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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045498
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】非常用電源システムとその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 9/00 20060101AFI20230327BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
H02J9/00
H02J7/00 302C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153950
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】519408939
【氏名又は名称】株式会社ジェーピージェネレーターズ
(74)【代理人】
【識別番号】100093687
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 元成
(74)【代理人】
【識別番号】100168468
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 曜
(72)【発明者】
【氏名】小西 憲一
【テーマコード(参考)】
5G015
5G503
【Fターム(参考)】
5G015FA10
5G015GA10
5G015JA45
5G015JA52
5G015JA56
5G503AA01
5G503BA04
5G503BB01
5G503DA04
5G503DA18
5G503GD04
(57)【要約】
【課題】電力の供給を遮断することなく長時間使用できる、メイテナンスも容易である。
【解決手段】
非常用電源システム1は、筐体4に着脱自在に複数の二次電池であるバッテリーユニット7を搭載した基本ラック2と、基本ラック2と電気的に接続され、筐体14に着脱自在に搭載され複数のバッテリーユニット17を搭載した増設ラック3と、基本ラック2に搭載され、バッテリーユニット7、17からの電力の出力、又は入力を制御するための基本制御部とからなる。増設ラック3は、非常時に、基本ラック2のバッテリーが可動可能時間内に持ち運ばれて、基本ラック2に接続されて使用される。バッテリーユニットはラックから着脱可能であり、そのため交換、補充等が容易であり、非常時に、特別なメイテナンスを行う必要がない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の筐体と、
前記第1の筐体に着脱自在に複数の二次電池であるバッテリーユニットを搭載した基本ラックと、
第2の筐体と、
前記基本ラックと電気的に接続され、前記第2の筐体に着脱自在に搭載され複数の前記バッテリーユニットを搭載した増設ラックと、
前記基本ユニットに搭載され、前記バッテリーユニットからの電力の出力、又は入力を制御するための基本制御部と
からなる非常用電源システム。
【請求項2】
請求項1に記載の非常用電源システムにおいて、
前記第1の筐体、及び前記第2の筐体は、移動可能にするためのキャスタ付である
ことを特徴とする非常用電源システム。
【請求項3】
移動自在な筐体と、前記筐体に着脱自在に搭載された二次電池である複数のバッテリーユニット、前記バッテリーユニットの出力を制御する出力制御装置を搭載した非常用電源システムにおいて、
前記出力制御装置は、前記複数の前記バッテリーユニットから電力を出力させる順位を規定し、前記バッテリーユニット内の蓄電容量が予め設定された容量以下になったとき、次の順位の前記バッテリーユニットから出力する出力制御である
ことを特徴とする非常用電源システムの制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載の非常用電源システムの制御方法において、
前記筐体は、基本ラック及び増設ラックから構成されており、
前記出力制御は、前記基本ラック内の全ての前記バッテリーユニットが前記容量以下になったとき、前記増設ラック内の前記バッテリーユニットから出力させ、
全ての前記増設ラック内の前記バッテリーユニットが前記容量以下になったとき、前記基本ラック内の前記バッテリーユニットから出力させる
ものであることを特徴とする非常用電源システムの制御方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の非常用電源システムの制御方法において、
前記非常用電源システムは、前記バッテリーユニットの残容量を遠隔地に管理者に通知する通信手段を備えている
ことを特徴とする非常用電源システムの制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の非常用電源システムの制御方法において、
前記出力制御は、前記基本ラック及び前記増設ラックの可動可能時間を計算して、前記通信手段により前記管理者に通知する
