(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045513
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】内視鏡画像変換装置、内視鏡画像変換システムおよび内視鏡画像変換プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 1/045 20060101AFI20230327BHJP
【FI】
A61B1/045 610
A61B1/045 614
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153983
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】500433225
【氏名又は名称】学校法人中部大学
(71)【出願人】
【識別番号】506111240
【氏名又は名称】学校法人 愛知医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100147625
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100150430
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 元
(74)【代理人】
【識別番号】100155099
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 裕輔
(72)【発明者】
【氏名】岩堀 祐之
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 裕康
(72)【発明者】
【氏名】春日井 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 尚高
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161AA01
4C161AA04
4C161QQ02
4C161QQ07
4C161WW03
4C161WW08
4C161YY12
4C161YY13
(57)【要約】
【課題】内視鏡の視野が暗くなりにくく、かつ導入コストを低減し得る内視鏡画像変換装置、内視鏡画像変換システムおよび内視鏡画像プログラムを提供する。
【解決手段】本実施形態の内視鏡画像変換システムでは、内視鏡システム2で撮像された内視鏡画像が内視鏡画像変換装置10の入力部20に入力されると、内視鏡画像は、変換部30のニューラルネットワークにより推定され所定の特徴部分(血管等)が所定の色彩に強調された色彩強調画像として変換された後、出力部40により出力されてディスプレイ6に映し出される。そのため、白色光だけを用いる内視鏡システム2で撮像された内視鏡画像でも所定の特徴部分が強調された色彩強調画像としてディスプレイ6に映し出されるので、白色光以外の照明光(狭帯域光等)を用いる必要がなく画像強調内視鏡のように通常の観察時に用いる白色光に加えて白色光以外の照明光も選択的に照射し得る構成を採る必要もない。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡により撮像された内視鏡画像が入力される入力部と、
前記入力部に入力された前記内視鏡画像をニューラルネットワークにより推定して所定の色彩を強調した色彩強調画像に変換する変換部と、
前記変換部に変換された前記色彩強調画像を出力する出力部と、を備え、
前記ニューラルネットワークは、所定の特徴部分を前記所定の色彩として強調した特徴部強調画像を、教師データとして学習させた学習済みネットワークである、ことを特徴とする内視鏡画像変換装置。
【請求項2】
前記所定の色彩が前記特徴部強調画像の種類ごとに複数存在することに対応して、前記ニューラルネットワークが複数存在しており、
前記変換部は、外部から入力される情報に基づいて複数の前記ニューラルネットワークから一のニューラルネットワークを選択し、前記一のニューラルネットワークにより前記内視鏡画像を前記色彩強調画像に変換する、ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡画像変換装置。
【請求項3】
前記出力部は、前記色彩強調画像に加えて前記内視鏡画像も出力する、ことを特徴とする請求項1または2に記載の内視鏡画像変換装置。
【請求項4】
内視鏡により撮像された内視鏡画像が入力される入力装置と、
前記入力装置に入力された前記内視鏡画像をニューラルネットワークにより推定して所定の色彩を強調した色彩強調画像に変換して出力する変換装置と、
前記変換装置に出力された前記色彩強調画像を出力する出力装置と、
前記出力装置から出力された前記色彩強調画像を表示する表示装置と、を備え、
前記ニューラルネットワークは、所定の特徴部分を前記所定の色彩として強調した特徴部強調画像を、教師データとして学習させた学習済みネットワークである、ことを特徴とする内視鏡画像変換システム。
【請求項5】
コンピュータを、
内視鏡により撮像された内視鏡画像を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記内視鏡画像をニューラルネットワークにより推定して所定の色彩を強調した色彩強調画像に変換する変換手段と、
前記変換手段に変換された前記色彩強調画像を出力する出力手段と、
して機能させ、
前記ニューラルネットワークは、所定の特徴部分を前記所定の色彩として強調した特徴部強調画像を、教師データとして学習させた学習済みネットワークである、ことを特徴とする内視鏡画像変換プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡画像変換装置、内視鏡画像変換システムおよび内視鏡画像変換プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
消化器系の内視鏡検査においては白色光観察が用いられることが多い。白色光観察は、内視鏡の先端から白色の照明光(光の三原色(赤色、緑色および青色)を合成した光等)を照射することによって、食道、胃、十二指腸、大腸等の消化管の内表面(消化管の粘膜)を観察する方法である。この方法では、内視鏡により撮像された内視鏡画像は、肉眼で見た場合と同様に自然色で、消化管の粘膜や病変部がディスプレイ等の表示装置に映し出されることから、病変部の形状や色が消化管の内表面に現れにくい場合には、病変部の存在や性質(良性や悪性)を診断することが困難なケースがある。
【0003】
そこで、下記、特許文献1に開示される「内視鏡用光源装置」等の技術を利用した光デジタル法による画像強調内視鏡がある。この光デジタル法の画像強調内視鏡では、例えば、下記、非特許文献1に掲載されているように、消化管の粘膜の模様や粘膜内の血管走行等を肉眼でも判別し易くする波長の光を先端から照射する。これにより、白色光観察では視認が難しい形状や色の病変部であっても、肉眼で容易に確認可能な画像を表示装置に映し出して医師の診断を支援している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】日本消化器内視鏡学会 監修「下部消化管内視鏡スクリーニング検査マニュアル」 医学図書出版株式会社 2018年5月10日(第1版発行)、第85頁~第91頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、光デジタル法の画像強調内視鏡には、上記の非特許文献1に掲載されているように、照射する光の波長の違いにより、例えば、NBI(Narrow Band Imaging)、BLI(Blue Laser Imaging)やLCI(Linked Color Imaging)等の観察法がある(NBI、BLIおよびLCIは登録商標である)。これらは特定波長の光の光量(光度)を上げてそれ以外の波長の光の光量を下げるように内視鏡から照射される光を制御する。即ち、NBI等では、照射する光の波長帯域を制限する必要から(狭帯域光や狭帯域短波光等)、白色光を照射する場合に比べ消化管の粘膜に照射される光量が減少するため、内視鏡の視野内に暗い部分が生じたり視野全体が薄暗くなったりするという問題がある。医師が内視鏡の先端部分を消化管の奥に進めようとしたとき前方視野が暗いと操作がしづらい。
【0007】
また、このような画像強調内視鏡は、通常の観察時に用いる白色光に加えて白色光以外の照明光(狭帯域光等)も選択的に照射し得る構成を採ることから、内視鏡の先端部分を含めて特殊なハードウェアやそれらをサポートするソフトウェアを備える必要がある。そのため、照明光として白色光だけを用いる内視鏡に比べると、設備コストが高額になるという問題も生じる。また、内視鏡の先端部分の構成がより複雑になることから、機械的な故障や不具合が発生する確率も上がるため、設備の導入コストに加えて医療機器として健全な状態を維持するために要する保守コスト等も増大するという問題も招き得る。
【0008】
