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特開2023-45466ワイヤレス電力伝送装置およびワイヤレス電力伝送システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045466
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】ワイヤレス電力伝送装置およびワイヤレス電力伝送システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20230327BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20230327BHJP
【FI】
H02J7/00 301D
H02J50/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153891
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】生形 直軌
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB02
5G503CA10
5G503GB06
5G503GB08
(57)【要約】
【課題】二次電池を充電する機器の部品定格を大きく取る必要のないワイヤレス電力伝送装置およびワイヤレス電力伝送システムを提供することを目的とする。
【解決手段】実施形態のワイヤレス電力伝送装置は、通信部と制御部を備える。通信部は、ワイヤレスで伝送された電力により充電される二次電池の電圧の情報を受信する。制御部は、通信部が受信した情報に基づいて、伝送する電力を制御する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤレスで電力を伝送するワイヤレス電力伝送装置において、
ワイヤレスで伝送された電力により充電される二次電池の電圧の情報を受信する通信部と、
前記通信部が受信した情報に基づいて、伝送する電力を制御する制御部と、
を具備するワイヤレス電力伝送装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記通信部が受信した情報と予め設定された補正係数に基づく目標値を求め、この目標値に合わせるように伝送する電力を制御する
請求項1に記載のワイヤレス電力伝送装置。
【請求項3】
送電電圧の値を検出する電圧検出部と、
送電電流の値を検出する電流検出部とをさらに備え、
前記制御部は、前記電圧検出部の検出値と前記電流検出部の検出値を乗算した値が前記目標値となるように伝送する電力を制御する
請求項2に記載のワイヤレス電力伝送装置。
【請求項4】
送電側装置から受電側装置にワイヤレスで電力を伝送するワイヤレス電力伝送システムにおいて、
前記受電側装置は、
ワイヤレスで伝送された電力により充電される二次電池の電圧を検出する電池電圧検出部と、
この電池電圧検出部が検出した電圧の情報を送電側装置に送信する送信部と、
を備え、
前記送電側装置は、
前記二次電池の電圧の情報を受信する受信部と、
前記受信部が受信した情報に基づいて、伝送する電力を制御する制御部と、
を備えるワイヤレス電力伝送システム。
【請求項5】
前記送電側装置は、さらに、
送電電圧の値を検出する電圧検出部と、
送電電流の値を検出する電流検出部とを備え、
前記送信部は、前記電池電圧検出部が検出した電圧の情報と、上位装置から与えられた電流を示す指令値の情報を送電側装置に送信し、
前記受信部は、前記二次電池の電圧の情報と前記指令値の情報を受信し、
前記制御部は、前記電圧検出部の検出値と前記電流検出部の検出値を乗算した値と、前記受信部が受信した情報に基づく前記二次電池の電圧と前記指令値の乗算値とを比較した結果に基づいて、前記伝送する電力を制御する
請求項4に記載のワイヤレス電力伝送システム。
【請求項6】
前記送電側装置は、さらに、
送電電圧の値を検出する電圧検出部と、
送電電流の値を検出する電流検出部とを備え、
前記送信部は、前記電池電圧検出部が検出した電圧の情報を送信し、
前記受信部は、前記二次電池の電圧の情報を受信し、
前記制御部は、前記電圧検出部の検出値と前記電流検出部の検出値を乗算した値と、前記受信部が受信した情報に基づく前記二次電池の電圧とあらかじめ記録された電流を示す指令値の情報を送電側装置の乗算値とを比較した結果に基づいて、前記伝送する電力を制御する
請求項4に記載のワイヤレス電力伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、電気機器にワイヤレスで電力を伝送するワイヤレス電力伝送装置およびワイヤレス電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤレスで電力を電気機器に伝送(給電)するワイヤレス電力伝送装置が知られている。送信電力の制御方法にはいくつかあるが、例えば、送信電力が一定になるような制御の場合、受電側で受け取る電力も一定となる。
