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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045514
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】商品陳列具
(51)【国際特許分類】
   A47F 5/00 20060101AFI20230327BHJP
   A47F 5/11 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
A47F5/00 D
A47F5/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153987
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000133157
【氏名又は名称】株式会社TANAX
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲島 浩司
【テーマコード(参考)】
3B118
【Fターム(参考)】
3B118FA05
3B118GA02
3B118GA28
(57)【要約】
【課題】背板に対してフックを簡単に且つ確実に固定することができ、商品を安定してフックに吊り下げることができる商品陳列具を提供すること。
【解決手段】本発明に係る商品陳列具は、厚紙製の背板3と、前記背板3に形成された、下部が中心である半径rの扇形であって、上部中央に高さa、幅2tの突出部を有する取付孔2と、厚紙を、折り目が下となるように二つ折りにして形成され、前記取付孔2に挿通された状態で前記背板3よりも後方に位置し高さがrよりも大きい基端部5と、該基端部5の直前方に設けられた高さrの頸部6と、該頸部6の直前方に設けられた、後端部の高さがrよりも大きい商品吊下部7とを前記折り目に関して対称に有するフック4と、を備え、前記フック4の厚紙の厚さがt以下であり、前記基端部5の高さ及び前記商品吊下部7の高さのうち少なくとも一方がr+a以下であることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚紙製の背板と、
前記背板に形成された、下部が中心である半径rの扇形であって、上部中央に高さa、幅2tの突出部を有する取付孔と、
厚紙を、折り目が下となるように二つ折りにして形成され、前記取付孔に挿通された状態で前記背板よりも後方に位置し高さがrよりも大きい基端部と、該基端部の直前方に設けられた高さrの頸部と、該頸部の直前方に設けられた、後端部の高さがrよりも大きい商品吊下部とを前記折り目に関して対称に有するフックと、を備え、
前記フックの厚紙の厚さがt以下であり、前記基端部の高さ及び前記商品吊下部の高さのうち少なくとも一方がr+a以下であることを特徴とする商品陳列具。
【請求項2】
前記商品吊下部が、その後端部に設けられた高さがrよりも大きい拡張部と、該拡張部の直前方に設けられた高さが前記拡張部の高さよりも小さいロッド部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の商品陳列具。
【請求項3】
前記取付孔の扇形の中心角が30°~60°であることを特徴とする請求項1又は2に記載の商品陳列具。
【請求項4】
前記取付孔の前記突出部の両側に内方に突出する突出片を有することを特徴とする請求項1から3に記載の商品陳列具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背板に取り付けたフックに商品を吊り下げて展示する商品陳列具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、商品を販売するために展示する商品陳列具として、プラスチック製のフックを厚紙製の背板の表面に複数取り付けたものが用いられている。このような商品陳列具は、廃棄する際、背板からフックを取り外して紙とプラスチックを分別する必要があるため、処分に手間がかかっていた。また、近年では、環境負荷低減の観点から、プラスチックの使用を控えることが求められている。そこで、全体が紙製材料からなる商品陳列具が提案されている(特許文献1、2)。
【0003】
