(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004549
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】メラニン産生抑制用組成物、BMP4発現促進用組成物、c-KIT発現抑制用組成物、及び美白用化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20230110BHJP
A61Q 19/02 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q19/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106308
(22)【出願日】2021-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】川島 えり
(72)【発明者】
【氏名】大谷 理恵
(72)【発明者】
【氏名】畑 友紀
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB032
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC252
4C083AC302
4C083AC342
4C083AC402
4C083AC422
4C083AC442
4C083AC482
4C083AC532
4C083AC622
4C083AC642
4C083AC852
4C083AD022
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD332
4C083AD352
4C083AD392
4C083AD412
4C083AD432
4C083AD492
4C083AD532
4C083AD572
4C083AD662
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC19
4C083DD12
4C083DD27
4C083DD33
4C083EE16
(57)【要約】
【課題】新たなメラニン産生抑制用組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、カホクザンショウ果皮の抽出物を有効成分として含有する、メラニン産生抑制用組成物を提供する。本発明は、カホクザンショウ果皮の抽出物を有効成分として含有する、メラノサイトにおけるBMP4発現促進用組成物も提供する。本発明は、カホクザンショウ果皮の抽出物を有効成分として含有する、メラノサイトにおけるc-KIT発現抑制用組成物も提供する。本発明は、これらの組成物のいずれか1つを含有する美白用化粧料も提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カホクザンショウ果皮の抽出物を有効成分として含有する、メラニン産生抑制用組成物。
【請求項2】
カホクザンショウ果皮の抽出物を有効成分として含有する、メラノサイトにおけるBMP4発現促進用組成物。
【請求項3】
カホクザンショウ果皮の抽出物を有効成分として含有する、メラノサイトにおけるc-KIT発現抑制用組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物を含有する、美白用化粧料。
【請求項5】
前記カホクザンショウ果皮の抽出物の含有量が、乾燥固形分換算で3μg/mL以上である、請求項4に記載の美白用化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メラニン産生抑制用組成物、メラノサイトにおけるBMP4発現促進用組成物、メラノサイトにおけるc-KIT発現抑制用組成物、及び美白用化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミカン科サンショウ属の植物の抽出物を用いた技術が種々提案されている。例えば、特許文献1には、サンショウ抽出物を有効成分として配合してなるチロシナーゼ活性促進剤が記載されている。特許文献2には、血行促進剤とアミノ酸を含有する痩身用組成物が開示されており、当該血行促進剤としてサンショウ抽出物が記載されている。特許文献3には、熱産生タンパク質発現促進剤を含有する痩身用の組成物が開示されており、当該熱産生タンパク質発現促進剤としてミカン科サンショウ属の植物抽出物が記載されている。特許文献4には、ミカン科サンショウ属カホクザンショウの果実の果皮から抽出したエキスである花椒エキスを含有する抗炎症組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-79951号公報
【特許文献2】特開2008-69134号公報
【特許文献3】特開2010-180165号公報
【特許文献4】特開2011-93880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
皮膚におけるシミ及びソバカスなどの色素沈着は、例えば、メラノサイトにおいて過剰に産生されたメラニンが皮膚内に沈着することによって起こりうる。色素沈着を予防又は改善するため、メラニンの産生を抑制可能な種々の成分が提案されているが、新たな成分の開発が望まれている。
そこで、本発明は、新たなメラニン産生抑制用組成物を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、ミカン科サンショウ属カホクザンショウの果皮の抽出物が、メラニン産生抑制作用を有することを見出した。また、本発明者らは、カホクザンショウの果皮の抽出物が、メラノサイトにおけるBMP4発現促進作用、及びメラノサイトにおけるc-KIT発現抑制作用を有することも見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、カホクザンショウ果皮の抽出物を有効成分として含有する、メラニン産生抑制用組成物を提供する。
