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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045368
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】回転式圧縮機および冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F04C 29/04 20060101AFI20230327BHJP
   F04C 18/356 20060101ALI20230327BHJP
   F04B 39/10 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
F04C29/04 M
F04C18/356 G
F04B39/10 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153736
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平山 卓也
(72)【発明者】
【氏名】知念 武士
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 徹
(72)【発明者】
【氏名】四至本 知秀
(72)【発明者】
【氏名】川島 裕瑞希
【テーマコード(参考)】
3H003
3H129
【Fターム(参考)】
3H003AA05
3H003AB04
3H003AC03
3H003AD03
3H003BE10
3H003CC05
3H003CD03
3H129AA04
3H129AA13
3H129AA32
3H129AB03
3H129BB12
3H129BB44
3H129CC03
3H129CC13
3H129CC23
3H129CC64
(57)【要約】
【課題】信頼性の低下を抑制することができる回転式圧縮機および冷凍サイクル装置を提供することである。
【解決手段】実施形態の回転式圧縮機は、圧縮機構部および潤滑油貯留部を内部に収容するケースを持つ。圧縮機構部は、シリンダと、インジェクション機構と、を持つ。インジェクション機構は、ケースの外部から導入した冷媒をシリンダ室に注入する。インジェクション機構は、ガイド部と、移動体と、を有する。ガイド部は、シリンダ室と潤滑油貯留部とを連通する。移動体は、ガイド部の内側に配置され、ガイド部が伸びる第1方向に沿って移動可能である。インジェクション機構は、移動体の移動に伴ってシリンダ室に冷媒を注入する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト、圧縮機構部および潤滑油貯留部を内部に収容するケースを有し、
前記圧縮機構部は、
前記シャフトに設けられた偏心部と、
前記偏心部が配置されるシリンダ室を有し、前記シリンダ室の内部で圧縮された気体冷媒を前記ケースの内部に吐出するシリンダと、
筒状であり、前記偏心部に嵌められ、前記シリンダ室内で偏心回転するローラと、
前記シャフトの軸方向において前記シリンダ室の端部を閉塞する閉塞部材と、
前記ケースの外部から導入した冷媒を前記シリンダ室に注入するインジェクション機構と、を有し、
前記インジェクション機構は、
前記ケースの外部から前記冷媒を導入する配管と、
前記シリンダに形成され、前記シリンダ室と前記潤滑油貯留部とを連通するガイド部と、
前記配管に連通し、前記ガイド部に開口する開口部と、
前記ガイド部の内側に配置され、前記ガイド部が伸びる第1方向に沿って移動可能であり、前記第1方向の前記シリンダ室側である第1内方向の先端が前記ローラの外周面に当接し、前記第1内方向の反対方向である第1外方向の先端が前記潤滑油貯留部に露出する移動体と、を有し、
前記インジェクション機構は、前記移動体の移動に伴って前記シリンダ室に前記冷媒を注入する、
回転式圧縮機。
【請求項2】
前記移動体は、外面に凹部を有し、
前記凹部は、前記移動体の移動に伴って、前記開口部と前記シリンダ室とを連通させることが可能であり、
前記開口部は、前記凹部に露出する場合を除いて、前記移動体により閉塞される、
請求項1に記載の回転式圧縮機。
【請求項3】
前記移動体は、プレートであり、
前記プレートの前記第1方向に直交する断面の形状は、前記軸方向を長手方向とし前記軸方向および前記第1方向に直交する第2方向を短手方向とする矩形状である、
請求項2に記載の回転式圧縮機。
【請求項4】
前記ガイド部は、前記シリンダの前記閉塞部材側の端面に形成され、前記閉塞部材に閉塞されるガイド溝であり、
前記開口部は、前記閉塞部材に形成され、前記ガイド溝に開口し、
前記凹部は、前記プレートの前記閉塞部材側の端面に形成され、前記第2方向に貫通する、
請求項3に記載の回転式圧縮機。
【請求項5】
前記インジェクション機構は、前記第1内方向に前記プレートを付勢する付勢部材を有し、
前記付勢部材の前記軸方向の中心は、前記プレートの前記軸方向の中心を挟んで、前記凹部の反対側にある、
請求項4に記載の回転式圧縮機。
【請求項6】
前記インジェクション機構は、前記ケースに固定され、前記プレートとは反対側の前記付勢部材の端部を保持する保持部材を有する、
請求項5に記載の回転式圧縮機。
【請求項7】
前記ガイド部は、前記シリンダに形成されたガイド孔であり、
前記開口部は、前記シリンダに形成され、前記ガイド孔に開口し、
前記移動体は、ロッドであり、
前記凹部は、前記ロッドの外面に形成される、
請求項2に記載の回転式圧縮機。
【請求項8】
前記ロッドは、円柱形状であり、
前記凹部は、前記ロッドの全周にわたって形成される、
請求項7に記載の回転式圧縮機。
【請求項9】
前記凹部の前記第1内方向の端部が前記ガイド孔の前記第1内方向の端部にあるとき、前記凹部より前記第1外方向にある前記ロッドと前記ガイド孔との嵌合部分の長さは、前記凹部の前記第1方向の長さより長い、
請求項7または8に記載の回転式圧縮機。
【請求項10】
前記凹部より前記第1内方向にある前記ロッドの内側部分と前記ガイド孔との嵌合隙間は、前記凹部より前記第1外方向にある前記ロッドの外側部分と前記ガイド孔との嵌合隙間より大きい、
