(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045365
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】プレートコンパクタ
(51)【国際特許分類】
E01C 19/34 20060101AFI20230327BHJP
【FI】
E01C19/34 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153731
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000182384
【氏名又は名称】酒井重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】月本 行則
(72)【発明者】
【氏名】古跡 哲也
(72)【発明者】
【氏名】扇谷 雅人
【テーマコード(参考)】
2D052
【Fターム(参考)】
2D052AA03
2D052BC01
2D052CA11
2D052CA17
2D052DA31
(57)【要約】
【課題】輾圧部にアスファルト合材が付着しにくく、輾圧対象物をきれいに仕上げることができるプレートコンパクタを提供する。
【解決手段】板状を呈し、輾圧対象物に接触する輾圧部2と、輾圧部2の後部に設けられ原動機4が配置されるベース部3と、輾圧部2の前部に設けられ振動可能な起振部5と、原動機4の出力軸4aと起振部5の起振軸13とを回転可能に連結する連結部6と、作業者が把持するハンドル7と、を備え、輾圧部2は、基板部と、基板部の上に厚肉に形成された蓄熱部と、を有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状を呈し、輾圧対象物に接触する輾圧部と、
前記輾圧部の後部に設けられ原動機が配置されるベース部と、
前記輾圧部の前部に設けられ振動可能な起振部と、
前記原動機の出力軸と前記起振部の起振軸とを回転可能に連結する連結部と、
作業者が把持するハンドルと、を備え、
前記輾圧部は、基板部と、前記基板部の上に厚肉に形成された蓄熱部と、を有することを特徴とするプレートコンパクタ。
【請求項2】
前記輾圧部は、前記基板部の周縁から上方に向けて傾斜する縁部を備え、
前記蓄熱部は、前記基板部の後部から前後方向に所定の範囲で、かつ、幅方向に亘って形成されていることを特徴とする請求項1に記載のプレートコンパクタ。
【請求項3】
前記基板部は、前後方向に板状に延設されるとともに前記基板部に対して立ち上がり、前記ベース部が接続される一対の立上り部を備え、
前記基板部の下面は、中央側から左右端に向かうにつれて上方に傾斜するテーパー面を備え、
前記基板部は、前記テーパー面に対応する位置において、それぞれ幅方向に延設された凸部を備え、当該凸部が前記蓄熱部の一部を構成していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプレートコンパクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレートコンパクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、例えば、舗装体の端部を締め固めるプレートコンパクタが記載されている。プレートコンパクタは、板状を呈し舗装体に接触する輾圧部(輾圧板)と、原動機が配置されるベース部と、振動可能な起振部と、原動機の出力軸と起振部の起振軸とを回転可能に連結する連結部(ベルト)と、作業者が把持するハンドルと、を備えている。起振部によって輾圧部を振動させながら走行することで、アスファルト合材で形成された舗装体等を締め固めることができる。プレートコンパクタは小回りが利くため、狭い場所や、見た目が重視される場所等に用いられることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、締め固められていないアスファルト合材の温度は130℃程度になる。プレートコンパクタの輾圧部とアスファルト合材との温度差が大きいと、アスファルト合材が転圧部の下面に付着し、舗装体の表面をきれいに仕上げることができないという問題がある。かかる問題を解消するために、輾圧部の下面に軽油や付着防止剤を塗布することが行われているが、作業が煩雑になるとともに施工コストも増加する。また、軽油や付着防止剤を塗布すると、アスファルト合材が変性するおそれもある。
