(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045559
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】誘導システムおよび誘導方法
(51)【国際特許分類】
B64C 39/02 20060101AFI20230327BHJP
B64C 13/20 20060101ALI20230327BHJP
B64F 1/36 20170101ALI20230327BHJP
F42C 13/00 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
B64C39/02
B64C13/20 A
B64F1/36
F42C13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154053
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蜂須 裕之
(57)【要約】
【課題】起爆用飛翔体のコストを低減できる誘導システムおよび誘導方法を提供する。
【解決手段】起爆装置を搭載した起爆用飛翔体、および誘導装置を備える。誘導装置は、飛来する外部飛翔体に対し上記起爆用飛翔体が会合し得る位置を予測し、その予測位置へ上記起爆用飛翔体を飛行させ、その起爆用飛翔体が上記外部飛翔体に接近した際に上記起爆装置を作動させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
起爆装置を搭載した起爆用飛翔体と、
飛来する外部飛翔体に対し前記起爆用飛翔体が会合し得る位置を予測し、その予測位置へ前記起爆用飛翔体を飛行させ、その起爆用飛翔体が前記外部飛翔体に接近した際に前記起爆装置を作動させる誘導装置と、
を備える誘導システム。
【請求項2】
前記誘導装置は、
観測用の電波を放射しその電波の反射波を受けることにより前記外部飛翔体および前記起爆用飛翔体の位置および速度を観測し、この観測結果および前記起爆用飛翔体の飛行特性に基づいて前記起爆用飛翔体が前記外部飛翔体に会合し得る位置を予測する第1制御手段と、
前記第1観測手段の予測位置へ前記起爆用飛翔体を飛行させるための誘導情報をその起爆用飛翔体に送出する第2制御手段と、
前記観測用の電波を放射しその電波の反射波を受けることにより前記外部飛翔体および前記起爆用飛翔体の位置を観測し、この観測により前記起爆用飛翔体が前記外部飛翔体に接近した際に、前記起爆装置を作動させるための起爆情報を前記起爆用飛翔体に送出する第3制御手段と、
を含む請求項1に記載の誘導システム。
【請求項3】
前記起爆用飛翔体は、
飛行用の推進機構と、
前記誘導装置から送出される前記誘導情報に従い、当該起爆用飛翔体が前記予測位置へ飛行するよう前記推進機構を制御するとともに、前記誘導装置から送出される起爆情報に応じて前記起爆装置を作動させる制御手段と、
を含む請求項2に記載の誘導システム。
【請求項4】
前記第1観測手段は、観測用の電波を放射しその電波の反射波を受けることにより前記外部飛翔体および前記起爆用飛翔体の位置および速度を観測し、この観測により捕らえた外部飛翔体および起爆用飛翔体のうち飛来が最新の1つの外部飛翔体とその最新の外部飛翔体に最も近い位置に存する1つの起爆用飛翔体とを会合すべきペアとして割当て、このペアとして割当てた起爆用飛翔体が同ペアの外部飛翔体に会合し得る位置を前記観測結果および前記起爆用飛翔体の飛行特性に基づいて予測し、
前記第2制御手段は、前記ペアとして割当てた起爆用飛翔体が前記第1観測手段の予測位置へ飛行するために必要な誘導情報を同ペアの起爆用飛翔体に送出し、
前記第3制御手段は、前記観測用の電波を放射しその電波の反射波を受けることにより前記外部飛翔体および前記起爆用飛翔体の位置を観測し、この観測により前記ペアとして割当てた起爆用飛翔体が同ペアの外部飛翔体に接近した際に、前記起爆装置を作動させるための起爆情報を同ペアの起爆用飛翔体に送出する、