請求項7から9のいずれか1項に記載の回転式圧縮機。
【請求項11】
前記移動体は、外面にダイヤモンドライクカーボン膜を有する、
請求項1から10のいずれか1項に記載の回転式圧縮機。
【請求項12】
前記移動体は、前記第1外方向の端部に第1磁石を有し、
前記インジェクション機構は、前記第1磁石の前記第1外方向に、前記第1磁石に前記第1内方向の力を作用させる第2磁石を有する、
請求項1から11のいずれか1項に記載の回転式圧縮機。
【請求項13】
前記移動体は、非磁性体材料で形成される、
請求項12に記載の回転式圧縮機。
【請求項14】
複数の前記圧縮機構部が前記軸方向に並んで配置され、
前記インジェクション機構は、複数の前記圧縮機構部の前記開口部と共通の前記配管とを連通させる分岐流路を有する、
請求項1から13のいずれか1項に記載の回転式圧縮機。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の回転式圧縮機と、
前記回転式圧縮機に接続された放熱器と、
前記放熱器に接続された膨張装置と、
前記膨張装置と前記回転式圧縮機との間に接続された吸熱器と、を有する、
冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転式圧縮機および冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍サイクル装置において、気体冷媒を圧縮する回転式圧縮機が利用されている。回転式圧縮機の運転に伴って、摺動部が摩耗し、信頼性が低下する。信頼性の低下を抑制することができる回転式圧縮機が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭47-40510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、信頼性の低下を抑制することができる回転式圧縮機および冷凍サイクル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の回転式圧縮機は、シャフト、圧縮機構部および潤滑油貯留部を内部に収容するケースを持つ。圧縮機構部は、偏心部と、シリンダと、ローラと、閉塞部材と、インジェクション機構と、を持つ。偏心部は、シャフトに設けられる。シリンダは、偏心部が配置されるシリンダ室を有し、シリンダ室の内部で圧縮された気体冷媒をケースの内部に吐出する。ローラは、筒状であり、偏心部に嵌められ、シリンダ室内で偏心回転する。閉塞部材は、シャフトの軸方向においてシリンダ室の端部を閉塞する。インジェクション機構は、ケースの外部から導入した冷媒をシリンダ室に注入する。インジェクション機構は、配管と、ガイド部と、開口部と、移動体と、を有する。配管は、ケースの外部から冷媒を導入する。ガイド部は、シリンダに形成され、シリンダ室と潤滑油貯留部とを連通する。開口部は、配管に連通し、ガイド部に開口する。移動体は、ガイド部の内側に配置され、ガイド部が伸びる第1方向に沿って移動可能である。第1方向のシリンダ室側である第1内方向の移動体の先端がローラの外周面に当接する。第1内方向の反対方向である第1外方向の移動体の先端が潤滑油貯留部に露出する。インジェクション機構は、移動体の移動に伴ってシリンダ室に冷媒を注入する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の実施形態の回転式圧縮機の断面図を含む冷凍サイクル装置の概略構成図。
図2図1のII部の拡大図。
図3】第1の実施形態のインジェクション機構の作用の説明図。
図4】第2の実施形態の回転式圧縮機の断面図。
図5図4のV部の拡大図。
図6】第2の実施形態のインジェクション機構の作用の説明図。
図7】第2の実施形態の第1変形例の回転式圧縮機の断面図。
図8図7のVIII-VIII部の拡大図。
図9】第2の実施形態の第1変形例のインジェクション機構の作用の説明図。
図10】第2の実施形態の第2変形例のインジェクション機構の説明図。
図11】第2の実施形態の第3変形例のインジェクション機構の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の回転式圧縮機および冷凍サイクル装置を、図面を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態の回転式圧縮機の断面図を含む冷凍サイクル装置の概略構成図である。
【0008】
冷凍サイクル装置1について簡単に説明する。
冷凍サイクル装置1は、回転式圧縮機2と、回転式圧縮機2に接続された放熱器(例えば凝縮器)3と、放熱器3に接続された膨張装置(例えば膨張弁)4と、膨張装置4と回転式圧縮機2との間に接続された吸熱器(例えば蒸発器)5と、を有する。冷凍サイクル装置1は、二酸化炭素(CO)等の冷媒を含む。冷媒は、相変化しながら冷凍サイクル装置1の冷媒流路8を循環する。
【0009】
回転式圧縮機2は、いわゆるロータリ式の圧縮機である。回転式圧縮機2は、内部に取り込まれる低圧の気体冷媒(流体)を圧縮して高温・高圧の気体冷媒にする。回転式圧縮機2の具体的な構成は後述される。
【0010】
放熱器3は、回転式圧縮機2から供給される高温・高圧の気体冷媒から放熱して、高温・高圧の気体冷媒を高圧の液体冷媒にする。
膨張装置4は、放熱器3から送り込まれる高圧の液体冷媒の圧力を下げ、高圧の液体冷媒を低温・低圧の液体冷媒にする。
吸熱器5は、膨張装置4から送り込まれる低温・低圧の液体冷媒を気化させ、低圧の気体冷媒にする。吸熱器5において、低圧の液体冷媒が気化する際に周囲から気化熱を奪うことで周囲が冷却される。吸熱器5を通過した低圧の気体冷媒は、上述した回転式圧縮機2の内部に取り込まれる。
【0011】
このように、本実施形態の冷凍サイクル装置1では、作動流体である冷媒が気体冷媒と液体冷媒との間で相変化しながら冷媒流路8を循環する。冷媒は、気体冷媒から液体冷媒に相変化する過程で放熱し、液体冷媒から気体冷媒に相変化する過程で吸熱する。これらの放熱や吸熱を利用して暖房や冷房などが行われる。
【0012】
回転式圧縮機2について説明する。