【0005】
そこで本発明は、輾圧部にアスファルト合材が付着しにくく、輾圧対象物をきれいに仕上げることができるプレートコンパクタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプレートコンパクタは、板状を呈し、輾圧対象物に接触する輾圧部と、前記輾圧部の後部に設けられ原動機が配置されるベース部と、前記輾圧部の前部に設けられ振動可能な起振部と、前記原動機の出力軸と前記起振部の起振軸とを回転可能に連結する連結部と、作業者が把持するハンドルと、を備え、前記輾圧部は、基板部と、前記基板部の上に厚肉に形成された蓄熱部と、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、輾圧部に蓄熱部を備えているため、輾圧部の温度が下がりにくくなっている。これにより、アスファルト合材と輾圧部との温度差を小さくすることができるため、輾圧部にアスファルト合材が付着しにくくなり、輾圧対象物をきれいに仕上げることができる。また、輾圧部の一部を厚肉にすることで、輾圧部の強度を高めることができるとともに、寿命を長くすることができる。
【0008】
また、前記輾圧部は、前記基板部の周縁から上方に向けて傾斜する縁部を備え、前記蓄熱部は、前記基板部の後部から前後方向に所定の範囲で、かつ、幅方向に亘って形成されていることが好ましい。
【0009】
基板部の後部から前後方向に所定の範囲は、輾圧部の下面にアスファルト合材が特に付着しやすい箇所になっている。本発明によれば、当該部位に蓄熱部を設けることで、輾圧部の下面にアスファルト合材が付着するのをより防ぐことができる。
【0010】
また、 前記基板部は、前後方向に板状に延設されるとともに前記基板部に対して立ち上がり、前記ベース部が接続される一対の立上り部を備え、前記基板部の下面は、中央側から左右端に向かうにつれて上方に傾斜するテーパー面を備え、前記基板部は、前記テーパー面に対応する位置において、それぞれ幅方向に延設された凸部を備え、当該凸部が前記蓄熱部の一部を構成していることが好ましい。
【0011】
本発明によれば、基板部の下面にテーパー面を設けることで左右端のみが肉薄になるが、基板部に凸部を設けることで厚みを補うことができる。これにより、蓄熱部のバランスを整えることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のプレートコンパクタによれば、輾圧部にアスファルト合材が付着しにくく、輾圧対象物をきれいに仕上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係るプレートコンパクタの側面図である。
【
図3】本実施形態に係る輾圧部を示す斜視図である。
【
図4】本実施形態に係る転圧部を示す側面図である。
【
図5】本実施形態に係る転圧部を示す平面図である。
【
図11】温度降下確認試験において、輾圧部の下面の温度降下を示すグラフである。
【
図12】温度上昇確認試験において、輾圧部の下面の温度上昇を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係るプレートコンパクタ1について、図面を参照して詳細に説明する。
図1において、本実施形態のプレートコンパクタ1は、輾圧対象物の上を振動させつつ走行させて輾圧対象物を締め固める装置である。輾圧対象物は、例えば、砂、砂利、砕石、土、各種舗装体等が挙げられるが、ここでは舗装体を形成するアスファルト合材を締め固める場合を例示する。なお、説明における「上下」、「前後」、「左右」はプレートコンパクタ1の進行方向を基準とし、
図1等の矢印に従う。また、「幅方向」は「左右方向」と同義である。
【0015】
図1に示すように、プレートコンパクタ1は、輾圧部2と、ベース部3と、原動機4と、起振部5と、連結部6と、ハンドル7と、を備えている。輾圧部2は、アスファルト合材と接触する金属製の板状の部位である。輾圧部2の製造方法は特に制限されないが、本実施形態では鋳造で一体成形されている。輾圧部2の詳細な構造については後記する。
【0016】
ベース部3は、輾圧部2の後部の上に接続され、原動機4が配置される部材である。
図1及び