さらに、画像強調内視鏡として、白色光に加えて白色光以外の照明光(狭帯域光等)も選択的に照射し得る構成では、内視鏡診断時に医師が必要に応じて消化管の粘膜に照射する光を白色光と白色光以外とに切り替える操作を行う。例えば、押しボタンの押下により照射光の切替え操作を行い得るように内視鏡が構成されている場合、切り替えの度ごとに押しボタンを押す必要がある。また、撮像対象の消化管等は呼吸や蠕動運動で常に動く。そのため、切替え操作が煩雑であるとともに、切替え操作の前後(100ミリ秒オーダの時間差)においても消化管等の動きにより画像が変化し得ることから、照射光の切り替えを判断したタイミングで表示装置に映し出されていた部位の画像が、必ずしも狭帯域光等を照射したタイミングで映るとは限らない。つまり、操作性についても問題があり得る。
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、内視鏡の視野が暗くなりにくく、かつ導入コストを低減し得る内視鏡画像変換装置、内視鏡画像変換システムおよび内視鏡画像変換プログラムを提供することを目的とする。また、本発明の別の目的は、内視鏡の操作性を向上し得る内視鏡画像変換装置、内視鏡画像変換システムおよび内視鏡画像変換プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載された請求項1の技術的手段を採用する。この手段によると、請求項1の内視鏡画像変換装置は、内視鏡により撮像された内視鏡画像が入力される入力部と、入力部に入力された内視鏡画像をニューラルネットワークにより推定して所定の色彩を強調した色彩強調画像に変換する変換部と、変換部に変換された色彩強調画像を出力する出力部と、を備える。変換部のニューラルネットワークは、所定の特徴部分を所定の色彩として強調した特徴部強調画像を、教師データとして学習させた学習済みネットワークである。この学習(機械学習)では、特徴部強調画像に含まれる所定の特徴部分が特徴量として抽出される。内視鏡により撮像された内視鏡画像が入力部に入力されると、その内視鏡画像は、変換部のニューラルネットワークにより推定されて、所定の特徴部分が所定の色彩に強調された色彩強調画像として変換される。そして、変換部に変換された色彩強調画像が出力部により出力される。所定の特徴部分は、例えば、内視鏡画像の撮像範囲が消化管の内表面(粘膜)である場合には、粘膜表層内の血管(病変部付近の新生血管を含む)、腫瘍等のポリープや粘膜表面等である。これにより、入力部に入力された内視鏡画像は、変換部のニューラルネットワークにより推定された所定の特徴部分が強調されて色彩強調画像に変換された後、出力部により出力される。なお、本明細書においては、消化管は、食道、胃、小腸(十二指腸、空腸、回腸)、大腸(盲腸、結腸、直腸)を含む概念である。
【0011】
また、特許請求の範囲に記載された請求項2の技術的手段を採用する。この手段によると、所定の特徴部分の色彩が特徴部強調画像の種類ごとに複数存在することに対応して、ニューラルネットワークが複数存在する。変換部は、外部から入力される情報に基づいて複数のニューラルネットワークから一のニューラルネットワークを選択し、この一のニューラルネットワークにより内視鏡画像を色彩強調画像に変換する。特徴部強調画像の種類は、NBI(Narrow Band Imaging)用の照明光(NBI用狭帯域光)を消化管の内表面(粘膜)に照射した場合に得られる特徴部強調画像であるNBI画像、BLI(Blue Laser Imaging)用の照明光(BLI用狭帯域光)を消化管の内表面に照射した場合に得られる特徴部強調画像であるBLI画像、LCI(Linked Color Imaging)用の照明光(LCI用狭帯域光)を消化管の内表面に照射した場合に得られる特徴部強調画像であるLCI画像、インジゴカルミンやヨード液等の色素を消化管の内表面に散布したり染色したりして白色光を消化管の内表面に照射した場合に得られる特徴部強調画像である色素法画像等がある。これにより、外部から入力される情報に基づいて複数のニューラルネットワークから任意のニューラルネットワークを選択することが可能になる。
【0012】
例えば、複数のニューラルネットワークとして、NBI用の照明光を消化管の内表面に照射した場合に得られるNBI画像とほぼ同等の色彩強調画像に白色光画像を変換可能なニューラルネットワーク、BLI用の照明光を消化管の内表面に照射した場合に得られるBLI画像とほぼ同等の色彩強調画像に白色光画像を変換可能なニューラルネットワークや、インジゴカルミン等の色素を消化管の内表面に散布等し白色光を消化管の内表面に照射した場合に得られる色素法画像とほぼ同等の色彩強調画像に白色光画像を変換可能なニューラルネットワークが存在する場合には、内視鏡診断時において医師等の使用者は、これらのニューラルネットワークの中から任意のものを選択することで、内視鏡画像変換装置に白色光画像を所定の色彩強調画像に変換させることができる。
【0013】
さらに、特許請求の範囲に記載された請求項3の技術的手段を採用する。この手段によると、出力部は、色彩強調画像に加えて内視鏡画像も出力する。これにより、例えば、出力部の出力先が二画面タイプの表示装置である場合には、色彩強調画像を一方の画面に、また内視鏡画像を他方の画面に、それぞれほぼ同時に表示させることが可能になる。例えば、内視鏡診断時において使用者(医師等)は、画面の切替え操作を行わなくても、血管等が強調された色彩強調画像と白色光を照射した内視鏡画像とをほぼ同時に肉眼で確認することが可能になる。
【0014】
また、特許請求の範囲に記載された請求項4の技術的手段を採用する。この手段によると、請求項4の内視鏡画像変換システムは、内視鏡により撮像された内視鏡画像が入力される入力装置と、入力装置に入力された内視鏡画像をニューラルネットワークにより推定して所定の色彩を強調した色彩強調画像に変換して出力する変換装置と、変換装置に出力された色彩強調画像を出力する出力装置と、出力装置から出力された色彩強調画像を表示する表示装置と、を備える。変換装置のニューラルネットワークは、所定の特徴部分を所定の色彩として強調した特徴部強調画像を、教師データとして学習させた学習済みネットワークである。内視鏡により撮像された内視鏡画像が入力部に入力されると、その内視鏡画像は、変換装置のニューラルネットワークにより推定されて、所定の特徴部分が所定の色彩に強調された色彩強調画像として変換される。そして、変換装置に変換された色彩強調画像が出力装置により出力されて表示装置に表示される。所定の特徴部分は請求項1と同様である。これにより、入力装置に入力された内視鏡画像は、変換装置のニューラルネットワークにより推定された所定の特徴部分が強調されて色彩強調画像に変換された後、出力装置により出力されて表示装置に表示される。
【0015】
また、特許請求の範囲に記載された請求項5の技術的手段を採用する。この手段によると、請求項5の内視鏡画像変換プログラムは、コンピュータを、内視鏡により撮像された内視鏡画像を取得する取得手段と、取得手段により取得された内視鏡画像をニューラルネットワークにより推定して所定の色彩を強調した色彩強調画像に変換する変換手段と、変換手段に変換された色彩強調画像を出力する出力手段と、して機能させる。変換手段のニューラルネットワークは、所定の特徴部分を所定の色彩として強調した特徴部強調画像を、教師データとして学習させた学習済みネットワークである。内視鏡により撮像された内視鏡画像が取得手段により取得されると、その内視鏡画像は、変換手段のニューラルネットワークにより推定されて、所定の特徴部分が所定の色彩に強調された色彩強調画像として変換される。そして、変換手段に変換された色彩強調画像が出力手段により出力される。所定の特徴部分は請求項1と同様である。これにより、取得手段により取得された内視鏡画像は、変換手段のニューラルネットワークにより推定された所定の特徴部分が強調されて色彩強調画像に変換された後、出力手段により出力される。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、入力部に入力された内視鏡画像は、変換部(または変換装置、変換手段)のニューラルネットワークにより推定された所定の特徴部分が強調されて色彩強調画像に変換された後、出力部(または出力装置、出力手段)により出力されたりまた出力装置により出力されて表示装置に表示されたりする。そのため、照明光として白色光だけを用いる内視鏡により撮像された内視鏡画像であっても所定の特徴部分(例えば血管等)が強調された色彩強調画像として出力部(または出力装置、出力手段)により出力されることから、白色光以外の照明光(狭帯域光や狭帯域短波光等)を用いる必要がない。また、画像強調内視鏡のように、通常の観察時に用いる白色光に加えて白色光以外の照明光(狭帯域光等)も選択的に照射し得る構成を採る必要もない。したがって、内視鏡の視野が暗くなりにくく、かつ導入コストを低減することができる。また、前方視野が明るいため、例えば、使用者(医師等)が内視鏡の先端部分を消化管の奥に進めるときにも操作がしやすくなり、内視鏡の操作性を向上させることもできる。
【0017】
また、本発明では、例えば、内視鏡診断時において使用者(医師等)は、画面の切替え操作を行わなくても、血管等が強調された色彩強調画像と白色光を照射した内視鏡画像とをほぼ同時に肉眼で確認することが可能になる。したがって、煩雑な操作も必要なく、しかもほぼ同時かつリアルタイムに見られるので、内視鏡の操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の内視鏡画像変換装置を適用した一実施形態である内視鏡画像変換システムの構成例を示すハードウェアのブロック図である。
【
