%となるまで引っ張った。この際の応力値をS(HPML)とした。
【0104】
<S(LED);500%引張応力>
実施例及び比較例で得た剥離シート付き両面粘着シートを前記S(HPML)の測定とは別に新たに縦50mm、横(幅方向)Ammとなるように切り出した。この際、横(幅方向)のAの値は、粘着シートの厚み(mm)×Amm=6mmとなるように決定した。次いで、照度160mW/cm及び波長365nmのLEDランプを用いて積算光量が3000mJ/cmとなるように光照射することで後硬化した。その後、第1の剥離シートを剥離し、粘着シートのみを幅方向に丸めながら第2の剥離シートから剥離し、円の直径2.8mm、高さ50mmの円柱状サンプルとした。円柱状サンプルの上端及び下端のそれぞれ10mmまでの領域を、厚み188μm、縦25mm、横50mmのPETフィルム2枚(合計4枚)で挟みこんだ。この後、PETフィルム2枚で挟み込んだ領域を引張試験機のチャック部分とし、チャック間距離が30mmとなるように固定した。その後、測定温度23℃、相対湿度50%の環境下で引張速度300mm/分の条件で引張伸び率が500%となるまで引っ張った。この際の応力値をS(LED)とした。
【0105】
<ゲル分率(初期)>
実施例及び比較例で得られた剥離シート付き両面粘着シートから、粘着シートを剥がし、粘着シート(粘着剤層のみ)約0.1gをサンプル瓶に採取し、酢酸エチル30mlを加えて24時間振とうした。その後、このサンプル瓶の内容物を150メッシュのステンレス製金網でろ別し、金網上の残留物を100℃で1時間乾燥して乾燥重量W(g)を測定した。得られた乾燥重量から下記式
ゲル分率(%)=(乾燥質量W/粘着シートの採取質量)×100
から算出される値をゲル分率(初期)とした。
【0106】
<ゲル分率(後硬化後)>
前述のS(HPML)の測定において、後硬化した後の粘着シート約0.1gをサンプル瓶に採取したこと以外は、ゲル分率(初期)と同様の方法でゲル分率(後硬化後)を計測した。
【0107】
<ゲル分率(紫外線曝露後)>
Q-Lab社製QUV促進耐候性試験機を使用して、粘着シートの第2の剥離シート側から60℃で0.77W・mのUVA光を16時間照射した後の粘着シート約0.1gをサンプル瓶に採取したこと以外は、ゲル分率(初期)と同様の方法でゲル分率(紫外線曝露後)を計測した。
【0108】
<段差追従性評価(後硬化後)>
ガラス板(縦90mm×横50mm×厚み0.5mm)の表面に、紫外線硬化型インクを塗布厚が5μmになるように額縁状(縦90mm×横50mm、幅5mm)にスクリーン印刷した。次いで、紫外線を照射して印刷した上記紫外線硬化型インクを硬化させた。この工程を所定の回数繰り返し、50μmの厚みの段差部を有する印刷段差ガラス(第1の被着体)を得た。次いで、第2の被着体を以下の手順で作製した。まず、偏光板と糊の総厚みが80μmの粘着層付偏光板(サムスンSDI社製偏光板:「2144」)を縦90mm×横50mmに裁断した。次いで、上端から15mm、左端から10mmの位置に直径4mmの円形の穴をあけた後、上記とは別のガラス板(縦90mm×横50mm×厚み0.5mm)に貼合することにより穴あき偏光板付ガラス板(第2の被着体)を得た。
【0109】
