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特開2023-4554ガイド部材、媒体搬送装置および画像形成装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004554
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】ガイド部材、媒体搬送装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/38 20060101AFI20230110BHJP
   G03G 15/16 20060101ALI20230110BHJP
   B65H 43/00 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
B65H5/38
G03G15/16
B65H43/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106318
(22)【出願日】2021-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【弁理士】
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100120477
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 賢改
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123375
【弁理士】
【氏名又は名称】半田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】大▲高▼ 友美
【テーマコード(参考)】
2H200
3F048
3F101
【Fターム(参考)】
2H200GA12
2H200GA23
2H200GA33
2H200GA44
2H200HA02
2H200HB12
2H200HB22
2H200JB06
2H200JB10
2H200JB13
2H200JB17
2H200JB45
2H200JB47
2H200MA02
2H200MC06
2H200MC09
2H200PA11
3F048AA05
3F048AB06
3F048BA06
3F048BB04
3F048BB05
3F048EB22
3F048EB29
3F101FA01
3F101FA06
3F101FB00
3F101FC18
3F101FD02
3F101FD07
3F101FE04
3F101LA07
3F101LB03
3F101LB08
3F101LB12
(57)【要約】
【課題】ガイド部材への粘着剤の付着を抑制することを目的とする。
【解決手段】ガイド部材21は、粘着剤を有するラベル媒体8の搬送を案内する。ガイド部材21のラベル媒体8に接触する部分は、算術平均粗さRaを0.1[μm]としたときのFowkesの式による表面自由エネルギーが25[mN/m]以下である材料で構成される。ガイド部材21の当該部分の算術平均粗さRaは、2.20[μm]以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤を有する媒体の搬送を案内するガイド部材であって、
前記ガイド部材の前記媒体に接触する部分は、算術平均粗さRaが0.1[μm]であるときのFowkesの式による表面自由エネルギーが25[mN/m]以下となる材料で形成され、
前記ガイド部材の前記部分の算術平均粗さRaは、2.20[μm]以上である
ことを特徴とするガイド部材。
【請求項2】
前記ガイド部材の前記部分の算術平均粗さRaは、3.64[μm]以下である
ことを特徴とする請求項1に記載のガイド部材。
【請求項3】
前記媒体は、連続媒体である
ことを特徴とする請求項1または2に記載のガイド部材。
【請求項4】
前記媒体は、基材層と剥離層とをさらに有し、
前記粘着剤は、前記基材層と前記剥離層との間に介在する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のガイド部材。
【請求項5】
前記ガイド部材は、前記剥離層に対向する第1部分と、前記基材層に対向する第2部分と、前記媒体の幅方向端部に対向する第3部分とを有する
ことを特徴とする請求項4に記載のガイド部材。
【請求項6】
前記ガイド部材の前記第1部分の表面の算術平均粗さRaが2.20[μm]よりも小さいか、または3.64[μm]よりも大きく、
前記ガイド部材の前記第3部分の表面の算術平均粗さRaは2.20~3.64[μm]の範囲内にある
ことを特徴とする請求項5に記載のガイド部材。
【請求項7】
粘着剤を有する媒体の搬送を案内するガイド部材であって、
前記ガイド部材の前記媒体に接触する部分にフッ素樹脂が設けられ、前記部分の算術平均粗さRaは2.20[μm]以上である
ことを特徴とするガイド部材。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか1項に記載のガイド部材と、
前記ガイド部材に沿って前記媒体を搬送する媒体搬送部と
を有する媒体搬送装置。
【請求項9】
媒体の種類を入力する入力部と、
前記入力部で入力された媒体の種類に応じて、前記媒体搬送部による前記媒体の搬送速度を制御する制御部と
を備えた請求項8に記載の媒体搬送装置。
【請求項10】
連続媒体である前記媒体を保持する媒体保持部と、
前記媒体保持部から引き出された前記媒体を案内する、請求項1から7までの何れか1項に記載のガイド部材と、
前記ガイド部材に沿って搬送された前記媒体に画像を形成する画像形成部と
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
前記ガイド部材は、前記媒体保持部と前記画像形成部との間に配置される
ことを特徴とする請求項10に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、媒体を案内するガイド部材、並びにガイド部材を備えた媒体搬送装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置は、画像形成部と、画像形成部に向けて搬送される媒体を案内するガイド部材を有する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-13907号公報(要約)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、粘着剤を有する媒体(例えばラベル媒体)に画像を形成する画像形成装置が開発されている。この種の媒体では、幅方向の端部から粘着剤がはみ出している場合がある。媒体の搬送中に粘着剤がガイド部材に付着すると、ガイド部材に異物として残存する。この粘着剤が媒体と共に画像形成部に搬送されると、画像形成部の構成要素に付着して画像品質に影響を与える可能性がある。
【0005】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、ガイド部材への粘着剤の付着を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のガイド部材は、粘着剤を有する媒体の搬送を案内するガイド部材であって、ガイド部材の媒体に接触する部分は、算術平均粗さRaが0.1[μm]であるときのFowkesの式による表面自由エネルギーが25[mN/m]以下である材料で形成され、ガイド部材の当該部分の算術平均粗さRaは2.20[μm]以上である。
【0007】
本開示の媒体搬送装置は、上記のガイド部材と、ガイド部材に沿って媒体を搬送する媒体搬送機構とを有する。
【0008】
本開示の画像形成装置は、連続媒体である媒体を保持する媒体保持部と、媒体保持部から引き出された媒体を案内する上記のガイド部材と、ガイド部材に沿って搬送された媒体に画像を形成する画像形成部とを備える。
【発明の効果】
【0009】
上記の構成では、ガイド部材の媒体に接触する部分が、Fowkesの式による表面自由エネルギーが25[mN/m]以下である材料で形成され、当該部分の算術平均粗さRaが2.20[μm]以上であるため、ガイド部材への粘着剤の付着が生じにくい。そのため、粘着剤に起因する画像品質の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態の画像形成装置の全体構成を示す図である。
