(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045378
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】スレートの研磨装置
(51)【国際特許分類】
B24B 19/22 20060101AFI20230327BHJP
B24B 29/00 20060101ALI20230327BHJP
B24B 55/02 20060101ALI20230327BHJP
B24B 55/06 20060101ALI20230327BHJP
E04F 21/00 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
B24B19/22
B24B29/00 D
B24B55/02 Z
B24B55/06
E04F21/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153757
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】512064354
【氏名又は名称】日本パーミル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】508324112
【氏名又は名称】株式会社ユーディー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】安西 英男
【テーマコード(参考)】
3C047
3C049
3C158
【Fターム(参考)】
3C047FF09
3C047GG01
3C047HH11
3C047HH15
3C049AA06
3C049AA16
3C049AC04
3C049AC05
3C049CA01
3C049CB01
3C049CB06
3C158AA06
3C158AA16
3C158AC04
3C158AC05
3C158CA01
3C158CB01
3C158CB06
(57)【要約】
【課題】より的確に波状のスレートの表層を研磨することが可能でありながら、研磨の際に発生する粉塵の飛散を抑制することができるスレートの研磨装置を提供する。
【解決手段】研磨装置は、スレートの表面に対して所定の軸線m10を中心に縦回転することによりスレートの表層を研磨するブラシ部材22と、ブラシ部材22の周囲を囲うように設けられるカバー60と、を備える。ブラシ部材22は、扁平楕円状に形成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スレートの表層を研磨する研磨装置であって、
前記スレートの表面に対して所定の軸線を中心に縦回転することにより前記スレートの表層を研磨するブラシ部材と、
前記ブラシ部材の周囲を囲うように設けられるカバーと、を備え、
前記ブラシ部材は、扁平楕円状に形成されている
スレートの研磨装置。
【請求項2】
前記軸線が延びる方向を軸方向とし、前記軸方向に直交する方向であって前記ブラシ部材が前進及び後進する方向を前後方向とするとき、
前記カバーは、底部に開口部を有する箱状に形成されるとともに、前記開口部から前記ブラシ部材の下方の一部が露出するように前記ブラシ部材を覆っており、
前記前後方向に配置される前記カバーの前壁部の底部及び後壁部の底部には、山状に突出する突出部が形成されており、
前記カバーの前記前壁部の前記突出部は、前記ブラシ部材の下方の一部に対して前方に対向するように配置されており、
前記カバーの前記後壁部の前記突出部は、前記ブラシ部材の下方の一部に対して後方に対向するように配置されている
請求項1に記載のスレートの研磨装置。
【請求項3】
前記スレートの表面に液体を噴射する噴射部を更に備える
請求項1又は2に記載のスレートの研磨装置。
【請求項4】
前記カバーにより囲われた空間の内部から外部に排出される排水を回収する回収装置を更に備える
請求項1~3のいずれか一項に記載のスレートの研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スレートの研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セメント及びアスベスト(石綿)を主材料とするスレートがある。スレートは、粘土瓦と比較して非常に軽く且つ安価であるため、外装材や屋根材として多く使用されている。しかしながら、アスベストの粉塵が発生する環境下で人が長時間滞在する等してアスベストを大量に吸い込むと、肺癌の発生率が上昇するおそれがあることが指摘されている。そのため、スレートを使用している建築物の解体工事や改装工事には非常に厳しい規制が課せられている。このようなスレートを除去することが可能な装置としては、下記の特許文献1に記載のスレート除去装置がある。
【0003】
