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  • 特開-搬送不良判定装置および印刷装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045405
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】搬送不良判定装置および印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 7/06 20060101AFI20230327BHJP
【FI】
B65H7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153793
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128451
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 隆一
(72)【発明者】
【氏名】松嶺 恭守
【テーマコード(参考)】
3F048
【Fターム(参考)】
3F048AA05
3F048AB01
3F048BA11
3F048BB02
3F048BB05
3F048BB08
3F048BD08
3F048CA00
3F048CC02
3F048DA06
3F048DC05
3F048DC09
3F048DC13
3F048EA02
(57)【要約】
【課題】搬送不良に対するユーザの作業負荷を低減することができる搬送不良判定装置および印刷装置を提供する。
【解決手段】印刷媒体Pに対して印刷処理を施す印刷部30と印刷部30に対して印刷媒体Pを供給する供給部(サイド給紙部10および内部給紙部20)との間に設けられ、供給部から供給された印刷媒体Pの浮き上がりを検出する浮き検出部70と、浮き検出部70による検出結果に基づいて、印刷媒体Pの搬送不良を判定する判定部61とを備え、判定部61が、供給部からの印刷媒体Pの供給開始から予め設定された枚数供給されるまでの間は、印刷媒体Pの浮き上がりが検出された場合でも搬送不良と判定せず、予め設定された枚数の次の印刷媒体が供給された時点から、印刷媒体Pの浮き上がりが検出された場合に搬送不良と判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体に対して印刷処理を施す印刷部と該印刷部に対して前記印刷媒体を供給する供給部との間に設けられ、前記供給部から供給された印刷媒体の浮き上がりを検出する浮き検出部と、
前記浮き検出部による検出結果に基づいて、前記印刷媒体の搬送不良を判定する判定部とを備え、
前記判定部が、前記供給部からの前記印刷媒体の供給開始から予め設定された枚数供給されるまでの間は、前記印刷媒体の浮き上がりが検出された場合でも搬送不良と判定せず、前記予め設定された枚数の次の印刷媒体が供給された時点から、前記印刷媒体の浮き上がりが検出された場合に搬送不良と判定する搬送不良判定装置。
【請求項2】
前記判定部が、前記印刷媒体の属性情報に基づいて、前記予め設定された枚数を変更する請求項1記載の搬送不良判定装置。
【請求項3】
前記判定部が、前記印刷媒体の属性情報に基づいて、前記予め設定された枚数供給されるまでの間は前記印刷媒体の浮き上がりが検出された場合でも搬送不良と判定しない第1の判定方法と、前記供給部からの印刷媒体の供給開始時点から前記浮き上がりが検出された場合には搬送不良と判定する第2の判定方法とを切り替える請求項1または2記載の搬送不良判定装置。
【請求項4】
前記判定部が、前記属性情報が所定の硬さ以上の印刷媒体であることを示す情報である場合には、前記第2の判定方法に切り替える請求項3記載の搬送不良判定装置。
【請求項5】
前記判定部が、前記属性情報が所定の厚さ以上の印刷媒体であることを示す情報である場合には、前記第2の判定方法に切り替える請求項3記載の搬送不良判定装置。
【請求項6】
前記判定部が、前記印刷媒体の属性情報が所定のサイズ以上の印刷媒体であることを示す情報である場合には、前記供給部からの印刷媒体の供給開始から前記印刷媒体の浮き上がりが検出された場合でも搬送不良と判定しない請求項1記載の搬送不良判定装置。
【請求項7】