図2】実施の形態のガイド部材を示す側面図である。
図3】実施の形態のガイド部材を示す断面図である。
図4】実施の形態のラベル媒体の断面構造を示す図である。
図5】ガイド部材への粘着剤の付着原理を説明するための模式図(A),(B),(C)である。
図6】ガイド部材における粘着剤の付着位置を説明するための模式図である。
図7】プローブタック試験方法を示す模式図である。
図8】プローブの変位と圧縮荷重との関係を示すグラフである。
図9】粘着剤内部の凝集力および粘着剤層とガイド部材との粘着力を説明するための模式図(A),(B),(C)である。
図10】ガイド部材への表面粗さの付与方法を示す模式図である。
図11】ラベル媒体M1,M2の特性を示す表である。
図12】ラベル媒体M1,M2を用いたプローブタック試験における剥離速度、粘着力および粘着剤の残存の有無を示す表である。
図13】ラベル媒体M1,M2を用いたプローブタック試験における剥離速度、粘着力および粘着剤の残存の有無を示すグラフである。
図14】ラベル媒体M1,M2の粘着剤の剥離速度依存性を示す表である。
図15】サンプルS1~S6の材料、表面自由エネルギー、粘着力および粘着剤の残存の有無を示す表である。
図16】サンプルS1~S6の表面自由エネルギー、粘着力および粘着剤の残存の有無を示すグラフである。
図17】サンプルS11~S19の材料、表面自由エネルギー、粘着力および粘着剤の残存の有無を示す表である。
図18】サンプルS11~S19の表面自由エネルギー、粘着力および粘着剤の残存の有無を示すグラフである。
図19】ラベル媒体M3,M4の特性を示す表である。
図20】ラベル媒体M3,M4を用いたプローブタック試験における剥離速度、粘着力および粘着剤の残存の有無を示す表である。
図21】ラベル媒体M3,M4を用いたプローブタック試験における剥離速度、粘着力および粘着剤の残存の有無を示すグラフである。
図22】サンプルS21~S24の材料、表面自由エネルギー、粘着力および粘着剤の残存の有無を示す表である。
図23】サンプルS21~S24の表面自由エネルギー、粘着力および粘着剤の残存の有無を示すグラフである。
図24】サンプルS31~S34の材料、表面自由エネルギー、粘着力および粘着剤の残存の有無を示す表である。
図25】サンプルS31~S34の表面自由エネルギー、粘着力および粘着剤の残存の有無を示すグラフである。
図26】印刷試験に用いたラベル媒体とテストパターンとを示す図である。
図27】比較例(A)と実施の形態(B)における印刷試験後のガイド部材における粘着剤の付着状況を示す模式図である。
図28】ガイド部材の第1部分と第3部分の表面粗さを異ならせた例を示す断面図である。
図29】ラベル媒体の種類に基づく搬送速度設定の例を示す断面図である。
図30】ロールからガイド部へのラベル媒体の搬送経路を示す図(A),(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<画像形成装置>
まず、本実施の形態の画像形成装置1について説明する。図1は、本実施の形態の画像形成装置1を示す図である。画像形成装置1は、電子写真法によって画像を形成するものである。ここでは、画像形成装置1は、ロール状のラベル媒体8にカラー画像を形成するプリンタとして構成されている。
【0012】
画像形成装置1は、ラベル媒体8をロール状に保持する媒体保持部30と、媒体保持部30から引き出されたラベル媒体8を案内する媒体ガイド20と、ラベル媒体8を搬送する媒体搬送部40と、イエロー(Y)、マゼンタ(M)およびシアン(C)のトナー像を形成する画像形成ユニット10Y,10M,10Cと、トナー像をラベル媒体8に転写する転写ユニット50と、トナー像をラベル媒体8に定着する定着ユニット70と、ラベル媒体8を排出する媒体排出部90と、これらを制御する制御部100とを有する。
【0013】
媒体ガイド20、媒体搬送部40、画像形成ユニット10Y,10M,10C、転写ユニット50、定着ユニット70、媒体排出部90および制御部100は、筐体60に収容されている。
【0014】
筐体60は、媒体保持部30からのラベル媒体8を導入する給紙口61と、ラベル媒体8を排出する排出口62とを有する。給紙口61と排出口62との間に、ラベル媒体8の搬送路Pが規定される。筐体60には、入力部と表示部とを有する操作部65が設けられている。
【0015】
媒体保持部30は、ラベル媒体8をロール状に保持する装着軸31を有する。ラベル媒体8は、帯状の剥離紙(台紙)に表面基材を粘着剤で貼り付けた、いわゆるラベル用紙である。装着軸31には、ラベル媒体8の巻き芯が着脱可能に取り付けられる。装着軸31は、筐体60に取り付けられた支持部32に回転可能に支持されている。装着軸31から引き出されたラベル媒体8は、給紙口61から媒体ガイド20に導かれる。
【0016】
媒体搬送部40は、ラベル媒体8の搬送路Pに沿って、搬送ローラ41,42,44と、カッタ43とを有する。搬送ローラ41,42,44はいずれも、搬送路Pを挟んで対向配置された一対のローラである。搬送ローラ41,42,44は、ラベル媒体8を図中右から左に搬送する。
【0017】
カッタ43は、搬送ローラ42と搬送ローラ44との間に配置されている。カッタ43は、回転刃と、回転刃を押圧する揺動刃とを有するロータリカッタであり、ラベル媒体8を一定の長さに切断する。
【0018】
画像形成部としての画像形成ユニット10Y,10M,10Cは、ラベル媒体8の搬送路Pに沿って配置されている。画像形成ユニット10Y,10M,10Cは、トナーを除いて共通の構成を有するため、画像形成ユニット10と称する。
【0019】
画像形成ユニット10は、像担持体としての感光体ドラム11と、帯電部材としての帯電ローラ12と、現像剤担持体としての現像ローラ14と、供給部材としての供給ローラ15と、層規制部材としての層規制ブレード16と、クリーニング部材17とを有する。
【0020】
感光体ドラム11は、導電性の基体の表面に、電荷発生層と電荷輸送層とからなる感光層を備えたドラム状の部材であり、図中時計回りに回転する。
【0021】
帯電ローラ12は、感光体ドラム11の表面に当接するように配置され、感光体ドラム11の回転に追従して回転する。帯電ローラ12は、金属製のシャフトと、シャフトの表面に形成された半導電性ゴム層とを有する。帯電ローラ12は帯電電圧を印加され、感光体ドラム11の表面を一様に帯電させる。
【0022】
感光体ドラム11に対向するように、露光装置としての露光ヘッド13が配置されている。露光ヘッド13は、感光体ドラム11の軸方向に発光素子を配列した発光素子アレイと、レンズ要素を配列したレンズアレイとを有する。発光素子は、例えばLED(発光ダイオード)である。露光ヘッド13は、感光体ドラム11の表面に光を照射し、静電潜像を形成する。なお、露光ヘッド13は、画像形成装置1の上部カバーに支持されている。
【0023】
現像ローラ14は、感光体ドラム11の表面に当接するように配置されている。現像ローラ14は、感光体ドラム11の回転方向と逆方向(当接部における表面の移動方向が順方向となる方向)に回転する。現像ローラ14は、金属製のシャフトと、シャフトの表面に形成された半導電性ゴム層とを有する。現像ローラ14は現像電圧を印加され、感光体ドラム11の表面の静電潜像にトナーを付着させる。
【0024】
供給ローラ15は、現像ローラ14の表面に当接するように配置される。供給ローラ15は、現像ローラ14の回転方向と同方向に回転する。供給ローラ15は、金属製のシャフトと、シャフトの表面に形成された発泡性の弾性層とを有する。供給ローラ15は供給電圧を印加され、現像ローラ14にトナーを供給する。
【0025】
層規制ブレード16は、現像ローラ14の表面に押し当てられたブレードであり、ステンレス層の金属で形成されている。層規制ブレード16は、現像ローラ14の表面のトナー層(現像剤層)の厚さを規制する。
【0026】
クリーニング部材17は、感光体ドラム11の表面に当接するように配置されたブレードまたはローラである。クリーニング部材17は、感光体ドラム11の表面に残ったトナーを掻き取る。
【0027】
画像形成ユニット10の構成要素のうち、現像ローラ14、供給ローラ15および層規制ブレード16を含む部分、すなわち感光体ドラム11上の潜像の現像に寄与する部分は、現像部18を構成する。
【0028】
現像部18の上方には、現像剤としてのトナーを収容する現像剤収容体としてのトナーカートリッジ19が取り付けられている。トナーカートリッジ19はトナーを収容し、図示しないトナー供給口を介して現像部18にトナーを補給する。
