(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045542
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】外径測定装置、校正装置及び外径測定方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/10 20060101AFI20230327BHJP
【FI】
G01B11/10 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154027
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 和人
(72)【発明者】
【氏名】赤間 太郎
(72)【発明者】
【氏名】手島 浩真
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA26
2F065AA48
2F065BB15
2F065FF61
2F065FF64
2F065GG04
2F065HH03
2F065HH13
2F065JJ05
2F065JJ09
2F065MM03
(57)【要約】
【課題】異なる径方向について測定した外径を被測定体の軸方向位置と紐付けることが可能な外径測定装置を提供する。
【解決手段】外径測定装置100は、被測定体Pの水平方向の両端位置を検出するための第1レーザ式外径計1、2と、被測定体の上下方向の両端位置を検出するための第2レーザ式外径計3、4と、第1レーザ式外径計の離隔距離を調整する第1駆動手段5、6と、第2レーザ式外径計の離隔距離を調整する第2駆動手段7、8と、被測定体の搬送速度を測定する速度センサ9と、被測定体の外径を演算する演算手段10と、を備える。演算手段は、被測定体の水平方向の両端位置に基づき、被測定体の水平方向の外径を演算すると共に、被測定体の上下方向の両端位置に基づき、被測定体の上下方向の外径を演算し、被測定体の搬送速度に基づき、被測定体の水平方向の外径及び上下方向の外径を被測定体の軸方向位置と紐付ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
300mm以上の外径を有し、軸方向に水平に搬送される断面略円形の長尺の被測定体の外径を測定する装置であって、
前記被測定体を挟んだ前記被測定体の搬送方向に直交する水平方向両側にそれぞれ配置され、前記被測定体の水平方向の両端位置を検出するための一対の第1レーザ式外径計と、
前記一対の第1レーザ式外径計に対して前記被測定体の搬送方向に離隔した位置において、前記被測定体を挟んだ上下方向両側にそれぞれ配置され、前記被測定体の上下方向の両端位置を検出するための一対の第2レーザ式外径計と、
前記一対の第1レーザ式外径計の水平方向の離隔距離を調整する第1駆動手段と、
前記一対の第2レーザ式外径計の上下方向の離隔距離を調整する第2駆動手段と、
前記被測定体の搬送速度を測定する速度センサと、
前記被測定体の外径を演算する演算手段と、を備え、
前記演算手段は、前記第1駆動手段で水平方向の離隔距離が調整された前記一対の第1レーザ式外径計で検出した前記被測定体の水平方向の両端位置に基づき、前記被測定体の水平方向の外径を演算すると共に、前記第2駆動手段で上下方向の離隔距離が調整された前記一対の第2レーザ式外径計で検出した前記被測定体の上下方向の両端位置に基づき、前記被測定体の上下方向の外径を演算し、前記速度センサで測定した前記被測定体の搬送速度に基づき、前記被測定体の水平方向の外径及び上下方向の外径を前記被測定体の軸方向位置と紐付ける、
外径測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の外径測定装置を校正するために用いられる校正装置であって、
前記第1レーザ式外径計と第2レーザ式外径計との前記被測定体の搬送方向の離隔距離に応じた長さを有して水平方向に延び、前記外径測定装置を校正する際に、長手方向が前記被測定体の搬送方向に合致するように配置される支持体と、
前記支持体の一方の端部に着脱自在に取り付けられ、前記支持体の長手方向に直交する水平方向に延び、前記支持体に対して前記支持体の長手方向に直交する水平方向に移動可能な第1校正用バーと、
前記支持体の他方の端部に着脱自在に取り付けられ、上下方向に延び、前記支持体に対して上下方向に移動可能な第2校正用バーと、を備える、
校正装置。
【請求項3】
請求項1に記載の外径測定装置を用いて、300mm以上の外径を有し、軸方向に搬送される断面略円形の長尺の被測定体の外径を測定する方法であって、
請求項2に記載の校正装置を用いて前記外径測定装置を校正する校正ステップと、
前記校正ステップで校正した後の前記外径測定装置を用いて前記被測定体の外径を測定する測定ステップと、を有し、
前記校正ステップにおいて、
前記第1校正用バー及び前記第2校正用バーとして、前記被測定体の最大外径に相当する長さを有するバーをそれぞれ前記支持体に取り付けた場合に、前記外径測定装置で測定される前記第1校正用バー及び前記第2校正用バーの長さが、真の前記第1校正用バー及び前記第2校正用バーの長さにそれぞれ合致すると共に、前記第1校正用バー及び前記第2校正用バーとして、前記被測定体の最小外径に相当する長さを有するバーをそれぞれ前記支持体に取り付けた場合に、前記外径測定装置で測定される前記第1校正用バー及び前記第2校正用バーの長さが、真の前記第1校正用バー及び前記第2校正用バーの長さにそれぞれ合致するように、前記外径測定装置を校正する、
外径測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大径の鍛造管など、300mm以上の外径を有し、軸方向に搬送される断面略円形の長尺の被測定体の外径を測定する装置、前記外径測定装置を校正するために用いられる校正装置、及び、前記外径測定装置及び前記校正装置を用いて被測定体の外径を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外径が300~900mmである大径の鍛造管については、静止した状態で、大型のノギス等の測定器具を用いて、作業者がその外径を手動測定するのが一般的である。
しかしながら、測定器具を用いた手動測定には、作業者によって個体差が生じる可能性があるという問題や、工数の観点から全数・全長に亘る測定が困難であるという問題がある。
【0003】
このため、例えば、特許文献1には、レーザ式外径計を用いた大径管の外径測定装置が提案されている。
特許文献1に記載の装置によれば、搬送中の大径管の外径を連続的に測定可能であるため、全数・全長に亘る測定が可能である。また、作業者の個体差が生じることもない。