本願において、Z方向(軸方向)は、シャフト13の中心軸の軸方向である。+Z方向は圧縮機構部20から電動機部15に向かう方向であり、-Z方向は+Z方向の反対側である。例えば、Z方向は鉛直方向であり、+Z方向は鉛直上方である。
【0013】
回転式圧縮機2は、アキュムレータ6と、圧縮機本体10と、を有する。アキュムレータ6は、吸熱器5から送り込まれる冷媒を、気体冷媒と液体冷媒とに分離する。気体冷媒は、吸入管を通って圧縮機本体10に取り込まれる。
【0014】
圧縮機本体10は、ケース11と、シャフト13と、電動機部15と、潤滑油貯留部14と、複数の圧縮機構部20と、インジェクション機構30と、を有する。
ケース11は、両端部が閉塞された円筒状に形成される。ケース11は、シャフト13、電動機部15、潤滑油貯留部14および複数の圧縮機構部20を収容する。ケース11は、上端部に供給部12を有する。供給部12は、ケース11の内部の気体冷媒を放熱器3に供給する。
【0015】
シャフト13は、圧縮機本体10の中心軸に沿って配置される。シャフト13は、複数の偏心部21を有する。
電動機部15は、シャフト13の+Z方向に配置される。電動機部15は、固定子15aと、回転子15bと、を有する。固定子15aは、ケース11の内周面に固定される。回転子15bは、シャフト13の外周面に固定される。電動機部15は、シャフト13を回転駆動する。
【0016】
潤滑油貯留部14は、ケース11の内側であって、複数の圧縮機構部20の外側の領域である。潤滑油貯留部14は、圧縮機本体10の摺動部を潤滑する潤滑油を貯留する。シャフト13の下端部から中心軸に沿って、潤滑油流路(不図示)が形成される。潤滑油貯留部14の潤滑油は、シャフト13の回転に伴って潤滑油流路を通り、圧縮機本体10の摺動部に供給される。
【0017】
複数の圧縮機構部20は、シャフト13の回転によって気体冷媒を圧縮する。複数の圧縮機構部20は、シャフト13の-Z方向に配置される。複数の圧縮機構部20は、フレーム11aに固定される。フレーム11aの外周面は、ケース11の内周面に固定される。複数の圧縮機構部20は、第1圧縮機構部20Aおよび第2圧縮機構部20Bの、2個の圧縮機構部20を有する。第1圧縮機構部20Aおよび第2圧縮機構部20Bは、この順番で+Z方向から-Z方向に並んで配置される。以下には、代表として第1圧縮機構部20Aの構成が説明される。第2圧縮機構部20Bの構成は、偏心部21の偏心方向を除いて、第1圧縮機構部20Aと同様である。
【0018】
第1圧縮機構部20Aは、偏心部21と、ローラ22と、シリンダ24と、を有する。
偏心部21は、円柱状で、シャフト13と一体に形成される。+Z方向から見て、偏心部21の中心は、シャフト13の中心軸から偏心している。
ローラ22は、円筒状に形成され、偏心部21の外周に嵌められる。ローラ22は、シリンダ室25の内部で偏心部21と共に偏心回転する。
【0019】
シリンダ24は、シリンダ室25の内部で圧縮された気体冷媒を、ケース11の内部に吐出する。
図3は、図1のIII-III線における断面図である。図3(c)に示されるように、シリンダ24は、シリンダ室25と、ベーン26と、吸込孔28と、吐出孔29(図1参照)と、を有する。
【0020】
シリンダ室25は、シリンダ24の径方向の中央をZ方向に貫通して形成される。シリンダ室25は、内部に偏心部21およびローラ22を収容する。ベーン26は、シリンダ24に形成されたベーン溝に収容され、シリンダ室25の内部に進退可能である。ベーン26は、先端がローラ22の外周面に当接するように付勢される。ベーン26は、ローラ22とともに、シリンダ室25の内部を吸込室25sと圧縮室25pとに仕切る。吸込孔28は、吸込室25sと、図1に示されるアキュムレータ6とを連通する。吐出孔29は、弁体29vを介して、圧縮室25pとマフラ室19(第1マフラ室19Aまたは第2マフラ室19B)とを連通する。
【0021】
ローラ22の偏心回転により、吸込室25sの体積が増加する。アキュムレータ6から吸込孔28を通って吸込室25sに、気体冷媒(第1状態の冷媒)が吸い込まれる。ローラ22の偏心回転により、圧縮室25pの体積が減少し、気体冷媒が圧縮される。気体冷媒が吐出圧力を超えると、弁体29vが押し開かれる。気体冷媒が、圧縮室25pから吐出孔29を通ってマフラ室19に吐出される。
【0022】
図1に示されるように、回転式圧縮機2は、仕切部材(閉塞部材)16と、第1軸受17Aと、第2軸受17Bと、第1マフラ18Aと、第2マフラ18Bと、を有する。
仕切部材16は、第1圧縮機構部20Aと第2圧縮機構部20Bとの間に配置される。仕切部材16は、第1圧縮機構部20Aのシリンダ室25の-Z方向の端部を閉塞する。仕切部材16は、第2圧縮機構部20Bのシリンダ室25の+Z方向の端部を閉塞する。
【0023】
第1軸受(主軸受)17Aは、複数の圧縮機構部20の+Z方向に配置され、シャフト13を支持する。第1軸受17Aは、第1圧縮機構部20Aのシリンダ室25の+Z方向の端部を閉塞する。
第2軸受(副軸受)17Bは、複数の圧縮機構部20の-Z方向に配置され、シャフト13を支持する。第2軸受17Bは、第2圧縮機構部20Bのシリンダ室25の-Z方向の端部を閉塞する。
【0024】
第1マフラ18Aは、第1軸受17Aとの間に第1マフラ室19Aを形成する。第1圧縮機構部20Aで圧縮された気体冷媒は、吐出孔29から第1マフラ室19Aに吐出される。第1マフラ室19Aに吐出された気体冷媒は、マフラ孔19eからケース11の内部に吐出される。
第2マフラ18Bは、第2軸受17Bとの間に第2マフラ室19Bを形成する。第2圧縮機構部20Bで圧縮された気体冷媒は、吐出孔(不図示)から第2マフラ室19Bに吐出される。第2マフラ室19Bは、マフラ室間通路(不図示)を介して、第1マフラ室19Aに連通している。
【0025】
(第1の実施形態)
インジェクション機構30について詳細に説明する。
インジェクション機構30は、ケース11の外部から導入した冷却用冷媒(第2状態の冷媒、中間圧冷媒、液体冷媒)を、シリンダ室25に間欠的に注入する。インジェクション機構30は、導入部と、ガイド部40と、移動体50と、付勢部材60と、を有する。ガイド部40、移動体50および付勢部材60は、複数の圧縮機構部20のそれぞれに形成される。
