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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045420
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品及び回路基板
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20230327BHJP
【FI】
H01G4/30 201F
H01G4/30 201G
H01G4/30 516
H01G4/30 513
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153810
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】谷田川 清志郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 智司
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AF06
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE01
5E082FF05
5E082FG26
5E082GG10
5E082GG11
5E082GG12
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、実装後における外部電極のセラミック素体からの剥がれを抑制することが可能な積層セラミック電子部品及び回路基板を提供する。
【解決手段】本発明の積層セラミック電子部品は、セラミック素体と、一対の外部電極と、を具備する。セラミック素体は、第1軸に垂直な一対の主面と、第2軸に垂直な一対の端面と、第3軸に垂直な一対の側面と、一対の端面に引き出された複数の内部電極と、を有し、略直方体状に構成される。一対の外部電極は、端面を被覆する端面被覆部と、端面被覆部から連続して形成され主面の一部を覆う主面被覆部と、を有する。主面被覆部は、導電性樹脂層と、導電性樹脂層の形状に基づいて形成された第1凸部及び第2凸部と、を含む。第1凸部及び第2凸部は、第2軸方向中央側に向かってそれぞれ膨らみ、かつ、第3軸方向に離間して配置される。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸に垂直な一対の主面と、前記第1軸に直交する第2軸に垂直な一対の端面と、前記第1軸及び前記第2軸に直交する第3軸に垂直な一対の側面と、前記一対の端面に引き出された複数の内部電極と、を有する、略直方体状のセラミック素体と、
前記端面を被覆する端面被覆部と、前記端面被覆部から連続して形成され前記主面の一部を覆う主面被覆部と、を有し、前記第2軸方向に対向する一対の外部電極と、
を具備し、
前記主面被覆部は、
導電性樹脂層と、
前記導電性樹脂層の形状に基づいて形成され、前記第2軸方向中央側に向かってそれぞれ膨らみ、かつ、前記第3軸方向に離間して配置された第1凸部及び第2凸部と、を含む
積層セラミック電子部品。
【請求項2】
請求項1に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記主面被覆部の前記第2軸方向外側における外縁部から、前記第1凸部において最も第2軸方向中央側に位置する第1頂部までの前記第2軸方向における第1ピーク寸法、及び、前記外縁部から、前記第2凸部において最も第2軸方向中央側に位置する第2頂部までの前記第2軸方向における第2ピーク寸法は、それぞれ、前記主面被覆部の前記第2軸方向における最小寸法の1.5倍以上である
積層セラミック電子部品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記主面被覆部の前記第2軸方向外側の外縁部から、前記第1凸部において最も第2軸方向中央側に位置する第1頂部までの前記第2軸方向における第1ピーク寸法、及び、前記外縁部から、前記第2凸部において最も第2軸方向中央側に位置する第2頂部までの前記第2軸方向における第2ピーク寸法は、それぞれ、前記積層セラミック電子部品の前記第2軸方向における寸法の、1/10以上2/5以下である
積層セラミック電子部品。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記主面被覆部の前記第2軸方向外側の外縁部から、前記第1凸部において最も第2軸方向中央側に位置する第1頂部までの前記第2軸方向における第1ピーク寸法は、前記外縁部から、前記第2凸部において最も第2軸方向中央側に位置する第2頂部までの前記第2軸方向における第2ピーク寸法よりも大きい
積層セラミック電子部品。
【請求項5】
請求項4に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記第1ピーク寸法は、前記第2ピーク寸法の1.1倍以上1.5倍以下である
積層セラミック電子部品。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記第1凸部において最も第2軸方向中央側に位置する第1頂部と、前記第2凸部において最も第2軸方向中央側に位置する第2頂部と、の間の前記第3軸方向における離間距離は、前記積層セラミック電子部品の前記第3軸方向における寸法の、1/5以上1/2以下である
積層セラミック電子部品。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記一対の外部電極は、それぞれ、前記端面被覆部から前記主面被覆部の一部まで延出する下地層と、前記端面被覆部及び前記主面被覆部の表層を構成するメッキ層と、をさらに有し、
前記導電性樹脂層は、前記主面被覆部において、前記下地層を覆い、かつ、前記下地層よりも前記第2軸方向中央側に延出し、
前記第1凸部及び前記第2凸部は、前記導電性樹脂層と前記メッキ層との積層構造を有する
積層セラミック電子部品。
【請求項8】
積層セラミック電子部品と、接続電極を有する実装基板と、を具備し、
前記積層セラミック電子部品は、
第1軸に垂直な一対の主面と、前記第1軸に直交する第2軸に垂直な一対の端面と、前記第1軸及び前記第2軸に直交する第3軸に垂直な一対の側面と、前記一対の端面に引き出された複数の内部電極と、を有する、略直方体状のセラミック素体と、
