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  • 特開-ヒータユニットおよび車両用シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045432
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】ヒータユニットおよび車両用シート
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/20 20060101AFI20230327BHJP
   D04H 1/4374 20120101ALI20230327BHJP
   D04H 1/542 20120101ALI20230327BHJP
   B60N 2/56 20060101ALI20230327BHJP
   A47C 7/74 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
H05B3/20 350
D04H1/4374
D04H1/542
B60N2/56
A47C7/74 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153827
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】津村 達彦
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
3K034
4L047
【Fターム(参考)】
3B084JF02
3B084JF03
3B087DE09
3B087DE10
3K034AA02
3K034AA06
3K034AA09
3K034AA12
3K034AA25
3K034BA08
3K034BA17
3K034BB08
3K034BB10
3K034BB16
3K034BB18
3K034BC02
3K034BC03
3K034GA04
3K034GA08
3K034HA04
3K034JA09
4L047AA28
4L047BA09
4L047CA01
4L047CA04
4L047CA07
4L047CC09
(57)【要約】
【課題】より機械的強度に優れるヒータユニット、及び前記ヒータユニットを用いた車両用シートを提供すること。
【解決手段】本発明のヒータユニットは、ヒータユニットを構成する基材が有機樹脂から構成されたネットと不織布を組み合わせてなり、しかも前記不織布に融着性繊維を含むものであることから、有機樹脂から構成されたネットに外力が掛かってもネットが破断しにくく、また、不織布に含む融着性繊維の融着成分により有機樹脂から構成されたネットと不織布が強固に接着することから、ヒータユニットに外力が掛かってもヒータユニットが破断しにくく、機械的強度が優れるヒータユニットが実現できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機樹脂から構成された、ネットと不織布を組み合わせてなる基材と、コード状ヒータとを有し、
前記コード状ヒータが、前記基材を構成する不織布上に固定されており、
前記不織布に融着性繊維を含み、前記融着性繊維の融着成分により前記ネットと前記不織布が接着している、ヒータユニット。
【請求項2】
前記不織布を構成する融着性繊維が、表面に融着成分を含む芯鞘型複合融着性繊維である、請求項1に記載のヒータユニット。
【請求項3】
前記不織布のうち、融着性繊維の割合が20mass%を超える、請求項1又は2に記載のヒータユニット。
【請求項4】
前記基材を構成する有機樹脂から構成されたネットと不織布が、不織布に含まれる融着性繊維のみで接着している、請求項1~3のいずれか1項に記載のヒータユニット。
【請求項5】
前記不織布に、難燃性繊維を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のヒータユニット。
【請求項6】
シート表皮とシートパットを有し、前記シート表皮と前記シートパットの間に請求項1~5のいずれか1項に記載のヒータユニットが配設された車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気毛布、電気カーペットや車両用シートのヒータ等に好適に使用できるヒータユニット、及び前記ヒータユニットを用いた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車などの車両用シートに装着される車両用シートヒータとして供されるヒータユニットには、例えば車両用シートを座席のシートに用いる際に、座席に人が座る際、座席から人が立ち上がる際に、荷重が繰り返しヒータユニットに掛かることから、ヒータユニットには機械的強度が要求されている。この要求を満たす、機械的強度に優れるヒータユニットとして、例えば、特開2017-157279号公報(特許文献1)には、略平面状に配置された繊維糸と不織布とを組み合わせてなる基材の上に、コード状ヒータが配設され固定されているヒータユニットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-157279号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたヒータユニットも、確かに従来のヒータユニットと比較して機械的強度に優れるものではあったが、十分なものではなかった。