図2に示すように、ベース部3は、配置部3aと、側板部3b,3bと、を備えている。配置部3aは、概ね水平に延設され、原動機4が配置される平坦な板状部である。側板部3b,3bは、配置部3aの左右端から下方に延設された板状部である。側板部3b,3bは、前後方向に沿って延設されている。側板部3b,3bの下端部は、下方に向かうにつれて互いに外側に広がるように傾斜している。側板部3bの下端部は、輾圧部2の後記する立上り部33と防振ゴム(緩衝部材)21を介して締結されている。
【0017】
原動機4は、例えば、エンジンなどであって動力を起こす駆動源である。原動機4の出力軸4aは、左右方向軸と平行となるように配置されている。原動機4の出力軸4aの端部には、駆動プーリ11が取り付けられている。
【0018】
起振部5は、
図1及び
図3に示すように、起振ケース12と、起振軸13と、従動プーリ14とを備えている。
図3に示すように、起振ケース12は、基板部31の前部の上に設けられ、略円筒状を呈する。起振ケース12の軸心は左右方向と平行となるように配置されている。起振軸13は、
図1に示すように、起振ケース12の内部に左右方向と平行となるように配置されている。起振軸13の外周には偏心錘が設けられている。また、起振軸13の端部には、従動プーリ14が取り付けられている。
【0019】
連結部6は、駆動プーリ11と従動プーリ14とを回転可能に連結する部材である。連結部6は、本実施形態では無端のベルトであって、駆動プーリ11と従動プーリ14に架け回されている。連結部6により、出力軸4aの回転駆動が起振軸13に伝達され、起振部5が振動可能になっている。連結部6の外側には、連結部6を保護するカバー18が設けられている。なお、連結部6は、本実施形態ではベルトを用いたが、原動機4の出力軸4aと起振部5の起振軸13とを回転可能に連結する部材又は機構であれば他の形態であってもよい。
【0020】
ハンドル7は、作業者が把持するとともに、プレートコンパクタ1の進行方向を操作する部位である。ハンドル7の基端部は、ベース部3の後部に接続されている。ハンドル7は、
図1の仮想線で示すように、前後方向に傾倒可能になっている。ハンドル7は、本実施形態ではベース部3に接続したが、原動機4に接続する形態であってもよい。
【0021】
また、ベース部3には、左右方向の中央において前部から後部に向けて環状に延設されるフック8が設けられている。フック8は棒状を呈する。フック8は、プレートコンパクタ1を吊り上げたり、吊り下げたりする際に掛止される部位である。
【0022】
次に、輾圧部2の構造について詳細に説明する。
図3に示すように、輾圧部2は、基板部31と、縁部32と、立上り部33,33と、蓄熱部(厚肉部42及び凸部43)と、を備えている。基板部31は、板状を呈し、下面が輾圧対象物に接触する。基板部31は、本実施形態では矩形を呈するが、他の形状であってもよい。基板部31の板厚は、本実施形態では8mmとしているが、例えば、6~20mmの範囲で適宜設定すればよい。
【0023】
縁部32は、基板部31の周縁から上方に向けて外側に傾斜する板状部である。縁部32は、前側に形成された前側縁部32A、後側に形成された後側縁部32B、左側に形成された左側縁部32C及び右側に形成された右側縁部32Dを備えている。
【0024】
立上り部33は、前後方向に板状に延設されるとともに、基板部31から立ち上がる部位である。立上り部33,33は、前側に形成された起振ケース12から後方に向けて、互いに等間隔で延設されている。
図2に示すように、立上り部33,33は、上方に向かうにつれて近接するように傾斜している。ベース部3の側板部3bと立上り部33は、防振ゴム21を挟みつつ、防振ゴム21を貫通するボルトB1とナットN1とで締結されている。締結箇所は、本実施形態では片側2箇所としたが、1箇所でもよいし、3箇所以上としてもよい。
【0025】
蓄熱部は、基板部31の上に厚肉に形成される部位である。
図5~7に示すように、蓄熱部は、本実施形態では厚肉部42と、凸部43,43とで構成されている。
図6に示すように、厚肉部42は、基板部31の上面の後部に厚肉に形成される部位である。より詳しくは、厚肉部42は、基板部31の後端から前方に所定の範囲で、かつ、幅方向全体に亘って形成されている。蓄熱部の板厚は、本実施形態では12mmとしているが、基板部31の板厚も考慮しつつ、例えば、8~30mmの範囲で適宜設定すればよい。