特許文献1には、板紙製商品吊下具が取付用台紙(背板)に形成された長孔に差し込まれ保持される商品展示用具が開示されている。特許文献1に記載の商品展示用具において、1つの板紙製商品吊下具は、基板部と接合用板部とをそれぞれ有する2枚の商品吊下用板部材からなっている。2枚の商品吊下用板部材は、基板部と接合用板部との境界線が上辺となるように折り曲げられ、接合用板部同士を向かい合わせに配置して接合されている。したがって、板紙製商品吊下具は、基板部と接合用板部の間の折り曲げ部を支点として、板紙の折り曲げ部の弾性力(復元力)により下辺側が広がるように付勢され、全体として逆V字状に形成されている。商品吊下具の基端部には、縦方向の長さが、背板の長孔の縦方向の長さとほぼ等しく、該長孔に挿入可能な差込可能部が設けられている。また、商品吊下具の差込可能部よりも先端側の下部には、間に溝部を挟んで、下部側押さえ部が設けられ、該下部側押さえ部の上側には上部側押さえ部が設けられている。このように形成された商品吊下具の下辺側を手で閉じた状態とし、差込可能部を背板の長孔に差し込み、下方へ移動させて溝部を長孔の下部に嵌合させ、その後手を離して再び開いた状態とすることで、下部側押さえ部及び上部側押さえ部の後端がそれぞれ背板に当接するとともに、差込可能部と下部側押さえ部が背板を挟み、商品吊下具が背板に保持される。
【0004】
特許文献2に記載の商品陳列什器では、フックは、厚紙を基端側から先端側に延びる直線状の折り曲げ線に沿って二つ折りにして形成される。そして、折り曲げにより生成された端面が上面となるように、縦にした状態で使用される。また、フックの基端部の縦方向の長さは、フックが取り付けられる厚紙製の背板に設けられた長孔の縦方向の長さよりも大きい。さらに、フックの基端部に隣接する位置には、縦方向の長さが背板の長孔の縦方向の長さとほぼ等しい頸部が設けられている。このように形成されたフックの基端部を、背板の長孔に斜め上から差し込み、先に基端部の上部を背板の裏面側に出した後、基端部の下部が背板の裏面側に出るまでフックを押し込むことで、フックの頸部が長孔に嵌入された状態となり、フックが背板に固定される。
さらに、特許文献2には、左右方向の強度を大きくするために、背板に形成される孔を、下部側が二股に分かれ、その間に凸部が形成されたA字状の孔とし、二つ折りにされたフックを逆V字状の二股に開いて、凸部を挟むようにして孔に取り付けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3161386号公報
【特許文献2】特開2021-62288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の商品展示用具では、背板の長孔に挿入可能なように板紙製商品吊下具の差込可能部の縦方向の長さが前記長孔の縦方向の長さとほぼ等しいため、溝部が設けられた部分の縦方向の長さは該溝部の深さの分だけ背板の長孔の縦方向の長さよりも小さくなっている。したがって、溝部において背板と嵌合された板紙製商品吊下具は、長孔に対して上下方向に遊嵌された状態となり、板紙製商品吊下具の背板に対する固定が弱いという問題がある。
【0007】
これに対して、特許文献2に記載の商品陳列什器では、縦方向の長さが背板の長孔の縦方向の長さとほぼ等しい頸部が該長孔に嵌入されるため、背板に対してフックを強く固定できる反面、フックの基端部の縦方向の長さが背板の長孔の縦方向の長さよりも大きいため、基端部を長孔に挿入して背板の裏側に出す際、基端部の下部が長孔の下縁と擦れて潰れて変形してしまう恐れがある。このように基端部が元の形から変形してしまうと、フックがぐらついてしまい、該フックを背板に確実に固定できなくなるという問題がある。
【0008】
さらに、特許文献1に記載の商品展示用具及び特許文献2に記載の商品陳列什器はともに、板紙製商品吊下具及びフックが、折り曲げにより生成された端面を上端とする逆V字状又はI字状の状態で取り付けられているため、商品を吊り下げた際、折り曲げ端面の一点で商品(又はその吊り下げ紐)を支持することになり不安定である。このような状態では、購入者の手等が商品展示用具や商品陳列什器に当たっただけで、吊り下げられた商品が揺れて商品吊下具やフックから落ちてしまう可能性がある。
【0009】