特許文献1に記載のスレート除去装置は、吸塵機と、フードとを備えている。吸塵機は、建築物の外装材や屋根に固定されたスレートを取り外す際に発生する粉塵を、フィルタを介して吸引する。フードは、吸塵機から延設される吸引ホースの先端部に取り付けられており、スレートの表面に当接している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、屋根にスレートを使用している建築物が老朽化してきている場合には、屋根を張り替えることが望ましいが、その建築物が例えば工場の建屋である場合、屋根の張り替えを行うことが困難な場合がある。具体的には、工場の建屋の屋根を張り替えるとなると、屋根の張り替えを行っている期間、長期間に亘ってその建屋で製品を製造することができなくなるおそれがある。また、屋根を張り替えには多額の資金が必要である。このような事情から、老朽化してきている屋根の張り替えに踏み切れない事業者が多く存在する。
【0006】
そこで、発明者は、スレートの表面に所定の補強剤を塗布することにより屋根を補強して、屋根を延命化する方法を検討している。このような方法でスレートを補強する場合、スレートの表面に補強剤を適切に塗布するためには、スレートの表層を研磨する等して、スレートの表面に堆積している異物等を除去する必要がある。この点、特許文献1に記載のスレート除去装置は、屋根に固定されたスレートを取り外す際に発生する粉塵を吸引することはできるものの、スレートの表層を研磨する機能を有していない。そのため、スレートの表層を研磨することが可能な新たな装置が望まれている。また、スレートの表層を実際に研磨するとなると、研磨の際に発生するスレートの粉塵が周囲に飛散する可能性があるため、それを抑制する対策が必要である。
【0007】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、より的確に波状のスレートの表層を研磨することが可能でありながら、研磨の際に発生する粉塵の飛散を抑制することができるスレートの研磨装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するスレートの研磨装置は、スレートの表層を研磨する研磨装置であって、スレートの表面に対して所定の軸線を中心に縦回転することによりスレートの表層を研磨するブラシ部材と、ブラシ部材の周囲を囲うように設けられるカバーと、を備える。ブラシ部材は、扁平楕円状に形成されている。
【0009】
この構成によれば、ブラシ部材が扁平楕円状に形成されているため、より的確にブラシ部材の外周部を波状のスレートに接触させることができる。そのため、スレートの表面に対してブラシ部材を縦回転させた際に、より適切に波状のスレートの表層を研磨することが可能となる。しかも、ブラシ部材の周囲を囲うように設けられるカバーにより、ブラシ部材がスレートの表層を研磨することにより発生する粉塵の飛散も抑制できる。
【0010】
上記のスレートの研磨装置において、軸線が延びる方向を軸方向とし、軸方向に直交する方向であってブラシ部材が前進及び後進する方向を前後方向とするとき、カバーは、底部に開口部を有する箱状に形成されるとともに、開口部からブラシ部材の下方の一部が露出するようにブラシ部材を覆っており、前後方向に配置されるカバーの前壁部の底部及び後壁部の底部には、山状に突出する突出部が形成されており、カバーの前壁部の突出部は、ブラシ部材の下方の一部に対して前方に対向するように配置されており、カバーの後壁部の突出部は、ブラシ部材の下方の一部に対して後方に対向するように配置されていることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、波状のスレートの谷部にカバーの突出部が配置されることにより、スレートの形状に沿うようにカバーが配置されるようになる。よって、カバー及びスレートにより囲われた空間の内部から外部への粉塵の飛散をより的確に抑制することができる。
上記のスレートの研磨装置において、スレートの表面に液体を噴射する噴射部を更に備えることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、スレートの表層に液体を含ませることができるため、研磨の際に発生する粉塵の飛散をより的確に抑制することができる。
上記のスレートの研磨装置において、カバーにより囲われた空間の内部から外部に排出される排水を回収する回収装置を更に備えることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、粉塵を含む排水が、カバーにより囲われた空間の内部から外部に排出されたような場合であっても、その排水を確実に回収することが可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のスレートの研磨装置によれば、より的確に波状のスレートの表層を研磨することが可能でありながら、研磨の際に発生する粉塵の飛散を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態のスレートの研磨装置の概略構成を模式的に示す図。
【
図2】実施形態のスレートの斜視構造を示す斜視図。
【