次に、実施例及び比較例で得られた剥離シート付き両面粘着シートを、縦90mm×横50mmの形状に裁断し、第1の剥離シートを剥離し、ラミネーター(株式会社ユーボン製、IKO-650EMT)を用いて、粘着シート(粘着剤層)が第1の被着体の全面を覆うように貼合した。その後、第2の剥離シートを剥離し、表出した粘着シート(粘着剤層)に、真空貼合機(常陽工学社製:真空重ね合せ装置(JE2020B-MVH))を用いて穴あき偏光板付ガラス板(縦90mm×横50mm×厚み0.5mm)の偏光板側を貼合した。この際の貼合条件は、40℃、弱加圧力0.6kN、強加圧力1.2kN、真空圧100Pa、加圧保持時間10秒とした。次いで、脱泡処理(オートクレーブ処理:60℃、0.5MPa、30分間)を実施した。その後、印刷段差ガラス側から照度160mW/cmの高圧水銀灯を用いて、積算光量が3000mJ/cmとなるように紫外線を照射し、積層体を得た。積層体の印刷段差部および偏光板の穴部分(併せて段差部と呼ぶ)をマイクロスコープ(倍率:25倍)で観察し、以下の基準で評価した。
〇:段差部に気泡が見られず、段差が完全に埋まっている状態であった。
×:段差部に気泡が見られ、段差が埋まっていない状態であった。
【0110】
<応力緩和性評価(後硬化後)>
段差追従性評価(後硬化後)で作製した積層体を、熱衝撃試験機に仕掛け、80℃で30分と、-40℃で30分のサイクル×100回となるよう処理を行った。積層体の主に第2の被着体の段差部をマイクロスコープ(倍率:25倍)で観察し、以下の基準で評価した。
〇:段差部に気泡が見られず、段差が完全に埋まっている状態であった。
×:段差部に気泡が見られ、段差が埋まっていない状態であった
【0111】
<応力緩和性評価(紫外線曝露後)>
段差追従性評価(後硬化後)で作製した積層体を、QUV試験機(Q-LAB社製)に仕掛け、印刷段差ガラス側から0.77W/m、60℃で16時間紫外線(UV-A)を照射した後、積層体を熱衝撃試験機に仕掛け、80℃で30分と、-40℃で30分のサイクル×100回となるよう処理を行った。このように紫外線曝露後熱衝撃試験を実施した積層体の主に第2の被着体の段差部をマイクロスコープ(倍率:25倍)で観察し、以下の基準で評価した。
〇:段差部に気泡が見られず、段差が完全に埋まっている状態であった。
×:段差部に気泡が見られ、段差が埋まっていない状態であった。
【0112】
<品質ばらつき>
〇:Rの値が0.8~1.2の範囲内であり、ランプの種類によらず、安定な品質を有する製品を提供できる粘着シートであった。
×:Rの値が0.8~1.2の範囲外であり、ランプの種類によって品質ばらつきを生じさせる粘着シートであった。
【0113】
【表1】
【0114】
表1には、各実施例及び比較例の粘着シートの合成条件(各成分種及びその配合条件)並びに評価結果を示している。なお、表中、各成分の配合量の単位は「質量部」、ゲル分率の単位は%である。
【0115】
実施例で得られた粘着シートは、各成分が所定の量で配合されており、かつ、R=S(LED)/S(HTML)の値が0.8~1.2の範囲であり、ランプの種類によらず硬化性が安定しており、段差追従性及び応力緩和性に優れていた。特に、紫外線曝露後においても、応力緩和性が優れるものであった。
【0116】
これに対し、比較例1は架橋剤(B)が多すぎるので、Rの値が所定の範囲に入らず、高圧水銀とLEDとで硬化した製品の品質に大きなばらつきをもたらすものとなり、また、応力緩和性も悪いものであった。また、比較例2は水素引き抜き型光開始剤(C)が多すぎるので、Rの値が所定の範囲に入るものの、紫外線曝露後にゲル分率が高くなりすぎたため、紫外線曝露後に応力緩和性の低下が見られた。比較例3は水素引き抜き型光開始剤(C)を含まないので、硬化が十分でなく、凝集力不足による気泡が発生した。比較例4は引き抜き型光開始剤(C)が多いので紫外線曝露後にゲル分率が高くなりすぎ、紫外線曝露後に応力緩和性の低下が見られた。比較例5は自己開裂型光ラジカル開始剤(D)が少ないので十分に硬化せずに、粘着力の低下等を引き起こし、また、Rの値も小さくなったことから、高圧水銀とLEDとで硬化した製品の品質に大きなばらつきをもたらすものであった。