請求項1から6いずれか1項記載の搬送不良判定装置と、前記供給部と、前記印刷部とを備えた印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷媒体の浮き上がりの検出結果に基づいて搬送不良を判定する搬送不良判定装置および印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷装置の印刷媒体の搬送経路上に、印刷媒体を検出するセンサなどの検出部を設け、その検出部による検出結果に基づいて、所定の制御を行うことが提案されている。
【0003】
たとえば特許文献1においては、最初に搬送された印刷媒体の長さを検出部によって測定し、その測定した長さが予め設定された長さよりも長い場合には、2枚目の印刷用紙の給紙を停止することが提案されている。
【0004】
また、特許文献2においては、印刷媒体の先端を検出するとともに、その先端に続く印刷媒体の表面を撮像することによって、印刷媒体の表面が印刷済みであるか否かを検出し、印刷済みである場合には、装置の動作を停止することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-230828号公報
【特許文献2】特開2011-112814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、たとえば印刷装置の手差し給紙トレイを用いる場合、ユーザが意図せず印刷媒体を変形させてしまい、いわゆる印刷媒体の浮き上がりが発生してしまう場合がある。印刷媒体の浮き上がりとは、印刷媒体の反りによって、印刷媒体が本来の搬送経路(搬送面)から浮き上がっている状態のことをいう。
【0007】
このような浮き上がりが発生した場合に、単純に、搬送経路上に設けられた検出部によって浮き上がりを検出して搬送不良と判定し、印刷装置の給紙などを停止するようにしたのでは、印刷装置の停止が頻発してしまい、搬送不良に対するユーザの作業負荷が高くなる問題がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、搬送不良に対するユーザの作業負荷を低減することができる搬送不良判定装置および印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の搬送不良判定装置は、印刷媒体に対して印刷処理を施す印刷部と該印刷部に対して印刷媒体を供給する供給部との間に設けられ、供給部から供給された印刷媒体の浮き上がりを検出する浮き検出部と、浮き検出部による検出結果に基づいて、印刷媒体の搬送不良を判定する判定部とを備え、判定部が、供給部からの印刷媒体の供給開始から予め設定された枚数供給されるまでの間は、印刷媒体の浮き上がりが検出された場合でも搬送不良と判定せず、予め設定された枚数の次の印刷媒体が供給された時点から、印刷媒体の浮き上がりが検出された場合に搬送不良と判定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の搬送不良判定装置によれば、供給部からの印刷媒体の供給開始から予め設定された枚数供給されるまでの間は、印刷媒体の浮き上がりが検出された場合でも搬送不良と判定せず、予め設定された枚数の次の印刷媒体が供給された時点から、印刷媒体の浮き上がりが検出された場合に搬送不良と判定するようにしたので、搬送不良に対するユーザの作業負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のインクジェット印刷装置の一実施形態の概略構成を示す図
図2図1に示すインクジェット印刷装置の制御系の概略構成を示すブロック図
図3図1に示すインクジェット印刷装置における印刷媒体の搬送不良の判定方法を説明するためのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の搬送不良判定装置の一実施形態を用いたインクジェット印刷装置について詳細に説明する。本実施形態のインクジェット印刷装置は、印刷媒体の搬送不良の判定方法に特徴を有するものであるが、まずは、その全体構成について説明する。図1は、本実施形態のインクジェット印刷装置1の概略構成を示す図である。なお、図1に示す上下左右方向が、本実施形態のインクジェット印刷装置1の上下左右方向である。また、図1の紙面手前側が前方向であり、紙面奥側が後ろ方向である。
【0013】
本実施形態のインクジェット印刷装置1は、図1に示すように、サイド給紙部10と、内部給紙部20と、印刷部30と、排紙部40と、反転部50とを備えている。なお、本実施形態においては、サイド給紙部10および内部給紙部20が、本発明の供給部に相当する。