ことを特徴とする非常用電源システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常用電源システムとその制御方法に関する。更に詳しくは、災害時、事故等において、商用電源が使えないときに連続して、かつ長時間に亘って使用できる非常用電源システムとその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
災害時等において、商用電源が停電で使用できないとき、非常用電源としてエンジンで駆動する発電機が使用されている。取り分け、公共的な携帯電話の基地局等に供給する非常用発電機システムの場合、商用電源が使えなくなったら、直ちにシステムが起動し、一時的にでも遮断されることもなく、連続的な電力の供給が要求されている。
【0003】
しかしながら、限られた少量の燃料しか備えていない小型の発電機が故に、燃料が尽きたとき、発電を一時的に停止し燃料を備え付けのタンクに補給しなければならない。このような運転上の課題を解決するために、本発明者は、非常災害時等に運転時間の延長を容易に行える、非常災害用小型発電機を提案した(特許文献1)。
【0004】
他方、非常用電源として、近年はエネルギー密度の高いリチウムイオン電池等を使用することも知られている。この中で、蓄電池を搭載したキャスタ付ラックである基本ユニットと増設ユニットを配置したもので、基本ユニットには、AC/DC充電器とDC/AC変換器を搭載し、増設台車には、AC/DC充電器のみ搭載したものが提案されている(特許文献2)。データセンターで使用するような無停電電源装置として、同一形状、同一仕様のバッテリーユニットをラックに収納したものも提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-83305号
【特許文献2】実用新案登録第3170407号
【特許文献3】WO2014/141486
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載された非常災害用小型発電機は、動力をエンジンで発電する場合、夜間や密集した住宅地では騒音が発生して使えない。また、特許文献2に記載された非常用電源装置は、供給電力の増大化を図ったものではあるが、個々の蓄電池を容易に着脱して交換性を持たせた構造ではなく、電力の供給を遮断することなく連続的に供給できるもでもない。特許文献3に記載の無停電電源装置は、データセンターのように比較的大規模なシステムに使用されるものであり、出力が小さな携帯電話の基地局のようなところで使用を前提としていない。従って、バッテリーの交換、増設を容易に行えるものではない。
【0007】
以上のような背景で、本発明は以下の目的とする発明である。
本発明の目的は、電力の供給を遮断することなく長時間使用できる、非常用電源システムとその制御方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、電力の供給を遮断することなく着脱、交換、補充等が容易なバッテリーユニットを備えた、非常用電源システムとその制御方法を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、非常時にメイテナンスを行う必要がない、非常用電源システムとその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明1の非常用電源システムは、
第1の筐体と、
前記第1の筐体に着脱自在に複数の二次電池であるバッテリーユニットを搭載した基本ラックと、
第2の筐体と、
前記基本ラックと電気的に接続され、前記第2の筐体に着脱自在に搭載され複数の前記バッテリーユニットを搭載した増設ラックと、
前記基本ユニットに搭載され、前記バッテリーユニットからの電力の出力、又は入力を制御するための基本制御部と
からなる。
【0009】
本発明2の非常用電源システムは、本発明1において、前記第1の筐体、及び前記第2の筐体は、移動可能にするためのキャスタ付であることを特徴とする。
【0010】
本発明3の非常用電源システムの制御方法は、
移動自在な筐体と、前記筐体に着脱自在に搭載された二次電池である複数のバッテリーユニット、前記バッテリーユニットの出力を制御する出力制御装置を搭載した非常用電源システムにおいて、
前記出力制御装置は、前記複数の前記バッテリーユニットから電力を出力させる順位を規定し、前記バッテリーユニット内の蓄電容量が予め設定された容量以下になったとき、次の順位の前記バッテリーユニットから出力する出力制御である
ことを特徴とする。
【0011】
本発明4の非常用電源システムの制御方法は、本発明3において、
前記筐体は、基本ラック及び増設ラックから構成されており、
前記出力制御は、前記基本ラック内の全ての前記バッテリーユニットが前記容量以下になったとき、前記増設ラック内の前記バッテリーユニットから出力させ、
全ての前記増設ラック内の前記バッテリーユニットが前記容量以下になったとき、前記基本ラック内の前記バッテリーユニットから出力させる
ものであることを特徴とする。
【0012】
本発明5の非常用電源システムの制御方法は、本発明3又は4において、前記非常用電源システムは、前記バッテリーユニットの残容量を遠隔地に管理者に通知する通信手段を備えていることを特徴とする.