【0026】
導入部は、配管32と、閉止弁33と、分岐流路34と、開口部35(図2参照)と、を有する。
配管32は、ケース11の外部から冷却用冷媒を導入する。配管32は、冷凍サイクル装置1の放熱器3と膨張装置4との間の冷媒流路8から分岐される。配管32は、気液分離器を介して冷媒流路8から分岐されてもよい。配管32は、ケース11および潤滑油貯留部14を通って、仕切部材16の内部に伸びる。放熱器3と膨張装置4との間の冷媒流路8には、圧縮機構部20で圧縮される気体冷媒よりも低温の気液二相冷媒が流通する。配管32は、この気液二相冷媒を冷却用冷媒として、ケース11の内部に導入する。
閉止弁33は、ケース11の外部の配管32に設置される。閉止弁33は、ケース11の内部への冷却用冷媒の導入を閉止可能である。
【0027】
図2は、図1のII部の拡大図である。
分岐流路34は、仕切部材16の内部の配管32の先端から、複数の圧縮機構部20(図1参照)に向かって伸びる。分岐流路34は、複数の圧縮機構部20の開口部35と、共通の配管32とを連通させる。第1の実施形態の分岐流路34は、仕切部材16に形成される。
開口部35は、分岐流路34を介して、配管32に連通する。開口部35は、次述されるガイド部40に開口する。開口部35は、シャフト13の径方向において、シリンダ室25の近くに配置される。第1の実施形態の開口部35は、仕切部材16に形成される。
【0028】
ガイド部40は、シリンダ24に形成される。ガイド部40は、シリンダ室25と潤滑油貯留部14とを連通する。
本願において、X方向およびY方向が以下のように定義される。X方向(第1方向)は、ガイド部40が伸びる方向である。+X方向(第1内方向)はガイド部40のシリンダ室25側であり、-X方向(第1外方向)はガイド部40の潤滑油貯留部14側である。例えば、X方向は、シャフト13の径方向と平行である。Y方向(第2方向)は、X方向およびZ方向に直交する方向である。例えば、X方向およびY方向は水平方向である。
【0029】
第1の実施形態のガイド部40は、ガイド溝41である。ガイド溝41は、シリンダ24の仕切部材16側の端面に形成される。例えば、ガイド溝41のZ方向の深さは、シリンダ24のZ方向の高さの1/3程度である。ガイド溝41の開口は、仕切部材16により閉塞される。前述された開口部35は、ガイド溝41に開口する。
【0030】
移動体50は、ガイド部40の内側に配置される。移動体50は、X方向に沿って移動可能である。移動体50の+X方向の先端は、ローラ22の外周面に当接する。移動体50の-X方向の先端は、潤滑油貯留部14に露出する。移動体50は、潤滑油貯留部14とシリンダ室25との差圧を受ける。前述されたように、シリンダ室25で吐出圧力まで圧縮された気体冷媒が、ケース11の内部に吐出される。ケース11の内部に収容される潤滑油貯留部14の圧力は、吐出圧力と同等である。吐出圧力に至る前のシリンダ室25の圧力は、潤滑油貯留部14の圧力より小さい。潤滑油貯留部14とシリンダ室25との差圧により、移動体50がローラ22の外周面に当接する。ローラ22の偏心回転に伴って、移動体50がX方向に移動する。
【0031】
移動体50は、外面に凹部52を有する。凹部52は、移動体50の移動に伴って、開口部35とシリンダ室25とを連通させることが可能である。開口部35は、凹部52に露出する場合を除いて、移動体50の外面により閉塞される。ローラ22の偏心回転に伴って移動体50が最も-X方向に移動した場合でも、開口部35は移動体50の+X方向に露出しない。開口部35は、移動体50の+X方向の先端とローラ22との隙間に露出しない。
【0032】
第1の実施形態の移動体50は、プレート51である。プレート51のX方向に直交する断面の形状は、Z方向を長手方向としY方向を短手方向とする矩形状である。プレート51の+X方向の先端とローラ22の外周面との接触部は、Z方向に伸びる直線状または長方形状である。プレート51は、外面にダイヤモンドライクカーボン膜を有してもよい。
凹部52は、プレート51の仕切部材16側の端面に形成される。凹部52は、プレート51のX方向の中間部に形成される。凹部52は、プレート51をY方向に貫通する。Y方向から見て、凹部52は矩形状である。ローラ22の偏心回転に伴ってプレート51が+X方向に移動したとき、凹部52のY方向の両側がシリンダ室25に開口する。
【0033】
図1に示されるように、インジェクション機構30は、付勢ユニットとして、付勢部材60と、保持部材63と、を有する。
付勢部材(アシスト部材)60は、移動体50の-X方向に配置される。付勢部材60は、移動体50を+X方向に付勢する。少なくとも移動体50が最も-Xに移動したとき、付勢部材60は移動体50に+X方向への付勢力を作用させる。移動体50の-X方向への移動量が大きいほど、+X方向への付勢力が大きい。
【0034】
前述されたように、潤滑油貯留部14とシリンダ室25との差圧により、移動体50には+X方向の力(以下、差圧力と言う場合がある。)が作用する。潤滑油貯留部14の圧力は、吐出圧力と同等である。シリンダ室25の圧力が吐出圧力に近くなると、移動体50に作用する差圧力が減少する。ローラ22の偏心回転に対する移動体50の追従性が弱くなる。所定のタイミングで所定量の冷却用冷媒をシリンダ室25に注入しにくくなる。
付勢部材60が移動体50を+X方向に付勢することにより、移動体50に作用する差圧力の減少が補われる。
【0035】
第1の実施形態の付勢部材60は、コイルバネ61である。コイルバネ61は、プレート51の-X方向の端部とケース11の内周面との間に配置される。図2に示されるように、プレート51が+X方向に移動したとき、コイルバネ61の+X方向の端部は、シリンダ24に形成されたガイド溝41に進入する。コイルバネ61のY方向の幅は、ガイド溝41のY方向の幅より大きい。シリンダ24には、コイルバネ61との干渉を回避するための逃げ穴62が形成される。コイルバネ61および逃げ穴62のZ方向の中心61cは、プレート51のZ方向の中心51cを挟んで、凹部52の反対側にある。プレート51が-X方向に移動した場合でも、逃げ穴62と凹部52との連通が抑制される。
【0036】
