(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045406
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】流体圧シリンダ移動時間センサ
(51)【国際特許分類】
G01B 7/00 20060101AFI20230327BHJP
F15B 15/28 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
G01B7/00 101H
F15B15/28 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153795
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】山岸 健
【テーマコード(参考)】
2F063
3H081
【Fターム(参考)】
2F063AA02
2F063BA05
2F063BB03
2F063BC02
2F063BD01
2F063CA09
2F063DA05
2F063DC08
2F063DD02
2F063GA52
3H081AA02
3H081AA03
3H081BB01
3H081GG05
3H081GG15
(57)【要約】
【解決手段】流体圧シリンダ移動時間センサは、単一の磁気センサ12を備え、磁気センサが検出する磁束密度が第1の閾値を上回る時点または下回る時点を始点および終点の一方とし、磁気センサが検出する磁束密度が第2の閾値を上回る時点または下回る時点を始点および終点の他方とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体圧シリンダのピストンに装着された磁石の磁束密度を検出する単一の磁気センサを備え、前記ピストンが所定ストローク移動するのに要する時間を計測する流体圧シリンダ移動時間センサであって、
前記磁石は、その磁化方向が前記ピストンの移動方向と一致するように配置され、前記磁気センサは、前記ピストンの移動方向と垂直な方向の磁束密度を検出可能であり、
前記ピストンの移動方向に沿った前記磁石の位置と前記磁気センサが検出する前記磁束密度との関係が正の極大値および負の極小値を有する曲線で表わされ、前記正の極大値よりも小さい正の値を第1の閾値とするとともに前記負の極小値よりも大きい負の値を第2の閾値とし、前記磁気センサが検出する前記磁束密度が前記第1の閾値を上回る時点または下回る時点を始点および終点の一方とし、前記磁気センサが検出する前記磁束密度が前記第2の閾値を上回る時点または下回る時点を前記始点および前記終点の他方とし、前記始点から前記終点までの時間を計測する流体圧シリンダ移動時間センサ。
【請求項2】
請求項1記載の流体圧シリンダ移動時間センサにおいて、
指定された始点位置から指定された終点位置まで前記ピストンを移動せしめ、前記指定された始点位置で検出された前記磁束密度を前記第1の閾値および前記第2の閾値の一方とするとともに前記指定された終点位置で検出された前記磁束密度を前記第1の閾値および前記第2の閾値の他方とし、前記指定された始点位置から前記ピストンが離れた直後に前記磁束密度が増大したか減少したかに応じて前記始点の判定条件を設定し、前記磁束密度が増大しながら前記指定された終点位置に前記ピストンが到達したか前記磁束密度が減少しながら前記指定された終点位置に前記ピストンが到達したかに応じて前記終点の判定条件を設定する流体圧シリンダ移動時間センサ。
【請求項3】
請求項1記載の流体圧シリンダ移動時間センサにおいて、
計測された前記始点から前記終点までの時間の逆数に、前記始点位置から前記終点位置までの距離に相当する定数を掛けることで、ピストン速度を算出する流体圧シリンダ移動時間センサ。
【請求項4】
請求項3記載の流体圧シリンダ移動時間センサにおいて、
複数の連続する区間で前記ピストン速度を算出する流体圧シリンダ移動時間センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアシリンダ等の流体圧シリンダのピストンが所定ストローク移動するのに要する時間を計測するセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ピストンに装着された磁石の磁力を検出するセンサを備え、ピストンの位置を検出する流体圧シリンダが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、一対の磁石がピストンに装着され、二つの近接スイッチがシリンダチューブの外側に配置された流体圧シリンダの位置検出装置が記載されている。