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2023-45346ディッピング装置、ダイボンディング装置および半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045346
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】ディッピング装置、ダイボンディング装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20230327BHJP
【FI】
H01L21/60 311T
H01L21/60 311Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153695
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】515085901
【氏名又は名称】ファスフォードテクノロジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】李 健柱
(72)【発明者】
【氏名】酒井 一信
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴広
【テーマコード(参考)】
5F044
【Fターム(参考)】
5F044KK01
5F044LL01
5F044PP15
5F044PP16
5F044PP17
(57)【要約】
【課題】より均一なフラックス薄膜形成が可能な技術を提供することである。
【解決手段】ディッピング装置はスキージ装置とフラックスを成膜するプレートとを備える。前記プレートの表面はナノレベルの算術平均粗さの粗面を有する。前記スキージ装置と前記プレートとを相対的に移動させ、前記スキージ装置から前記プレートの前記粗面に前記フラックスを供給するよう構成される。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スキージ装置と、
フラックスを成膜するプレートと、
を備え、
前記プレートの表面はナノレベルの算術平均粗さの粗面を有し、
前記スキージ装置と前記プレートとを相対的に移動させ、前記スキージ装置から前記プレートの前記粗面に前記フラックスを供給するよう構成されるディッピング装置。
【請求項2】
請求項1のディッピング装置において、
前記粗面の算術平均粗さは100nm以上1000nm以下であるディッピング装置。
【請求項3】
請求項1のディッピング装置において、
前記粗面は前記フラックスの広がる方向に沿った成分の方向を有する連続した溝であるディッピング装置。
【請求項4】
請求項1のディッピング装置において、
前記粗面は前記スキージ装置と前記プレートとの相対的な移動方向に沿った成分の方向を有する連続した溝であるディッピング装置。
【請求項5】
請求項1のディッピング装置において、
前記プレートの表面から前記スキージ装置の底面までの高さが可変であるディッピング装置。
【請求項6】
スキージ装置とフラックスを成膜するプレートとを備え、前記プレートの表面はナノレベルの算術平均粗さの粗面を有し、前記スキージ装置と前記プレートとを相対的に移動させ、前記スキージ装置から前記プレートの前記粗面に前記フラックスを供給するよう構成されるディッピング装置と、
ディッピング装置を制御する制御装置と
を備えるダイボンディング装置。
【請求項7】
請求項6のダイボンディング装置において、
前記制御装置は、ダイのバンプを前記プレートの前記フラックスに浸漬するよう構成されるダイボンディング装置。
【請求項8】
請求項6のダイボンディング装置において、
前記制御装置は、前記スキージ装置を固定すると共に、前記プレートを移動することにより、前記プレートの前記フラックスを成膜するよう構成されるダイボンディング装置。
【請求項9】
請求項8のダイボンディング装置において、
さらに、前記成膜されたフラックスの膜厚を測定する膜厚測定計を備えるダイボンディング装置。
【請求項10】
請求項9のダイボンディング装置において、
前記膜厚測定計はレーザ変位計であるダイボンディング装置。
【請求項11】
請求項9または10のダイボンディング装置において、
前記制御装置は、前記膜厚測定計により測定したフラックスの膜厚に基づいて成膜するフラックスの膜厚を調整するよう構成されるダイボンディング装置。
【請求項12】
その表面にナノレベルの算術平均粗さの粗面を有するプレートにバンプを有するダイの前記バンプに転写するためのフラックスを成膜するフラックス成膜工程と、
前記ダイをピックアップして前記フラックスに前記バンプを浸漬するフラックス転写工程と、
を含む半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項12の半導体装置の製造方法において、
さらに、前記フラックス成膜工程の後、成膜されたフラックスの膜厚を測定する膜厚測定工程を含む半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はダイボンディング装置に関し、例えばフラックス転写を行うダイボンディング装置に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
ダイと呼ばれる半導体チップを、例えば、配線基板やリードフレームなど(以下、総称して基板という。)の表面に搭載するダイボンディング装置には、分割されたダイを半導体ウエハ(単に、ウエハという。)からピックアップし、ダイを裏返して表面を下(フェースダウン)にして基板に装着する装置(フリップチップボンダ)がある。フリップチップボンダにおいては、ダイの表面に設けられた突起状の接続電極であるバンプにフラックスを塗布するディッピング工程を有するものがある。ここで、フラックスは半田付け促進剤であり、異物や酸化膜を取り除く浄化作用、接合部の酸化を防止する酸化防止作用および溶けた半田が丸くなるのを抑える表面張力低下作用がある。
【0003】