【0026】
図6に示すように、厚肉部42の後部は、平坦な平坦面42aになっており、前部は平坦面42aの前側の端部42cから前側に向けて下るように傾斜する傾斜面42bになっている。厚肉部42は、基板部31の後端若しくはその近傍から前側に延設されている。厚肉部42の前後方向長さL1は、適宜設定すればよいが、例えば、20~100mm、好ましくは30~60mmに設定することが好ましい。厚肉部42の形状は、本実施形態では、
図6に示すような形状としたが、当該形状に限定されるものではなく、例えば、側断面が矩形、三角形、半円形等であってもよい。
【0027】
凸部43は、
図5、
図7及び
図8に示すように、厚肉部42の上において、立上り部33よりも左右方向の外側に延設される突条部である。つまり、凸部43は、立上り部33から左側縁部32Cまで、及び、立上り部33から右側縁部32Dまで形成されている。凸部43は、上面が円弧(曲面)となるように突出しているが、側断面が矩形、三角形等他の形状であってもよい。
【0028】
図10に示すように、基板部31の下面において、中央側から左右端に向かうにつれて上方に傾斜するテーパー面41a,41aが形成されている。テーパー面41aの傾斜角度(勾配)は1~10%、好ましくは2~5%程度である。テーパー面41a,41aを設けることで、基板部31の下面の左右端にアスファルト合材が付着するのを防ぐことができるとともに、輾圧効率を高めることができる。
【0029】
基板部31の下面にテーパー面41aを設けることで左右端のみが肉薄になるが、基板部31に凸部43を設けることで厚みを補うことができる。このように、凸部43を設けることで、蓄熱部の蓄熱バランスを整えることができる。換言すると、凸部43は、蓄熱バランスが整えられるように形成されていればよい。例えば、凸部43の上面は、テーパー面41aと同じ傾斜角度となるように形成されていることが好ましい。
【0030】
また、基板部31の下面(下面の中央)から基板部31の左右方向の端部までの高さ寸法がhの場合、高さ寸法hを考慮しつつ蓄熱バランスが整えられるように凸部43の形状を決定すればよい。なお、高さ寸法hは、本実施形態では、例えば1~10mm程度、より好ましくは2~5mm程度である。凸部43は、本実施形態では、立上り部33から各縁部32まで設けたが、テーパー面41aに対応する位置に形成されていればよい。ちなみに、
図9に示すように、基板部31の前側(
図4のIX-IX断面)の厚さは、幅方向に亘って概ね一定になっている。
【0031】
以上説明した本実施形態に係るプレートコンパクタ1によれば、輾圧部2に蓄熱部を備えているため、輾圧部2の温度が下がりにくくなっている。つまり、輾圧部2は、基板部31よりも厚さが大きい部分を備えているため、当該蓄熱部で熱を蓄えることができる。これにより、アスファルト合材と輾圧部2との温度差を小さくすることができるため、輾圧部2にアスファルト合材が付着しにくい。よって、輾圧対象物(アスファルト合材)をきれいに仕上げることができる。例えば、締め固めの作業を一旦中断し、その後再開する場合、本実施形態であれば、輾圧部2の温度が高く保たれているため、再開直後であっても輾圧部2の下面にアスファルト合材が付着しづらい。
【0032】
また、蓄熱部を設けることで、輾圧部2の一部が厚肉になるため、強度を高めることができるとともに、輾圧部2の寿命を長くすることができる。また、蓄熱部を設けることにより、輾圧部2の下面に軽油や付着防止剤等の塗布作業を無くしたり、これらの使用量を少なくしたりすることができる。これにより、作業の省略化や、施工コストの低減を図ることができる。
【0033】
ここで、プレートコンパクタ1は、輾圧部2の下面の前部を輾圧対象物から浮かせるとともに、下面の後部のみを輾圧対象物に接触させて施工する場合がある。重点的に締め固める場合や、進行方向を変更する場合などは、このようにすると操作しやすいため、輾圧部2の前部を輾圧対象物から浮かせる回数も多くなる。したがって、基板部31の後端から前後方向に所定の範囲は、基板部31の下面にアスファルト合材が特に付着しやすい箇所になっている。
【0034】
