IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045423
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】光デバイス及び光通信装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/01 20060101AFI20230327BHJP
【FI】
G02F1/01 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153815
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 昌樹
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102AA28
2K102BA01
2K102BB04
2K102BC10
2K102BD01
2K102CA23
2K102DA02
2K102DA04
2K102DD03
2K102EA05
(57)【要約】
【課題】長期信頼性を確保できる光デバイス等を提供する。
【解決手段】光デバイスは、基板と、基板上に積層された誘電体と、誘電体に囲まれた光導波路と、光導波路上に配置され、誘電体に囲まれたヒータ電極と、トレンチとを有する。トレンチは、誘電体に空洞で形成される複数のセグメント状の分割トレンチを備え、分割トレンチがヒータ電極と並列に配置されている。分割トレンチは、当該分割トレンチの端とヒータ電極の側面との間にある誘電体の領域が徐々に広くなるように、ヒータ電極と並列に配置される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に積層された誘電体と、
前記誘電体に囲まれた光導波路と、
当該光導波路上に配置され、前記誘電体に囲まれたヒータ電極と、
前記誘電体に空洞で形成される複数のセグメント状の分割トレンチを備え、前記分割トレンチが前記ヒータ電極と並列に配置されたトレンチと、を有し、
前記分割トレンチは、
当該分割トレンチの端と
前記ヒータ電極の側面との間にある前記誘電体の領域が徐々に広くなるように、前記ヒータ電極と並列に配置されることを特徴とする光デバイス。
【請求項2】
前記ヒータ電極の下方にある前記誘電体が積層された前記基板に空洞で形成された空洞部を有することを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項3】
前記分割トレンチは、
前記分割トレンチの中央部と、前記分割トレンチの先端部と、を有し、
前記中央部と前記ヒータ電極の側面との間にある前記誘電体の第1の部位に比較して、前記先端部と前記ヒータ電極の側面との間にある前記誘電体の第2の部位が広くなるように形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の光デバイス。
【請求項4】
前記分割トレンチは、
前記中央部のトレンチ幅と前記先端部のトレンチ幅とを同一にした状態で、前記第1の部位に比較して前記第2の部位が広くなるように形成されたことを特徴とする請求項3に記載の光デバイス。
【請求項5】
前記トレンチは、
前記光導波路の一方の側面に並列に配置された第1のトレンチと、
前記光導波路の他方の側面に並列に配置された第2のトレンチと、
前記第1のトレンチ内に直列に配置された複数の分割トレンチ同士を繋ぐ第1のブリッジと、
前記第2のトレンチ内に直列に配置された複数の分割トレンチ同士を繋ぐ第2のブリッジと、を有することを特徴とする請求項3に記載の光デバイス。
【請求項6】
前記ヒータ電極は、
電極パッドと接続する部位に、前記ヒータ電極から前記電極パッドに向かって徐々に広くなる接合部を有することを特徴とする請求項3に記載の光デバイス。
【請求項7】
基板と、
前記基板上に積層された誘電体と、
前記誘電体に囲まれた光導波路と、
当該光導波路上に配置され、前記誘電体に囲まれたヒータ電極と、
前記誘電体に空洞で形成される複数のセグメント状の分割トレンチを備え、前記分割トレンチが前記ヒータ電極と並列に配置されたトレンチと、を有し、
前記トレンチは、
前記光導波路の一方の側面に並列に配置された第1のトレンチと、
前記光導波路の他方の側面に並列に配置された第2のトレンチと、
前記第1のトレンチ内に直列に配置された複数の分割トレンチ同士を繋ぐ第1のブリッジと、
前記第2のトレンチ内に直列に配置された複数の分割トレンチ同士を繋ぐ第2のブリッジと、を有し、
前記第1のブリッジと前記第2のブリッジとが前記ヒータ電極を挟んで対向しないように前記第1のトレンチ内の前記分割トレンチと前記第2のトレンチ内の前記分割トレンチとを配置したことを特徴とする光デバイス。
【請求項8】
前記ヒータ電極に並列に配置される前記第1のトレンチが開始する開始位置と前記第2のトレンチが開始する開始位置とが同一、かつ、前記ヒータ電極に並列に配置される前記第1のトレンチが終了する終了位置と前記第2のトレンチが終了する終了位置とが同一となるように、前記第1のトレンチ内の前記分割トレンチと前記第2のトレンチ内の前記分割トレンチとを配置したことを特徴とする請求項7に記載の光デバイス。
【請求項9】
前記第1のトレンチ内に直列に配置された前記分割トレンチの数と前記第2のトレンチ内に直列に配置された前記分割トレンチの数とが異なることを特徴とする請求項7に記載の光デバイス。
【請求項10】