【0013】
本発明6の非常用電源システムの制御方法は、本発明5において、前記出力制御は、前記基本ラック及び前記増設ラックの可動可能時間を計算して、前記通信手段により前記管理者に通知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の非常用電源システムとその制御方法は、電力の供給を遮断することなく長時間に亘って遮断することなく電力を供給でき、そのバッテリーユニットも着脱、交換、補充等が容易である。また、非常時には、バッテリーユニットを交換するのみで特別なメイテナンスを行う必要もない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、第1の実施の形態の非常用電源システム1の外観を示す外観図である。
図2図2は、非常用電源システム1の電力の流れを示す機能ブロック図である。
図3図3は、非常用電源システム1の制御信号の流れを示す機能ブロック図である。
図4図4は、非常用電源システム1を管理する担当者の端末の画面例である。
図5図5は、基本ラックの制御ユニットの動作例であり、各バッテリーユニットの出力管理を示すフロー図である。
図6図6は、第2の実施の形態の非常用電源システム1の外観を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の非常用電源システムの第1の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、第1の実施の形態の非常用電源システム1の外観を示す外観図である。非常用電源システム1は、例えば携帯電話の基地局等の電源として使用するものである。非常用電源システム1は、接続装置(負荷)へ適当な電圧と電流の電源を供給するものであり、例えば、電圧が48V、電流27Aで12時間の出力が可能なものである。非常用電源システム1は、基本ラック2及び増設ラック3からなる。基本ラック2は、本体フレームを形成する筐体4を備えており、下部には移動可能なように複数のキャスタ5を備えている。筐体4の最上部には、移動時に移動するときのハンドルとして使用する手摺り6が取り付けてある。基本ラック2は、例えば携帯電話の基地局等の電源として、非常時に外部から持ち込んで使用するものであるが、非常用電源として備えていても良い。
【0017】
筐体4の前面には、上下に三層の長方体の空間が形成されている。バッテリーユニット7は、筐体4から引出しのように個々に収納、取り出しが可能なものである。この便宜のためにバッテリーユニット7の前面には取っ手8が配置されている。バッテリーユニット7(1)~7(3)は、例えばリチュウムイオンバッテリー(Li-ion電池)、リン酸鉄リチウムイオン(LFP)等からなる。バッテリーユニット7の上部の筐体4には、基本制御ユニット9が搭載されている。基本制御ユニット9は、非常用電源システム1の電力の入出力を監視し制御する制御装置等が収納されている。基本制御ユニット9は、メイテナンス等の便宜のために筐体4から引出し、収納自在である。基本ラック2内のバッテリーユニット7は、平常時は商用電源からの電力で満充電の状態にされており、商用電源が使えない非常時に自動的に給電するものである。
【0018】
増設ラック3は、本体フレームを形成する筐体14を備えており、下部には移動可能なように複数のキャスタ15を備えている。筐体14の最上部には、移動時に使用する手摺り16が取り付けてある。筐体14の前面には、上下に三層のバッテリーユニット17を収納できる立方体状の空間が形成されている。バッテリーユニット7は、筐体4から引出しのように個々に収納、取り出しが可能なものである。この便宜のためにバッテリーユニット17の前面には取っ手18が配置されている。増設ラック3の増設制御ユニット19は、バッテリーユニット17の電力の入出力を監視し制御する。即ち、増設ラック3の筐体14の構造、バッテリーユニット17の配置等は、基本ラック2と同一である。
【0019】