図3】(A)は、小波スレートの側面構造を示す側面図。(B)は、大波スレートの側面構造を示す側面図。
【
図4】実施形態の研磨機本体の正面構造を示す正面図。
【
図8】実施形態のスレートの動作例を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、スレートの研磨装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
図1に示されるように、本実施形態のスレートの研磨装置10は、建築物2の屋根材として用いられるスレート3の表層を研磨するための装置である。スレート3は、セメント及びアスベスト(石綿)を主材料とするものであり、
図2に示されるように矢印X1,X2で示される方向に山部3aと谷部3bとを交互に有して波状に形成されている。なお、スレート3には、
図3(A)に示されるように波ピッチP10が大きな値L11に設定された大波スレートや、
図3(B)に示されるように波ピッチP10が小さな値L12に設定された小波スレート等が存在する。その他、スレート3には、波ピッチP10が「L11」及び「L12」の中間の値に設定された中波スレート等も存在する。本実施形態の研磨装置10は、大波スレートの研磨に有効ではあるが、小波スレートや中波スレートの研磨にも用いることが可能である。
【0017】
なお、以下では、スレート3の表面に対して垂直な方向のうち、鉛直方向上方に向かう方向を「上方Z1」と称し、鉛直方向下方に向かう方向を「下方Z2」と称する。また、矢印X1で示される方向を「左方向X1」と称し、矢印X2で示される方向を「右方向X2」と称する。さらに、上方Z1及び下方Z2をまとめて「上下方向Z」とも称し、左方向X1及び右方向X2をまとめて「左右方向X」とも称する。
【0018】
図1に示されるように、研磨装置10は、研磨機本体11と、回収装置12とを備えている。
研磨機本体11はスレート3の表層を実際に研磨する部分である。研磨機本体11は、スレート3の上面に設置された後、作業者により操作される。作業者が研磨機本体11をスレート3の上面に対してスライド移動させることにより、スレート3の表層が研磨機本体11により研磨される。なお、
図1では、作業者がスレート3の上り方向に向かって研磨機本体11を押すように操作している状況が一例として図示されているが、作業者はスレート3の下り方向に向かって研磨機本体11を押すように操作してもよい。研磨機本体11の移動方向は、
図2に示される矢印Y1,Y2で示される方向、すなわちスレート3が波状に形成されている方向X1,X2に直交する方向である。以下では、矢印Y1で示される方向を「前方Y1」と称し、矢印Y2で示される方向を「後方Y2」と称する。また、前方Y1及び後方Y2をまとめて「前後方向Y」とも称する。
【0019】
図4に示されるように、研磨機本体11は、ブラシ20と、フレーム30と、モータ50と、カバー60とを備えている。
フレーム30は、右側縦フレーム31と、左側縦フレーム32と、横フレーム33とを有している。フレーム30はアルミニウム等の金属材料により形成されている。
【0020】
右側縦フレーム31及び左側縦フレーム32は、上下方向Zに延びるように形成されるとともに、左右方向Xに所定の間隔をあけて配置されている。左側縦フレーム32は右側縦フレーム31よりも長く形成されている。横フレーム33は左右方向Xに延びるように形成されている。右側縦フレーム31の上端部は横フレーム33の右端部にボルト等により締結されて固定されている。横フレーム33の左端部は左側縦フレーム32の中間部分付近にボルト等により締結されて固定されている。このような締結構造により、右側縦フレーム31、左側縦フレーム32、及び横フレーム33は一体的に連結されている。
【0021】
横フレーム33の中間部分付近にはハンドル70が一体的に連結されている。ハンドル70は略T字状に形成されており、上下方向Zに延びるように形成される軸部71と、軸部71の上端部に設けられる第1把持部72とを有している。軸部71の上端部は第1把持部72の中間部分に連結されている。第1把持部72は、左右方向Xに延びるように形成されている。軸部71の途中には第2把持部73が更に形成されている。第2把持部73は、軸部71から右方向X2に延びるように形成されている。第1把持部72及び第2把持部73は、作業者が両手でそれぞれ掴むことが可能な部分である。
【0022】
右側縦フレーム31の下端部及び左側縦フレーム32の下端部の間にはブラシ20が回転可能に支持されている。
図5に示されるように、ブラシ20は、回転軸21と、ブラシ部材22とを有している。回転軸21は、左右方向Xに延びるように形成される円柱状の部材からなる。ブラシ部材22は、回転軸21の外周面から径方向外側に向かって延びる複数のブラシ片220により構成されている。ブラシ片220は例えば6,4-ナイロンなどの樹脂材料により形成されている。
図5では、ブラシ片220の一部のみが図示されており、図示が省略されている複数のブラシ片220の外縁が二点鎖線で示されている。なお、