また、本発明は、カホクザンショウ果皮の抽出物を有効成分として含有する、メラノサイトにおけるBMP4発現促進用組成物も提供する。
本発明は、カホクザンショウ果皮の抽出物を有効成分として含有する、メラノサイトにおけるc-KIT発現抑制用組成物も提供する。
本発明は、上記組成物のいずれか1つを含有する、美白用化粧料も提供する。
前記美白用化粧料において、カホクザンショウ果皮の抽出物の含有量は、乾燥固形分換算で3μg/mL以上であってよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、新たなメラニン産生抑制用組成物が提供される。なお、本発明の効果は、ここに記載された効果に限定されず、本明細書内に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】カショウエキス含有組成物添加時のメラニン量を示すグラフである。
【
図2】サンショウエキス含有組成物添加時のメラニン量を示すグラフである。
【
図3】カショウエキス添加時のBMP4のmRNA発現量を示すグラフである。
【
図4】カショウエキス添加時のc-KITのタンパク質量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態を示したものであり、本発明の範囲がこれらの実施形態のみに限定されることはない。
【0010】
<1.概要>
【0011】
本発明は、メラニン産生抑制用組成物、メラノサイトにおけるBMP4発現促進用組成物、及びメラノサイトにおけるc-KIT発現抑制用組成物を提供する。これらの組成物は、いずれも、カホクザンショウ果皮の抽出物を有効成分として含有する。すなわち、当該カホクザンショウ果皮の抽出物は、メラニン産生抑制作用、メラノサイトにおけるBMP4発現促進作用、及びメラノサイトにおけるc-KIT発現抑制作用を有する。以下、メラニン産生と、BMP4及びc-KITとの関係について説明する。
【0012】
メラニンは、メラノサイトにおいて産生される。BMP4(Bone Morphogenetic Protein 4)は、メラノサイトにおいてメラニンの産生を抑制する働きを有することが知られている。
【0013】
c-KITは、メラノサイト活性化因子の1つであるSCF(Stem Cell Factor)のレセプターである。メラノサイトにおいてc-KITの発現が促進されると、メラノサイトはSCFによって活性化されやすくなり、その結果メラニン産生が促進される。このように、c-KITは、メラノサイトにおいてメラニンの産生を促進する働きを有することが知られている。
【0014】
本発明において用いられるカホクザンショウ果皮の抽出物は、メラノサイトにおいてBMP4の発現を促進し且つc-KITの発現を抑制することにより、メラニンの産生を抑制すると考えられる。
【0015】
以下、本発明に係る組成物の詳細を説明する。
【0016】
<2.メラニン産生抑制用組成物>
【0017】
(1)成分
【0018】
(1-1)カホクザンショウ果皮の抽出物
【0019】
本発明の一実施形態に係るメラニン産生抑制用組成物は、カホクザンショウ果皮の抽出物を有効成分として含有する。カホクザンショウ(Zanthoxylum bungeanum)は、ミカン科サンショウ属の落葉低木であり、花椒(カショウ)とも呼ばれる。
【0020】
本実施形態において、カホクザンショウ果皮の抽出物は、カホクザンショウ果皮を含む抽出原料と溶媒とを接触させることを含む抽出処理によって得られたものである。当該抽出処理に用いられる抽出原料は、カホクザンショウ果皮以外の原料を含んでよい。当該抽出原料は、例えば、果皮以外のカホクザンショウの部位(例えば、果実、種子、葉、幹、枝、根、及び茎など)を含んでよい。上記抽出原料は、好ましくは、カホクザンショウ果皮以外の原料を含まないものである。これにより、有効成分が効率的に抽出されうる。本明細書において「カホクザンショウ果皮以外の原料を含まない」とは、カホクザンショウ果皮以外の原料をまったく含まないこと、及び、カホクザンショウ果皮以外の原料を実質的に含まないことを意味する。「カホクザンショウ果皮以外の原料を実質的に含まない」とは、カホクザンショウ果皮以外に意図的に加えられた抽出原料がないことを意味する。
【0021】
上記抽出処理に用いられるカホクザンショウ果皮は、カホクザンショウの果実から採取された後に処理が施されたものであってよい。当該採取された後の処理は、例えば、洗浄、乾燥、細断、及び粉砕などから選択される少なくとも1つの処理であってよい。当該処理は、当業者に既知の方法により行われてよい。上記抽出処理に用いられるカホクザンショウ果皮は、入手の容易さの観点から、乾燥処理が施されたものであってよく、すなわち乾燥物であってよい。
【0022】