【0029】
転写ユニット50は、搬送路Pを挟んで画像形成ユニット10Y,10M,10Cと反対側に配置されている。転写ユニット50は、画像形成ユニット10Y,10M,10Cの各感光体ドラム11に対向配置された3つの転写ローラ54を有する。
【0030】
転写ユニット50は、また、画像形成ユニット10Y,10M,10Cの各感光体ドラム11と転写ローラ54との間を通過する転写体としての転写ベルト51と、転写ベルト51が張架された駆動ローラ52およびテンションローラ53とを有する。
【0031】
転写ベルト51は、無端状のベルトであり、ラベル媒体8を保持して走行する。駆動ローラ52は、図中反時計回りに回転し、転写ベルト51を走行させる。テンションローラ53は、転写ベルト51に張力を付与する。転写ローラ54は転写電圧を印加され、感光体ドラム11上のトナー像を転写ベルト51上のラベル媒体8に転写する。
【0032】
転写ユニット50は、また、転写ベルト51に対して画像形成ユニット10Y,10M,10Cと反対の側に、ベルトクリーニング部55を有する。ベルトクリーニング部55は、廃トナータンク56と、ベルトクリーニング部材57と、当接ローラ58とを有する。
【0033】
当接ローラ58は、転写ベルト51の内周側に配置され、転写ベルト51をベルトクリーニング部材57に押し当てる。ベルトクリーニング部材57は、例えばブレードであり、転写ベルト51の表面に付着した廃トナーを掻き取る。廃トナータンク56は、ベルトクリーニング部材57によって掻き取られたトナーを収容する。
【0034】
ベルトクリーニング部55に隣接して、転写ベルト51の表面に対向する濃度検出部59が配置されている。濃度検出部59は、トナーの濃度検出時に、転写ベルト51上に転写された各色のトナーの濃度を検出する。
【0035】
定着ユニット70は、ラベル媒体8の搬送方向において画像形成ユニット10Y,10M,10Cの下流側に配置されている。定着ユニット70は、熱源を内蔵する定着ローラ71と、定着ローラ71との間でニップ部を形成する加圧ローラ72とを有する。定着ローラ71および加圧ローラ72は、ラベル媒体8がニップ部を通過する際に、トナー像に熱および圧力を加えてラベル媒体8に定着させる。
【0036】
媒体排出部90は、ラベル媒体8の搬送方向において定着ユニット70の下流側に配置されている。媒体排出部90は、定着ユニット70を通過したラベル媒体8を搬送して筐体60の排出口62から排出する排出ローラ91を有する。
【0037】
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)、並びにROM(Read Only Memory)およびRAM(Randam Access Memory)等の記憶部を備え、画像形成装置1の動作全体を制御する。なお、制御部100と媒体搬送部40とで、ラベル媒体8を搬送する媒体搬送装置を構成する。
【0038】
操作部65は、例えば操作パネルであり、画像形成装置1の状態を表示する表示部と、ユーザが画像形成装置1への指示を入力する入力部とを有する。
【0039】
ラベル媒体8の搬送路Pに沿って、ラベル媒体8の通過を検知するセンサT1,T2,T3,T4が配置されている。給紙センサT1は、ラベル媒体8の搬送方向において給紙口61の下流側に配置されている。カッタセンサT2は、搬送ローラ41の下流側に配置されている。書出センサT3は、搬送ローラ44の下流側に配置されている。排出センサT4は、定着ユニット70と媒体排出部90との間に配置されている。
【0040】
また、給紙センサT1と搬送ローラ41との間には、画像形成装置1の周辺温度を測定するための温度センサ46が配置されている。
【0041】
以上の構成において、感光体ドラム11の軸方向をX方向とする。X方向は、ラベル媒体8の幅方向である。また、X方向は、画像形成装置1の各ローラの軸方向でもある。画像形成ユニット10Y,10M,10Cを通過する際のラベル媒体8の移動方向を、Y方向とする。X方向とY方向の両方に直交する方向を、Z方向とする。
【0042】
<画像形成装置1の基本動作>
次に、画像形成装置1の基本動作について、図1を参照して説明する。画像形成装置1に電源が投入されると、制御部100は定着ユニット70のウォーミングアップを行い、定着ローラ71を所定の定着温度に維持する。また、制御部100は、給紙センサT1によりラベル媒体8の有無を確認し、ラベル媒体8が存在している場合には、上位装置からの印刷ジョブの受信を待つ。
【0043】
ラベル媒体8が存在していない場合には、制御部100は、給紙センサT1によるラベル媒体8の先端の検知を待つ。利用者がラベル媒体8を装着軸31に装着してラベル媒体8の先端を給紙口61から挿入し、給紙センサT1がラベル媒体8の先端を検知すると、制御部100は搬送ローラ41,42の回転を開始する。
【0044】
利用者がラベル媒体8をさらに挿入してラベル媒体8の先端が搬送ローラ41に達すると、ラベル媒体8が搬送ローラ41,42によって搬送方向(+Y方向)に搬送される。ラベル媒体8の先端がカッタセンサT2によって検知されると、制御部100はカッタセンサT2による先端検知から所定時間の経過後に搬送ローラ41,42の回転を停止させ、ラベル媒体8の先端をカッタ43の手前で待機させ、上位装置からの印刷ジョブの受信を待つ。
【0045】
制御部100は、上位装置からの印刷ジョブを受信すると、画像形成動作(印刷動作)を開始する。まず、搬送ローラ41,42により、ラベル媒体8を、カッタ43を通過させて画像形成ユニット10Y,10M,10Cに向けて搬送する。ラベル媒体8の先端が搬送ローラ44に達すると、搬送ローラ44がラベル媒体8を搬送する。
【0046】
ラベル媒体8の先端が書出センサT3によって検知されると、制御部100は、感光体ドラム11および駆動ローラ52の回転を開始する。駆動ローラ52の回転により転写ベルト51が走行し、ラベル媒体8を搬送して画像形成ユニット10Y,10M,10Cの順に通過させる。
【0047】
各画像形成ユニット10では、感光体ドラム11からの回転伝達により、現像ローラ14および供給ローラ15が回転する。帯電ローラ12は、感光体ドラム11に追従して回転する。
【0048】
制御部100は、各画像形成ユニット10の帯電ローラ12、現像ローラ14および供給ローラ15に、帯電電圧、現像電圧および供給電圧をそれぞれ印加する。これにより、帯電ローラ12が感光体ドラム11の表面を一葉に帯電させる。また、制御部100は、画像データに応じて露光ヘッド13を発光させ、感光体ドラム11上に静電潜像を形成する。
【0049】
現像ローラ14と供給ローラ15との電位差により、供給ローラ15から現像ローラ14にトナーが供給される。現像ローラ14に供給されたトナーは、層規制ブレード16により薄層化される。現像ローラ14上のトナーは、感光体ドラム11上の潜像部分(露光部)に移動して付着する。これにより、感光体ドラム11上の潜像が現像され、現像剤像としてのトナー像が形成される。
【0050】
制御部100は、感光体ドラム11の回転によりトナー像が転写ベルト51に到達するタイミングで、転写ローラ54に転写電圧を印加する。これにより、感光体ドラム11上のトナー像が転写ベルト51上のラベル媒体8の表面に転写される。また、転写後に感光体ドラム11の表面に残留したトナーは、クリーニング部材17によって掻き取られる。
【0051】
このようにして各色のトナー像が転写されたラベル媒体8は、定着ユニット70に搬送される。定着ユニット70では、定着ローラ71および加圧ローラ72によってトナー像が加熱、加圧されて、ラベル媒体8の表面に定着される。トナー像が定着したラベル媒体8は、媒体排出部90の排出ローラ91によって排出口62から外部に排出される。
【0052】
制御部100は、印刷ジョブに次ページの印刷データが存在する場合には、画像形成動作を継続し、印刷ジョブに次ページの印刷データが存在しない場合は、画像形成動作を終了して新たな印刷ジョブの受信を待つ。
【0053】
なお、上記の画像形成動作中に、制御部100は、印刷ジョブに含まれる切断位置情報に基づき、ラベル媒体8を切断する。すなわち、制御部100は、カッタセンサT2がラベル媒体8の先端を検知してから一定時間の経過後に、カッタ43を駆動してラベル媒体8を切断する。切断されたラベル媒体8は、搬送ローラ44、転写ベルト51および排出ローラ91によって搬送され、排出口62から排紙される。ラベル媒体8の後端を排出センサT4が検知することにより、制御部100は印刷済みラベル媒体8の排出完了を認識する。