図2】本実施形態の内視鏡画像変換システムを構成する内視鏡画像変換装置のソフトウェア的な機能構成の例を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図1に表した内視鏡画像変換装置の本体ユニットにより実行される制御プログラムによる制御処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】
図3に表したサイズ変更処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】本実施形態の内視鏡画像変換システムにより変換される前後の内視鏡画像として消化管(大腸)の画像の例を示す図である。上段は変換前の画像であり、下段は変換後の画像である。なお、本件出願と同日付けの物件提出書により
図5に対応するカラー図面1を提出している。
【
図6】本実施形態の内視鏡画像変換システムにより変換される前後の内視鏡画像として消化管(大腸)の画像の例を示す図であり、
図5の続きである。なお、本件出願と同日付けの物件提出書により
図6に対応するカラー図面2を提出している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の内視鏡画像変換装置を適用した一実施形態の内視鏡画像変換システムについて図を参照して説明する。まず、
図1を参照して、本実施形態の内視鏡画像変換システムの構成を説明する。なお、本実施形態の内視鏡画像変換システムは、特許請求の範囲に記載の「内視鏡画像変換システム」に相当し得るものである。
図1は、内視鏡画像変換システムの構成例を示すハードウェアのブロック図である。
【0020】
<ハードウェア構成>
図1に示すように、内視鏡画像変換システムは、内視鏡画像変換装置10を中心に、ディスプレイ6、キーボード7、情報記録媒体8等により構成されており、内視鏡システム2に接続されて使用される。内視鏡画像変換装置10は、例えば、内視鏡システム2から白色光を照射して撮像されて自然色(天然色)で描出された内視鏡画像(以下「白色光画像」という場合がある)を、所定の色彩強調画像に変換する機能を有する。
【0021】
本実施形態では、内視鏡システム2から、例えば、被検者の消化管に、NBI用の照明光を照射した場合に得られる特徴部強調画像であるNBI画像とほぼ同等の色彩強調画像(NBI相当の色彩強調画像、以下「NBI色彩強調画像」という)と、BLI用の照明光を照射した場合に得られる特徴部強調画像であるBLI画像とほぼ同等の色彩強調画像(BLI相当の色彩強調画像、以下「BLI色彩強調画像」という)と、のいずれかに変換する場合を例示して説明する。
【0022】
内視鏡システム2は、画像撮像装置3、内視鏡本体部4やディスプレイ5等により構成されている。画像撮像装置3は、図示されていないがビデオプロセッサや光源装置等により構成されており、スコープとも呼ばれる内視鏡本体部4が接続されている。内視鏡本体部4は、被検者の体内に挿入する挿入部、挿入部の基端側に接続されて医師等の使用者が挿入部の先端機能を操作する操作部や、操作部を画像撮像装置3に接続するケーブル等により構成されている。破線で図示されているディスプレイ5は、例えば、4K画像相当の高解像度(3840×2160ピクセル)に対応した液晶表示装置である。なお、以下、内視鏡システム2を操作する医師等のことを単に「使用者」という。
【0023】
なお、ディスプレイ5には、本来、画像撮像装置3が接続されて当該画像撮像装置3から出力される映像信号が直接入力されるが、後述するように、本実施形態では、画像撮像装置3からの映像信号を分配して内視鏡画像変換装置10が取り込む都合から、画像撮像装置3の映像信号が内視鏡画像変換装置10のビデオキャプチャユニット17を介してディスプレイ5に入力される。そのため、内視鏡システム2のディスプレイ5には、画像撮像装置3から映像信号が直接入力される場合と同様に白色光画像が描出される。なお、内視鏡システム2のディスプレイ5とは別のディスプレイを設けてそれに白色光画像の映像信号を入力してもよい。
【0024】
内視鏡本体部4の挿入部の先端部分には、カメラレンズ、照明ライト、固体撮像素子(CCDやCMOSイメージセンサ等)が設けられており、内視鏡本体部4の固体撮像素子により撮像された白色光画像は、画像撮像装置3を介して内視鏡画像変換装置10に出力される。本実施形態では、内視鏡本体部4の照明ライトは白色光のみを発する。なお、内視鏡本体部4は、[発明が解決しようとする課題]の欄で述べたNBI、BLIやLCI等の観察法に対応した波長の光(NBI用狭帯域光、BLI用狭帯域光、LCI用狭帯域光(LCI用の照明光))も発光可能に構成されていてもよい。
【0025】
内視鏡画像変換装置10は、本体ユニット11、ビデオキャプチャユニット17、HDDユニット18、メディアドライブユニット19等を備えるコンピュータである。ディスプレイ6は、内視鏡画像変換装置10の出力装置(表示装置)であり、例えば、4K画像相当の高解像度(3840×2160ピクセル)に対応した液晶表示装置である。キーボード7は、内視鏡画像変換装置10の入力装置であり、例えば、英数字、記号や片仮名等の入力が可能なキーボードである。入力装置は、ディスプレイ6の画面表示と、その画面上に設けられたタッチパネルまたはポインティングデバイス(マウス、スタイラス等)と、を組み合わせたソフトウェアキーボードでもよい。
【0026】
本体ユニット11は、CPU12、GPU13、メモリ14、入出力インタフェース15等を備えている。CPU12は、内視鏡画像変換装置10を制御する演算処理装置であり、システムバス16等を介して、GPU13、メモリ14や入出力インタフェース15に接続されている。GPU13は、後述する画像変換処理等を行う画像処理装置である。
【0027】
メモリ14は、半導体記憶装置(主記憶装置)であり、CPU12やGPU13が使用する記憶空間を構成する。本実施形態では、例えば、プログラム領域を担うROM(EEPROM等)とワーク領域やデータ領域に割り当てられるDRAMとにより構成されている。ROMには、本体ユニット11の起動時に必要なBIOS等のファームウェアや基本データ等が格納(保存、記憶)されている。
【0028】
入出力インタフェース15は、本体ユニット11の周辺装置に対して、シリアルまたはパラレルのデータのやり取りを仲介する入出力インタフェース装置である。本実施形態では、ビデオキャプチャユニット17、HDDユニット18やメディアドライブユニット19等と接続可能に構成されている。
【0029】
ビデオキャプチャユニット17は、内視鏡システム2の画像撮像装置3から出力される内視鏡画像(白色光画像)の映像信号(MPEG-4やH.264等、フレームレート60fps)を分配して取り込んだ後、PCIe(Peripheral Component Interconnect-Express)やUSB等の所定データ形式の白色光画像の画像データに変換して本体ユニット11に出力する機能を有するビデオ画像取込み装置である。分配した残りの映像信号は、前述したように、内視鏡システム2のディスプレイ5にそのまま映像出力される(破線で図示)。なお、内視鏡システム2の画像撮像装置3から出力される映像信号には、当該内視鏡システム2(具体的には画像撮像装置3)の装置名称、モデル名称、機種や型番等を識別可能な装置情報が含まれている場合がある。
【0030】
HDDユニット18は、大容量(例えば、数10TB)の記憶領域を有する磁気ディスクドライブ装置(補助記憶装置)であり、後述する制御プログラム等のアプリケーションプログラム(以下「アプリ」という)や、これらのアプリを実行可能に制御する基本ソフトウェア(OS)等が格納されている。
【0031】
また、HDDユニット18には、内視鏡画像変換装置10に接続される可能性のある複数種類の画像撮像装置3の装置情報とそれらの画像撮像装置3から入力される内視鏡画像(白色光画像)のサイズ情報や解像度情報とが一対一対応の関係で関連付け(紐付け)られて格納されている。また種々の色彩強調画像に対応した個々のニューラルネットワークを構築するために必要な情報(ネットワーク構造、重みパラメータやバイアス等であり、これらを以下「ネットワーク情報」という)もそれらの色彩強調画像の種類ごとに関連付けられてHDDユニット18に格納されている。
【0032】
メディアドライブユニット19は、CD、DVD、BDやUSBメモリ装置に対して、データを読み出したり書き込んだりする機能を有する情報記憶媒体アクセス装置である。本実施形態では、新たなネットワーク情報を情報記録媒体8から読み出して、HDDユニット18に格納されている古いネットワーク情報を更新する場面で用いられる。
【0033】
本実施形態では、このように構成される内視鏡画像変換システムの内視鏡画像変換装置10(本体ユニット11等)は、ソフトウェア的には、
図2に示すように機能して
図3に示す後述の制御処理を行う。
図2は、内視鏡画像変換装置10のソフトウェア的な機能構成の例を示す機能ブロック図である。
図3は、本体ユニット11により実行される制御プログラムによる制御処理の流れを示すフローチャートである。なお、この制御プログラムは、特許請求の範囲に記載の「内視鏡画像変換プログラム」に相当し得るものである。また後述する所定のニューラルネットワークも、特許請求の範囲に記載の「内視鏡画像変換プログラム」に含まれ得る。
【0034】
<ソフトウェア的な機能構成>
図2に示すように、内視鏡画像変換装置10は、その機能に着目すると、入力部20、変換部30、出力部40、取得部50、記憶部60および更新部70により構成される。