前記第1のトレンチが開始する第1の開始位置から当該第1のトレンチが終了する第1の終了位置までの第1の距離を、前記第2のトレンチが開始する第2の開始位置から当該第2のトレンチが終了する第2の終了位置までの第2の距離に比較して長くするように、前記第1のトレンチ内の前記分割トレンチを直列に配置すると共に、前記第2のトレンチ内の前記分割トレンチを直列に配置することを特徴とする請求項9に記載の光デバイス。
【請求項11】
前記ヒータ電極と接続し、前記ヒータ電極に電流を入力する入力側の電極パッドと、
前記ヒータ電極と接続し、前記ヒータ電極から電流を出力する出力側の電極パッドと、を有し、
前記入力側の電極パッドは、
前記ヒータ電極の一方の側面に接続し、
前記出力側の電極パッドは、
前記ヒータ電極の他方の側面に接続することを特徴とする請求項7に記載の光デバイス。
【請求項12】
前記光導波路は、
往路側の光導波路と、復路側の光導波路と、前記往路側の光導波路と前記復路側の光導波路とを光結合する折り返し部とを有し、
前記第1のトレンチは、
前記往路側の光導波路と並列に配置されると共に、
前記第2のトレンチは、
前記復路側の光導波路と並列に配置されることを特徴とする請求項11に記載の光デバイス。
【請求項13】
前記往路側の光導波路及び前記復路側の光導波路は、
前記ヒータ電極の下方に配置され、
前記折り返し部は、
前記出力側の電極パッドの下方に配置されたことを特徴とする請求項12に記載の光デバイス。
【請求項14】
電気信号に対する信号処理を実行するプロセッサと、
光を発生させる光源と、
前記プロセッサから出力される電気信号を用いて、前記光源から発生する光を変調する光変調器と、を有する光通信装置であって、
前記光変調器内の位相シフタは、
基板と、
前記基板上に積層された誘電体と、
前記誘電体に囲まれた光導波路と、
当該光導波路上に配置され、前記誘電体に囲まれたヒータ電極と、
前記誘電体に空洞で形成される複数のセグメント状の分割トレンチを備え、前記分割トレンチが前記ヒータ電極と並列に配置されたトレンチと、を有し、
前記分割トレンチは、
当該分割トレンチの端と前記ヒータ電極の側面との間にある前記誘電体の領域が徐々に広くなるように、前記ヒータ電極と並列に配置されることを特徴とする光通信装置。
【請求項15】
光を発生させる光源と、
前記光源からの光を用いて受信光信号を復調する光受信器と、を有する光通信装置であって、
前記光受信器内の位相シフタは、
基板と、
前記基板上に積層された誘電体と、
前記誘電体に囲まれた光導波路と、
当該光導波路上に配置され、前記誘電体に囲まれたヒータ電極と、
前記誘電体に空洞で形成される複数のセグメント状の分割トレンチを備え、前記分割トレンチが前記ヒータ電極と並列に配置されたトレンチと、を有し、
前記分割トレンチは、
当該分割トレンチの端と前記ヒータ電極の側面との間にある前記誘電体の領域が徐々に広くなるように、前記ヒータ電極と並列に配置されることを特徴とする光通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイス及び光通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高速の光通信に使用される光通信装置内の光変調器及び光受信器には位相シフタが内蔵されている。位相シフタは、ヒータ熱で光導波路内の温度を上昇させ、温度上昇による光導波路内の屈折率が変化し、屈折率の変化に応じて光導波路内を通過する信号光の位相をシフトする。
【0003】
図17は、従来の位相シフタ200の一例を示す平面模式図、図18は、位相シフタ200の図17に示すG-G線略断面図である。図17に示す位相シフタ200は、Si基板201と、誘電体202と、光導波路203と、ヒータ電極204と、電極パッド205とを有する。誘電体202は、Si基板201上に積層され、Si基板201上に配置された光導波路203の周囲及び光導波路203上に配置されたヒータ電極204の周囲を囲っている。
【0004】
誘電体202は、例えば、SiO等で形成される。光導波路203は、例えば、Siで形成され、信号光が通過する導波路である。ヒータ電極204は、例えば、Ti等の抵抗のある金属で形成され、駆動電流に応じてヒータ熱を発生し、光導波路203内の温度を上昇させる。電極パッド205は、ヒータ電極204と接続し、ヒータ電極204に電流を入力する入力側の電極パッド205Aと、ヒータ電極204から電流を出力する出力側の電極パッド205Bとを有する。
【0005】
位相シフタ200は、ヒータ電極204への駆動電流に応じてヒータ熱が発生し、このヒータ熱で光導波路203内の温度を上昇させる。更に、光導波路203は、温度上昇によるSiの熱光学効果に応じて光導波路203内の屈折率が変化する。更に、位相シフタ200は、屈折率の変化に応じて光導波路203内を通過する信号光の位相をシフトする。
【0006】
図17に示す位相シフタ200では、ヒータ電極204で発生したヒータ熱の大部分が誘電体202及びSi基板201に拡散し、光導波路203に作用するヒータ熱は一部に過ぎない。その結果、光導波路203への加熱効率が悪く、消費電力が大きくなってしまう。
【0007】
そこで、光導波路203への加熱効率を改善する位相シフタがある。図19は、従来の位相シフタ200Aの一例を示す平面模式図、図20は、位相シフタ200Aの図19に示すH-H線略断面図である。尚、図17に示す位相シフタ200と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。
