(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004557
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】建造物の解体方法
(51)【国際特許分類】
E04G 23/08 20060101AFI20230110BHJP
【FI】
E04G23/08 Z
E04G23/08 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106329
(22)【出願日】2021-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】321006648
【氏名又は名称】株式会社シンワ
(74)【代理人】
【識別番号】100108947
【弁理士】
【氏名又は名称】涌井 謙一
(74)【代理人】
【識別番号】100117086
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典弘
(74)【代理人】
【識別番号】100124383
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一永
(74)【代理人】
【識別番号】100173392
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 貴宏
(74)【代理人】
【識別番号】100189290
【弁理士】
【氏名又は名称】三井 直人
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 和人
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176AA07
2E176DD56
2E176DD61
(57)【要約】
【課題】 超高層ビルの解体で、平面上で内部と外周部を別々に解体することにより、工期を短縮し、かつ安全に作業をする。
【解決手段】
解体する建築物50のフロアを、外周部EXと内部INとに区分けする。解体用の重機10を入れ、外周部EXを残置して、内部INのみを順次解体する。(n)Fの外周部の外床梁24Baが露出したならば、外床梁24Baに仮床ユニット30を取り付ける(a)。nFの外柱22A、上方階の外梁24Baにクレーンのワイヤー3を固定して、nFの外柱22Aを柱脚部で切断し、内部INでは下方に解体を進める(b)。分離されたnFの外柱22A、上方階の外梁24Baをクレーンで吊り上げて(c)、地上に降ろす。以下、下方階に仮床ユニット30を移動させながら、外周部EXを解体する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
解体する建築物のフロアを、平面で「外周部」と「内部」とに区分けして、以下のように内部の解体と外周部の解体を並行して施工をすることを特徴とする建築物の解体方法。
(1) (n)Fに解体用の重機を入れ、(n)Fの上方階の内部のみを外周部に先行して解体し、重機を(n-1)Fに降ろして、同様に(n-1)Fの上方階の内部のみを解体する。以下、重機を降ろしながら順次内部を解体する。
(2) (n)Fの外周部の梁が露出したならば、前記(n)Fの外周部の梁に仮床ユニットを設置して、前記仮床ユニット上からの作業で、(n)Fの上方の外周部を解体する。続いて(n-1)Fの外周部の梁に仮床ユニットを設置して、前記仮床ユニット上からの作業で、(n-1)Fの上方の外周部を解体し、以下、仮床ユニットを降ろしながら上方の階の外周部を解体する。
【請求項2】
解体する建築物のフロアを、平面で「外周部」と「内部」とに区分けて、以下のように内部の解体と外周部の解体を並行して施工をすることを特徴とする建築物の解体方法。
(1)最外周壁付近に配置される外柱の内部側に接続された外梁の中間部で、外周部と内部を区画する。
(2) (n)Fに解体用の重機を入れ、当該階の上方階の内部のみを解体し、当該階の前記外周部の最外周璧、外柱及び外梁の外周部側を残置する。次に、前記重機を(n-1)Fに降ろして、当該階の上方階の内部のみを解体し、当該階の前記外周部の最外周璧、外柱及び外梁の外周部側を残置して、以下、重機を降ろしながら順次内部を解体する。
(3) (n)Fの外梁の外周部側が露出したならば、当該階の外梁の外周部側に仮床ユニットを設置して、前記仮床ユニット上からの作業で、当該階の上方の外周部を解体する。続いて(n-1)Fの外梁の外周部側に仮床ユニットを設置して、前記仮床ユニット上からの作業で、当該階の上方の外周部を解体し、以下、仮床ユニットを降ろしながら上方の階の外周部を解体する。