増設ラック3は、基本ラック2内の3台のバッテリーユニット7(1)~7(3)の容量が不足したときに使用するものである。このために、電線10で基本ラック2と増設ラック3は、電力線、及び信号線を含む電線10で接続されている。増設ラック3は、一般的には災害等の非常時に商用電源が使えないとき等に基本ラック2に接続して使用される。増設ラック3内のバッテリーユニット17(1)~17(3)は、商用電源が使える地域の拠点等で充電して、基本ラック2が設置されている施設に輸送して増設するものである。又は、基本ラック2、増設ラック3内の個々の各バッテリーユニット7(1)~7(3)、17(1)~17(3)の充電をエンジン駆動の非常用電源、自動車に搭載されている電源等により充電しても良い。
【0020】
各バッテリーユニット7(1)~7(3)、17(1)~17(3)の正面には、その識別番号を示すバーコード11、バッテリーの容量状態を示す容量表示器12等がある。バーコード11は、バッテリーユニット固有の番号であり、バーコードリーダ等で読み取り可能である。容量表示器12はバッテリーの容量に応じて複数段階で表示する小型のディスプレイ式の表示器、バッテリーの容量に応じて複数色で点灯又は点滅するLEDランプ等からなる。非常用電源システム1の電力の流れを図2を参照しながら説明する。負荷40は、非常用電源システム1から電力の供給を受けるものである。負荷40は、例えば、携帯電話の基地局等の構成装置である。負荷40は、基本的に、基本ラック2から電力の供給を受ける。基本制御ユニット9の電力出力に接続された電力ケーブル(図示せず。)等に負荷40が接続されて、負荷40が電力供給を受ける。
【0021】
基本ラック2は、図2に示すように、複数のバッテリー7、電圧・電流調整装置21、スイッチング回路22、充電器23等からなる。増設制御ユニット19は電圧・電流調整装置21、スイッチング回路32、充電器33等からなる。電圧・電流調整装置21は、入力がスイッチング回路22及びスイッチング回路32に接続されたもので、バッテリーユニット7又はバッテリーユニット17から電力供給されるものであり、出力が負荷40に接続されて電力を供給する。電圧・電流調整装置21は、バッテリーユニット7とバッテリーユニット17に接続され、各バッテリーユニット7、17を構成するバッテリーユニット7(1)~7(3)、17(1)~17(3)の容量を監視し、容量が所定容量以下になると、スイッチング回路22とスイッチング回路32を制御して、そのバッテリーユニットを順次切り換えて電源供給を受ける。
【0022】
以下、バッテリーユニット7において、バッテリーユニット7(1)のバッテリーをバッテリー1、バッテリーユニット7(2)のバッテリーをバッテリー2、バッテリーユニット7(3)のバッテリーをバッテリー3ということもある。バッテリーユニット17についても同様である。基本ラック2のスイッチング回路22と電圧・電流調整装置21の間に、増設ラック優先切換用手動スイッチ24を備えている。増設ラック優先切換用手動スイッチ24が作業員等により手動でスイッチされて接続状態(ON)になっているとき、電圧・電流調整装置21は優先的に増設ラック3から電力供給を受ける。増設ラック優先切換用手動スイッチ24がスイッチされていない状態(OFF)になっているとき、電圧・電流調整装置21は優先的に基本ラック2から電力供給を受ける。
【0023】
基本ラック2のスイッチング回路22は、各バッテリーユニット7(1)~7(3)に接続され、これらと電圧・電流調整装置21との接続を切り換えるためのものである。スイッチング回路22は、電圧・電流調整装置21の制御により動作し、バッテリーユニット7(1)~7(3)との接続を切り換える。充電器23は、入力が外部電源41に接続され、出力がバッテリーユニット7(1)~7(3)に接続され、外部電源41の電圧をバッテリーユニット7(1)~7(3)用の電圧に変換し、バッテリーユニット7(1)~7(3)を充電するためのものである。充電器23は、基本的に、各バッテリーユニット7(1)~7(3)に並列で接続され、各バッテリーユニット7(1)~7(3)を同時に充電する。
【0024】