【0008】
図19に示す位相シフタ200Aは、Si基板201、誘電体202、光導波路203、ヒータ電極204及び電極パッド205の他に、空洞部206と、2本のトレンチ207(207A,207B)とを有する。空洞部206は、光導波路103下の誘電体202が積層されたSi基板201の部位に形成された空洞で構成する。トレンチ207は、ヒータ電極204及び光導波路203の周囲を囲う誘電体202に形成された空洞で構成する。各トレンチ207は、光導波路103上の誘電体202内に配置されたヒータ電極204の左右側面を両側から挟むように並列に配置されている。
【0009】
各トレンチ207は、ヒータ電極204と並列になる誘電体202の部位に空洞を形成することで、ヒータ電極204で発生したヒータ熱の誘電体202への拡散を抑制する。空洞部206は、ヒータ電極204で発生したヒータ熱のSi基板201への拡散を抑制する。つまり、位相シフタ200Aは、2本のトレンチ207及び空洞部206によって、ヒータ電極204で発生したヒータ熱が光導波路203以外の誘電体202やSi基板201に拡散するのを抑制する。その結果、光導波路203への加熱効率を改善しながら、位相シフタ200Aの消費電力を抑制できる。
【0010】
しかしながら、従来の位相シフタ200Aでは、2本のトレンチ207及び空洞部206によって光導波路203を覆う誘電体202がSi基板201上を空中に浮かんだ状態となる。しかも、位相シフタ200Aの寸法Lは数百ミクロン程度であるため、2本のトレンチ207及び空洞部206の空洞によってトレンチ207の両端にある誘電体202及び光導波路203の部位Xに応力が集中する。トレンチ207の両端にある誘電体202及び光導波路203の部位Xに応力が集中した場合に、当該部位Xにクラックが発生する。その結果、当該部位Xのクラックによって光導波路203の光損失が大きくなる。
【0011】
そこで、光導波路203の加熱効率を改善しながら、光導波路203のクラックの発生を抑制できる位相シフタ200Bが求められている。
【0012】
図21は、従来の位相シフタ200Bの一例を示す平面模式図、図22は、位相シフタ200Bの図21に示すJ-J線略断面図、図23は、位相シフタ200Bの図21に示すK-K線略断面図である。尚、図19に示す位相シフタ200Aと同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。
【0013】
図21に示す位相シフタ200Bは、複数のセグメント状の分割トレンチ210を有する2本のトレンチ207と、分割トレンチ210同士を繋ぐ誘電体202で形成されたブリッジ202Bとを有する。一方のトレンチ207Aは、例えば、同一寸法の4個の平面長方形状の分割トレンチ210を有する。同様に、他方のトレンチ207Bも、4個の分割トレンチ210を有する。
【0014】
位相シフタ200Bでは、複数の分割トレンチ210でトレンチ207を構成しているので、分割トレンチ210間の複数のブリッジ202Bで前述した応力の集中が分散する。その結果、図19に示す位相シフタ200Aに比較して空洞による応力の集中を抑制することで、部位Xのクラックの発生を抑制することで、光導波路203の光損失の発生を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平01-158413号公報
【特許文献2】特開2016-142995号公報
【特許文献3】特開2004-037524号公報
【特許文献4】米国特許第5117470号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従来の位相シフタ200Bでは、分割トレンチ210とヒータ電極204との間にある誘電体202の部位202Aの領域が狭くなるため、当該部位202Aにヒータ電極204のヒータ熱が集中して局所的に温度が高くなる。一方、位相シフタ200Bでは、分割トレンチ210間の誘電体202のブリッジ202Bの領域が広くなるため、ヒータ電極204のヒータ熱が拡散して温度が低くなる。
【0017】
しかしながら、従来の位相シフタ200Bでは、分割トレンチ210間のブリッジ202Bでヒータ電極204のヒータ熱が拡散するため、ヒータ電極204に大きな電流を流した場合にブリッジ202Bと部位202Aとの間で温度勾配が急峻になる。ブリッジ202Bと部位202Aとの間で温度勾配が急峻になると、サーモマイグレーションによるヒータ電極204の材料(Ti)が変異し、ヒータ電極204が断線するおそれがある。その結果、位相シフタ200Bの長期信頼性が劣化してしまう。
【0018】
一つの側面では、長期信頼性を確保できる光デバイス等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
一つの態様の光デバイスは、基板と、基板上に積層された誘電体と、誘電体に囲まれた光導波路と、光導波路上に配置され、誘電体に囲まれたヒータ電極と、トレンチとを有する。トレンチは、誘電体に空洞で形成される複数のセグメント状の分割トレンチを備え、分割トレンチがヒータ電極と並列に配置されている。分割トレンチは、当該分割トレンチの端とヒータ電極の側面との間にある誘電体の領域が徐々に広くなるように、ヒータ電極と並列に配置される。
【発明の効果】
【0020】