【0005】
本発明はこのような状況下においてなされたものであり、より機械的強度に優れるヒータユニット、及び前記ヒータユニットを用いた車両用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る発明は、「有機樹脂から構成された、ネットと不織布を組み合わせてなる基材と、コード状ヒータとを有し、前記コード状ヒータが、前記基材を構成する不織布上に固定されており、前記不織布に融着性繊維を含み、前記融着性繊維の融着成分により前記ネットと前記不織布が接着している、ヒータユニット。」である。
【0007】
本発明の請求項2に係る発明は、「前記不織布を構成する融着性繊維が、表面に融着成分を含む芯鞘型複合融着性繊維である、請求項1に記載のヒータユニット。」である。
【0008】
本発明の請求項3に係る発明は、「前記不織布のうち、融着性繊維の割合が20mass%を超える、請求項1又は2に記載のヒータユニット。」である。
【0009】
本発明の請求項4に係る発明は、「前記基材を構成する有機樹脂から構成されたネットと不織布が、不織布に含まれる融着性繊維のみで接着している、請求項1~3のいずれか1項に記載のヒータユニット。」である。
【0010】
本発明の請求項5に係る発明は、「前記不織布に、難燃性繊維を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のヒータユニット。」である。
【0011】
本発明の請求項6に係る発明は、「シート表皮とシートパットを有し、前記シート表皮と前記シートパットの間に請求項1~5のいずれか1項に記載のヒータユニットが配設された車両用シート。」である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に係るヒータユニットは、ヒータユニットを構成する基材が有機樹脂から構成されたネットと不織布を組み合わせてなり、しかも前記不織布に融着性繊維を含むものであることから、有機樹脂から構成されたネットに外力が掛かってもネットが破断しにくく、また、不織布に含む融着性繊維の融着成分により有機樹脂から構成されたネットと不織布が強固に接着することから、ヒータユニットに外力が掛かってもヒータユニットが破断しにくく、機械的強度が優れるヒータユニットが実現できる。
【0013】
本発明の請求項2に係るヒータユニットは、ヒータユニットの構成要素である不織布を構成する融着性繊維が、表面に融着成分を含む芯鞘型複合融着性繊維であることから、より不織布の機械的強度が優れ、より機械的強度が優れるヒータユニットである。
【0014】
本発明の請求項3に係るヒータユニットは、ヒータユニットの構成要素である不織布のうち、融着性繊維の割合が20mass%を超え、融着性繊維の割合が高いことから、不織布に含まれる融着性繊維の融着成分により有機樹脂から構成されたネットと不織布が強固に接着することができ、より機械的強度が優れるヒータユニットである。
【0015】
本発明の請求項4に係るヒータユニットは、ヒータユニットの構成要素である基材を構成する、有機樹脂から構成されたネットと不織布が、不織布に含まれる融着性繊維のみで接着していることから、不織布に含む融着性繊維の融着成分がネットの糸を包み込むように融着することにより有機樹脂から構成されたネットと不織布がより強固に接着することができ、機械的強度が優れるヒータユニットが実現できる。また、有機樹脂から構成されたネットと不織布との接着に接着剤が用いられていないことから、ヒータユニットの加熱時に接着剤に含まれるVOCが揮発することが起こらず、好ましい。
【0016】
本発明の請求項5に係るヒータユニットは、前記不織布に難燃性繊維を含むことから、難燃性に優れる上に、ヒータユニットの加熱によりヒータユニットを構成する基材が変形しにくいことから、より機械的強度が優れるヒータユニットである。
【0017】