【0014】
印刷部30および内部給紙部20は、金属または樹脂などから形成された筐体内に収容されて設置されている。また、サイド給紙部10および排紙部40は、筐体内に一部が収容され、筐体外に一部が突出する状態で設置されている。
【0015】
サイド給紙部10は、いわゆる手差し給紙トレイと呼ばれるものであり、印刷媒体Pが載置される給紙台11と、給紙台11から最上位置の印刷媒体Pのみを繰り出して搬送する1次給紙部12と、1次給紙部12によって搬送された印刷媒体Pを所定のタイミングで印刷部30に送り出す2次給紙部14とを備えている。
【0016】
2次給紙部14は、1次給紙部12から搬送された印刷媒体Pまたは内部給紙部20から搬送された印刷媒体Pの先端が当接して印刷媒体Pを一旦停止させることによって弛みを形成し、これにより斜行補正を行うレジストローラ14aと、レジストローラ14aを駆動するレジストモータ(図示省略)などを備えている。
【0017】
内部給紙部20は、印刷媒体Pが載置される給紙台21aと、給紙台21aから最上位置の印刷媒体Pのみを繰り出して給紙搬送路FR上へ搬送させる1次給紙部22aと、印刷媒体Pが載置される給紙台21bと、給紙台21bから最上位置の印刷媒体Pのみを繰り出して給紙搬送路FR上へ搬送させる1次給紙部22bと、印刷媒体Pが載置される給紙台21cと、給紙台21cから最上位置の印刷媒体Pのみを繰り出して給紙搬送路FR上へ搬送させる1次給紙部22cとを備えている。
【0018】
上述したように2次給紙部14には、サイド給紙部10または内部給紙部20から印刷媒体Pが搬送されるとともに、さらに後述する反転部50からも印刷媒体Pが搬送される。
【0019】
そのため搬送方向における2次給紙部14の手前には、サイド給紙部10または内部給紙部20から給紙された印刷媒体Pの搬送経路と、反転部50から搬送された一方の面が印刷された印刷媒体Pの搬送経路とが合流する合流地点が存在する。この合流地点を基準に、給紙機構側の経路を給紙搬送路FRと呼び、それ以外の経路を循環搬送路CRと呼ぶ。
【0020】
また、循環搬送路CR上には、印刷媒体Pを検出する用紙検出センサ(図示省略)が多数設けられており、その用紙検出センサによって検出された検出信号に基づいて、後述する制御部60によって印刷媒体Pの搬送制御が行われる。
【0021】
印刷部30は、4つのラインヘッド31と、ラインヘッド31に対向して設けられた環状の搬送ベルト32と、第1ベルトプラテンローラ33と、第2ベルトプラテンローラ34とを備えている。
【0022】
搬送ベルト32は、環状の無端ベルトから形成され、多数の吸引孔が形成されている。2次給紙部14から給紙された印刷媒体Pは、環状の搬送ベルト32まで搬送される。そして、印刷媒体Pは、搬送ベルト32の搬送路面の裏面側に設置された吸引ファン(図示省略)の吸引によって搬送ベルト32上に吸着され、所定の搬送速度で搬送される。そして、印刷媒体Pが搬送ベルト32によって搬送されながら、ラインヘッド31から印刷媒体Pに対してインクが吐出され、これにより印刷媒体Pに対して印刷処理が施される。
【0023】
第1ベルトプラテンローラ33と第2ベルトプラテンローラ34には、搬送ベルト32が掛け渡され、第1ベルトプラテンローラ33と第2ベルトプラテンローラ34とが、搬送モータ(図示省略)によって駆動することによって搬送ベルト32が図1の時計回りに回転移動する。
【0024】
また、搬送ベルト32とレジストローラ14aとの間には、浮き検出部70が設けられている。浮き検出部70は、印刷媒体Pの浮き上がりを検出するものであり、揺動部70aと、揺動センサ部70bとを備えている。
【0025】
揺動部70aは、印刷媒体Pの搬送方向に直交する方向(前後方向)に延設される部材である。揺動部70aは、その延伸方向に直交する面の断面が、クランク形状となるように形成されている。
【0026】
揺動部70aは、印刷媒体Pの搬送方向に延設された支持軸70cによって回動可能に支持され、図1に示す矢印A方向およびその逆方向に揺動可能に支持されている。揺動部70aは、レジストローラ14aから搬送されてきた印刷媒体Pに浮き上がりが発生している場合、印刷媒体Pの搬送方向先端が揺動部70aの一端部に接触し、これにより揺動部70aが前方に押し出されて矢印A方向に揺動する。この揺動によって揺動部70aの他端部が揺動センサ部70bから外れる。これにより、印刷媒体Pの浮き上がりが所定量以上であることを検出することができる。