【0003】
近時、二次電池を充電する充電装置にワイヤレスで電力を伝送することがある。二次電池の特性として、上述した送信電力を一定とする制御とした場合、充電するための充電電流は、充電に伴って電池電圧が上昇すると小さくなる。
【0004】
このように、一定の送信電力を送信することで二次電池を充電する場合、受電電流が変化するため、受電側である充電装置では、受電電流の変化に対応できるように部品定格を大きくする必要があった。
【0005】
これに対して従来は、充電装置と二次電池の間に、DC/DCコンバータを入れるなどの対策も考えられたが、部品点数が単純な整流器と比べて増大してしまう。また別の対策として、受電電流に基づくフィードバック制御が考えられるが、この場合、新たに電流センサが必要となって、サイズ増大やコストアップにつながるという課題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】リチウムイオン二次電池SCiB(登録商標)モジュール用ワイヤレス充電システム、東芝レビューVol.75 No.4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、二次電池を充電する機器の部品定格を大きく取る必要のないワイヤレス電力伝送装置およびワイヤレス電力伝送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態のワイヤレス電力伝送装置は、通信部と制御部を備える。通信部は、ワイヤレスで伝送された電力により充電される二次電池の電圧の情報を受信する。制御部は、通信部が受信した情報に基づいて、伝送する電力を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明に係わるワイヤレス電力伝送システムの構成例を示す図。
図2図1に示したワイヤレス電力伝送システムの詳細な構成を示す図。
図3図2に示したインバータ回路のスイッチングを説明するための図。
図4図2に示したインバータ回路のスイッチングを説明するための図。
図5図1に示したワイヤレス電力伝送システムの送信電力制御の概要を説明するための図。
図6図1に示したワイヤレス電力伝送システムの動作を説明するためのフローチャート。
図7】従来のワイヤレス電力伝送システムの受電側部品に求められる部品定格を説明するための図。
図8図1に示したワイヤレス電力伝送システムの受電側部品に求められる部品定格を説明するための図。
図9図1に示したワイヤレス電力伝送システムの動作の変形例を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、一実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係わるワイヤレス電力伝送システムの一例を示すものであって、ロボットアームなどを備えたAGV(Automatic Guided Vehicle)、AMR(Autonomous Mobile Robot)あるいは、EV(電気自動車)・PHEV(プラグインハイブリッド自動車)に搭載された二次電池をワイヤレス電力伝送により充電するものである。このワイヤレス電力伝送システムは、ワイヤレス電力伝送装置100と、ワイヤレス受電装置200と、被給電装置300を備える。
【0011】
ワイヤレス受電装置200と、被給電装置300は、AGV等に搭載される。
ワイヤレス電力伝送装置100は、送電ユニット100aと送電パッド100bを備える。
【0012】
送電ユニット100aは、商用電源などから供給される電力をワイヤレス伝送用の電力に変換するものであって、ワイヤレス受電装置200と通信して得た情報に基づいて伝送電力を制御する。
【0013】
送電パッド100bは、ワイヤレス受電装置200が備える受電パッド200bと電磁誘導により磁気的に結合する共振回路を備え、送電ユニット100aから供給される電力を非接触でワイヤレス受電装置200に伝送する。
【0014】
ワイヤレス受電装置200は、受電ユニット200aと受電パッド200bを備える。
受電パッド200bは、上記送電パッド100bと電磁誘導により磁気的に結合する共振回路を備え、ワイヤレスで伝送される電力を受電する。
【0015】
受電ユニット200aは、上記送電ユニット100aと通信して二次電池300aの電圧を通知し、受電パッド200bによって得た交流電力を整流して直流電力に変換し、被給電装置300が備える二次電池300aを充電する。
【0016】
被給電装置300は、二次電池300a、モータドライブ回路300b、モータ300cなどを備える。
【0017】
二次電池300aは、例えば、SCiB(登録商標)、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池などの二次電池であって、蓄積した電力をモータドライブ回路300bやモータ300cなどに供給する。
【0018】
モータドライブ回路300bは、二次電池300aに蓄えられた電力を用いて、AGVの車輪の駆動などに用いられるモータ300cへの供給電力を制御する。