【0035】
入力部20は、内視鏡システム2により撮像されて出力された白色光画像を受け入れる(入力される)機能を有するものであり、本体ユニット11(主に、CPU12、GPU13およびメモリ14)やビデオキャプチャユニット17がその機能を担う。本実施形態では、入力部20は、内視鏡システム2から入力された白色光画像の解像度やサイズが後述する所定のニューラルネットワークでは変換できない解像度やサイズであった場合に変換可能な解像度やサイズに変更する機能も有する。
【0036】
変換部30は、入力部20に入力された白色光画像を所定のニューラルネットワークにより推定して所定の色彩を強調した色彩強調画像に変換する機能を有するものであり、本体ユニット11(主に、CPU12、GPU13およびメモリ14)がその機能を担う。本実施形態では、変換部30には、例えば、学習済みのディープニューラルネットワーク(DNN)が用いられる。ディープニューラルネットワークは、深層ニューラルネットワークモデルであり、層間が全結合ではない順伝播型ニューラルネットワークの一種である。
【0037】
本実施形態では、例えば、変換部30は、ネットワーク構造として、所定の入力層、結合層や出力層を有するとともに、中間層を多数有するネットワークモデルである。ネットワークモデルは、ネットワーク構造や、ノード間を結合するエッジの重みパラメータおよびバイアスが学習結果に応じて変動するため、特定のものに限定されない。ディープニューラルネットワークは、例えば、インターネット上で公開されているAPI(Application Programming Interface)サービス(例えば、CycleGAN(https://github.com/junyanz/pytorch-CycleGAN-and-pix2pix)等)を利用して構築することができる。
【0038】
ニューラルネットワークの学習では、例えば、内視鏡画像に含まれる所定の特徴部分を所定の色彩として強調した特徴部強調画像(例えば、NBI用またはBLI用の照明光を被検者の消化管に照射した場合に得られるNBI画像またはBLI画像)を、教師データとして、所定の特徴部分を含んでいるがその部分を所定の色彩で強調していない内視鏡画像、つまり白色光画像と、特徴部強調画像(NBI画像やBLI画像)との対応関係を学習するが、本実施形態では、効率的かつ効果的であるため、深層学習の手法として、例えば、GAN(敵対的生成ネットワーク)を使用する。これらについては後述する。
【0039】
出力部40は、変換部30で変換された色彩強調画像をディスプレイ6に出力する機能を有するものであり、本体ユニット11(主に、CPU12、GPU13およびメモリ14)がその機能を担う。本実施形態では、変換部30により変換された所定の色彩強調画像の解像度やサイズがディスプレイ6の出力仕様に適合しない場合等に出力可能な解像度やサイズに変更する機能も有する。
【0040】
取得部50は、内視鏡システム2の情報(装置情報)をキーボード7(入力装置)から取得する機能を有するものであり、本体ユニット11(主に、CPU12とメモリ14)がその機能を担う。前述したように、入力装置は、ディスプレイ6の画面表示とタッチパネルやポインティングデバイスと、を組み合わせたソフトウェアキーボードでもよい。
【0041】
記憶部60は、種々の色彩強調画像に対応した個々(複数)の所定のニューラルネットワークのネットワーク情報を記憶する機能を有するものであり、本体ユニット11(主にHDDユニット18)がその機能を担う。複数の所定のニューラルネットワークは、前述したように、本実施形態ではディープニューラルネットワークであり、それらに対応した複数の学習済みのネットワーク情報が記憶部60に記憶(格納)されている。
【0042】
例えば、NBI用の照明光を被検者の消化管に照射した場合に得られるNBI画像を教師データとして学習した学習済みのNBI用ネットワークのネットワーク情報や、BLI用の照明光を被検者の消化管に照射した場合に得られるBLI画像を教師データとして学習した学習済みのBLI用ネットワークのネットワーク情報等が照明光の種類(NBI、BLI)ごとに関連付けられて記憶部60に記憶されている。
【0043】
なお、NBI用の照明光を照射した場合に得られるNBI画像と、BLI用の照明光を照射した場合に得られるBLI画像とは、所定の特徴部分として強調される色彩が異なる場合がある。例えば、NBI画像やBLI画像はいずれも画像全体が青みがかった色彩になるが、所定の特徴部分(例えば、粘膜表層内の血管や病変部付近の新生血管、腫瘍等のポリープや粘膜表面等)については、NBI画像では茶色や褐色等の色彩(所定の色彩)で強調され、またBLI画像では赤茶色等の色彩(所定の色彩)で強調される。
【0044】
また、LCI用の照明光を照射した場合に得られるLCI画像では、赤色のコントラストを強くし、所定の特徴部分(例えば、粘膜表層内の血管や病変部付近の新生血管、腫瘍等のポリープや粘膜表面等)が赤色や褐色等の色彩(所定の色彩)で強調される。さらに、インジゴカルミン等の色素を散布等した消化管の粘膜に白色光を照射した場合に得られる色素法画像では、所定の特徴部分(例えば、消化管の内表面の窪みや襞等、内表面の凹凸形状等)が色素の貯留色や反応色により青色や黒褐色等の色彩(所定の色彩)で強調される。
【0045】
なお、NBI画像、BLI画像やLCI画像の例については、[背景技術]の欄で述べた非特許文献1(下部消化管内視鏡スクリーニング検査マニュアル)の第87頁の
図4のB(NBI観察像)、
図5のB(BLI-bright観察像)や
図5のC(LCI観察像)に掲載されているので、それらを参照されたい。また、色素法画像の例については、非特許文献1の第86頁の
図3のCや
図3D(インジゴカルミン散布像)を参照されたい。
【0046】
更新部70は、記憶部60に記憶されている所定のニューラルネットワークのネットワーク情報を、情報記録媒体8から読み出した別のネットワーク情報に更新する機能を有するものであり、本体ユニット11(主に、CPU12とメモリ14)およびメディアドライブユニット19がその機能を担う。情報記録媒体8には、通常、新しいネットワーク情報が格納されているため、更新部70は、記憶部60に記憶されている所定のニューラルネットワークの機能をアップデートする場面、つまり内視鏡画像変換装置10のシステムを更新する場合等に使用される。
【0047】
<ニューラルネットワークの学習>
ディープニューラルネットワークの深層学習は、例えば、GAN(敵対的生成ネットワーク)のアルゴリズムが用いられ、重みパラメータやバイアスの調整はバックプロパゲーション(誤差逆伝播法)により行われる。即ち、GANを構成する2つのネットワーク(ジェネレータ(生成器)とディスクリミネータ(識別器))のうち、ジェネレータのネットワークが本実施形態の所定のニューラルネットワーク(学習済みのディープニューラルネットワーク)として変換部30において用いられる。
【0048】
GANのディスクリミネータに与える教師データは、粘膜に病変がある消化管(例えば大腸)のNBI画像やBLI画像であり、ディスクリミネータの判定精度を上げるため、当該消化管の内視鏡画像診断について熟達した医師により評価および選択された画像が提供される。例えば、学習済みのNBI用ネットワークを構築するために、約300画像の教師データを要した。
【0049】
本実施形態では、種々の色彩強調画像に対応する必要から、NBI画像を教師データとして学習した学習済みのNBI用ネットワークや、BLI画像を教師データとして学習した学習済みのBLI用ネットワーク、また後述するように、LCI画像を教師データとして学習した学習済みのLCI用ネットワークや、色素法画像を教師データとして学習した学習済みの色素法用ネットワーク等、複数のニューラルネットワークを構築する。
【0050】
これらのニューラルネットワークは、例えば、教師データとして、NBI用のハードウェアで変換されたNBI画像やBLI用のハードウェアで変換されたBLI画像等のスタイル画像をハードウェアごとに切り分けてスタイル表現の学習が行われる点に特徴がある。これにより、コンテンツ画像として内視鏡画像(白色光画像)を入力とし、学習済みのスタイル表現を適用することで種々の色彩強調画像の生成を実現することが可能になる。ニューラルネットワークのスタイル表現学習については下記の論文を参照されたい。
Leon A. Gatys, Alexander S. Ecker, Matthias Bethge, “A Neural Algorithm of Artistic Style”, 2 September 2015, https://arxiv.org/pdf/1508.06576.pdf
【0051】
また、これらのニューラルネットワークでは、所定の特徴部分(粘膜表層内の血管(病変部付近の新生血管を含む)、腫瘍等のポリープや粘膜表面等)を適確(高精度)に特定して色彩を変換可能に構築するため、例えば、Leave One Out(リーブワンアウト法)やCross Validation(クロスバリデーション法)を用いた交差検証を、複数回行うことにより再学習が行われる。これにより、これらの学習済みのニューラルネットワークによって、NBI画像やBLI画像等の特徴部強調画像に含まれる所定の特徴部分(血管等)を特徴量として抽出することが可能になる。
【0052】