前記端面を被覆する端面被覆部と、前記端面被覆部から連続して形成され前記主面の一部を覆う主面被覆部と、を有し、前記第2軸方向に対向する一対の外部電極と、
を具備し、
前記主面被覆部は、
導電性樹脂層と、
前記導電性樹脂層の形状に基づいて形成され、前記第2軸方向中央側に向かってそれぞれ膨らみ、かつ、前記第3軸方向に離間して配置された第1凸部及び第2凸部と、を含み、かつ、
前記接続電極に対向して配置される
回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミック電子部品及び回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサ等の積層セラミック電子部品は、自動車の電子制御化の流れによって、車載機器にも広く用いられている。例えば車載機器では、積層セラミック電子部品を実装した基板が、温度変化の非常に大きな環境に配置され得る。基板が大きな温度変化を受けた場合、この基板が熱膨張及び熱収縮することにより、積層セラミック電子部品にも応力が発生し得る。例えば特許文献1には、この応力に起因するクラックの発生を抑制する等の観点から、柔軟性の高い導電性樹脂層を有する外部電極を備えた積層セラミック電子部品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-191880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
積層セラミック電子部品は、一般に、外部電極の下面が基板に対向した状態で、半田を用いて基板に実装される。基板が上方に凸状に撓んだ場合、外部電極の下面には、基板から離間する方向の応力が生じる。この応力が局所的に集中した場合、柔軟性の高い導電性樹脂層によっても応力に耐えられず、外部電極がセラミック素体から剥がれてしまうことがあった。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、実装後における外部電極のセラミック素体からの剥がれを抑制することが可能な積層セラミック電子部品及び回路基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る積層セラミック電子部品は、セラミック素体と、一対の外部電極と、を具備する。
前記セラミック素体は、第1軸に垂直な一対の主面と、前記第1軸に直交する第2軸に垂直な一対の端面と、前記第1軸及び前記第2軸に直交する第3軸に垂直な一対の側面と、前記一対の端面に引き出された複数の内部電極と、を有し、略直方体状に構成される。
前記一対の外部電極は、前記端面を被覆する端面被覆部と、前記端面被覆部から連続して形成され前記主面の一部を覆う主面被覆部と、を有する。
前記主面被覆部は、導電性樹脂層と、前記導電性樹脂層の形状に基づいて形成された第1凸部及び第2凸部と、を含む。
前記第1凸部及び前記第2凸部は、前記第2軸方向中央側に向かってそれぞれ膨らみ、かつ、前記第3軸方向に離間して配置される。
【0007】
上記構成では、実装時に基板と対向し得る主面被覆部が、導電性樹脂層の形状に基づいて形成された第1凸部及び第2凸部を含む。これにより、実装後の温度変化によって基板が大きく撓み、主面被覆部に大きな応力が生じた場合にも、この応力を第1凸部及び第2凸部に分散させることができる。したがって、応力の集中による、主面被覆部のセラミック素体からの剥がれを抑制することができる。
【0008】
例えば、前記主面被覆部の前記第2軸方向外側における外縁部から、前記第1凸部において最も第2軸方向中央側に位置する第1頂部までの前記第2軸方向における第1ピーク寸法、及び、前記外縁部から、前記第2凸部において最も第2軸方向中央側に位置する第2頂部までの前記第2軸方向における第2ピーク寸法は、それぞれ、前記主面被覆部の前記第2軸方向における最小寸法の2倍以上であってもよい。
例えば、前記第1ピーク寸法及び前記第2ピーク寸法は、それぞれ、前記積層セラミック電子部品の前記第2軸方向における寸法の、1/10以上2/5以下であってもよい。
これにより、応力の分散効果を高めることができる。
【0009】
また、前記第1ピーク寸法は、前記第2ピーク寸法よりも大きくてもよい。
例えば、前記第1ピーク寸法は、前記第2ピーク寸法の1.1倍以上1.5倍以下であってもよい。
これにより、第1凸部の第1ピーク寸法を十分に確保し、応力の緩和及びセラミック素体との密着性の向上等を図ることができる。
【0010】
例えば、前記第1頂部と、前記第2頂部と、の間の前記第3軸方向における離間距離は、前記積層セラミック電子部品の前記第3軸方向における寸法の、1/5以上1/2以下であってもよい。
これにより、第1凸部及び第2凸部に生じる応力をより確実に分散させることができる。また、応力が第3軸方向外側に生じにくくなり、積層セラミック電子部品の姿勢を安定させることができる。
【0011】
さらに、前記一対の外部電極は、それぞれ、前記端面被覆部から前記主面被覆部の一部まで延出する下地層と、前記端面被覆部及び前記主面被覆部の表層を構成するメッキ層と、をさらに有していてもよい。
この場合、前記導電性樹脂層は、前記主面被覆部において、前記下地層を覆い、かつ、前記下地層よりも前記第2軸方向中央側に延出し、
前記第1凸部及び前記第2凸部は、前記導電性樹脂層と前記メッキ層との積層構造を有していてもよい。
これにより、第1凸部及び第2凸部において、導電性樹脂層が直接セラミック素体と接することができる。したがって、導電性樹脂層によってセラミック素体への応力の影響を低減でき、セラミック素体のクラックを抑制することができる。また、第1凸部及び第2凸部のセラミック素体に対する密着性も高めることができる。
【0012】
本発明の他の形態に係る回路基板は、積層セラミック電子部品と、接続電極を有する実装基板と、を具備する。
前記積層セラミック電子部品は、セラミック素体と、一対の外部電極と、を有する。
前記セラミック素体は、第1軸に垂直な一対の主面と、前記第1軸に直交する第2軸に垂直な一対の端面と、前記第1軸及び前記第2軸に直交する第3軸に垂直な一対の側面と、前記一対の端面に引き出された複数の内部電極と、を有し、略直方体状に構成される。
前記一対の外部電極は、前記端面を被覆する端面被覆部と、前記端面被覆部から連続して形成され前記主面の一部を覆う主面被覆部と、を有する。