【0004】
しかしながら、特許文献1には、異なる径方向について測定した外径を大径管の軸方向位置と紐付けることについて開示も示唆も無い。異なる径方向について測定した外径を軸方向位置と紐付けなければ、同じ軸方向位置における異なる径方向の外径を精度良く比較できないため、特許文献1に記載の装置では、例えば、楕円率(=(最大外径-最小外径)/平均外径)を精度良く算出することができない。
さらに、特許文献1には、外径測定装置を校正する装置について開示も示唆もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、300mm以上の外径を有し、軸方向に搬送される断面略円形の長尺の被測定体の外径を測定する装置であって、異なる径方向について測定した外径を被測定体の軸方向位置と紐付けることが可能な外径測定装置を提供することを課題とする。また、本発明は、前記外径測定装置を効率良く校正するために用いられる校正装置を提供することを課題とする。さらに、本発明は、前記外径測定装置及び前記校正装置を用いて被測定体の外径を精度良く測定する方法を提供することを課題とする。
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、300mm以上の外径を有し、軸方向に水平に搬送される断面略円形の長尺の被測定体の外径を測定する装置であって、前記被測定体を挟んだ前記被測定体の搬送方向に直交する水平方向両側にそれぞれ配置され、前記被測定体の水平方向の両端位置を検出するための一対の第1レーザ式外径計と、前記一対の第1レーザ式外径計に対して前記被測定体の搬送方向に離隔した位置において、前記被測定体を挟んだ上下方向両側にそれぞれ配置され、前記被測定体の上下方向の両端位置を検出するための一対の第2レーザ式外径計と、前記一対の第1レーザ式外径計の水平方向の離隔距離を調整する第1駆動手段と、前記一対の第2レーザ式外径計の上下方向の離隔距離を調整する第2駆動手段と、前記被測定体の搬送速度を測定する速度センサと、前記被測定体の外径を演算する演算手段と、を備え、前記演算手段は、前記第1駆動手段で水平方向の離隔距離が調整された前記一対の第1レーザ式外径計で検出した前記被測定体の水平方向の両端位置に基づき、前記被測定体の水平方向の外径を演算すると共に、前記第2駆動手段で上下方向の離隔距離が調整された前記一対の第2レーザ式外径計で検出した前記被測定体の上下方向の両端位置に基づき、前記被測定体の上下方向の外径を演算し、前記速度センサで測定した前記被測定体の搬送速度に基づき、前記被測定体の水平方向の外径及び上下方向の外径を前記被測定体の軸方向位置と紐付ける、外径測定装置を提供する。
【0008】
本発明に係る外径測定装置で外径を測定する被測定体としては、外径が300~900mmである大径の鍛造管を例示できるが、必ずしもこれに限るものではなく、300mm以上の外径を有し、軸方向に搬送される断面略円形の長尺の被測定体である限りにおいて、鍛造管以外の管や中実の棒材など、種々の被測定体に適用可能である。
本発明に係る外径測定装置によれば、一対の第1レーザ式外径計によって被測定体の水平方向の両端位置が検出され、演算手段によって、検出した被測定体の水平方向の両端位置に基づき、被測定体の水平方向の外径が演算される。同様に、一対の第2レーザ式外径計によって被測定体の上下方向の両端位置が検出され、演算手段によって、検出した被測定体の上下方向の両端位置に基づき、被測定体の上下方向の外径が演算される。
そして、演算手段が、速度センサで測定した被測定体の搬送速度に基づき、被測定体の水平方向の外径及び上下方向の外径を被測定体の軸方向位置と紐付ける。具体的には、例えば、被測定体の先端(搬送方向下流側の端)が一対の第1レーザ式外径計の測定位置に到達して、被測定体の先端における水平方向の両端位置が一対の第1レーザ式外径計で検出され始めてから(演算手段が被測定体の水平方向の外径を演算し始めてから)の経過時間と、速度センサで測定した被測定体の搬送速度とを乗算することで、当該経過時間における被測定体の軸方向位置(先端からの距離)を演算可能である。この演算した被測定体の軸方向位置と、当該経過時間において演算した被測定体の水平方向の外径とを紐付けることが考えられる。同様に、被測定体の先端が一対の第2レーザ式外径計の測定位置に到達して、被測定体の先端における上下方向の両端位置が一対の第2レーザ式外径計で検出され始めてから(演算手段が被測定体の上下方向の外径を演算し始めてから)の経過時間と、速度センサで測定した被測定体の搬送速度とを乗算することで、当該経過時間における被測定体の軸方向位置を演算可能である。この演算した被測定体の軸方向位置と、当該経過時間において演算した被測定体の上下方向の外径とを紐付けることが考えられる。
以上のように、本発明に係る外径測定装置によれば、被測定体の異なる径方向について測定した外径、具体的には、測定した被測定体の水平方向の外径及び上下方向の外径を、被測定体の軸方向位置と紐付けることが可能である。
【0009】
なお、本発明に係る外径測定装置によれば、一対の第1レーザ式外径計の水平方向の離隔距離を調整する第1駆動手段と、一対の第2レーザ式外径計の上下方向の離隔距離を調整する第2駆動手段と、を備えるため、一対の第1レーザ式外径計で被測定体の水平方向の両端位置を検出でき、一対の第2レーザ式外径計で被測定体の上下方向の両端位置を検出できるように、測定すべき被測定体の外径(公称径)に応じて、一対の第1レーザ式外径計の水平方向の離隔距離及び一対の第2レーザ式外径計の上下方向の離隔距離を調整することが可能である。このため、外径が300~900mmである大径の鍛造管など、外径が広範囲に亘る被測定体であっても、水平方向の外径及び上下方向の外径を測定可能である。
【0010】
また、前記課題を解決するため、本発明は、前記外径測定装置を校正するために用いられる校正装置であって、前記第1レーザ式外径計と第2レーザ式外径計との前記被測定体の搬送方向の離隔距離に応じた長さを有して水平方向に延び、前記外径測定装置を校正する際に、長手方向が前記被測定体の搬送方向に合致するように配置される支持体と、前記支持体の一方の端部に着脱自在に取り付けられ、前記支持体の長手方向に直交する水平方向に延び、前記支持体に対して前記支持体の長手方向に直交する水平方向に移動可能な第1校正用バーと、前記支持体の他方の端部に着脱自在に取り付けられ、上下方向に延び、前記支持体に対して上下方向に移動可能な第2校正用バーと、を備える、校正装置を提供する。
【0011】
本発明に係る校正装置によれば、外径測定装置を校正する際、支持体は、その長手方向が被測定体の搬送方向に合致するように配置される。