上記抽出処理において用いられる溶媒は、当業者に既知の溶媒であってよい。当該抽出処理において用いられる溶媒として、例えば、水、アルコール類、グリコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、及び炭化水素類などが挙げられる。上記アルコール類として、例えば、エタノール、メタノール、及びプロパノールなどが挙げられる。上記グリコール類として、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、及びプロピレングリコールなどが挙げられる。上記ケトン類として、例えば、アセトン及びメチルエチルケトンなどが挙げられる。上記エステル類として、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、及びギ酸エチルなどが挙げられる。上記エーテル類として、例えば、ジエチルエーテル及びテトラヒドロフランなどが挙げられる。上記炭化水素類として、例えば、ヘキサン及びベンゼンなどが挙げられる。上記抽出処理において、これらの溶媒のうちの1種又は2種以上の組合せが用いられてよい。上記抽出処理において用いられる溶媒は、好ましくはアルコール溶液(水とアルコールとの混合溶媒)又はアルコールであり、より好ましくはエタノール溶液(水とエタノールとの混合溶媒)又はエタノールであり、さらにより好ましくはエタノール溶液である。上記抽出処理において用いられる溶媒がエタノール溶液である場合、エタノール濃度は、例えば50体積%以上であってよく、好ましくは70体積%以上、より好ましくは80体積%以上、さらにより好ましくは85体積%以上、特に好ましくは90体積%以上、又は95体積%以上である。
【0023】
上記抽出処理は、上記カホクザンショウ果皮を含む抽出原料と、上記溶媒と、を接触させることにより行われる。当該接触は、例えば、上記カホクザンショウ果皮を含む抽出原料を上記溶媒に浸漬することであってよい。
【0024】
上記抽出処理は、好ましくは、カホクザンショウ果皮を含む抽出原料を溶媒に浸漬して加熱することを含む加熱抽出である。当該加熱抽出を行うことが、本実施形態に係るメラニン産生抑制用組成物の有効成分を抽出することに適している。加熱抽出における抽出温度(溶媒の温度)の下限値は、好ましくは室温(20℃)を超える温度(すなわち20℃超)であり、より好ましくは30℃以上、さらにより好ましくは40℃以上、特に好ましくは50℃以上である。加熱抽出における抽出温度の上限値は、好ましくは溶媒の沸点以下である。加熱抽出における抽出温度の好ましい数値範囲は、上記で述べた下限値及び上限値から選択された組合せであってよい。抽出処理において用いられる溶媒が、沸点が低いもの(例えば、沸点が100℃より低いもの)である場合、上記加熱抽出は、好ましくは加熱還流抽出である。具体的には、抽出処理に用いられる溶媒が、例えばエタノール溶液又はエタノールである場合、上記加熱抽出は、好ましくは加熱還流抽出である。これにより、抽出処理が効率的に行われうる。加熱還流抽出における抽出温度の好ましい下限値及び上限値は、上記で述べた加熱抽出における抽出温度の好ましい下限値及び上限値と同じであってよい。また、加熱還流抽出における抽出温度の好ましい数値範囲は、当該下限値及び当該上限値から選択された組合せであってよい。
【0025】
上記抽出処理の時間(抽出原料と溶媒とを接触させる時間)は、例えば抽出原料に含まれるカホクザンショウ果皮の量及び溶媒の種類などの要因によって、当業者により適宜調整されてよい。抽出時間は、加熱抽出(加熱還流抽出を含む)の場合、例えば30分~24時間、30分~15時間、30分~10時間、30分~5時間、又は1時間~5時間であってよい。
【0026】
上記メラニン産生抑制用組成物の有効成分は、上記抽出処理によって、カホクザンショウ果皮から溶媒に溶け出す。上記メラニン産生抑制用組成物に用いられるカホクザンショウ果皮の抽出物は、上記抽出処理によって有効成分が溶け出した溶媒そのもの(抽出原液)であってもよく、上記抽出処理の後に抽出原液に処理を施して得られたものであってもよい。上記抽出処理の後に抽出原液に施される処理は、例えば、精製、濃縮、希釈、乾燥、及び溶媒置換などから選択される少なくとも1つの処理であってよい。すなわち、上記メラニン産生抑制用組成物に用いられるカホクザンショウ果皮の抽出物は、例えば、カホクザンショウ果皮の抽出物の精製物、濃縮物、希釈物、乾燥物、又は溶媒置換物であってよい。上記抽出処理の後の処理は、当業者により既知の方法により行われてよい。また、上記精製処理は、例えば、ろ過、洗浄、脱色、脱臭、及び滅菌などの処理を含みうる。
【0027】
上記メラニン産生抑制用組成物に用いられるカホクザンショウ果皮の抽出物は、例えば、上記カホクザンショウ果皮の抽出物の乾燥物を、溶媒に再溶解させたものであってもよい。当該再溶解に用いられる溶媒は、上記抽出処理において用いられた溶媒と同じでもよく、異なってもよい。
【0028】
上記メラニン産生抑制用組成物に用いられるカホクザンショウ果皮の抽出物は、好ましくは抽出処理の後に少なくとも精製処理が施されたものであり、すなわち、好ましくはカホクザンショウ果皮の抽出物の精製物である。
【0029】
(1-2)カホクザンショウ果皮の抽出物の含有量
【0030】
本実施形態のメラニン産生抑制用組成物において、カホクザンショウ果皮の抽出物の含有量の下限値は、乾燥固形分換算で、例えば1μg/mL以上であってよく、好ましくは3μg/mL以上、より好ましくは6μg/mL以上、さらにより好ましくは10μg/mL以上、特に好ましくは15μg/mL以上、20μg/mL以上、25μg/mL以上、30μg/mL以上、40μg/mL以上、又は50μg/mL以上である。このような含有量によって、メラニン産生抑制効果がより高い組成物が得られうる。カホクザンショウ果皮の抽出物の含有量の上限値は、上記メラニン産生抑制用組成物の用途及び形態などに応じて当業者により適宜調整されてよい。当該含有量の上限値は、乾燥固形分換算で、例えば10mg/mL以下、5mg/mL以下、又は2mg/mL以下であってよい。当該含有量の好ましい数値範囲は、上記で述べた下限値及び上限値から選択された組合せであってよい。なお、本明細書において「乾燥固形分換算」とは、カホクザンショウ果皮の抽出物の量を、水分を除いた部分の量である乾燥固形分量に換算することをいう。本明細書において、当該乾燥固形分量は、医薬部外品原料規格2021に定められる一般試験法の蒸発残分試験法に従って測定される。