図1に示されるように、保持部材63は、圧縮機構部20とは別部材であり、ケース11の内面に固定される。保持部材63は保持孔を有する。コイルバネ61の-X方向の端部が保持孔に挿入されて、コイルバネ61の端部が保持される。保持部材63により、コイルバネ61の端部が位置決めされる。
【0037】
インジェクション機構30の作用について説明する。
図3は、第1の実施形態のインジェクション機構の作用の説明図であり、図1のIII-III線における断面図である。プレート51はコイルバネ(不図示)により+X方向に付勢されている。プレート51の+X方向の先端は、ローラ22の外周に当接する。図3(a)から(d)にかけて、シリンダ室25の内部でローラ22が偏心回転する。これに伴って、プレート51がガイド溝41に沿ってX方向に移動する。
【0038】
図3(a)では、シリンダ室25での気体冷媒の圧縮が開始される。開口部35はプレート51の凹部52に露出している。凹部52はガイド溝41の内部にあり、シリンダ室25に露出していない。開口部35とシリンダ室25とが連通していない。開口部35からシリンダ室25に冷却用冷媒が注入されない。
【0039】
図3(b)では、プレート51が+X方向に移動する。凹部52がシリンダ室25に露出して、開口部35とシリンダ室25とが連通する。冷却用冷媒の圧力は、シリンダ室25の気体冷媒の圧力より大きい。開口部35から凹部52のY方向の両側を通ってシリンダ室25に、冷却用冷媒が注入される。凹部52のY方向の両側が、冷却用冷媒のインジェクション流路になる。冷却用冷媒により、シリンダ室25の気体冷媒および圧縮機構部20が冷却される。
【0040】
図3(c)では、プレート51が-X方向に移動する。凹部52が再びガイド溝41の内部に収容される。開口部35とシリンダ室25との連通が遮断される。開口部35からシリンダ室25への冷却用冷媒の注入が終了する。以上のように、インジェクション機構30は、シリンダ室25に冷却用冷媒を間欠的に注入する。
【0041】
図3(d)では、シリンダ室25での気体冷媒の圧縮が進行する。シリンダ室25の気体冷媒の圧力が吐出圧力に近づく。吐出圧力は、気体冷媒が、図1に示される弁体29vを押し開いて、ケース11の内部に吐出される圧力である。ケース11の内部にある潤滑油貯留部14の圧力は、吐出圧力と同等である。プレート51に作用する差圧力は小さくなる。プレート51はコイルバネ61により+X方向に付勢されている。プレート51の+X方向の先端は、ローラ22の外周面への当接を維持する。
【0042】
図3(d)では、プレート51が-X方向に移動する。プレート51の凹部52が、開口部35の-X方向に移動する。凹部52の+X方向のプレート51の端面により、開口部35が閉塞される。シリンダ室25の高圧の気体冷媒は、開口部35に流入しにくい。
【0043】
以上に詳述されたように、第1の実施形態の回転式圧縮機2は、シャフト13、圧縮機構部20および潤滑油貯留部14を内部に収容するケース11を持つ。圧縮機構部20は、偏心部21と、シリンダ24と、ローラ22と、仕切部材16と、インジェクション機構30と、を持つ。偏心部21は、シャフト13に設けられる。シリンダ24は、偏心部21が配置されるシリンダ室25を有し、シリンダ室25の内部で圧縮された気体冷媒をケース11の内部に吐出する。ローラ22は、筒状であり、偏心部21に嵌められ、シリンダ室25内で偏心回転する。仕切部材16は、シャフト13の軸方向であるZ方向においてシリンダ室25の端部を閉塞する。インジェクション機構30は、ケース11の外部から導入した冷却用冷媒をシリンダ室25に注入する。インジェクション機構30は、配管32と、ガイド部40と、開口部35と、移動体50と、を有する。配管32は、ケース11の外部から冷却用冷媒を導入する。ガイド部40は、シリンダ24に形成され、シリンダ室25と潤滑油貯留部14とを連通する。開口部35は、配管32に連通し、ガイド部40に開口する。移動体50は、ガイド部40の内側に配置され、ガイド部40が伸びるX方向に沿って移動可能である。X方向のシリンダ室25側である+X方向の移動体50の先端がローラ22の外周面に当接する。+X方向の反対方向である-X方向の移動体50の先端が潤滑油貯留部14に露出する。インジェクション機構30は、移動体50の移動に伴ってシリンダ室25に冷却用冷媒を注入する。
【0044】
ガイド部40は、シリンダ室25と潤滑油貯留部14とを連通する。移動体50は、ガイド部40の内側に配置される。潤滑油貯留部14とシリンダ室25との差圧により、ガイド部40と移動体50との摺動部に潤滑油が供給される。摺動部の摩耗が抑制され、回転式圧縮機2の信頼性の低下が抑制される。潤滑油貯留部14とシリンダ室25との差圧により、移動体50がローラ22の外周面に当接する。移動体50がローラ22の偏心回転に追従して移動する。所定のタイミングで所定量の冷却用冷媒がシリンダ室25に注入される。
【0045】
移動体50は、外面に凹部52を有する。凹部52は、移動体50の移動に伴って、開口部35とシリンダ室25とを連通させることが可能である。開口部35は、凹部52に露出する場合を除いて、移動体50により閉塞される。
開口部35は、移動体50の+X方向の先端とローラ22との隙間に露出しない。移動体50の+X方向の先端とローラ22の外周面との摺動部には、潤滑油が存在する。摺動部の潤滑油が、開口部35から注入された冷却用冷媒によって除去されにくい。摺動部の摩耗が抑制され、回転式圧縮機2の信頼性の低下が抑制される。
開口部35は、移動体50の+X方向に露出しない。シリンダ室25の高圧の気体冷媒が、開口部35に流入しにくい。圧縮機構部20の圧縮性能の低下が抑制される。
【0046】
移動体50は、プレート51である。プレート51のX方向に直交する断面の形状は、Z方向を長手方向としZ方向およびX方向に直交するY方向を短手方向とする矩形状である。
プレート51の+X方向の先端とローラ22の外周面との摺動部では、両者の接触面積が大きくなり、面圧が小さくなる。摺動部の摩耗が抑制され、回転式圧縮機2の信頼性の低下が抑制される。
【0047】