このため、支持体の一方の端部に取り付けられ、支持体の長手方向に直交する水平方向に延びる第1校正用バーは、外径測定装置を校正する際に、被測定体の搬送方向に直交する水平方向に延びることになる。したがって、第1校正用バーの両端を一対の第1レーザ式外径計で検出し、演算手段で第1校正用バーの長さを演算することが可能である。そして、この演算した第1校正用バーの長さが、真の第1校正用バーの長さに合致するように、外径測定装置を校正することが可能である。
一方、支持体の他方の端部に取り付けられ、上下方向に延びる第2校正用バーは、外径測定装置を校正する際にも、上下方向に延びることになる。したがって、第2校正用バーの両端を一対の第2レーザ式外径計で検出し、演算手段で第2校正用バーの長さを演算することが可能である。そして、この演算した第2校正用バーの長さが、真の第2校正用バーの長さに合致するように、外径測定装置を校正することが可能である。
そして、支持体が、第1レーザ式外径計と第2レーザ式外径計との被測定体の搬送方向の離隔距離に応じた長さを有するため、第1校正用バーと第2校正用バーとの離隔距離も、第1レーザ式外径計と第2レーザ式外径計との離隔距離に応じた距離となる。このため、校正装置の配置位置を変更することなく、同じ位置に配置された校正装置を用いて、第1校正用バーの両端を一対の第1レーザ式外径計で検出すると同時に、第2校正用バーの両端を一対の第2レーザ式外径計で検出することができる。すなわち、校正装置の配置位置を変更することなく、一対の第1レーザ式外径計と一対の第2レーザ式外径計とを備えた外径測定装置を校正することができる。
また、従来、外径測定装置を校正する際には、被測定体と同じ断面略円形の校正用サンプルが用いられるのが一般的であるが、300mm以上の外径を有する校正用サンプルは重量が大きくなるため、持ち運びが容易ではない。これに対し、本発明に係る校正装置では、第1校正用バー及び第2校正用バーとして、狭幅の薄板状部材を用いることができるため、その長さを300mm以上としても、上記の校正用サンプルに比べて重量が小さくなり、持ち運びが容易である。
以上のように、本発明に係る校正装置は、配置位置を変更する必要がなく、持ち運びも容易であるため、外径測定装置を効率良く校正することが可能である。
【0012】
なお、本発明に係る校正装置によれば、第1校正用バー及び第2校正用バーが支持体の端部に着脱自在に取り付けられるため、例えば、長さの異なる第1校正用バー及び第2校正用バーに付け替えて校正を繰り返すことで、校正精度を高めることが可能である。
また、本発明に係る校正装置によれば、第1校正用バーが支持体に対して支持体の長手方向に直交する水平方向に移動可能である。すなわち、外径測定装置を校正する際に、第1校正用バーが被測定体の搬送方向に直交する水平方向に移動可能である。このため、第1校正用バーを移動させることで、一対の第1レーザ式外径計で検出する第1校正用バーの両端の位置を変更することができる。被測定体に水平方向の曲がりや搬送中の蛇行が生じていると、被測定体の水平方向の外径に変動がなくても、被測定体の水平方向の両端位置は変動する。このため、第1校正用バーの両端の位置を変更して校正を繰り返すことで、被測定体の水平方向の曲がりや蛇行の影響を低減させることが可能である。同様に、本発明に係る校正装置によれば、第2校正用バーが支持体に対して上下方向に移動可能である。すなわち、外径測定装置を校正する際に、第2校正用バーが上下方向に移動可能である。このため、第2校正用バーを移動させることで、一対の第2レーザ式外径計で検出する第2校正用バーの両端の位置を変更することができる。被測定体に上下方向の曲がりが生じていると、被測定体の上下方向の外径に変動がなくても、被測定体の上下方向の両端位置は変動する。このため、第2校正用バーの両端の位置を変更して校正を繰り返すことで、被測定体の上下方向の曲がりの影響を低減させることが可能である。
【0013】
さらに、前記課題を解決するため、本発明は、前記外径測定装置を用いて、300mm以上の外径を有し、軸方向に搬送される断面略円形の長尺の被測定体の外径を測定する方法であって、前記校正装置を用いて前記外径測定装置を校正する校正ステップと、前記校正ステップで校正した後の前記外径測定装置を用いて前記被測定体の外径を測定する測定ステップと、を有し、前記校正ステップにおいて、前記第1校正用バー及び前記第2校正用バーとして、前記被測定体の最大外径に相当する長さを有するバーをそれぞれ前記支持体に取り付けた場合に、前記外径測定装置で測定される前記第1校正用バー及び前記第2校正用バーの長さが、真の前記第1校正用バー及び前記第2校正用バーの長さにそれぞれ合致すると共に、前記第1校正用バー及び前記第2校正用バーとして、前記被測定体の最小外径に相当する長さを有するバーをそれぞれ前記支持体に取り付けた場合に、前記外径測定装置で測定される前記第1校正用バー及び前記第2校正用バーの長さが、真の前記第1校正用バー及び前記第2校正用バーの長さにそれぞれ合致するように、前記外径測定装置を校正する、外径測定方法を提供する。
【0014】
本発明に係る外径測定方法によれば、校正ステップにおいて、被測定体の最大外径に相当する長さを有する第1校正用バー及び第2校正用バーを用いて外径測定装置を校正すると共に、被測定体の最小外径に相当する長さを有する第1校正用バー及び第2校正用バーを用いて外径測定装置を校正し、測定ステップにおいて、校正後の外径測定装置を用いて被測定体の外径を測定する。このため、被測定体の最小外径から最大外径までの範囲において、精度の良い外径測定が可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る外径測定装置によれば、測定した被測定体の水平方向の外径及び上下方向の外径を、被測定体の軸方向位置と紐付けることが可能である。また、本発明に係る校正装置によれば、本発明に係る外径測定装置を効率良く校正することが可能である。さらに、本発明に係る外径測定方法によれば、本発明に係る外径測定装置及び本発明に係る校正装置を用いて被測定体の外径を精度良く測定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る外径測定装置の概略構成を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る校正装置の概略構成を模式的に示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る外径測定方法の校正ステップを実行している状態を模式的に示す正面図である。
【
図4】校正後の