請求項2または請求項3に記載の誘導システム。
【請求項5】
飛来する外部飛翔体に対し起爆装置を搭載した起爆用飛翔体が会合し得る位置を予測し、その予測位置へ前記起爆用飛翔体を飛行させ、その起爆用飛翔体が前記外部飛翔体に接近した際に前記起爆装置を作動させる、
誘導方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、予め定められた空域に飛来する外部飛翔体から空域内の安全を守る誘導システムおよび誘導方法に関する。
【背景技術】
【0002】
予め定められた空域に飛来する外部飛翔体から空域内の安全を守る処置として、起爆装置を搭載した起爆用飛翔体を外部飛翔体の飛来に合わせて地上から発射したり、事前に起爆用飛翔体を空中に待機させておくなどの処置がある。起爆用飛翔体は、GPS受信装置や高精度INS装置等で当該飛行位置を認識しながら周辺捜索用のセンサで外部飛翔体を捕らえ、捕らえた外部飛翔体に向かって飛行し、外部飛翔体に接近したところで起爆装置を作動する。この起爆装置の作動により起爆用飛翔体が爆発し、その爆発によって外部飛翔体を破壊することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】RADAR HANDBOOK Third Edition McGraw Hill Merrill Skolnik Chapter8 Pulse Compression Radar
【非特許文献2】スペクトラム拡散システム 横山光雄 科学技術出版社 第4章 情報伝達のための変復調理論と符合理論
【非特許文献3】レーダ技術 吉田孝監修 社団法人電子通信情報学会 第10章 追尾レーダ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
起爆用飛翔体は、飛行のための推進装置および起爆装置を備えるほかに、外部飛翔体を捕らえる機器、捕らえた外部飛翔体の動きを見ながらその外部飛翔体に向けて飛行を制御する機器など、種々の高精度の機器を搭載しており、そのためコストが高いという課題がある。
【0005】
本発明の実施形態の目的は、起爆用飛翔体のコストを低減できる誘導システムおよび誘導方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の誘導システムは、起爆装置を搭載した起爆用飛翔体と;飛来する外部飛翔体に対し前記起爆用飛翔体が会合し得る位置を予測し、その予測位置へ前記起爆用飛翔体を飛行させ、その起爆用飛翔体が前記外部飛翔体に接近した際に前記起爆装置を作動させる誘導装置と;を備える。
【0007】
本発明の実施形態の誘導方法は、飛来する外部飛翔体に対し起爆装置を搭載した起爆用飛翔体が会合し得る位置を予測し、その予測位置へ前記起爆用飛翔体を飛行させ、その起爆用飛翔体が前記外部飛翔体に接近した際に前記起爆装置を作動させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態の全体的な構成を示す図。
【
図2】
図2は、一実施形態の誘導指令期間における観測形態の動作を示す図。
【
図3】
図3は、一実施形態の誘導指令期間における指令形態の動作を示す図。
【
図4】
図4は、一実施形態の起爆指令期間における観測形態の動作を示す図。
【
図5】
図5は、一実施形態の起爆指令期間における指令形態の動作を示す図。
【
図6】
図6は、一実施形態における電波の送信状況を示す図。
【
図7】
図7は、一実施形態における起爆用飛翔体および外部飛翔体の要部の構成を示す図。
【
図8】
図8は、一実施形態における地上誘導装置の制御を示すフローチャート。
【
図9】
図9は、
図8における割当毎処理を示すフローチャート。
【
図10】