前記主面被覆部は、導電性樹脂層と、前記導電性樹脂層の形状に基づいて形成された第1凸部及び第2凸部と、を含む。
前記第1凸部及び前記第2凸部は、前記第2軸方向中央側に向かってそれぞれ膨らみ、かつ、前記第3軸方向に離間して配置される。
さらに、前記主面被覆部は、前記接続電極に対向して配置される。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、実装後における外部電極のセラミック素体からの剥がれを抑制することが可能な積層セラミック電子部品及び回路基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの斜視図である。
図2】上記積層セラミックコンデンサの図1のA-A'線に沿った断面図である。
図3】上記積層セラミックコンデンサの図1のB-B'線に沿った断面図である。
図4】上記積層セラミックコンデンサが実装された回路基板の断面図である。
図5】上記回路基板の断面図であって、回路基板に撓みが生じた態様を示す図である。
図6】本実施形態の比較例に係る積層セラミックコンデンサの第1軸方向から見た平面図であり、第1主面側を示す図である。
図7】本実施形態の積層セラミックコンデンサの第1軸方向から見た平面図であり、第1主面側を示す図である。
図8】上記積層セラミックコンデンサの第1軸方向から見た図7と同様の平面図であり、応力の分布について説明する図である。
図9】上記積層セラミックコンデンサの製造方法を示すフローチャートである。
図10】ステップS02で得られるセラミック素体の斜視図である。
図11A】ステップS31を示す図である。
図11B】ステップS31を示す図である。
図11C】ステップS31を示す図である。
図12】ステップS32を示す図である。
図13A】ステップS33を示す図である。
図13B】ステップS33を示す図である。
図13C】ステップS33を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図面には、適宜相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。X軸、Y軸、及びZ軸は全図において共通である。
【0016】
[積層セラミックコンデンサ10の基本構成]
図1~3は、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10を示す図である。図1は、積層セラミックコンデンサ10の斜視図である。図2は、積層セラミックコンデンサ10の図1のA-A'線に沿った断面図である。図3は、積層セラミックコンデンサ10の図1のB-B'線に沿った断面図である。
【0017】
積層セラミックコンデンサ10は、セラミック素体11と、第1外部電極13aと、第2外部電極13bと、を備える。セラミック素体11の表面は、X軸に垂直な第1及び第2端面E1,E2と、Y軸に垂直な第1及び第2側面S1,S2と、Z軸に垂直な第1及び第2主面M1,M2と、を有する。つまり、セラミック素体11は、略直方体状である。セラミック素体11は面取りされ、各面を接続する稜部が丸みを帯びた曲面で構成されていることが好ましい。
【0018】
積層セラミックコンデンサ10のX軸方向における最大寸法を、寸法Lとする。積層セラミックコンデンサ10のY軸方向における最大寸法を、寸法Wとする。積層セラミックコンデンサ10のZ軸方向における最大寸法を、寸法Tとする。これらの寸法は、特に限定されないが、例えば以下の範囲を採り得る。寸法Lは、例えば、1.0mm以上6.5mm以下である。寸法Wは、例えば、0.5mm以上5.5mm以下である。寸法Tは、例えば、0.5mm以上3.0mm以下である。積層セラミックコンデンサ10は、例えば、寸法Lが3.2mm、寸法W及び寸法Tが2.5mmのサイズ、寸法Lが1.6mm、寸法W及び寸法Tが0.8mmのサイズ、又は、寸法Lが1.0mm、寸法W及び寸法Tが0.5mmのサイズを有する。
【0019】
積層セラミックコンデンサ10では、第1外部電極13aがセラミック素体11の第1端面E1を覆い、第2外部電極13bがセラミック素体11の第2端面E2を覆っている。外部電極13a,13bは、セラミック素体11を挟んでX軸方向に対向し、積層セラミックコンデンサ10の端子として機能する。
【0020】
外部電極13a,13bは、セラミック素体11の端面E1,E2から主面M1,M2及び側面S1,S2に沿ってX軸方向中央側にそれぞれ延出している。これにより、外部電極13a,13bでは、図2に示すX-Z平面に平行な断面、及びX-Y平面に平行な断面がいずれもU字状となっている。
なお、「X軸方向中央側」とは、積層セラミックコンデンサ10をX軸方向に2等分する仮想的なY-Z平面に近づく側を意味する。一方、「X軸方向外側」とは、当該Y-Z平面から遠ざかる側を意味する。同様に、「Y軸方向中央側」とは、積層セラミックコンデンサ10をY軸方向に2等分する仮想的なX-Z平面に近づく側を意味する。一方、「Y軸方向外側」とは、当該X-Z平面から遠ざかる側を意味する。
【0021】
セラミック素体11は、誘電体セラミックスで形成されている。セラミック素体11は、誘電体セラミックスに覆われた複数の第1内部電極12a及び複数の第2内部電極12bを有する。図2及び図3に示す例において、複数の内部電極12a,12bは、いずれもX-Y平面に沿って延びるシート状であり、Z軸方向に沿って交互に配置されている。
【0022】
セラミック素体11には、内部電極12a,12bがセラミック層を挟んでZ軸方向に対向する対向領域が形成されている。第1内部電極12aは、対向領域から第1端面E1に引き出され、第1外部電極13aに接続されている。第2内部電極12bは、対向領域から第2端面E2に引き出され、第2外部電極13bに接続されている。
【0023】
このような構成により、積層セラミックコンデンサ10では、第1外部電極13aと第2外部電極13bとの間に電圧が印加されると、内部電極12a,12bの対向領域において複数のセラミック層に電圧が加わる。これにより、積層セラミックコンデンサ10では、外部電極13a,13b間の電圧に応じた電荷が蓄えられる。
【0024】