図1に示す外径測定装置を用いた測定結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の一実施形態に係る外径測定装置、校正装置及び外径測定方法(校正ステップ)について、断面略円形の長尺の被測定体が大径(外径が300~900mm)の鍛造管であり、検査工程の搬送ラインにおいて、軸方向に水平に搬送されながら外径が測定される場合を例に挙げて説明する。なお、各図は、参考的に表したものであり、各図に表された構成要素の寸法、縮尺及び形状は、実際のものとは異なっている場合があることに留意されたい。
【0018】
<外径測定装置>
最初に、本実施形態に係る外径測定装置について説明する。
図1は、本実施形態に係る外径測定装置の概略構成を模式的に示す図である。
図1(a)は外径測定装置全体の概略構成を示す側面図(被測定体の搬送方向(Z方向)に直交する水平方向(X方向)から見た図)であり、
図1(b)は第1レーザ式外径計の概略構成を拡大して示す正面図(被測定体の搬送方向から見た図)であり、
図1(c)は第2レーザ式外径計の概略構成を拡大して示す正面図(被測定体の搬送方向から見た図)である。なお、
図1(a)では、便宜上、
図1(b)に示す支持部5、6及び
図1(c)に示すアーム7、8の図示を省略している。
図1に示すように、本実施形態に係る外径測定装置100は、搬送ラインに設置された搬送ローラRによって軸方向(Z方向)に搬送される被測定体(鍛造管)Pの外径を測定する装置であって、一対の第1レーザ式外径計1、2と、一対の第2レーザ式外径計3、4と、第1駆動手段(第1駆動手段を構成するアーム5、6のみを図示)と、第2駆動手段(第2駆動手段を構成するアーム7、8のみを図示)と、速度センサ9と、演算手段10と、を備える。また、本実施形態に係る外径測定装置100は、光電センサ11を備える。
【0019】
一対の第1レーザ式外径計1、2は、被測定体Pを挟んだ被測定体Pの搬送方向に直交する水平方向(X方向)両側にそれぞれ配置され、被測定体Pの水平方向の両端位置を検出する。一対の第1レーザ式外径計1、2は、演算手段10と電気的に接続されている。
図1(b)の左側に配置された第1レーザ式外径計1は、被測定体Pの左端を挟んで上下方向(Y方向)に対向配置された投光器1a及び受光器1bを具備する。
図1(b)に示す例では、投光器1aが上側に配置され、受光器1bが下側に配置されているが、これに限るものではなく、投光器1aが下側に配置され、受光器1bが上側に配置された構成を採用することも可能である。
図1(b)の右側に配置された第1レーザ式外径計2は、被測定体Pの右端を挟んで上下方向(Y方向)に対向配置された投光器2a及び受光器2bを具備する。
図1(b)に示す例では、投光器2aが上側に配置され、受光器2bが下側に配置されているが、これに限るものではなく、投光器2aが下側に配置され、受光器2bが上側に配置された構成を採用することも可能である。また、投光器1a、2aの何れもが上下方向の同じ側に配置される構成に限るものではなく、投光器1aが上側に、投光器2aが下側に配置された構成や、投光器1aが下側に、投光器2aが上側に配置された構成を採用することも可能である。
【0020】
一対の第2レーザ式外径計3、4は、一対の第1レーザ式外径計1、2に対して被測定体Pの搬送方向(X方向)に離隔した位置に配置されている。
図1(a)に示す例では、一対の第2レーザ式外径計3、4は、被測定体Pの搬送方向下流側(
図1(a)の右側)に離隔距離L1だけ離れて配置されている。ただし、本発明は、これに限るものではなく、一対の第1レーザ式外径計1、2の方が、一対の第2レーザ式外径計3、4に対して被測定体の搬送方向下流側に配置された構成を採用することも可能である。
一対の第2レーザ式外径計3、4は、被測定体Pを挟んだ上下方向(Y方向)両側にそれぞれ配置され、被測定体Pの上下方向の両端位置を検出する。一対の第2レーザ式外径計3、4は、演算手段10と電気的に接続されている。
図1(c)の上側に配置された第2レーザ式外径計3は、被測定体Pの上端を挟んで左右方向(X方向)に対向配置された投光器3a及び受光器3bを具備する。
図1(c)に示す例では、投光器3aが左側に配置され、受光器3bが右側に配置されているが、これに限るものではなく、投光器3aが右側に配置され、受光器3bが左側に配置された構成を採用することも可能である。
図1(c)の下側に配置された第2レーザ式外径計4は、被測定体Pの下端を挟んで左右方向(X方向)に対向配置された投光器4a及び受光器4bを具備する。
図1(c)に示す例では、投光器4aが左側に配置され、受光器4bが右側に配置されているが、これに限るものではなく、投光器4aが右側に配置され、受光器4bが左側に配置された構成を採用することも可能である。また、投光器3a、4aの何れもが左右方向の同じ側に配置される構成に限るものではなく、投光器3aが左側に、投光器4aが右側に配置された構成や、投光器3aが右側に、投光器4aが左側に配置された構成を採用することも可能である。
【0021】
第1レーザ式外径計1の投光器1aは、レーザ光源や、ミラーやレンズ等の走査光学系から構成され、受光器1bに向けて、X方向に走査されたレーザ走査光(
図1において、レーザ走査光にはドット状のハッチングを施している)を投光する。受光器1bは、レンズ等の集光光学系や、受光素子から構成され、投光器1aから投光されたレーザ走査光のうち、被測定体Pで遮蔽されずに受光器1bに到達したレーザ走査光を受光して電気信号に変換する。そして、第1レーザ式外径計1は、受光器1bで受光された(被測定体Pで遮蔽されなかった)レーザ走査光の走査時間を長さに換算した値(
図1(b)に示す長さL
XL)を、被測定体Pの左端位置として、演算手段10に出力する。なお、本発明は、これに限るものではなく、逆に受光器1bで受光されなかった(被測定体Pで遮蔽された)レーザ走査光の走査時間を長さに換算した値を、被測定体Pの左端位置として、演算手段10に出力する構成を採用することも可能である。
【0022】
第1レーザ式外径計2の投光器2a、第2レーザ式外径計3の投光器3a及び第2レーザ式外径計4の投光器4aも、第1レーザ式外径計1の投光器1aと同様の構成を有し、第1レーザ式外径計2の受光器2b、第2レーザ式外径計3の受光器3b及び第2レーザ式外径計4の受光器4bも、第1レーザ式外径計1の受光器1bと同様の構成を有する。第2レーザ式外径計3の投光器3a及び第2レーザ式外径計4の投光器4aから投光されるレーザ走査光の走査方向はY方向である。
そして、第1レーザ式外径計2は、受光器2bで受光された(被測定体Pで遮蔽されなかった)レーザ走査光の走査時間を長さに換算した値(