この流体圧シリンダの位置検出装置は、同極が向き合う一対の磁石を用いることで、検出する磁力のピークを大きくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記流体圧シリンダの位置検出装置は、二つの近接センサ(磁気センサ)を必要としている。一般に、検出しようとするピストンの位置が複数あれば、それに対応する数の磁気センサが必要になる。したがって、ピストンが所定の第1位置から所定の第2位置まで移動するのに要する時間を計測する場合は、二つの磁気センサが必要になる。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る流体圧シリンダ移動時間センサは、流体圧シリンダのピストンに装着された磁石の磁束密度を検出する単一の磁気センサを備え、ピストンが所定ストローク移動するのに要する時間を計測するセンサである。磁石は、その磁化方向がピストンの移動方向と一致するように配置され、磁気センサは、ピストンの移動方向と垂直な方向の磁束密度を検出可能である。ピストンの移動方向に沿った磁石の位置と磁気センサが検出する磁束密度との関係は、正の極大値および負の極小値を有する曲線で表わされる。正の極大値よりも小さい正の値を第1の閾値とするとともに負の極小値よりも大きい負の値を第2の閾値とする。磁気センサが検出する磁束密度が第1の閾値を上回る時点または下回る時点を始点および終点の一方とし、磁気センサが検出する磁束密度が第2の閾値を上回る時点または下回る時点を始点および終点の他方とする。そして、始点から終点までの時間を計測する。
【0008】
上記流体圧シリンダ移動時間センサによれば、単一の1軸磁気センサが検出する磁束密度を第1の閾値および第2の閾値と比較することで、ピストンが所定ストローク移動する際の始点および終点を判定することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る流体圧シリンダ移動時間センサは、単一の1軸磁気センサが検出する磁束密度に基づいて始点および終点を判定することができる。したがって、簡単な構成の磁気センサを用いてピストンが所定ストローク移動するのに要する時間を計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の流体圧シリンダ移動時間センサを備えた流体圧シリンダの基本構成を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1の流体圧シリンダにおけるピストン位置と検出磁束密度との関係を示す図である。
【
図3】
図3は、磁束密度の閾値を用いて始点と終点を判定する方法を説明するための図である。
【
図4】
図4は、始点および終点の判定条件を設定する方法を説明するための図である。
【
図5】
図5は、本発明の流体圧シリンダ移動時間センサの第1の利用形態を説明するための図である。
【
図6】
図6は、本発明の流体圧シリンダ移動時間センサの第2の利用形態を説明するための図である。
【
図7】
図7は、本発明の流体圧シリンダ移動時間センサの第3の利用形態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係る流体圧シリンダ移動時間センサ10を備えた流体圧シリンダ14の基本構成が
図1に示されている。流体圧シリンダ14のピストン16には永久磁石(磁石)18が装着されている。永久磁石18の磁化方向はピストン16の移動方向(X方向)と一致している。流体圧シリンダ移動時間センサ10は、永久磁石18の磁束密度を検出可能な磁気センサ12を備え、流体圧シリンダ14のシリンダチューブ20の外側に配置される。
【0012】
磁気センサ12は、ホールIC等から構成される1軸磁気センサである。磁気センサ12は、ピストン16の移動方向に対して垂直な方向(Y方向)の磁束密度を検出し、ピストン16の移動方向の磁束密度は検出しない。磁気センサ12を含む流体圧シリンダ移動時間センサ10は、シリンダチューブ20の長手方向(X方向)に沿って位置調整が可能な状態でシリンダチューブ20に取り付けられる。流体圧シリンダ移動時間センサ10は、図示しない回路基板から構成される制御部、演算部、記憶部等を備えている。
【0013】
ピストン16の移動方向に沿った永久磁石18の位置と磁気センサ12が検出する磁束密度との関係が
図2に示されている。以下、ピストン16の移動方向に沿った永久磁石18の位置を「ピストン位置」という。また、磁気センサ12が検出する磁束密度を「検出磁束密度」という。検出磁束密度がゼロのときのピストン位置をゼロとしている。
【0014】