これらの学習済みのニューラルネットワークのネットワーク情報は、前述したように、HDDユニット18に格納されたり、情報記録媒体8を介在させて更新されたりする。
【0053】
なお、ニューラルネットワークの深層学習は、GANのアルゴリズムを用いたものに限られることはなく、GAN等を発展させた新たな学習法等を利用して行ってもよい。また、GANのアルゴリズムを用いることなく、白色光画像と、それと同じ撮像範囲や撮像対象のNBI画像やBLI画像等とを教師データとしてニューラルネットワークの学習を行ってもよい。
【0054】
<ソフトウェア制御の流れ>
図3に示す制御プログラムによる制御処理は、内視鏡システム2から入力された内視鏡画像(白色光画像)を当該内視鏡画像変換装置10によってNBI色彩強調画像等に変換するために必要な制御を行うものである。
【0055】
例えば、内視鏡画像変換装置10の電源がオンされて本体ユニット11が起動した後に立ち上がる基本ソフトウェア(OS)によって、当該制御プログラムがHDDユニット18からメモリ14のRAMに読み込まれて起動されることで、この制御処理が開始される。なお、この制御処理の開始時においては内視鏡画像変換装置10には、ディスプレイ6やキーボード7は勿論のこと、内視鏡システム2の画像撮像装置3やディスプレイ5も内視鏡画像変換装置10に接続されており電源が投入されている。
【0056】
本体ユニット11により起動された制御処理では、まずステップS101により所定の初期化処理が行われる。この処理では、例えば、メモリ14のワーク領域やデータ領域等を初期値でクリアしたり、入出力インタフェース15に接続されているビデオキャプチャユニット17等に対して初期化コマンドを送出したりする。これにより、ビデオキャプチャユニット17等は、起動後に必要なパラメータ等が初期値にセットされる。
【0057】
続くステップS103では装置情報取得処理が行われる。この処理では、現在、当該内視鏡画像変換装置10に接続されている内視鏡システム2(具体的には画像撮像装置3)から出力される映像信号に当該画像撮像装置3の装置名称等を識別可能な装置情報が含まれている場合、その映像信号を解析したり判別したりして当該画像撮像装置3の装置情報を取得する。この解析処理や判別処理には、例えば、想定される画像撮像装置3等の装置名称等を識別可能な装置情報が含まれている映像信号を教師データとして、学習させた学習済みのニューラルネットワークが用いられる。
【0058】
そして、映像信号から当該画像撮像装置3の装置情報を取得することができなかった場合には(S105;Yes)、次のステップS107により入力情報取得処理が行われる。これに対して、映像信号から当該画像撮像装置3の装置情報を取得することができた場合には(S105;No)、入力情報取得処理(S107)は行う必要がないため、ステップS109に移行して待機画面表示処理が行われる。
【0059】
ステップS107の入力情報取得処理では、使用者に対して当該画像撮像装置3の装置情報を入力するように促す画面表示をディスプレイ6に出力するとともに、例えば、当該画像撮像装置3の装置名称をタイプ入力可能なテキストボックスを表示して使用者がキーボード7から入力可能にしたり、画像撮像装置3等の装置名称一覧をディスプレイ6に表示して使用者が図略のマウス等(ポインティングデバイス)により当該画像撮像装置3の装置名称を選択かつ入力可能にしたりする。
【0060】
なお、装置情報取得処理(S103)で取得されたり入力情報取得処理(S107)で入力されたりする装置情報は、後述するように、当該画像撮像装置3を識別可能な情報であって画像撮像装置3から入力される白色光画像のサイズ情報や解像度情報と予め関連付けられているものであれば、モデル名称、機種や型番等でもよい。
【0061】
内視鏡画像変換装置10に現在接続されている画像撮像装置3の装置情報が得られると、当該画像撮像装置3から入力される白色光画像の情報を特定できる。そのため、ステップS109の待機画面表示処理では、画像変換の準備が整った旨を使用者に知らせる旨の画面表示として、例えば「準備完了」の文字情報をディスプレイ6に出力するとともに、変換開始指示の入力を使用者に促すメッセージをディスプレイ6に出力する。また、画像変換に伴って必要になる情報についても使用者に入力を促すメッセージをディスプレイ6に出力する。
【0062】
本実施形態では、画像変換に伴って必要になる情報の入力が完了した後、変換開始指示の入力を使用者に促す。そのため、例えば、画像変換に伴って必要になる情報として、画像変換後の色彩強調画像の種類を使用者に選択させる旨のメッセージをディスプレイ6に出力する。前述したように、例えば、NBI画像とBLI画像は、所定の特徴部分として強調される色彩が異なる場合がある。そのため、NBI画像とほぼ同等の色彩に画像変換されるNBI色彩強調画像や、BLI画像とほぼ同等の色彩に画像変換されるBLI色彩強調画像については、使用目的や色彩強調された部位の病変特性の違い、あるいは使用者の視覚的な慣れや好み等により使用者が色彩強調画像の種類を選択したいというニーズがある。そこで、本実施形態では、変換後のNBI色彩強調画像またはBLI色彩強調画像の選択を可能にし、それらの選択を使用者に促すメッセージをディスプレイ6に出力するとともに、選択入力を可能にしている。
【0063】
例えば、「NBIボタン」と「BLIボタン」のアイコン画像をディスプレイ6に出力するとともに、使用者がマウス等でそれらのいずれかのアイコン画像を選択したか否かの情報を取得する。そして、この選択情報に従って、HDDユニット18に記憶されているネットワーク情報(ニューラルネットワークのネットワーク構造、重みパラメータやバイアス等)を当該HDDユニット18から読み出して取得する。例えば、「NBIボタン」が選択入力された場合には、白色光画像をNBI色彩強調画像に変換する学習済みのNBI用ネットワークのネットワーク情報をHDDユニット18から取得し、また「BLIボタン」が選択入力された場合には、白色光画像をBLI色彩強調画像に変換する学習済みのBLI用ネットワークのネットワーク情報をHDDユニット18から取得する。
【0064】
ステップS109において、画像変換に伴い必要になる情報の入力が完了すると、次に変換開始指示の入力を使用者に促す。例えば、「スタートボタン」のアイコン画像をディスプレイ6に出力して使用者がマウス等でそのアイコン画像を選択したか否かの情報を取得する。そして、ステップS111により「スタートボタン」の選択入力があったか否かを判定する。この例の場合には、使用者がマウス等で「スタートボタン」のアイコン画像を選択する(開始入力が有る)まで待機し(S111;No)、「スタートボタン」の選択入力(開始入力)があると(S111;Yes)、ステップS113に移行する。
【0065】
ステップS113では画像データ取得処理が行われる。この処理では、ビデオキャプチャユニット17から出力された白色光画像の画像データを取得する。本実施形態では、前述したように、内視鏡システム2の内視鏡本体部4の先端部分(照明ライト)からは白色光のみが照射されることから、例えば、白色光画像には、被検者の消化管の内表面(消化管の粘膜)が自然色で描出される。なお、本実施形態では、ビデオキャプチャユニット17(入力部20、出力部40)が分配した残りの映像信号の出力は(破線で図示)、内視鏡システム2のディスプレイ5に入力されているため、当該ディスプレイ5には、自然色で描出された白色光画像がほぼリアルタイムに映し出される。
【0066】
次のステップS115では解像度等変更処理が行われる。次のステップS117による画像変換処理においては、白色光画像の画像データが学習済みのNBI用ネットワークやBLI用ネットワーク(所定のニューラルネットワーク)に入力されることによって、白色光画像がNBI色彩強調画像やBLI色彩強調画像に変換される。
【0067】
このため、変換前の白色光画像は、所定のニューラルネットワークに入力可能な画像サイズ(例えば、縦横比が16:9)や解像度(例えば、3840×2160ピクセル)でなければならないことから、画像変換処理(S117)に先立って解像度等変更処理(S200)が行われる。この処理の詳細は
図4に表されているので、ここからは
図4も参照しながら説明する。ステップS115の解像度等変更処理(S200)では、まずステップS201により画像情報取得処理が行われる。
【0068】
前述したように、HDDユニット18には、内視鏡画像変換装置10に接続される可能性のある複数種類の画像撮像装置3の装置情報と、それらの画像撮像装置3から入力される白色光画像のサイズ情報や解像度情報とが一対一対応の関係でそれぞれ関連付けられて格納されている。そのため、ステップS201の画像情報取得処理では、内視鏡画像変換装置10に入力された白色光画像のサイズ情報や解像度情報を当該画像撮像装置3の装置情報に基づいてHDDユニット18から取得する。
【0069】
そして、ステップS203の低解像度判定処理により白色光画像の解像度が所定のニューラルネットワークで入力可能な解像度(例えば、4K画像相当の解像度(3840×2160ピクセル))よりも低い、つまり低解像度(例えば、2K画像相当の解像度(1920×1080ピクセル))であると判定した場合には(S203;Yes)、続くステップS205により解像度変更処理が行われる。これに対して、白色光画像の解像度が予め定められた解像度よりも低くない、つまり高解像度(例えば、4K画像相当の解像度(3840×2160ピクセル)であると判定した場合には(S203;No)、続くステップS205の解像度変更処理をスキップして、ステップS207の判定処理が行われる。