図1(b)に示す長さL
XR)を、被測定体Pの右端位置として、演算手段10に出力する。ただし、これに限るものではなく、逆に受光器2bで受光されなかったレーザ走査光の走査時間を長さに換算した値を、被測定体Pの左端位置として、演算手段10に出力する構成を採用することも可能である。
第2レーザ式外径計3は、受光器3bで受光された(被測定体Pで遮蔽されなかった)レーザ走査光の走査時間を長さに換算した値(
図1(c)に示す長さL
YU)を、被測定体Pの上端位置として、演算手段10に出力する。ただし、これに限るものではなく、逆に受光器3bで受光されなかったレーザ走査光の走査時間を長さに換算した値を、被測定体Pの上端位置として、演算手段10に出力する構成を採用することも可能である。
第2レーザ式外径計4は、受光器4bで受光された(被測定体Pで遮蔽されなかった)レーザ走査光の走査時間を長さに換算した値(
図1(c)に示す長さL
YL)を、被測定体Pの下端位置として、演算手段10に出力する。ただし、これに限るものではなく、逆に受光器4bで受光されなかったレーザ走査光の走査時間を長さに換算した値を、被測定体Pの下端位置として、演算手段10に出力する構成を採用することも可能である。
【0023】
第1駆動手段は、一対の第1レーザ式外径計1、2の水平方向(X方向)の離隔距離を調整する。具体的には、本実施形態の第1駆動手段は、第1レーザ式外径計1(投光器1a、受光器1b)が取り付けられたアーム5と、第1レーザ式外径計2(投光器2a、受光器2b)が取り付けられたアーム6と、を具備する。また、第1駆動手段は、例えば、サーボモータ(図示省略)と、水平方向(X方向)に延びるリニアガイド(図示省略)と、を具備する。
以上の構成を有する第1駆動手段において、サーボモータを駆動することで、アーム5、6は、それぞれリニアガイドに沿って水平方向に移動する。これにより、アーム5に取り付けられた第1レーザ式外径計1も、アーム5と共に水平方向に移動する。同様に、アーム6に取り付けられた第1レーザ式外径計2も、アーム6と共に水平方向に移動する。第1駆動手段は、各アーム5、6の水平方向の移動量を制御することで、一対の第1レーザ式外径計1、2の水平方向の離隔距離を調整する。なお、第1駆動手段によって制御された各アーム5、6の水平方向の移動量(第1レーザ式外径計1、2の水平方向の移動量)は、第1駆動手段から演算手段10に出力される。
ただし、第1駆動手段は、上記の構成に限るものではなく、一対の第1レーザ式外径計1、2の水平方向の離隔距離を調整可能である限りにおいて、種々の構成を採用可能である。
【0024】
第2駆動手段は、一対の第2レーザ式外径計3、4の上下方向(Y方向)の離隔距離を調整する。具体的には、本実施形態の第2駆動手段は、第2レーザ式外径計3(投光器3a、受光器3b)が取り付けられたアーム7と、第2レーザ式外径計4(投光器4a、受光器4b)が取り付けられたアーム8と、を具備する。また、第2駆動手段は、例えば、サーボモータ(図示省略)と、上下方向(Y方向)に延びるリニアガイド(図示省略)と、を具備する。
以上の構成を有する第2駆動手段において、サーボモータを駆動することで、アーム7は、リニアガイドに沿って上下方向に移動する。これにより、アーム7に取り付けられた第2レーザ式外径計3も、アーム7と共に上下方向に移動する。一方、本実施形態では、アーム8は上下方向に移動せず、固定位置で静止している。したがって、アーム8に取り付けられた第2レーザ式外径計4も上下方向に移動しない。これは、被測定体Pの外径が変化したとしても、被測定体Pは搬送ローラRによって支持されており、被測定体Pの下端位置に大きな変化が生じないため、移動させる必要がないからである。第2駆動手段は、アーム7の上下方向の移動量を制御することで、一対の第2レーザ式外径計3、4の上下方向の離隔距離を調整する。なお、第2駆動手段によって制御されたアーム7の上下方向の移動量(第2レーザ式外径計3の上下方向の移動量)は、第2駆動手段から演算手段10に出力される。
ただし、第2駆動手段は、上記の構成に限るものではなく、一対の第2レーザ式外径計3、4の上下方向の離隔距離を調整可能である限りにおいて、種々の構成を採用可能である。
【0025】
速度センサ9は、被測定体Pの搬送速度を測定する。具体的には、本実施形態の速度センサは、第1光電センサ91と、第1光電センサ91よりも被測定体Pの搬送方向下流側(
図1(a)の右側)に配置された第2光電センサ92と、を具備する。また、演算手段10も速度センサ9の一部を構成している。
第1光電センサ91は、被測定体Pが搬送される搬送ラインを挟んで上下方向(Y方向)に対向配置されたレーザ光源9a及び受光素子9bを具備する透過型の光電センサである。ただし、レーザ光源9a及び受光素子9bの配置は、これに限るものではなく、搬送ラインを挟んで水平方向(X方向)に対向配置された構成を採用することも可能である。第2光電センサ92も同様に、被測定体Pが搬送される搬送ラインを挟んで上下方向(Y方向)に対向配置されたレーザ光源9c及び受光素子9dを具備する透過型の光電センサである。ただし、レーザ光源9c及び受光素子9dの配置は、これに限るものではなく、搬送ラインを挟んで水平方向(X方向)に対向配置された構成を採用することも可能である。第1光電センサ91の受光素子9b及び第2光電センサ92の受光素子9dは、演算手段10と電気的に接続されている。
【0026】
第1光電センサ91が配置されている位置に被測定体Pの先端(搬送方向下流側の端)が到達していない状態では、第1光電センサ91のレーザ光源9aから投光されたレーザ光が受光素子9bで受光され、第1光電センサ91が配置されている位置に被測定体Pの先端が到達すると、第1光電センサ91のレーザ光源9aから投光されたレーザ光が被測定体Pで遮蔽されて、受光素子9bで受光されなくなる。このため、受光素子9bから出力される電気信号は、被測定体Pの先端が第1光電センサ91が配置されている位置に到達するタイミングで、オンからオフに切り替わる。
同様に、第2光電センサ92が配置されている位置に被測定体Pの先端が到達していない状態では、第2光電センサ92のレーザ光源9cから投光されたレーザ光が受光素子9dで受光され、第2光電センサ92が配置されている位置に被測定体Pの先端が到達すると、第2光電センサ92のレーザ光源9cから投光されたレーザ光が被測定体Pで遮蔽されて、受光素子9dで受光されなくなる。このため、受光素子9dから出力される電気信号は、被測定体Pの先端が第2光電センサ92が配置されている位置に到達するタイミングで、オンからオフに切り替わる。
【0027】