この点、本実施形態では、基板部31の後端又はその近傍(後部)から前後方向に所定の範囲で、かつ、幅方向に亘って蓄熱部が形成されている。つまり、アスファルト合材が付着しやすい箇所に蓄熱部を設けることで、輾圧部2にアスファルト合材が付着するのをより防ぐことができる。また、輾圧部2の前部を浮かせるため、下面の後部が擦り減りやすくなるが、下面の後部を肉厚にして蓄熱部を設けることで、輾圧部2の寿命を長くすることができる。
【0035】
また、テーパー面41a,41aを設ける分、輾圧部2の左右端のみが肉薄になるが、基板部31の上(厚肉部42の上)に凸部43を設けることで、厚みを補うことができる。これにより、蓄熱部の蓄熱バランスを幅方向に亘って均一にするか、均一に近づけることができる。また、テーパー面41a,41aは、輾圧部2の下面の後部に設けられるため、当該部位もアスファルト合材が付着しやすいが、テーパー面41a,41aに対応する位置に凸部43を設けることで、アスファルト合材が付着するのをより防ぐことができる。
【0036】
また、輾圧部2の製造方法は限定されないが、例えば、鋳型を用いて鋳造することにより、厚さの自由度を高めることができるため、輾圧部2を容易に製造することができる。
【0037】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲で適宜設計変更が可能である。例えば、蓄熱部は、本実施形態では、輾圧部2の後部に幅方向全体に亘って設けたが、後部以外の部位に蓄熱部を設けてもよいし、輾圧部2において局所的に設けてもよい。また、テーパー面41aが無い場合などは、凸部43は省略してもよい。
【実施例0038】
次に、実施例及び比較例を用いて、温度降下確認試験及び温度上昇確認試験を行った。温度降下確認試験は、前記した実施形態に係るプレートコンパクタ1と、比較例に係るプレートコンパクタを用いて、アスファルト合材を締め固めた後、輾圧部(輾圧板)の下面の温度の下がり具合を計測した。施工面積は50mm2とした。外気温は11℃であった。アスファルト合材は、再生密粒度アスファルト混合物を用いた。施工終了後、路面温度が16℃の路面上に実施例及び比較例を放置し、輾圧部の下面の温度を計測した。温度の計測はサーモグラフィックを用いて、輾圧部の下面の平均値を算出した。
【0039】
比較例に係るプレートコンパクタの輾圧部の板厚は8mm(8mm一定で、蓄熱部は無し)とした。比較例に係るプレートコンパクタの構成は、輾圧部の板厚以外は実施例と同じである。比較例及び実施例ともに、施工終了直後の輾圧部の下面の温度は80℃程度であった。輾圧部の下面の温度が50℃を下回ると、輾圧部の下面にアスファルト合材が付着しやすくなると仮定して、80℃から50℃になる時間を計測した。
【0040】
図11に示すように、比較例(点線)であると、輾圧部の下面の温度が50℃となるのに7分を要した。これに対し、実施例(実線)であると、輾圧部の下面の温度が50℃となるのに20分を要した。つまり、実施例は、比較例よりも1.47倍温度降下が遅いことがわかった。よって、実施例は、輾圧部2の蓄熱部で蓄熱できるため、輾圧部2の下面の温度が下がり難いことがわかった。
【0041】
これにより、アスファルト合材と輾圧部2の下面との温度差を小さくすることができるため、輾圧部2の下面にアスファルト合材が付着するのを防ぐことができる。また、作業を再開する際の準備時間を短くすることができるとともに、付着防止剤等の使用を無くしたり、使用量を減らしたりすることができる。
【0042】
温度上昇確認試験は、前記した実施形態に係るプレートコンパクタ1と、比較例に係るプレートコンパクタを用いて、アスファルト合材を締め固める際、輾圧部(輾圧板)の下面の温度の上がり具合を計測した。比較例及び実施例ともに使用したプレートコンパクタは温度降下確認試験と同じである。
【0043】
アスファルト合材は、基層が粗粒度アスファルト混合物(最大粒度20mm)であり、表層が再生密粒度アスファルト混合物改質2型(最大粒度20mm)である。アスファルト合材の温度は120~130℃程度である。
【0044】
図12に示すように、比較例(点線)及び実施例(実線)ともに、輾圧部の下面の温度が50℃となるのが概ね7分であった。つまり、実施例では輾圧部2に蓄熱部を備えているが、輾圧部2の温度上昇に悪影響を与えるものではなく、比較例(蓄熱部が無い場合)の温度上昇傾向とほぼ変わらなかった。これは、比較例よりも実施例の方がより多くの熱量が必要となるが、アスファルト合材の熱量が膨大であるため、温度上昇速度の差が小さいと考えられる。