【0054】
<ガイド部材>
次に、本実施の形態の媒体ガイド20について説明する。媒体ガイド20は、媒体保持部30から引き出されたラベル媒体8を筐体60の内部に案内する部分である。媒体ガイド20は、給紙口61から搬送ローラ41までY方向に延在するガイド部材21を有する。
【0055】
図2は、ガイド部材21を示す側面図である。図3は、ガイド部材21を示すY方向に直交する面(XZ面)における断面図である。ガイド部材21は、ラベル媒体8の幅方向(X方向)の両側にそれぞれ配置されている。
【0056】
図2に示すように、各ガイド部材21は、Y方向に直線状に延在している。図3に示すように、ガイド部材21は、XZ面に平行な断面においてコの字状に形成されている。より具体的には、ガイド部材21は、ラベル媒体8の表面に対向する第1部分21aと、ラベル媒体8の裏面に対向する第2部分21bと、ラベル媒体8の幅方向端面に対向する第3部分21cとを有し、コの字状に形成されている。
【0057】
ラベル媒体8の表面とは、トナー像が形成される面、すなわち印刷面であり、ここではラベル媒体8の上面(+Z側の面)である。ラベル媒体8の裏面は、ここではラベル媒体8の下面(-Z側の面)である。
【0058】
ガイド部材21の各部分21a~21cの表面は、ラベル媒体8の摺動性を向上するため、バリやキズのない平滑な面で形成されていることが望ましい。
【0059】
ガイド部材21の前端(-Y方向の端部)には、ラベル媒体8が侵入する入り口22が形成されている。入り口22の上方(+Z方向)および下方(-Z方向)には、ラベル媒体8を入り口22に案内する上壁部23および下壁部24が形成されている。
【0060】
ガイド部材21は、高い耐久性および高い機械特性を得る観点から、ラベル媒体8の摺動時の摩擦あるいは損傷破損(折れ、割れ等)を受けにくい材料で形成されていることが望ましい。
【0061】
より具体的には、ガイド部材21は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリオキシメチレン(POM:ポリアセタールとも称する)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、アクリロニトリル-スチレン(AS)、ポリアミド(PA)、またはポリカーボネート(PC)等の樹脂で形成することができる。
【0062】
また、2つのガイド部材21のX方向の間隔が調整できるように、各ガイド部材21は幅調整部25を介して筐体60(図1)に固定されている。
【0063】
図4は、ラベル媒体8の断面構造を示す図である。ラベル媒体8は、ベース層としての基材層81と、粘着剤層82と、表面層としての剥離層83とを有する。基材層81と粘着剤層82と剥離層83は、ここではX方向の幅が同じである。但し、ラベル媒体8の種類によっては、基材層81の幅が広く、剥離層83の幅が狭い場合もある(後述する図5(A)~(C)参照)。
【0064】
剥離層83には、紙基材とフィルム基材とがある。紙基材は、主にセルロースで構成される。印刷物に高級感を与えたい場合には、セルロースの表面に白色原料あるいは金属箔を積層する。フィルム基材は、PET、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ABS等で構成される。フィルム基材は、紙基材と比較して機械的強度、耐候性および耐熱性等に優れる。
【0065】
粘着剤層82を構成する粘着剤には、アクリル系、ウレタン系、およびシリコーン系がある。アクリル系粘着剤はアクリル樹脂で構成され、透明性、耐熱性および耐候性に優れる上、再剥離タイプから強粘着タイプまで用途に応じて粘着力を調整可能である。ウレタン系粘着剤はポリウレタンで構成され、再剥離性に優れる。シリコーン系粘着剤はシロキサン結合を主骨格にもつポリマーで構成され、耐薬品性や耐水性に優れる。
【0066】
強粘着タイプの場合、粘着剤に、粘着力を向上させるための粘着付与樹脂が添加される。粘着付与樹脂には、ロジン系、テルペン系、および石油系がある。ロジン系はアビエチン酸を主成分とし、タック性能およびベース樹脂への相溶性に優れる。テルペン系はテレピン油を原料とし、エラストマーに対して幅広く相溶する。石油系は石油ナフサ分留時の留分を原料とする。
【0067】
基材層81は、紙またはフィルムの表面に剥離剤をコーティングしたものであり、剥離剤の表面にシリコーン樹脂をさらにコーティングする場合もある。
【0068】
ラベル媒体には、一般的なオフィスプリンタで印刷可能なA3、A4サイズ等の単票式のラベル媒体と、連続媒体、特にロール状のラベル媒体とがある。また、ロール状のラベル媒体には、印刷後の媒体をロール状に巻き取るロールトゥロールと、印刷後の媒体を所定長さにカットするロールトゥカットとがある。本実施の形態では、ロールトゥカットのラベル媒体を使用した。
【0069】
ラベル媒体8の製造時には、まず、ロール状に巻かれた長尺状の基材層81を繰り出して、基材層81の表面に粘着剤を均一に塗布する。次に乾燥機で基材層81上の粘着剤を乾燥させて粘着剤層82とし、その粘着剤層82に剥離層83を貼り付けて、ロール状に巻き取る。これにより、ロール状のラベル媒体8が得られる。
【0070】
<媒体ガイドへの粘着剤の付着を抑制するための構成>
次に、ガイド部材21への粘着剤の付着を抑制するための構成について説明する。上述したラベル媒体8の製造段階で、粘着剤層82の粘着剤がラベル媒体8の幅方向端部からはみ出す場合がある。
【0071】
そのため、ラベル媒体8がガイド部材21を通過する際に、ラベル媒体8の幅方向端部の粘着剤がガイド部材21に付着し、ガイド部材21に堆積する場合がある。このようにガイド部材21に粘着剤が堆積すると、ラベル媒体8と共に粘着剤が画像形成ユニット10内に搬送され、感光体ドラム11等の構成要素に付着して画像不良を発生させる可能性がある。
【0072】
図5(A)には、ラベル媒体8の粘着剤層82が剥離層83からはみ出してガイド部材21に接した状態を示す。ここでは、図示の便宜上、基材層81の幅が広く、剥離層83の幅が狭いラベル媒体8を示している。
【0073】
粘着剤層82がガイド部材21に接し、ガイド部材21から離れるまでの過程で、ガイド部材21と粘着剤層82との間には、粘着力F1が作用する。また、粘着剤層82の内部には、凝集力F2が生じている。基材層81と粘着剤層82との間には、粘着力F3が生じている。
【0074】
ガイド部材21と粘着剤層82との間の粘着力F1が、粘着剤層82の内部の凝集力F2よりも大きい場合には(F1>F2)、図5(B)に示すように、粘着剤層82の内部で凝集破壊が生じ、粘着剤層82がちぎれてガイド部材21の表面に残存する。
【0075】
一方、ガイド部材21と粘着剤層82との間の粘着力F1が、粘着剤層82の内部の凝集力F2よりも小さい場合には(F1<F2)、図5(C)に示すように、粘着剤層82はガイド部材21との界面で剥離し、ガイド部材21の表面には残存しない。
【0076】
図5(A)~(C)には、基材層81の幅が広く、剥離層83の幅が狭いラベル媒体8を示したが、ラベル媒体8の3つの層81,82,83の幅が等しい場合には、ラベル媒体8の幅方向端面に当接するガイド部材21の第3部分21c(図3)に粘着剤が付着しやすい。以下では、ラベル媒体8の3つの層81,82,83の幅が等しいものとして説明する。
【0077】
図6は、ガイド部材21において粘着剤が付着しやすい個所を示す図である。粘着剤の付着が生じやすい個所は、ガイド部材21の入り口22の近傍の部分(符号A1で示す)と、入り口22から搬送方向(+Y方向)に一定距離だけ進行した部分(符号A2で示す)である。
【0078】
ここでは、ガイド部材21の表面パラメータを変えてガイド部材21と粘着剤層82との間の粘着力を評価し、図5(C)のように粘着剤の残存を抑制可能なガイド部材21の表面の特性を決定する。
【0079】
<プローブタック試験>
まず、プローブタック試験について説明する。プローブタック試験は、プローブ(接触子)を試料表面に短時間押し当てた後、引き剥がすときの力を測定する方法である。
【0080】
試験片としては、ガイド部材21を平板状に切り出したものを使用するが、便宜上、ガイド部材21と称する。ガイド部材21(試験片)の表面から粘着剤が離れる過程で発生する最大荷重を、最大粘着力とする。
【0081】