図10は、一実施形態における起爆用飛翔体の制御を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態の誘導システムについて図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、地上から発進して飛行しかつ長時間の滞空が可能な起爆用飛翔体1、および地上に設置され起爆用飛翔体1を電波送受信によって誘導する地上誘導装置(誘導装置)2により、予め定められた空域に飛来する小型無人機等の外部飛翔体3から空域内の安全を確保する誘導システムが構成されている。
【0010】
起爆用飛翔体1は、飛行用のプロペラ及びそのプロペラを駆動するモータ等を含む推進機構1a、地上誘導装置2から送出される後述の電波Dを受信し復調することによりその電波Dに重畳されている情報を抽出する受信装置1b、当該起爆用飛翔体1の爆破用の爆薬を含む起爆装置1c、受信装置1bで抽出される情報に応じて推進機構1aおよび起爆装置1cを制御する制御装置1dを搭載している。制御装置1dは、具体的には、受信装置1bで抽出される誘導情報に従い、当該起爆用飛翔体1が外部飛翔体3との会合位置へ飛行するよう慣性航法により推進機構1aを制御するとともに、受信装置1bで抽出される起爆情報に応じて起爆装置1cを作動させる。
【0011】
地上誘導装置2は、起爆用飛翔体1が外部飛翔体3に会合し得る位置(会合位置)を予測し、その予測位置へ起爆用飛翔体1を飛行させ、その起爆用飛翔体1が外部飛翔体3に接近した際に起爆用飛翔体1の起爆装置1cを作動させる制御を実行するもので、主要な構成として第1制御部(第1制御手段)2a、第2制御部(第2制御手段)2b、第3制御部(第3制御手段)2cを含む。
【0012】
第1制御部2aは、観測用の電波Aを上空に放射しその電波Aの起爆用飛翔体1からの反射波Bおよび外部飛翔体3からの反射波Cを受けることにより、外部飛翔体3および起爆用飛翔体1の位置および速度を観測し、この観測結果および起爆用飛翔体1の飛行特性に基づいて起爆用飛翔体1が外部飛翔体3に会合し得る位置(会合位置X)を予測する。起爆用飛翔体1の飛行特性は、地上誘導装置2の内部メモリに記憶されている。なお、第1観測部2aは、起爆用飛翔体1およびその位置をその起爆用飛翔体1の発射時から電波Aの放射によって逐次に観測しながら、その観測履歴の参照により起爆用飛翔体1と外部飛翔体3とを識別する。
【0013】
第2制御部2bは、第1制御部2aの予測位置(会合位置X)へ起爆用飛翔体1を飛行させるための誘導情報を情報伝送用の電波Dに重畳してその起爆用飛翔体1に向け送出する。
【0014】
第3制御部2cは、上記誘導情報の送出後、観測用の電波Aを上空に放射しその電波の起爆用飛翔体1からの反射波Bおよび外部飛翔体3からの反射波Cを受けることにより、起爆用飛翔体1および外部飛翔体3の位置を観測し、この観測により起爆用飛翔体1が外部飛翔体3に接近した際に、起爆用飛翔体1の起爆装置1cを作動させるための起爆情報を情報伝送用の電波Dに重畳してその起爆用飛翔体1に向け送出する。
【0015】
以下、地上誘導装置2の動作形態を
図2~
図5により説明する。
まず、
図2および
図3は、地上誘導装置2の誘導指令期間の動作を示している。地上誘導装置2は、誘導指令期間において
図2の「観測形態」と
図3の「指令形態(誘導指令)」の2つの動作形態を取る。
【0016】
図2の「観測形態」において、地上誘導装置2は、電波Aを放射し起爆用飛翔体1および外部飛翔体3からの反射波B,Cを受信することで、起爆用飛翔体1および外部飛翔体3の位置および速度等を観測する。ここでの電波Aは、一般に使用されているパルス圧縮等の変調を実施したパルス形態(非特許文献1)を採用している。
【0017】
次に
図3の「指令形態」において、地上誘導装置2は、誘導情報を重畳した電波Dを起爆用飛翔体1に向け送出する。ここでの電波Dは、一般に使用されるFSK(周波数偏移変調)あるいはPSK(位相偏移変調)による直接拡散方式等(非特許文献2)により実現する。
【0018】