一つの側面によれば、光デバイスの長期信頼性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本実施例の光通信装置の一例を示す説明図である。
図2図2は、実施例1の位相シフタの一例を示す平面模式図である。
図3図3は、位相シフタの図2に示すA-A線略断面図である。
図4図4は、位相シフタの図2に示すB-B線略断面図である。
図5図5は、実施例2の位相シフタの一例を示す平面模式図である。
図6図6は、実施例3の位相シフタの一例を示す平面模式図である。
図7図7は、実施例4の位相シフタの一例を示す平面模式図である。
図8図8は、実施例5の位相シフタの一例を示す平面模式図である。
図9図9は、位相シフタの図8に示すC-C線略断面図である。
図10図10は、位相シフタの図8に示すD-D線略断面図である。
図11図11は、実施例6の位相シフタの一例を示す平面模式図である。
図12図12は、実施例7の位相シフタの一例を示す平面模式図である。
図13図13は、実施例8の位相シフタの一例を示す平面模式図である。
図14図14は、実施例9の位相シフタの一例を示す平面模式図である。
図15図15は、位相シフタの図14に示すE-E線略断面図である。
図16図16は、位相シフタの図14に示すF-F線略断面図である。
図17図17は、従来の位相シフタの一例を示す平面模式図である。
図18図18は、位相シフタの図17に示すG-G線略断面図である。
図19図19は、従来の位相シフタの一例を示す平面模式図である。
図20図20は、位相シフタの図19に示すH-H線略断面図である。
図21図21は、従来の位相シフタの一例を示す平面模式図である。
図22図22は、位相シフタの図21に示すJ-J線略断面図である。
図23図23は、位相シフタの図21に示すK-K線略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本願が開示する光デバイス等の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、以下に示す各実施例は、矛盾を起こさない範囲で適宜組み合わせても良い。
【実施例0023】
図1は、本実施例の光通信装置1の一例を示す説明図である。図1に示す光通信装置1は、出力側の光ファイバ2A(2)及び入力側の光ファイバ2B(2)と接続する。光通信装置1は、DSP(Digital Signal Processor)3と、光源4と、光変調器5と、光受信器6とを有する。DSP3は、デジタル信号処理を実行する電気部品である。DSP3は、例えば、送信データの符号化等の処理を実行し、送信データを含む電気信号を生成し、生成した電気信号を光変調器5に出力する。また、DSP3は、受信データを含む電気信号を光受信器6から取得し、取得した電気信号の復号等の処理を実行して受信データを得る。
【0024】
光源4は、例えば、レーザダイオード等を備え、所定の波長の光を発生させて光変調器5及び光受信器6へ供給する。光変調器5は、DSP3から出力される電気信号によって、光源4から供給される光を変調し、得られた光送信信号を光ファイバ2Aに出力する光デバイスである。光変調器5は、位相シフタ10等を備えた光変調器等である。光変調器5は、光源4から供給される光が導波路を伝搬する際に、この光を変調部へ入力される電気信号によって変調することで、光送信信号を生成する。位相シフタ10は、光導波路を通過する信号光の位相をシフトする。
【0025】
光受信器6は、光ファイバ2Bから光信号を受信し、光源4から供給される光を用いて受信光信号を復調する。そして、光受信器6は、復調した受信光信号を電気信号に変換し、変換後の電気信号をDSP3に出力する。尚、光受信器6にも、位相シフタ10等を備えている。
【0026】
図2は、実施例1の位相シフタ10の一例を示す平面模式図、図3は、位相シフタ10の図2に示すA-A線略断面図、図4は、位相シフタ10の図2に示すB-B線略断面図である。図2に示す位相シフタ10は、Si基板11と、誘電体12と、光導波路13と、ヒータ電極14と、2本のトレンチ15(15A,15B)と、空洞部16と、電極パッド17とを有する。
【0027】
誘電体12は、Si基板11上に積層され、Si基板11上に配置された光導波路13の周囲及び光導波路13上に配置されたヒータ電極14の周囲を囲っている。誘電体12は、例えば、SiO等で形成される。誘電体12内の光導波路13は、例えば、Siで形成され、信号光が通過する導波路である。誘電体12内のヒータ電極14は、例えば、Ti等の抵抗のある金属で形成され、駆動電流に応じてヒータ熱を発生し、ヒータ熱で光導波路13内の温度を上昇させる。電極パッド17は、ヒータ電極14に電流を入力する入力側の電極パッド17Aと、ヒータ電極14から電流を出力する出力側の電極パッド17Bとを有する。空洞部16は、光導波路13下を覆う誘電体12が積層されたSi基板11の部位に形成された空洞で構成する。
【0028】
各トレンチ15は、ヒータ電極14と並列になる誘電体12の部位に形成された複数の空洞で構成する、複数のセグメント状の分割トレンチ150を有する。尚、2本のトレンチ15は、ヒータ電極14の左右側面の誘電体12に並列に配置されたトレンチである。2本のトレンチ15は、第1のトレンチ15Aと、第2のトレンチ15Bとを有する。第1のトレンチ15Aは、略扇状の同一寸法の4個の分割トレンチ150を有する。同様に、第2のトレンチ15Bも、同一寸法の4個の分割トレンチ150を有する。