ピストン位置の負の領域において、ピストン16が原点から遠く離れた位置を出発して原点に至るまで移動すると、検出磁束密度は、正の値の範囲で徐々に大きくなり、極大値M1をとった後、概ねリニアに減少してゼロになる。ピストン位置の正の領域において、ピストン16が原点から遠く離れた位置を出発して原点に至るまで移動すると、検出磁束密度は、負の値の範囲で徐々に小さくなり、極小値M2をとった後、概ねリニアに増加してゼロになる。
【0015】
検出磁束密度は、上記極大値近傍と上記極小値近傍との間では、概ねリニアに変化する。本発明では、便宜上、このリニアに変化する部分も含めて、ピストン位置と検出磁束密度との関係は曲線で表わされるものとする。ピストン位置と検出磁束密度との関係を表わす曲線は、原点に関して対称である。なお、
図2では、ピストン位置が負の領域で検出磁束密度が正の値をとり、ピストン位置が正の領域で検出磁束密度が負の値をとっている。永久磁石18の磁極の向きが反対の場合は、ピストン位置が負の領域で検出磁束密度が負の値をとり、ピストン位置が正の領域で検出磁束密度が正の値をとる。以下においては、
図2に示された曲線を基礎にして説明するが、永久磁石18の磁極の向きが反対の場合も同様である。
【0016】
本発明は、ピストン16が所定ストローク移動するのに要する時間(以下、「ピストン16の移動時間」という)を計測するセンサである。ピストン16が所定ストローク移動する際の時間軸における始点と終点をどのようにして判定するかが重要である。以下、
図3を参照しながら、磁束密度に関する二つの閾値を用いて、これら始点と終点を判定する方法を説明する。
【0017】
図3には、ピストン位置と検出磁束密度の関係が具体的な数値とともに示されているほか、磁束密度に関する二つの閾値が示されている。
図3の例では、ピストン位置が-7mm(ミリメートル)のとき検出磁束密度が極大となり、極大値M1は5mT(ミリテスラ)である。また、ピストン位置が7mmのとき検出磁束密度が極小となり、極小値M2は-5mTである。極小値M2の絶対値は、極大値M1の絶対値と等しい。
【0018】
上記極大値M1よりも小さい正の値を第1の閾値T1として設定し、上記極小値M2よりも大きい負の値を第2の閾値T2として設定する。第2の閾値T2の絶対値は、第1の閾値T1の絶対値と同じ値であってもよいし、第1の閾値T1の絶対値と異なる値であってもよい。
図3の例では、第1の閾値T1は3.5mT、第2の閾値T2は-3.5mTであり、第2の閾値T2の絶対値は、第1の閾値T1の絶対値と等しい。
【0019】
検出磁束密度が極大となるピストン位置の前後において、検出磁束密度は、第1の閾値T1と等しくなる。すなわち、ピストン位置が第1位置P1および第2位置P2のとき、検出磁束密度は、第1の閾値T1と等しくなる。また、検出磁束密度が極小となるピストン位置の前後において、検出磁束密度は、第2の閾値T2と等しくなる。すなわち、ピストン位置が第3位置P3および第4位置P4のとき、検出磁束密度は、第2の閾値T2と等しくなる。
図3の例では、第1位置P1は-11mm、第2位置P2は-3mm、第3位置P3は3mm、第4位置P4は11mmである。
【0020】
まず、ピストン位置の負の領域から正の領域に向かってピストン16が移動する場合を考える。上記のとおり、第1位置P1および第2位置P2の二つのピストン位置で検出磁束密度が第1の閾値T1と等しくなるが、いずれの位置で検出磁束密度が第1の閾値T1と等しくなったかは、検出磁束密度の変化を監視することで判別できる。すなわち、検出磁束密度が第1の閾値T1よりも小さい状態から大きい状態に変化したときは、ピストン16が第1位置P1を通過したと判断できる。検出磁束密度が第1の閾値T1よりも大きい状態から小さい状態に変化したときは、ピストン16が第2位置P2を通過したと判断できる。
【0021】
また、第3位置P3および第4位置P4の二つのピストン位置で検出磁束密度が第2の閾値T2と等しくなるが、いずれの位置で検出磁束密度が第2の閾値T2と等しくなったかは、検出磁束密度の変化を監視することで判別できる。すなわち、検出磁束密度が第2の閾値T2よりも大きい状態から小さい状態に変化したときは、ピストン16が第3位置P3を通過したと判断できる。検出磁束密度が第2の閾値T2よりも小さい状態から大きい状態に変化したときは、ピストン16が第4位置P4を通過したと判断できる。
【0022】
ピストン16は負の領域から正の領域に向かって移動するので、ピストン16が第1位置P1を通過した時点、または、ピストン16が第2位置P2を通過した時点が始点と判定する。ピストン16が第3位置P3を通過した時点、または、ピストン16が第4位置P4を通過した時点が終点と判定する。そして、始点から終点までの時間を計測することにより、ピストン16の移動時間を計測できる。