セラミック素体11では、内部電極12a,12b間の各セラミック層の容量を大きくするため、高誘電率の誘電体セラミックスが用いられる。誘電体セラミックスは、例えば、一般式ABOで表されるペロブスカイト構造を有するセラミック材料を主成分とすることができる。なお、ペロブスカイト構造は、化学量論組成から外れたABO3-αを含んでもよい。ペロブスカイト構造を有するセラミック材料としては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)に代表される、バリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含む材料が挙げられる。具体的には、例えば、Ba1-x-yCaSrTi1-zZr(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1)が挙げられる。
【0025】
なお、誘電体セラミックスは、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、チタン酸カルシウム(CaTiO)、チタン酸マグネシウム(MgTiO)、ジルコン酸カルシウム(CaZrO3)、チタン酸ジルコン酸カルシウム(Ca(Ti,Zr)O)、チタン酸ジルコン酸バリウムカルシウム((Ba,Ca)(Ti,Zr)O)、ジルコン酸バリウム(BaZrO)、酸化チタン(TiO)などの組成系でもよい。
【0026】
[外部電極13a,13bの基本構成]
図2及び図3を参照し、外部電極13a,13bの外形について説明する。以下の外部電極の説明では、主に第1端面E1側の第1外部電極13aについて説明するが、第2端面E2側の第2外部電極13bも同様に構成される。
【0027】
外部電極13aは、端面E1を被覆する端面被覆部13eと、主面M1,M2の一部を被覆する一対の主面被覆部13mと、側面S1,S2の一部を被覆する一対の側面被覆部13sと、を有する。主面被覆部13mは、端面被覆部13eから連続して形成され主面M1,M2の一部を覆う。側面被覆部13sは、端面被覆部13eから連続して形成され側面S1,S2の一部を覆う。
【0028】
また、外部電極13a,13bは、それぞれ、下地層14と、導電性樹脂層15と、メッキ層16と、を含む積層構造を有する。
【0029】
下地層14は、セラミック素体11上に形成され、少なくとも端面被覆部13eに位置する。これにより、下地層14は、内部電極12a、12bと電気的に接続される。本実施形態において、下地層14は、端面被覆部13eから主面被覆部13m及び側面被覆部13sの一部まで延出する。下地層14は、本実施形態において、導電性金属ペーストを焼き付けた焼結金属膜として構成される。例えば、下地層14は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)のいずれか1つを主成分することができる。また、例えば、下地層14は、ニッケル(Ni)を主成分とした焼結金属膜の上に銅(Cu)などのメッキ層を形成した2層構造としてもよい。
【0030】
導電性樹脂層15は、下地層14を覆い、本実施形態において、端面被覆部13eから主面被覆部13m及び側面被覆部13sまで延出する。このため、主面被覆部13mは、導電性樹脂層15を含む。導電性樹脂層15は、主面被覆部13mにおいて、下地層14を覆い、かつ、下地層14よりもX軸方向中央側まで延出している。つまり、主面被覆部13mのX軸方向中央側の領域では、導電性樹脂層15がセラミック素体11の主面M1,M2と直接接している。導電性樹脂層15は、柔軟性を有する樹脂をベースとしていることから、樹脂下地層14及びメッキ層16よりも高い柔軟性及び撓み強度を有する。
【0031】
導電性樹脂層15は、例えば、樹脂及び導電性材料を含む。樹脂としては、例えば熱硬化性樹脂が用いられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂及びポリイミド樹脂等が挙げられる。導電性材料は、例えば、球状や扁平状の金属粉末(導電性フィラー)が挙げられる。金属粉末としては、例えば、Ag粉末、Cu粉末等が挙げられる。導電性樹脂層15は、上記の他、有機溶剤、硬化剤等の他の成分を含んでいてもよい。
【0032】
メッキ層16は、導電性樹脂層15を覆い、端面被覆部13e、主面被覆部13m及び側面被覆部13sの表層を構成する。メッキ層16は、例えば、導電性樹脂層15上に湿式メッキ法で形成される。メッキ層16は、Ni、Cu、Sn、Pd、Agの少なくともいずれか1つを主成分とする単層又は複層構造を有する。
【0033】
このような構成により、本実施形態の主面被覆部13mは、柔軟性の高い導電性樹脂層15を含む。積層セラミックコンデンサ10は、例えば、第1主面M1側の主面被覆部13mを実装基板110に対向させた状態で、外部電極13a,13bを実装基板110に半田付けすることで、回路基板100を構成する。
【0034】
[回路基板100の構成]
図4に示すように、回路基板100は、積層セラミックコンデンサ10と、実装基板110と、を備える。
【0035】
実装基板110は、X-Y平面に沿って延びる基板本体111と、基板本体111上に設けられた接続電極112と、を有する。2つの接続電極112は、積層セラミックコンデンサ10の外部電極13a,13bにそれぞれ対応して配置される。
【0036】
回路基板100の製造過程においては、まず、実装基板110の各接続電極112上にそれぞれ半田Hが配置される。積層セラミックコンデンサ10は、セラミック素体11の第1主面M1を実装基板110と対向させ、外部電極13a,13bの位置を接続電極112上の位置に合わせた状態で、実装基板110上に載置される。これにより、主面被覆部13mが接続電極112に対向して配置される。
【0037】
積層セラミックコンデンサ10が載置された実装基板110をリフロー炉などで加熱することで、接続電極112上の半田Hを溶融させる。これにより、溶融状態の半田Hは、実装基板110の接続電極112、及び積層セラミックコンデンサ10の外部電極13a,13bの表面に沿って濡れ広がる。半田Hが冷却され凝固することで、積層セラミックコンデンサ10が実装基板110に接続される。
【0038】
製造された回路基板100は、車載機器等の電子機器に搭載される。回路基板100が車載機器などの振動や温度変化の大きい環境で用いられる場合、実装基板110が繰り返し撓み変形し得る。
【0039】
図5は、回路基板100が撓み変形した態様を示す模式的な断面図である。