充電器23は、各バッテリーユニット7(1)~7(3)の電圧を測定し、各バッテリーユニット7(1)~7(3)の容量が所定容量以下になったとき、充電する。充電器23は、各バッテリーユニット7(1)~7(3)を上述のように同時充電するが、所定容量以下になったバッテリーユニット7(1)~7(3)のみを充電しても良い。外部電源41は、100V又は200Vの商用電源(系統電力)、発電機(ディーゼル発電機、ガス発電機を含む)、太陽光パネル等の任意の電源であっても良く、特に限定しない。外部電源41は、電源インフラが普及している地域では商用電源、遠隔地では太陽光パネルであることが好ましい。また、外部電源41は、太陽光パネルと商用電源の両方に分電盤を介して接続されたハイブリッド電源であっても良い。
【0025】
増設ラック3は複数のバッテリー17、スイッチング回路32、充電器33等からなる。増設ラック3のスイッチング回路32は、各バッテリーユニット17(1)~17(3)に接続され、これらと電圧・電流調整装置21との接続を切り換えるためのものである。スイッチング回路32は、電圧・電流調整装置21の制御により動作し、バッテリーユニット17(1)~17(3)との接続を切り換える。充電器33は、入力は外部電源に接続されており、出力がバッテリーユニット17(1)~17(3)に接続され、外部の電源の電圧をバッテリーユニット17(1)~17(3)用の電圧、電流に変換し、バッテリーユニット17(1)~17(3)を充電するためのものである。充電器33は、基本的に、各バッテリーユニット17(1)~17(3)に並列で接続され、各バッテリーユニット17(1)~17(3)を同時に充電する。
【0026】
増設ラック3は災害等の緊急時に持ち運びして基本ラック2に接続されるものであり、増設ラック3を充電する外部の電源は、基本的に、系統電力の商用電源であるが、発電機(ディーゼル発電機、ガス発電機を含む)、太陽光パネル等の任意の電源、それを組み合わせた電源を使用しても良く、特に電源の種類には限定されない。次に、非常用電源システム1の制御信号の流れを図3を参照しながら説明する。図3に図示したように、基本ラック2は、インターフェース25、基本制御部26、バッテリーセンサー27、電圧調整回路28、通信インターフェース29等を備えている。基本制御部26は、基本ラック2の全体の制御を行うものであり、特に限定しないが、マイクロコンピュータ、モジュール、LSI等で構成される。
【0027】
基本制御部26は、充電器23、インターフェース25、通信インターフェース29等と接続し、これらの部品の収集したデータを受信し、制御指令とデータを送信する。インターフェース25は、各バッテリーユニット7(1)~7(3)のバッテリーセンサー27(1)~27(3)と接続し、これらのセンサーが出力するデータを基本制御部26へ送信するものである。バッテリーセンサー27は、各バッテリーユニット7の容量を監視するためのものであり、バッテリーユニット7に接続されて設置され、その電圧、電流、抵抗、温度等を測定するものである。バッテリーセンサー27は、特にバッテリーの電圧を計測するものである。基本制御部26は、インターフェース25、スイッチング回路22、増設ラック3の増設制御部36を制御し、電力出力するバッテリーを選択し、電圧調整回路28に接続する。
【0028】
言い換えると、基本制御部26は、バッテリーユニット7(1)~7(3)とバッテリーユニット17(1)~17(3)のバッテリーから使用可能なバッテリーユニットを順次選択し、電力を負荷40へ供給するものである。基本制御部26は、容量が少なくなったバッテリーユニットを自動的に切断し、次の使用可能なバッテリーユニットに接続する。基本制御部26は、各バッテリーユニットの容量の状況を示すデータを、各バッテリーセンサー27,37から取得し、通信インターフェース29を介して、管理サーバー43へ送信する。非常用電源システム1の状況に関するデータを、基本制御部26から管理サーバー43へ送信するタイミングは、設定された所定間隔で定期的に、設定された時間に、管理サーバー43から要求があったときに送信する。また、基本制御部26は、非常用電源システム1の可動可能時間が所定時間以内になったときに、非常用電源システム1のデータを管理サーバー43へ送信する。
【0029】