ガイド部40は、ガイド溝41である。ガイド溝41は、シリンダ24の仕切部材16側の端面に形成され、仕切部材16に閉塞される。開口部35は、仕切部材16に形成され、ガイド溝41に開口する。凹部52は、プレート51の仕切部材16側の端面に形成され、Y方向に貫通する。
凹部52の形状が単純であり、凹部52の加工が容易である。凹部52がY方向に貫通するので、凹部52が開口部35とシリンダ室25とを連通させるとき、凹部52のY方向の両側が冷却用冷媒のインジェクション流路になる。インジェクション流路の流路断面積が大きくなり、十分な量の冷却用冷媒がシリンダ室25に注入される。
【0048】
インジェクション機構30は、+X方向にプレート51を付勢するコイルバネ61を有する。コイルバネ61のZ方向の中心61cは、プレート51のZ方向の中心51cを挟んで、凹部52の反対側にある。
シリンダ24には、コイルバネ61との干渉を回避するための逃げ穴62が形成される。プレート51が-X方向に移動した場合でも、逃げ穴62と凹部52との連通が抑制される。コイルバネ61および凹部52の設計自由度が大きくなる。
プレート51が上下を逆にしてガイド溝41に誤装着される場合がある。この場合、コイルバネ61の位置が逃げ穴62の位置からずれるので、コイルバネ61が装着不可能である。したがって、プレート51の誤装着が抑制される。
【0049】
インジェクション機構30は、保持部材63を有する、保持部材63は、ケース11に固定され、プレート51とは反対側のコイルバネ61の端部を保持する。
圧縮機構部20とは別部材の保持部材63がコイルバネ61の端部を保持するので、圧縮機構部20の大型化が抑制される。コイルバネ61の端部位置の設計自由度が大きくなる。
【0050】
複数の圧縮機構部20がZ方向に並んで配置される。インジェクション機構30は、分岐流路34を有する。分岐流路34は、複数の圧縮機構部20の開口部35と共通の配管32とを連通させる。
複数の圧縮機構部20のそれぞれに配管32を設ける必要がない。回転式圧縮機2のコストが抑制される。
【0051】
第1の実施形態の冷凍サイクル装置1は、前述された回転式圧縮機2と、放熱器3と、膨張装置4と、吸熱器5と、を持つ。放熱器3は、回転式圧縮機2に接続される。膨張装置4は、放熱器3に接続される。吸熱器5は、膨張装置4と回転式圧縮機2との間に接続される。
前述された回転式圧縮機2を有するので、冷凍サイクル装置1の信頼性の低下が抑制される。
【0052】
第1の実施形態において、ガイド溝41は、シリンダ24の仕切部材16側の端面に形成され、仕切部材16により閉塞される。これに対して、ガイド溝41は、シリンダ24の軸受17(第1軸受17Aまたは第2軸受17B)側の端面に形成され、軸受17により閉塞されてもよい。このとき、ガイド溝41に開口する開口部35は、シリンダ24または軸受17に形成される。
【0053】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の回転式圧縮機2について説明する。
図4は、第2の実施形態の回転式圧縮機の断面図である。図5は、図4のV部の拡大図である。第2の実施形態は、ガイド部40がガイド孔46であり、移動体50がロッド56である点で、第1の実施形態と異なる。第1の実施形態と同様である点についての第2の実施形態の説明は省略される場合がある。
【0054】
第2の実施形態のガイド部40は、ガイド孔46である。ガイド孔46は、シリンダ24に形成される。ガイド孔46の中心軸は、X方向と平行である。ガイド孔46のX方向に垂直な断面の形状は、円形状である。ガイド孔46は、シリンダ24のZ方向の中心より、仕切部材16の近くに配置される。
図5に示されるように、分岐流路34は、仕切部材16およびシリンダ24に形成される。開口部35は、シリンダ24に形成され、ガイド孔46に開口する。
【0055】
第2の実施形態の移動体50は、ロッド56である。ロッド56は円柱形状であり、軸対称形状である。ロッド56は、ガイド孔46の内側に配置される。ロッド56は、外周面にダイヤモンドライクカーボン膜(HV0.025が約2500)を有する。ダイヤモンドライクカーボン膜の摩擦係数は小さいので、ロッド56とガイド孔46との摺動部の摩耗が抑制される。ロッド56は+X方向に差圧力を受ける。ロッド56の+X方向の先端が、ローラ22の外周面に当接する。ロッド56は、ローラ22の偏心回転に伴ってX方向に移動する。
【0056】
凹部57は、ロッド56の外周面の全周にわたって形成される。凹部57の深さは、ロッド56の全周にわたって同じである。凹部57の形成領域におけるロッド56の直径は、凹部57の非形成領域におけるロッド56の直径より小さい。凹部57は、旋盤加工等により形成される。凹部52は、ロッド56のX方向の中間部に形成される。
【0057】
図6は、インジェクション機構の作用の説明図であり、図4のVI-VI線における断面図である。図6(c)では、凹部57の+X方向の端部が、ガイド孔46の+X方向の端部にある。このとき、凹部57より-X方向のロッド56とガイド孔46との嵌合部分の長さL2は、凹部57のX方向の長さL1より長い。凹部57より+X方向にあるロッド56の内側部分58とガイド孔46との嵌合隙間(クリアランス)は、凹部57より-X方向にあるロッド56の外側部分59とガイド孔46との嵌合隙間より大きい。
【0058】
インジェクション機構30の作用について説明する。
図6(a)は、図3(a)に相当する。開口部35がロッド56の凹部57に露出している。凹部57はガイド孔46の内部にあり、シリンダ室25に露出していない。開口部35とシリンダ室25とが連通していない。開口部35からシリンダ室25に冷却用冷媒が注入されない。
図6(b)は、図3(b)に相当する。ロッド56が+X方向に移動する。凹部57がシリンダ室25に露出して、開口部35とシリンダ室25とが連通する。開口部35から凹部57を通ってシリンダ室25に、冷却用冷媒が注入される。凹部57は、冷却用冷媒のインジェクション流路の一部である。
【0059】
図6(c)は、図3(c)に相当する。ロッド56が-X方向に移動する。凹部57が再びガイド孔46の内部に収容される。開口部35とシリンダ室25との連通が遮断される。開口部35からシリンダ室25への冷却用冷媒の注入が終了する。