【0029】
各分割トレンチ150は、分割トレンチ150の中間部分のトレンチである中央部151と、分割トレンチ150の両端部分のトレンチである先端部152とを有する。先端部152は、中央部151から先端部152に向かって徐々にトレンチ幅を狭くする略扇形状のトレンチである。尚、先端部152は、先端部152から光導波路13までの距離が連続的に変化するトレンチである。誘電体12は、分割トレンチ150の中央部151とヒータ電極14との間の部位である第1の部位12Aと、分割トレンチ150の先端部152とヒータ電極14との間の部位である第2の部位12Bとを有する。更に、誘電体12は、分割トレンチ150間の部位であるブリッジ12Cを有する。第1の部位12Aは、中央部151のヒータ電極14側の壁面とヒータ電極14の側面との間の誘電体12の部位である。第2の部位12Bは、先端部152のヒータ電極14側の壁面とヒータ電極14の側面との間の誘電体12の部位である。ブリッジ12Cは、隣接する分割トレンチ150間の誘電体12の部位である。
【0030】
各分割トレンチ150の先端部152のトレンチ幅W2は、中央部151のトレンチ幅W1に比較して連続的に徐々に狭くしているので、先端部152とヒータ電極14との間の誘電体22の第2の部位12Bの幅が連続的に徐々に広くなる。従って、第2の部位12Bは、ヒータ電極14のヒータ熱が拡散して温度が低くなる。その結果、分割トレンチ150間のブリッジ12Cと第2の部位12Bとの間での温度勾配を緩やかにすることでサーモマイグレーションによるヒータ電極14の材料の変異を抑制できる。
【0031】
位相シフタ10では、分割トレンチ150間の複数のブリッジ12Cで応力集中が分散する。その結果、図19に示す位相シフタ200Bに比較して空洞による応力の集中を抑制することで、光導波路13のクラックの発生を抑制できる。
【0032】
実施例1の位相シフタ10は、各分割トレンチ150の先端部152のトレンチ幅W2が中央部151のトレンチ幅W1に比較して徐々に狭くしているので、先端部152とヒータ電極14との間の第2の部位12Bの領域が徐々に広くなる。そして、第2の部位12Bでのヒータ電極14のヒータ熱が拡散して温度が低くなる。その結果、ブリッジ12Cと第2の部位12Bとの間での温度勾配を緩やかにすることでサーモマイグレーションによるヒータ電極14の材料の変異を抑制できる。しかも、位相シフタ10の長期信頼性を確保できる。
【0033】
位相シフタ10は、ヒータ電極14の下方にある誘電体12が積層されたSi基板11に空洞で形成された空洞部16を有する。その結果、空洞部16でヒータ電極14のSi基板11へのヒータ熱の伝達を抑制できる。加熱効率の改善を図りながら、消費電力の削減を図ることができる。
【0034】
先端部152は、中央部151とヒータ電極14との間にある誘電体12の第1の部位12Aに比較して、先端部152とヒータ電極14との間にある誘電体12の第2の部位12Bが広くなるように形成されている。その結果、第2の部位12Bでヒータ電極14のヒータ熱が拡散して温度が低くなる。
【0035】
尚、実施例1の各分割トレンチ150は、先端部152の形状を中央部151から先端部152に向かって徐々にトレンチ幅を狭くする略扇形状にした。しかしながら、分割トレンチ150内の先端部152のトレンチ幅を狭くした場合に分割トレンチ150の製造時のエッチング工程が困難となるため、歩留まりを劣化させる要因となる。そこで、分割トレンチ150の製造時におけるエッチング工程を簡易化すべく、先端部152の形状を中央部151のトレンチ幅と同一にしても良く、その実施の形態につき、実施例2として以下に説明する。
【実施例0036】
図5は、実施例2の位相シフタ10Aの一例を示す平面模式図である。尚、実施例1の位相シフタ10と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作について省略する。図5に示す位相シフタ10Aと位相シフタ10とが異なるところは、分割トレンチ150A内の先端部152Aのトレンチ幅W2が中央部151のトレンチ幅W1と同一にした点にある。分割トレンチ150Aは、先端部152Aのトレンチ幅W2が中央部151のトレンチ幅W1を同一にしたまま、中央部151から先端部152Aに向かってヒータ電極14から徐々に離れるようにした構造である。
【0037】
各分割トレンチ150Aの先端部152Aとヒータ電極14との間にある誘電体12の第2の部位12Bは、中央部151とヒータ電極14との間の誘電体12の第1の部位12Aに比較して広くした。
【0038】
更に、各分割トレンチ150Aは、中央部151から先端部152Aに向かってヒータ電極14から徐々に離れるため、第2の部位12Bが第1の部位12Aに比較して広くした。そして、第2の部位12Bの領域が徐々に広くなる。第2の部位12Bでは、ヒータ電極14のヒータ熱が拡散して温度が低くなる。その結果、第2の部位12Bとブリッジ12Cとの間での温度勾配を緩やかにすることでサーモマイグレーションによるヒータ電極14の材料の変異を抑制できる。
【0039】
実施例2の分割トレンチ150Aは、中央部151のトレンチ幅W1と先端部152Aのトレンチ幅W2とを同一にしたまま、第1の部位12Aに比較して第2の部位12Bが広くなるように形成された。その結果、中央部151及び先端部152Aのトレンチ幅が同一幅になるため、分割トレンチ150Aの製造時におけるエッチング工程を簡易化できる。