本発明の請求項6に係る車両用シートは、破断しにくく機械的強度に優れるヒータユニットが配設されていることから、耐久性に優れる車両用シートである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明による実施の形態を示す図で、ヒータユニットにおけるコード状ヒータの構成の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のヒータユニットを構成する基材は、有機樹脂から構成された、ネットと不織布を組み合わせてなるものである。ネット及び不織布を構成する有機樹脂は、特に限定するものではないが、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、炭化水素の一部をシアノ基またはフッ素或いは塩素といったハロゲンで置換した構造のポリオレフィン系樹脂など)、スチレン系樹脂、ポリエーテル系樹脂(ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ユリア系樹脂、エポキシ系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエーテルケトンなど)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂など)、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド系樹脂(例えば、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリエーテルアミド樹脂、ナイロン樹脂など)、ニトリル基を有する樹脂(例えば、ポリアクリロニトリルなど)、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、フッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど)、セルロース系樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルなどを共重合したポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリルと塩化ビニルまたは塩化ビニリデンを共重合したモダアクリル系樹脂など)、ビニロン系樹脂(酢酸ビニル、ポリビニルアルコールなど)、導電性高分子(ポリピロール系、ポリアニリン系、ポリアセチレン系、ポリチオフェン系など)などであることができる。なお、ヒータユニットの加熱によりVOCが発生しないように、ネット及び不織布を構成する有機樹脂は、加熱によりVOCが発生しない有機樹脂であるのが好ましい。
【0020】
本発明のヒータユニットを構成する基材に含まれる有機樹脂から構成されたネットは、糸状物が一定の間隔で複数方向から交差したもの、あるいは、網状に穴の開いたフィルムである。これらのネットの中でも、外力が掛かってもネット及びネットを構成要素として含むヒータユニットが破断しにくいように、ネットの交点がネットの構成樹脂や接着剤で接着されているのが好ましく、例えば押出成形ネットなどの、ネットの交点がネットの構成樹脂で接着されているネットがより好ましい。
【0021】
前記ネットの目開きは、特に限定するものではないが、ヒータユニットの通気度が高く、ヒータユニットを構成するコード状ヒータから発生した熱を効率よく発散できるように、また、ネットによりヒータユニットの機械的強度を高くできるように、1~18mmが好ましく、2~12mmがより好ましく、3~10mmが更に好ましい。なお、ここでいう「目開き」は、ネットの網目状の開口の一辺の長さに相当する値である。なお、ネットの網目状の開口が正方形でない場合、まず、任意の10点の開口の面積を算出し、平均値をとる。次に、開口の面積から開口が正方形と仮定したときの開口の1辺の長さを算出し、この開口の1辺の長さをネットの目開きとする。
【0022】
また、前記ネットの目付は、特に限定するものではないが、ヒータユニットを構成するコード状ヒータから発生した熱を効率よく発散できるように、また、ネットによりヒータユニットの機械的強度が高くできるように、10~100g/mが好ましく、15~80g/mがより好ましく、20~70g/mが更に好ましい。なお、目付は最も広い面である主面1mあたりの質量をいう。
【0023】
更に、前記ネットの厚さは、特に限定するものではないが、ヒータユニットを構成するコード状ヒータから発生した熱を効率よく発散できるように、また、ネットによりヒータユニットの機械的強度が高くできるように、0.10~2.0mmが好ましく、0.15~1.5mmがより好ましく、0.20~1.0mmが更に好ましい。なお、厚さは、2.0kPa荷重時の値をいう。
【0024】
前記不織布は、乾式法(例えば、カード法、エアレイ法)により製造される乾式不織布、湿式法により製造される湿式不織布、直接紡糸により製造される直接紡糸不織布(スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、電界紡糸不織布)などであることができる。これらの中でも乾式不織布であると、厚さが比較的厚く、不織布とネットとを接着させて基材とする際にコード状ヒータが不織布に沈み込み、不織布とコード状ヒータの接着面積が大きく、より強固に接着できること、また、不織布の通気度が高く、ヒータユニットを構成するコード状ヒータから発生した熱を効率よく発散できることから、好ましい。