この間、起爆用飛翔体1は電波Dの受信の有無を常に判定しており、受信ありの場合にそれを復調することにより、会合位置Xが含まれる誘導情報を取得する。その後、起爆用飛翔体1は、その誘導情報に従って会合位置Xに向けての飛行を開始する。
【0019】
次に、
図4および
図5は、地上誘導装置2の起爆指令期間の動作を示している。地上誘導装置2は、起爆指令期間において
図4の「観測形態」と
図5の「指令形態(起爆指令)」の2つの動作形態を取る。
【0020】
地上誘導装置2は、
図3の「指令形態(誘導指令)」の動作以降、
図4の「観測形態」の動作となり、電波Aを放射し起爆用飛翔体1および外部飛翔体3からの反射波B,Cを受信することで、起爆用飛翔体1および外部飛翔体3の位置および速度等を再び観測する。ここでの電波Aは、誘導指令期間と同様に、パルス圧縮等の変調を実施したパルス形態とする。
【0021】
次に
図5の「指令形態」の動作では、地上誘導装置2は、起爆情報を重畳した電波Dを起爆用飛翔体1に向け送出する。ここでの電波Dは、誘導指令期間と同様に、各種情報が伝送可能なFSKまたはPSKによる直接拡散方式等により実現する。
【0022】
起爆用飛翔体1は誘導指令期間と同様に電波Dの受信の有無を常に判定しており、受信ありの場合にそれを復調することにより、起爆情報を取得する。起爆情報である場合には、所定の時間を経て起爆装置1cを作動させる。
【0023】
図6は、誘導指令期間と起爆指令期間における電波の送信状況を示している。地上誘導装置2は、誘導指令期間において、起爆用飛翔体1および外部飛翔体3を観測するための電波Aを送出する。
図6の例では、観測を連続的に実施しているが、断続的な実施でもよい。地上誘導装置2は、起爆用飛翔体1および外部飛翔体3の観測結果に基づく演算によって会合位置Xを予測した段階で、その会合位置Xが含まれる誘導情報を電波Dに重畳して起爆用飛翔体1に伝送する。
【0024】
起爆用飛翔体1は、地上誘導装置2からの電波Dの受信の有無を常に判定しており、受信ありの場合にそれを復調することにより、会合位置Xが含まれる誘導情報を取得する。これ以降、起爆用飛翔体1は、その誘導情報に従って会合位置Xに向けての飛行を開始する。
【0025】
地上誘導装置2は、誘導情報を送出した後、引き続き起爆用飛翔体1および外部飛翔体3の観測を継続する。
図6の例では、観測を連続的に実施しているが、断続的な実施でもよい。地上誘導装置2は、観測中の起爆用飛翔体1が外部飛翔体3に接近したとき、起爆情報を重畳した電波Dを起爆用飛翔体1に向け送出する。
【0026】
起爆用飛翔体1は、誘導情報を受信した以降も、電波Dの受信の有無の判定を継続している。再び、受信ありの場合にそれを復調することにより、起爆情報を取得する。これ以降、起爆用飛翔体1は、起爆情報に含まれる起爆時間が経過した時点で起爆装置1cを作動させる。
【0027】
図6の例では、誘導情報の送出後に起爆情報を送出しているが、誘導情報の送出後に起爆情報を送出することなく引き続き新たな誘導情報を送出して、起爆用飛翔体1を別の目標へ向け飛行させることも可能である。
【0028】
なお、実際の運用では、複数の外部飛翔体3の飛来に対処し、複数の起爆用飛翔体1を上空に待機させる場合がある。
この点を考慮し、地上誘導装置2の第1制御部2a,第2制御部2b,第3制御部2cは次のようなペア割当処置を含む。
【0029】
第1制御部2aは、観測用の電波Aを上空に放射しその電波の起爆用飛翔体1からの反射波Bおよび外部飛翔体3からの反射波Cを受けることにより、外部飛翔体3および起爆用飛翔体1の位置および速度を観測し、この観測により捕らえた外部飛翔体3および起爆用飛翔体1のうち飛来が最新の1つの外部飛翔体3とその最新の外部飛翔体3に最も近い位置に存する1つの起爆用飛翔体とを会合すべきペアとして割当て(ペアリング)、このペアとして割当てた起爆用飛翔体1が同ペアの外部飛翔体3に会合し得る位置を上記観測結果(位置・速度)および起爆用飛翔体1の飛行特性に基づいて予測する。なお、第1観測部2aは、複数の起爆用飛翔体1およびその位置をその各起爆用飛翔体1の発射時から電波Aの放射によって逐次に観測するとともに、飛来する複数の外部飛翔体3およびその位置をその各外部飛翔体3の飛来時から電波Aの放射によって逐次に観測し、これら観測履歴の参照により各起爆用飛翔体1および各外部飛翔体3を個別に識別する。