【請求項3】
解体する建築物のフロアを、平面で「外周部」と「内部」とに区分けて、以下のように内部の解体と外周部の解体を並行して施工をすることを特徴とする建築物の解体方法。
(1)最外周壁付近に配置される外柱の内部側に接続された外梁の中間部で、外周部と内部を区画する。
(2) (n)Fに解体用の重機を入れ、当該階の上方階の内部のみを解体し、当該階の前記外周部の最外周璧、外柱及び外梁の外周部側を残置する。次に、前記重機を(n-1)Fに降ろして、当該階の上方階の内部のみを解体し、当該階の前記外周部の最外周璧、外柱及び外梁の外周側を残置して、以下、重機を降ろしながら順次内部を解体する。
(3) (n)Fの外梁の外周部側が露出したならば、当該階の外梁の外梁の外周部側に仮床ユニットを設置して、前記仮床ユニット上からの作業で、当該階で当該仮床ユニット付近の上方の外周部を解体する。前記仮床ユニットを、同一階で、他の外梁の外周部側に移動しながら当該階で当該仮床ユニット付近の上方の外周部を解体する。
当該階で上方の外周部の解体が終了したならば、(n-1)Fの外梁の外周部側に仮床ユニットを設置して、前記仮床ユニット上からの作業で、同様に当該階の上方の外周部を解体し、以下、仮床ユニットを降ろしながら当該階の上方の階の外周部を解体する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に鉄骨楮の梁を備える構造体からなる高層ビルを効率的に解体する際に使用する建築物の解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高層ビルを解体する場合、内側の柱の周囲に仮設サポートを施しながら、内側の柱を先行して切断する提案(特許文献1)、また、床に床補強支柱を設置しながら解体する提案(特許文献2)、また、解体工法における上方の飛散防止養生システムで、2フロア分の相当の外壁を残置してそれ以外の部分を先行して解体する実施形態が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6126844号公報
【特許文献2】特許第6363343号公報
【特許文献3】特開2020-190142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記各解体工法では、内側の解体において、特殊な前処理が必要とし(特許文献1、2)、施工が煩雑となっていた。あるいは、外壁を残置してそれ以外の部分を先行して解体する場合では外壁のみを残すので自立が難しく2フロア分が限界であった(特許文献3)。さらにいずれの技術においても、総ての部分を重機で解体することが前提であり、かつフロア毎に解体を進行させることが必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、自立可能な外周部とそれ以外の内部とに区画して、通常の重機で内部を先行して解体して、内部の解体と並列して外周部を他の手段で独立して解体できる工法としたので、前記問題点を解決した。
【0006】
即ちこの発明は、解体する建築物のフロアを、平面で「外周部」と「内部」とに区分けして、以下のように内部の解体と外周部の解体を並行して施工をすることを特徴とする建築物の解体方法である。
(1) (n)Fに解体用の重機を入れ、(n)Fの上方階の内部のみを外周部に先行して解体し、重機を(n-1)Fに降ろして、同様に(n-1)Fの上方階の内部のみを解体する。以下、重機を降ろしながら順次内部を解体する。
(2) (n)Fの外周部の梁が露出したならば、前記(n)Fの外周部の梁に仮床ユニットを設置して、前記仮床ユニット上からの作業で、(n)Fの上方の外周部を解体する。続いて(n-1)Fの外周部の梁に仮床ユニットを設置して、前記仮床ユニット上からの作業で、(n-1)Fの上方の外周部を解体し、以下、仮床ユニットを降ろしながら上方の階の外周部を解体する。
【0007】
また、他の発明は、解体する建築物のフロアを、平面で「外周部」と「内部」とに区分けて、以下のように内部の解体と外周部の解体を並行して施工をすることを特徴とする建築物の解体方法である。
(1)最外周壁付近に配置される外柱の内部側に接続された外梁の中間部で、外周部と内部を区画する。