【0025】
前記不織布には、融点が低い低融点樹脂を含み、他の繊維と融着できる融着性繊維が含まれている。また、融着性繊維の融着によって、不織布とネットが接着している。これにより、有機樹脂から構成されたネットに外力が掛かっても破断しにくく、また、不織布に含まれている融着性繊維の融着成分によりネットと不織布が強固に接着することから、結果として機械的強度が優れるヒータユニットが実現できる。融着性繊維は、具体的には、融点が低い低融点樹脂を繊維表面に備えているのが好ましい。この低融点樹脂としては、例えば、共重合ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデンなどであることができる。
【0026】
なお、融着性繊維は低融点樹脂のみから構成された単一組成の融着性繊維であっても良いし、低融点樹脂よりも融点の高い高融点樹脂を含む、少なくとも2種類の樹脂から構成された複数組成の融着性繊維であっても良い。複数組成の融着性繊維であると、低融点樹脂の融着によって不織布の構成繊維を固定しても、高融点樹脂によって繊維形態を維持することができ、不織布の機械的強度が優れ、結果として機械的強度が優れるヒータユニットが実現できることから好ましい。複数組成の融着性繊維における低融点樹脂と高融点樹脂の配置は、低融点樹脂(融着成分)が繊維表面に存在する、芯鞘型複合融着性繊維であるのが好ましい。
【0027】
前記不織布に占める、融着性繊維の割合は、高ければ高いほど、不織布に含まれる融着性繊維の融着成分によりネットと不織布がより強固に接着することができ、結果として機械的強度が優れるヒータユニットが実現できることから、20mass%を超えることが好ましく、25mass%以上がより好ましく、30mass%以上が更に好ましい。一方、前記不織布に占める融着性繊維の割合が高すぎると、融着性繊維の低融点成分の接着によって融着性繊維の低融点成分が不織布及びネットの空隙をふさぎヒータユニットの通気度が低下することで、ヒータユニットを構成するコード状ヒータから発生した熱を効率よく発散できなくなるおそれがあることから、80mass%以下が現実的である。
【0028】
前記不織布には上述の通り融着性繊維を含まれているが、融着性繊維の他に、ヒータユニットの難燃性が優れるように、難燃性繊維を含んでいるのが好ましい。難燃性繊維としては、例えば、モダアクリル繊維、ビニリデン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、リン系化合物を共重合したポリエステル繊維、ハロゲン含有モノマーを共重合したアクリル繊維、アラミド繊維、レーヨン繊維、ハロゲン系やリン系又は金属化合物系の難燃剤を練り込んだ繊維であることができる。
【0029】
前記不織布の構成繊維は、例えば、溶融紡糸法、乾式紡糸法、湿式紡糸法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法など)、複合繊維から一種類以上の樹脂成分を除去することで繊維径が細い繊維を抽出する方法、繊維を叩解して分割された繊維を得る方法など公知の方法により得ることができる。
【0030】
また、前記不織布の構成繊維は、構成繊維の断面形状が略円形の繊維や楕円形の繊維以外にも異形断面繊維を含んでいてもよい。なお、異形断面繊維として、中空形状、三角形形状などの多角形形状、Y字形状などのアルファベット文字型形状、不定形形状、多葉形状、アスタリスク形状などの記号型形状、あるいはこれらの形状が複数結合した形状などの繊維断面を有する繊維であってもよい。
【0031】
前記不織布の構成繊維の繊度は、特に限定するものではないが、強度が高い不織布であることができるように、1.1~22dtexであることができ、2.2~17dtexであることができ、3.3~11dtexである。また、不織布の構成繊維の繊維長は、特に限定するものではないが、10~130mmであることができ、25~110mmであることができ、35~80mmであることができる。
【0032】
前記不織布は1層であっても、2層以上であってもよいが、ヒータユニットを成形した際に、不織布が1層であると剥離しにくい傾向があることから、1層であるのが好ましい。なお、ここでいう「層」は、その層自体で取り扱うことのできる形態安定性を有する不織布の層を意味する。つまり、その層自体が絡合、バインダ接着、及び/又は繊維融着によって、繊維同士が結合した不織布の状態にあることを意味する。そのため、未だ繊維同士が結合していない繊維ウエブの状態で積層した後、繊維同士を結合して不織布を製造した場合、1層であり、2層以上の層を有するものではない。
【0033】
前記不織布の目付は、特に限定するものではないが、ヒータユニットを構成するコード状ヒータから発生した熱を効率よく発散できるように、また、ヒータユニットの機械的強度が高くできるように、10~200g/mが好ましく、20~150g/mがより好ましく、40~100g/mが更に好ましい。