【0030】
第2制御部2bは、上記ペアとして割当てた起爆用飛翔体1が第1制御部2aの予測位置(会合位置X)へ飛行するために必要な誘導情報を同ペアの起爆用飛翔体1に向け情報伝送用の電波Dにより送出する。
【0031】
第3制御部2cは、上記誘導情報の送出後、観測用の電波Aを放射しその電波の起爆用飛翔体1からの反射波Bおよび外部飛翔体3からの反射波Cを受けることにより、起爆用飛翔体1および外部飛翔体3の位置を観測し、この観測により上記ペアとして割当てた起爆用飛翔体1が同ペアの外部飛翔体3に接近した際に、起爆用飛翔体1の起爆装置1cを作動させるための起爆情報を同ペアの起爆用飛翔体1に向け情報伝送用の電波Dにより送出する。
【0032】
このように、各起爆用飛翔体1と各外部飛翔体3とを1つずつ会合すべきペアとして割当てた場合でも、各起爆用飛翔体1および地上誘導装置2は上記同様の動作を実行する。
【0033】
起爆用飛翔体1および地上誘導装置2の要部の構成を
図7に示している。
地上誘導装置2は、電波A,Dを放射する送信アンテナ21,起爆用飛翔体1および外部飛翔体3からの反射波B,Cを受信する受信アンテナ22、この受信アンテナ22の受信信号を周波数変換する周波数変換器23、上記第1制御部2a,第2制御部2b,第3制御部2cを含み周波数変換器23を経た受信信号を取込んで第1制御部2a,第2制御部2b,第3制御部2cによる一連の処理を実行するコントローラ(信号処理器ともいう)24、このコントローラ24で生成される誘導情報および起爆情報を変調する情報変調器25、この情報変調器25で変調された誘導情報および起爆情報を拡散変調する拡散変調器26、観測用信号を生成する観測変調器27、この拡散変調器26および観測変調器27の出力のいずれか一方をコントローラ24の切換指示に応じて選択出力する切換器28、この切換器28の出力を電波Aの送信用信号に周波数変換しそれを送信アンテナ21に供給する周波数変換器29などを含む。
【0034】
地上誘導装置2が「指令形態」の動作、すなわち電波Dを起爆用飛翔体1に送出するときには、コントローラ24は、電波送受信系の切換器28に(指令)側への切換を指示し、誘導情報や起爆情報を情報変調器25に出力する。誘導情報や起爆情報はFSK等により変調され、引き続き、拡散変調器26で拡散コードによる変調を実施される(非特許文献2)。その後、この変調信号は切換器28を経て、周波数変換器29で電波送信のための周波数に変換された後、送信アンテナ21から電波Dとして起爆用飛翔体1に向けて送出される。
【0035】
起爆用飛翔体1は、地上誘導装置2から送出される電波Dを受信する受信アンテナ11、この受信アンテナ11の受信信号を処理する受信装置1b、この受信装置1bで処理された受信信号を取込んで推進機構1aおよび起爆装置1cを制御する制御装置1dなどを含む。受信装置1bは、受信アンテナ11の受信信号を周波数変換する周波数変換器12、この周波数変換器12の出力信号を拡散復調しかつ周波数変換器12の出力信号から電波Dの受信の有無を判定する拡散復調器13、この拡散復調器13の復調信号から誘導情報や起爆情報を抽出する情報復調器14を含む。
【0036】
起爆用飛翔体1では、受信アンテナ11で電波Dを受信し、その受信信号を周波数変換器12と拡散変調器13で復調する。電波Dを受信したときには、受信判定「有」が拡散変調器13から制御装置1dに知らされるとともに、情報復調器14で抽出される誘導情報や起爆情報が制御装置1dに供給される。制御装置1dは、誘導情報や起爆情報に応じた処理を実行する。具体的には、誘導情報である場合に会合位置Xに向けた飛行ができるよう推進機構1aを制御し、起爆情報である場合に起爆装置1cを作動させる。