図6(d)は、図3(d)に相当する。ロッド56が-X方向に移動する。ロッド56の凹部57が、開口部35の-X方向に移動する。凹部57の+X方向にあるロッド56の内側部分58の外周面により、開口部35が閉塞される。シリンダ室25の高圧の気体冷媒は、開口部35に流入しにくい。
【0060】
以上に詳述されたように、第2の実施形態の回転式圧縮機2において、ガイド部40は、シリンダ24に形成されたガイド孔46である。開口部35は、シリンダ24に形成され、ガイド孔46に開口する。移動体50は、ロッド56である。凹部57は、ロッド56の外面に形成される。
凹部57がロッド56の外面に形成されるので、凹部57の加工が容易である。
【0061】
ロッド56は、円柱形状である。凹部57は、ロッド56の全周にわたって形成される。
凹部57の加工が極めて容易である。インジェクション流路の一部である凹部57が全周に形成されるので、インジェクション流路の流路断面積が大きくなる。十分な量の冷却用冷媒がシリンダ室25に注入される。
【0062】
図6(c)に示されるように、凹部57の+X方向の端部がガイド孔46の+X方向の端部にあるとき、凹部57より-X方向のロッド56とガイド孔46との嵌合部分の長さL2は、凹部57のX方向の長さL1より長い。
ロッド56とガイド孔46との嵌合部分が長いので、ガイド孔46に対するロッド56の傾きが抑制される。凹部57の+X方向の端部がガイド孔46に入るとき、ロッド56およびガイド孔46の摩耗が抑制される。回転式圧縮機2の信頼性の低下が抑制される。
【0063】
凹部57より+X方向にあるロッド56の内側部分58とガイド孔46との嵌合隙間は、凹部57より-X方向にあるロッド56の外側部分59とガイド孔46との嵌合隙間より大きい。
ロッド56の外側部分59とガイド孔46との嵌合隙間が小さいので、ガイド孔46に対するロッド56の傾きが抑制される。ロッド56の内側部分58とガイド孔46との嵌合隙間が大きいので、ロッド56の内側部分58およびガイド孔46の摩耗が抑制される。回転式圧縮機2の信頼性の低下が抑制される。
【0064】
ロッド56は、外面にダイヤモンドライクカーボン膜を有する。
ロッド56とガイド孔46との摺動部の摩擦係数が小さくなる。摺動部の摩耗が抑制され、回転式圧縮機2の信頼性の低下が抑制される。
【0065】
(第1変形例)
第2の実施形態の第1変形例の回転式圧縮機2について説明する。
図7は、第1変形例の回転式圧縮機2の断面図である。図8は、図7のVIII-VIII部の拡大図である。第1変形例は、付勢部材60として第1板バネ65を有する点で、第2の実施形態と異なる。第2の実施形態と同様である点についての第1変形例の説明は省略される場合がある。
【0066】
第1変形例の付勢部材60は、第1板バネ65である。第1板バネ65は、U字形状である。第1板バネ65は、片持ちの板バネである。第1板バネ65は、ロッド56およびケース11のうち一方に固定され、他方に固定されない。第1変形例では、第1板バネ65の+X方向の端部が、ロッド56の-X方向の端部に固定される。第1板バネ65の-X方向の端部は、ケース11を含むいずれの部材にも固定されない。
【0067】
インジェクション機構30の作用について説明する。
図9は、第1変形例のインジェクション機構の作用の説明図であり、図7のIX-IX線における断面図である。図9(a)から(c)は、図6(a)から(c)に相当する。ロッド56が+X方向にあるため、第1板バネ65の-X方向の端部がケース11から離れている。
【0068】
図9(d)は、図6(d)に相当する。シリンダ室25の気体冷媒の圧力が吐出圧力に近づく。ロッド56に作用する+X方向の差圧力が小さくなる。ローラ22の偏心回転に伴って、ロッド56が-X方向に移動する。ロッド56には-X方向の慣性力が作用する。第1板バネ65の-X方向の端部が、ケース11に当接する。
【0069】
図9(e)では、ローラ22の偏心方向の先端がロッド56の位置に到達する。ロッド56がさらに-X方向に移動する。第1板バネ65がケース11により圧縮される。第1板バネ65からロッド56に+X方向の付勢力が作用する。ロッド56に作用する+X方向の差圧力の減少を、第1板バネ65の付勢力が補う。ローラ22の偏心回転に対するロッド56の追従性が維持される。
【0070】
図9(f)では、ローラ22がロッド56を通り過ぎる。ロッド56が+X方向に移動する。ケース11による第1板バネ65の圧縮が解除される。第1板バネ65からロッド56に作用する+X方向の付勢力が解消される。ロッド56の+X方向の先端が、シリンダ室25の吸込室25sに露出する。吸込室25sの圧力は小さい。ロッド56に作用する+X方向の差圧力が大きくなる。ローラ22の偏心回転に対するロッド56の追従性が維持される。
【0071】
以上に詳述されたように、第1変形例では、第1板バネ65が、ロッド56およびケース11の一方に固定され、他方に固定されない。第1板バネ65は、他方の部材と断続的に接触して、ロッド56に+X方向の力を作用させる。
ロッド56のX方向の移動量が大きい場合でも、第1板バネ65の撓み量を大きくする必要がない。第1板バネ65が小型化される。
【0072】
(第2変形例)
第2の実施形態の第2変形例の回転式圧縮機2について説明する。
図10は、第2の実施形態の第2変形例のインジェクション機構の説明図であり、図7のIX-IX線に相当する部分における断面図である。第2変形例は、付勢部材60として第2板バネ66を有する点で、第2の実施形態と異なる。第2の実施形態と同様である点についての第2変形例の説明は省略される場合がある。
【0073】
第2変形例の付勢部材60は、第2板バネ66である。第2板バネ66は、U字形状である。第2板バネ66は、両持ちの板バネである。第2変形例では、第2板バネ66の一方の端部がロッド56に固定され、他方の端部がシリンダ24に固定される。第2板バネ66の他方の端部は、ケース11に固定されてもよい。
【0074】
インジェクション機構30の作用について説明する。
図10(a)は、図9(b)に相当する。ロッド56は+X方向にある。ロッド56に作用する+X方向の差圧力は大きい。ローラ22の偏心回転に追従してロッド56がX方向に移動する。