【0040】
尚、実施例2の各分割トレンチ150Aは、図5に示す先端部152Aの形状にする場合を例示したが、これに限定されるものではなく、その実施の形態につき、実施例3として以下に説明する。
【実施例0041】
図6は、実施例3の位相シフタ10Bの一例を示す平面模式図である。尚、実施例1の位相シフタ10と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作について省略する。図6に示す位相シフタ10Bと図5に示す位相シフタ10Aとが異なるところは、先端部152Bのトレンチ幅W2が中央部151のトレンチ幅W1と同一にしたまま、分割トレンチ150Bの先端部152Bの終端を曲線形状にした点にある。
【0042】
各分割トレンチ150Bの先端部152Bとヒータ電極14との間の第2の部位12Bは、中央部151とヒータ電極14との間の誘電体12の第1の部位12Aに比較して広くした。
【0043】
更に、各分割トレンチ150Bは、中央部151から先端部152Bに向かってヒータ電極14から徐々に離れるため、第2の部位12Bが第1の部位12Aに比較して広くした。そして、第2の部位12Bの領域が徐々に広くなるため、第2の部位12Bでは、ヒータ電極14のヒータ熱が拡散して温度が低くなる。その結果、第2の部位12Bとブリッジ12Cとの間での温度勾配を緩やかにすることでサーモマイグレーションによるヒータ電極14の材料の変異を抑制できる。
【0044】
実施例3の分割トレンチ150Bは、中央部151のトレンチ幅W1と先端部152Bのトレンチ幅W2とを同一にしたまま、第1の部位12Aに比較して第2の部位12Bが広くなるように形成された。その結果、中央部151及び先端部152Bのトレンチ幅が同一幅になるため、分割トレンチ150Bの製造時におけるエッチング工程を簡易化できる。
【0045】
尚、実施例3の位相シフタ10Bでは、幅の広い電極パッド17と、幅の狭い光導波路13上のヒータ電極14とを接続する接続部位X2で急激に温度が変化する。そこで、このような事態を解消する実施の形態につき、実施例4として以下に説明する。
【実施例0046】
図7は、実施例4の位相シフタ10Cの一例を示す平面模式図である。尚、実施例3の位相シフタ10Bと同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。図7に示す位相シフタ10Cと図6に示す位相シフタ10Bとが異なるところは、電極パッド17と接続するヒータ電極14の幅をヒータ電極14から電極パッド17に向かって徐々に幅を広くした接合部14Aをヒータ電極14に設けた点にある。
【0047】
ヒータ電極14は、入力側の電極パッド17Aと接続する接続部位に接合部14Aを設けた。更に、ヒータ電極14は、出力側の電極パッド17Bと接続する接続部位に接合部14Aを設けた。
【0048】
実施例4のヒータ電極14は、接続する電極パッド17に向かって徐々に広くなる接合部14Aを有する。その結果、ヒータ電極14と電極パッド17との間の接合部14Aで接続部位X2の温度が急激に変化するような事態を回避できる。
【実施例0049】
図8は、実施例5の位相シフタ10Dの一例を示す平面模式図、図9は、位相シフタ10Dの図8に示すC-C線略断面図、図10は、位相シフタ10Dの図8に示すD-D線略断面図である。尚、実施例1の位相シフタ10と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。図8に示す位相シフタ10Dと実施例1の位相シフタ10とが異なるところは、第1のトレンチ15A及び第2のトレンチ15B内の分割トレンチ150Cのピッチ寸法及び形状が異なる点にある。分割トレンチ150Cの形状は、例えば、矩形状である。更に、第1のトレンチ15A側の分割トレンチ150Cの数と第2のトレンチ15B側の分割トレンチ150Cの数とを同一にした。
【0050】
第1のトレンチ15A内のブリッジ12Cと第2のトレンチ15B内のブリッジ12Cとがヒータ電極14を挟んで対向しないように第1のトレンチ15A内の各分割トレンチ150Cと第2のトレンチ15B内の各分割トレンチ150Cとを配置した。
【0051】
位相シフタ10Dは、ヒータ電極14を基準にして、第1のトレンチ15Aの開始位置Sと第2のトレンチ15Bの開始位置Sとが同一となる。更に、位相シフタ10Dは、ヒータ電極14を基準にして、第1のトレンチ15Aの終了位置Eと第2のトレンチ15Bの終了位置Eとが同一となる。
【0052】
位相シフタ10Dは、第1のトレンチ15A内のブリッジ12Cと第2のトレンチ15B内のブリッジ12Cとがヒータ電極14を挟んで対向しないように第1のトレンチ15A及び第2のトレンチ15B内の各分割トレンチ150Cを配置した。ブリッジ12Cが分散するため、ヒータ電極14からのヒータ熱が拡散する箇所が実施例1の位相シフタ10に比較して増える。その結果、ブリッジ12Cと第2の部位12Bとの間での温度勾配を緩やかにすることでサーモマイグレーションによるヒータ電極14の材料の変異を抑制できる。しかも、位相シフタ10Dの長期信頼性を確保できる。
【0053】
位相シフタ10Dは、ヒータ電極14を基準にして、第1のトレンチ15Aの開始位置Sと第2のトレンチ15Bの開始位置Sとが同一、かつ、第1のトレンチ15Aの終了位置Eと第2のトレンチ15Bの終了位置Eとが同一にした。その結果、誘電体12上の第1のトレンチ15A及び第2のトレンチ15Bを形成する際の工程を簡易化できる。