【0037】
一方、地上誘導装置2が「観測形態」の動作、すなわち電波Aを放射して起爆用飛翔体1および外部飛翔体3を観測するときには、コントローラ24は、電波送受信系の切換器28に(観測)側への切換を指示する。このとき、観測変調器27によりパルス圧縮等(非特許文献1)の波形整形した信号を生成し、それを切換器28および周波数変換器29を介して送信アンテナ21から電波Aとして放射する。
【0038】
電波Aの放射後、起爆用飛翔体1および外部飛翔体3から反射波B,Cが受信アンテナ22で受信され、その受信信号が周波数変換器23を経てコントローラ24へ供給される。コントローラ24では、起爆用飛翔体1および外部飛翔体3の観測、誘導情報の送出、起爆情報の送出に向けた各種処理を実行する。
【0039】
このとき起爆用飛翔体1では、拡散変調器13において受信判定結果“無”を制御装置1dに知らせ、新たな動作は開始しない。
【0040】
図8のフローチャートは、地上誘導装置2のコントローラ24が実行する制御を示している。この制御には、S1からS4までの割当登録段階の処理、およびS5からS8までの割当処理段階の処理がある。
【0041】
割当登録段階のうち、捜索観測処理(S1)においては、コントローラ24は、システム系統を観測形態に設定して、指定された空域内の観測を実施して、複数の起爆用飛翔体1および複数の外部飛翔体3の観測情報を得る。観測にあたって、コントローラ24は、一般的なTWS等の手法(非特許文献3)により、すでに捕らえている起爆用飛翔体1および外部飛翔体3の再観測を実施するとともに、新たな外部飛翔体3の観測も実施する。
【0042】
この観測で新規の外部飛翔体3を捕らえた場合(S2の新規あり)、コントローラ24は、飛行体割当処理(S3)および割当登録処理(S4)において、待機中の起爆用飛翔体1の中から新規の外部飛翔体3への会合に適した起爆用飛翔体1を選定し、選定した起爆用飛翔体1および新規の外部飛翔体3を互いに会合すべきペアとして割当て、それを内部メモリに設定している割当テーブル24aに登録する。新規の外部飛翔体3への会合に適した起爆用飛翔体1として、例えば、新規の外部飛翔体3との距離が最も近い起爆用飛翔体1を選定する。
【0043】
次に、割当処理段階において、コントローラ24は、割当選択/更新処理(S5)において割当テーブル24aに登録されている起爆用飛翔体1と外部飛翔体3との各割当ペアを順次選択し、続く割当毎処理処理(S6)において各割当ペア毎に誘導情報の設定や情報送出の要否判定等の処理を実施して、その処理結果を割当テーブル24aに設定する。
【0044】
割当テーブル24aに登録されている全ての割当ペアについての処理が終了したとき(S7の終了)、コントローラ24は、指令送出処理(S8)において、ハードウェア系統を指令形態に切り換えて、割当テーブル24aに情報送出要の指定がある割当ペアについて、順次、起爆用飛翔体1に向けた情報の送出を実施する。
【0045】
図9は、上記割当毎処理(S6)の内容を示している。
まず、割当ペア情報取込処理(S11)において、コントローラ24は、割当テーブル24aから、処理対象として選択した割当ペアに関する情報を取込む。取込む情報としては、割当ペアとなっている起爆用飛翔体1と外部飛翔体3との位置や速度等の観測諸元と、情報送出の完了/未了を示すフラグ等である。このフラグには、誘導情報送出の完了/未了フラグおよび起爆情報送出の完了/未了フラグがある。
【0046】
コントローラ24は、起爆情報送出の完了/未了フラグの判定処理(S12)において、送出が“完了”の場合、選択した割当ペアに対して起爆情報が送出済みであるものとして、この割当ペアについての処理を終了するべく、割当消去処理(S12)において割当テーブル24a内の当該割当ペアの登録を消去する。
【0047】