【0031】
(1-3)カホクザンショウ果皮の抽出物以外の成分
【0032】
本実施形態のメラニン産生抑制用組成物は、カホクザンショウ果皮の抽出物からなる組成物であってよい。すなわち、当該メラニン産生抑制用組成物は、カホクザンショウ果皮の抽出物以外の成分を含有しない組成物であってよい。
【0033】
上記メラニン産生抑制用組成物は、カホクザンショウ果皮の抽出物以外の成分を含有する組成物であってもよい。当該成分は、当技術分野において既知の成分であってよく、例えば、基剤、溶剤(例えば、水、アルコール類など)、油剤、保存剤、乳化剤、着色剤、防腐剤、界面活性剤、酸化防止剤、保湿剤、紫外線吸収剤、増粘剤、粉体、キレート剤、pH調整剤、及び香料などであってよい。これらの成分は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記メラニン産生抑制用組成物に含有されうる。
【0034】
(2)剤型
【0035】
本実施形態のメラニン産生抑制用組成物の剤型は、用途及び目的などに応じて当業者により適宜選択されてよい。当該剤型は、例えば、液状、乳液状、クリーム状、固形状、ゲル状、ペースト状、又は粉末状などであってよい。
【0036】
(3)製造方法
【0037】
本実施形態のメラニン産生抑制用組成物は、上記カホクザンショウ果皮の抽出物を用いることにより製造される。すなわち、上記メラニン産生抑制用組成物の製造方法は、上記カホクザンショウ果皮の抽出物を用いることを含む。当該製造方法は、上記カホクザンショウ果皮の抽出物を用いること以外に、当技術分野において既知の工程を含んでよい。
【0038】
上記製造方法において用いられるカホクザンショウ果皮の抽出物は、上記「(1-1)カホクザンショウ果皮の抽出物」において説明した抽出処理によって得られたものである。すなわち、当該抽出処理の詳細は、上記「(1-1)カホクザンショウ果皮の抽出物」において説明したとおりである。
【0039】
好ましい実施形態において、上記製造方法において用いられるカホクザンショウ果皮の抽出物は、カホクザンショウ果皮(特にはカホクザンショウ果皮の乾燥物)を含む抽出原料と、エタノール溶液又はエタノールと、を接触(特には浸漬)させて加熱する加熱抽出(特には加熱還流抽出)によって得られたものであってよい。上記エタノール溶液のエタノール濃度は、好ましくは70体積%以上、より好ましくは80体積%以上、さらにより好ましくは85体積%以上、特に好ましくは90体積%以上、又は95体積%以上である。上記加熱抽出(特には加熱還流抽出)における抽出温度の下限値は、好ましくは室温(20℃)を超える温度(すなわち20℃超)であり、より好ましくは30℃以上、さらにより好ましくは40℃以上、特に好ましくは50℃以上である。上記加熱抽出(特には加熱還流抽出)における抽出温度の上限値は、好ましくは溶媒の沸点以下である。当該抽出温度の好ましい数値範囲は、これらの下限値及び上限値から選択された組合せであってよい。
【0040】
上記製造方法において、カホクザンショウ果皮の抽出物は、上記「(1-2)カホクザンショウ果皮の抽出物の含有量」において説明した含有量となるように用いられてよい。すなわち、上記製造方法において用いられるカホクザンショウ果皮の抽出物の量の詳細は、上記「(1-2)カホクザンショウ果皮の抽出物の含有量」において説明したとおりである。
【0041】
(4)用途
【0042】
本実施形態のメラニン産生抑制用組成物は、例えば、メラニン産生抑制用の、化粧料、化粧品、医薬部外品、医薬品、又は飲食品であってよく、好ましくはメラニン産生抑制用の化粧料又は化粧品である。なお、本明細書において「化粧料」とは、化粧品及び医薬部外品(例えば薬用化粧料)を意味する。
【0043】
上記メラニン産生抑制用組成物は、例えば、化粧料、化粧品、医薬部外品、医薬品、又は飲食品の、メラニン産生抑制用の原料として用いられてよい。すなわち、当該メラニン産生抑制用組成物は、例えば、化粧料用、化粧品用、医薬部外品用、医薬品用、又は飲食品用のメラニン産生抑制用の原料であってよく、好ましくは化粧料用又は化粧品用のメラニン産生抑制用の原料である。これらの化粧料、化粧品、医薬部外品、医薬品、又は飲食品におけるカホクザンショウ果皮の抽出物の含有量は、例えば、上記「(1-2)カホクザンショウ果皮の抽出物の含有量」において述べた数値範囲内に調整されてよい。
【0044】
上記メラニン産生抑制用組成物は、メラニンの産生を抑制する作用を有しているため、美白用組成物であってよい。そのため、当該メラニン産生抑制用組成物は、例えば、美白用化粧料、美白用化粧品、美白用医薬部外品、美白用医薬品、又は美白用飲食品であってよく、好ましくは美白用化粧料又は美白用化粧品である。なお、本明細書において「美白」とは、メラニンの過剰産生に起因する皮膚の色素沈着(例えばシミ、ソバカス及び色ムラなど)を予防及び/又は改善すること、又は均一な肌色を維持することを意味する。
【0045】
(5)作用
【0046】
上記メラニン産生抑制用組成物は、メラニンの産生を抑制する作用を有する。当該作用を有することは、本実施形態に係るメラニン産生抑制用組成物を使用した場合に、使用しない場合と比較して、メラニン産生量が減少することによって確認されうる。当該メラニン産生量は、例えば、後述する実施例1において示される手順によって測定されうる。
【0047】
<3.メラノサイトにおけるBMP4発現促進用組成物>
【0048】
(1)成分、剤型及び製造方法
【0049】
本発明の一実施形態に係るメラノサイトにおけるBMP4発現促進用組成物は、カホクザンショウ果皮の抽出物を有効成分として含有する。当該BMP4発現促進用組成物について、含有される成分、剤型、及び製造方法は、上記「2.メラニン産生抑制用組成物」の「(1)成分」、「(2)剤型」、及び「(3)製造方法」において説明した内容と同様であってよい。