【0019】
次に、図2を参照して、実施形態に係わるワイヤレス電力伝送システムについて、より詳細に構成を説明する。
【0020】
前述したように、ワイヤレス電力伝送装置100は、送電ユニット100aと送電パッド100bを備えるが、これらについてより詳細について説明する。
【0021】
送電ユニット100aは、単相(あるいは三相)整流器110、インバータ回路120、送電側センサ回路130、ゲート駆動回路140、送電側通信回路150、記憶部160、制御回路170を備える。
【0022】
単相(あるいは三相)整流器110は、単相(あるいは三相)系統電源Pから供給される交流電圧を直流電圧に変換し、インバータ回路120に入力する。
【0023】
インバータ回路120は、単相(あるいは三相)整流器110から出力された直流電圧を任意の周波数の交流電圧に変換するものであって、後述するゲート駆動回路140によって制御される。
【0024】
具体的には、インバータ回路120は、例えば4つのスイッチング素子として絶縁ゲート型バイポーラートランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)を備え、これら4つトランジスタのゲートがそれぞれのスイッチタイミングQ1~Q4で制御されることにより、上記直流電圧を任意の周波数の交流電圧に変換する。なお、スイッチング素子は上記に限らず、MOS-FET(Metal Oxide Semiconductor - Field Effect Transistor)を用いても良い。
【0025】
例えば、図3(a)に示すように、4つのゲートをそれぞれのスイッチタイミングQ1~Q4でオンすることにより、図3(b)に示すような交流電圧を出力できる。また例えば、出力電力を最大にしたい場合には、図4(a)に示すように、4つのゲートをそれぞれのスイッチタイミングQ1~Q4を2つのゲートで同期させることで、図4(b)に示すような交流電圧を出力できる。
【0026】
送電側センサ回路130は、インバータ回路120に入力される直流電圧と直流電流を、それぞれ送電電圧S001、送電電流S002として検出し、これらの検出結果を制御回路170に出力する。
【0027】
ゲート駆動回路140は、後述する制御回路170の指示にしたがってインバータ回路120のゲートをスイッチングし、インバータ回路120が出力する交流電圧を制御する。
【0028】
送電側通信回路150は、受電ユニット200aと通信するものであって、制御回路170から通知される情報をワイヤレス受電装置200に送信したり、あるいは、ワイヤレス受電装置200から受信した情報を制御回路170に通知する。なお、通信方式としては、赤外線通信やBluetooth(登録商標)、無線LANなどが考えられ、通信方式に応じた通信モジュールを搭載する。
【0029】
記憶部160は、制御回路170のソフトウェアや、ソフトウェアの運用に伴って生成されたデータ、各種パラメータ(パラメータ160a)、当該ワイヤレス電力伝送装置100の運用状態や運用状況に関するデータ、その他、情報処理のための一時的なデータなどを記憶するものであり、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)、SSD(Solid State Drive)などのフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)などの記録デバイスがデータの特性に合わせて、組み合わせて設けられる。
【0030】
制御回路170は、当該ワイヤレス電力伝送装置100の制御中枢であって、プロセッサとメモリを備え、メモリに記憶されるソフトウェアや記憶部160に記憶される制御データ(例えば、パラメータ160a)を読み込んで、これらのソフトウェアや制御データにしたがってプロセッサが動作し、種々の機能を発揮する。
【0031】
具体的には、制御回路170は、後述する受電側の充電監視回路230と協働して、インバータ回路120の出力を制御するものであって、送電側センサ回路130が検出した送電電圧S001や送電電流S002、送電側通信回路150がワイヤレス受電装置200から受信した受電電圧S003、記憶部160が記憶するパラメータ160aなどに基づいて、ゲート駆動回路140に対して、インバータ回路120の出力を制御する指示を与える。
【0032】
送電パッド100bは、コイルL1とキャパシタC1を備えた磁界結合型の共振回路を備え、電磁誘導により受電パッド200bと磁気的に結合し、ワイヤレスで電力を伝送する。なお、この実施形態では、磁界結合型の共振回路を用いる場合を例に挙げて説明するが、電界結合型の送電パッドおよび受電パッドを用いるようにしてもよい。
【0033】
ワイヤレス受電装置200は、前述したように、受電ユニット200aと受電パッド200bを備える。
受電パッド200bは、コイルL2とキャパシタC2を備えた磁界結合型の共振回路を備え、送電パッド100bとの電磁誘導により磁気的に結合し、ワイヤレスで電力を受電する。なお、送電パッド100bが電界結合型の共振回路を用いる場合には、それに合わせた共振回路を備えて、受電を行うようにしてもよい。