ディッピング工程では、ボンディングヘッドが昇降し、ダイのバンプ面を塗布装置に設けられるフラックスが収納されている凹状の空洞に浸漬してフラックスをバンプに転写する。また、塗布装置は、転写によって失われる空洞のフラックスを補充するための機構を備える。この機構は、空洞を有するプレート上を、底部が開かれフラックスを収納した容器を移動させて行う。このような塗布装置は、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-177038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、バンプに転写するフラックスの膜厚はバンプの径の1/3程度が目安になっている。例えば、パンプ径がφ75~150μmのC4(Controlled Collapse Chip Connection)バンプの場合、フラックス膜厚は30~100μmであり、φ55~100μmのC2(Chip Connection)バンプ場合、フラックス膜厚は10~30μmである。したがって、狭バンプピッチ化に伴い、さらに、バンプ径が小さくなると、フラックスの膜厚を薄くする必要がある。薄膜化に伴いフラックスの成膜時に、フラックスがプレートに均一に濡れず、ムラが発生し均一な薄膜形成が困難になる。
【0006】
本開示の課題は、より均一なフラックス薄膜形成が可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
すなわち、ディッピング装置はスキージ装置とフラックスを成膜するプレートとを備える。前記プレートの表面はナノレベルの算術平均粗さの粗面を有する。前記スキージ装置と前記プレートとを相対的に移動させ、前記スキージ装置から前記プレートの前記粗面に前記フラックスを供給するよう構成される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、より均一なフラックス薄膜形成が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は実施形態におけるフリップチップボンダの主要部の概略を示す斜視図である。
図2図2図1において矢印A方向から見たときに、ピックアップフリップヘッドおよびトランスファヘッドの動作を説明する図である。
図3図3図1において矢印B方向から見たときに、中間ステージおよびボンドヘッドの動作を説明する図である。
図4図4図1のダイ供給部の主要部を示す概略断面図である。
図5図5図1に示す第二中間ステージのディッピング機構を第二中間ステージの移動方向に対して垂直な方向から見た側面図である。
図6図6図5に示すC-C線における断面図である。
図7図7図1に示すフリップチップボンダで実施されるフェースダウンボンディング方法を示すフローチャートである。
図8図8図5に示すディッピング機構の要部を示す上面図である。
図9図9(a)はプレートに粗面が施された場合の接触角を示す図であり、図9(b)はプレートに粗面が施されていない場合の接触角を示す図である。
図10図10はプレートの粗面の有無およびフラックスの粘度ごとのギャップ高が20μmにおいて形成されたフラックスの膜厚ばらつきを示す図である。
図11図11はプレートの粗面の有無およびフラックスの粘度ごとのギャップ高が40μmにおいて形成されたフラックスの膜厚ばらつきを示す図である。
図12図12はフラックスの粘度が10Pa・sの場合のフラックスの膜厚ばらつきを示す図である。
図13図13はフラックスの粘度が33Pa・sの場合のフラックスの膜厚ばらつきを示す図である。
図14図14はレーザ変位計を用いた膜厚測定について説明する図である。
図15図15図14に示す問題点が実施形態では解決されることを説明する図である。
図16図16は第一変形例におけるディッピング機構の要部を示す上面図である。
図17図17(a)は図16に示す破線A内の上面図であり、図17(b)は図16に示すB-B線における断面図である。
図18図18(a)は図16に示す破線A内に相当する箇所における上面図であり、図18(b)は図16に示すB-B線に相当する箇所における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。
【0011】
ダイボンディング装置としてのフリップチップボンダについて説明する。なお、実施形態におけるフリップチップボンダは、例えばチップ面積を超える広い領域に再配線層を形成するパッケージであるファンアウト型パネルレベルパッケージ(Fan Out Panel Level Package:FOPLP)等の製造に用いられる。
【0012】
(フリップチップボンダの構成)
図1は実施形態におけるフリップチップボンダの概略構成を示す斜視図である。図2図1において矢印A方向から見たときに、ピックアップフリップヘッドおよびトランスファヘッドの動作を説明する図である。図3図1において矢印B方向から見たときに、中間ステージおよびボンドヘッドの動作を説明する図である。図4図1に示すダイ供給部の主要部を示す概略断面図である。
【0013】
図1に示すように、フリップチップボンダ10は、大別して、ダイ供給部1と、ピックアップ部2と、中間ステージ部3と、ボンディング部4と、各部の動作を監視し制御する制御装置7と、を備える。フリップチップボンダ10は、ダイDの表面(バンプ面)を下にして基板に載置するフェースダウンボンディングを行う。
【0014】
(ダイ供給部)
ダイ供給部1は、ワークの一例である基板Pに実装するダイDを供給する。図4に示すように、ダイ供給部1は、分割されたウエハ11を保持するウエハ保持台12と、ウエハ11からダイDを突き上げる突上げユニット13と、を備える。ウエハ保持台12は、図1に示す駆動機構としてのウエハ保持台テーブル19によってXY方向に移動し、ピックアップするダイDを突上げユニット13の位置に移動させる。ウエハリング14が収納されたウエハカセット(不図示)はフリップチップボンダ10の外部から供給される。ウエハリング14は、ウエハ11が固定され、ウエハ保持台12に取り付け可能な治具である。
【0015】
