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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045402
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】点群データ処理システム
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/20 20060101AFI20230327BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
E02D17/20 106
E02D17/20 102Z
G01C15/00 104
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153790
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】500063228
【氏名又は名称】田中 成典
(71)【出願人】
【識別番号】502235692
【氏名又は名称】中村 健二
(71)【出願人】
【識別番号】511121768
【氏名又は名称】今井 龍一
(71)【出願人】
【識別番号】519113745
【氏名又は名称】Intelligent Style株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】516119678
【氏名又は名称】株式会社日本インシーク
(71)【出願人】
【識別番号】000230973
【氏名又は名称】日本工営株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】田中 成典
(72)【発明者】
【氏名】中村 健二
(72)【発明者】
【氏名】今井 龍一
(72)【発明者】
【氏名】塚田 義典
(72)【発明者】
【氏名】梅▲原▼ 喜政
(72)【発明者】
【氏名】中原 匡哉
(72)【発明者】
【氏名】平野 順俊
(72)【発明者】
【氏名】川村 義和
(72)【発明者】
【氏名】大月 庄治
(72)【発明者】
【氏名】田中 義朗
(72)【発明者】
【氏名】新間 友祐
(72)【発明者】
【氏名】藤原 鉄朗
【テーマコード(参考)】
2D044
【Fターム(参考)】
2D044DA00
2D044EA07
(57)【要約】
【課題】法面の維持管理をし易くすることができる点群データ処理システムを提供する。
【解決手段】点群データ取得装置10によって取得した点群データTから、道路線形Aを含む矩形B内の点群データを抽出する第一抽出処理(ステップS11)を行う手段と、矩形B内の点群データから、範囲Cの点群データ(道路の点群データ)を除去する除去処理(ステップS12)を行う手段と、除去処理がなされた後の点群データを、道路線形Aを横断する二次元平面に投影する投影処理(ステップS13及びS14)を行う手段と、投影処理がなされた後の点群データから、所定の条件を満たす点群データを法面候補の点群データとして抽出する第二抽出処理(ステップS15)を行う手段と、抽出された法面候補の点群データから、開始点Gを起点とする領域拡張法により、法面の点群データを抽出する第三抽出処理(ステップS16)を行う手段と、を具備する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方法によって取得した点群データから、道路線形を含む第一の領域の点群データを抽出する第一抽出処理を行う第一抽出手段と、
前記第一抽出手段によって抽出された前記第一の領域の点群データから、道路の点群データを除去する除去処理を行う除去手段と、
前記除去手段によって前記除去処理がなされた後の点群データを、前記道路線形を横断する二次元平面に投影する投影処理を行う投影手段と、
前記投影手段によって前記投影処理がなされた後の点群データから、所定の条件を満たす点群データを法面候補の点群データとして抽出する第二抽出処理を行う第二抽出手段と、
前記第二抽出手段によって抽出された法面候補の点群データから、当該法面候補の点群データの略中央の点を起点とする領域拡張法により、法面の点群データを抽出する第三抽出処理を行う第三抽出手段と、
を具備する点群データ処理システム。
【請求項2】
前記二次元平面に投影された点群データを複数の点群データに分割する分割手段を具備し、
前記第二抽出手段は、
前記所定の条件として、前記分割手段によって分割された各前記点群データのうち、前記点群データの法線ベクトルの角度が所定の範囲内に収まっている前記点群データを、法面候補の点群データとして抽出する、
請求項1に記載の点群データ処理システム。
【請求項3】
前記第二抽出手段は、
前記所定の条件として、前記点群データの法線ベクトルの角度が所定の範囲内に収まっている前記点群データのうち、前記点群データの高さが一定値以上である前記点群データを、法面候補の点群データとして抽出する、
請求項2に記載の点群データ処理システム。
【請求項4】
前記第二抽出手段は、
前記所定の条件を満たす前記点群データが複数存在する場合、複数の前記点群データのうち、前記道路線形に近い前記点群データを、法面候補の点群データとして抽出する、
請求項2又は請求項3に記載の点群データ処理システム。
【請求項5】
前記第三抽出手段は、
前記領域拡張法によって抽出された点群データの領域が所定の値より小さい場合、当該領域内の点群データを前記法面の点群データから除外する、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の点群データ処理システム。