【0034】
本発明のヒータユニットを構成する基材は、ネット1層と不織布1層を有する2層構造であってもよいし、1層のネットを、不織布で挟み込む3層構造であってもよい。
【0035】
本発明のヒータユニットを構成する基材は、基材を構成するネットと不織布が、不織布に含まれる融着性繊維により接着している。これにより、不織布に含まれる融着性繊維の融着成分によりネットと不織布が強固に接着することから、結果として機械的強度が優れるヒータユニットが実現できる。なお、ネットと不織布が強固に接着できるように、ネットと不織布の積層体にニードルパンチ処理が施されているのが好ましい。また、ネットと不織布の接着は、不織布に含まれる融着性繊維の他に、接着剤を併用しても良いが、ネットと不織布が、不織布に含まれる融着性繊維のみで接着していると、不織布に含む融着性繊維の融着成分がネットの糸状物を包み込むように融着することにより有機樹脂から構成されたネットと不織布がより強固に接着することができること、また、接着剤を併用するとヒータユニットのコード状ヒータを加熱した際に接着剤に含まれるVOCが揮発するおそれがあることから、ネットと不織布の接着は、不織布に含まれる融着性繊維のみで接着しているのが好ましい。
【0036】
図1に示しているように、本発明のヒータユニット(1)は、ヒータユニットの基材(2)を構成する不織布上に、コード状ヒータ(3)が固定されている。コード状ヒータ(3)は、表面が有機樹脂で被覆されており、コード状ヒータ内部に電熱線を有する。また、ヒータユニット(1)のコード状ヒータ(3)の両端には、コネクタ(4)及び温度制御装置(5)が接続されており、コネクタ(4)を介して電気系統に接続される。
【0037】
コード状ヒータの表面を被覆する有機樹脂は、ネット及び不織布を構成する有機樹脂と同様の有機樹脂であることができる。なお、前記有機樹脂は、熱溶融して基材と接着させることを目的として、融点の低い有機樹脂であってもよいが、コード状ヒータの表面が融解すると、ヒータユニットの成型加工等によりヒータユニットに外力が掛かった際に、コード状ヒータを構成する電熱線が断線するおそれがあることから、コード状ヒータの表面の融解が極力抑えられるように、コード状ヒータの表面に有する有機樹脂の融点は、基材を構成する不織布の融着成分の融点よりも高い融点であるのが好ましい。なお、ヒータユニットの加熱によりVOCが発生しないように、コード状ヒータを構成する有機樹脂は、加熱によりVOCが発生しない有機樹脂であるのが好ましい。
【0038】
また、コード状ヒータを構成する電熱線の構成金属としては、従来公知のもの、例えば、銅、銅合金、ニッケル、鉄、アルミニウム、ニッケル-クロム合金、銅-ニッケル合金、鉄-クロム合金などであることができる。なお、コード状ヒータが難燃性を有していると、高い難燃性を有するヒータユニットであることができることから好ましい。
【0039】
なお、基材とコード状ヒータを強固に接着することを目的として、本発明のヒータユニットを構成する基材の不織布側とコード状ヒータの間に、接着層を有していてもよい。接着層を構成する樹脂は、ネット及び不織布を構成する有機樹脂と同様の有機樹脂であることができる。しかし、接着層が不織布及びネットの空隙をふさぎヒータユニットの通気度が低下することで、ヒータユニットを構成するコード状ヒータから発生した熱を効率よく発散できなくなるおそれがあることから、本発明のヒータユニットは接着層を有しないのが好ましい。
【0040】
基材のコード状ヒータの一方の面(例えば、基材が不織布とネットの2層で構成されている場合、基材のネット側)の面には、接着層の形成、あるいは、両面テープの貼り付けがなされても良い。これは、ヒータユニットを例えば座席に取り付ける際、ヒータユニットを座席に固定するためのものである。
【0041】
本発明の車両用シートは、シート表皮とシートパットを有し、前記シート表皮とシートパットの間に上述のヒータユニットが配設されている。シート表皮は公知の素材であることができ、例えば、織物や合成皮革、天然皮革であることができる。また、シートパットについても公知の素材であることができ、例えば、ウレタンフォームであることができる。更に、ヒータユニットと、シート表皮、シートパットとの接着方法は、特に限定するものではなく、例えば、ヒータユニットと、シート表皮、シートパットを縫合する方法や、両面テープや面ファスナーで接着する方法、ヒータユニット、シート表皮、シートパットに接する接着層を形成する方法であることができる。
【0042】
次に、本発明のヒータユニットの製造方法の一例について説明する。
【0043】