図7は、プローブタック試験を説明するための模式図である。プローブタック試験には、インストロン社製の圧縮試験機を用いる。測定環境は、温度25[℃]、相対湿度50[%]である。
【0082】
プローブタック試験は、以下の(1)~(4)の手順で行う。
(1)プローブ101の底面102に、粘着剤層82を付着させる。
(2)プローブ101を、所定の荷重(ここでは5[N])となるまでガイド部材21に押し当て、当該荷重で10秒間保持する。
(3)プローブ101を所定の速度でガイド部材21から離間させる。
(4)プローブ101の変位と圧縮荷重との関係を示すグラフを作成し、当該グラフにおける引張荷重の最大値(すなわち圧縮荷重の最小値)を、最大粘着力とする。
【0083】
図8は、プローブ101の変位と圧縮荷重との関係を示すグラフである。図9(A),(B),(C)は、プローブ101と粘着剤層82とガイド部材21とを示す模式図である。
【0084】
プローブ101をガイド部材21に接近させると、図8に曲線C1で示すように圧縮荷重は0のまま変位が変化する。プローブ101がガイド部材21に接触すると、曲線C2に示すように圧縮荷重が増加する。このとき、図9(A)に示されているように、粘着剤層82は、プローブ101とガイド部材21との間で圧縮される。
【0085】
プローブ101を荷重5[N]で10秒間保持したのち、ガイド部材21から離間させる方向に移動させると、図8に曲線B1で示すように圧縮荷重が減少する。このとき、図9(B)に示すように粘着剤層82が伸びるため、圧縮荷重はマイナス、すなわち引張荷重となる。ガイド部材21と粘着剤層82との間の粘着力F1は、粘着剤層82の内部の凝集力F2よりも小さい(F1<F2)。
【0086】
プローブ101をさらにガイド部材21から離間させる方向に移動させると、引張荷重が最大値に達し、その後、減少に転じる(図8の曲線B2)。このとき、ガイド部材21と粘着剤層82との間の粘着力F1が粘着剤層82内の凝集力F2を上回った場合には(F1>F2)、粘着剤層82の内部で凝集破壊が発生し、粘着剤がガイド部材21に残存する。
【0087】
一方、ガイド部材21と粘着剤層82との間の粘着力F1が粘着剤層82内の凝集力F2よりも小さい場合には(F1<F2)、図9(C)に示すように、粘着剤層82の凝集破壊が生じずにガイド部材21から剥離する。そのため、粘着剤はガイド部材21に残存しない。
【0088】
粘着剤層82の凝集破壊またはガイド部材21からの剥離が生じると、プローブ101に作用する応力は減少し(図8の曲線B3)、0に収束する。
【0089】
図8の曲線における引張荷重の最大値(すなわち圧縮荷重の最小値)を、最大粘着力とする。以下では、最大粘着力を、単に「粘着力」と称する。
【0090】
このようにして測定される粘着力は、粘着剤層82の凝集破壊が生じた場合には、粘着剤層82内の凝集力F2と同じと考えることができ、凝集破壊が生じなかった場合には、ガイド部材21と粘着剤層82との間の粘着力F1と同じと考えることができる。
【0091】
<表面粗さ>
次に、表面粗さについて説明する。図10は、表面粗さサンプルの作成方法を示す模式図である。図10に示すように、平板状に切り出したガイド部材21の表面を、粗さの異なるヤスリ105で削る。ヤスリ105の移動方向は、ガイド部材21の表面に沿った一方向(矢印V)とし、削り回数は10回とする。
【0092】
このようにして作成したサンプルを用いて、算術平均粗さRaを測定する。測定機としては、株式会社小坂研究所製の「表面粗さ・輪郭形状測定機」を用いる。測定環境は、温度25[℃]、相対湿度50[%]とする。1つのサンプルにつき表面粗さを3回測定し、平均値を求める。
【0093】
なお、表面粗さには、最大高さRmax、十点平均粗さRz、および算術平均粗さRaがあるが、ここで算術平均粗さRaを用いた理由は以下の通りである。
【0094】
最大高さRmaxは、測定区間において最も高い凸部の高さと、最も低い凹部の深さとの和から算出される。また、十点平均粗さRzは、測定区間において最も高い凸部から5番目の凸部までの高さの平均と、最も低い凹部から5番目の凹部までの深さの平均との差から算出される。
【0095】
これら最大高さRmaxおよび十点平均粗さRzでは、測定区間の2番目以降の凸部の高さ(Rmaxの場合)あるいは6番目以降(Rzの場合)の凸部の高さが算出結果に含まれない。そのため、粘着剤が付着する可能性のある凸部の一部しか評価することができない。
【0096】
これに対し、算術平均粗さRaは、測定区間全体の凸部の高さおよび凹部の深さの平均から算出されるため、粘着剤が付着する可能性のある接触面を全体的に評価することができる。そのため、算術平均粗さRaは、粘着剤のガイド部材21への付着特性の評価に最も適している。
【0097】
<表面自由エネルギー>
次に、ガイド部材21の表面自由エネルギーの測定について説明する。測定機は、協和界面化学株式会社製「接触角計システム」を用いる。測定環境は、温度25[℃]、相対湿度50[%]とする。
【0098】
ガイド部材21の表面に、3種類の溶剤である水、ドデカン、およびジヨウドメタンを滴下し、それぞれ3回ずつ接触角を測定し、各溶剤に対する接触角の平均値を算出する。各溶剤に対する接触角をFowkesの式に導入し、表面自由エネルギーを算出する。
【0099】
表面自由エネルギーは、ガイド部材21の材料および表面粗さに依存する。ここでは、ガイド部材21の材料毎に、ガイド部材21の算術平均粗さRaを0.1[μm]とした状態で、表面自由エネルギーを測定する。
【0100】
例えば、ガイド部材21がPTFEの場合、表面自由エネルギーは18.0[mN/m]である。PAIの場合、表面自由エネルギーは25.0[mN/m]である。PEの場合、表面自由エネルギーは45.1[mN/m]である。PETの場合、表面自由エネルギーは75.5[mN/m]である。
【0101】
<測定結果>
次に、測定結果について説明する。まず、ガイド部材21の材料をPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)とし、表面粗さを0.1[μm]として、プローブタック試験における剥離速度を変化させて粘着力を求め、ガイド部材21における粘着剤の残存の有無を調べた。剥離速度は、プローブ101をガイド部材21から離間させるときのプローブ101の移動速度(上昇速度)である。
【0102】
図11は、試験に用いたラベル媒体8の特性を示す表である。ここでは、強粘着タイプのラベル媒体M1と、再剥離(弱粘着)タイプのラベル媒体M2とを用いた。
【0103】
ラベル媒体M1,M2の基材層81は、いずれも紙に剥離剤を塗布したものである。ラベル媒体M1,M2の粘着剤層82は、いずれもアクリル系の粘着剤であるが、ラベル媒体M1の粘着剤層82にはさらにロジン系の粘着付与樹脂が加えられている。ラベル媒体M1,M2の剥離層83は、いずれも紙である。
【0104】
具体的には、ラベル媒体M1はリンテック株式会社製の「55PW8Kアオ」であり、ラベル媒体M2はリンテック株式会社製の「55MHR8K」である。
【0105】
図12および図13は、剥離速度を0.1[mm/s]から20.0[mm/s]まで変化させた場合の粘着力[N]およびガイド部材21における粘着剤の残存の有無を示す表およびグラフである。粘着力は、図8を参照して説明した最大粘着力である。ガイド部材21に粘着剤の残存が観察されない場合は丸印で示し、粘着剤の残存が観察された場合は×印で示す。
【0106】
図12および図13に示すように、ラベル媒体M1,M2のいずれを用いた場合も、剥離速度の増加と共に粘着力が増加し、剥離速度が10[mm/s]を超えると粘着力が減少に転じた。
【0107】
また、再剥離タイプのラベル媒体M2では、剥離速度が2[mm/s]以下の低剥離速度域では、ガイド部材21に粘着剤の残存が見られた。これは、ガイド部材21と粘着剤層82と間の粘着力F1が、粘着剤層82の内部の凝集力F2を上回ったことにより(F1>F2)、粘着剤層82がガイド部材21から剥離する前に粘着剤層82の内部で凝集破壊が発生し、ガイド部材21に粘着剤が残存したためと考えられる。
【0108】
一方、剥離速度が2[mm/s]を超える高剥離速度域では、ガイド部材21に粘着剤の残存は見られなかった。これは、ガイド部材21と粘着剤層82との間の粘着力F1が、粘着剤層82の内部の凝集力F2を下回ったことにより(F1<F2)、粘着剤層82が凝集剥離せずにガイド部材21から剥離したものと考えられる。
【0109】