【0070】
ステップS205の解像度変更処理では、白色光画像の画像データを低解像度から高解像度に変更する処理が行われる。本実施形態では、例えば、GAN(敵対的生成ネットワーク)を利用して生成された学習済みのディープニューラルネットワークを用いて、2K画像から4K画像への変更が行われる。なお、ステップS203において、例えば、白色光画像の解像度が所定のニューラルネットワークで入力可能な解像度よりも高い、例えば、8K画像相当の解像度(7680×4320ピクセル)であるか否かを判定し、高い場合には(S203;Yes)、ステップS205において低解像度(8K画像から4K画像)に変更する処理を行うようにアルゴリズムを構成してもよい。
【0071】
続くステップS207の異形サイズ判定処理では、白色光画像が異形サイズであるか否かの判定が行われる。例えば、同じ4K画像相当であっても縦横比が約17:9(解像度(4096×2160ピクセル))の場合には、所定のニューラルネットワークに入力可能な画像サイズ(例えば、縦横比16:9、解像度(3840×2160ピクセル))に合致しない。そのため、所定のニューラルネットワークに入力不可能な画像サイズであるか否かを判定する。
【0072】
そして、異形サイズである、つまり画像サイズを変更する必要があると判定した場合には(S207;Yes)、続くステップS209によりサイズ変更処理が行われる。これに対して、異形サイズでない、つまり画像サイズを変更する必要がないと判定した場合には(S207;No)、当該白色光画像の画像データは所定のニューラルネットワークに入力可能な画像サイズ(例えば、縦横比16:9、解像度(3840×2160ピクセル))に合致するので、本解像度等変更処理(S200)を終了した後、
図3の制御処理に戻ってステップS117の画像変換処理に移行する。
【0073】
ステップS209のサイズ変更処理では、白色光画像の画像データを縦横比16:9に収まるように画像サイズを変更する処理が行われる。例えば、白色光画像の縦横比が約17:9(解像度(4096×2160ピクセル))である場合には、縦横比16:9に収まらない周囲部分の画素データの削除が行われる。サイズ変更処理(S209)が終了すると、
図3の制御処理に戻ってステップS117の画像変換処理に移行する。
【0074】
図3に示すように、ステップS117の画像変換処理では、待機画面表示処理(S109)により取得されたネットワーク情報(ニューラルネットワークのネットワーク構造、重みパラメータやバイアス等)に基づいて構築される所定のニューラルネットワークを用いて白色光画像を所定の色彩強調画像に変換する。
【0075】
例えば、待機画面表示処理(S109)においてNBI用ネットワークのネットワーク情報を取得した場合には、そのネットワーク情報に基づいて構築されたNBI用ネットワークに、画像データ取得処理(S113)により取得された(または取得された後に解像度等変更処理(S115)により解像度等が変更された)白色光画像の画像データを入力する。これにより、例えば、
図5および
図6に示すように、白色光画像の画像データはNBI色彩強調画像の画像データに変換される。なお、これらの図には、消化管の一例として大腸内を撮像した白色光画像と色彩強調画像が表示されている。また本件出願と同日付けで物件提出したカラー図面1,2は、
図5、
図6にそれぞれ対応している。
【0076】
これらの
図5および
図6においては、紙面上段が変換前の白色光画像であり(
図5(Aa)~(Ea)、
図6(Fa)~(Ja))、紙面下段が変換後のNBI色彩強調画像である(
図5(Ab)~(Eb)、
図6(Fb)~(Jb))。例えば、本実施形態の内視鏡画像変換システムでは、内視鏡システム2のディスプレイ5に変換前の白色光画像(
図5(Aa)~(Ea)、
図6(Fa)~(Ja))が表示され、またディスプレイ6に変換後のNBI色彩強調画像(
図5(Ab)~(Eb)、
図6(Fb)~(Jb))が表示される。
【0077】
例えば、各図下段のNBI色彩強調画像は、各図上段の白色光画像に比べると、所定の特徴部分(粘膜表層内の毛細血管等)が色濃く着色されて色彩が強調されていることが確認できる。なお、
図5(Aa)、
図5(Ba)および
図5(Da)に表示されている黒色破線は、これらの白色光画像においてポリープが存在する範囲を明示するために本件出願人が便宜的に追記したものであり白色光画像には含まれないものである。また、
図5(Da)に表示されている白色一点鎖線は、同白色光画像において血管が網目状に存在する範囲を明示するために本件出願人が便宜的に追記したものでありこれも白色光画像に含まれないものである。
【0078】
図5(Aa)と
図5(Ab)、
図5(Ba)と
図5(Bb)や、
図5(Da)と
図5(Db)のように、それぞれの上下段を比較すると、腫瘍等のポリープの部分(所定の特徴部分)の色彩が色濃く着色されて強調されていることがわかる。また、
図5(Da)と
図5(Db)では、ポリープの周囲において網目状に拡がる血管の色彩が色濃く着色されて強調されていることがわかる。さらに、
図6においても上下段を比較するとわかるように(特に、
図6(Fa)と
図6(Fb)や、
図6(Ia)と
図6(Ib))、ポリープとその周囲に拡がる血管が色彩強調されていることを確認できる。
【0079】
なお、
図5および
図6はグレースケールで表現された画像であることから、強調されている色彩の色相を視認することは困難であるが、物件提出書に添付して提出したカラー画像1,2(
図5,6に対応)においては、NBI画像のように、ポリープの部分は、例えば褐色や青みのある褐色に着色され、また血管は、例えば茶色や褐色に着色されていることを確認することができる。
図5(Ba),(Bb)や
図6(Fa),(Fb)等において現れている楕円弧状の線は、内視鏡本体部4の挿入部の先端部分を筒状に覆う先端フードの開口部分が映り込んだものである。
【0080】
また、
図5および
図6のいずれについても上下段の各画像で明暗の差が少なく、NBI用の照明光を照射した場合に得られるNBI画像のような光量の減少がほとんど生じていないことも確認できる。さらに、
図6(Ha),(Hb)~
図6(Ja),(Jb)では、照明ライトの白色光が消化管の粘膜表面で反射したことにより生じた光沢感が上下段の各画像でほとんど同様に現れていることを確認できる。このことから、各下段の画像は、各上段の画像を変換して生成されたことがわかる。
【0081】
待機画面表示処理(S109)においてNBI用ネットワークのネットワーク情報を取得した場合にはこのように変換されるが、例えば、BLI用ネットワークのネットワーク情報を取得した場合には、そのネットワーク情報に基づいて構築されたBLI用ネットワークに、画像データ取得処理(S113)により取得等された白色光画像の画像データを入力することによって、当該白色光画像の画像データはBLI色彩強調画像の画像データに変換される。なお、白色光画像からBLI色彩強調画像に変換した例については、図示されていないが、
図5や
図6に示したNBI色彩強調画像とほぼ同様に、所定の特徴部分(例えば、粘膜表層内の毛細血管等)が色濃く着色されて色彩が強調される。
【0082】
ステップS119では画像データ送出処理が行われる。この処理では、画像変換処理(S117)により変換された所定の色彩強調画像(NBI色彩強調画像等)の画像データを、当該内視鏡画像変換装置10に接続されているディスプレイ6に対して送出する。これにより、ディスプレイ6の画面には、例えば、NBI色彩強調画像やBLI色彩強調画像が表示される。
【0083】
なお、画像変換処理(S117)により変換された所定の色彩強調画像の解像度やサイズがディスプレイ6の出力仕様に適合しない(例えば、ディスプレイ6が低解像度(例えば、2K画像相当の解像度(1920×1080ピクセル))場合には、ディスプレイ6に出力可能な解像度やサイズに変更する処理がステップS119において行われる。この処理については、画像情報取得処理(S201)が不要である点と、変更後の色彩強調画像の解像度やサイズがディスプレイ6の出力仕様に合致するものである点を除いて、
図4の解像度等変更処理(S200)と同様である。そのため説明を省略する。
【0084】
そして、ステップS119により画像データがディスプレイ6に送出されると、その後、ステップS121により終了入力有り判定処理が行われる。この処理では、当該内視鏡画像変換装置10による画像変換を終了させる変換終了指示が入力されたか否かを判定する。そのため、この処理においては、使用者が変換終了指示を入力できるメッセージやGUIボタンをディスプレイ6に出力した後、終了情報の入力があったか否かを判定する。
【0085】
例えば「エンドボタン」のアイコン画像をディスプレイ6の画面右下付近に表示するように出力するとともに、使用者がマウス等でそのアイコン画像を選択したか否かの情報を取得し、その選択(入力)があったか否かを判定する。そして、使用者がマウス等で「エンドボタン」のアイコン画像を選択した(終了入力が有る)場合には(S121;Yes)、一連の本制御処理を終了する(END)。これに対して、当該アイコン画像の選択がない(終了入力がない)場合には(S121;No)、ステップS113に移行して、新たな白色光画像の画像データを取得する。その後は、既に説明したようにステップS115~S119の各処理が行われる。