増設ラック3は、インターフェース35、増設制御部36、バッテリーセンサー37、電圧調整回路38等を備えている。増設制御部36は、増設ラック3の全体の制御を行うものであり、特に限定しないが、マイクロコンピュータ、モジュール、LSI等で構成される。増設制御部36は、インターフェース35と接続し、バッテリーセンサー37からデータを受信する。増設制御部36は、インターフェース35、スイッチング回路32を制御し、電力を出力するバッテリーを基本ラック2と接続し、電力出力の制御を行う。インターフェース35は、各バッテリーセンサー37と接続し、その計測値を増設制御部36へ送るものである。バッテリーセンサー27は、各バッテリーユニット7の容量を監視するためのものであり、バッテリーユニット7に接続されて設置され、その電圧、電流、抵抗、温度等を測定する各種センサーからなる。
【0030】
バッテリーセンサー27は、一般的なバッテリーの電圧を計測するものである。電圧調整回路28、電圧調整回路38は、出力する電力の電圧を一定に調整するもので、過電流防止等の機能を備えたものである。通信インターフェース29は、図示しないが、通信機器を接続し、通信網とデータ通信するためのものである。ここで言う通信機器は、基本ラック2に内蔵又は外付けで接続される無線又は有線の通信機器であり、例えば、インターネット40の無線アクセスポイントに接続する無線アダプター、又は、携帯通信網に通信する携帯電話機等であることができる。図2において、通信網は、インターネット40で例示しているが、特に限定せず、無線通信網、有線通信線網等であることができる。
【0031】
管理サーバー43は、非常用電源システム1を管理するシステムのサーバーである。管理サーバー43は、非常用電源システム1に関するデータを格納したデータベース(図示せず。)を有し、各非常用電源システム1の状況を示すデータを管理者へ送信され、これは管理者が所持する機器に表示される。非常用電源システム1に関するデータは、後述するが、非常用電源システム1の識別番号、設置場所(住所)、基本ラック2のバッテリーユニット7(1)~7(3)と増設ラック3のバッテリーユニット17(1)~17(3)の容量、可動可能時間等を示すデータ等からなる。管理サーバー43は、基本ラック2の通信インターフェース29に接続された通信機器と、インターネット40等の通信網を介して通信し、非常用電源システム1のデータを受信する。
【0032】
図4は、非常用電源システム1を管理する担当者の端末の画面50の一例である。画面50は、複数領域からなる。まず、基地局データ領域51、バッテリーデータ領域52等からなり、バッテリーデータ領域52は、基本ラック2のデータを示す基本ラック領域53,増設ラック3のデータを示す増設ラック領域54、非常用電源システム1の可動可能な時間を予測したデータを示す可動可能予測時間領域55等からなる。基地局データ領域51には、非常用電源システム1が設置された箇所を示す住所、非常用電源システム1の管理番号等が記載されている。基本ラック領域53には、基本ラック2を構成するバッテリーユニット7(1)~7(3)の名称と、その容量の残量容量、可動状況、残量容量が定格容量に示す割合等を表形式で示している。可動状況は、本例で電源供給中のバッテリーを「稼働中」、電源供給していないバッテリーを「非」等と表示している。
【0033】
増設ラック領域54は、基本ラック3を構成するバッテリーユニット17(1)~17(3)の名称と、その容量の残量容量、可動状況(稼働中、非)、残量容量が定格容量に示す割合等を表形式で示している。可動可能予測時間領域55は、基本ラック2と増設ラック3それぞれの可動可能な時間を予測したデータを示している。例えば、基本ラック2と増設ラック3それぞれは、担当者の端末の画面50に表示時刻から可動して、使用可能な時間を年月日、時間、分形式で表示している。画面50には、非常用電源システム1にデータ送信を要求する指示ボタン等があっても良い。画面50は一例であり、必要に応じて、表示メニューを変更可能である。
【0034】
[動作の流れ]