同図に示すように、回路基板100は、搭載されている電子機器の振動や温度変化による変形に伴い、例えば、Z軸方向上方に向かう力F1を受ける。これにより、回路基板100がZ軸方向上方に凸状に撓み変形し、回路基板100には、例えば基板本体111に沿ってX軸方向外側に向かう応力F2が生じる。
【0040】
一方、積層セラミックコンデンサ10は、実装基板110と比較して撓みにくい。このため、実装基板110と接続された積層セラミックコンデンサ10には、X軸方向中央側に向かう応力F3が生じる。
【0041】
これらの応力F2及びF3に伴い、積層セラミックコンデンサ10と実装基板110の接続部分である主面被覆部13mには、Z軸方向及びX軸方向に交差する方向の応力F4が生じる。外部電極13a,13bでは、導電性樹脂層15が柔軟性を有するため、応力F4に伴って主面被覆部13mの導電性樹脂層15が伸縮し得る。これにより、応力F4の影響を緩和することができる。
【0042】
一方で、温度変化が非常に大きく、特に大きな応力F4が生じやすい過酷な環境においては、従来、導電性樹脂層を含む外部電極を備えた積層セラミックコンデンサであっても、外部電極の剥がれが生じることがあった。以下、本実施形態の比較例として、従来の積層セラミックコンデンサの主面被覆部の構成を説明する。
【0043】
図6は、本実施形態の比較例に係る積層セラミックコンデンサ10'を示す第1主面M1側から見た平面図である。積層セラミックコンデンサ10'の外部電極13a',13b'は、導電性樹脂層15(図6において図示せず)を含む主面被覆部13m'を有している。
積層セラミックコンデンサ10'の外部電極13a',13b'において、主面被覆部13m'のX軸方向中央側の内縁部N1'は、X軸方向中央側に向かって凸状に湾曲した形状を有する。つまり、主面被覆部13m'は、X軸方向に膨らんだ単一の凸部131'を含んでいる。
【0044】
積層セラミックコンデンサ10の製造過程において、導電性樹脂層15を端面E1,E2側から樹脂ペーストに浸漬させることで形成する場合(後述するステップS33参照)、主面M1,M2上においては、表面張力により、Y軸方向中央部で樹脂ペーストが濡れ上がりやすくなる。このため、図6に示すような形状の主面被覆部13m'が形成される。
【0045】
本発明者らは、過酷な環境下においては、凸部131'がセラミック素体11から剥がれて、外部電極13a',13b'と実装基板110との接続不良が発生するという知見を得た。これは、凸部131'の頂部P'に、導電性樹脂層15の柔軟性では補うことのできないほどの応力F4が集中したためと考えられる。
【0046】
そこで、本実施形態では、このような応力F4の集中を効果的に抑制する観点から、以下のような構成の主面被覆部13mを有する。
【0047】
[外部電極13a,13bの詳細な構成]
図7は、第1主面M1側から見た積層セラミックコンデンサ10の平面図である。
本実施形態では、主面被覆部13mが、X軸方向中央側に向かってそれぞれ膨らみ、Y軸方向に離間して配置された第1凸部131及び第2凸部132を含む。
なお、本実施形態において、第2主面M2側の主面被覆部13mも同様に構成される。
【0048】
第1凸部131は、第1頂部P1を含む。第1頂部P1は、第1凸部131において最もX軸方向中央側に位置する部分である。
第2凸部132は、第2頂部P2を含む。第2頂部P2は、第2凸部132において最もX軸方向中央側に位置する部分である。
なお、図7のように、2つの第1及び第2頂部P1,P2のX軸方向における位置が異なる場合、よりX軸方向中央側に位置する頂部を含む凸部を、「第1凸部131」と定める。
【0049】
主面被覆部13mでは、X軸方向中央側の内縁部N1が、第1及び第2凸部131,132に起因する、2つの頂部P1,P2を含む凹凸形状を有する。なお、主面被覆部13mにおいて、X軸方向外側の縁部を、外縁部N2とする。
【0050】
第1及び第2凸部131,132は、導電性樹脂層15の形状によってその形状が規定される。つまり、導電性樹脂層15が2つの凸部を有しており(図13C参照)、第1及び第2凸部131,132は、導電性樹脂層15の形状に基づいて形成される。
【0051】
図8に示すように、本実施形態の積層セラミックコンデンサ10では、主面被覆部13mが第1及び第2凸部131,132を有することで、応力F4が2つの頂部P1,P2に分散し得る。つまり、応力F4の局所的な集中を抑制できる。これにより、頂部P1,P2各々に生じる応力F4の大きさを、比較例の頂部P'に生じる応力F4の大きさよりも低減できる。したがって、応力F4による主面被覆部13mのセラミック素体11からの剥がれを抑制することができる。この結果、外部電極13a,13bと実装基板110との接続不良を抑制することができる。
【0052】
さらに、主面被覆部13mが第1及び第2凸部131,132を有することで、導電性樹脂層15のX軸方向における長さを十分に確保することができる。これにより、柔軟性の発揮できる領域を拡張することができる。したがって、主面被覆部13mのセラミック素体11からの剥がれをより効果的に抑制することができる。
【0053】
また、第1及び第2凸部131,132は、図2を参照し、導電性樹脂層15とメッキ層16との積層構造を有することが好ましい。つまり、第1及び第2凸部131,132では、導電性樹脂層15が、柔軟性の低い下地層14を介さずにセラミック素体11と直接接していることが好ましい。これにより、第1及び第2凸部131,132に応力F4が生じた場合でも、導電性樹脂層15の応力の緩和作用により、応力F4のセラミック素体11への伝搬が抑制される。したがって、セラミック素体11のクラックも効果的に抑制される。さらに、導電性樹脂層15により、第1及び第2凸部131,132のセラミック素体11との密着性も高められ、第1及び第2凸部131,132のセラミック素体11からの剥がれをより効果的に抑制することができる。
【0054】
また、主面被覆部13mの剥がれをより確実に抑制する観点から、主面被覆部13mの各部の寸法を、以下のように設定できる。なお、図7には、第2外部電極13bの主面被覆部13mの寸法を示しているが、第1外部電極13aの主面被覆部13mも同様に構成され得る。
【0055】
図7に示すように、主面被覆部13mのX軸方向外側の外縁部N2から、第1頂部P1までのX軸方向における寸法を、第1ピーク寸法D1とする。外縁部N2から第2頂部P2までのX軸方向における寸法を、第2ピーク寸法D2とする。