【0023】
上記二通りの始点と上記二通りの終点の組み合わせは、任意であって、合計4通りある。4通りの組み合わせの中で、第1位置P1を始点とし、第4位置P4を終点とする場合、始点におけるピストン位置と終点におけるピストン位置との間の距離が最大になる。また、4通りの組み合わせの中で、第2位置P2を始点とし、第3位置P3を終点とする場合、始点におけるピストン位置と終点におけるピストン位置との間の距離が最小になる。以下、始点におけるピストン位置を「始点位置」といい、終点におけるピストン位置を「終点位置」という。
【0024】
次に、ピストン位置の正の領域から負の領域に向かってピストン16が移動する場合を考える。第4位置P4および第3位置P3の二つのピストン位置で検出磁束密度が第2の閾値T2と等しくなるが、いずれの位置で検出磁束密度が第2の閾値T2と等しくなったかは、検出磁束密度の変化を監視することで判別できる。すなわち、検出磁束密度が第2の閾値T2よりも大きい状態から小さい状態に変化したときは、ピストン16が第4位置P4を通過したと判断できる。検出磁束密度が第2の閾値T2よりも小さい状態から大きい状態に変化したときは、ピストン16が第3位置P3を通過したと判断できる。
【0025】
また、第2位置P2および第1位置P1の二つのピストン位置で検出磁束密度が第1の閾値T1と等しくなるが、いずれの位置で検出磁束密度が第1の閾値T1と等しくなったかは、検出磁束密度の変化を監視することで判別できる。すなわち、検出磁束密度が第1の閾値T1よりも小さい状態から大きい状態に変化したときは、ピストン16が第2位置P2を通過したと判断できる。検出磁束密度が第1の閾値T1よりも大きい状態から小さい状態に変化したときは、ピストン16が第1位置P1を通過したと判断できる。
【0026】
ピストン16は正の領域から負の領域に向かって移動するので、ピストン16が第4位置P4を通過した時点、または、ピストン16が第3位置P3を通過した時点が始点と判定する。ピストン16が第2位置P2を通過した時点、または、ピストン16が第1位置P1を通過した時点が終点と判定する。そして、始点から終点までの時間を計測することにより、ピストン16の移動時間を計測できる。
【0027】
上記二通りの始点と上記二通りの終点の組み合わせは、任意であって、合計4通りある。4通りの組み合わせの中で、第4位置P4を始点とし、第1位置P1を終点とする場合、始点位置と終点位置との間の距離が最大になる。また、4通りの組み合わせの中で、第3位置P3を始点とし、第2位置P2を終点とする場合、始点位置と終点位置との間の距離が最小になる。
【0028】
次に、始点位置および終点位置が指定された場合、第1の閾値T1および第2の閾値T2を含む始点および終点の判定条件を設定する方法について説明する。指定された始点位置と指定された終点位置との間に磁気センサ12が配置されていることを前提とする。
【0029】
流体圧シリンダ14を駆動して、指定された始点位置から指定された終点位置までピストン16を実際に移動せしめ、検出磁束密度を監視する。なお、始点位置および終点位置は、ピストン位置に関するものであるが、ピストン位置の代わりに、例えば、シリンダチューブ20から外部に延びるピストンロッド22の端部の位置を考えると分かり易い。
【0030】
指定された終点位置における検出磁束密度の符号は、指定された始点位置における検出磁束密度の符号と異なる。以下、前者の検出磁束密度が正の値であり、後者の検出磁束密度が負の値である場合と、前者の検出磁束密度が負の値であり、後者の検出磁束密度が正の値である場合とに分けて説明する。
【0031】
指定された始点位置における検出磁束密度が正の値であり、指定された終点位置における検出磁束密度が負の値である場合、前者を第1の閾値T1として設定し、後者を第2の閾値T2として設定する。指定された始点位置からピストン16が離れた直後に検出磁束密度が増大したのであれば、「検出磁束密度が第1の閾値T1を上回ること」を始点の判定条件として設定する。指定された始点位置からピストン16が離れた直後に検出磁束密度が減少したのであれば、「検出磁束密度が第1の閾値T1を下回ること」を始点の判定条件として設定する。
【0032】
また、検出磁束密度が減少しながら指定された終点位置にピストン16が到達したのであれば、「検出磁束密度が第2の閾値T2を下回ること」を終点の判定条件として設定する。検出磁束密度が増大しながら指定された終点位置にピストン16が到達したのであれば、「検出磁束密度が第2の閾値T2を上回ること」を終点の判定条件として設定する。