図4に示すように、ウエハ保持台12は、ウエハリング14を保持するエキスパンドリング15と、ウエハリング14に保持され複数のダイDが粘着されたダイシングテープ16を水平に位置決めする支持リング17と、ダイDを上方に突き上げるための突上げユニット13と、を有する。所定のダイDをピックアップするために、突上げユニット13は、図示しない駆動機構によって上下方向に移動するよう構成されている。
【0016】
ダイシングテープ16上ではダイDの表面は上を向いており、フェースダウンボンディングを行うダイDの表面には、図4に示すように、例えばバンプDbが設けられている。なお、バンプDbは例えば凸形状でダイDの表面に離散して複数設けられる。
【0017】
(ピックアップ部)
ピックアップ部2は、ダイDをピックアップして反転するピックアップフリップヘッド21と、ウエハ認識カメラ24と、トランスファヘッド25と、トランスファヘッド25を昇降およびX軸方向に沿って移動させる駆動部27と、を備える。
【0018】
ピックアップフリップヘッド21は、図示しない駆動部により、昇降、回転及びX軸方向に沿って移動する。ピックアップフリップヘッド21はY軸方向に沿う回転軸を中心にXZ面内を回転してピックアップしたダイDを反転する。図2に示すように、ピックアップフリップヘッド21はダイDを先端に吸着保持するコレット22を有し、トランスファヘッド25はダイDを先端に吸着保持するコレット26を有する。ウエハ認識カメラ24はピックアップされるダイDの真上に設けられる。このような構成によって、ピックアップフリップヘッド21は、ウエハ認識カメラ24の撮像データに基づいてダイDをピックアップし、ピックアップフリップヘッド21を180度回転することによりダイDを反転させて裏面を上に向け、ダイDをトランスファヘッド25に渡す姿勢にする。
【0019】
トランスファヘッド25は、反転したダイDをピックアップフリップヘッド21から受けとり、駆動部27により、X軸方向に沿って移動して中間ステージ部3に載置するよう構成されている。
【0020】
(中間ステージ部)
中間ステージ部3は、ダイDが一時的に載置される第一中間ステージ31_1、第二中間ステージ31_2と、アンダビジョンカメラ34と、を備える。第一中間ステージ31_1および第二中間ステージ31_2は図示しない駆動部によりY軸方向に沿って移動可能である。また、第二中間ステージ31_2は後述するディッピング機構を備えている。
【0021】
図3に示すように、第一中間ステージ31_1および第二中間ステージ31_2は、Y軸方向において、第一位置P1、第二位置P2および第三位置P3を移動可能である。ここで、第一位置P1はトランスファヘッド25とのダイDの受け渡し位置である。第二位置P2は第二中間ステージ31_2における後述するフラックス成膜位置である。第三位置P3はボンドヘッド41とのダイDの受け渡し位置である。アンダビジョンカメラ34はボンドヘッド41によって保持されているダイDの下面を撮像する。ここで、ダイDの下面は、バンプDbが設けられたダイDの表面側である。
【0022】
(ボンディング部)
ボンディング部4はボンドヘッド41と、ボンドヘッドテーブル45と、ガントリテーブル(Yビーム)43と、ガントリテーブル43をX軸方向に沿って移動させる一対のXビーム(不図示)と、ボンドカメラ44と、を備える。図3に示すように、ボンドヘッド41はダイDを先端に吸着保持するコレット42を有する。ボンドヘッド41は、第一中間ステージ31_1または第二中間ステージ31_2からダイDをピックアップし、搬送されてくる基板P上にボンディングする。ダイDが基板Pにボンディングされる際、基板PはボンドステージBSに吸着固定されている。ボンドヘッドテーブル45はボンドヘッド41をZ軸方向に沿って移動させる。ガントリテーブル43はボンドステージBS上を跨るようにY軸方向に沿って伸びてその両端がそれぞれX軸方向に沿って移動自在に一対のXビームに支持されている。ガントリテーブル43はボンドヘッドテーブル45をY軸方向に沿って移動させる。ボンドカメラ44はボンドヘッドテーブル45に設けられている。ボンドカメラ44は基板Pの位置認識マーク(図示せず)を撮像し、ボンディング位置を認識する。
【0023】
このような構成によって、ボンドヘッド41は、第一中間ステージ31_1または第二中間ステージ31_2からダイDをピックアップし、アンダビジョンカメラ34およびボンドカメラ44でボンドヘッド41がダイDを保持している状態およびダイDをボンディングする位置を撮像する。この撮像データに基づいてボンディング位置決め補正位置を算出し、ボンドヘッド41を移動して基板PにダイDをボンディングする。
【0024】
図示しないが、フリップチップボンダ10は、基板PをX軸方向に沿って移動させる一組の平行に設けられた搬送レールと、フリップチップボンダ10の外部から搬入される基板Pを搬送レーンに供給する基板供給部と、ダイDが載置された基板Pをフリップチップボンダ10の外部に搬出する基板搬出部と、を備える。このような構成によって、基板供給部から基板Pを供給し、搬送レールに沿ってボンディング位置まで移動し、ボンディング後、基板搬出部まで移動して、基板搬出部に基板Pを渡す。基板PにダイDをボンディング中に、基板供給部は新たな基板Pを供給し、搬送レール上で待機する。
【0025】
制御装置7は、フリップチップボンダ10の各部の動作を監視し制御するプログラム(ソフトウェア)やデータを格納する記憶装置(メモリ)と、メモリに格納されたプログラムを実行する中央処理装置(CPU)と、を備える。
【0026】
(ディッピング機構)
第二中間ステージ31_2に設けられるディッピング機構の構成と動作について図5および図6を用いて説明する。図5は第二中間ステージのディッピング機構を第二中間ステージの移動方向に対して垂直な方向から見た側面図である。図6図5に示すC-C線における断面図である。
【0027】
ダイDのバンプDbにフラックスを塗布するディッピングは、ダイDのバンプDbをフラックスが収納されている凹状の空洞に浸漬して行う。これをフラックス転写という。また、塗布によって失われる空洞のフラックスを補充する。これをフラックス成膜という。これらのフラックス転写およびフラックス成膜を行う機構をディッピング機構またはディッピング装置という。