【請求項6】
前記第三抽出手段によって抽出された点群データを含む3次元空間を複数のグリッドで区切り、内部に点群データが存在する前記グリッドのうち隣接する前記グリッドを連結することで、連結した前記グリッド内の点群データを、一つの法面の点群データとする連結手段を具備する、
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の点群データ処理システム。
【請求項7】
法面の点群データの上方に位置する点群データを、植生の点群データとして抽出する植生抽出手段を具備する、
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の点群データ処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取得された点群データを処理する点群データ処理システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラやレーザの技術革新により、地物表面の形状を把握する計測手段が多様化している。点群データの取得方法は、レーザ計測による方法と写真測量による方法の2パターンに大別することができ、レーザ計測による方法としては、航空LP(航空機又はUAV搭載型レーザプロファイリングシステム)、MMS(モバイルマッピングシステム:Mobile Mapping System)等の方法を挙げることができる。
【0003】
特許文献1には、車両に搭載したレーザスキャナを用い、道路に沿った地物の形状を表す点群データを取得するMMSの技術が示されている。このように点群データを取得することにより、当該点群データを用いて、道路及び道路周辺の地物の維持管理に役立てることができる。
【0004】
このような維持管理が必要な地物として、道路に隣接する法面がある。法面は、道路に隣接し、切土・盛土することにより、人工的につくられた斜面である。また、法面のうち、岩盤の風化や侵食を抑えることを目的に、モルタル・コンクリートを吹き付け保護されたものを吹付法面という。昨今、自然災害や老朽化により、法面(特に吹付法面)の剥離・剥落及び崩落が発生するなどの問題が生じている。このため、法面の点群データを解析して評価することにより、当該法面の維持管理を行うことが求められている。
【0005】
しかしながら、MMS等で取得した点群データには、法面の点群データだけでなく、法面以外の部分の点群データも含まれている。このため、取得した点群データ全体から、法面の点群データを探し出すのが容易ではなく、ひいては点群データを用いて法面の維持管理を行うのが容易ではないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-204615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、法面の維持管理をし易くすることができる点群データ処理システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、所定の方法によって取得した点群データから、道路線形を含む第一の領域の点群データを抽出する第一抽出処理を行う第一抽出手段と、前記第一抽出手段によって抽出された前記第一の領域の点群データから、道路の点群データを除去する除去処理を行う除去手段と、前記除去手段によって前記除去処理がなされた後の点群データを、前記道路線形を横断する二次元平面に投影する投影処理を行う投影手段と、前記投影手段によって前記投影処理がなされた後の点群データから、所定の条件を満たす点群データを法面候補の点群データとして抽出する第二抽出処理を行う第二抽出手段と、前記第二抽出手段によって抽出された法面候補の点群データから、当該法面候補の点群データの略中央の点を起点とする領域拡張法により、法面の点群データを抽出する第三抽出処理を行う第三抽出手段と、を具備するものである。
【0010】
請求項2においては、前記二次元平面に投影された点群データを複数の点群データに分割する分割手段を具備し、前記第二抽出手段は、前記所定の条件として、前記分割手段によって分割された各前記点群データのうち、前記点群データの法線ベクトルの角度が所定の範囲内に収まっている前記点群データを、法面候補の点群データとして抽出するものである。
【0011】
請求項3においては、前記第二抽出手段は、前記所定の条件として、前記点群データの法線ベクトルの角度が所定の範囲内に収まっている前記点群データのうち、前記点群データの高さが一定値以上である前記点群データを、法面候補の点群データとして抽出するものである。
【0012】
請求項4においては、前記第二抽出手段は、前記所定の条件を満たす前記点群データが複数存在する場合、複数の前記点群データのうち、前記道路線形に近い前記点群データを、法面候補の点群データとして抽出するものである。
【0013】
請求項5においては、前記第三抽出手段は、前記領域拡張法によって抽出された点群データの領域が所定の値より小さい場合、当該領域内の点群データを前記法面の点群データから除外するものである。
【0014】
請求項6においては、前記第三抽出手段によって抽出された点群データを含む3次元空間を複数のグリッドで区切り、内部に点群データが存在する前記グリッドのうち隣接する前記グリッドを連結することで、連結した前記グリッド内の点群データを、一つの法面の点群データとする連結手段を具備するものである。
【0015】
請求項7においては、法面の点群データの上方に位置する点群データを、植生の点群データとして抽出する植生抽出手段を具備するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