また、強粘着タイプのラベル媒体M1では、剥離速度0.1~20.0[mm/s]の全域に亘って、ガイド部材21に粘着剤の残存は見られなかった。これは、強粘着タイプのラベル媒体M1は、粘着剤層82の内部の凝集力F2が特に大きいため、粘着剤層82が凝集破壊せずにガイド部材21から剥離したためと考えられる。
【0110】
なお、図12に示した粘着力の値は、粘着剤層82の凝集破壊が生じた場合には凝集力F2に等しく、凝集破壊が生じていない場合には粘着力F1に等しいと考えることができる。
【0111】
例えば、ラベル媒体M2で剥離速度が2.0[mm/s]の場合には、凝集力F2=5.9[N]と考えることができる。また、ラベル媒体M2で剥離速度が5.0[mm/s]の場合には、粘着力F1=6.4[N]と考えることができる。
【0112】
ここでは、粘着剤層82に凝集破壊が生じた剥離速度が2.0[mm/s]以下の範囲に着目し、図13におけるラベル媒体M2のプロットを結ぶ近似直線の傾きを求め、当該傾きを剥離速度依存性αとする。ラベル媒体M1についても、剥離速度2.0[mm/s]以下の範囲で、同様に剥離速度依存性αを求める。
【0113】
図14は、ラベル媒体M1,M2の剥離速度依存性αを示す表である。強粘着タイプのラベル媒体M1の剥離速度依存性αは2.10[N・s/mm]であり、再剥離タイプのラベル媒体M2の剥離速度依存性αは1.53[N・s/mm]である。
【0114】
この結果から、ラベル媒体8の剥離速度依存性αが1.53[N・s/mm]以下であれば凝集破壊が生じ、剥離速度依存性αが2.10[N・s/mm]以上であれば凝集破壊が生じないことが推定される。
【0115】
また、剥離速度依存性αが1.53[N・s/mm]以下のラベル媒体8を用いる場合には、剥離速度依存性αが1.53[N・s/mm]より大きいラベル媒体8を用いる場合よりも剥離速度、すなわち印刷速度を高速化することで、ガイド部材21における粘着剤の残存を低減できることが理解される。
【0116】
図12,13を参照して説明した結果から、ガイド部材21における粘着剤の残存を抑制するためには、ガイド部材21と粘着剤層82との間の粘着力F1を低減することが有効であることが理解される。そこで、ガイド部材21と粘着剤層82との間の粘着力F1を低減するため、ガイド部材21の表面自由エネルギーを変えてプローブタック試験を行った。ラベル媒体8としては、凝集破壊が生じ易い再剥離タイプのラベル媒体M2を用いた。
【0117】
まず、ガイド部材21の材料を6通りに変え、上述した測定機(接触角計システム)を用い、Fowkesの式を用いて表面自由エネルギーを算出した。ガイド部材21の材料にPTFE、PAI、PE(1)、PET、PE(2)およびPOMを用いたものを、サンプルS1,S2、S3,S4,S5,S6とした。なお、PE(1)とPE(2)は、ポリエチレンであって粘着力が異なる(すなわち分子量が異なる)ものである。
【0118】
このように材料の異なるサンプルS1~S6を用い、剥離速度を5[mm/s]としてプローブタック試験を行って粘着力を求めると共に、ガイド部材21における粘着剤の残存の有無を調べた。
【0119】
図15および図16は、サンプルS1~S11の表面自由エネルギーと、粘着力[N]と、粘着剤の残存の有無とを示す表およびグラフである。ガイド部材21に粘着剤の残存が観察されない場合は丸印で示し、粘着剤の残存が観察された場合は×印で示す。
【0120】
図15および図16から、表面自由エネルギーが大きくなると、粘着力が大きくなることが理解される。つまり、表面自由エネルギーが大きいほど、ガイド部材21の粘着剤層82との間の粘着力F1が大きくなり、粘着剤層82の内部の凝集力F2を上回って(F1>F2)、凝集破壊が発生しやすくなることが理解される。
【0121】
特に、表面自由エネルギーが25[mN/m]を超える場合(サンプルS3~S6)には、粘着力が6.4[N]を超えており、ガイド部材21に粘着剤の残存が確認された。これに対し、表面自由エネルギーが25[mN/m]以下である場合(サンプルS1~S2)には、粘着力が6.4[N]以下であり、ガイド部材21における粘着剤の残存は確認されなかった。
【0122】
そのため、ガイド部材21に粘着剤の残存を生じさせないためには、表面自由エネルギーが25[mN/m]以下であることが望ましい。言い換えると、ガイド部材21を、表面自由エネルギーが25[mN/m]以下の材料(例えばPTFEまたはPAI)で形成することが望ましい。
【0123】
なお、表面自由エネルギーは、上記の通りガイド部材21の表面粗さによっても変化するが、ここではガイド部材21の表面粗さを0.1[μm]とした場合の表面自由エネルギーにより、ガイド部材21の表面の特性を規定している。
【0124】
一般にガイド部材21の材料として用いられる樹脂のうち、最も表面エネルギーが小さい樹脂はPTFEであり、その表面自由エネルギーは18[mN/m]である。そのため、ガイド部材21は、表面自由エネルギーが18~25[mN/m]の材料で形成することが望ましいということもできる。
【0125】
次に、ガイド部材21の表面粗さを変えてプローブタック試験を行い、粘着力と、ガイド部材21における粘着剤の残存の有無を調べた。ガイド部材21の材料はPE(1)とし、算術平均粗さRaを0.89~5.00[μm]の範囲で7通りに変化させたものを、サンプルS11~S17とした。また、参考用に、ガイド部材21の材料をPE(2)とし、算術平均粗さRaを0.30[μm]としたものをサンプルS18とした。また、ガイド部材21の材料をPOMとし、算術平均粗さRaを0.60[μm]としたものをサンプルS19とした。
【0126】
このように表面粗さの異なるサンプルS11~S19を用い、剥離速度を5[mm/s]としてプローブタック試験を行って粘着力を求め、ガイド部材21における粘着剤の残存の有無を調べた。ラベル媒体としては、再剥離タイプのラベル媒体M2を用いた。
【0127】
図17および図18は、サンプルS11~S17の表面自由エネルギーと、粘着力[N]と、ガイド部材21における粘着剤の残存の有無とを示す表およびグラフである。ガイド部材21に粘着剤の残存が観察されない場合は丸印で示し、粘着剤の残存が観察された場合は×印で示す。
【0128】
図18に示すように、算術平均粗さRaが2.04[μm]の場合の粘着力7.00[N]と、算術平均粗さRaが2.54[μm]の場合の粘着力5.58[N]とから、粘着力が6.4[N]となるときの算術平均粗さRaを推定すると、2.20[μm]となる(図18に符号Aで示す)。
【0129】
図17および図18に示すように、算術平均粗さRaが2.20[μm]未満の場合には(サンプルS11~S13,S18,S19)、粘着力が6.4[N]を超え、ガイド部材21への残存が観察された。
【0130】
これは、算術平均粗さRaが小さい場合、ガイド部材21の表面の平滑性のため、ガイド部材21の表面と粘着剤層82との接触面積が大きくなり、両者の間の粘着力F1が大きくなるためと考えられる。
【0131】
また、算術平均粗さRaが3.64[μm]を超える場合にも(サンプルS17,S19)、粘着力が6.4[N]を超え、ガイド部材21における粘着剤の残存が観察された。これは、表面粗さRが大きい場合、ガイド部材21の表面の凹凸に粘着剤が絡みやすくなり、両者の間の粘着力F1が大きくなるためと考えられる。
【0132】
これに対し、算術平均粗さRaが2.20~3.64[μm]の場合には(サンプルS14~S16)、粘着力が6.4[N]以下となり、ガイド部材21における粘着剤の残存が生じにくい。そのため、ガイド部材21における粘着剤の残存を抑制するためには、ガイド部材21の算術平均粗さRaは、2.20~3.64[μm]であることが望ましい。
【0133】
なお、図17および図18に示したサンプルS11~S17の結果はPE(1)を用いた場合の結果であるが、図15および図16の結果から明らかなように、PE(1)に代えて、表面自由エネルギーが25[mN/m]以下となる材料(例えばPTFE,PAI)を用いた場合には、ガイド部材21における粘着剤の残存抑制効果をさらに高めることができる。例えば、ガイド部材21とラベル媒体8との摺動が長期間に亘って繰り返された場合であっても、ガイド部材21における粘着剤の残存を抑制することができる。
【0134】
以上をまとめると、ガイド部材21における粘着剤の残存を抑制するためには、ガイド部材21を、算術平均粗さRaが0.1[μm]であるときの表面自由エネルギーが25[mN/m]以下となる材料(例えばPTFE,PAI)で形成し、なお且つ、算術平均粗さRaを2.20~3.64[μm]とすることが望ましい。