【0028】
図5に示すように、ディッピング機構8は、スキージ装置81と、凹部で形成されたフラックスFの収容部82dが組み込まれているプレート82pと、を備える。プレート82pはスキージ装置81の下をY軸方向に沿って移動することが可能である。プレート82pが移動することにより収容部82dにはスキージ装置81からフラックスFが供給されて均質に成膜される。収容部82dに供給されるフラックスFは、フラックス単体だけではなく、柔軟性があってフラックスと親和性のある物質、例えば、シリコーンを主原料とする非常にやわらかいゲル状素材にフラックスを混在させたものであってもよい。
【0029】
スキージ装置81は、フラックスFが均一に充填され、底部に設けられた開放口から収容部82dにフラックスFを均一に補充する。スキージ装置81の底部の開放口は、収容部82dのX軸方向の幅以上の長辺を有する。スキージ装置81のその下方にY軸方向に沿って延伸するガイドスライダ81sを備える。
【0030】
プレート82pに設けられた収容部82dは、凹状の形状を有する。トランスファヘッド25またはボンドヘッド41は、収容部82dに降下し、ダイDのバンプDbを浸漬させてフラックスを転写する。図5では、収容部82dは、一箇所しか設けられていないが、複数個設けてもよい。収容部82dの深さは、バンプDbの厚さ(tb)のおよそ1/2から2/3の深さを有する。例えば、tb=30μmならば、収容部82dの深さはおよそ15μmから20μmとなる。
【0031】
プレート82pは下方にプレート82kを備え、プレート82kは上面にY軸方向に沿って延伸するガイドレール82gを備える。ガイドレール82gはガイドスライダ81sの下を移動可能であり、プレート82pはスキージ装置81の下をY軸方向に沿って移動することが可能である。例えば、スキージ装置81をスキージロック83で固定し、プレート82pを移動することにより、収容部82dにフラックスを成膜することができる。
【0032】
トランスファヘッド25またはボンドヘッド41によりバンプDbが設けられたダイDが収容部82d内に浸漬されると、すべてのバンプDbにはんだ付け用フラックスFが均一に塗布される。その後、ボンドヘッド41によりバンプDbにフラックスが転写されたダイDが収容部82dからピックアップまたは引き上げられる。
【0033】
第二中間ステージ31_2によるフラックス成膜動作について以下説明する。まず、第二中間ステージ31_2はフラックス成膜位置に移動し、図示しない駆動部によりスキージロック83が下降してスキージ装置81を固定する。
【0034】
次に、第二中間ステージ31_2はY軸方向に沿って図の左から右に移動する。これにより、スキージ装置81に設けられたガイドスライダ81sの下をプレート82kに設けられたガイドレール82gがY軸方向に沿って移動し、スキージ装置81がプレート82pに対して相対的にY軸方向に沿ってプレート82pの右端から左端に移動する。その結果、スキージ装置81内のフラックスFはプレート82pの収容部82d内に供給される。次に、第二中間ステージ31_2はY軸方向に沿って図の右から左に移動させて、スキージ装置81がプレート82pに対して相対的にY軸方向に沿ってプレート82pの左端から右端に移動する。その結果、スキージ装置81内のフラックスFはプレート82pの収容部82d内に供給される。この第二中間ステージ31_2の往復動作により、プレート82pの収容部82d内にフラックスが成膜される。
【0035】
最後に、スキージロック83が上昇してスキージ装置81の固定が解除される。
【0036】
次に、フリップチップボンダ10を用いた半導体装置の製造方法について図1図2図4図5および図7を用いて説明する。図7図1に示すフリップチップボンダで実施されるフェースダウンボンディング方法を示すフローチャートである。
【0037】
フリップチップボンダ10においては、複数のフェースダウンボンディング方法の実施が可能である。第一のフェースダウンボンディング方法は、フラックス転写ステージとしての第二中間ステージ31_2が使用され、トランスファヘッド25によりフラックスにダイを浸漬してフラックス転写が行われる。第二のフェースダウンボンディング方法は、第一中間ステージ31_1とフラックス転写ステージとしての第二中間ステージ31_2とが使用され、ボンドヘッド41によりフラックスにダイを浸漬してフラックス転写が行われる。第三のフェースダウンボンディング方法は、第二フェースダウンボンディング方法において、フラックス転写の前後においてダイが撮像され、転写ずれが確認される。下記の半導体装置の製造方法においては、第一のフェースダウンボンディング方法を用いた例を説明する。
【0038】
実施形態における半導体装置の製造方法のダイボンディング工程では、まず、図4に示すウエハ11を分割したダイDが貼付されたダイシングテープ16を保持したウエハリング14をフリップチップボンダ10に搬入する。制御装置7は、ウエハ11を保持しているウエハリング14をダイ供給部1のウエハ保持台12に載置する。また、基板Pを準備し、フリップチップボンダ10に搬入する。
【0039】
(ステップS1:ウエハダイ認識)
制御装置7は、ウエハ保持台テーブル19によりウエハ保持台12をダイDのピックアップが行われる基準位置まで移動する。次いで、制御装置7は、ウエハ認識カメラ24によってピックアップ対象のダイDを撮像し、撮像して取得した画像から、ウエハ11の配置位置がその基準位置と正確に一致するように微調整(アライメント)を行う。すなわち、制御装置7はウエハ保持台テーブル19によりピックアップするダイDが突上げユニット13の真上に位置するように図4に示すウエハ保持台12を移動し、剥離対象ダイを突上げユニット13とコレット22に位置決めする。
【0040】
(ステップS2:ウエハダイピックアップ)
図2に示すように、制御装置7はダイシングテープ16の裏面に突上げユニット13の上面が接触するように突上げユニット13を上方に移動する。このとき、制御装置7は、ダイシングテープ16を突上げユニット13の上面に吸着する。制御装置7は、コレット22を真空引きしながら下降させ、剥離対象のダイDの上に着地させ、ダイDを吸着する。制御装置7はコレット22を上昇させ、ダイDをダイシングテープ16から剥離する。これにより、ダイDはピックアップフリップヘッド21によりピックアップされる。