速度センサ9の一部として機能する演算手段10は、受光素子9b、9dから出力される電気信号がオンからオフに切り替わるタイミングの時間差を検出し、第1光電センサ91と第2光電センサ92との被測定体Pの搬送方向(Z方向)の離隔距離L2を、検出した時間差で除算することにより、被測定体Pの搬送速度を演算する。
なお、速度センサ9は、上記の構成に限るものではなく、被測定体Pの搬送速度を測定可能である限りにおいて、反射型の光電センサの組み合わせや、レーザドップラ速度計など、種々の構成を採用可能である。
【0028】
光電センサ11は、被測定体Pが搬送される搬送ラインを挟んで上下方向(Y方向)に対向配置されたレーザ光源11a及び受光素11bを具備する透過型の光電センサである。ただし、レーザ光源11a及び受光素子11bの配置は、これに限るものではなく、搬送ラインを挟んで水平方向(X方向)に対向配置された構成を採用することも可能である。光電センサ11の受光素子11bは、演算手段10と電気的に接続されている。
光電センサ11が配置されている位置に、被測定体Pの先端が到達した後、被測定体Pの後端(搬送方向上流側の端)が通過していない状態では、光電センサ11のレーザ光源11aから投光されたレーザ光が被測定体Pで遮蔽されて、受光素子11bで受光されないが、光電センサ11が配置されている位置を被測定体Pの後端が通過すると、光電センサ11のレーザ光源11aから投光されたレーザ光が受光素子11bで受光されるようになる。このため、受光素子11bから出力される電気信号は、被測定体Pの後端が光電センサ11が配置されている位置を通過するタイミングで、オフからオンに切り替わる。
光電センサ11は、後述のようにして、演算手段10が演算した被測定体Pの外径(被測定体Pの軸方向位置と紐付けられた外径)を演算手段10に記憶する際に用いられる。具体的には、演算手段10は、後述のようにして演算した被測定体Pの外径を、光電センサ11の受光素子11bから出力される電気信号がオフからオンに切り替わったタイミングで記憶する。
【0029】
演算手段10は、被測定体Pの外径を演算する。
具体的には、演算手段10は、第1駆動手段で水平方向の離隔距離が調整された(被測定体Pの水平方向の両端位置が検出可能となる離隔距離に調整された)一対の第1レーザ式外径計1、2で検出した被測定体Pの水平方向の両端位置(左端位置としての長さL
XL、右端位置としての長さL
XR)に基づき、被測定体Pの水平方向の外径OD
Xを演算する。
より具体的には、
図1(b)に示すように、被測定体Pの左端位置を検出する際に、第1レーザ式外径計1が水平方向の基準位置B1から水平方向に長さΔLL
XLだけ移動した状態になっているとすると、この長さΔLL
XL(水平方向の移動量)は、第1駆動手段から演算手段10に入力される。また、被測定体Pの右端位置を検出する際に、第1レーザ式外径計2が、水平方向の基準位置B2から水平方向に長さΔLL
XRだけ移動した状態になっているとすると、この長さΔLL
XR(水平方向の移動量)は、第1駆動手段から演算手段10に入力される。そして、演算手段10には、固定値である基準位置B1と基準位置B2との水平方向の離隔距離LL
X0が予め記憶されている。演算手段10は、これらのパラメータを用いて、以下の式(1)によって、被測定体Pの水平方向の外径OD
Xを演算する。
OD
X=(LL
X0+ΔLL
XL+ΔLL
XR)-(L
XL+L
XR) ・・・(1)
【0030】
また、演算手段10は、第2駆動手段で上下方向の離隔距離が調整された(被測定体Pの上下方向の両端位置が検出可能となる離隔距離に調整された)一対の第2レーザ式外径計3、4で検出した被測定体Pの上下方向の両端位置(上端位置としての長さL
YU、下端位置としての長さL
YL)に基づき、被測定体Pの上下方向の外径OD
Yを演算する。
より具体的には、
図1(c)に示すように、被測定体Pの上端位置を検出する際に、第2レーザ式外径計3が上下方向の基準位置B3から上下方向に長さΔLL
YUだけ移動した状態になっているとすると、この長さΔLL
YU(上下方向の移動量)は、第2駆動手段から演算手段10に入力される。そして、演算手段10には、固定値である基準位置B3と第2レーザ式外径計4(第2レーザ式外径計4の投光器4aから投光されるレーザ走査光の下端位置)との上下方向の離隔距離LL
Y0が予め記憶されている。演算手段10は、これらのパラメータを用いて、以下の式(2)によって、被測定体Pの上下方向の外径OD
Yを演算する。
OD
Y=(LL
Y0+ΔLL
YU)-(L
YU+L
YL) ・・・(2)
【0031】
そして、演算手段10は、前述のようにして測定(演算)した被測定体Pの搬送速度に基づき、被測定体Pの水平方向の外径ODX及び上下方向の外径ODYを被測定体Pの軸方向位置と紐付ける。
具体的には、本実施形態の演算手段10は、被測定体Pの先端が一対の第1レーザ式外径計1、2の測定位置に到達して、被測定体Pの先端における水平方向の両端位置が一対の第1レーザ式外径計1、2で検出され始めてから(演算手段10が被測定体Pの水平方向の外径ODXを演算し始めてから)の経過時間と、速度センサ9で測定した被測定体Pの搬送速度とを乗算することで、当該経過時間における被測定体Pの軸方向位置(先端からの距離)を演算する。そして、演算手段10は、この演算した被測定体Pの軸方向位置と、当該経過時間において演算した被測定体Pの水平方向の外径ODXとを紐付ける。
同様に、本実施形態の演算手段10は、被測定体Pの先端が一対の第2レーザ式外径計3、4の測定位置に到達して、被測定体Pの先端における上下方向の両端位置が一対の第2レーザ式外径計3、4で検出され始めてから(演算手段10が被測定体Pの上下方向の外径ODYを演算し始めてから)の経過時間と、速度センサ9で測定した被測定体Pの搬送速度とを乗算することで、当該経過時間における被測定体Pの軸方向位置を演算する。そして、演算手段10は、この演算した被測定体Pの軸方向位置と、当該経過時間において演算した被測定体Pの上下方向の外径ODYを紐付ける。
演算手段10は、以上のようにして被測定体Pの軸方向位置と紐付けられた被測定体Pの水平方向の外径ODX及び上下方向の外径ODYを記憶する。
【0032】
以上に説明した本実施形態に係る外径測定装置100によれば、被測定体Pの異なる径方向について測定した外径、具体的には、測定した被測定体Pの水平方向の外径ODX及び上下方向の外径ODYを、被測定体Pの軸方向位置と紐付けることが可能である。
鍛造管の検査工程の搬送ラインでは、被測定体Pの水平方向の外径ODX及び上下方向の外径ODYのうち、いずれか一方が最大外径となり、いずれか他方が最小外径となる場合が大半である。このため、被測定体Pの全周に亘る外径を測定しなくても、被測定体Pの同じ軸方向位置における水平方向の外径ODXと上下方向の外径ODYとの差を両者の平均値で除算することにより、楕円率を精度良く算出可能である。