【0050】
(2)用途
【0051】
上記メラノサイトにおけるBMP4発現促進用組成物は、例えば、メラノサイトにおけるBMP4発現促進用の、化粧料、化粧品、医薬部外品、医薬品、又は飲食品であってよく、好ましくはメラノサイトにおけるBMP4発現促進用の化粧料又は化粧品である。
【0052】
上記メラノサイトにおけるBMP4発現促進用組成物は、例えば、化粧料、化粧品、医薬部外品、医薬品、又は飲食品の、メラノサイトにおけるBMP4発現促進用の原料として用いられてよい。すなわち、当該メラノサイトにおけるBMP4発現促進用組成物は、例えば、化粧料用、化粧品用、医薬部外品用、医薬品用、又は飲食品用の、メラノサイトにおけるBMP4発現促進用の原料であってよく、好ましくは化粧料用又は化粧品用のメラノサイトにおけるBMP4発現促進用の原料である。これらの化粧料、化粧品、医薬部外品、医薬品、又は飲食品におけるカホクザンショウ果皮の抽出物の含有量は、例えば、上記「(1-2)カホクザンショウ果皮の抽出物の含有量」において述べた数値範囲内に調整されてよい。
【0053】
上記メラノサイトにおけるBMP4発現促進用組成物は、BMP4の発現促進を介して、メラニンの産生を抑制しうる。そのため、当該メラノサイトにおけるBMP4発現促進用組成物は、美白用組成物であってよい。また、当該メラノサイトにおけるBMP4発現促進用組成物は、例えば、美白用化粧料、美白用化粧品、美白用医薬部外品、美白用医薬品、又は美白用飲食品であってよく、好ましくは美白用化粧料又は美白用化粧品である。
【0054】
(3)作用
【0055】
上記メラノサイトにおけるBMP4発現促進用組成物は、メラノサイトにおけるBMP4の発現を促進する作用を有する。当該作用を有することは、本実施形態に係るメラノサイトにおけるBMP4発現促進用組成物を使用した場合に、使用しない場合と比較して、メラノサイトにおけるBMP4の発現量が増加することによって確認されうる。BMP4の発現量は、BMP4タンパク質の発現量又はBMP4をコードする遺伝子の発現量でありうる。当該タンパク質又は遺伝子の発現量は、当技術分野において既知の方法によって測定されうる。例えば、BMP4をコードする遺伝子の発現量は、後述する実施例2に示される、BMP4のmRNA発現量を測定する手順に従って測定されうる。
【0056】
<4.メラノサイトにおけるc-KIT発現抑制用組成物>
【0057】
(1)成分、剤型及び製造方法
【0058】
本発明の一実施形態に係るメラノサイトにおけるc-KIT発現抑制用組成物は、カホクザンショウ果皮の抽出物を有効成分として含有する。当該c-KIT発現抑制用組成物に含有される成分、剤型、及び製造方法は、上記「2.メラニン産生抑制用組成物」の「(1)成分」、「(2)剤型」、及び「(3)製造方法」において説明した内容と同様であってよい。
【0059】
(2)用途
【0060】
上記メラノサイトにおけるc-KIT発現抑制用組成物は、例えば、メラノサイトにおけるc-KIT発現抑制用の、化粧料、化粧品、医薬部外品、医薬品、又は飲食品であってよく、好ましくはメラノサイトにおけるc-KIT発現抑制用の化粧料又は化粧品である。
【0061】
上記メラノサイトにおけるc-KIT発現抑制用組成物は、例えば、化粧料、化粧品、医薬部外品、医薬品、又は飲食品の、c-KIT発現抑制用の原料として用いられてよい。すなわち、当該メラノサイトにおけるc-KIT発現抑制用組成物は、例えば、化粧料用、化粧品用、医薬部外品用、医薬品用、又は飲食品用の、c-KIT発現抑制用の原料であってよく、好ましくは化粧料用又は化粧品用のc-KIT発現抑制用の原料である。上記化粧料、化粧品、医薬部外品、医薬品、又は飲食品におけるカホクザンショウ果皮の抽出物の含有量は、例えば、上記「(1-2)カホクザンショウ果皮の抽出物の含有量」において述べた数値範囲内に調整されてよい。
【0062】
上記メラノサイトにおけるc-KIT発現抑制用組成物は、c-KITの発現抑制を介して、メラニンの産生を抑制しうる。そのため、当該メラノサイトにおけるc-KIT発現抑制用組成物は、美白用組成物であってよい。また、当該メラノサイトにおけるc-KIT発現抑制用組成物は、例えば、美白用化粧料、美白用化粧品、美白用医薬部外品、美白用医薬品、又は美白用飲食品であってよく、好ましくは美白用化粧料又は美白用化粧品である。
【0063】
(3)作用
【0064】
上記メラノサイトにおけるc-KIT発現抑制用組成物は、メラノサイトにおけるc-KITの発現を抑制する作用を有する。当該作用を有することは、本実施形態のメラノサイトにおけるc-KIT発現抑制用組成物を使用した場合に、使用しない場合と比較して、メラノサイトにおけるc-KITの発現量が減少することによって確認されうる。c-KITの発現量は、c-KITタンパク質の発現量又はc-KITをコードする遺伝子の発現量でありうる。当該タンパク質又は遺伝子の発現量は、当技術分野において既知の方法によって測定されうる。例えば、c-KITタンパク質の発現量は、後述する実施例3に示される手順に従って測定されうる。
【0065】
<5.美白用化粧料>
【0066】
上記で述べたメラニン産生抑制用組成物、メラノサイトにおけるBMP4発現促進用組成物、及びメラノサイトにおけるc-KIT発現抑制用組成物は、いずれも美白用化粧料に適している。従って、本発明は、メラニン産生抑制用組成物、メラノサイトにおけるBMP4発現促進用組成物、及びメラノサイトにおけるc-KIT発現抑制用組成物のいずれか1つを含有する、美白用化粧料も提供する。
【0067】
(1)成分