本発明は、上記した問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、紙製材料から成る背板とその表面に取り付けられた紙製材料から成るフックとを備えた商品陳列具において、背板に対してフックを簡単に且つ確実に固定することができ、商品を安定してフックに吊り下げることができる商品陳列具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために成された本発明に係る商品陳列具は、
厚紙製の背板と、
前記背板に形成された、下部が中心である半径rの扇形であって、上部中央に高さa、幅2tの突出部を有する取付孔と、
厚紙を、折り目が下となるように二つ折りにして形成され、前記取付孔に挿通された状態で前記背板よりも後方に位置し高さがrよりも大きい基端部と、該基端部の直前方に設けられた高さrの頸部と、該頸部の直前方に設けられた、後端部の高さがrよりも大きい商品吊下部とを前記折り目に関して対称に有するフックと、を備え、
前記フックの厚紙の厚さがt以下であり、前記基端部の高さ及び前記商品吊下部の高さのうち少なくとも一方がr+a以下であることを特徴とする。
【0011】
上記商品陳列具において、取付孔及びフックはそれぞれ1個でもよく複数個でもよい。また、背板の厚紙とフックの厚紙は異なる種類(厚さ、強度等)のものでもよく、同じ種類のものでもよい。また、フックの基端部、頸部、商品吊下具の各高さとは、折り目を下にしてフックを二つ折りにしたときの基端部、頸部、商品吊下具それぞれの上下の長さをいう。なお、上記商品陳列具においては、フックの頸部の高さ、取付孔の半径をそれぞれrとしたが、両者の寸法は厳密に同じである必要はなく、頸部の高さは、取付孔の半径よりもやや小さい方が好ましい。
【0012】
上記構成の商品陳列具では、フックの基端部の高さ及び商品吊下部の高さのうち少なくとも一方がr+a以下であるため、二つ折りにされたフックの基端部又は商品吊下部を取付孔の突出部に背板に対して垂直方向から挿入することができる。具体的には、基端部の高さがr+a以下であるときは、フックは基端部を先頭にして背板の前面(表面)側から取付孔の突出部に挿入することができ、商品吊下部の高さがr+a以下であるときは、フックは商品吊下部を先頭にして背板の後面(背面)側から取付孔の突出部に挿入することができる。また、基端部及び商品吊下部の両者の高さがr+a以下である場合は、背板の前方及び後方のどちら側からでもフックを取付孔の突出部に挿入することができる。
フックの基端部又は商品吊下部を取付孔の突出部に挿入した後、頸部が取付孔の内部に位置した状態でフックの二つ折りを解除する。すると、頸部の高さが取付孔の半径rと同じであるため、折り目に関して対称な頸部がそれぞれ取付孔の左右の内側面に当接するまで二つ折りにされていたフックが開く。この結果、基端部と商品吊下部の間で背板が挟まれた状態となるため、フックが背板に確実に固定される。
【0013】
上記商品陳列具においては、
前記商品吊下部が、その後端部に設けられた高さがrよりも大きい拡張部と、該拡張部の直前方に設けられた高さが前記拡張部の高さよりも小さいロッド部と、を有するものとすることが好ましい。
【0014】
このような構成によれば、拡張部の高さを或る一定以上とすることで背板に対するフックの取り付け強度を確保しつつ、ロッドの高さを、商品に設けられた吊り下げ用の孔の内径や吊り下げ紐の長さ等に応じた適宜の寸法にすることができる。
【0015】
上記商品陳列具においては、
前記取付孔の扇形の中心角が30°~60°であるものとすることが好ましい。
【0016】
このような構成によれば、取付孔に挿通されるフックが該角度と同程度に開かれ、フックに商品が吊り下げられた際にかかる鉛直方向の荷重に対する強度を確保しつつ、吊り下げられた商品をフックの2本の上辺で安定的に支持することができる。
【0017】
前記本発明に係る商品陳列具は、
前記取付孔の前記突出部の両側に内方に突出する突出片を有するものとすることが好ましい。
【0018】
このような構成によれば、頸部が取付孔の内部に位置した状態でフックを開く際、フックの頸部及び取付孔の突出片が弾性的に変形されてフックが突出片を通過し、その後は再び弾性変形が生じる程度の外力を加えない限り、フックが突出片を乗り越えることがないため、フックが背板により確実に固定される。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る商品陳列具によれば、二つ折りにされたフックを背板の取付孔に挿通して開くことで、背板に対してフックを簡単に且つ確実に固定することができる。また、作製された商品陳列具は、商品を安定して吊り下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る商品陳列具の全体構成を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る商品陳列具の全体構成を示す側面図である。