また、本実施形態に係る外径測定装置100によれば、一対の第1レーザ式外径計1、2の水平方向の離隔距離を調整する第1駆動手段と、一対の第2レーザ式外径計3、4の上下方向の離隔距離を調整する第2駆動手段と、を備えるため、一対の第1レーザ式外径計1、2で被測定体Pの水平方向の両端位置を検出でき、一対の第2レーザ式外径計3、4で被測定体Pの上下方向の両端位置を検出できるように、測定すべき被測定体Pの外径(公称径)に応じて、一対の第1レーザ式外径計1、2の水平方向の離隔距離及び一対の第2レーザ式外径計3、4の上下方向の離隔距離を調整することが可能である。このため、本実施形態の被測定体Pのように、外径が300~900mmの広範囲に亘る鍛造管であっても、水平方向の外径ODX及び上下方向の外径ODYを測定可能である。
【0033】
<校正装置>
次に、外径測定装置100を校正するために用いられる本実施形態に係る校正装置について説明する。
図2は、本実施形態に係る校正装置の概略構成を模式的に示す図である。
図2(a)は外径測定装置100を校正する際の配置状態で示す校正装置の平面図(上下方向(Y方向)から見た図)であり、
図2(b)は外径測定装置100を校正する際の配置状態で示す校正装置の側面図(被測定体Pの搬送方向(Z方向)に直交する水平方向(X方向)から見た図)であり、
図2(c)は外径測定装置100を校正する際の配置状態で示す校正装置の正面図(被測定体Pの搬送方向から見た図)である。
図2に示すように、本実施形態に係る校正装置200は、支持体21と、第1校正用バー22と、第2校正用バー23と、を備える。また、本実施形態に係る校正装置200は、基台24と、支柱25と、を備える。
【0034】
支持体21は、水平方向に延び、外径測定装置100を校正する際に、その長手方向が被測定体Pの搬送方向(Z方向)に合致するように配置される。また、支持体21のX方向の中心位置が、被測定体Pの搬送ラインのX方向の中心位置に合致するように、支持体21は配置される。支持体21は、第1レーザ式外径計1、2と第2レーザ式外径計3、4との離隔距離L1(
図1(a)参照)に応じた長さL3を有する。すなわち、支持体21の長さL3は、第1レーザ式外径計1、2と第2レーザ式外径計3、4との離隔距離L1と同等の値である。
本実施形態の支持体21は、円柱形状であり、その両端部に断面矩形状の切り欠きが形成されている。本実施形態の支持体21は、基台24に立設された一対の支柱25で支持されている。
【0035】
第1校正用バー22は、支持体21の一方の端部(外径測定装置100を校正する際の配置状態では、被測定体Pの搬送方向上流側の端部)に着脱自在に取り付けられ、支持体21の長手方向(Z方向)に直交する水平方向(X方向)に延びる。具体的には、本実施形態の第1校正用バー22は、断面矩形状で、狭幅の(Z方向の寸法が小さい)薄板状部材であり、支持体21の一方の端部に形成された断面矩形状の切り欠きに、遊びを有する状態で嵌め込まれることで、取り付けられている。第1校正用バー22は、遊びを有する状態で支持体21の一方の端部に取り付けられているため、支持体21に対して支持体21の長手方向に直交する水平方向(X方向)に移動可能である。
【0036】
第2校正用バー23は、支持体21の他方の端部(外径測定装置100を校正する際の配置状態では、被測定体Pの搬送方向下流側の端部)に着脱自在に取り付けられ、上下方向(Y方向)に延びる。具体的には、本実施形態の第2校正用バー23は、断面矩形状で、狭幅の(X方向の寸法が小さい)薄板状部材であり、支持体21の他方の端部に形成された断面矩形状の切り欠きに、遊びを有する状態で嵌め込まれることで、取り付けられている。第2校正用バー23は、遊びを有する状態で支持体21の他方の端部に取り付けられているため、支持体21に対して上下方向(Y方向)に移動可能である。なお、自重によって落下しないように、第2校正用バー23は、着脱自在の固定具(図示せず)によって、上下方向の所定位置で支持体21に固定される。第2校正用バー23を上下方向に移動させるときには、固定具は取り外される。
【0037】
本実施形態に係る校正装置200によれば、第1校正用バー22の両端を一対の第1レーザ式外径計1、2で検出し、演算手段10で第1校正用バー22の長さを演算することが可能である。そして、この演算した第1校正用バー22の長さが、真の第1校正用バー22の長さに合致するように、外径測定装置100を校正することが可能である。また、第2校正用バー23の両端を一対の第2レーザ式外径計3、4で検出し、演算手段10で第2校正用バー23の長さを演算することが可能である。そして、この演算した第2校正用バー23の長さが、真の第2校正用バー23の長さに合致するように、外径測定装置100を校正することが可能である。
なお、外径測定装置100の校正としては、例えば、第1レーザ式外径計1、2の受光器1b、2bで受光されたレーザ走査光の走査時間を長さLXL、LXRに換算する際に用いる、走査時間と長さとの対応関係の調整や、第1駆動手段によって一対の第1レーザ式外径計1、2の水平方向の離隔距離を調整する際に第1駆動手段から演算手段10に入力される、一対の第1レーザ式外径計1、2の水平方向の移動量(長さΔLLXL、ΔLLXR)の誤差を補正する補正量の調整など、前述の式(1)によって演算される被測定体Pの水平方向の外径ODXに影響を及ぼすパラメータの調整が行われる。第2レーザ式外径計3、4についても同様である。
【0038】
本実施形態に係る校正装置200によれば、支持体21が、第1レーザ式外径計1、2と第2レーザ式外径計3、4との被測定体Pの搬送方向の離隔距離L1に応じた長さL3を有するため、第1校正用バー22と第2校正用バー23との離隔距離も、第1レーザ式外径計1、2と第2レーザ式外径計3、4との離隔距離L1に応じた距離となる。このため、校正装置200の配置位置を変更することなく、同じ位置に配置された校正装置200を用いて、第1校正用バー22の両端を一対の第1レーザ式外径計1、2で検出すると同時に、第2校正用バー23の両端を一対の第2レーザ式外径計3、4で検出することができる。すなわち、校正装置200の配置位置を変更することなく、一対の第1レーザ式外径計1、2と一対の第2レーザ式外径計3、4とを備えた外径測定装置100を校正することができる。
また、本実施形態に係る校正装置200は、第1校正用バー22及び第2校正用バー23として、狭幅の薄板状部材を用いるため、重量が小さく、持ち運びが容易である。