【0068】
本発明の一実施形態に係る美白用化粧料は、メラニン産生抑制用組成物からなる化粧料であってよく、メラノサイトにおけるBMP4発現促進用組成物からなる化粧料であってよく、又はメラノサイトにおけるc-KIT発現抑制用組成物からなる化粧料であってよい。すなわち、当該美白用化粧料は、メラニン産生抑制用組成物、メラノサイトにおけるBMP4発現促進用組成物、及びメラノサイトにおけるc-KIT発現抑制用組成物以外の成分を含有しない化粧料であってよい。
【0069】
本実施形態の美白用化粧料は、メラニン産生抑制用組成物、メラノサイトにおけるBMP4発現促進用組成物、及びメラノサイトにおけるc-KIT発現抑制用組成物以外の成分を含有する化粧料であってもよい。当該成分は、当技術分野において既知の成分であってよい。当該美白用化粧料は、例えば、これらの組成物以外に、メラニン産生抑制作用又は美白作用を有することが既知である1つ又は2つ以上の成分を含有してもよい。
【0070】
上記美白用化粧料において、カホクザンショウ果皮の抽出物の含有量の下限値は、乾燥固形分換算で、例えば1μg/mL以上であってよく、好ましくは3μg/mL以上、より好ましくは6μg/mL以上、さらにより好ましくは10μg/mL以上、特に好ましくは15μg/mL以上、20μg/mL以上、25μg/mL以上、30μg/mL以上、40μg/mL以上、又は50μg/mL以上である。このような含有量によって、メラニン産生抑制効果がより高い組成物が得られうる。カホクザンショウ果皮の抽出物の含有量の上限値は、上記美白用化粧料の用途及び形態などに応じて当業者により適宜調整されてよい。当該含有量の上限値は、乾燥固形分換算で、例えば10mg/mL以下、5mg/mL以下、又は2mg/mL以下であってよい。当該含有量の好ましい数値範囲は、上記で述べた下限値及び上限値から選択された組合せであってよい。
【0071】
(2)形態
【0072】
上記美白用化粧料の形態は、用途及び目的などに応じて当業者により適宜選択されてよい。当該形態は、例えば、洗顔料、化粧水、乳液、ジェル、クリーム、美容液、化粧油、及びパックなどの基礎化粧品;化粧下地、ファンデーション、フェイスパウダー、口紅、リップグロス、リップクリーム、アイシャドウ、及びアイクリームなどメーキャップ化粧品;日焼け止めクリーム、日焼け止めローション、及び日焼け止めスプレーなどのサンケア商品;ボディクリーム及びボディローションなどのボディ化粧品;などであってよい。
【実施例0073】
以下で実施例を参照して本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0074】
<カホクザンショウ果皮の抽出物の調製>
【0075】
ミカン科サンショウ属カホクザンショウ(カショウ)の果皮の乾燥物に95体積%エタノール溶液(エタノール:水=95:5)を加え、加熱還流抽出を3時間行った後、冷却した。ろ紙によりろ過し、ろ液に等量の水を加え、4℃で静置した後、メンブレンフィルターろ過を行った。ろ液に等量の1,3-ブチレングリコールを加え、よく撹拌し、再びメンブレンフィルターろ過を行い、最終固形分濃度が0.4w/v%のカホクザンショウ果皮の抽出物(以下、「カショウエキス」ともいう。)を調製した。上記メンブレンフィルターろ過において用いられたメンブレンフィルターは、PTFE 0.5μm(アドバンテック社製)であった。
【0076】
<サンショウ抽出物の調製>
【0077】
ミカン科サンショウ属サンショウの果皮の乾燥物に無水エタノールを加えて抽出処理を行った後、ろ過して、最終固形分濃度が2.0w/v%のサンショウ抽出物(以下、「サンショウエキス」ともいう。)を調製した。
【0078】
<実施例1:培養細胞におけるメラニン産生抑制効果の検証>
【0079】
6穴プレートに10%FBS含有MEM培地(日水製薬社製)を添加して、B16メラノーマ培養細胞を播種し、37℃、二酸化炭素濃度5vol%中で培養した。翌日、カショウエキスを、50体積%エタノール溶液(エタノール:水=50:50)にて希釈し、カショウエキスの濃度が異なる6つのカショウエキス含有組成物を調製した。培地中のカショウエキスの濃度が0μg/mL(対照)、3.125μg/mL、6.25μg/mL、12.5μg/mL、25μg/mL、又は50μg/mLとなるように、各カショウエキス含有組成物を添加し、混和した。添加2日後に培地を交換し、再度上記組成物を同じ濃度で添加した。翌日、培地を取り除き、細胞をリン酸緩衝液にて洗浄した後に回収した。回収した細胞に水酸化ナトリウム溶液を加えてメラニンを溶解し、吸光度を測定することにより、細胞中のメラニン量を定量した。カショウエキス含有組成物の添加によるメラニン量への影響は、細胞中の総メラニン量を細胞数で標準化することによって確認した。
【0080】
比較例として、サンショウエキスについても、50体積%エタノール溶液(エタノール:水=50:50)にて希釈し、サンショウエキスの濃度が異なる3つのサンショウエキス含有組成物を調製した。培地中のサンショウエキスの濃度が0μg/mL(対照)、3.125μg/mL、又は6.25μg/mLとなるように、各サンショウエキス含有組成物を添加し、混和した。その後、上記カショウエキス含有組成物と同様の手順で試験を行った。なお、培地中のサンショウエキスの濃度が6.25μg/mLを超えると、細胞生育率の低下が見られた。そのため、培地中のサンショウエキスの濃度が6.25μg/mLを超える場合については、メラニン量に関する検証を行わなかった。
【0081】
図1はカショウエキス含有組成物添加時のメラニン量を示すグラフである。
図1において縦軸は対照群の細胞あたりのメラニン量を1とした時の相対量を示す。