【0027】
揺動部70aは、印刷媒体Pの浮き上がりが発生していない場合または浮き上がりが所定量未満である場合には、揺動部70aの下を印刷媒体Pが通り抜けるように設置されている。なお、揺動部70aの一端部と搬送ベルト32との距離は、各ラインヘッド31と搬送ベルト32との距離以下に設定されており、これにより各ラインヘッド31に対する印刷媒体Pの衝突を防止することができる。
【0028】
また、印刷媒体Pの搬送方向に直交する方向の揺動部70aの長さLは、たとえば使用が想定される印刷媒体Pのサイズのうち最も大きいサイズがA3サイズである場合、A3サイズの搬送方向に直交する方向の長さよりも長く設定されている。
【0029】
揺動センサ部70bは、上述したように揺動部70aの接触および非接触を検出し、その検出信号を制御部60に出力する。制御部60における後述する判定部61は、浮き検出部70の検出結果に基づいて、印刷媒体Pの搬送不良を判定するが、その判定方法については、後で詳述する。
【0030】
各ラインヘッド31は、それぞれ印刷媒体Pの搬送方向に直交する方向に延設されるものであり、搬送ベルト32によって搬送される印刷媒体Pに対してインクを吐出するものである。4つのラインヘッド31は、図1に示すように、印刷媒体Pの搬送経路に沿って所定の間隔を空けて配列されている。4つのラインヘッド31は、それぞれCMYKのインクを吐出する。
【0031】
印刷部30により印刷された印刷媒体Pは、循環搬送路CR上に配置された搬送ローラ等によって循環搬送路CR上を搬送される。循環搬送路CR上には、循環搬送路CR上を搬送された印刷媒体Pを排紙部40へ案内するか、または循環搬送路CR上を再循環させるかを切り替える切り替え機構43が備えられている。切り替え機構43は、具体的には、排紙部40側の搬送経路と反転部50側の搬送経路とを切り替える。
【0032】
排紙部40は、インクジェット印刷装置1の筐体から突出したトレイ形状をした排紙台41と、排紙台41に印刷媒体Pを排紙する1対の排紙ローラ42とを有する。そして、切り替え機構43により排紙部40に向けて案内された印刷媒体Pは、排紙ローラ42により排紙台41に排紙される。
【0033】
反転部50は、印刷媒体Pを反転させる反転搬送経路SRを有する反転台51と、循環搬送路CRから反転台51へ印刷媒体Pを搬送するとともに、その反転台51に搬送された印刷媒体Pを循環搬送路CR上へ再び戻す反転ローラ52と、反転ローラ52を駆動する反転モータ(図示省略)などを備えている。
【0034】
切り替え機構43により反転部50に案内された印刷媒体Pは、反転ローラ52により循環搬送路CRから反転台51に搬送され、反転台51から循環搬送路CRへ再び戻されることによって、表裏が反転した状態で循環搬送路CR上を搬送される。そして、表裏が反転された印刷媒体Pは、循環搬送路CR上に設けられた搬送ローラ53等の複数のローラによって印刷部30へ向かって再び搬送される。
【0035】
搬送ローラ53によって搬送された印刷媒体Pは、再び2次給紙部14のレジストローラ14aまで搬送され、レジストローラ14aによって所定のタイミングで再び印刷部30に向けて送り出される。そして、揺動部70aの下を通過の後、印刷部30によって印刷媒体Pの裏面に印刷処理が施される。
【0036】
図2は、本実施形態のインクジェット印刷装置1の制御系の概略構成を示すブロック図である。
【0037】
制御部60は、インクジェット印刷装置1全体を制御するものであり、CPU(Central Processing Unit)および半導体メモリなどを備える。制御部60は、半導体メモリに予め記憶されたプログラムをCPUに実行させることによって、インクジェット印刷装置1の各部の動作を制御する。
【0038】
また、制御部60は、コンピュータなどから出力された画像データまたはスキャナなどによって読み取られた画像データを取得し、その画像データに基づいて、印刷部30を制御することによって印刷処理を施す。
【0039】
また、制御部60は、判定部61を備えている。判定部61は、浮き検出部70による検出結果に基づいて、印刷媒体Pの搬送不良を判定する。そして、制御部60は、判定部61において搬送不良と判定された場合には、サイド給紙部10、内部給紙部20および反転部50などの供給系の動作を停止、または供給系および印刷部30の動作を停止させる。