コントローラ24は、起爆情報送出の完了/未了フラグの判定処理(S12)において、送出が“未了”で、かつ誘導情報送出の完了/未了フラグの判定処理(S14)において送出が“未了”の場合、会合位置予測処理(S15)において、起爆用飛翔体1および外部飛翔体3の観測結果と起爆用飛翔体1の飛行特性等を使用する演算により起爆用飛翔体1が外部飛翔体3に会合すべき会合位置Xを予測する。続いて、コントローラ24は、誘導情報設定処理(S16)において、起爆用飛翔体1および外部飛翔体3の観測結果と上記予測した会合位置X等を誘導情報としてまとめ、その誘導情報を割当テーブル24aに設定する。この後、コントローラ24は、完了設定処理(S17)において誘導情報送出の完了/未了フラグを“完了”に設定した上で、最後に、情報送出指定処理(S18)において、割当テーブル24aにおける情報送出要否を”要”と設定して、当該割込ペアの処理を終了する。
【0048】
また、コントローラ24は、誘導情報の完了/未了フラグの判定処理(S14)において、送出が“完了”の場合、相対位置算出処理(S19)において、起爆用飛翔体1および外部飛翔体3の観測結果から起爆用飛翔体1と外部飛翔体3の相対位置を算出し、続いての起爆判定処理(S20)において、相対位置が起爆装置1cの起爆有効範囲内の接近状態にあるか否かを判定する。起爆有効範囲内の接近状態にある場合、起爆情報設定処理(S21)において起爆情報を設定する。この後、コントローラ24は、完了設定処理(S22)において、起爆情報送出の完了/未了フラグを”完了”に設定した上で、最後に、情報送出指定(S18)において、割当テーブル24aにおける情報送出要否を”要”と設定して、当該割込ペアの処理を終了する。
【0049】
なお、上記起爆判定(S20)において、起爆有効範囲外であると判定された場合、コントローラ24は、起爆情報の送出に関する処理を実行せずに、当該割当ペアの処理を終了する。
【0050】
地上誘導装置2が起爆用飛翔体1に向けて送出する情報として、「飛行体番号」「情報種別」「誘導情報」「起爆情報」がある。「飛行体番号」は、起爆用飛翔体1において情報を受信した際に、どの起爆用飛翔体1で使用する情報であるかを判定するための識別情報である。次に、「情報種別」は、起爆用飛翔体1において受信した情報が誘導情報であるか起爆情報であるかを示すコードデータである。コードデータが誘導情報であることを示す場合は、「誘導情報」の使用を指定し、コードデータが起爆情報であることを示す場合は「起爆情報」を使用する。
【0051】
「誘導情報」は、当該起爆用飛翔体1が対処するべき外部飛翔体3の位置、速度等の目標諸元を含むとともに、当該起爆用飛翔体1の位置、速度等の飛行体諸元も含む。これは、起爆用飛翔体1が長時間にわたって滞空、待機していた場合には、起爆用飛翔体1の搭載する慣性装置等では位置誤差等が累積している可能性があり、それを回避するための情報である。すなわち、地上誘導装置2が観測した外部飛翔体3に関する目標諸元と、同じ座標系でほぼ同じ観測タイミングでの最新の飛行体諸元を送出することで、慣性装置による累積誤差の影響を回避して、会合位置Xへの精度の高い飛行を実現する。
「起爆情報」は、起爆装置1cを作動させるまでの起爆時間を含む。
【0052】
図10のフローチャートは、起爆用飛翔体1の制御装置1dが実行する処理を示している。
まず、制御装置1dは、起爆フラグ判定処理(S31)において起爆フラグの内容を判定する。起爆フラグは、起爆情報を受信するまでは、あらかじめ“off”に設定されている。起爆フラグ判定処理(S31)において起爆フラグが“off”の場合、制御装置1dは、受信判定入力処理(S32)において拡散復調器13からの受信判定結果を入力し、その受信判定結果の内容を受信有無判定処理(S33)において判定する。判定結果が“有”の場合、制御装置1dは、受信情報入力処理(S34)において情報復調器13の復調信号から情報を抽出してそれを入力とする。
【0053】