【0075】
図10(b)は、図9(e)に相当する。シリンダ室25の気体冷媒の圧力が吐出圧力に近づく。ロッド56に作用する+X方向の差圧力が小さくなる。ローラ22の偏心方向の先端がロッド56の位置に到達する。ロッド56は最も-X方向に移動するが、ロッド56および第2板バネ66はケース11に当接しない。第2板バネ66の一方の端部と他方の端部とのX方向の間隔が広くなる。第2板バネ66からロッド56に+X方向の付勢力が作用する。ロッド56に作用する+X方向の差圧力の減少を、第2板バネ66の付勢力が補う。ローラ22の偏心回転に対するロッド56の追従性が維持される。
【0076】
以上に詳述されたように、第2変形例では、第2板バネ66の一方の端部がロッド56に固定され、他方の端部がシリンダ24に固定される。
ロッド56および第2板バネ66がシリンダ24に対して位置決めされるので、回転式圧縮機2の精度が向上する。第2板バネ66は他の部材に当接しないので、騒音の発生が抑制される。
【0077】
(第3変形例)
第2の実施形態の第3変形例の回転式圧縮機2について説明する。
図11は、第2の実施形態の第3変形例のインジェクション機構の説明図である。第3変形例は、付勢部材60として第1磁石67および第2磁石68を有する点で、第2の実施形態と異なる。第2の実施形態と同様である点についての第3変形例の説明は省略される場合がある。
【0078】
第3変形例の付勢部材60は、第1磁石67および第2磁石68である。第1磁石67は、ロッド56の-X方向の端部に装着される。第2磁石68は、ロッド56の-X方向におけるケース11の内周面に装着される。第1磁石67の-X方向および第2磁石68の+X方向は、共にN極または共にS極に分極されている。第1磁石67および第2磁石68は、相互に反発力を作用させる。
【0079】
ロッド56は、非磁性材料で形成される。例えば、非磁性材料はオーステナイト系ステンレス(SUS304等)である。ロッド56が第1磁石67により磁化されにくいので、ロッド56への鉄粉等の付着が抑制される。
【0080】
インジェクション機構30の作用について説明する。
図11は、図9(e)に相当する。シリンダ室25の気体冷媒の圧力が吐出圧力に近づく。ロッド56に作用する+X方向の差圧力が小さくなる。ローラ22の偏心方向の先端がロッド56の位置に到達する。ロッド56は最も-X方向に移動するが、第1磁石67は第2磁石68に当接しない。第1磁石67と第2磁石68とのX方向の間隔が狭くなる。第2磁石68から第1磁石67に+X方向の反発力が作用する。ロッド56に作用する+X方向の差圧力の減少を、磁石の反発力が補う。ローラ22の偏心回転に対するロッド56の追従性が維持される。
【0081】
以上に詳述されたように、第3変形例では、ロッド56が、-X方向の端部に第1磁石67を有する。インジェクション機構30は、第1磁石67の-X方向に、第1磁石67に+X方向の力を作用させる第2磁石68を有する。
第2磁石68は、第1磁石67と非接触で、第1磁石67およびロッド56に+X方向の力を作用させる。騒音の発生が抑制される。
【0082】
ロッド56は、非磁性材料で形成される。
ロッド56が第1磁石67により磁化されにくいので、ロッド56への鉄粉等の付着が抑制される。ロッド56およびガイド孔46の摩耗が抑制され、回転式圧縮機の信頼性の低下が抑制される。
【0083】
前述された第1から第3変形例の付勢部材60は、第2の実施形態のロッド56に装着される。第1の実施形態のプレート51に装着されるコイルバネ61に代えて、第1から第3変形例の付勢部材60が装着されてもよい。
【0084】
前述された実施形態において、インジェクション機構30の配管32は、ケース11を通って仕切部材16の内部に伸びる。これに対して、配管32は、ケース11を通ってシリンダ24の内部に伸びてもよい。
【0085】
前述された実施形態において、回転式圧縮機2は、2個の圧縮機構部20(第1圧縮機構部20Aおよび第2圧縮機構部20B)を有する。これに対して、回転式圧縮機2は、1個の圧縮機構部20のみを有してもよく、3個以上の圧縮機構部20を有してもよい。
【0086】
前述された実施形態において、回転式圧縮機2は、図3(c)に示されるベーン26とローラ22とが別体の、いわゆるロータリ式の圧縮機である。これに対して、回転式圧縮機2は、ベーンとローラとが一体の、いわゆるスイングタイプの圧縮機でもよい。
【0087】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、インジェクション機構30として、ガイド部40と、移動体50と、を持つ。ガイド部40は、シリンダ室25と潤滑油貯留部14とを連通する。移動体50は、ガイド部40の内側に配置される。インジェクション機構30は、移動体50の移動に伴ってシリンダ室25に冷却用冷媒を注入する。これにより、回転式圧縮機2の信頼性の低下を抑制することができる。
なお、上述の実施形態においては、液冷媒をインジェクションすることで圧縮機構部を冷却する回転式圧縮機について説明したが、中間圧のガス冷媒をインジェクションする回転式圧縮機としても良い。これにより、信頼性の低下を抑制しつつ、省エネルギー性の向上および冷暖房能力を増大した回転式圧縮機とすることができる。
【0088】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0089】
1…冷凍サイクル装置、2…回転式圧縮機、3…放熱器、4…膨張装置、5…吸熱器、11…ケース、13…シャフト、14…潤滑油貯留部、16…仕切部材(閉塞部材)、20…圧縮機構部、20A…第1圧縮機構部、20B…第2圧縮機構部、21…偏心部、22…ローラ、24…シリンダ、25…シリンダ室、30…インジェクション機構、32…配管、34…分岐流路、35…開口部、40…ガイド部、41…ガイド溝、46…ガイド孔、50…移動体、51…プレート、52…凹部、56…ロッド、57…凹部、58…内側部分、59…外側部分、60…付勢部材、61…コイルバネ、63…保持部材、67…第1磁石、68…第2磁石。
図1
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