【0040】
具体的には、本実施形態の判定部61は、サイド給紙部10または内部給紙部20から供給される印刷媒体Pの枚数をカウントするカウンタを有する。そして、判定部61は、所定の印刷ジョブに関する印刷媒体Pの供給開始から予め設定された枚数供給されるまでの間は、印刷媒体Pの浮き上がりが検出された場合でも搬送不良と判定しない。
【0041】
また、判定部61は、上記予め設定された枚数の次の印刷媒体Pが供給された時点以降において、印刷媒体Pの浮き上がりが検出された場合には搬送不良と判定する。
【0042】
本実施形態では、上記予め設定された枚数を1枚とする。すなわち、判定部61は、供給された印刷媒体Pが、所定の印刷ジョブに関する最初(1枚目)の印刷媒体Pである場合には、その印刷媒体Pの浮き上がりが検出されても搬送不良と判定せず、そのまま印刷媒体Pの搬送および印刷処理を継続して行う。一方、判定部61は、供給された印刷媒体Pが、所定の印刷ジョブに関する2枚目以降の印刷媒体である場合に、浮き上がりが検出された場合には判定不良と判定する。
【0043】
このように、不意に変形させやすい最初(1枚目)の印刷媒体Pについては、その印刷媒体Pの浮き上がりが検出されても搬送不良と判定せず、2枚目以降の印刷媒体について浮き上がりが検出された場合には判定不良と判定することによって、搬送不良によるユーザの作業負荷を低減することができる。
【0044】
さらに、判定部61は、供給された印刷媒体Pの属性情報を取得し、その属性情報に基づいて、搬送不良の判定方法を切り替える。印刷媒体Pの属性情報とは、印刷媒体Pが属する性質の情報であって、たとえば印刷媒体Pの硬さの情報、厚さの情報およびサイズの情報などがあるが、その他の情報でもよい。印刷媒体Pの属性情報は、印刷ジョブに含まれる設定情報から取得してもよいし、インクジェット印刷装置1に設けられた操作パネル(図示省略)において設定入力された情報から取得するようにしてもよい。
【0045】
本実施形態の判定部61は、印刷媒体Pの硬さの情報として、印刷媒体Pの用紙の種類の情報(普通紙、コート紙、上質紙、特殊紙および厚紙など)を取得する。そして、判定部61は、取得した用紙の種類の情報が、柔らかい用紙の種類の情報である場合には、上述したように、最初(1枚目)の印刷媒体である場合、その印刷媒体Pの浮き上がりが検出されても搬送不良と判定せず、2枚目以降の印刷媒体である場合には、浮き上がりが検出された場合には判定不良と判定する(本発明の第1の判定方法に相当する)。
【0046】
一方、判定部61は、取得した用紙の種類の情報が、柔らかい用紙の種類の情報でない場合には、すなわち所定の硬さ以上の用紙の種類を示す情報である場合には、供給された印刷媒体Pが何枚目かに関わらず、すなわち最初(1枚目)の印刷媒体である場合でも、その印刷媒体Pの浮き上がりが検出された場合には、判定不良と判定する(本発明の第2の判定方法に相当する)。
【0047】
印刷媒体Pが硬い場合には、その印刷媒体Pがラインヘッド31に衝突して破損などが発生するおそれがあるので、上述したように最初の印刷媒体Pから搬送不良と判定することによって、ラインヘッド31の破損などを防止することができる。
【0048】
なお、本実施形態においては、印刷媒体Pの硬さに応じて第1の判定方法と第2の判定方法とを切り替えるようにしたが、これに限らず、印刷媒体Pの厚さの情報に基づいて、第1の判定方法と第2の判定方法とを切り替えるようにしてもよい。具体的には、判定部61は、用紙の種類の情報が薄い用紙である場合には第1の判定方法を用いて搬送不良を判定し、厚い用紙である場合には第2の判定方法を用いて搬送不良を判定するようにしてもよい。
【0049】
また、判定部61には、印刷媒体Pの属性情報と第1または第2の判定方法との関係が予め設定されており、判定部61は、取得した印刷媒体Pの属性情報(たとえば用紙の種類の情報)と上記関係に基づいて、第1の判定方法と第2の判定方法を切り替える。
【0050】
次に、本実施形態のインクジェット印刷装置1における印刷媒体Pの搬送不良の判定方法について、図3に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、フローチャートにおいては、両面印刷時の反転経路を経由した用紙についてはカウント数に含んでいない。