まず、不織布を準備する。不織布の製造方法は、例えば、繊維をカード装置やエアレイ装置などに供することで繊維を絡み合わせる乾式法、繊維を溶媒に分散させシート状に抄き繊維を絡み合わせる湿式法、直接紡糸法[メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法、紡糸原液と気体流を平行に吐出して紡糸する方法(例えば、特開2009-287138号公報に開示の方法など)を用いて、繊維の紡糸を行うと共にこれを捕集する方法]などによって製造出来るが、厚さが比較的厚く、また、不織布の通気度が高く、ヒータユニットを構成するコード状ヒータから発生した熱を効率よく発散できることから、カード装置やエアレイ装置などに供することで繊維を絡み合わせる乾式法を採用するのが好ましい。なお、不織布の強度向上を目的として、ニードルパンチ処理や水流絡合処理などの、不織布の構成繊維同士を絡合させる処理を行うことができる。また、不織布の構成繊維には、不織布の構成繊維同士及び有機樹脂から構成されたネットとの接着を目的として、融着性繊維を含んでいる。
【0044】
次に、不織布と有機樹脂から構成されたネットを組み合わせ、熱により不織布に含まれる融着性繊維を溶かして、不織布と有機樹脂から構成されたネットを接着し、基材を製造する。このとき、不織布に含まれる熱融着性繊維を熱融着させる方法としては、不織布を熱ロールに通す方法や、平板で熱プレスする方法、ドライヤーを通過させる方法など、公知の方法であることができる。
【0045】
次に、基材を構成する不織布上にコード状ヒータを配設し、配設したコード状ヒータと基材を構成する不織布に含まれる融着性繊維を熱融着させることにより基材とコード状ヒータを接着させ、本発明のヒータユニットを製造する。このとき、不織布に含まれる熱融着性繊維を熱融着させる方法としては、上述の方法と同じ公知の方法であることができる。
【実施例0046】
以下、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
(実施例1)
リン系難燃剤を含む難燃ポリエステル繊維(繊度:6.6dtex、繊維長:76mm、融点:270℃)を70mass%と、芯成分にポリエチレンテレフタレート樹脂(融点:256℃)、鞘成分に低融点ポリエチレンテレフタレート(融点:110℃)を有するポリエチレンテレフタレート芯鞘型複合融着性繊維(繊度:4.4dtex、繊維長:51mm)を30mass%用いて、カード機により開繊し、さらに片側からニードルパンチ処理を施すことで、繊維ウエブA(目付:50g/m)を形成した。
その後、交点がネットの構成樹脂で接着された押出成形ネットであるポリプロピレンネット(目開き:6mm、目付:36g/m、厚さ:1.0mm)と繊維ウエブAを積層させ、140℃の熱風で繊維ウエブAのポリエチレンテレフタレート芯鞘型複合融着性繊維の鞘成分を融解して繊維ウエブAとポリプロピレンネットとを接着させ、繊維ウエブAのポリエチレンテレフタレート芯鞘型複合融着性繊維が融着した不織布とポリプロピレンネットが積層された基材(目付:86g/m、厚さ:3mm)を製造した。
【0048】
(実施例2)
実施例1と同じ難燃ポリエステル繊維を50mass%と、実施例1と同じポリエチレンテレフタレート芯鞘型複合融着性繊維を50mass%用いて、実施例1と同じ方法で、繊維ウエブB(目付:50g/m)を形成した。
その後、実施例1と同じポリプロピレンネットと繊維ウエブBを積層させ、140℃の熱風で繊維ウエブBのポリエチレンテレフタレート芯鞘型複合融着性繊維の鞘成分を融解して繊維ウエブBとポリプロピレンネットとを接着させ、繊維ウエブBのポリエチレンテレフタレート芯鞘型複合融着性繊維が融着した不織布とポリプロピレンネットが積層された基材(目付:86g/m、厚さ:3mm)を製造した。
【0049】
(実施例3)
実施例1と同じ難燃性ポリエステル繊維を70mass%と、芯にポリプロピレン(融点:160℃)、鞘にポリエチレン(融点:130℃)を含むポリオレフィン系芯鞘型複合融着性繊維(繊度:3.3dtex、繊維長:64mm)を30mass%用いて、実施例1と同じ方法で、繊維ウエブC(目付:50g/m)を形成した。
その後、実施例1と同じポリプロピレンネットと繊維ウエブCを積層させ、140℃の熱風で繊維ウエブCの芯鞘型複合融着性繊維の鞘成分を融解して繊維ウエブCとポリプロピレンネットとを接着させ、繊維ウエブCのポリオレフィン系芯鞘型複合融着性繊維が融着した不織布とポリプロピレンネットが積層された基材(目付:86g/m、厚さ:3mm)を製造した。
【0050】
(実施例4)
実施例1と同じ難燃ポリエステル繊維を80mass%と、実施例1と同じポリエチレンテレフタレート芯鞘型複合融着性繊維を20mass%用いて、実施例1と同じ方法で、繊維ウエブD(目付:50g/m)を形成した。
その後、実施例1と同じポリプロピレンネットと繊維ウエブDを積層させ、140℃の熱風で繊維ウエブDのポリエチレンテレフタレート芯鞘型複合融着性繊維の鞘成分を融解して繊維ウエブDとポリプロピレンネットとを接着させ、繊維ウエブDのポリエチレンテレフタレート芯鞘型複合融着性繊維が融着した不織布とポリプロピレンネットが積層された基材(目付:86g/m、厚さ:3mm)を製造した。