また、主面被覆部13mにおいて、外縁部N2から内縁部N1までのX軸方向における最も狭い部分の寸法を、主面被覆部のX軸方向における最小寸法D0とする。最小寸法D0となる部分は、主面被覆部13mにおいて、第1凸部131及び第2凸部132よりもY軸方向外側でもよい。あるいは、当該部分は、第1凸部131及び第2凸部132の間の部分であってもよい。最小寸法D0は、例えば、主面被覆部13mの下地層14のX軸方向における寸法にほぼ等しくなる。
【0056】
例えば、第1ピーク寸法D1及び第2ピーク寸法D2は、それぞれ、最小寸法D0の1.5倍以上であることが好ましい。これにより、第1及び第2凸部131,132を、最小寸法D0となる部分から十分に膨らませることができる。したがって、第1及び第2凸部131,132における、応力を分散する作用を確実に発揮させることができる。
【0057】
また、これにより、応力F4に対して柔軟性を発揮できる第1凸部131及び第2凸部132の長さを十分に確保することができる。加えて、主面被覆部13mのセラミック素体11に対する密着性を十分に確保することができる。したがって、上記構成により、主面被覆部13mのセラミック素体11からの剥がれを、より効果的に抑制することができる。
【0058】
また、第1ピーク寸法D1及び第2ピーク寸法D2は、それぞれ、最小寸法D0の4倍以下であることが好ましい。これにより、第1及び第2外部電極13a,13bが接触して導通することを抑制することができる。また、導電性樹脂の使用量も低減することができるとともに、第1及び第2凸部131,132の形状が急峻になりすぎず、製造も容易になる。
【0059】
また、第1ピーク寸法D1及び第2ピーク寸法D2は、それぞれ、積層セラミックコンデンサ10のX軸方向における寸法Lの、1/10以上2/5以下であることが好ましい。
【0060】
第1及び第2ピーク寸法D1,D2が寸法Lの1/10以上であることで、応力F4に対して柔軟性を発揮できる第1凸部131及び第2凸部132の長さを十分に確保することができるとともに、主面被覆部13mのセラミック素体11に対する密着性を十分に確保することができる。第1及び第2ピーク寸法E1,E2が寸法Lの2/5以下であることで、第1及び第2外部電極13a,13bが接触して導通することをより確実に抑制することができる。
【0061】
また、第1ピーク寸法D1は、第2ピーク寸法D2よりも大きいことが好ましい。
【0062】
上述のように、ピーク寸法の長い方が、応力F4の緩和及びセラミック素体11との密着性の観点からは有利となる。そこで、第1及び第2ピーク寸法D1,D2の異なる第1及び第2凸部131,132を形成し、第1凸部131の第1ピーク寸法D1を長く形成することで、第1凸部131における応力F4の緩和及びセラミック素体11との密着性の効果をより高めることができる。また、第1及び第2ピーク寸法D1,D2の双方を長く形成した場合と比較して、第1及び第2外部電極13a,13bの導通のリスクを抑制できる。また、導電性樹脂の使用量も低減することができるとともに、第1及び第2凸部131,132の双方の形状が急峻になりすぎず、製造も容易になる。
【0063】
特に、第1ピーク寸法D1を、第2ピーク寸法D2の1.1倍以上とすることで、上記作用効果をより確実に得ることができる。また、第1ピーク寸法D1を、第2ピーク寸法D2の1.5倍以下とすることで、第1凸部131の形状が急峻になりすぎず、製造上の観点からもより有利になる。また、第1及び第2凸部131,132に生じる応力F4のバランスを維持でき、実装基板110に対する積層セラミックコンデンサ10の倒れのリスクを抑制できる。
【0064】
また、応力F4をより確実に分散させる観点からは、第1頂部P1と第2頂部P2とを、ある程度離間させることが好ましい。例えば、第1頂部P1と、第2頂部P2との間のY軸方向における離間距離Wpは、積層セラミックコンデンサ10のY軸方向における寸法Wの1/5以上1/2以下であることが好ましい。
【0065】
離間距離Wpを寸法Wの1/5以上とすることで、応力F4が近い位置に集中することを抑制できる。これにより、応力F4を分散させて主面被覆部13mの剥がれを抑制する効果を、より確実に得ることができる。
離間距離Wpを寸法Wの1/2以下とすることで、第1及び第2凸部131,132がY軸方向外側に配置されることを抑制できる。これにより、応力F4がY軸方向外側に偏って生じにくくなり、第1及び第2凸部131,132に生じた応力F4による積層セラミックコンデンサ10の倒れのリスクを抑制できる。したがって、回路基板100が、安定した実装状態を維持することができる。
【0066】
[積層セラミックコンデンサ10の製造方法]
図9は、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10の製造方法の一例を示すフローチャートである。図10~13Cは、積層セラミックコンデンサ10の製造過程を示す図である。以下、積層セラミックコンデンサ10の製造方法について、図9に沿って、図10~13Cを適宜参照しながら説明する。
【0067】
(ステップS01:セラミック素体作製)
ステップS01では、未焼成のセラミック素体11を作製する。未焼成のセラミック素体11は、複数のセラミックシートをZ軸方向に積層して熱圧着することにより得られる。セラミックシートに予め所定のパターンの導電性金属ペーストを印刷しておくことにより、内部電極12a,12bを配置することができる。
【0068】
セラミックシートは、セラミックスラリーをシート状に成形した未焼成の誘電体グリーンシートである。セラミックシートは、例えば、ロールコーターやドクターブレードなどを用いてシート状に成形される。セラミックスラリーの成分は、所定の組成のセラミック素体11が得られるように調整される。
【0069】
(ステップS02:焼成)
ステップS02では、ステップS01で得られた未焼成のセラミック素体11を焼成する。これにより、セラミック素体11が焼結し、図10に示すセラミック素体11が得られる。セラミック素体11の焼成は、例えば、還元雰囲気下、又は低酸素分圧雰囲気下において行うことができる。セラミック素体11の焼成条件は、適宜決定可能である。
【0070】
(ステップS03:外部電極形成)