【0034】
受電ユニット200aは、整流回路210、受電側センサ回路220、充電監視回路230、受電側通信回路240を備える。
【0035】
整流回路210は、受電ユニット200aによって受電された交流電圧を整流して直流電圧に変換し、受電電流を後段の被給電装置300に出力する。
【0036】
受電側センサ回路220は、受電ユニット200aから二次電池300aに印加される電圧(二次電池300aの電圧)の値を受電電圧S003として検出し、充電監視回路230に出力する。
【0037】
充電監視回路230は、当該ワイヤレス受電装置200の制御中枢であって、プロセッサとメモリを備え、メモリに記憶されるソフトウェアや上位装置400からの指示にしたがってプロセッサが動作し、種々の機能を発揮する。
【0038】
具体的には、充電監視回路230は、送電側の制御回路170と協働して、被給電装置300に対する充電(給電)を制御するものであって、例えば、上位装置400から与えられた指令値(例えば、目標電圧の値など)にしたがった充電や、この充電に関わる制御のために、送電側の制御回路170に対する応答や情報提供を行う。
【0039】
受電側通信回路240は、前述の送電側通信回路150と通信するものであって、充電監視回路230から通知される情報を送電側通信回路150に送信したり、あるいは、送電側通信回路150から受信した情報を充電監視回路230に通知する。
【0040】
上位装置400は、オペレータから指示を受け付け、その指示を充電監視回路230に与えたり、あるいは、充電監視回路230から提供される情報をオペレータに対して通知(例えば、表示)する機能を備える。
【0041】
次に、図5を参照して、当該ワイヤレス電力伝送システムの充電電力制御の概要について説明する。
まず、ワイヤレス受電装置200において、充電監視回路230が、上位装置400を通じてオペレータから受電動作の前に初期設定として、受電の電流値の指令を受電側電流指令値として受け付ける。
【0042】
そして、受電開始の指示を受けると、充電監視回路230が、受電側センサ回路220が検出した受電電圧S003と、上記受電側電流指令値を受電側通信回路240を通じてワイヤレス電力伝送装置100に送信する。
【0043】
これに対して、ワイヤレス電力伝送装置100では、制御回路170が、送電側通信回路150が受信した受電電圧S003と受電側電流指令値を乗算し、この乗算結果に対して、記憶部160が記憶するパラメータ160aを効率補正係数として乗算し、送電電力指令値を生成する。
【0044】
そして制御回路170は、送電側センサ回路130が検出した送電電圧S001と送電電流S002を乗算して、送電電力応答値を生成する。そして、制御回路170は、送電電力指令値から送電電力応答値を減算する。
【0045】
そして制御回路170は、上記減算の結果をPID制御(比例積分微分制御)に用いて、ゲート駆動回路140を通じてインバータ回路120のゲートをスイッチングするためのタイミング制御に用いる。すなわち、上記減算の結果が所望の値になるように、上記タイミング制御を行う。
【0046】
なお、受電電圧S003と上記受電側電流指令値の乗算は、ワイヤレス受電装置200側で行うようにしてもよい。すなわち、充電監視回路230が受電電圧S003と受電側電流指令値の乗算結果をワイヤレス電力伝送装置100に通知するようにしてもよい。
【0047】
次に、図6を参照して、当該ワイヤレス電力伝送システムの充電電力制御についての詳細な動作について説明する。図6は、ワイヤレス電力伝送装置100による送電側充電処理と、ワイヤレス受電装置200による受電側充電処理を対応づけて示したものであって、両者の協働を示している。
【0048】
まず、ワイヤレス電力伝送装置100による送電側充電処理のフローチャートについて説明する。この処理は、制御回路170によってなされる。
【0049】
ステップS101において制御回路170は、前処理を実行し、ステップS102に移行する。なお、前処理としては、記憶部160に予め記憶されるパラメータ160aを読み出し、所定の初期設定(例えば、充電開始電圧の範囲、充電終了電圧、充電範囲電圧の範囲の設定)を行う。
【0050】
ステップS102において制御回路170は、送電側通信回路150からの通知の待機を開始し、ステップS103に移行する。これに伴い、送電側通信回路150は、ワイヤレス受電装置200(受電側通信回路240)との間に通信リンクを確立し、ワイヤレス受電装置200から送信される情報の受信待機状態となり、送信される情報の受信を開始する。
【0051】
ステップS103において制御回路170は、ワイヤレス受電装置200(受電側通信回路240)から送電側通信回路150が充電許可信号を受信したか否かを判定する。ここで、送電側通信回路150が充電許可信号を受信した場合には、ステップS104に移行し、一方、受信しない場合には、再びステップS103に移行して、充電許可信号の受信を監視する。