請求項1においては、法面の点群データのみを抽出することで、法面の評価を行い易くなり、ひいては法面の維持管理をし易くすることができる。
【0018】
請求項2においては、法面候補の点群データを精度良く抽出することができる。
【0019】
請求項3においては、法面候補の点群データをより精度良く抽出することができる。
【0020】
請求項4においては、法面候補の点群データをより精度良く抽出することができる。
【0021】
請求項5においては、植生が法面と誤って識別されるのを抑制することができる。
【0022】
請求項6においては、法面の抽出精度を高めることができる。
【0023】
請求項7においては、植生が繁茂している法面に対しても、法面領域や繁茂率を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る点群データ処理システムの構成を示したブロック図。
図2】法面の点群データの抽出方法を示したフローチャート。
図3】(a)道路線形を用いた範囲フィルタリングの概要を示した図。(b)フィルタリングの範囲を示した模式図。
図4】地盤点(道路表面を構成する点群データ等)の除去の概要を示した図。
図5】横断測線の生成の概要を示した図。
図6】横断図の生成の概要を示した図。
図7】横断図上の法面候補の抽出の概要を示した図。
図8】領域拡張による法面の抽出の概要を示した図。
図9】ラベリングの概要を示した図。
図10】法面上の植生の抽出の概要を示した図。
図11】法面の評価のための抽出方法を示したフローチャート。
図12】ステップS21の概要を示した図。
図13】ステップS22の概要を示した図。
図14】法面の評価のための指標を示した図。
図15】法面の形状による分類の概要を示した図。
図16】法面の形状による分類の概要を示した図。
図17】斜面型のパターンを示す説明図。
図18】吹付法面の劣化と植生の関係を示した図。
図19】法面領域及び植生領域を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一実施形態に係る点群データ処理システム20は、種々の方法によって取得された点群データの処理を行うものである。具体的には、点群データ処理システム20は、取得された点群データを解析することにより、対象範囲の法面を抽出し、管理すべき法面の数量、対象法面の規模、形状を把握することで、今後の点検計画や補修計画の策定に役立てることができる。さらに、点群データ処理システム20は、点群データから法面(道路法面)の健全度を評価することができる。ここで、「健全度」とは、構造物(法面)の機能に支障が生じているか否か、又は生じている支障の度合いを示すものである。また、点群データ処理システム20は、2時期の点群データ同士を比較することによる変状の把握や、倒壊量や被災規模の算出等に利用するために、災害時と平時の差分抽出を行うことができる。
【0026】
また、点群データ処理システム20は、法面の健全度を評価するために、取得された点群データから、法面の領域における点群データを抽出するものである。本実施形態においては、点群データ取得装置10によって取得された点群データから、法面の領域における点群データを抽出し、抽出した点群データに基づいて法面の健全度を評価する。
【0027】
以下では、点群データ処理システム20の説明の前に、点群データ取得装置10について簡単に説明する。
【0028】
点群データ取得装置10は、点群データを取得するものである。点群データ取得装置10は、任意の方法で点群データを取得することができる。本実施形態においては、点群データ取得装置10の1手法としてMMSがある。点群データ取得装置10(MMS)は、道路に沿って車両を走行させることにより道路線形A(図3等参照)を取得するとともに、車両に搭載したレーザスキャナによって、地物の形状を表す点群データを取得する。道路線形Aを取得する方法は任意の方法とすることができ、車両の走行軌跡を示す点列(GPS履歴)に基づいて取得してもよく、又は地図情報から取得してもよい。或いは、道路線形Aは、レーザスキャナによって取得された道路の白線(中心線)に基づいて取得してもよく、又は手動で指定してもよい。本実施形態においては、道路線形Aは、車両の走行軌跡を示す点列に基づいて取得される(すなわち、当該点列によって構成される)ものとする。以下では、道路線形Aを構成する各点を構成点aと称する。このほかの点群データ取得装置10としては航空レーザープロファイラーやハンディ型レーザスキャナなどがあり、以下に示す点群データの利活用においては、これらの複数の手法の点群データ取得装置で取得した点群データを組み合わせて利活用してもよい。
【0029】
こうして、点群データ取得装置10によって取得された点群データを利活用することにより、法面の維持管理を行うことができる。以下、具体的に説明する。
【0030】
点群データ取得装置10によって取得された点群データには、法面の点群データが含まれる。
【0031】
ここで、点群データ取得装置10によって取得された点群データには、法面の維持管理に必要な点群データだけでなく、法面の維持管理に不要な点群データも含まれている。このため、点群データ取得装置10によって取得された点群データのままでは、法面の点群データを解析して評価するのが難しいという問題があった。
【0032】
そこで、本実施形態において、点群データ処理システム20は、点群データ取得装置10によって取得された点群データから、法面の点群データを抽出する。以下、点群データ処理システム20について説明する。
【0033】