ステップS03では、ステップS02で得られたセラミック素体11に外部電極13a,13bを形成する。これにより、図1~3に示す積層セラミックコンデンサ10が完成する。ステップS03には、ステップS31、ステップS32、ステップS33、ステップS34、及びステップS35の5つの工程が含まれる。
【0071】
(ステップS31:下地層形成)
ステップS31では、セラミック素体11に、外部電極13a,13bの下地層14を形成する。下地層14は、例えば、Ni、またはCuを主成分とする導電性金属ペーストPs1を端面E1,E2側に塗布し、焼き付けることで形成される。
【0072】
図11A~11Cは、ステップS31においてセラミック素体11に導電性金属ペーストPs1からなる下地層14uを形成する過程を示している。まず、図11Aに示すように、セラミック素体11を第1端面E1側から導電性金属ペーストPs1に浸漬させ、セラミック素体11上に導電性金属ペーストPs1を付着させる。
【0073】
これにより、図11Bに示すように、セラミック素体11の第1端面E1側を被覆する未焼成の下地層14uが形成される。
【0074】
そして、同様に、図11Cに示すように、セラミック素体11を第2端面E2側から導電性金属ペーストPs1に浸漬させることで、第2端面E2側にも第1端面E1側と同様に未焼成の下地層14uが形成される。
【0075】
なお、ステップS31の浸漬条件は、適宜決定可能である。例えば、セラミック素体11を導電性金属ペーストPs1に浸漬させる深さは、焼き付け後の下地層14のX軸方向における寸法に対応する深さとすることができる。また、浸漬後における下地層14uは、所定の条件で乾燥させることができる。
【0076】
続いて、セラミック素体11に形成された未焼成の下地層14uを加熱処理により焼き付ける。これにより、セラミック素体11に、焼結膜である下地層14が形成される。なお、ステップS31の下地層14uの形成をステップS02の前に実施することで、ステップS02でのセラミック素体11の焼成とステップS31の下地層14uの焼き付けとを1回の加熱処理で行うこともできる。
【0077】
(ステップS32:撥水材塗工)
ステップS32では、下地層14が形成されたセラミック素体11の主面M1,M2に、撥水材を塗工する。撥水材としては、例えば、フッ素化合物、シリコン化合物等の撥水成分を含むものを用いることができる。これにより、次のステップS33の未硬化樹脂層の形成において、導電性樹脂ペーストの濡れ上がりを制御し、第1及び第2凸部131,132を形成することができる。
【0078】
本ステップでは、まず、撥水材が塗工される領域を露出するように、下地層14が形成されたセラミック素体11をマスクする。
続いて、マスクから露出した領域に、撥水材を塗工する。撥水材の塗工方法は特に限定されず、例えば、スプレー法、スパッタリング法、ディッピング法等を用いることができる。あるいは、撥水材がシリコン系の成分を含む場合には、マスクから露出した部分に加熱したシリコンチップを接触させて塗工することもできる。
そして、マスクを除去することで、第1主面M1上に撥水材が塗工されたセラミック素体11が得られる。また、第2主面M2上にも同様に撥水材を塗工することができる。
【0079】
図12は、第1主面M1における、撥水材が塗工される撥水領域Qを模式的に示す図である。
撥水領域Qは、第1主面M1のY軸方向中央部に、X軸方向に沿った帯状の領域として設定される。撥水領域QのY軸方向における幅は、頂部P1,P2間の離間距離Wpの約0.3~1倍の幅に設定される。撥水領域QのY軸方向における側縁部Qsは、製造後の第1及び第2凸部131,132の頂部P1,P2のY軸方向内側を通る位置とする。撥水領域QのX軸方向における長さは、製造後の第1及び第2凸部131,132の間の凹部に到達する長さであればよく、例えば下地層14を含む第1主面M1のX軸方向全長にわたっていてもよい。
なお、第2主面M2側も同様に撥水領域Qを形成することができる。
【0080】
(ステップS33:未硬化樹脂層形成)
ステップS33では、下地層14及び撥水領域Qが形成されたセラミック素体11に、導電性樹脂層15を構成する未硬化樹脂層15uを形成する。未硬化樹脂層15uの形成には、導電性材料を含む未硬化樹脂ペーストPs2を用いる。未硬化樹脂ペーストPs2は、例えば、ペースト状の熱硬化性樹脂と、金属粉末と、を含む。さらに、未硬化樹脂ペーストPs2は、有機溶剤、硬化剤等の他の成分を含んでいてもよい。
【0081】
図13A~13Cは、ステップS33においてセラミック素体11に未硬化樹脂層15uを形成する過程を示している。
まず、図13Aに示すように、セラミック素体11を第1端面E1側から下地層14を覆う位置まで未硬化樹脂ペーストPs2に浸漬させ、セラミック素体11上に未硬化樹脂ペーストPs2を付着させる。
【0082】
付着した未硬化樹脂ペーストPs2は、第1端面E1から、主面M1,M2及び側面S1,S2上をX軸方向上方に向かって濡れ上がる。特に、未硬化樹脂ペーストPs2は、表面張力により、Y軸方向中央部において大きく濡れ上がる傾向を有する。本実施形態では、主面M1,M2のY軸方向中央部上に撥水領域Qが形成されている。このため、未硬化樹脂ペーストPs2は、撥水領域Qには濡れ上がりにくくなり、そのY軸方向側縁部に沿って大きく濡れ上がる。その結果、図13Bに示すように、第1端面E1から主面M1,M2及び側面S1.S2に沿って延出し、かつ、主面M1,M2上に第1凸部151u及び第2凸部152uを含む未硬化樹脂層15uが形成される。
【0083】
そして、同様に、図13Cに示すように、セラミック素体11を第2端面E2側から下地層14を覆う位置まで未硬化樹脂ペーストPs2に浸漬させる。これにより第2端面E2側にも第1端面E1側と同様に第1凸部151u及び第2凸部152uを含む未硬化樹脂層15uが形成される。
【0084】
この手法において、撥水領域Qの側縁部Qsの位置を調整することで、それと対応する頂部P1,P2の位置を調整することができる。例えば、撥水領域Qの側縁部QsをY軸方向外側にずらすと、頂部P1,P2の位置は側面S1,S2に近くなる。
【0085】
また、撥水領域QのY軸方向における寸法を調整することで、頂部P1,P2間の離間距離Wp及び第1及び第2ピーク寸法D1,D2を調整することができる。例えば、撥水領域QのY軸方向における寸法が狭いほど、離間距離Wpは狭くなり、第1及び第2ピーク寸法D1,D2は大きくなる。