【0052】
なお、ワイヤレス受電装置200(受電側通信回路240)は、上記充電許可信号の送信に続いて、受電電圧S003の値と、受電側電流指令値を送信し、これらの情報が送電側通信回路150によって受信される。
【0053】
ステップS104において制御回路170は、送電側通信回路150から受信した受電電圧の情報に基づき、この受電電圧の値が充電開始電圧の範囲内か範囲外かを判定する。
【0054】
ここで、受電電圧の値が充電開始電圧の範囲内の場合には、ステップS105に移行し、一方、受電電圧の値が充電開始電圧の範囲外の場合には、ステップS103に移行して、再び充電許可信号の受信を監視する。
【0055】
ステップS105において制御回路170は、充電のための電力のワイヤレス送電を開始することを示す充電開始信号を送電側通信回路150に送信するように指示し、ステップS106に移行する。これに対して送電側通信回路150は、充電開始信号をワイヤレス受電装置200(受電側通信回路240)に宛てて送信する。
【0056】
ステップS106において制御回路170は、ステップS104で受信した受電電圧S003と受電側電流指令値を乗算し、この乗算結果に対してステップS101で読み込んだパラメータ160aを効率補正係数として乗算して、この乗算結果を送電電力指令値として決定してステップS107に移行する。
【0057】
ステップS107において制御回路170は、充電処理を開始し、ステップS108に移行する。なお、上記充電処理では、送電側センサ回路130が送電電圧S001と送電電流S002を検出し、これらを乗算して、送電電力応答値を生成する。そして、制御回路170は、ステップS106で決定した送電電力指令値から送電電力応答値を減算する。
【0058】
そして、制御回路170は、この減算の結果をPID制御(比例積分微分制御)に用いて、ゲート駆動回路140を通じてインバータ回路120のゲートをスイッチングするためのタイミング制御に用いる。これにより、受電電圧S003に応じた交流電圧がインバータ回路120から出力されることになり、送電パッド100bからワイヤレス電力の伝送が開始される。
【0059】
ステップS108において制御回路170は、送電側通信回路150が受信した受電電圧S003の値に基づいて、受電電圧S003の値が充電終了電圧に達したかを判定する。ここで、受電電圧の値が充電終了電圧に達した場合には、ステップS110に移行し、一方、受電電圧の値が充電範囲電圧の範囲内の場合には、ステップS109に移行する。
【0060】
ステップS109において制御回路170は、ワイヤレス受電装置200(受電側通信回路240)から送電側通信回路150が充電許可信号を受信したか否かを判定する。ここで、送電側通信回路150が充電許可信号を受信した場合には、ステップS108に移行して充電処理を継続し、一方、受信しない場合には、ステップS110に移行する。
【0061】
ステップS110において制御回路170は、ステップS107で開始した充電処理を停止し、ステップS102に移行して、充電許可信号の受信を待機する。
【0062】
次に、ワイヤレス受電装置200による受電側充電処理のフローチャートについて説明する。この処理は、充電監視回路230によってなされる。
【0063】
ステップS201において充電監視回路230は、前処理を実行し、ステップS202に移行する。なお、前処理としては、所定の初期設定を行う。
【0064】
ステップS202において充電監視回路230は、上位装置400から充電許可の通知の待機を開始し、ステップS203に移行する。
【0065】
ステップS203において充電監視回路230は、上位装置400から充電許可信号を受信したか否かを判定する。ここで、充電監視回路230が充電許可信号を受信した場合には、ステップS204に移行し、一方、受信しない場合には、再びステップS203に移行して、上位装置400からの充電許可信号の受信を監視する。なお、上位装置400からの充電許可信号は、充電が許可される間、継続的に上位装置400から与えられるものである。
【0066】
ステップS204において充電監視回路230は、受電側通信回路240に対して、充電許可信号を送信するように指示し、ステップS205に移行する。これに対して受電側通信回路240は、前述のステップS103に対応する処理として、充電許可信号をワイヤレス電力伝送装置100(送電側通信回路150)に宛てて送信する。
【0067】
ステップS205において充電監視回路230は、受電側センサ回路220を通じて受電電圧S003を取得し、受電側通信回路240に対して、受電電圧S003を送信するように指示し、ステップS206に移行する。これに対して受電側通信回路240は、前述のステップS104に対応する処理として、受電電圧S003をワイヤレス電力伝送装置100(送電側通信回路150)に宛てて送信する。
【0068】