以上のように、本実施形態に係る校正装置200は、配置位置を変更する必要がなく、持ち運びも容易であるため、外径測定装置100を効率良く校正することが可能である。
【0039】
また、本実施形態に係る校正装置200によれば、第1校正用バー22を移動させることで、一対の第1レーザ式外径計1、2で検出する第1校正用バー22の両端の位置を変更することができる。換言すれば、被測定体Pに生じ得る水平方向の曲がりや搬送中の蛇行を模擬することができる。このため、第1校正用バー22の両端の位置を変更して校正を繰り返すことで、被測定体Pの水平方向の曲がりや蛇行の影響を低減させることが可能である。
同様に、本実施形態に係る校正装置200によれば、第2校正用バー23を移動させることで、一対の第2レーザ式外径計3、4で検出する第2校正用バー23の両端の位置を変更することができる。換言すれば、被測定体Pに生じ得る上下方向の曲がりを模擬することができる。このため、第2校正用バー23の両端の位置を変更して校正を繰り返すことで、被測定体Pの上下方向の曲がりの影響を低減させることが可能である。
【0040】
<外径測定方法(校正ステップ)>
本実施形態に係る外径測定方法は、本実施形態に係る外径測定装置100を用いて被測定体Pの外径を測定する方法であって、本実施形態に係る校正装置200を用いて外径測定装置100を校正する校正ステップと、校正ステップで校正した後の外径測定装置100を用いて被測定体Pの外径を測定する測定ステップと、を有する。
以下、校正ステップについて説明する。
【0041】
図3は、校正ステップを実行している状態を模式的に示す正面図(被測定体Pの搬送方向(Z方向)から見た図)である。
図3(a)に示すように、校正ステップでは、第1校正用バー22及び第2校正用バー23として、被測定体Pの最大外径(本実施形態では900mm)に相当する長さを有するバー(
図3(a)では、最大外径に相当する長さを有する第1校正用バー22を「第1校正用バー22a」として示し、最大外径に相当する長さを有する第2校正用バー23を「第2校正用バー23a」として示している)をそれぞれ支持体21に取り付ける。そして、外径測定装置100の第1レーザ式外径計1、2を用いて測定される第1校正用バー22a及び第2レーザ式外径計3、4を用いて測定される第2校正用バー23aの長さが、真の第1校正用バー22a及び第2校正用バー23aの長さ(本実施形態では900mm)にそれぞれ合致するように、外径測定装置100を校正する。
次に、
図3(b)に示すように、第1校正用バー22a及び第2校正用バー23aを支持体21から取り外した後、第1校正用バー22及び第2校正用バー23として、被測定体Pの最小外径(本実施形態では300mm)に相当する長さを有するバー(
図3(b)では、最小外径に相当する長さを有する第1校正用バー22を「第1校正用バー22b」として示し、最小外径に相当する長さを有する第2校正用バー23を「第2校正用バー23b」として示している)をそれぞれ支持体21に取り付ける。そして、外径測定装置100の第1レーザ式外径計1、2を用いて測定される第1校正用バー22b及び第2レーザ式外径計3、4を用いて測定される第2校正用バー23bの長さが、真の第1校正用バー22b及び第2校正用バー23bの長さ(本実施形態では300mm)にそれぞれ合致するように、外径測定装置100を校正する。
【0042】
なお、上記の説明では、第1校正用バー22a及び第2校正用バー23aを用いて外径測定装置100を校正した後、第1校正用バー22b及び第2校正用バー23bを用いて外径測定装置100を校正する手順について述べたが、これに限るものではなく、第1校正用バー22b及び第2校正用バー23bを用いて外径測定装置100を校正した後、第1校正用バー22a及び第2校正用バー23aを用いて外径測定装置100を校正する手順を採用することも可能である。
【0043】
本実施形態に係る外径測定方法によれば、校正ステップにおいて、被測定体Pの最大外径に相当する長さを有する第1校正用バー22a及び第2校正用バー23aを用いて外径測定装置100を校正すると共に、被測定体Pの最小外径に相当する長さを有する第1校正用バー22b及び第2校正用バー23bを用いて外径測定装置100を校正し、測定ステップにおいて、校正後の外径測定装置100を用いて被測定体Pの外径を測定する。このため、被測定体Pの最小外径から最大外径までの範囲において、精度の良い外径測定が可能である。
【0044】
図4は、校正後の本実施形態に係る外径測定装置100を用いた測定結果の一例を示す図である。
図4(a)は被測定体P(公称径318.5mm)の水平方向の外径OD
Xを測定した結果の一例であり、
図4(b)は
図4(a)と同じ被測定体Pの上下方向の外径OD
Yを測定した結果の一例であり、
図4(c)は第1校正用バー22b及び第2校正用バー23bの長さ(真の長さ300mm)を測定した結果の一例である。
【0045】
図4(a)には、被測定体Pの先端からの各軸方向位置における、外径OD
Xの測定値を「○」で、誤差(測定器具を用いて手動で測定した外径との差)を「□」でプロットしている。また、
図4(b)には、被測定体Pの先端からの各軸方向位置における、外径OD
Yの測定値を「○」で、誤差(測定器具を用いて手動で測定した外径との差)を「■」でプロットしている。
図4(a)及び
図4(b)から分かるように、本実施形態に係る外径測定装置100を用いれば、誤差は±0.15mm以内であり、被測定体Pの外径を精度良く測定できていることが分かる。
【0046】
図4(c)の横軸は、第1校正用バー22b及び第2校正用バー23bの所定の基準位置からのずれ量を示す。第1校正用バー22bについては、水平方向(X方向)のずれ量を、第2校正用バー23bについては、上下方向(Y方向)のずれ量を意味する。
図4(c)には、各ずれ量だけずらした場合における、第1校正用バー22bの長さ測定値の誤差(真の長さ300mmとの差)を「□」で、第2校正用バー23bの長さ測定値の誤差(真の長さ300mmとの差)を「■」で、プロットしている。
図4(c)から分かるように、本実施形態に係る外径測定装置100を用いれば、誤差は±0.1mm以内であり、たとえ被測定体Pに、基準位置から±30mm程度の水平方向又は上下方向の曲がりや搬送中の蛇行が生じていても、被測定体Pの外径を精度良く測定できることが分かる。
【符号の説明】
【0047】
1、2・・・第1レーザ式外径計
3、4・・・第2レーザ式外径計
5、6・・・アーム(第1駆動手段)
7、8・・・アーム(第2駆動手段)
9・・・速度センサ
10・・・演算手段
100・・・外径測定装置
200・・・校正装置
P・・・被測定体