【0051】
まず、制御部60は、印刷ジョブの印刷指示を待ち(S10,NO)、印刷指示を受け付けた場合には(S10,YES)、印刷媒体Pの供給を開始する。具体的には、制御部60は、サイド給紙部10または内部給紙部20から印刷部30への印刷媒体Pの供給を開始する(S12)。
【0052】
そして、判定部61は、浮き検出部70によって印刷媒体Pの浮き上がりが検出されたか否かを監視し(S14)、すなわち揺動センサ部70bから印刷媒体Pの検出信号が出力されたか否かを監視する。判定部61は、印刷媒体Pの浮き上がりを検出した場合には(S14,YES)、その印刷媒体Pが柔らかい印刷媒体であるか否かを確認する(S16)。
【0053】
次いで、判定部61は、印刷媒体Pが柔らかい印刷媒体である場合には(S16,YES)、その印刷媒体Pが、印刷ジョブの2枚目以降の印刷媒体Pであるか否かを確認する(S18)。判定部61は、印刷媒体Pが、2枚目以降の印刷媒体Pでない場合には(S18,NO)、すなわち印刷ジョブの最初(1枚目)の印刷媒体Pである場合には、搬送不良と判定することなく(第1の判定方法)、S14に戻り、再び、2枚目以降の印刷媒体Pの浮き上がりを監視する(S14)。最初の印刷媒体Pについては、そのまま印刷部30に搬送され、印刷処理が施される。
【0054】
一方、S18において、2枚目以降の印刷媒体Pであることが確認された場合には(S18,YES)、判定部61は搬送不良であると判定し、制御部60は、その判定結果に応じて供給系および印刷部30の動作を停止する(S20)。すなわち、印刷媒体Pの浮き上がりに応じて、供給系および印刷部30の動作が停止される。そして、たとえば浮き上がりの発生した印刷媒体Pが取り除かれた後、制御部60は、供給系からの印刷媒体Pの供給を再開する。なお、この際、S18にて2枚目以降の印刷媒体Pか否かを確認するためのカウンタはリセットされ、再び「1」からカウントされる。
【0055】
また、S16において、判定部61によって印刷媒体Pが柔らかい印刷媒体ではないことが確認された場合には(S16,NO)、判定部61は、その印刷媒体Pが印刷ジョブの最初(1枚目)の印刷媒体Pであるか否かに関わらず搬送不良と判定し(第2の判定方法)、制御部60は、供給系および印刷部30の動作を停止させる。そして、この場合も、S18にて2枚目以降の印刷媒体Pか否かを確認するためのカウンタはリセットされ、再び「1」からカウントされる。
【0056】
また、S14において、印刷媒体Pの浮き上がりが検出されず(S14,NO)、印刷ジョブの処理を終了していない場合には(S22,NO)、S14に戻り、判定部61は、順次供給される印刷媒体Pの浮き上がりを監視する。そして、印刷媒体Pの浮き上がりが検出されないまま印刷ジョブの処理が終了した場合には(S22,YES)、制御部60は、そのまま供給系および印刷部30の動作を停止させ、処理を終了する(S20)。
【0057】
上記実施形態のように、印刷媒体Pの柔らかさ(硬さ)に基づいて、第1の判定方法と第2の判定方法を切り替えることによって、印刷媒体Pが柔らかい場合には第1の判定方法を採用することによって、搬送不良の発生によるユーザの作業負荷を低減することができる。一方、印刷媒体Pが硬い場合には第2の判定方法を採用することによって、印刷媒体Pのラインヘッド31への衝突によるラインヘッド31の損傷を防止することができる。
【0058】
また、上記実施形態においては、印刷媒体Pが柔らかい場合には、最初の印刷媒体Pについては、浮き上がりが検出された場合でも搬送不良と判定せず、2枚目以降の印刷媒体Pについて浮き上がりが検出された場合には搬送不良と判定するようにしたが、浮き上がりが検出された場合でも判定不良と判定しない印刷媒体Pの枚数は1枚に限らず、2枚以上に設定するようにしてもよい。
【0059】
また、浮き上がりが検出された場合でも判定不良と判定しない印刷媒体Pの枚数を、印刷媒体Pの属性情報に基づいて変更するようにしてもよい。上記実施形態は、印刷媒体Pが柔らかい場合には、判定不良と判定しない印刷媒体Pの枚数を1枚とし、印刷媒体Pが硬い場合には、判定不良と判定しない印刷媒体Pの枚数をゼロ枚とした例であるが、これに限らず、印刷媒体Pが柔らかい場合には、判定不良と判定しない印刷媒体Pの枚数を2枚とし、印刷媒体Pが硬い場合には、判定不良と判定しない印刷媒体Pの枚数を1枚としてもよい。
【0060】