ステップS206において充電監視回路230は、ワイヤレス電力伝送装置100(送電側通信回路150)から受電側通信回路240が充電開始信号を受信したか否かを判定する。ここで、受電側通信回路240が充電開始信号を受信した場合には、ステップS207に移行し、一方、受信しない場合には、再びステップS204に移行して、充電許可信号の送信を行う。
【0069】
ステップS207において充電監視回路230は、受電側センサ回路220を通じて受電電圧S003を再び取得し、受電側通信回路240に対して、受電電圧S003を送信するように指示し、ステップS208に移行する。これに対して受電側通信回路240は、前述のステップS108に対応する処理として、受電電圧S003をワイヤレス電力伝送装置100(送電側通信回路150)に宛てて送信する。
【0070】
ステップS208において充電監視回路230は、上位装置400から充電許可信号を受信したか否かを判定する。ここで、充電監視回路230が充電許可信号を受信した場合には、ステップS209に移行し、一方、受信しない場合には、ステップS210に移行する。
【0071】
ステップS209において充電監視回路230は、受電側通信回路240に対して、充電許可信号を送信するように指示し、ステップS207に移行する。これに対して受電側通信回路240は、前述のステップS109に対応する処理として、充電許可信号をワイヤレス電力伝送装置100(送電側通信回路150)に宛てて送信する。
【0072】
ステップS210において充電監視回路230は、充電処理を停止し、ステップS202に移行して、上位装置400から充電許可信号の受信を再び待機する。
【0073】
以上のように、上記のワイヤレス電力伝送システムでは、ワイヤレス受電装置200の二次電池300aに印加される電圧の値(受電電圧)をワイヤレス電力伝送装置100に通知し、ワイヤレス電力伝送装置100では、通知された受電電圧に応じた送電電力の制御を行うようにしている。
【0074】
従来のように、送電電力が一定になるように制御した場合、受電側が受け取る電力も一定になる。特に、受電側で二次電池の充電が行われる場合、電池電圧に受電電流が依存することになるため、図7に示すように、電池電圧が低いと受電電流が大きくなってしまう。このため、電池電圧の変動範囲が大きい二次電池を充電する場合には、受電側部品の部品定格を大きく取る必要があった。図7のシミュレーションでは、180A程度である。
【0075】
これに対して、上記のワイヤレス電力伝送システムでは、上述したように、二次電池300aの受電電圧に応じた送電電力の制御を行うようにしているため、電池電圧の変化に対して、受電電流の変化を抑制することができる。すなわち、受電側部品の部品定格を大きく取る必要がなくなる。図8のシミュレーションでは、120A以下である。
【0076】
なお、この発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって種々の発明を形成できる。また例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除した構成も考えられる。さらに、異なる実施形態に記載した構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0077】
例えば、図6に示した送電側充電処理において、ステップS107の充電処理は、ステップS104で受信した受電電圧に基づくステップS106で決定した送電電力指令値に基づいて送電が行われるものとして説明したがこれに限定されるものではない。例えば、図9に示すように、ステップS111を追加し、送電電力指令値を更新するようにしてもよい。
【0078】
具体的には、ステップS111において制御回路170は、ステップS108で受信した受電電圧S003と受電側電流指令値を乗算し、この乗算結果に対してステップS101で読み込んだパラメータ160aを効率補正係数として乗算して、この乗算結果を送電電力指令値として決定する。
このように、充電処理中に最新の受電電圧S003に応じて送電電力指令値を更新することで、電池電圧の変動に影響されることなく受電電流が一定となるように制御することができる。
【0079】
その他、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を施しても同様に実施可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0080】
100…ワイヤレス電力伝送装置、100a…送電ユニット、100b…送電パッド、110…単相(あるいは三相)整流器、120…インバータ回路、130…送電側センサ回路、140…ゲート駆動回路、150…送電側通信回路、160…記憶部、160a…パラメータ、170…制御回路、200…ワイヤレス受電装置、200a…受電ユニット、200b…受電パッド、210…整流回路、220…受電側センサ回路、230…充電監視回路、240…受電側通信回路、300…被給電装置、300a…二次電池、300b…モータドライブ回路、300c…モータ、400…上位装置。
図1
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図9