図3】前記商品陳列具の背板の正面図である。
図4】前記商品陳列具の背板に形成された取付孔の拡大図である。
図5】前記商品陳列具のフックの展開図である。
図6】前記商品陳列具のフックの側面図である。
図7】前記商品陳列具のフック(変形例)の展開図である。
図8】前記商品陳列具のフック(変形例)を背板に取り付けた状態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
【0022】
(基本構成)
図1は、本実施形態に係る商品陳列具1の全体構成を示す斜視図、図2は、本実施形態に係る商品陳列具1の全体構成を示す側面図である。以下、図1中の矢印Aの方向から見て手前側を前方、奥側を後方とする。本実施形態に係る商品陳列具1は、複数の取付孔2が形成された厚紙製の背板3と、背板3に取り付けられた厚紙製のフック4から成る。フック4は、図1に示すように、厚紙を二つ折りにして形成されており、折り目が下側にくるよう、断面視においてV字の状態で、背板3の取付孔2に挿通されて取り付けられる。
【0023】
背板3及びフック4の材料に用いられる厚紙は、商品陳列具に求められる強度や外観等を考慮して、カード紙、段ボール紙、ボール紙等から適宜選択される。厚紙の厚さは、1~5mmであることが好ましく、2~3mmであることがさらに好ましい。坪量は厚紙の種類にもよるが、300~650g/mが好ましい。背板3及びフック4の材料となる厚紙は同じ種類、同じ厚さ、坪量でもよく、異なる種類、異なる厚さ、坪量でもよい。以下の説明ではフック4の材料となる厚紙の厚さをtとする。
【0024】
(背板)
図3は、本実施形態に係る背板3の正面図である。背板3は、縦400mm程度、横100mm程度の長方形の1枚の厚紙から成る。背板3の中央部分には、フック4が挿通されて取り付けられるための取付孔2が2つ形成されている。背板3の上部には、吊り下げ紐を通すための左右一対の紐通し孔が形成されている。
【0025】
(取付孔)
図4は、背板3に形成された取付孔2の拡大図である。取付孔2は、下部が中心である半径rの扇形を基本形状とする。ここで、下部が中心である扇形とは、円の中心よりも上側の部分円形であって中心角が120°以下の部分円形であり、好ましくは中心角が30°~60°、さらに好ましくは40°~44°の部分円形である。ただし、厳密な扇形ではなく、フック4の厚さの分だけ扇形の幅を広げた形状である。具体的には、扇形の中心線(中心角を2等分する半径方向の直線、図4中に示す破線)から両側にそれぞれ長さtずつ幅を広げた形状であり、したがって取付孔2の下端部は幅2tの下辺(下面)からなる。また、取付孔2の下辺に対応して取付孔2の上部中央にも幅2tの箇所があり、そこには高さaの凹部である第1突出部21が形成されている。
【0026】
取付孔2の上部の第1突出部21の両側には、内方に僅かに突出する突出片22,23が設けられている。これら突出片22,23は、フック4を背板3の取付孔2に固定した状態において、フック4が横方向にぐらつく(外れる)ことを防止するストッパーの役割を果たす。
【0027】
さらに、取付孔2の上部の左右方向の両端部には、斜め上方に突出した凹部である第2突出部24,25が設けられている。これら第2突出部24,25は、上記突出片22,23と同様に、フック4を背板3の取付孔2に固定した状態において、フック4が横方向にぐらつく(外れる)ことを防止するストッパーの役割を果たす。
【0028】
(フック)
図5は、本実施形態に係るフック4の展開図である。フック4は、長手方向の長さが100mm~120mm程度、幅方向の長さが80mm程度の略Y字状の一枚の厚紙を、幅方向の中心を通り長手方向に延びる折り線Bで二つ折りにして形成される。
【0029】
図6は、厚紙を二つ折りにした状態のフック4の側面図である。フック4は、一方の端部に基端部5、他方の端部に商品吊下部7、両者の間に頸部6を、折り線Bに関して対称に備えている。フック4は、その基端部5が背板3の後ろ側に、商品吊下部7が背板3の前側に、頸部6が取付孔2の内部に位置する状態で、背板3に取り付けられる。したがって、以下の説明では、フック4の基端部5側、商品吊下部7側をそれぞれ後ろ側、前側という。