【0054】
尚、実施例5の位相シフタ10Dは、第1のトレンチ15A及び第2のトレンチ15B内の分割トレンチ150Cの開始位置Sを同一にし、第1のトレンチ15A及び第2のトレンチ15B内の分割トレンチ150Cの終了位置Eを同一にする場合を例示した。しかしながら、これに限定されるものではなく、その実施の形態につき、実施例6として以下に説明する。
【実施例0055】
図11は、実施例6の位相シフタ10Eの一例を示す平面模式図である。尚、実施例5の位相シフタ10Dと同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。図11に示す位相シフタ10Eと位相シフタ10Dとが異なるところは、ヒータ電極14を基準にして、第1のトレンチ15A内の分割トレンチ150Dの開始位置S1と第2のトレンチ15B内の分割トレンチ150Dの開始位置S2とが異なる点にある。更に、ヒータ電極14を基準にして、第1のトレンチ15A内の分割トレンチ150Dの終了位置E1と第2のトレンチ15B内の分割トレンチ150Dの終了位置E2とが異なる。
【0056】
つまり、位相シフタ10Eは、第1のトレンチ15Aの開始位置S1から終了位置E1までの第1の距離L1を第2のトレンチ15Bの開始位置S2から終了位置E2までの第2の距離L2に比較して長くした。更に、位相シフタ10Eは、第1のトレンチ15A内に直列に配置された分割トレンチ150Dの数と第2のトレンチ15B内に直列に配置された分割トレンチ150Dの数とが異なるようにした。
【0057】
そして、第1のトレンチ15A内のブリッジ12Cと第2のトレンチ15B内のブリッジ12Cとがヒータ電極14を挟んで対向しないように第1のトレンチ15A及び第2のトレンチ15B内の各分割トレンチ150Dを配置した。
【0058】
位相シフタ10Eは、ヒータ電極14の第1の側面、例えば、第2のトレンチ15Bに並列に配置されたヒータ電極14の右側面に、入力側の電極パッド17A及び出力側の電極パッド17Bを接続する。尚、ヒータ電極14の第1の側面は、例えば、右側面である。
【0059】
更に、第1のトレンチ15A内の分割トレンチ150Dの数と第2のトレンチ15B内の分割トレンチ150Dの数とが異なる場合でも、電極パッド17と分割トレンチ150Dの相対的な位置を入力側と出力側とで同じ、つまり、図11の図面上で左右対称にした。その結果、パターンを最適化することで温度分布を入力側と出力側で同じように改善できる。
【0060】
実施例6の位相シフタ10Eは、第1のトレンチ15Aの開始位置S1から終了位置E1までの第1の距離L1を第2のトレンチ15Bの開始位置S2から終了位置E2までの第2の距離L2に比較して長くした。その結果、第1のトレンチ15Aの第1の距離L1と第2のトレンチ15Bとの第2の距離L2とが異なる場合でも、ブリッジ12Cと第2の部位12Bとの間での温度勾配を緩やかにする。そして、サーモマイグレーションによるヒータ電極14の材料の変異を抑制できる。しかも、位相シフタ10Eの長期信頼性を確保できる。
【0061】
尚、実施例6の位相シフタ10Eでは、入力側の電極パッド17A及び出力側の電極パッド17Bをヒータ電極14の同一の右側面に配置する場合を例示した。しかしながら、右側面に限定されるものではなく、左側面でもよく適宜変更可能である。また、入力側の電極パッド17Aをヒータ電極14の第1の側面(右側面)に配置し、出力側の電極パッド17B1をヒータ電極14の第1の側面と反対方向の第2の側面である左側面に配置しても良く、その実施の形態につき、実施例7として以下に説明する。
【実施例0062】
図12は、実施例7の位相シフタ10Fの一例を示す平面模式図である。尚、実施例6の位相シフタ10Eと同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。図12に示す位相シフタ10Fと図11に示す位相シフタ10Eとが異なるところは、ヒータ電極14の第1の側面に入力側の電極パッド17Aを配置し、ヒータ電極14の第2の側面に出力側の電極パッド17B1を配置した点にある。尚、第1の側面がヒータ電極14の右側面の場合、第2の側面はヒータ電極14の左側面である。つまり、第1のトレンチ15A及び第2のトレンチ15Bの位置がヒータ電極14の左右側面で異なる場合に電極パッド17を含めた位相シフタ10Fの全長を短くできる。
【0063】
ヒータ電極14の第1の側面側には入力側の電極パッド17Aを配置し、ヒータ電極14の第2の側面側に出力側の電極パッド17B1を配置しているので、第1の側面側に第1のトレンチ15Aを配置し、第2の側面側に第2のトレンチ15Bを配置する。その結果、位相シフタ10Fでは、位相シフタ10Eの全長からほぼ1個分の電極パッド17の寸法を削減できる。
【0064】
実施例7の入力側の電極パッド17Aは、ヒータ電極14の第1の側面に接続し、出力側の電極パッド17B1は、ヒータ電極14の第2の側面に接続する。位相シフタ10Fでは、位相シフタ10Fの全長を短縮化できる。
【0065】
尚、実施例7の位相シフタ10Fは、単一方向の光導波路13を配置する場合を例示したが、折り返し部を有する双方向の光導波路13を配置しても良く、その実施の形態につき、実施例8として以下に説明する。
【実施例0066】