【0135】
ここでは、図11に示したラベル媒体M1,M2を用いたが、他の媒体を用いた測定結果について、以下に説明する。
【0136】
図19は、ラベル媒体8の特性を示す表である。ここでは、強粘着タイプのラベル媒体M3と、再剥離タイプのラベル媒体M4とを用いる。ラベル媒体M3の剥離層83は紙であり、ラベル媒体M3の剥離層83はフィルムである。ラベル媒体M3,M4の粘着剤層82は、いずれもアクリル系の粘着剤であるが、ラベル媒体M3の粘着剤層82にはさらにロジン系の粘着付与樹脂が加えられている。ラベル媒体M3,M4の基材層81は、いずれもフィルムに剥離剤を塗布したものである。
【0137】
具体的には、ラベル媒体M3はリンテック株式会社製の「55PZ28K」であり、ラベル媒体M4はエイブリイ・デニソン社製の「White PET50」である。
【0138】
これらのラベル媒体M3,M4を用いて、図12図13を参照して説明したように、プローブタック試験における剥離速度を変化させて粘着力を求め、およびガイド部材21における粘着剤の残存の有無を調べた。
【0139】
図20および図21は、剥離速度を0.1[mm/s]から20.0[mm/s]まで変化させた場合の粘着力およびガイド部材21における粘着剤の残存の有無を示す表およびグラフである。
【0140】
図20および図21に示すように、再剥離タイプのラベル媒体M4では、剥離速度が2.0[mm/s]以下の低剥離速度域では、ガイド部材21に粘着剤の残存が見られた。一方、剥離速度が2.0[mm/s]を超える高剥離速度域では、ガイド部材21に粘着剤の残存は見られなかった。
【0141】
また、強粘着タイプのラベル媒体M3では、剥離速度0.1~20.0[mm/s]の全域に亘って、ガイド部材21に粘着剤の残存は見られなかった。
【0142】
また、ガイド部材21の材料を4通りに変え、上述した測定機(接触角計システム)を用い、Fowkesの式を用いて表面自由エネルギーを算出した。ガイド部材21の材料にPTFE,PAI,PE(1),PETを用いたものを、サンプルS21,S22,S23,S24とした。サンプルS21~S24の表面粗さは、いずれも0.1[μm]とした。ラベル媒体としては、再剥離タイプのラベル媒体M2を用いた。
【0143】
このように材料の異なるサンプルS21~S24を用い、剥離速度を5[mm/s]としてプローブタック試験を行って粘着力を求め、ガイド部材21における粘着剤の残存の有無を調べた。
【0144】
図22および図23は、サンプルS21~S24の表面自由エネルギーと、粘着力[N]と、ガイド部材21における粘着剤の残存の有無とを示す表およびグラフである。
【0145】
図22および図23に示すように、表面自由エネルギーが25[mN/m]を超える場合(サンプルS23~S24)には、粘着力が6.4[N]を超え、ガイド部材21に粘着剤の残存が確認された。これに対し、表面自由エネルギーが25[mN/m]以下である場合(サンプルS21,S22)には、粘着力が6.4[N]以下であり、ガイド部材21に粘着剤の残存は見られなかった。
【0146】
次に、ガイド部材21の表面粗さを変えて粘着力を求め、ガイド部材21における粘着剤の残存の有無を調べた。ガイド部材21の材料はPE(1)とし、算術平均粗さRaを0.89~2.54[μm]の範囲で4通りに変化させたものを、サンプルS31~S34とした。
【0147】
このように表面粗さの異なるサンプルS31~S34を用い、剥離速度を5[mm/s]としてプローブタック試験を行って粘着力を求め、ガイド部材21における粘着剤の残存の有無を調べた。ラベル媒体としては、再剥離タイプのラベル媒体M4を用いた。
【0148】
図24および図25は、サンプルS31~S34の表面自由エネルギーと、粘着力[N]と、ガイド部材21における粘着剤の残存の有無とを示す表およびグラフである。
【0149】
図24および図25に示すように、算術平均粗さRaが2.20[μm]未満の場合(サンプルS31~S33)には、ガイド部材21における粘着剤の残存が観察された。これに対し、算術平均粗さRaが2.20[μm]以上の場合には、粘着力が6.4[N]以下であり、ガイド部材21における粘着剤の残存は観察されなかった。
【0150】
図12図25を参照して説明した測定結果から、ガイド部材21における粘着剤の残存を抑制するためには、ガイド部材21を、表面自由エネルギーが25[mN/m]以下となる材料(例えばPTFE,PAI)で形成し、なお且つ、算術平均粗さRaを2.20~3.64[μm]とすることが望ましいことが分かる。
【0151】
<印刷試験>
表面自由エネルギーが25[mN/m]以下の材料で形成され、なお且つ、算術平均粗さRaが2.20~3.64[μm]であるガイド部材21を画像形成装置1に組み込み、ラベル媒体8を用いて印刷試験を行った。
【0152】
図26は、印刷試験で使用したラベル媒体8とテストパターンを示す。ラベル媒体8の全長(1ロール)は232mであり、幅W2は80mmである。ラベル媒体8には、幅W1が80mmで長さL1が95mmのテストパターンTを連続して形成する。
【0153】
ラベル媒体8の搬送速度すなわち印刷速度は、6ips(inch per second)とする。1ロールのラベル媒体8に3000枚のテストパターンTを印刷したのち、ガイド部材21を目視で観察し、粘着剤の残存の有無を目視で確認した。
【0154】
ガイド部材21は、表面自由エネルギーが18[mN/m]のPTFEで形成した。また、比較のため、表面自由エネルギーが25[mN/m]よりも大きいPOMでガイド部材21を形成し、同様の印刷試験を行った。
【0155】
ガイド部材21をPOMで形成した場合、1ロール分のラベル媒体8の印刷試験後には、図27(A)に示すように、ガイド部材21の入り口22の近傍と、ガイド部材21のY方向中央よりもやや+Y方向(後方)に、粘着剤の残存が観察された。
【0156】
これに対し、ガイド部材21をPTFEで形成した場合、図27(B)に示すように、1ロール分のラベル媒体8の印刷試験後においても、ガイド部材21に粘着剤の残存が観察されなかった。また、ガイド部材21を表面自由エネルギーが25[mN/m]のPAIで形成した場合も、同様の結果が得られた。
【0157】
この印刷試験の結果から、ガイド部材21を、表面自由エネルギーが25[mN/m]以下の材料で形成し、なお且つ、算術平均粗さRaを2.20~3.64[μm]とすることで、ガイド部材21における粘着剤の付着を抑制できることが理解される。
【0158】
ガイド部材21は、その全体が、表面自由エネルギーが25[mN/m]以下の材料で形成されていることが最も望ましい。また、ガイド部材21の全体の算術平均粗さRaが2.20~3.64[μm]であることが最も望ましい。
【0159】
但し、本実施の形態はそのような形態に限定されるものではなく、ガイド部材21の一部が表面自由エネルギー25[mN/m]以下の材料で形成され、当該一部の算術平均粗さRaが2.20[μm]以上であればよい。
【0160】
例えば、ラベル媒体8がガイド部材21に侵入する入り口22の近傍の部分(図27(B)に符号A1で示す)のみを、表面自由エネルギー25[mN/m]以下の材料で形成し、当該部分の算術平均粗さRaを2.20[μm]以上としてもよい。
【0161】
ガイド部材21の当該部分は、図27(A)に示すように粘着剤の残存が最も生じ易い部分である。この部分の表面自由エネルギーおよび算術平均粗さRaを上記のように設定することで、粘着剤の残存を抑制する効果を得ることができる。
【0162】
また、図28に示す変形例のように、ガイド部材21の各部分21a,21b,21cの表面211,212,213のうち、第1部分21aの表面211の算術平均粗さRaと、第3部分21cの表面213の算出平均粗さRaとを異ならせても良い。
【0163】
具体的には、第3部分21cの表面213の算術平均粗さRaを2.20[μm]~3.64[μm]とし、第1部分21aの表面211の算術平均粗さRaを2.20[μm]未満、あるいは3.64[μm]よりも大きくしてもよい。
【0164】
この場合、ラベル媒体8の幅方向端部に当接する第3部分21cの表面213は、算術平均粗さRaが2.20[μm]~3.64[μm]であるため、粘着剤が付着しにくい。一方、ラベル媒体8の印刷面に対向する第1部分21aの表面211は、算術平均粗さRaが2.20[μm]未満、あるいは3.64[μm]より大きいため、粘着剤が付着しやすい。
【0165】