【0030】
基端部5はほぼ長方形状であり、後端部の下部の角(かど)に円弧状部8を有している。商品吊下部7は、拡張部9と、該拡張部9の前側の下部から前方に延びる、拡張部9よりも高さが小さいロッド部10とを有している。ロッド部10の前側の先端部分には、吊り下げられた商品が滑り落ちるのを防ぐための溝部11が設けられている。頸部6は、基端部5と拡張部9の間の上下にそれぞれ溝を設けることにより形成されている。上下の溝は、その深さ方向が、フック4の幅方向の中心を通る折り線Bに対して垂直となるよう、形成されている。
【0031】
基端部5の高さH1及び商品吊下部7の拡張部9の高さH3は、背板3の取付孔2の半径rよりも大きくなるように構成されており、頸部6の高さH2は、半径rと等しくなるよう構成されている。ここで、各高さH1、H2、H3は、各部の下端から上端までの縦方向の長さの最大値である。さらに、商品吊下部7の拡張部9の高さH3は、取付孔2の半径rと第1突出部21の高さaの和の長さであるr+a以下となるよう構成されており、基端部5の高さH1は、r+aよりも大きくなるよう構成されている。
【0032】
本実施形態に係る商品陳列具1の組み立て方法は次の通りである。まず、フック4の両側面を指で挟んで二つ折りに閉じた状態とする。その状態で、フック4を背板3の裏面側から商品吊下部7を先頭にして取付孔2に挿入する。
【0033】
本実施形態において、フック4を形成する厚紙の厚さはtであり、取付孔2の下辺(下面)及び第1突出部21はそれぞれ幅が2tであるため、フック4の商品吊下部7は取付孔2の第1突出部21を通るように挿入することができる。
【0034】
次に、フック4の頸部6が取付孔2の内部に位置する状態になるまで(フック4の基端部5の上部が背板3に引っ掛かるまで)フック4を挿入した後、フック4を挟んでいた手を離してフック4の上辺を開く。取付孔2の上部に設けられた突出片22,23を越えてフック4がさらに開かれるよう上面(内側面)を下方に手で押し込み、フック4の頸部6を取付孔2に嵌め込む。このとき、フック4の頸部6及び取付孔2の突出片22,23は弾性的に変形される。
【0035】
本実施形態において、頸部6の高さH2は取付孔2の半径rと同じであるため、フック4は、頸部6が取付孔2の内部に位置した状態で、頸部6の外側面が取付孔2の内側面に接するまで開くことができる。その結果、折り目に関して対称な頸部6の上端、下端及び外側面が取付孔の内側面に当接され、縦方向(上下方向)にぐらつくことなく確実にフック4を背板3に固定することができる。また、基端部5の高さH1及び商品吊下部7の高さH3が取付孔2の半径rよりも大きいため、背板3がフック4の基端部5と商品吊下部7に挟まれて、フック4が前後方向にぐらつくことを防止できる。さらに、頸部6は、基端部5と拡張部9の間の上下にそれぞれ溝を設けることにより形成されているため、その上下の溝部において、背板3が、フック4の基端部5と商品吊下部7の間に挟まれ、フック4が前後方向にぐらつくことをより効果的に防止できる。また、フック4は弾性変形を経て取付孔2の突出片22,23を乗り越え固定されるため、突出片22,23がストッパーとなり、フック4が横方向にぐらつく(外れる)ことを防止できる。本実施形態に係る商品陳列具1は、上記した手順によって取り付けられることから、背板3に対してフック4を簡単に且つ確実に固定することができる。
【0036】
本実施形態において、フック4の基端部5の高さH1は取付孔2の第1突出部21の高さr+aより大きいため、基端部5が取付孔2を通過することがない。つまり、基端部5が背板3の取付孔2の縁と擦れて潰れる恐れがない。したがって、基端部5が変形せず、本来有する取付強度の性能を維持したままフック4を背板3に取り付けることができる。フック4の商品吊下部7の高さH3は取付孔2の第1突出部21の高さr+a以下であるため、フック4は、背板3に垂直な方向から取付孔2の第1突出部21に挿入することができ、背板3と擦れて潰れにくくなっている。したがって、基端部5だけでなく商品吊下部7についても変形することなく、フック4を背板3に取り付けることができる。
【0037】