【0041】
(ステップS3:ピックアップフリップヘッド移動)
制御装置7はピックアップフリップヘッド21をピックアップ位置から反転位置に移動する。
【0042】
(ステップS4:ピックアップフリップヘッド反転)
図2に示すように、制御装置7はピックアップフリップヘッド21を180度回転させ、ダイDのバンプDbが形成されている面(表面)を反転させて下方に向け、ダイDをトランスファヘッド25に渡す姿勢にする。
【0043】
(ステップS5:トランスファヘッド受渡し)
図2に示すように、制御装置7はコレット26を真空引きしながら下降させ、ピックアップフリップヘッド21が保持しているダイDの上に着地させ、ダイDを吸着する。ピックアップフリップヘッド21のコレット22による吸着を解除すると共に、トランスファヘッド25のコレット26を上昇させてダイDをピックアップする。これにより、ダイDのトランスファヘッド25への受渡しが行われる。
【0044】
(ステップS6:ピックアップフリップヘッド反転)
図2に示すように、制御装置7は、ピックアップフリップヘッド21を回転し、コレット22の吸着面を下方に向ける。
【0045】
(ステップS7b:トランスファヘッド移動)
図1に示すように、ステップS6の前または並行して、制御装置7は駆動部27によりトランスファヘッド25をX軸方向に沿ってピックアップフリップヘッド21とのダイDの受渡し位置である第零位置P0から第二中間ステージ31_2の上方に移動する。ここで、第二中間ステージ31_2は、Y軸方向において、第一位置P1に位置する。
【0046】
(ステップS8b:第二中間ステージダイ載置およびフラックス転写)
図1に示すように、制御装置7はトランスファヘッド25を下降させてトランスファヘッド25に保持しているダイDを第二中間ステージ31_2に設けられている収容部82dに載置する。これにより、ダイDのバンプDbが収容部82dに成膜されているフラックスFに浸漬されて、フラックスが転写される。
【0047】
(ステップS9b:トランスファヘッド移動)
図1に示すように、制御装置7はトランスファヘッド25を上昇させてトランスファヘッド25をX軸方向に沿って第零位置P0に移動する。この状態で、Xビームおよびガントリテーブル43によりボンドヘッド41を第三位置P3に移動する。第二中間ステージ31_2は第三位置P3で待機している。
【0048】
(ステップS10b:第二中間ステージ位置移動)
図1に示すように、ステップS9bの後または並行して、制御装置7は第二中間ステージ31_2をY軸方向に沿って第一位置P1から第三位置P3に移動する。このとき、ダイDは収容部82dのフラックスに浸漬されている。
【0049】
(ステップS11b:第二中間ステージダイ位置認識)
図1および図3に示すように、ステップS10bの後、制御装置7は、ボンドヘッド41を第三位置P3に移動する前に、第二中間ステージ31_2に載置されているダイDをボンドカメラ44により撮像してダイDの位置を認識する。制御装置7は、認識結果に基づいてボンドヘッド41によりダイDの位置を補正する場合もある。
【0050】
(ステップS12b:ボンドヘッド受渡し)
図1に示すように、制御装置7はボンドヘッドテーブル45によりボンドヘッド41を下降させてボンドヘッド41のコレットによりバンプDbにフラックスFが転写されたダイDを吸着する。そして、制御装置7はボンドヘッドテーブル45によりボンドヘッド41を上昇させてダイDを第二中間ステージ31_2からピックアップする。これにより、ダイDの受渡しが行われる。この状態で、制御装置7はトランスファヘッド25によりピックアップフリップヘッド21からダイDをピックアップする。
【0051】
(ステップS24b:第二中間ステージ位置移動)
図1に示すように、ステップS14bの後または並行して、制御装置7は第二中間ステージ31_2をY軸方向に沿って第三位置P3から第二位置P2に移動する。ここで、第二中間ステージ31_2は第二位置P2に位置するが、第三位置P3と第一位置P1との間または移動しないで、第三位置P3に位置してもよい。
【0052】
(ステップS25b:フラックス成膜)
図1および図5に示すように、制御装置7はスキージロック83を下降してスキージ装置81を固定すると共に、第二中間ステージ31_2(プレート82p)をY軸方向に沿って第二位置P2からさらに第一位置P1とは反対側に移動させる。これにより、プレート82pの収容部82dにスキージ装置81からフラックスFが供給され、フラックスが成膜される。そして、制御装置7は、レーザ変位計等の膜厚測定装置91により成膜したフラックスの膜厚を測定する。この状態で、制御装置7は、Xビームおよびガントリテーブル43によりボンドヘッド41を第三位置P3から基板Pの上方に移動する。また、駆動部27によりトランスファヘッド25を第一位置P1に移動する。
【0053】
(ステップS13b:第二中間ステージ位置移動)
図1に示すように、制御装置7は第二中間ステージ31_2をY軸方向に沿って第二位置P2から第一位置P1に移動させる。
【0054】
(ステップS14b:ボンドヘッド移動)
図1に示すように、ステップS24bと並行して、制御装置7はボンドヘッドテーブル45によりボンドヘッド41を上降させて、Xビームおよびガントリテーブル43によりボンドヘッド41のコレット42が保持しているダイDを第二中間ステージ31_2上からアンダビジョンカメラ34上に移動する。
【0055】
(ステップS15:ピックアップダイ位置認識)
図1に示すように、制御装置7は、ボンドヘッド41のコレット42が保持しているダイDをアンダビジョンカメラ34により撮像してダイDの位置を認識する。
【0056】
(ステップS16:ボンドヘッド移動)