図1に示されるとおり、カショウエキス含有組成物の添加によって、濃度依存的メラニン量が減少した。この結果から、カショウエキス含有組成物は、メラニンの産生を抑制可能であることが分かる。
【0082】
図2はサンショウエキス含有組成物添加時のメラニン量を示すグラフである。
図2において縦軸は対照群の細胞あたりのメラニン量を1とした時の相対量を示す。
図2に示されるとおり、サンショウエキス含有組成物の添加によって、メラニン量はやや増加した。この結果から、サンショウエキス含有組成物は、メラニンの産生を抑制できず、むしろメラニンの産生を促進する作用を有することが分かる。
【0083】
<実施例2:ヒト表皮メラノサイトにおけるBMP4発現促進効果の検証>
【0084】
6穴プレートにHMGS増殖添加剤(Thermofisher社製)入りのヒト表皮メラノサイト用培地(Medium 254培地、Thermofisher社製)を添加し、正常ヒト表皮メラノサイト(Human Epidermal Melanocytes、シグマ社製)を播種し、37℃、二酸化炭素濃度5vol%中で培養した。3日後に培地中の濃度が0μg/mL(対照)、100μg/mL、又は200μg/mLとなるようにカショウエキスを添加した。24時間後、細胞(正常ヒト表皮メラノサイト)をリン酸緩衝液にて洗浄した後に回収した。回収した細胞からRNeasy Plus Mini Kit(QIAGEN社製)を用いてmRNAを抽出した。その後、iScrip Advanced cDNA Synthesis Kit for RT-qPCR(BioRad社製)を用いて作製したcDNAを用いて、定量的リアルタイムPCRによりヒトBMP4のmRNA発現量を測定した。当該定量的リアルタイムPCRにおいて、BMP4Forwardプライマー;actgcaaccgttcagaggtc、及び、BMP4Reverseプライマー;aaacttgctggaaaggctcaを使用した。BMP4のmRNA発現量は、βアクチンのmRNA量に対して標準化し、対照のmRNA量に対する比として算出した。
【0085】
図3はカショウエキス添加時のBMP4のmRNA発現量を示すグラフである。
図3において縦軸は対照群のmRNA発現量を1とした時の相対量を示す。
図3に示されるとおり、カショウエキスの添加によって、メラノサイトにおけるBMP4のmRNA発現量は増加した。この結果から、カショウエキスは、メラノサイトにおけるBMP4の発現を促進可能であることが分かる。
【0086】
<実施例3:ヒト表皮メラノサイトにおけるc-KIT発現抑制効果の検証>
【0087】
35mmディッシュにHMGS増殖添加剤(Thermofisher社製)入りのヒト表皮メラノサイト用培地(Medium 254培地、Thermofisher社製)を添加し、正常ヒト表皮メラノサイト(Human Epidermal Melanocytes、シグマ社製)を播種し、37℃、二酸化炭素濃度5vol%中で培養した。2日後に培地中の濃度が0μg/mL(対照)、100μg/mL、又は200μg/mLとなるようにカショウエキスを添加した。24時間後、80mJ/cm2のUVBを照射した。24時間後、細胞をリン酸緩衝液にて洗浄した後に回収した。細胞からタンパク質を回収した後、ウエスタンブロット法を用いてタンパク質量の解析を行った。一次抗体として、c-KIT抗体(IBL社)を、二次抗体としてはAnti-Mouse secondary Antibody(protein simple社)を使用した。得られたc-KITタンパク質量は、βアクチンのタンパク質量にて標準化し、対象のタンパク質量に対する比として算出した。
【0088】
図4はカショウエキス添加時のc-KITのタンパク質量を示すグラフである。
図4において縦軸は対照群のタンパク質量を1とした時の相対量を示している。
図4に示されるとおり、カショウエキスの添加によって、メラノサイトにおけるc-KITのタンパク質量は減少した。この結果から、カショウエキスは、メラノサイトにおけるc-KITの発現を抑制可能であることが分かる。
【0089】
<実施例4:化粧水の製造>
【0090】
(成分) (%)
1.グリセリン 5.0
2.1,3-ブチレングリコール 6.5
3.モノラウリン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン 1.2
4.エタノール 12.0
5.乳酸 0.05
6.乳酸ナトリウム 0.1
7.アスコルビン酸グルコシド 2.0
8.カショウエキス 0.01
9.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
10.香料 適量
11.精製水 残量
【0091】
(製造方法)
A:成分3、4、9、及び10を混合溶解した。
B:成分1、2、5~8及び11を混合溶解した。
C:AとBを混合して均一にし、化粧水を得た。
【0092】
<実施例5:水中油型乳液の製造>
【0093】
(成分) (%)
1.モノステアリン酸ポリオキシエチレン(6E.O.)ソルビタン 1.0
2.テトラオレイン酸ポリオキシエチレン(60E.O.)ソルビット 0.5
3.グリセリルモノステアレート 1.0
4.ステアリン酸 0.5
5.ベヘニルアルコール 0.5
6.スクワラン 8.0
7.アルブチン 3.0
8.エタノール 5.0
9.カショウエキス 0.05
10.精製水 残量
11.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
12.カルボキシビニルポリマー 0.2
13.水酸化ナトリウム 0.1
14.ヒアルロン酸 0.1
15.香料 適量
【0094】
(製造方法)
A:成分10を加熱し、70℃に保った。
B:成分1~6、8及び11を加熱混合し、70℃に保った。