本発明の一実施形態に係る点群データ処理システム20は、点群データ取得装置10によって取得された点群データの処理を行うものである。具体的には、点群データ処理システム20は、法面の点群データを抽出し、抽出した法面の点群データに基づいて法面の健全度の評価を行うものである。また、点群データ処理システム20は、必要に応じて植生の点群データを抽出し、抽出した植生の点群データに基づいて法面の健全度の評価を行うことができる。点群データ処理システム20は、データ格納部21、抽出処理部22及び健全度評価部23を具備する。
【0034】
図1に示すデータ格納部21は、種々のデータを格納するものである。データ格納部21は、点群データ取得装置10によって取得された点群データを格納することができる。
【0035】
図1に示す抽出処理部22は、点群データ取得装置10によって取得された点群データから、法面の点群データを抽出するものである。抽出処理部22は、図2に示すフローチャートに示す方法により、法面の点群データの抽出を行う。
【0036】
まず、ステップS11において、抽出処理部22は、道路線形Aを用いた範囲フィルタリングを行う。以下、図3を参照して説明する。
【0037】
図3は、点群データ取得装置10によって取得された点群データTの一部を示す平面図である。抽出処理部22は、点群データ取得装置10によって取得された点群データTと道路線形Aとを重畳する(図3(a)参照)。次に、抽出処理部22は、道路線形Aに沿って、バッファ幅を有する矩形Bを生成する(図3(a)、(b)参照)。そして、抽出処理部22は、矩形B内に含まれる点群データを抽出する。このように、抽出処理部22は、道路線形Aの周辺の点群データのみを抽出することで、法面の維持管理と関係のない範囲の点群データを除去する。
【0038】
次に、ステップS12において、抽出処理部22は、地盤点(道路表面を構成する点群データ等)の除去を行う。以下、図4を参照して説明する。
【0039】
図4は、図3の一部拡大平面図である。抽出処理部22は、領域拡張法により、ステップS11で抽出した点群データ(矩形B内の点群データ)から地盤点を除去する。より詳細には、抽出処理部22は、道路線形Aの複数の構成点aのいずれかを開始点として徐々に範囲を広げていき、点の向きが上向きから横向きに変わる直前のところまでを道路とみなし、この道路とみなした範囲C内(図4に示すハッチング部)の点群データを除去する。点の向きの上向きと横向きの境目となる角度は、任意の角度に設定することができる。また、各点の向きは、当該点の近傍の複数の点を用いて生成された平面の法線ベクトルにより決定される。
【0040】
次に、ステップS13において、抽出処理部22は、横断測線の生成を行う。以下、図5を参照して説明する。
【0041】
図5は、道路線形A等を示す概略平面図である。抽出処理部22は、測線生成位置を設定する。点群データ取得装置10(MMS)では、一定時間間隔で道路線形Aの構成点a(例えば図5に示すa1~a3)を取得する。このため、道路線形Aの構成点aの点間隔(a1とa2との間隔、a2とa3との間隔)は、車両の走行速度に依存し、ばらつきがある。このため、抽出処理部22は、一定間隔(例えば20cm)で点を補完することで、測線生成位置を設定する。そして、抽出処理部22は、設定した測線生成位置において、道路線形Aに対して垂直な横断測線Dを生成する。
【0042】
次に、ステップS14において、抽出処理部22は、横断図の生成を行う。以下、図6を参照して説明する。
【0043】
図6は、道路線形A等を示す概略平面図である。抽出処理部22は、横断測線Dに一定のバッファ幅をもたせた矩形E内の点群データを抽出する。そして、抽出処理部22は、抽出した点群データを、横断測線Dに沿って道路線形Aを横断する横断面(2次元平面)に投影させる。
【0044】
次に、ステップS15において、抽出処理部22は、横断図上の法面候補の抽出を行う。以下、図7を参照して説明する。
【0045】
図7は、ステップS14において横断面に投影された点群データを示した側面図である。抽出処理部22は、ステップS14で横断面に投影した点群データについて、道路線形Aの左右の点群データを抽出する。そして、抽出処理部22は、ユークリッド距離に基づいたラベリングにより点群データを集合化し、複数のラベル(点の集合)を生成する。具体的には、あるラベルに含まれる任意の点は、そのラベルに含まれる少なくとも1つの他の点と、ユークリッド距離に基づいたラベリングに関する条件を満たすようにする。そして、抽出処理部22は、全体(各点)の法線ベクトルの角度が一定値(30~80度)の範囲内にあるラベルを法面候補として抽出する。また、抽出処理部22は、全体の法線ベクトルの角度が一定値(30~80度)の範囲内にあり、かつ、ラベルの高さh1が一定値以上であるラベルを法面候補として抽出するようにしてもよい。
【0046】
図7に示す例においては、抽出処理部22は、ラベルFを法面候補として抽出する。なお、道路線形Aの左右ごとに複数の法面候補がある場合(上記条件を満たす法面候補が複数ある場合)、抽出処理部22は、道路線形Aの左右それぞれにおいて道路線形Aから最も近いラベルを採用する。
【0047】
次に、ステップS16において、抽出処理部22は、領域拡張による法面の抽出を行う。以下、図8を参照して説明する。
【0048】
図8は、ラベルF等を示す平面図である。抽出処理部22は、ステップS15で抽出した法面候補(ラベルF)の略中央の点を開始点Gとして徐々に範囲を広げていき、点の向き(法線ベクトル)が変わる直前のところまでを法面とみなし、この範囲H内の点群データを、法面の点群データIとして抽出する。なお、抽出処理部22は、抽出結果(範囲Hの面積)が一定値より小さい場合はノイズとして法面の点群データIから除外する。例えば開始点Gとして植生等を選択していた場合は、抽出結果(範囲Hの面積)が一定値より小さくなるため、法面として抽出されることはない。