【0086】
また、第1ピーク寸法D1を第2ピーク寸法D2よりも大きく形成するためには、例えば、撥水領域Qを第1側面S1又は第2側面S2側に偏って配置することができる。未硬化樹脂ペーストPs2は、撥水領域Qの、よりY軸方向中央側に位置する側縁部Qsに沿って大きく濡れ上がる。撥水領域Qの一方の側縁部Qsを他方の側縁部QsよりもY軸方向中央側に配置することで、第1ピーク寸法D1及び第2ピーク寸法D2の大きさを変化させることができる。また撥水領域Qに形成する撥水材の塗工量を偏らせることで第1ピーク寸法D1と第2ピーク寸法D2の大きさを変化させることができる。撥水材の塗工量を多くした方のピーク寸法は小さくなる。また撥水領域Qの全体に形成する撥水材の塗工量を多くすれば第1及び第2頂部P1,P2間の凹みを大きく形成することができ、同塗工量を少なくすれば同凹みを小さくすることができる。
【0087】
第1及び第2ピーク寸法D1,D2は、未硬化樹脂ペーストPs2を浸漬させるX軸方向の深さによっても調整可能である。一例として、セラミック素体11を未硬化樹脂ペーストPs2に浸漬させる深さは、下地層14のX軸方向における寸法と同等の深さとすることができる。これにより、最小寸法D0を下地層14のX軸方向における寸法程度に留めることができる。なお、未硬化樹脂ペーストPs2を浸漬させるX軸方向の深さが深いほど、第1及び第2ピーク寸法D1,D2は大きくなるが、この手法では最小寸法D0も大きくなる。
【0088】
第1及び第2ピーク寸法D1,D2、及び最小寸法D0に対する第1及び第2ピーク寸法D1,D2の比率(D1/D0,D2/D0)は、未硬化樹脂ペーストPs2の物性によっても調整することができる。例えば、セラミック素体11に対して濡れやすい未硬化樹脂ペーストPs2を用いることで、浸漬後の未硬化樹脂ペーストPs2の濡れ上がりを促進でき、第1及び第2ピーク寸法D1,D2及び上記比率(D1/D0,D2/D0)を大きくすることができる。また、未硬化樹脂ペーストPs2の粘度を低くすることでも、濡れ上がりを促進でき、第1及び第2ピーク寸法D1,D2及び上記比率(D1/D0,D2/D0)を大きくすることができる。未硬化樹脂ペーストPs2の粘度は、例えば、1.0Pa・s以上50Pa・s以下とすることができる。
【0089】
その他のステップS33の条件も、適宜決定可能である。形成される未硬化樹脂の形状を見ながら、上記の各条件のほかに例えば、未硬化樹脂ペーストPs2への浸漬時間や未硬化樹脂ペーストPs2の温度を変更してもよい。また、浸漬後における未硬化樹脂層15uは、所定の条件で乾燥させることができる。
【0090】
(ステップS34:熱硬化処理)
ステップS34では、形成された未硬化樹脂層15uを熱処理によって硬化させる。熱処理の温度は、例えば100~500℃とすることができる。この熱処理は、例えば、還元雰囲気下、又は低酸素分圧雰囲気下において行うことができる。これにより、未硬化樹脂層15uが熱硬化して、導電性樹脂層15が形成される。
【0091】
(ステップS35:メッキ層形成)
ステップS35では、セラミック素体11に形成された下地層14及び導電性樹脂層15上に湿式メッキ処理によってメッキ層16を形成する。メッキ層16は例えば、導電性樹脂層15上にNiメッキを形成し、さらにその上にSnメッキを形成してもよい。これにより、外部電極13a,13bが完成する。湿式メッキ処理によって下地層14及び導電性樹脂層15の輪郭に沿ったメッキ層16が形成されるため、外部電極13a,13bには、導電性樹脂層15の形状に起因する第1凸部131及び第2凸部132が形成される。
【0092】
(変形例)
上述した製造方法は、本実施形態の積層セラミックコンデンサ10の構成が得られる限りにおいて様々に変更可能である。例えば、外部電極13a,13bの形成方法は、下地層14及び導電性樹脂層15を形成可能であれば、上記の手法に限定されない。例えば、未硬化樹脂層15uの形成方法は、撥水領域Qを形成するものに限定されず、導電性樹脂層15の形成領域を露出するマスクをセラミック素体11上に形成して、マスクから露出された部分に導電性樹脂ペーストを付着させてもよい。
【0093】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0094】
導電性樹脂層15は、少なくとも一方の主面(第1主面M1)上の主面被覆部13mに位置していればよく、端面被覆部13e及び側面被覆部13sに位置していなくてもよい。また、第1凸部131及び第2凸部132を含む主面被覆部13mは、一方の主面(第1主面M1)上に少なくとも位置していればよい。
【0095】
外部電極13a,13bは、側面被覆部13sを有していなくてもよい。
【0096】
第1及び第2凸部131,132の形状は上述の例に限定されず、例えば、第1ピーク寸法D1及び第2ピーク寸法D2が同一であってもよい。
【0097】
例えば、下地層14が、複数の層を有していてもよい。例えば、下地層14が、焼結膜とメッキ膜とを含んでいてもよい。あるいは、下地層14が、スパッタリング膜と焼結膜とを含んでいてもよい。
【0098】
内部電極12a,12bはZ軸方向に沿って交互に配置されている構成に限定されず、例えばY軸方向に沿って交互に配置されていてもよい。
【0099】
本実施形態に係る積層セラミックコンデンサは、2端子型に限定されず、3端子型に構成することもできる。
【0100】
さらに、本発明は、積層セラミックコンデンサのみならず、外部電極を有する積層セラミック電子部品全般に適用可能である。本発明を適用可能な積層セラミック電子部品としては、積層セラミックコンデンサ以外に、例えば、チップバリスタ、チップサーミスタ、積層インダクタなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0101】
10…積層セラミックコンデンサ(積層セラミック電子部品)
11…セラミック素体
12a,12b…内部電極
13a,13b…外部電極
13e…端面被覆部
13m…主面被覆部
14…下地層
15…導電性樹脂層
16…メッキ層
131…第1凸部
132…第2凸部
P1…第1頂部
P2…第2頂部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12
図13A
図13B
図13C