【0033】
一方、指定された始点位置における検出磁束密度が負の値であり、指定された終点位置における検出磁束密度が正の値である場合、前者を第2の閾値T2として設定し、後者を第1の閾値T1として設定する。指定された始点位置からピストン16が離れた直後に検出磁束密度が減少したのであれば、「検出磁束密度が第2の閾値T2を下回ること」を始点の判定条件として設定する。指定された始点位置からピストン16が離れた直後に検出磁束密度が増大したのであれば、「検出磁束密度が第2の閾値T2を上回ること」を始点の判定条件として設定する。
【0034】
また、検出磁束密度が増大しながら指定された終点位置にピストン16が到達したのであれば、「検出磁束密度が第1の閾値T1を上回ること」を終点の判定条件として設定する。検出磁束密度が減少しながら指定された終点位置にピストン16が到達したのであれば、「検出磁束密度が第1の閾値T1を下回ること」を終点の判定条件として設定する。
【0035】
このように、指定された始点位置から指定された終点位置まで実際にピストン16を移動せしめ、検出磁束密度を監視することによって、始点および終点の判定条件を求めることができる。第1の閾値T1および第2の閾値T2を含めて、これら始点および終点の判定条件を流体圧シリンダ移動時間センサ10の記憶部または制御部に記憶しておく。これにより、以後、流体圧シリンダ移動時間センサ10の演算部において、ピストン16の移動時間を容易に算出することができる。
【0036】
図4を参照しながら、上記方法にしたがって始点および終点の判定条件を設定する具体例を説明する。始点位置として、前述のP1に相当するP1´(-12mm)がユーザにより指定される。また、終点位置として、前述のP3に相当するP3´(3mm)がユーザにより指定される。P1´およびP3´の指定に際して、ユーザは、それらの数値を意識する必要はなく、例えば、単にピストンロッド22の端部の位置を2箇所指定すればよい。ただし、磁気センサ12は少なくともP1´とP3´との間に配置されていることを要する。
【0037】
ピストン16をP1´からP3´まで実際に移動せしめ、検出磁束密度を監視した。ピストン位置がP1´のときの検出磁束密度が3mTであり、P1´からピストン16が離れた直後に検出磁束密度が3mTを上回ったことが監視された。この場合、第1の閾値T1を3mTとし、始点の判定条件を「検出磁束密度が第1の閾値T1を上回ること」とする。また、ピストン位置がP3´のときの検出磁束密度が-4mTであり、検出磁束密度が減少しながらP3´にピストン16が到達したことが監視された。この場合、第2の閾値T2を-4mTとし、終点の判定条件を「検出磁束密度が第2の閾値T2を下回ること」とする。
【0038】
指定された始点位置および指定された終点位置が複数組ある場合は、各組について、始点および終点の判定条件を設定する。例えば、ピストン16が一方向に所定ストローク移動するのに要する時間だけでなく、ピストン16がその逆方向に同じストローク移動するのに要する時間も計測したい場合が挙げられる。
【0039】
ピストン16の移動時間に基づいて、ピストン速度(ピストン速度の平均値)を求めることもできる。すなわち、ピストン16の移動時間の逆数に、始点位置から終点位置までの距離に相当する定数を掛ければよい。流体圧シリンダ移動時間センサ10の演算部において、この方法によりピストン速度を算出することが可能である。また、ピストン速度を複数の連続する区間で求めれば、ピストン速度の変化を検出できる。
【0040】
次に、
図5を参照しながら、本発明に係る流体圧シリンダ移動時間センサ10の第1の利用形態について説明する。第1の利用形態は、ピストン16を減速するショックアブソーバ24の緩衝作用が適正であるか否かを判断することに利用される形態である。なお、
図5において、
図1の基本構成における各部材と同一または同等の部材には、同一の参照符号を付してある。
【0041】
図5の例では、ショックアブソーバ24は、流体式ショックアブソーバであり、ピストンロッド22が引き込まれるときのピストン16のストロークエンド近傍で緩衝作用を発揮する。磁気センサ12は、該ストロークエンド近傍においてピストン16に装着された永久磁石18の磁束密度が変化することを有効に検出できる位置に配置されている。始点および終点の判定条件が適宜設定され、ピストン16の移動時間が計測される。なお、参照符号26で示されるのは、ピストンロッド22の端部に固定されたエンドプレート26である。
【0042】