【0086】
前述したように、内視鏡システム2の画像撮像装置3から出力される内視鏡画像(白色光画像)の映像信号は、60fpsのフレームレートで内視鏡画像変換装置10のビデオキャプチャユニット17に入力されることから、当該内視鏡画像変換装置10は、例えば、10ミリ秒以下の繰り返し周期でステップS113~S121の各処理を繰り返し実行する必要がある。そのため、先の例では、ディスプレイ6の画面右下付近に、常に「エンドボタン」のアイコン画像が表示されているように視認することが可能である。また、ステップS117により変換される所定の色彩強調画像(NBI色彩強調画像等)も、ディスプレイ5に表示される白色光画像と同様に、ほぼリアルタイムに逐次更新されてディスプレイ6に映し出される。したがって、使用者は、任意のタイミングで「エンドボタン」をマウス等で選択することにより当該内視鏡画像変換装置10による内視鏡画像の変換処理を終了させることができる。また、使用者は、ディスプレイ5の白色光画像とディスプレイ6の所定の色彩強調画像とをほぼ同時かつリアルタイムに見ることが可能になる。
【0087】
なお、上述した制御処理の各ステップS101~S121と、
図2に示す各機能(入力部20等)との主な対応関係は次の通りである。入力部20は、装置情報取得処理(S103)および画像データ取得処理(S113)に関与する。変換部30は画像変換処理(S117)に関与する。出力部40は画像データ送出処理(S119)に関与する。取得部50は、入力情報取得処理(S107)および待機画像表示処理(S109)に関与する。記憶部60は、待機画像表示処理(S109)および解像度等変更処理(S115)に関与する。
【0088】
また、上述した制御処理の待機画像表示処理(S109)においては、画像変換後の色彩強調画像として、使用者がNBI色彩強調画像またはBLI色彩強調画像を選択し得るようにアルゴリズムを構成した。このほかに例えば、LCI用の照明光を消化管の内表面に照射した場合に得られる特徴部強調画像であるLCI画像とほぼ同等の色彩強調画像(LCI相当の色彩強調画像、以下「LCI色彩強調画像」という)に白色光画像を変換可能な学習済みのLCI用ネットワーク(所定のニューラルネットワーク)のネットワーク情報が照明光の種類(LCI)に関連付けられて記憶部60に記憶されている場合には、内視鏡システム2の画像撮像装置3から当該内視鏡画像変換装置10に入力された内視鏡画像(白色光画像)をLCI色彩強調画像に変換し得るようにアルゴリズムを構成してもよい。
【0089】
また、白色光画像に対して所定の信号処理を施して得られた複数の狭い波長帯の画像(分光画像)に基づいてRGB画像を再構築するFICE(Flexible spectral Imaging Color Enhancement、FICEは登録商標である)の画像では、例えば、粘膜表層内の毛細血管や粘膜微細模様の色調が強く、それ以外の部分の色調が弱くなるように色彩が強調される。そのため、FICEによる特徴部強調画像であるFICE画像とほぼ同等の色彩強調画像(FICE相当の色彩強調画像、以下「FICE色彩強調画像」という)に白色光画像を変換可能な学習済みのFICE用ネットワーク(所定のニューラルネットワーク)のネットワーク情報が照明光の種類(NBI、BLI、LCI)に加えてまたは単独で信号処理の種類(FICE)にも関連付けられて記憶部60に記憶されている場合には、内視鏡システム2の画像撮像装置3から当該内視鏡画像変換装置10に入力された内視鏡画像(白色光画像)をFICE色彩強調画像に変換し得るようにアルゴリズムを構成してもよい。
【0090】
また、例えば、インジゴカルミン等の色素を消化管の内表面に散布等し白色光を消化管の内表面に照射した場合に得られる特徴部強調画像である色素法画像とほぼ同等の色彩強調画像(色素法相当の色彩強調画像、以下「色素法色彩強調画像」という)に白色光画像を変換可能な学習済みの色素法用ネットワーク(ニューラルネットワーク)のネットワーク情報が色素の種類(インジゴカルミンやヨード液等)に関連付けられて記憶部60に記憶されている場合には、白色光画像を色素法色彩強調画像に変換し得るようにアルゴリズムを構成してもよい。
【0091】
さらに、例えば、画像変換後の色彩強調画像として、使用者がLCI色彩強調画像や色素法色彩強調画像を選択し得るようにアルゴリズムを構成してもよい。また、画像変換後の色彩強調画像として、使用者がNBI色彩強調画像、BLI色彩強調画像、LCI色彩強調画像または色素法色彩強調画像のいずれか1つを選択し得るようにアルゴリズムを構成してもよい。
【0092】
以上説明したように、本実施形態の内視鏡画像変換システムでは、内視鏡システム2により白色光を照射して撮像された内視鏡画像(白色光画像)が内視鏡画像変換装置10の入力部20(ビデオキャプチャユニット17)に入力されると、その白色光画像は、変換部30の所定のニューラルネットワークにより推定されて、所定の特徴部分(例えば、白色光画像の撮像範囲が消化管の粘膜である場合には、粘膜表層内の血管(病変部付近の新生血管を含む)、腫瘍等のポリープや粘膜表面等)が所定の色彩に強調された色彩強調画像として変換される。そして、変換部30に変換された色彩強調画像が出力部40により出力されてディスプレイ6に映し出される。
【0093】
これにより、内視鏡本体部4の挿入部先端の照明ライト(照明光)として白色光だけを用いる内視鏡システム2により撮像された内視鏡画像(白色光画像)であっても、所定の特徴部分が強調された色彩強調画像として出力部40により出力されてディスプレイ6に映し出されることから、白色光以外の照明光(狭帯域光や狭帯域短波光等)を用いる必要がない。また、画像強調内視鏡のように、通常の観察時に用いる白色光に加えて白色光以外の照明光(狭帯域光等)も選択的に照射し得る構成を採る必要もない。したがって、内視鏡本体部4の挿入部先端の照明ライトの光量が低下しないため、視野内が暗くなりにくく、しかも狭帯域光等を発生させるハードウェアも不要になるので導入コストを低減することができる。また挿入部先端の前方視野が明るいため、例えば、使用者が挿入部の先端部分を消化管の奥に進めるときにも操作がしやすく内視鏡本体部4の操作性が向上する。また、使用者に対して良好な内視鏡診断支援を提供することが可能になる。
【0094】
また、例えば、NBI画像やBLI画像では粘膜表層内の血管や病変部付近の新生血管、ポリープ等が、茶色、赤茶色や褐色等の色彩で強調されたり、LCI画像ではそのような血管等が赤色や褐色等の色彩で強調されたり、また色素法画像では消化管の内表面の窪みや襞等、内表面の凹凸形状等が青色や黒褐色等の色彩で強調されたりというように、所定の特徴部分がNBI画像等の特徴部強調画像の種類ごとに複数存在し、また所定の特徴部分の色彩は特徴部強調画像ごとに異なる。そのため、本実施形態の内視鏡画像変換システムでは、所定の特徴部分の色彩が特徴部強調画像の種類ごとに複数存在することに対応して、所定のニューラルネットワークも複数設ける構成を採る。そして、変換部30は、キーボード7から入力される情報に基づいて、複数のニューラルネットワークから一のニューラルネットワークを選択し、この一のニューラルネットワークにより白色光画像を色彩強調画像に変換する。
【0095】
これにより、キーボード7からの入力情報に基づいて任意のニューラルネットワークを選択することが可能になる。例えば、複数のニューラルネットワークとして、(1)NBI用ネットワーク、(2)BLI用ネットワーク、(3)LCI用ネットワーク、(4)色素法用ネットワーク、がHDDユニット18にそれぞれ格納されている場合には、内視鏡診断時において使用者は、これら(1)~(4)のニューラルネットワークの中から任意に選択したニューラルネットワークにより白色光画像を所定の色彩強調画像(例えば、NBI色彩強調画像)に変換することができる。したがって、少なくとも白色光を照射可能な内視鏡システムであれば、上述した内視鏡システム2のようにその機種やメーカーに関係なく、また画像強調内視鏡でなくても、内視鏡診断において、使用者は、NBI色彩強調画像、BLI色彩強調画像やLCI色彩強調画像によって、画像強調観察を行うことができる。また、色素散布や色素染色の操作を行うことなく色素法色彩強調画像によって画像強調観察を行うことができる。
【0096】
さらに、本実施形態の内視鏡画像変換システムでは、出力部40(ビデオキャプチャユニット17)は、色彩強調画像に加えて内視鏡画像も出力するので、2つのディスプレイ5,6に対して、色彩強調画像を一方のディスプレイ6に、また内視鏡画像を他方のディスプレイ5にほぼ同時に表示させることが可能になる。これにより、例えば、消化管等の内視鏡診断時において使用者は、その都度、画面の切替え操作を行わなくても、また被検者の呼吸や蠕動運動で消化管の粘膜が動いても、血管等が強調された色彩強調画像と白色光を照射した内視鏡画像とをほぼ同時に肉眼で確認することが可能になる。したがって、煩雑な操作も必要なく、しかもほぼ同時かつリアルタイムに見られるので、内視鏡本体部4の操作性を向上することができる。
【0097】
なお、上述した実施形態の内視鏡画像変換システムでは、内視鏡画像変換装置10の制御処理(