基本ラック2の制御ユニットの動作例を図5のフロー図を参照しながら説明する。非常用電源システム1は、メイテナンス等で平時に使用するときであれば、外部電源41に接続されて動作する(ステップ1、2)。外部電源41の商用電源が使用可能な場合は、非常用電源システム1は電源供給を継続的に受け、負荷40へ電源供給を行う(ステップ2)。外部電源41の商用電源が使用できない場合は、非常時の動作体制に入る(ステップ2からステップ3)。このような状況は、例えば、地震、津波、台風、洪水等の自然災害、人的な事故・災害、商用電源の電源供給能力不足状態等において、商用電源インフラが使用不能になった場合が想定される。基本制御部26は、基本ラック2のバッテリーユニット7(1)~7(3)のバッテリーセンサー27(1)~27(3)のデータを取得する(ステップ3)。
【0035】
基本制御部26は、バッテリーユニット7(1)~7(3)のバッテリーが使用することが可能か否かを判定する(ステップ4)。バッテリーユニット7(1)~7(3)が使用不可である場合、増設ラック3のバッテリーユニット17(1)~17(3)のバッテリーセンサー37(1)~37(3)のデータを取得するステップへ移行する(ステップ4→ステップ11)。ここで、基本制御部26は、基本ラック2のバッテリーユニット7(1)~7(3)の全てが使用不可の場合に、増設ラック3のバッテリーユニット17(1)~17(3)の確認へ移行する(ステップ4→ステップ11)。基本ラック2のバッテリーユニット7(1)~7(3)が使用することが可能である場合、各バッテリーユニット7(1)~7(3)の容量を確認する(ステップ5~ステップ10)。
【0036】
まず、バッテリーユニット7(1)の使用を開始する。適当な間隔で、バッテリーユニット7(1)の容量を確認し、設定容量以内か否かを判定する(ステップ5、ステップ6)。バッテリーユニット7(1)の容量が設定容量以内の場合、言い換える、使用可能である場合、バッテリーユニット7(1)の使用を継続する(ステップ6→ステップ5)。このとき、スイッチグ回路22はバッテリーユニット7(1)と電圧・電流調整装置21が接続され、バッテリーユニット7(1)から電源供給を受ける状態である。バッテリーユニット7(1)の容量は、設定容量以内ではなくそれを下回る場合、言い換えると使用不可である場合、バッテリーユニット7(2)の容量を確認し、設定容量以内か否かを判定する(ステップ7)。
【0037】
バッテリーユニット7(2)の容量が設定容量以内の場合、言い換える、使用可能である場合、バッテリーユニット7(2)の使用へスイッチグ回路22が切り換えし、バッテリーユニット7(2)から電力供給を行う(ステップ8)。バッテリーユニット7(2)の容量は、設定容量以内ではなくそれを下回る場合、言い換えると使用不可である場合、次のバッテリーへ、この場合、バッテリーユニット7(3)の容量を確認し、設定容量以内か否かを判定する(ステップ7→ステップ10)。バッテリーユニット7(2)の使用中、その容量が設定容量以内か否かを所定間隔で確認し、バッテリーユニット7(2)の使用を停止し次のバッテリーユニットへ移行するか否かを常時確認する(ステップ9とステップ8の繰り返し)。このように、バッテリーユニットを順番に使用し、設定容量以下のバッテリーユニットの使用を停止し、次のバッテリーユニットへ切り換えていく。
【0038】
本例では、3台のバッテリーユニットであるので、最後が、バッテリーユニット7(3)の容量を確認し、設定容量以内か否かを判定する(ステップ10)。バッテリーユニット7(3)の容量が設定容量以下の場合、言い換える、基本ラック2が使用不可である場合、増設ラック3のバッテリーユニットの容量確認へ移行する(ステップ10→ステップ11)。非常用電源システム1の基本制御部26は、基本ラック2のバッテリーユニット17(1)~17(3)のバッテリーセンサー37(1)~37(3)のデータを取得する(ステップ11)。基本制御部26は、バッテリーユニット17(1)~17(3)が使用することが可能か否かを判定する(ステップ12)。バッテリーユニット17(1)~17(3)が使用することが可能ではない場合、このバッテリーユニット17 が使用不可である旨を管理者へ通報する(ステップ12→ステップ13)。
【0039】