図5以外の図面では、ブラシ片220の外縁、換言すればブラシ部材22の外周部分が実線で示されている。左右方向Xにおけるブラシ部材22の中央部から両端部に向かうほど、ブラシ片220の全長が短くなっている。これにより、ブラシ部材22は全体として扁平楕円状に、換言すればラグビーボール状に形成されている。
【0023】
図4に示されるように、回転軸21の右端部にはフランジ部211及び右軸部212が形成されている。右軸部212は、右側縦フレーム31の下端部に設けられる挿入孔310に挿入されている。挿入孔310にはベアリング311が設けられている。回転軸21の右軸部212はベアリング311により回転可能に支持されている。回転軸21の左端部には同様にフランジ部213及び左軸部214が形成されている。左軸部214は、左側縦フレーム32の下端部に設けられる挿入孔320に挿入されている。挿入孔320にはベアリング321が設けられている。回転軸21の左軸部214はベアリング321により回転可能に支持されている。このような構造により、回転軸21は、左右方向Xに並行な軸線m10を中心に回転可能に支持されている。回転軸21が軸線m10を中心に回転することにより、ブラシ20も軸線m10を中心に回転する。本実施形態では、左右方向Xが、軸線m10が延びる軸方向に相当する。
【0024】
回転軸21の左軸部214の先端部は左側縦フレーム32の下端部を貫通して左側縦フレーム32の左側面から突出するように設けられている。回転軸21の左軸部214はベルト90を介してモータ50と連結されている。
詳しくは、モータ50は左側縦フレーム32の上端部に固定されている。モータ50はコード51を介して図示しない電源に接続されている。モータ50は、電源からコード51を介して供給される電力に基づいて駆動する。モータ50の出力軸52の先端部は左側縦フレーム32の上端部を貫通して左側縦フレーム32の左側面から突出するように設けられている。モータ50の出力軸52の先端部にはプーリ91が設けられている。同様に、回転軸21の左軸部214の先端部にもプーリ92が設けられている。各プーリ91,92にベルト90が巻回されることにより、モータ50の出力軸52がベルト90を介して回転軸21の左軸部214に連結されている。
【0025】
カバー60はブラシ部材22を覆うように設けられている。カバー60は、底部に開口部61を有する箱状に形成されている。
図6に示されるように、カバー60を横方向から見たとき、カバー60は、開口部61からブラシ部材22の下方の一部22aが外部に露出するようにブラシ部材22を覆っている。以下では、カバー60の開口部61から露出するブラシ部材22の下方の一部22aを「露出部22a」と称する。
【0026】
図4及び
図6に示されるように、カバー60において前方Y1に配置される前壁部62の底部には、ブラシ部材22の露出部22aに対して前方Y1に対向するように突出部620が形成されている。同様に、
図6及び
図7に示されるように、カバー60において後方Y2に配置される後壁部63の底部にも、ブラシ部材22の露出部22aに対して後方Y2に対向するように突出部630が形成されている。各突出部620,630は、ブラシ部材22の露出部22aの形状に合わせて山形状に形成されている。
【0027】
図4に示されるように、カバー60の前壁部62の前面には水管100が設けられている。水管100は、カバー60の前壁部62の前面において左右方向Xに延びるように形成されている。水管100の底面には、左右方向Xに所定の間隔をあけて複数の噴射口が形成されている。水管100にはホース101を介して水が供給されている。ホース101の途中には、水管100への水の供給及び供給の停止を作業者が手動で切り替えることが可能なコックバルブ102が設けられている。本実施形態では、水管100が噴射部に相当する。また、水管100から噴射される水が、スレート3の表面に噴射される液体に相当する。
【0028】
図1に示されるように、回収装置12は、回収部121と、回収缶122とを備えている。回収部121はスレート3の下端部に設けられている。回収部121は、屋根の下端部に設けられる樋等であり、断面凹状に形成されている。回収缶122はホース123を介して回収部121に接続されている。回収缶122は、回収部121を流れる液体を所定の吸引力でホース123を通じて吸引するとともに、吸引された液体を貯蔵する。
【0029】
次に、本実施形態の研磨装置10の動作例について説明する。
まず、作業者がスレート3の表面に対して研磨機本体11を例えば
図8に示されるように、すなわちブラシ部材22の露出部22aの外面をスレート3の谷部3bに接触させるように配置する。その後、コックバルブ102を作業者が開操作すると、ホース101を介して水管100に水が供給されて、水管100から、カバー60の前方Y1に位置しているスレート3の所定の範囲に水が噴射される。これにより、スレート3の表層に水を含ませることができるため、ブラシ部材22によりスレート3の表層を研磨した際に発生する粉塵が空気中に飛散することを抑制できる。