図1に示すように、制御装置7は、Xビームおよびガントリテーブル43によりボンドヘッド41のコレット42が保持しているダイDをアンダビジョンカメラ34の上方から基板Pの上方に移動する。この状態では、第二中間ステージ31_2はフラックス成膜動作をしている(ステップS25b)。また、トランスファヘッド25は、ピックアップフリップヘッド21からの次のダイDをピックアップして第一位置P1へ移動する。第一中間ステージ31_1は第三位置P3で待機している。
【0057】
(ステップS17:ボンド)
図1に示すように、制御装置7は、ボンドヘッドテーブル45によりボンドヘッド41を下降させて、ボンドヘッド41のコレット42が保持しているダイDを基板Pの上にボンドする。この状態では、第二中間ステージ31_2はフラックス成膜済みである。また、トランスファヘッド25は、次のダイDを保持して第一位置P1において待機している。第一中間ステージ31_1は第三位置P3で待機している。
【0058】
(ステップS18:ボンドヘッド移動)
制御装置7は、ボンドヘッドテーブル45によりボンドヘッド41を上降させた後、Xビームおよびガントリテーブル43によりボンドヘッド41(ボンドカメラ44)を基板Pの上方の外観検査位置に移動する。
【0059】
(ステップS19:ボンド外観検査)
制御装置7はボンドカメラ44により基板Pの上にボンディングされたダイDを撮像して外観を検査する。
【0060】
(ステップS20b:ボンドヘッド移動)
図1に示すように、制御装置7はボンドヘッドテーブル45によりボンドヘッド41を上降させて、Xビームおよびガントリテーブル43によりボンドヘッド41を基板Pの上方の外観検査位置から第三位置P3に位置する第二中間ステージ31_2の上に移動する。この状態では、第二中間ステージ31_2はフラックス成膜済みである。また、トランスファヘッド25は、次のダイDをピックアップするため第一位置P1から第零位置P0に移動している。
【0061】
また、基板PへのすべてのダイDのボンディングが終了した場合、ステップS19の後に、制御装置7は基板搬出部で搬送レールからダイDがボンディングされた基板Pを取り出す。フリップチップボンダ10から基板Pを搬出する。
【0062】
その後、基板Pの上に配置された複数のダイ(半導体チップ)を封止樹脂で一括封止することにより、複数の半導体チップと複数の半導体チップを覆う封止樹脂とを備える封止体を形成する。その後、封止体から基板Pを剥離し、次いで封止体の基板Pが貼り付けられていた面上に再配線層を形成してFOPLPを製造する。
【0063】
本実施形態における第一のフェースダウンボンディング方法では、図1に示すように、トランスファヘッド25によってダイDが第二中間ステージ31_2の収容部82d内のフラックスに浸漬する。ここで、第二中間ステージ31_2は、Y軸方向において、トランスファヘッド25とのダイDの受け渡し位置である第一位置P1およびボンドヘッド41とのダイDの受け渡し位置である第三位置P3を移動可能である。また、第二位置P2において、第二中間ステージ31_2は、フラックス成膜を行う。なお、フラックス成膜位置は第二位置P2以外の位置であってもよく、例えば、第一位置P1または第三位置P3であってもよい。
【0064】
本実施形態における第一のフェースダウンボンディング方法では、フラックス転写機能を備え第二中間ステージ31_2にトランスファヘッド25により直接ダイDを載置する。これにより、フラックス転写をトランスファヘッド25からボンドヘッド41にダイDを引き渡す動作の一連のピックアップ動作中に行うことができる。
【0065】
続いて、本実施形態におけるディッピング機構8のプレート82pについて図8を用いて説明する。図8図5に示すディッピング機構の要部を示す上面図である。
【0066】
転写プレートとしてのプレート82pに設けられた収容部82dの底の上面(表面)は、少なくとも、バンプDbが浸漬する箇所(成膜面)に表面粗さ(算術平均粗さ(Ra))がナノレベルの安定的な粗面RSが施されている。ナノレベルとは、1nm以上1000nm未満である。Raは100~1000nmが好ましい。例えば、NAP処理(登録商標)を施して、収容部82dの表面にRaが300~500nmの凹凸を形成するようにしてもよい。ここで、プレート82pの部材は、例えば、SUS(ステンレス)である。
【0067】
続いて、プレート82pの収容部82dの表面(プレート82pの成膜面)に施された粗面のフラックスに対する濡れ性について図9を用いて説明する。図9(a)はプレートに粗面が施された場合の接触角を示す図であり、図9(b)はプレートに粗面が施されていない場合の接触角を示す図である。
【0068】
図9(a)に示すように、プレート82pの成膜面に粗面RSを形成する場合、粗面RSによる表面張力の減少(毛細管現象)により接触角(θB)が90度より小さくなり表面のフラックスに対する濡れ性が改善する。なお、図9(b)に示すように、プレート82pの成膜面に粗面を形成しない場合は、接触角(θA)が90度より大きくなる。なお、ナノレベルの粗面はマイクロレベル以上の粗面に比べて粗さが小さいため、フラックスの薄膜に対する凹凸の影響を小さくできる。マイクロレベル以上とは、1μm以上をいう。
【0069】
プレート82pの成膜面に形成されたフラックスの膜厚ばらつきについて図10および図11を用いて説明する。図10はプレートの粗面の有無およびフラックスの粘度ごとのギャップ高が20μmにおいて形成されたフラックスの膜厚ばらつきを示す図である。図11はプレートの粗面の有無およびフラックスの粘度ごとのギャップ高が40μmにおいて形成されたフラックスの膜厚ばらつきを示す図である。ここで、ギャップ高はスキージの高さともいい、収容部82dの表面からスキージ装置81の底面までの高さである。
【0070】
図10の(a1)および図11の(a1)は、プレート82sの成膜面に粗面がなく、フラックスの粘度が10Pa・sである場合である。図10の(a2)および図11の(a2)は、プレート82sの成膜面に粗面があり、フラックスの粘度が10Pa・sである場合である。図10の(a1)および図10の(a2)における狙い膜厚範囲(TFTR)は13μm±2μmである。図11の(a1)および図10の(a2)における狙い膜厚範囲(TFTR)は25μm±5μmである。