次の処理判定処理(S35)において、制御装置1dは、入力情報に含まれる「飛行体番号」が当該起爆用飛翔体1に相当する場合に、同じ入力情報に含まれる「情報種別」に応じた処理へ移行する。具体的には、「情報種別」が誘導情報を指定している場合には、誘導情報取得処理(S36)において「誘導情報」を取得して、すでに設定されている「誘導情報」を更新する。「情報種別」が起爆情報を指定している場合、制御装置1dは、起爆情報取得処理(S37)において「起爆情報」を取得した後、起爆フラグ設定処理(S38)において起爆フラグの設定を“off”から“on”に変更する。
【0054】
上記誘導情報取得処理(S36)または上記起爆情報取得処理(S37)および上記起爆フラグ設定処理(S38)を経た後、制御装置1dは、制御信号生成処理(S39)において、新たに取得した誘導情報に基づく演算により推進機構1aに対する制御信号を生成し、生成した制御信号を続く制御信号出力処理(S40)において推進機構1aへ出力する。これにより飛行が継続される。
【0055】
一方、上記処理判定処理(S35)において、入力情報に含まれる「飛行体番号」が当該起爆用飛翔体1のものでない場合、制御装置1dは、同じ入力情報に含まれる情報の更新は実施せずに、上記制御信号生成処理(S39)において、すでに取得している誘導情報に基づく演算により推進機構1aに対する制御信号を生成し、生成した制御信号を制御信号出力処理(S39)において推進機構1aへ出力する。
【0056】
同様に、上記受信有無判定処理(S33)において、判定結果が“無”の場合にも、制御装置1dは、入力情報に含まれる情報の更新は実施せずに、上記制御信号生成処理(S39)において、すでに取得している誘導情報に基づく演算により推進機構1aに対する制御信号を生成し、生成した制御信号を制御信号出力処理(S39)において推進機構1aへ出力する。
【0057】
上記起爆フラグ判定処理(S31)において、起爆フラグが“on”の場合、制御装置1dは、起爆情報をすでに受信したものとして、起爆タイマ処理(S41)において、「起爆情報」に含まれている起爆時間のカウントダウンを開始する。カウントダウンは制御装置1dの処理の更新サイクルを基準に実施する。続く起爆判定(S42)において、カウントダウンの結果が正値の場合、制御装置1dは、上記制御信号生成処理(S39)に移行し、飛行を継続する。そして、起爆判定処理(S42)においてカウントダウンの結果が0に達した時点で、制御装置1dは、起爆信号出力処理(S43)において起爆装置1cを作動させるための起爆信号を出力する。
【0058】
以上のように、空中に待機する起爆用飛翔体1および飛来する外部飛翔体3を地上誘導装置2で逐次に捕らえ、外部飛翔体3に対して起爆用飛翔体1が会合し得る位置Xを地上誘導装置2で予測し、予測した会合位置Xへ向け起爆用飛翔体1が飛行するよう地上誘導装置2から起爆用飛翔体1に誘導情報を送り、その起爆用飛翔体1が目標の外部飛翔体3に接近した際にそれを地上誘導装置2で捕らえてその地上誘導装置2から起爆用飛翔体1に起爆情報を送り、その起爆情報によって起爆用飛翔体1の起爆装置1cを作動させる構成としたので、外部飛翔体3を捕らえる機器を起爆用飛翔体1に搭載すること必要がなくなり、捕らえた外部飛翔体3の動きを見ながらその外部飛翔体3に向けて飛行を制御する機器を起爆用飛翔体1に搭載する必要もなくなる。これにより、起爆用飛翔体1のコストを低減できる。
【0059】
複数の起爆用飛翔体1および複数の外部飛翔体3のうち、飛来が最新の1つの外部飛翔体3とその最新の外部飛翔体3に最も近い位置に存する1つの起爆用飛翔体1とを会合すべきペアとして割当てるので、1つの外部飛翔体3に向け複数の起爆用飛翔体1が向かって飛行したり、1つの外部飛翔体3に対して複数の起爆用飛翔体1が会合するなどの不具合は生じない。これにより、誘導システムとしての高い安全性および信頼性を確保することができる。
【符号の説明】
【0060】
1…起爆用飛翔体、1a…推進機構、1b…受信装置、1c…起爆装置、1d…制御装置、2…地上誘導装置(誘導装置)、2a…第1制御部、1b…第2制御部、1c…第3制御部、3…外部飛翔体。