【0030】
作業者は、スレート3の表層を実際に研磨する際には、
図4に示されるコード51を電源に接続することによりモータ50に電力を供給する。これによりモータ50が駆動すると、モータ50の出力トルクがベルト90を介して回転軸21に伝達される。これにより、ブラシ20が、回転軸21と一体となって軸線m10を中心に
図6に矢印Cで示される方向に回転する、換言すればスレート3の表面に対して縦回転する。このとき、ブラシ部材22の下端部がスレート3の表面に接触しているため、ブラシ部材22の回転により、スレート3の表面から所定の深さまでの領域に存在する表層が削り取られる。この時に発生する粉塵には、スレート3の表面に付着している異物だけでなく、スレート3の表層の一部、すなわちアスベストが含まれている。
図4及び
図7に示されるように、ブラシ部材22の露出部22aの前方Y1にはカバー60の前壁部62の突出部620が対向し、且つブラシ部材22の露出部22aの後方Y2にはカバー60の後壁部63の突出部630が対向している。そのため、カバー60の内部から外部への粉塵の飛散が抑制されている。
【0031】
研磨機本体11がスレート3の表層を研磨することにより発生する粉塵は、水管100から噴射される水と共にカバー60の下部の空間からカバー60の外部に排出される。この排水はスレート3の谷部3bを通じて回収部121に流れ込むことにより、回収部121において回収される。回収部121において回収された排水はホース123を通じて回収缶122により回収される。
【0032】
作業者はハンドル70を把持しつつ研磨機本体11をスレート3の表面に対して前後方向Yにスライド移動させることにより、スレート3の任意の領域を研磨することができる。本実施形態では、ブラシ部材22が前進する方向が前方Y1であり、且つブラシ部材22が後進する方向が後方Y2である。
【0033】
以上説明した本実施形態の研磨装置10によれば、以下の(1)~(4)に示される作用及び効果を得ることができる。
(1)研磨装置10は、ブラシ部材22の周囲を囲うように設けられるカバー60を備える。スレート3の表面に接触するブラシ部材22は扁平楕円状に形成されている。この構成によれば、より的確にブラシ部材22の外周部を波状のスレート3に接触させることができる。そのため、スレート3の表面に対してブラシ部材22を縦回転させた際に、より適切に波状のスレート3の表層を研磨することが可能となる。しかも、ブラシ部材22の周囲を囲うように設けられるカバー60により、ブラシ部材22がスレート3の表層を研磨することにより発生する粉塵の飛散も抑制できる。
【0034】
(2)カバー60は、底部に開口部61を有する箱状に形成されており、開口部61からブラシ部材22の下方の一部22aが露出するようにブラシ部材22を覆っている。カバー60の前壁部62の底部及び後壁部63の底部には、山状に突出する突出部620,630がそれぞれ形成されている。カバー60の前壁部62の突出部620は、ブラシ部材22の下方の一部22aに対して前方Y1に対向するように配置されている。カバー60の後壁部63の突出部630は、ブラシ部材22の下方の一部22aに対して後方Y2に対向するように配置されている。この構成によれば、波状のスレート3の谷部3bにカバー60の突出部620,630が配置されることにより、スレート3の形状に沿うようにカバー60が配置されるようになる。よって、カバー60及びスレート3により囲われた空間の内部から外部のへの粉塵の飛散をより的確に抑制することができる。
【0035】
(3)研磨装置10は、スレート3の表面に水を噴射する水管100を更に備える。この構成によれば、スレート3の表層に水を含ませることができるため、研磨の際に発生する粉塵の飛散をより的確に抑制することができる。
(4)研磨装置10は、カバー60により囲われた空間の内部から外部に排出される排水を回収する回収装置12を更に備える。この構成によれば、粉塵を含む排水が、カバー60により囲われた空間の内部から外部に排出されたような場合であっても、その排水を確実に回収することが可能となる。
【0036】
なお、上記実施形態は、以下の形態にて実施することもできる。
・上記の実施形態の研磨装置10は、建築物2の屋根材として用いられるスレート3に限らず、建築物2の外壁材として用いられるスレートを研磨する際に用いることも可能である。
【0037】
・本開示は上記の具体例に限定されるものではない。上記の具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素、及びその配置、条件、形状等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0038】
3…スレート、10…研磨装置、12…回収装置、22…ブラシ部材、22a…露出部(ブラシ部材の下方の一部)、60…カバー、61…開口部、62…前壁部、63…後壁部、100…水管(噴射部)、620,630…突出部。