第1部分21aの表面211に付着した粘着剤は、ラベル媒体8の表面に再付着して搬送されるため、粘着剤をラベル媒体8と共に画像形成装置1の外部に排出することができる。
【0166】
また、第1部分21aの表面211の算術平均粗さRaと、第3部分21cの表面213の算術平均粗さRaとを同じ(いずれも2.20[μm]~3.64[μm])にしてもよい。この場合には、第1部分21aの表面211および第3部分21cの表面213のいずれにも粘着剤が付着しにくいため、粘着剤が画像形成装置1内に搬送されることを抑制できるメリットがある。
【0167】
また、ここでは、ガイド部材21を通過する際のラベル媒体8の搬送速度は一定であり、例えば6ipsである。しかしながら、ラベル媒体8の種類(強粘着または再剥離)によって、ガイド部材21を通過する際のラベル媒体8の搬送速度、すなわち媒体搬送部4の搬送ローラ41,42,44によるラベル媒体8の搬送速度を変化させてもよい。
【0168】
この場合、画像形成装置1の制御部100は、図29に示すように、ラベル媒体8の種類と搬送速度とを対応付けて記憶している。また、画像形成装置1の操作部65は、ユーザがラベル媒体8の種別を選択するメニューを表示し、ユーザによるラベル媒体8の種別の入力を受け付ける。
【0169】
制御部100は、操作部65におけるユーザの入力に応じて、例えば、ラベル媒体8が強粘着タイプであれば搬送速度を速度V1(例えば6ips)に設定し、ラベル媒体8が再剥離タイプであれば搬送速度を速度V1より高速の速度V2(例えば7ips)に設定する。
【0170】
図12を参照して説明した通り、再剥離タイプのラベル媒体8を用いた場合、強粘着タイプのラベル媒体8を用いた場合よりも粘着剤の残存は生じ易いが、剥離速度を速くすることにより(すなわち搬送速度を速くすることにより)粘着剤の残存を生じにくくすることができる。
【0171】
そのため、ラベル媒体8が再剥離タイプである場合の搬送速度を、ラベル媒体8が強粘着タイプである場合の搬送速度よりも速くすることで、ガイド部材21における粘着剤の残存を低減することができる。
【0172】
なお、ガイド部材21を通過したラベル媒体8は、画像形成ユニット10、転写ユニット50、定着ユニット70および媒体排出部90を通過するため、搬送ローラ41,42,44によるラベル媒体8の搬送速度に合わせて、感光体ドラム11の回転速度、駆動ローラ52の回転速度、定着ローラ71の回転速度等も変化させる。
【0173】
<ガイド部材の形状による作用効果>
最後に、ガイド部材21のコの字形状の作用効果について説明する。ガイド部材21は、図3を参照して説明した通り、ラベル媒体8の表面に対向する第1部分21aと、ラベル媒体8の裏面に対向する第2部分21bと、ラベル媒体8の幅方向端面に対向する第3部分21cとを有し、コの字状に形成されている。
【0174】
図30(A),(B)に示すように、媒体保持部30の装着軸31に巻かれたロールからガイド部材21へのラベル媒体8の搬送経路は2通り存在する。
【0175】
図30(A)に示した例では、ロールの上部からガイド部材21に向かって斜め下方にラベル媒体8が搬送される。この場合、ラベル媒体8はガイド部材21を通過しながら下方(-Z方向)に変位しやすい。
【0176】
一方、図30(B)に示した例では、ロールの下部からガイド部材21に向かって斜め上方にラベル媒体8が搬送される。この場合、ラベル媒体8はガイド部材21を通過しながら上方(+Z方向)に変位しやすい。
【0177】
本実施の形態のガイド部材21は、ラベル媒体8の上方に位置する第1部分21aと、下方に位置する第2部分21bとを有するため、ラベル媒体8が上方に変位した場合も、下方に変位した場合も、ガイド部材21によってラベル媒体8の位置を規制することができる。
【0178】
一方、ガイド部材21が例えばL字状に形成されている場合、すなわち第1部分21aおよび第2部分21bの一方を有さない場合には、ラベル媒体8の上方の変位および下方に変位のうちの一方を抑制できないため、ラベル媒体8の搬送状態が不安定になる可能性がある。
【0179】
これに対し、本実施の形態のガイド部材21は、ラベル媒体8の両面に対向する第1部分21aと第2部分21bとを有しているため、ラベル媒体8の上下両方向の変位を抑えることができ、これによりラベル媒体8の安定した搬送を行うことができる。
【0180】
なお、ここでは、連続式のラベル媒体8を用いる場合について説明したが、単票式のラベル媒体を用いてもよい。但し、連続式のラベル媒体8は、図1に示したようにロールから引き出されてガイド部材21に到達するため、ガイド部材21の決まった位置に繰り返し接触する傾向がある。そのため、連続式のラベル媒体8を案内するガイド部材21に本実施の形態を適用した方が、粘着剤の残存抑制効果が特に顕著に発揮される。
【0181】
<実施の形態の効果>
以上説明したように、本実施の形態では、ガイド部材21のラベル媒体8に接触する部分が、算術平均粗さRaが0.1[μm]であるときのFowkesの式による表面自由エネルギーが25[mN/m]以下となる材料で形成され、ガイド部材21の当該部分の算術平均粗さRaは2.20[μm]以上であるため、ガイド部材21における粘着剤の残存を抑制することができる。
【0182】
特に、ガイド部材21の当該部分の算術平均粗さRaが3.64[μm]以下であるため、粘着剤がガイド部材21の表面の凹凸に絡みにくくなり、より効果的にガイド部材21上の残存を抑制することができる。
【0183】
また、ガイド部材21の材料をPAIまたはフッ素樹脂であるPTEFとすることにより、ガイド部材21の表面自由エネルギーを25[mN/m]以下にすることができ、粘着剤の残存を抑制することができる。
【0184】
なお、ガイド部材21の材料をフッ素樹脂としてもよく、ガイド部材21の基材をフッ素樹脂以外の材料で形成し、ガイド部材21の表面にフッ素樹脂を塗布(例えばスプレーコート)してもよい。あるいは、ガイド部材の21の表面の凹凸のうち、凸部にはフッ素樹脂を塗布し、凹部には塗布しないようにしてもよい。言い換えると、ガイド部材21のうち、ラベル媒体8が接触する部分にフッ素樹脂が設けられていればよい。
【0185】
また、ラベル媒体8が連続媒体(より具体的にはロール媒体)であり、ガイド部材21の決まった位置に接触する傾向があるため、ガイド部材21の表面自由エネルギーおよび算術平均粗さが上記範囲にあることにより、ラベル媒体8が繰り返し接触する位置における粘着剤の残存を効果的に抑制することができる。
【0186】
また、ガイド部材21は、ラベル媒体8の表面(印刷面)に対向する第1部分21aと、ラベル媒体8の裏面に対向する第2部分21bと、ラベル媒体8の幅方向端部に対向する第3部分21cとを有するため、ラベル媒体8が媒体保持部30にどのような向きで取り付けられていても、ラベル媒体8の変位を抑制することができ、ラベル媒体8の搬送を安定させることができる。
【0187】
以上、望ましい実施の形態について具体的に説明したが、本開示は上記の実施の形態に限定されるものではなく、各種の改良または変形を行なうことができる。
【0188】
また、本開示は、電子写真方式を利用して画像を形成する画像形成装置、例えば、複写機、ファクシミリ、複合機等に利用することができる。
【符号の説明】
【0189】
1 画像形成装置、 8 ラベル媒体(媒体)、 10,10Y,10M,10C 画像形成ユニット(画像形成部)、 11 感光体ドラム(現像剤担持体)、 12 帯電ローラ(帯電部材)、 13 露光ヘッド(露光装置)、 14 現像ローラ(現像剤担持体)、 15 供給ローラ(供給部材)、 18 現像部、 19 トナーカートリッジ(現像剤収容体)、 20 媒体ガイド、 21 ガイド部材、 21a 第1面、 21b 第2面、 21c 第3面、 22 入り口、 30 媒体保持部、 31 装着軸、 40 媒体搬送部(媒体搬送装置)、 41,42,44 搬送ローラ、 43 カッタ、 50 転写ユニット、 60 筐体、 61 給紙口、 62 排出口、 65 操作部(入力部)、 70 定着ユニット、 81 基材層(ベース層)、 82 粘着剤層、 83 剥離層(表面層)、 90 媒体排出部、 100 制御部、 211,212,213 表面。
図1
図2
図3
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図5
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