【0049】
次に、ステップS17において、抽出処理部22は、ラベリングを行う。以下、図9を参照して説明する。
【0050】
図9は、ラベリングの方法を示す模式図である。抽出処理部22は、一定サイズのグリッドを用いて、ステップS16で抽出した法面の点群データを分割する。より詳細には、抽出処理部22は、まず、ラベルFの存在空間を含む3次元空間をグリッド分割する。そして、抽出処理部22は、当該3次元空間のグリッドのうち、点群データを含むグリッドをチェックする。そして、抽出処理部22は、チェックしたグリッドのうち隣接するグリッドを探索し、隣接グリッド同士を連結する。これにより、抽出処理部22は、法面の点群データIをブロックごとに分割する。
【0051】
次に、ステップS18において、抽出処理部22は、法面上の植生の抽出を行う。以下、図10を参照して説明する。
【0052】
図10は、ステップS17の処理後の点群データを示す側面断面図である。抽出処理部22は、ステップS17で抽出した法面の点群データの上方にある点群データを全て抽出することで、植生の点群データJを抽出する。
【0053】
このようにして、点群データ取得装置10によって取得された点群データから、法面の点群データを抽出することができる。これにより、法面の評価をし易くすることができる。
【0054】
なお、点群データ処理システム20においては、まず道路線形Aの周辺の点群データのみを抽出し(ステップS11)、さらに道路表面を構成する点群データ(地盤点)を除去する(ステップS12)。このようにすることで、法面の範囲を把握し易くすることができる。
【0055】
また、点群データ処理システム20においては、横断図を生成することにより法面候補の点群データの抽出を行い(ステップS13からS15)、さらに領域拡張法により法面の点群データの抽出を行うことにより(ステップS16)、道路線形Aに沿う全域に亘って法面の点群データを抽出することができる。なお、当該法面が道路面からみて山側、谷側にいずれに位置するかも区分することができる。
【0056】
また、植生の繁茂率が高い法面では、ステップS16の処理(領域拡張による法面の抽出)だけでは、一つの法面を複数の法面として誤認識する可能性がある。そこで、ステップS17において、一定の大きさのグリッドを用いて連続性を判別することで、繁茂率が高い法面であっても一つの法面として識別することができる。そして、ステップS18の処理を行うことで、植生が繁茂している法面に対しても、法面領域や繁茂率を算出することができる。
【0057】
このようにして抽出した法面及び植生の点群データは、健全度評価部23によって解析及び評価される。
【0058】
図1に示す健全度評価部23は、点群データ処理システム20によって抽出された法面の点群データの健全度を評価するものである。ここで、「健全度」とは、前述の如く、構造物の機能に支障が生じているか否か、又は生じている支障の度合いを示すものである。
【0059】
ここで、法面が劣化すると、法面にクラックが生じる場合がある。この場合、法面の点群データと画像データ等の他のデータとを合わせて解析することによって、法面のクラックを検出することが可能となる。
【0060】
しかしながら、点群データ取得装置10(MMS)で取得した点群データは、法面上のクラックを検出できるほどの精度を有していない。このため、点群データのみを用いて、クラックを検出するのは容易ではない。
【0061】
そこで、健全度評価部23は、以下に示す方法により、法面の健全度を評価する。健全度評価部23は、まず、図11に示すフローチャートに示す方法により、法面の健全度を評価するための点群データの処理を行う。
【0062】
まず、ステップS21において、健全度評価部23は、道路線形Aに沿って一定間隔で平面を生成する。以下、図12を参照して説明する。
【0063】
図12は、点群データI等を示した斜視図である。健全度評価部23は、道路線形Aに沿って、道路線形Aを横断する平面c1~c5を一定間隔で生成する。
【0064】
次に、ステップS22において、健全度評価部23は、平面と法面との交点から法肩と法尻を判定する。以下、図13を参照する。
【0065】
図13は、点群データI等を示した斜視図である。健全度評価部23は、平面c1~c5と法面の点群データIとの交点から、法面の最高点である法肩m1~m5と、法面の最低点である法尻n1~n5とを判定する。
【0066】
次に、ステップS23において、健全度評価部23は、植生を含む横断図を生成する。
【0067】
具体的には、健全度評価部23は、図13に示す平面c1~c5ごとにバッファ幅を指定して、法面の点群データと植生の点群データとを含む横断図を生成する。
【0068】
このようにして、健全度評価部23は、図2に示す方法で生成した点群データにおいて、法面の点群データ、植生の点群データ、法面の法肩m及び法尻nを識別する。また、健全度評価部23は、植生の点群データJのうち、法面の吹付面から繁茂している植生J1と、法面の吹付面以外(例えば法肩mよりも上方)から繁茂している植生J2とを識別する(図19参照)。健全度評価部23は、これらのデータを用いて、法面の健全度を評価する。法面の健全度は、所定の指標に基づいて評価される。
【0069】