【0051】
(実施例5)
まず、実施例1と同じ繊維ウエブA(目付:50g/m)を形成した。
その後、交点がネットの構成樹脂で接着された押出成形ネットであるビニロンネット(目開き:2mm、目付:58g/m、厚さ:0.4mm)と繊維ウエブAを積層させ、140℃の熱風で繊維ウエブAのポリエチレンテレフタレート芯鞘型複合融着性繊維の鞘成分を融解して繊維ウエブAとビニロンネットとを接着させ、繊維ウエブAのポリエチレンテレフタレート芯鞘型複合融着性繊維が融着した不織布とビニロンネットが積層された基材(目付:86g/m、厚さ:3mm)を製造した。
【0052】
(比較例1)
まず、実施例1と同じ繊維ウエブA(目付:50g/m)を形成した。
その後、略平面上に縦糸と横糸が配置されたポリエステル織物(目開き:6mm、目付:21g/m、厚さ:0.3mm)と繊維ウエブAを積層させ、140℃の熱風で繊維ウエブAのポリエチレンテレフタレート芯鞘型複合融着性繊維の鞘成分を融解して繊維ウエブAと織物とを接着させ、繊維ウエブAのポリエチレンテレフタレート芯鞘型複合融着性繊維が融着した不織布と織物が積層された基材(目付:71g/m、厚さ:3mm)を製造した。
【0053】
以下の表1に、実施例及び比較例の基材の、基材を構成する不織布の繊維配合、を示す。なお、ポリエチレンテレフタレートはPETと表記し、ポリオレフィンはPOと表記した。
【0054】
【表1】
【0055】
また、実施例及び比較例の基材を、以下の試験方法で評価した。
【0056】
(引き裂き強度試験)
JIS L 1096:2010(織物及び編物の生地試験方法)8.17引裂強さに記載のA-1法(シングルタング法)により、実施例及び比較例の引き裂き強度(N)を評価した。
【0057】
(難燃性試験)
FMVSS No.302 燃焼性試験(JIS D 1201(1998))に準じて測定し、以下の(難燃性評価)により、実施例及び比較例の基材の難燃性を評価した。
(難燃性評価)
〇:基材が燃焼しない、または、基材の燃焼速度が80mm/min.以下
×:基材の燃焼速度が80mm/min.を超える
【0058】
(貼り合わせ試験)
芯に銅系の導線を有し、ポリエチレン樹脂により被覆された、直径1.2mm、長さ150mmのコード状ヒータを5本準備した。そのコード状ヒータを、5mm間隔で平行にそろえた状態で、60℃に加熱した平板プレス機の下面に設置した。そして、そのコード状ヒータの上に、25mm×150mmに切り取った実施例及び比較例の基材を、基材を構成する不織布とコード状ヒータが接し、またネットが上になるように重ね、150℃に加熱した平板プレス機の上面を、平板プレス機の下面との間隔が1mmとなるように調整して15秒間プレス加工を行い、基材とコード状ヒータを貼り合わせ、ヒータユニットを製造した。
その後、以下の(ヒータユニット貼り合わせ評価)により、ヒータユニットにおけるコード状ヒータと基材の貼り合わせを目視で評価し、(基材貼り合わせ評価)により、ヒータユニットを構成する基材におけるネットと不織布の貼り合わせを目視で評価した。
(ヒータユニット貼り合わせ評価)
〇:コード状ヒータが基材を構成する不織布から全く剥離していない
×:コード状ヒータの一部が基材を構成する不織布から剥離している
(基材貼り合わせ評価)
〇:ネット又は織物が不織布から全く剥離していない
×:ネット又は織物の一部が不織布から剥離している
【0059】
実施例及び比較例の評価結果を、以下の表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
実施例及び比較例の結果から、実施例のヒータユニットの基材の方が、引き裂き強度が高く、機械的強度が優れるものであった。これは、強度の高いネットを基材に含み、かつ、ネットと不織布が融着性繊維の融着成分により接着していることによるものと考えられる。
また、実施例1~4の前記基材は、難燃性が優れるものであった。これは、難燃性ポリエステルを、基材を構成する不織布に含んでいるため、また、基材を構成するポリプロピレンネットが熱により溶融することで、基材が炎から遠ざかるためと考えられた。
更に、実施例1~3、5のように、前記基材を構成する不織布に含まれる融着性繊維の量が多いと、基材とネットが強固に結合でき、機械的強度が優れるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明のヒータユニットは、機械的強度に優れており、車などの車両用シート、電気毛布、電気カーペット、床暖房用ヒータ等に好適に使用可能であり、特に車両用シートに好適に使用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1:ヒータユニット
2:基材
3:コード状ヒータ
4:コネクタ
5:温度制御装置
図1