図3)において、画像変換後の色彩強調画像として、使用者がNBI色彩強調画像またはBLI色彩強調画像の1つを選択し得るアルゴリズム構成(S109)を例示して説明したが、本発明の内視鏡画像変換装置、内視鏡画像変換システムおよび内視鏡画像変換プログラムはこれに限られることはなく、例えば、使用者に選択させることなく画像変換後の色彩強調画像として、NBI色彩強調画像またはBLI色彩強調画像のいずれか一方だけに限定してディスプレイ6に表示させるように構成してもよい。
【0098】
また、例えば、使用者に選択させることなく画像変換後の色彩強調画像として、NBI色彩強調画像およびBLI色彩強調画像の両方をディスプレイ(例えば、NBI色彩強調画像をディスプレイ6に、またBLI色彩強調画像をその他のディスプレイ)に表示させるように構成してもよい。この場合、
図3に示す制御処理においては、白色光画像をNBI色彩強調画像に変換するための画像変換処理(S107)と白色光画像をBLI色彩強調画像に変換するための画像変換処理(S107)とをほぼ同時に並行させて実行する必要があり、また変換後のNBI、BLI色彩強調画像は画像データ送出処理(S119においてそれぞれをディスプレイ6とその他のディスプレイに分けて出力する必要がある。これにより、内視鏡システム2のディスプレイ5には白色光画像が表示され、またディスプレイ6にはNBI色彩強調画像が表示され、さらにその他のディスプレイにはBLI色彩強調画像が表示されるため、使用者は、同時かつリアルタイムにディスプレイ5,6等に表示される3種類の内視鏡画像を見ながら内視鏡システム2の内視鏡本体部4を操作することが可能になる。
【0099】
また、上述した実施形態の内視鏡画像変換システムでは、内視鏡システム2から白色光を照射して撮像され自然色で描出された内視鏡画像(白色光画像)が内視鏡画像変換装置10に入力される場合を例示して説明したが、本発明の内視鏡画像変換装置、内視鏡画像変換システムおよび内視鏡画像変換プログラムはこれに限られることはなく、例えば、撮像範囲や撮像対象に色素(例えば、インジゴカルミン、ヨード液等)を散布したり染色したりして撮像された内視鏡画像(色素法画像)が内視鏡画像変換装置10に入力されてもよい。
【0100】
例えば、内視鏡画像変換装置10に入力される内視鏡画像として、色素の散布や染色がない撮像範囲等に白色光を照射した場合(白色光の場合)、色素の散布や染色がある撮像範囲等に白色光を照射した場合(色素法の場合)、色素の散布や染色がない撮像範囲等にNBI用の照明光を照射した場合について、3種類にシーン分類したうえで、それぞれのシーンについてGANのアルゴリズムを用いてGANのジェネレータとして機能するニューラルネットワークに学習させる。シーン分類にはシーン認識のネットワークモデルを用いる。GANのディスクリミネータには、それぞれのシーンについて教師データとして適切な画像を相当数提供する。このようにニューラルネットワークを深層学習させることによって、色素法画像をNBI色彩強調画像に変換することが可能になる。また、色素の散布や染色がない撮像範囲等にBLI用の照明光を照射した場合やLCI用の照明光を照射した場合についてもシーン分類したうえで、BLIやLCIのシーンについてもニューラルネットワークに深層学習させることで、色素法画像をBLI色彩強調画像やLCI色彩強調画像に変換することも可能になる。これにより、白色光の場合に現れない色彩的な特徴や情報を、NBI色彩強調画像、BLI色彩強調画像やLCI色彩強調画像において目視確認でき得る。
【0101】
さらに、上述した実施形態の内視鏡画像変換システムでは、特徴部強調画像として、NBI画像、BLI画像、LCI画像や色素法画像の場合を例示して説明したが、これらに限られることはなく、画像強調内視鏡において所定の特徴部分を所定の色彩で強調する観察法に用いられる色彩強調手段であれば、例えば、AFI(Auto Fluorescence Imaging)等の観察法に用いられる色彩強調手段についても、上述したNBIやBLI等の観察法の色彩強調手段に対応した内視鏡画像変換装置10と同様に本発明の内視鏡画像変換装置、内視鏡画像変換システムや内視鏡画像変換プログラムを適用することができる。
【0102】
また、上述した実施形態の内視鏡画像変換システムでは、内視鏡画像変換装置10の制御処理(
図3)において、画像データ取得処理(S113)で取得した内視鏡画像(白色光画像)を画像変換処理(S117)において変換するアルゴリズム構成を例示して説明したが、本発明の内視鏡画像変換装置、内視鏡画像変換システムおよび内視鏡画像変換プログラムはこれに限られることはない。例えば、画像変換処理(S117)の前処理として、血管領域を抽出するネットワークモデル(例えば、U-Net(https://arxiv.org/abs/1505.04597))を用いて当該白色光画像に含まれる血管領域を抽出し、その抽出された血管領域画像を含めて画像変換処理(S117)を行うようにアルゴリズムを構成してもよい。これにより、粘膜内部の血管構造を含めて変換されるため、よりリアルなNBI色彩強調画像等を生成することができる。
【0103】
また、上述した実施形態の内視鏡画像変換システムでは、内視鏡画像変換装置10に入力できる内視鏡画像は撮像範囲等に白色光を照射した白色光画像に限定されることから、例えば、NBI画像やBLI画像が入力されても白色光画像以外は適切な画像変換が行われない(不適切な画像変換が行われる)。そのため、シーン認識のネットワークモデルを用いて、内視鏡画像変換装置10に入力された内視鏡画像がNBI用の照明光を照射した場合のNBI画像やBLI用の照明光を照射した場合のBLI画像であった場合には白色光画像以外のそれらの画像については画像変換を行わないようにアルゴリズムを構成する。これにより、白色光画像が入力された場合にのみNBI色彩強調画像やBLI色彩強調画像に画像変換が行われることから、NBI画像やBLI画像が内視鏡画像変換装置10に誤入力された場合の不適切な画像変換を防止することができる。
【0104】
また、上述した実施形態の内視鏡画像変換システムでは、内視鏡画像変換装置10の出力部40の出力先として、2つのディスプレイ5,6を設けて、一方のディスプレイ5に変換前の白色光画像の画像データ(映像信号)を出力し、他方のディスプレイ6に変換後の色彩強調画像の画像データ(映像信号)を出力して、それぞれ表示させる構成を例示して説明したが、本発明の内視鏡画像変換装置、内視鏡画像変換システムおよび内視鏡画像変換プログラムはこれに限られることはなく、例えば、1つのワイド画面ディスプレイを設けて、変換前の白色光画像の画像データ(映像信号)と変換後の色彩強調画像の画像データ(映像信号)とをそのディスプレイに出力し、そのワイド画面の左側(または上側)に白色光画像を表示させ、またそのワイド画面の右側(または下側)に色彩強調画像を表示させるように構成してもよい。また、内視鏡画像変換装置10の出力部40の出力先として、1つのディスプレイに変換後の色彩強調画像の画像データ(映像信号)だけを出力し、色彩強調画像だけを表示させるように構成してもよい。
【0105】
また、上述した実施形態の内視鏡画像変換システムでは、内視鏡画像変換装置10の変換部30として、ディープニューラルネットワーク(DNN)を用いる場合を例示して説明したが、本発明の内視鏡画像変換装置、内視鏡画像変換システムおよび内視鏡画像変換プログラムはこれに限られることはなく、ニューラルネットワークであれば、例えば、FUNIT(https://github.com/NVlabs/FUNIT)やStarGAN(https://github.com/yunjey/stargan)でもよい。
【0106】
また、上述した実施形態の内視鏡画像変換システムでは、大腸内(粘膜等)を撮像した白色光画像を色彩強調画像に変換する場合を例示したが、本発明の内視鏡画像変換装置、内視鏡画像変換システムおよび内視鏡画像変換プログラムはこれに限られることはなく、内視鏡で観察することが可能な消化管であれば、例えば、食道、胃、小腸についてもそれらの粘膜等を撮像した白色光画像を色彩強調画像に変換する場合にも適用することが可能である。
【0107】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、上述した具体例を様々に変形または変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。さらに、本明細書または図面に例示した技術は、複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つ。なお、[符号の説明]の欄における括弧内の記載は、上述した各実施形態で用いた用語と、特許請求の範囲に記載の用語との対応関係を明示し得るものである。
【符号の説明】
【0108】
2…内視鏡システム(内視鏡)
3…画像撮像装置
4…内視鏡本体部
5…ディスプレイ(出力部の出力先)
6…ディスプレイ(出力部の出力先、表示装置)
7…キーボード(外部)
8…情報記録媒体
10…内視鏡画像変換装置
11…本体ユニット(入力部、変換部、出力部、変換装置、取得手段、変換手段、出力手段、ニューラルネットワーク)
12…CPU
13…GPU
14…メモリ
17…ビデオキャプチャユニット(入力部、出力部、入力装置、出力装置)
18…HDDユニット
19…メディアドライブユニット
20…入力部
30…変換部(ニューラルネットワーク)
40…出力部
50…取得部
60…記憶部
70…更新部
S113…画像データ取得処理(取得手段)
S117…画像変換処理(変換手段)
S119…画像データ送出処理(出力手段)