【0071】
図10の(b1)および図11の(b1)は、プレート82sの成膜面に粗面がなく、フラックスの粘度が25Pa・sである場合である。図10の(b2)および図11の(b2)は、プレート82sの成膜面に粗面があり、フラックスの粘度が25Pa・sである場合である。図10の(b1)および図10の(b2)における狙い膜厚範囲(TFTR)は12μm±2μmである。図11の(b1)および図10の(b2)における狙い膜厚範囲(TFTR)は26μm±5μmである。
【0072】
図10の(c1)および図の11(c1)は、プレート82sの成膜面に粗面がなく、フラックスの粘度が33Pa・sである場合である。図10の(c2)および図11の(c2)は、プレート82sの成膜面に粗面があり、フラックスの粘度が33Pa・sである場合である。図10の(c1)および図10の(c2)における狙い膜厚範囲(TFTR)は15μm±2μmである。図11の(c1)および図10の(c2)における狙い膜厚範囲(TFTR)は27μm±5μmである。
【0073】
図10および図11に示すように、何れのフラックスの粘度およびギャップ高においても、プレート82pの成膜面に粗面がない場合は、狙い膜厚範囲(設定値)より実測値が小さくなる。また、設定値に対してばらつきも大きい。プレート82pの成膜面に粗面がある場合は、実測値が狙い膜厚範囲内にほぼ収まっている。また、膜厚ばらつきは、粗面がない場合よりも減少している。
【0074】
成膜面の外周内側面によりフラックスが表面張力で引っ張られたり、またスキージに引っ張られたりして、その結果として成膜面中央付近では設定値より小さくなる傾向が生じていると推定される。これに対して、成膜面を粗面化すると、表面張力等に対抗する表面抵抗が粗面表面とフラックスの界面で生まれ、フラックスが流動できないので膜厚が薄くなる傾向が弱まると推定される。
【0075】
狙い膜厚範囲を5μm±20%とする場合の膜厚ばらつきについて図12および図13を用いて説明する。図12はフラックスの粘度が10Pa・sの場合のフラックスの膜厚ばらつきを示す図である。図13はフラックスの粘度が33Pa・sの場合のフラックスの膜厚ばらつきを示す図である。
【0076】
図12に示すように、a1における膜厚は4.1μm、a2における膜厚は4.5μm、a3における膜厚は4.3μmである。また、b1における膜厚は4.5μm、b2における膜厚は4.9μm、b3における膜厚は5.1μmである。c1における膜厚は4.8μm、c2における膜厚は5.0μm、c3における膜厚は4.9μmである。九箇所(a1,a2,a3,b1,b2,b3,c1,c2,c3)の膜厚は4.1~5.1μmであり、5μm±20%以内に収まっている。
【0077】
図13に示すように、a1における膜厚は4.1μm、a2における膜厚は4.6μm、a3における膜厚は4.2μmである。また、b1における膜厚は4.8μm、b2における膜厚は5.1μm、b3における膜厚は5.3μmである。c1における膜厚は5.1μm、c2における膜厚は5.4μm、c3における膜厚は5.0μmである。九箇所(a1,a2,a3,b1,b2,b3,c1,c2,c3)の膜厚は4.1~5.4μmであり、5μm±20%以内に収まっている。
【0078】
フラックスの成膜ごとに膜厚測定装置91を用いてフラックスの膜厚を測定する。フラックスの膜厚測定について図14および図15を用いて説明する。図14はレーザ変位計を用いた膜厚測定について説明する図である。図15図14に示す問題点が実施形態では解決されることを説明する図である。
【0079】
図14に示すように、膜厚測定装置91の一例であるレーザ変位計は、例えば、レーザ光の入射光(IL)を被測定物としての膜OFMに照射し、その反射光をCCD(Charge Coupled Device)等のセンサにより測定し、反射光の受光量(ALR)のピーク間の距離(h)に基づいて膜OFMの厚さを測定する。
【0080】
図14の左側に示すように、形成される膜が不透明である場合、膜が形成される前の物体表面で入射光(IL)が反射する反射光(RL)と、形成された不透明な膜OFMの表面で入射光(IL)が反射する表面反射光(SRL)と、により膜OFMの膜厚(h)が計測される。
【0081】
しかし、図14の右側に示すように、形成される膜が透明である場合、形成された透明な膜TFMの底面で入射光(IL)が反射し屈折した光である屈折反射光(RRL)を受光するので、表面反射光(SRL)と屈折反射光(RRL)との分離が難しい。そのため、屈折反射光(RRL)に基づく膜厚(h’)を計測する誤計測が生ずる。
【0082】
SUS(ステンレス)等の金属の表面では入射光は正反射される(反射しやすい)。一方、図15に示すように、金属の表面に粗面処理を行うと粗面では入射光は拡散反射される(反射しにくい)。これにより、屈折反射光(RRL)の受光量は、透明な膜TFMの表面で反射する表面反射光(SRL)の受光量に比べて小さくなり、表面反射光(SRL)と屈折反射光(RRL)との分離が容易になる。
【0083】
実施形態によれば、濡れ性が低い低粘性フラックスの凝集を防止し、薄膜(5μm以下)でもより均一な膜厚を形成することができる。これにより、バンプ径がφ10~30μmのバンプにフラックスを転写することができる。
【0084】
また、SUS等のフラックスに対して親油性の小さい材質で薄膜用転写用プレートを作成することができる。また、転写プレート上の古いフラックスの除去がマイクロレベル以上の荒い粗面に比べて容易となる。また、スキージ機構により薄いフラックス膜を安定的に広げることができる。また、膜厚測定が容易になる。また、狭バンプピッチの半導体製品を安定的に製造することができる。
【0085】
<変形例>
以下、実施形態の代表的な変形例について、幾つか例示する。以下の変形例の説明において、上述の実施形態にて説明されているものと同様の構成および機能を有する部分に対しては、上述の実施形態と同様の符号が用いられ得るものとする。そして、かかる部分の説明については、技術的に矛盾しない範囲内において、上述の実施形態における説明が適宜援用され得るものとする。また、上述の実施形態の一部、および、複数の変形例の全部または一部が、技術的に矛盾しない範囲内において、適宜、複合的に適用され得る。