法面の健全度を評価するための指標は任意に設定可能であるが、本実施形態においては、法面の健全度を評価するための指標には、法面の形状による分類、道路との関連に関する情報、吹付面から繁茂している植生に関する情報、法面上部の(法肩mよりも上方から繁茂している)植生に関する情報、という4つの項目が含まれるものとする(図14参照)。そして、各項目には複数のパラメータが含まれる。
【0070】
[法面の形状による分類]
法面の剥離・剥落及び崩落が生じると、法面の形状が変化する。このため、健全度評価部23は、図14に示す「法面の形状による分類」を指標として、法面の健全度を評価する。
【0071】
図14に示すように、「法面の形状による分類」の項目には、平均勾配、法面の高さ、法面の延長、法面の面積、法面の向き、最大法面勾配、法面垂直断面の算出平均粗さ、法面の全体形状区分が含まれる。
【0072】
「平均勾配」は、法肩mと法尻nとを結ぶ直線(横断基準線L)と水平面とのなす角度θ(図15参照)の平均値であり、横断基準線L毎に角度θを算出し、その平均値を出力することで算出される。
【0073】
「法面の高さ」は、法面の点群データの高さである。法面の高さは、法肩mと法尻nの標高値の差h2を出力することにより算出される(図15参照)。
【0074】
「法面の延長」は、道路線形Aに沿って延長される法面の長さである。法面の延長は、横断基準線間の法尻nの距離P1の総和、横断基準線間の法肩mの距離P2の総和を算出し(図16参照)、距離P1の総和と距離P2の総和の平均を出力することにより算出される。
【0075】
「法面の面積」は、法面の点群データの表面積である。法面の面積を算出するには、まず横断基準線L上に一定間隔で点を生成し、近傍の点群を取得する。そして、その点に基づきTIN(ドロネー三角形分割)を生成し、表面積の総和を出力することにより算出される。
【0076】
「法面の向き」は、法面の法線ベクトルである。法面の向きは、横断基準線L毎に、横断基準線Lの垂線として1つのベクトルとして算出される。または、法面の向きは、TIN毎に算出されてもよい。
【0077】
「最大法面勾配」は、横断基準線Lと水平面とのなす角度θ(図15参照)の最大値であり、横断基準線L毎に角度θを算出し、その最大値を出力することで算出される。
【0078】
「法面垂直断面の算術平均粗さ」は、法面の凹凸の度合いを示すものである。法面垂直断面の算術平均粗さは、隣接する二つの横断基準線Lで平面を算出し、その平面と法面の点群データの各点との直線距離の二乗平均平方根(RMS)を出力することにより、算出される。または、法面垂直断面の算術平均粗さは、TIN毎に算出されてもよい。
【0079】
「法面の全体形状区分」は、法面の全体形状を区分したものである。法面の全体形状区分を算出するには、横断基準線Lの標高値に対して、一定間隔で面を生成し、等高線(を構成する点)を抽出する。そして、等高線の間隔や広がりに応じて、例えば文献(鈴木隆介著、建設技術者のための地形図読図入門 第1巻 読図の基礎、古今書院、p.122、1997)に記載された、図17に示す9パターンの斜面型のうち、いずれに該当するかを判定する。
【0080】
[道路との関連に関する情報]
また、法面の剥離・剥落及び崩落が生じると、法面側の路肩・歩道部や道路に土砂が堆積することで、当該路肩・歩道部及び道路の幅員が変化する。このため、健全度評価部23は、「道路との関連に関する情報」を指標として、法面の健全度を評価する。
【0081】
「道路との関連に関する情報」の項目には、法面側の路肩又は歩道部の幅、道路幅が含まれる。
【0082】
「法面側の路肩又は歩道部の幅」は、法面の法尻nと隣接する路肩及び歩道部の横幅を示すものである。法面側の路肩又は歩道部の幅を算出するには、領域データ(ステップS11で抽出した点群データ)を用いて点群データから路肩または歩道部を抽出する。そして、法尻n付近の路肩又は歩道部の点群データから幅を算出する。
【0083】
「道路幅」は、法面の法尻nと隣接する車道部の横幅を示すものである。道路幅を算出するには、領域データ(ステップS11で抽出した点群データ)を用いて点群データから車道部を抽出する。そして、法尻n付近の車道部の点群データから幅を算出する。
【0084】
[吹付面から繁茂している植生に関する情報]
図18は、吹付法面の劣化と植生の関係を示している。法面の表面(吹付モルタル表面)のひび割れが発生すると、このひび割れから植生が繁茂する。そして、植生の生長により、ひび割れが拡大する。さらに植生が生長すると、背面地盤の土砂化が生じる。そして、強風で植生が揺さぶられると、ひび割れ及び土砂化がさらに拡大する。背面地盤に地表水及び地下水が流入すると、法面全体が不安定化する。そうすると、法面の崩壊や倒木が起こり、道路通行上の支障が起こり得る。
【0085】
このように、植生の繁茂(生長)が進行するにつれて、吹付法面の劣化も進行する可能性がある。このため、健全度評価部23は、「吹付面から繁茂している植生に関する情報」を指標として、法面を評価する。
【0086】
「吹付面から繁茂している植生に関す情報」の項目には、植生被覆率(繁茂率)、法面に対する植生の高さが含まれる。
【0087】
「植生被覆率(繁茂率)」は、法面に対する植生の被覆率を示すものである。植生被覆率を算出するには、まず、法面の点群データの領域(法面領域Q1)、及び吹付面から繁茂している植生J1の点群データの領域(植生領域Q2)を算出する(図19参照)。植生領域Q2は、TIN平面に植生J1の構成点を投影し、投影された構成点の外形線を抽出することにより算出される。法面領域Q1の表面積と植生領域Q2の表面積の割合から植生被覆率(法面領域の表面積に対する植生領域の表面積)を算出する。
【0088】