図13は、実施例8の位相シフタ10Gの一例を示す平面模式図である。尚、実施例7の位相シフタ10Fと同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。図13に示す位相シフタ10Gと位相シフタ10Fとが異なるところは、折り返し部13Cを有する双方向の光導波路13を配置し、双方向の光導波路13上のヒータ電極14の両側面に第1のトレンチ15A及び第2のトレンチ15Bを配置した点にある。
【0067】
双方向の光導波路13は、往路側の光導波路13Aと、折り返し部13Cと、復路側の光導波路13Bとを有する。往路側の光導波路13Aは、信号光を入力する入力端と接続する光導波路である。折り返し部13Cは、第1のS字曲線部13C1と、U字曲線部13C3と、第2のS字曲線部13C2とを有する。第1のS字曲線部13C1は、往路側の光導波路13AとU字曲線部13C3との間を光結合する光導波路である。U字曲線部13C3は、第1のS字曲線部13C1と第2のS字曲線部13C2との間を光結合する光導波路である。第2のS字曲線部13C2は、U字曲線部13C3と復路側の光導波路13Bとの間を光結合する光導波路である。更に、復路側の光導波路13Bは、出力端と接続し、第2のS字曲線部13C2からの信号光を出力端に出力する光導波路である。
【0068】
往路側の光導波路13Aの長さは、例えば、10μm~500μm程度、復路側の光導波路13Bの長さも、例えば、10μm~500μm程度である。更に、折り返し部13Cの直径寸法は、例えば、5μm~20μm程度である。
【0069】
ヒータ電極14は、往路側の光導波路13A及び復路側の光導波路13B上の誘電体12内に配置する。その結果、単一のヒータ電極14のヒータ熱が往路側の光導波路13A及び復路側の光導波路13Bに伝わることで往路側の光導波路13A及び復路側の光導波路13Bの屈折率が変化することになる。
【0070】
往路側の光導波路13Aのみでは、通過する信号光の位相を最大90度までシフト可能にするが、折り返しの復路側の光導波路13Bを加えることで、通過する信号光の位相を最大180度までシフト可能になる。その結果、1本のヒータ電極14で往路側の光導波路13A及び復路側の光導波路13Bの光屈折率を変更可能にすることで消費電力も大幅に削減できる。
【0071】
実施例8の第1のトレンチ15Aは、ヒータ電極14下方にある往路側の光導波路13Aと並列に配置されると共に、第2のトレンチ15Bは、ヒータ電極14下方にある復路側の光導波路13Bと並列に配置される。その結果、往路側の光導波路13A及び復路側の光導波路13Bの屈折率を変化できるため、位相シフト効率の大幅向上を図ることができる。
【0072】
更に、往路側の光導波路13A及び復路側の光導波路13Bは、ヒータ電極14の下方に配置される。その結果、1本のヒータ電極14で往路側の光導波路13A及び復路側の光導波路13Bの光屈折率を変更可能にすることで消費電力を大幅に削減できる。
【0073】
尚、実施例8の位相シフタ10Gは、出力側の電極パッド17B1の先に光導波路13の折り返し部13Cを配置する場合を例示した。しかしながら、出力側の電極パッド17B1内に折り返し部13Cを配置しても良く、その実施の形態につき、実施例9として以下に説明する。
【実施例0074】
図14は、実施例9の位相シフタ10Hの一例を示す平面模式図、図15は、位相シフタ10Hの図14に示すE-E線略断面図、図16は、位相シフタ10Hの図14に示すF-F線略断面図である。尚、実施例8の位相シフタ10Gと同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明について省略する。
【0075】
図14に示す位相シフタ10Hと図13に示す位相シフタ10Gとが異なるところは、出力側の電極パッド17B2の下部に、往路側の光導波路13Aと復路側の光導波路13Bとの間を結合する折り返し部13Cを配置した点にある。位相シフタ10Hは、ヒータ電極14の下に2本の光導波路13、例えば、第1のS字曲線部13C1及び第2のS字曲線部13C2を配置した。
【0076】
実施例9の往路側の光導波路13A及び復路側の光導波路13Bは、ヒータ電極14の下方に配置され、折り返し部13Cは、出力側の電極パッド17B2の下方に配置された。その結果、双方向の光導波路13を採用した場合でも、折り返し部13Cを出力側の電極パッド17B2の下方に配置したので、図13に示す位相シフタ10Gに比較して位相シフタ10Hの全長を短縮化できる。
【0077】
尚、実施例5~実施例9の位相シフタ10D(10E,10G,10H)では、分割トレンチ150C(150D、150E)の形状を矩形にする場合を例示したが、矩形に限定されるものではなく、実施例1~4の分割トレンチ150(150A,150B)の形状にしても良く、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 光通信装置
3 DSP
4 光源
5 光変調器
6 光受信器
10 位相シフタ
11 Si基板
12 誘電体
12A 第1の部位
12B 第2の部位
12C ブリッジ
13 光導波路
14 ヒータ電極
14A 接合部
15 トレンチ
15A 第1のトレンチ
15B 第2のトレンチ
16 空洞部
17 電極パッド
17A 入力側の電極パッド
17B 出力側の電極パッド
150 分割トレンチ
151 中央部
152 先端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23