【0086】
(第一変形例)
第一変形例におけるディッピング機構8のプレート82pについて図16および図17を用いて説明する。図16は第一変形例におけるディッピング機構の要部を示す上面図である。図17(a)は図16に示す破線A内の上面図であり、図17(b)は図16に示すB-B線における断面図である。
【0087】
図16に示すように、転写プレートとしてのプレート82pに設けられた収容部82dの底面は、少なくとも、バンプDbが浸漬する箇所に表面粗さ(算術平均粗さ(Ra))がナノレベルの安定的な粗面RSが施されている。例えば、図17(a)および図17(b)に示すように、粗面RSは、ディッピング機構8のスキージ動作においてプレート82pが移動する方向(Y軸方向)に沿った方向にナノレベルの連続した溝を例えばシェーパー方式により形成する。粗面RSはフラックスの広がる方向に沿った成分の方向を有する連続した溝であるのがより好ましい。すなわち、図16に示すように、粗面RSは、スキージ装置81から遠い側に位置する収容部82dの二つの角部において、Y軸方向の成分の他にX軸方向の成分を含む方向に沿った連続した溝が形成される。スキージ装置81から近い側に位置する収容部82dの二つの角部はY軸方向にのみ沿った連続した溝が形成されてもよいし、Y軸方向の成分の他にX軸方向の成分を含む方向に沿った連続した溝が形成されてもよい。収容部82dの底面の表面に形成される溝は、例えばRaが300~500nmである。ここで、プレート82pの部材は、例えば、SUSである。
【0088】
第一変形例によれば、スキージ動作と平行な1方向の溝により表面張力を減少(毛細管現象)させ、さらにスキージ動作による溝内の液の移動性も高まる。これにより、スキージ動作によるフラックスの伸展を改善し薄膜形成をより安定的に行うことができる。また、継続的に転写プレート(ディッピングプレート)にフラックスの塗布を行う場合、スキージ動作により、溝内の先に塗布した劣化したフラックスも含めて効率的に排出させることが可能となり、劣化したフラックス起因の異物等による製品不良を低減できる。
【0089】
(第二変形例)
第二変形例におけるディッピング機構8のプレート82pについて図18を用いて説明する。図18(a)は図16に示す破線A内に相当する箇所における上面図であり、図18(b)は図16に示すB-B線に相当する箇所における断面図である。
【0090】
粗面RSは、ディッピング機構8のスキージ動作においてプレート82pが移動する方向(Y軸方向)に沿った方向にナノレベルの連続した研磨溝を形成してもよい。収容部82dの底面の表面に形成される溝は、例えばRaが300~500nmである。ここで、プレート82pの部材は、例えば、SUSである。
【0091】
以上、本開示者らによってなされた開示を実施形態および変形例に基づき具体的に説明したが、本開示は、上記実施形態および変形例に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【0092】
例えば、実施形態では、スキージ装置81を固定してプレート82pを移動してフラックスを成膜する例を説明した。しかし、スキージ装置81がプレート82pに対して相対的移動すればよく、プレート82pを固定してスキージ装置81を移動してフラックスを成膜するようにしてもよい。
【0093】
また、変形例では、スキージ動作と平行な1方向の溝を設ける例を説明した。しかし、溝が延伸する方向はスキージ動作と平行な方向の成分を有すればよく、例えば、スキージ動作方向と90度以外の角度、好ましくは45度以下、より好ましくは0度に近い角度に沿う方向に延伸させてもよく、また、ジグザグ状に延伸させてもよい。
【0094】
また、転写プレートを円形状にし、スキージを回転させるようにしてもよい。この場合は、転写プレートに同心渦状の溝を形成してフラックスの薄膜を形成する。スキージを固定して転写プレートを回転させてもよい。
【0095】
また、スキージ高さを可変にしてもよい。これにより、フラックスの薄膜形成時は、測定された膜厚をもとにスキージの高さの調整を行うことができ、つねに適切な膜厚で処理を行うことが可能となる。劣化したフラックスの排出時は、スキージ高さを狭くする。これにより、転写プレートのナノレベルの粗面(溝を含む)内のフラックスに対する排出性をより大きくすることができる。
【0096】
また、転写プレートの取り外しを簡易的に行うことができるようにしてもよい。これにより、転写プレートの洗浄が容易になる。なお、転写プレートを取り外し洗浄する場合も、ナノレベルの粗面は孔の深さが浅いため洗浄性が高くなる。
【0097】
また、転写プレートを洗浄する場合、スキージからフラックスの溶剤である洗浄用アルコールを吐出しながらスキージを動作させてもよい。これにより、深さの浅いナノレベルの粗面に物理的に洗浄液を行き渡らせることができる、洗浄効率を向上させることができる。
【0098】
また、フラックスの薄膜形成時に超音波(振動)を付加するようにしてもよい。ただし、転写時には付加しない。スキージ動作により、部分的に厚く塗布されている部分をなだらかにでき、転写プレート表面の自由エネルギーが向上して濡れ性が向上する。
【0099】
また、転写プレートの構造上、フラックスが広がり難い位置にフラックスを導くような方向にナノレベルの連続溝を配置してもよい。これにより全体的に濡れ性を改善しつつ、フラックスが広がり難い位置にもフラックスを導き成膜を行うことができる。
【0100】
また、実施形態では、FOPLPの製造に用いるフリップチップボンダの例に説明したが、ファンアウト型ウエハレベルパッケージ(Fan Out Wafer Level Package:FOWLP)にも適用できる。
【符号の説明】
【0101】
8・・・ディッピング機構(ディッピング装置)
81・・・スキージ装置
82p・・・プレート
RS・・・粗面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図16
図17
図18