「法面に対する植生の高さ」は、法面に対する植生の法面垂直方向の高さを示すものである。法面に対する植生の高さを算出するには、隣接する横断基準線Lの法肩m及び法尻nの4点で平面を生成する。そして、植生J1の点群データを当該平面に投影し、その投影距離を算出する。そして、植生の点群データの各点の投影距離の最小値及び最大値、又は平均値を、「法面に対する植生の高さ」として算出する。
【0089】
[法面上部の植生に関する情報]
また、法面上部の(法肩mよりも上方から繁茂している)植生があると、当該植生が強風で揺さぶられることにより、法面に負担がかかり法面の劣化につながるおそれがある。また、法面上部の植生が生長することにより倒木のリスクも大きくなる。このため、健全度評価部23は、「法面上部の植生に関する情報」を指標として、法面を評価する。
【0090】
「法面上部の植生に関する情報」の項目には、法肩の植生の高さ、法肩から植生がせり出している長さが含まれる。
【0091】
「法肩の植生の高さ」は、法肩m付近に位置する、法面上部の植生J2の点の標高値を示すものである(図19参照)。
【0092】
「法肩から植生がせり出している長さ」は、法肩mから植生J2がせり出している横方向の長さを示すものである(図19参照)。法肩から植生がせり出している長さは、法肩mから植生の先端までの長さ(法面に対して突出する長さ)を出力することにより、算出される。
【0093】
このようにして、法面及び植生の点群データを、図14に示す指標に基づいて解析・評価することで、法面の健全度を適切に評価することができる。より詳細には、指標(パラメータ)ごとに健全(正常)と判断される数値範囲が定められており、算出された数値が当該数値範囲内に収まっているか否かによって、法面の健全度を評価することができる。このため、実際に現地に赴かなくても、法面の健全度を評価することができる。
【0094】
また、法面のクラックの発生を検出できない場合であっても、植生の繁茂率等を評価することにより、クラックの有無を推定することができる。また、植生の繁茂率が一定の割合以上のものは、法面ではなく,自然斜面である可能性が高い。このため、算出された植生の繁茂率に基づいて、抽出した点群データが、法面等の道路構造物か、或いは自然斜面等の自然物であるか否かを識別することが可能である。
【0095】
なお、図14に示す指標のパラメータは、いずれか一つを用いて評価を行ってもよいが、複数のパラメータを組み合わせて評価を行うことにより、健全度の評価の精度が向上する。
【0096】
以上の如く、本実施形態に係る点群データ処理システム20は、
点群データ取得装置10(所定の方法)によって取得した点群データTから、道路線形Aを含む矩形B内(第一の領域)の点群データを抽出する第一抽出処理(図2に示すステップS11)を行う第一抽出手段(抽出処理部22)と、
前記第一抽出手段によって抽出された前記矩形B内の点群データから、範囲Cの点群データ(道路の点群データ)を除去する除去処理(図2に示すステップS12)を行う除去手段(抽出処理部22)と、
前記除去手段によって前記除去処理がなされた後の点群データを、前記道路線形Aを横断する二次元平面に投影する投影処理(図2に示すステップS13及びS14)を行う投影手段(抽出処理部22)と、
前記投影手段によって前記投影処理がなされた後の点群データから、所定の条件を満たす点群データを法面候補の点群データとして抽出する第二抽出処理(図2に示すステップS15)を行う第二抽出手段(抽出処理部22)と、
前記第二抽出手段によって抽出された法面候補の点群データから、開始点G(当該法面候補の点群データの略中央の点)を起点とする領域拡張法により、法面の点群データを抽出する第三抽出処理(図2に示すステップS16)を行う第三抽出手段(抽出処理部22)と、
を具備するものである。
【0097】
このように構成することにより、法面の点群データのみを抽出することで、法面の評価を行い易くなり、ひいては法面の維持管理をし易くすることができる。
【0098】
また、本実施形態に係る点群データ処理システム20は、
前記二次元平面に投影された点群データを複数の点群データに分割する分割手段(抽出処理部22)を具備し、
前記第二抽出手段は、
前記所定の条件として、前記分割手段によって分割された各前記点群データのうち、前記点群データの法線ベクトルの角度が所定の範囲(例えば30~80度)内に収まっている前記点群データを、法面候補の点群データとして抽出する(図2に示すステップS15)ものである。
【0099】
このように構成することにより、法面候補の点群データを精度良く抽出することができる。
【0100】
また、前記第二抽出手段は、
前記所定の条件として、前記点群データの法線ベクトルの角度が所定の範囲内に収まっている前記点群データのうち、前記点群データの高さが一定値以上である前記点群データを、法面候補の点群データとして抽出する(図2に示すステップS15)ものである。
【0101】
このように構成することにより、法面候補の点群データをより精度良く抽出することができる。
【0102】
また、前記第二抽出手段は、
前記所定の条件を満たす前記点群データが複数存在する場合、複数の前記点群データのうち、前記道路線形Aに近い前記点群データを、法面候補の点群データとして抽出する(図2に示すステップS15)ものである。
【0103】
このように構成することにより、法面候補の点群データをより精度良く抽出することができる。
【0104】
また、前記第三抽出手段は、
前記領域拡張法によって抽出された点群データの領域が所定の値より小さい場合、当該領域内の点群データを前記法面の点群データから除外する(図2に示すステップS16)ものである。
【0105】