C:BにAを加えて混合し、均一に乳化した。
D:Cを冷却後、成分7、9、12~15を加え、均一に混合して水中油型乳液を得た。
【0095】
<実施例6:水中油型乳液の製造>
【0096】
(成分) (%)
1.1,3-ブチレングリコール 12.0
2.トラネキサム酸 4.0
3.精製水 残量
4.モノステアリン酸ポリエチレングリコール(40E.O.) 0.5
5.セスキオレイン酸ソルビタン 0.1
6.水添レシチン 0.1
7.ヒドロキシステアリン酸コレステリル(注1) 3.0
8.ワセリン 2.0
9.α-オレフィンオリゴマー 5.0
10.シアバター 2.0
11.ジメチルポリシロキサン(10CS) 1.0
12.セラミド3 0.1
13.アスタキサンチン 0.1
14.トコフェロール 0.01
15.セトステアリルアルコール 2.0
16.ベヘニルアルコール 1.0
17.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
18.アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(注2) 0.1
19.キサンタンガム 0.1
20.水酸化ナトリウム 0.03
21.カショウエキス 0.1
22.香料 適量
(注1)サラコスHS(日清オイリオ社製)
(注2)カーボポールULTREZ21(LUBRIZOL社製)
【0097】
(製造方法)
A:成分1~3を70℃で均一に溶解混合した。
B:成分4~16を80℃で均一に溶解混合した。
C:AにBを添加し70℃で乳化した。
D:Cに成分17~22を添加混合した後、40℃まで冷却して水中油型乳液を得た。
【0098】
<実施例7:水中油型乳化美容液の製造>
【0099】
(成分) (%)
1.1,3-ブチレングリコール 5.0
2.トラネキサム酸 1.0
3.トリプロピレングリコール 3.0
4.精製水 残量
5.モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 0.1
6.モノステアリン酸ポリエチレングリコール(55E.O.) 0.25
7.マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル (注3) 2.0
8.軽質流動イソパラフィン (注4) 3.0
9.ジメチルポリシロキサン(6CS) 3.0
10.コレステロール 0.1
11.トコフェロール 0.01
12.セトステアリルアルコール 0.5
13.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
14.カルボマー (注5) 0.15
15.(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)
コポリマー(注6) 0.1
16.水酸化ナトリウム 0.05
17.エタノール 5.0
18.コラーゲン 0.1
19.エラスチン 0.1
20.ヒアルロン酸 0.1
21.カショウエキス 0.1
22.香料 0.05
(注3)PLANDOOL-MAS(日本精化社製)
(注4)クロラータムLES(クローダ社製)
(注5)CARBOPOL980(LUBURIZOL社製)
(注6)SIMULGEL EG(SEPIC社製)
【0100】
(製造方法)
A:成分1~4を70℃で均一に溶解混合した。
B:成分5~11を80℃で均一に溶解混合した。
C:AにBを添加し70℃で乳化した。
D:Cに成分12~22を添加混合した後、40℃まで冷却して水中油型乳化美容液を得た。
【0101】
<実施例8:シート状パック化粧料の製造>
【0102】
(成分) (%)
1.イソステアリン酸 0.05
2.ポリオキシエチレン(60モル)硬化ヒマシ油 0.3
3.メトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル 0.05
4.グリセリン 3.0
5.1,3-ブチレングリコール 5.0
6.エタノール 8.0
7.クエン酸ナトリウム 0.02
8.クエン酸 0.05
9.グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
10.フェノキシエタノール 0.05
11.ナイアシンアミド 4.0
12.ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム40%水溶液 0.15
13.カショウエキス 0.02
14.精製水 残量
【0103】
(製造方法)
A:成分1~6を混合溶解した。
B:成分7~14を混合溶解した。
C:AをBに添加し混合した。
D:Cを不織布に含浸させ、シート状パック化粧料を得た。
【0104】
<実施例9:軟膏の製造>
【0105】
(成分) (%)
1.トリエタノールアミン 2.0
2.グリセリン 8.0
3.精製水 残量
4.カショウエキス 0.001
5.セタノール 6.0
6.ワセリン 32.0
7.トコフェロール 0.01
8.グリチルレチン酸ステアリル 0.1
9.ステアリン酸 18.0
10.セスキオレイン酸ソルビタン 1.5
【0106】
(製造方法)
A.成分5~10を75℃で均一に溶解した。
B.成分1~4を75℃で均一に溶解した。
C.AにBを徐々に加え、75℃で乳化し、室温に冷却して軟膏を得た。
【0107】
上記実施例4~9において製造された化粧水、乳液、美容液、シートパック状化粧料、及び軟膏を、それぞれヒトの皮膚に適用したところ、いずれもシミ及びソバカスを防ぐ効果が確認された。この結果から、上記カショウエキスを含有する組成物がメラニン産生抑制作用を有すること、及び、当該組成物を含有する化粧料が美白作用を有することが分かる。