このように、印刷媒体Pの硬さに基づいて、浮き上がりが検出された場合でも判定不良と判定しない印刷媒体Pの枚数を変更することによって、判定不良に対するユーザの作業負荷の低減とラインヘッド31の損傷防止との両方を図ることができる。
【0061】
また、印刷媒体Pが薄い場合には、判定不良と判定しない印刷媒体Pの枚数を2枚とし、印刷媒体Pが厚い場合には、判定不良と判定しない印刷媒体Pの枚数を1枚としてもよい。すなわち、印刷媒体Pの属性情報に基づいて、判定不良と判定しない印刷媒体Pの枚数を変更するようにしてもよい。
【0062】
このように、印刷媒体Pの厚さに基づいて、浮き上がりが検出された場合でも判定不良と判定しない印刷媒体Pの枚数を変更することによって、判定不良に対するユーザの作業負荷の低減とラインヘッド31の損傷防止との両方を図ることができる。
【0063】
また、たとえば印刷媒体Pのサイズが大きい場合、印刷媒体Pの搬送方向に直交する方向(前後方向)の長さが、各ラインヘッド31の上記直交する方向の長さよりも長い場合である。このように印刷媒体Pのサイズが大きい場合に、印刷媒体Pの上記直交方向についての両端部(搬送方向に延びる端部)に反りが生じたとしても、その反りはラインヘッド31の設置範囲外であるので、ラインヘッド31に衝突せずに問題なく搬送される。
【0064】
したがって、判定部61が、印刷媒体Pのサイズが予め設定されたサイズ以上(たとえばA3サイズ)である場合には、所定の印刷ジョブの印刷媒体Pの供給開始から浮き検出部70の検出結果に関わらず搬送不良と判定しないようにしてもよい。
【0065】
これにより、インクジェット印刷装置1の無駄な停止を減らすことができ、判定不良に対するユーザの作業負荷の低減を図ることができる。
【0066】
また、上記の実施形態では、インクジェット印刷装置1に設けられた複数の給紙部(サイド給紙部10,内部給紙部20)について、これらを区別せずに搬送不良判定制御を行っているが、用紙浮きが発生しやすいサイド給紙部10(手差しトレイ)を用いる場合にのみ本発明の搬送不良判定制御を行うようにしてもよい。
【0067】
本発明の搬送不良判定装置に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記)
【0068】
本発明の搬送不良判定装置において、判定部は、印刷媒体の属性情報に基づいて、印刷媒体の浮き上がりが検出された場合でも搬送不良と判定しない、予め設定された枚数を変更することができる。
【0069】
また、本発明の搬送不良判定装置において、判定部は、印刷媒体の属性情報に基づいて、予め設定された枚数供給されるまでの間は印刷媒体の浮き上がりが検出された場合でも搬送不良と判定しない第1の判定方法と、供給部からの印刷媒体の供給開始時点から浮き上がりが検出された場合には搬送不良と判定する第2の判定方法とを切り替えることができる。
【0070】
また、本発明の搬送不良判定装置において、判定部は、属性情報が所定の硬さ以上の印刷媒体であることを示す情報である場合には、第2の判定方法に切り替えることができる。
【0071】
また、本発明の搬送不良判定装置において、判定部は、属性情報が所定の厚さ以上の印刷媒体であることを示す情報である場合には、第2の判定方法に切り替えることができる。
【0072】
また、本発明の搬送不良判定装置において、判定部は、属性情報が所定のサイズ以上の印刷媒体であることを示す情報である場合には、供給部からの印刷媒体の供給開始から印刷媒体の浮き上がりが検出された場合でも搬送不良と判定しないようにできる。
【0073】
本発明の印刷装置は、上記本発明の判定不良判定装置と、供給部と、印刷部とを備える。
【符号の説明】
【0074】
1 インクジェット印刷装置
10 サイド給紙部
11 給紙台
12 1次給紙部
14 2次給紙部
14a レジストローラ
20 内部給紙部
21a,21b,21c 給紙台
22a,22b,22c 1次給紙部
30 印刷部
31 ラインヘッド
32 搬送ベルト
33 第1ベルトプラテンローラ
34 第2ベルトプラテンローラ
40 排紙部
41 排紙台
42 排紙ローラ
43 切り替え機構
50 反転部
51 反転台
52 反転ローラ
53 搬送ローラ
60 制御部
61 判定部
70 浮き検出部
70a 揺動部
70b 揺動センサ部
70c 支持軸
CR 循環搬送路
FR 給紙搬送路
SR 反転搬送経路
P 印刷媒体
図1
図2
図3