ショックアブソーバ24による緩衝作用が適正である場合、ピストン16の移動時間は、所定の上限値および下限値で定められた基準時間の範囲内にある。一方、ショックアブソーバ24の緩衝作用が強過ぎる場合は、ピストン16の移動時間が上限値よりも長くなる。また、ショックアブソーバ24の緩衝作用が弱過ぎる場合は、ピストン16の移動時間が下限値よりも短くなる。ピストン16の移動時間が基準時間を外れたとき、ショックアブソーバ24の緩衝作用が強過ぎるあるいは弱過ぎると判断できる。そして、ショックアブソーバ24について調整が必要であることがユーザに報知される。
【0043】
次に、
図6を参照しながら、本発明に係る流体圧シリンダ移動時間センサ10の第2の利用形態について説明する。第2の利用形態は、ピストン16の移動時間に基づいてピストン速度を求め、流体圧シリンダ14に備えられたスピードコントローラ28をユーザが調整することに利用される形態である。なお、
図6において、
図1の基本構成における各部材と同一または同等の部材には、同一の参照符号を付してある。
【0044】
図6の例では、スピードコントローラ28は、流体圧シリンダ14のピストンロッド22が押し出されるときに排出されるエアの流量を絞るメータアウトの可変絞り弁である。スピードコントローラ28は、流体圧シリンダ14の排出ポート(図示せず)に配置されている。磁気センサ12は、ピストンロッド22が押し出される際にピストン16に装着された永久磁石18の磁束密度が変化することを検出可能な位置に配置されている。始点および終点の判定条件が適宜設定され、ピストン16の移動時間が計測される。
【0045】
始点位置から終点位置までの距離に相当する定数を用いて、ピストン16の移動時間がピストン速度に換算され、該ピストン速度がデイスプレイ(図示せず)に表示される。ユーザは、表示されたピストン速度を見て、ピストン速度が所望の値から外れている場合は、スピードコントローラ28を手動で操作し、エアの流路面積を調整する。
【0046】
次に、
図7を参照しながら、本発明に係る流体圧シリンダ移動時間センサ10の第3の利用形態について説明する。第3の利用形態は、弾性体30を圧縮しながらクランプする流体圧シリンダ14において、弾性体30をクランプしたことを検知することに利用される形態である。なお、
図7において、
図1の基本構成における各部材と同一または同等の部材には、同一の参照符号を付してある。
【0047】
図7の例では、ピストンロッド22を押し出す方向にピストン16が所定量駆動されたとき、ピストンロッド22の端部に固定されたエンドプレート32が弾性体30に当接する。ピストンロッド22が弾性体30に当接すると、ピストンロッド22が弾性体30から反力を受け、ピストン速度が減速する。磁気センサ12は、少なくともピストンロッド22が弾性体30に当接する位置を含めた範囲で、ピストン16に装着された永久磁石18の磁束密度が変化することを検出可能な位置に配置されている。
【0048】
ピストン速度を複数の連続する区間で求めることができるように、複数組の始点および終点について判定条件が設定され、ピストン16が各区間を移動するのに要する時間が計測される。そして、各区間の距離に相当する定数を用いて、ピストン16が各区間を移動するのに要した時間がそれぞれピストン速度に換算される。ピストン速度が隣接する区間で大きく減少したとき、流体圧シリンダ14によって弾性体30がクランプされたと判断できる。
【0049】
本発明に係る流体圧シリンダ移動時間センサ10は、上記第1~第3の利用形態の他にも様々な利用形態が考えられる。例えば、ピストン16の移動時間を基準時間と比較し、ピストン16の移動時間が基準時間から外れたとき、何らかの異常が発生したことをユーザに報知することに利用される形態が考えられる。異常の原因は、流体圧シリンダ14の使用形態に応じて想定することができる。例えば、流体圧シリンダ14によって搬送を行う場合、異物の噛むみ込みや搬送物の落下が異常の原因となる蓋然性が高いので、その旨をユーザに報知すればよい。
【0050】
また、ピストン16の移動時間を計測した回数をカウントし、その累積回数が所定値を超えたとき、所要のメンテナンスをユーザに促すことに利用される形態も考えられる。一般に、流体圧シリンダ14の寿命は、シール材等から構成される摺動部に左右されることが多いので、摺動部のメンテナンスをユーザに促せばよい。
【0051】
なお、本発明は、上述した実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0052】
10…流体圧シリンダ移動時間センサ 12…磁気センサ
14…流体圧シリンダ 16…ピストン
18…永久磁石(磁石)