本実施形態に係る商品陳列具1は、取付孔2の扇形の中心角が30~60°に形成されているため、取付孔2に挿通されるフック4は該角度と同程度に開かれたV字状態で固定される。したがって、フック4は、ロッド部10の2本の上辺で吊り下げられた商品を支持する形状となり、1本の辺で商品を支持する場合よりも安定して商品を吊り下げることができる。また、フック4に商品が吊り下げられた際にかかる鉛直方向の荷重に対する強度を保つことができる。
【0038】
また、基端部5の高さH1がr+aより大きいため、フック4に商品が吊り下げられることで商品吊下部7に下向きの荷重がかかり、商品吊下部7の下端の背板に接する点を支点として、基端部5の上部に背板3を押す方向の力がかかる場合でも、そのような力を背板3が効果的に受け止めることができる。
【0039】
また、本実施形態の商品陳列具1は、商品吊下部7が、高さがrよりも大きい拡張部9と、拡張部9よりも高さが小さいロッド部10とを有するため、或る一定の値以上の高さを有する拡張部9により背板に対するフックの取り付け強度を確保しつつ、ロッドの高さを、商品に設けられた吊下げ用の孔の内径や吊下げ紐の長さ等に応じた適宜の寸法にすることができる。
【0040】
以上、本発明を実施するための形態について具体例を挙げて説明を行ったが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲で適宜変更が許容される。
【0041】
例えば、上記実施形態では、フック4の形状について、基端部5の高さH1をr+aより大きく、商品吊下部7の高さH3をr+a以下としたが、これに限らず、商品吊下部7の高さH3をr+aより大きく、基端部5の高さH1をr+a以下としてもよい。その場合、フック4は基端部5を先頭にして背板3の前面(表面)側から取付孔2の突出部21に挿入することができる。なお、基端部5及び商品吊下部7の両者の高さがr+a以下である場合は、背板の前面(表面)及び後面(裏面)のどちら側からでもフック4を挿入することができ、商品陳列具1の設置状況等に合わせて、フック4の取り付け方を選択することができる。基端部5及び商品吊下部7の高さの一方のみがr+a以下であるときは、二つ折りにされたフック4の商品吊下部7を取付孔2の突出部21に挿入する際、r+aより大きい高さを有する他方の部位が背板に引っ掛かり、必然的にフック4の頸部6が取付孔2の内部に位置する状態となるため、簡単にフック4を背板3に取り付けることができる。
【0042】
上記実施形態では、フック4の頸部6が、基端部5と拡張部9の間の上下にそれぞれ溝を設けることにより形成されるものとしたが、これに限らず、基端部5と商品吊下部7の間の上部のみに溝が設けられることにより形成されてもよい。また、上記実施形態では、基端部5と拡張部9の間の上下に設けられた溝の深さ方向を、フック4の幅方向の中心を通る折り線Bに対して垂直となるように構成したが、図7に示すように、上下に設けられた溝のうち上部の溝を、その深さ方向と折り線Bとのなす角が直角よりもやや小さく(好ましくは80°~87°)なるよう構成してもよい。このようにすることで、フック4を背板3に取り付けた際、フック4は図8に示すように背板から離れるにつれて上方に向かうように固定され、吊り下げられた商品の自重により商品陳列具全体が前方に傾いた場合でも、商品が落下するのを防ぐことができる。
【0043】
また、上記実施形態では、フック4のロッド部10の先端部分に、吊り下げられた商品が滑り落ちるのを防ぐための溝部11を設けたが、溝部10の代わりに、上方に突出する凸部を設けてもよい。
【0044】
上記実施形態では、図5に示すように、フック4は、展開図の状態において、基端部5及び頸部6を構成する部分が中央部で分裂した状態としたが、これに限らず、一続きに繋がっていてもよい。すなわち、厚紙の形状が略T字状であってもよい。また、折線Bは、切れ目、ミシン目、罫線等の各種方法で折り目付けされていてもよい。その中でも、二つ折りにした際に山となる側から形成されたハーフカット(表面から裏面へ貫通しない切れ目)により折り目付けされれば、厚紙の厚さが分厚くなっても折り曲げやすいため好適である。
【符号の説明】
【0045】
1…商品陳列具
2…取付孔
21…第1突出部
22,23…突出片
24,25…第2突出部
3…背板
4…フック
5…基端部
6…頸部
7…商品吊下部
8…円弧状部
9…拡張部
10…ロッド部
11…溝部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8