このように構成することにより、植生が法面と誤って識別されるのを抑制することができる。
【0106】
また、本実施形態に係る点群データ処理システム20は、
前記第三抽出手段によって抽出された点群データを含む3次元空間を複数のグリッドで区切り、内部に点群データが存在する前記グリッドのうち隣接する前記グリッドを連結することで、連結した前記グリッド内の点群データを、一つの法面の点群データとする(図2に示すステップS17)連結手段(抽出処理部22)を具備するものである。
【0107】
このように構成することにより、法面の抽出精度を高めることができる。具体的には、植生の繁茂率が高い法面であっても、複数の法面と誤って識別することなく、一つの法面として識別することができる。
【0108】
また、本実施形態に係る点群データ処理システム20は、
法面の点群データの上方に位置する点群データを、植生の点群データとして抽出する(図2に示すステップS18)植生抽出手段(抽出処理部22)を具備するものである。
【0109】
このように構成することにより、植生が繁茂している法面に対しても、法面領域や繁茂率を算出することができる。
【0110】
また、本実施形態に係る点群データ処理システム20は、
点群データ取得装置10(所定の方法)によって取得した点群データTから、法面の領域を含む点群データを抽出する抽出処理を行う抽出手段(抽出処理部22)と、
前記抽出手段によって抽出された前記点群データを活用し、法面に関する所定の指標に基づいて、法面の健全度を評価する健全度評価部23(評価手段)と、
を具備するものである。
【0111】
このように構成することにより、法面の健全度を適切に評価することができる。
【0112】
また、前記指標には、
法面の形状に関する情報が含まれるものである。
【0113】
このように構成することにより、法面の健全度をより適切に評価することができる。
【0114】
また、前記法面の形状に関する情報には、
前記法面の平均勾配、前記法面の高さ、前記法面の延長長さ、前記法面の表面積、又は前記法面の最大勾配のうち、少なくとも一つが含まれるものである。
【0115】
このように構成することにより、法面の健全度をより適切に評価することができる。
【0116】
また、前記指標には、
前記法面と道路との関連に関する情報が含まれるものである。
【0117】
このように構成することにより、法面の健全度をより適切に評価することができる。
【0118】
また、前記法面と道路との関連に関する情報には、
前記法面側の路肩若しくは歩道部の幅、又は道路幅のうち、少なくとも一つが含まれるものである。
【0119】
このように構成することにより、法面の健全度をより適切に評価することができる。
【0120】
また、前記抽出手段(抽出処理部22)によって抽出された前記点群データには、植生の点群データが含まれ、
前記指標には、
前記法面の吹付面から繁茂している植生J1に関する情報が含まれるものである。
【0121】
このように構成することにより、法面の健全度をより適切に評価することができる。
【0122】
また、前記法面の吹付面から繁茂している植生J1に関する情報には、
当該植生J1の繁茂率、又は法面に対する当該植生J1の高さのうち、少なくとも一つが含まれるものである。
【0123】
このように構成することにより、法面の健全度をより適切に評価することができる。
【0124】
また、前記抽出手段(抽出処理部22)によって抽出された前記点群データには、植生の点群データが含まれ、
前記指標には、
前記法面の吹付面以外から繁茂している植生J2に関する情報が含まれるものである。
【0125】
このように構成することにより、法面の健全度をより適切に評価することができる。
【0126】
また、前記法面の吹付面以外から繁茂している植生J2に関する情報には、
法肩の当該植生J2の高さ、又は当該植生J2の法肩mからのせり出し長さのうち、少なくとも一つが含まれるものである。
【0127】
このように構成することにより、法面の健全度をより適切に評価することができる。
【0128】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0129】
例えば、本実施形態においては、点群データ取得装置10はMMSであるもの(すなわち、点群データ処理システム20は、MMSによって取得された点群データを処理するもの)としたが、点群データの取得方法はこれに限定されず任意とすることができる。点群データ取得装置10は、例えば、路面性状計測システム(LCMS)、航空LP(航空機又はUAV搭載型レーザプロファイリングシステム)、ハンディレーザースキャナ、ウェアラブルレーザースキャナ、地上レーザースキャナ、又は写真ベースモバイルマッピングシステムとすることができる。中でも、航空LPの場合はグラウンドデータとオリジナルデータを利用してさらに高精度に法面を抽出できる。
【0130】
また、本実施形態においては、図14に示すパラメータの出力数値が予め定められた数値範囲内に収まっているか否かによって、法面の健全度を評価するものとしたが、健全度の評価の方法はこれに限定されるものではない。例えば、過去の出力数値と現在の出力数値と(期間を空けて取得した数値同士)を互いに比較することにより、法面の健全度を評価するものとしてもよい。現在の出力数値(特に「法面の形状による分類」の出力数値)が過去の出力数値と比べて変化している場合、法面の健全度が低下している可能性があると考えられる。
【符号の説明】
【0131】
20 点群データ処理システム
22 抽出処理部
23 健全度評価部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19