この通報は通信インターフェース29を介して、管理サーバー43へ送信され、最終的に、システム管理画面、管理者の携帯端末等に表示される。バッテリーユニット17(1)~17(3)が使用することが可能である場合、各バッテリーユニット17(1)~17(3)の容量を確認する(ステップ12~ステップ14)。まず、バッテリーユニット17(1)の使用を開始し、その容量を適当な間隔で確認し、設定容量以内か否かを判定する(ステップ16)。バッテリーユニット17(1)の容量が設定容量以内の場合、言い換える、使用可能である場合、バッテリーユニット17(1)の使用を継続する(ステップ15→ステップ14)。このとき、スイッチグ回路32はバッテリーユニット17(1)と電圧・電流調整装置21が接続され、バッテリーユニット17(1)から電源供給を受ける状態である。
【0040】
バッテリーユニット17(1)の容量は、設定容量以内ではなくそれを下回る場合、言い換えると使用不可である場合、バッテリーユニット17(2)の容量を確認し、設定容量以内か否かを判定する(ステップ16)。バッテリーユニット17(2)の容量が設定容量以内の場合、言い換える、電力出力可能(使用可能)である場合、バッテリーユニット17(2)の使用へスイッチグ回路32が切り換えし、バッテリーユニット17(2)から電力供給を行う(ステップ16→ステップ17)。バッテリーユニット17(2)の容量は、設定容量以内ではなくそれを下回る場合、言い換えると使用不可である場合、次のバッテリーユニットへ、この場合、バッテリーユニット17(3)の容量を確認し、設定容量以内か否かを判定する(ステップ16→ステップ18の後のステップ)。
【0041】
バッテリーユニット17(2)の使用中、その容量が設定容量以内か否かを所定間隔で確認する(ステップ17、ステップ18)。バッテリーユニット17(2)の容量が設定容量以下の場合、次のバッテリーユニットへ移行するか、もしこれが際のバッテリーユニットである場合、管理者へ通報する(ステップ18→ステップ19)。
【0042】
[第2の実施の形態]
図6には、本発明の第2の実施の形態の非常用電源システム1の外観を図示している。本発明の第2の実施の形態の非常用電源システム1は、上述の本発明の第1の実施の形態の非常用電源システム1と基本的に同じであり、基本ラック2の筐体4aと増設ラック3の筐体14a、それらに収納されるバッテリーユニット7aとバッテリーユニット17aの数と配列が異なる。本例では、バッテリーユニット7aは、筐体4aに2行2列で配列されている。同じく、バッテリーユニット17aは、筐体14aに2行2列で配列されている。筐体4aと筐体14aの上部に設置されている手摺り6aと手摺り16aは、正面から見て縦の配置されている。
【0043】
[他の実施の形態]
前述した実施の形態の基本ラックは、移動できるようにキャスタ付の構造である。しかしながら、基本ラックは移動できないものであっても良い。また、基本ラック、増設ラック内のバッテリーユニットの数は、3台、4台の例を示したが、これ以上の台数でも良く、また、容量の大きいものであれば1台であっても良い。更に、前述した実施の形態において、例えば、4個のバッテリーユニットで運用中に、3個のバッテリーユニットの残容量が無くなり、4個目のバッテリーユニットが稼働中に、容量が空になった3個のバッテリーを交換後、4個目のバッテリーが残っていても、手動でオフにして一番目のバッテリーユニットに切り替えて、4番目のバッテリーユニットも交換する制御システムでもよい。これにより現場に行って、バッテリーユニットを交換する作業の間隔時間を延長できる。
【符号の説明】
【0044】
1…非常用電源システム
2…基本ラック
3…増設ラック
4、14…筐体
5、15…キャスタ
6、 6 a、16、16a…手摺り
7、7a、17、17a…バッテリーユニット
8、18…取っ手
9…基本制御ユニット
10…電線
11…バーコード
12…容量表示器
19…増設制御ユニット
21…電圧・電流調整装置
22、32…スイッチング回路
23、33…充電器
24…増設ラック優先切換用手動スイッチ
25、35インターフェース
26…基本制御部
27、37…バッテリーセンサー
28、38…電圧調整回路
29…通信インターフェース
36…増設制御部
40…負荷
41…外部電源
42…インターネット
43…管理サーバー
50…画面(例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6