(2) (n)Fに解体用の重機を入れ、当該階の上方階の内部のみを解体し、当該階の前記外周部の最外周璧、外柱及び外梁の外周部側を残置する。次に、前記重機を(n-1)Fに降ろして、当該階の上方階の内部のみを解体し、当該階の前記外周部の最外周璧、外柱及び外梁の外周部側を残置して、以下、重機を降ろしながら順次内部を解体する。
(3) (n)Fの外梁の外周部側が露出したならば、当該階の外梁の外周部側に仮床ユニットを設置して、前記仮床ユニット上からの作業で、当該階の上方の外周部を解体する。続いて(n-1)Fの外梁の外周部側に仮床ユニットを設置して、前記仮床ユニット上からの作業で、当該階の上方の外周部を解体し、以下、仮床ユニットを降ろしながら上方の階の外周部を解体する。
【0008】
さらに、他の発明は、解体する建築物のフロアを、平面で「外周部」と「内部」とに区分けて、以下のように内部の解体と外周部の解体を並行して施工をすることを特徴とする建築物の解体方法である。
(1)最外周壁付近に配置される外柱の内部側に接続された外梁の中間部で、外周部と内部を区画する。
(2) (n)Fに解体用の重機を入れ、当該階の上方階の内部のみを解体し、当該階の前記外周部の最外周璧、外柱及び外梁の外周部側を残置する。次に、前記重機を(n-1)Fに降ろして、当該階の上方階の内部のみを解体し、当該階の前記外周部の最外周璧、外柱及び外梁の外周側を残置して、以下、重機を降ろしながら順次内部を解体する。
(3) (n)Fの外梁の外周部側が露出したならば、当該階の外梁の外梁の外周部側に仮床ユニットを設置して、前記仮床ユニット上からの作業で、当該階で当該仮床ユニット付近の上方の外周部を解体する。前記仮床ユニットを、同一階で、他の外梁の外周部側に移動しながら当該階で当該仮床ユニット付近の上方の外周部を解体する。
当該階で上方の外周部の解体が終了したならば、(n-1)Fの外梁の外周部側に仮床ユニットを設置して、前記仮床ユニット上からの作業で、同様に当該階の上方の外周部を解体し、以下、仮床ユニットを降ろしながら当該階の上方の階の外周部を解体する。
【発明の効果】
【0009】
この発明は、解体する建築物で、平面上で内部と外周部に区画して、内部を先行して解体して、内部の解体と外周部の解体を並行して進めることができる。よって、工期を短縮し、かつ安全に作業をすることができる。また、特殊工具を使わないので、工法の採用にあたり作業者の訓練を要しないなどの利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)~(c)は、この発明の解体方法を説明する概略に表示した縦断面図である。
【
図2】(a)~(c)は、同じくこの発明の解体方法を説明する概略に表示した縦断面図である。
【
図3】(a)~(c)は、同じくこの発明の解体方法を説明する概略に表示した縦断面図である。
【
図4】この発明の外周部の解体を説明する図で、(a)は拡大平面図、(b)は縦断面図である。
【
図5】同じくこの発明の外周部の解体を説明する拡大縦断面図である。
【
図6】この発明の外周部と内部を説明する平面の模式図である。
【
図7】この発明の各階の構造を説明する縦断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面に基づいて、この発明の実施形態を説明する。
【0012】
【0013】
解体する建造物50で、各階のフロアを、平面で「外周部EX」と「内部IN」とに区分けする(
図6)。
【0014】
建造物50で最も外周側に位置する外柱22A、22Aが配置され、外柱22A、外柱22Aの間に外周床梁24A、24Aが架設されている。外周床梁24A、24Aに最外周璧20が接続されている。ここで、最外周璧20が、外柱22A、22Aにも接続される場合(
図6)、あるいは最外周璧20が、外柱22A、22Aに直接に接続されず、最外周璧20Aが外床梁24Baの外周部側に位置している場合もある(図示していない)。
また、外柱22A、22Aの内部側に中柱22C、22Cが配置されている。外柱22Aと中柱22Cとの間に、外床梁22B、22Bが架設され、中柱22Cと中柱22Cとの間に中床梁24Cが架設されている。
ここで、各外床梁24Bの中間位置を通る線Pで、「外周部EX」と「内部IN」が区画される。また、線Pにより区画され、外床梁24Bの外周部EX側が外床梁24Ba、内部IN側が外床梁24Bcとする。外床梁24Bをはじめ床梁24A、24Cは鉄骨を主とした構造を想定している。
【0015】
【0016】
nFにおいて、nFの空間をささえる柱をnFの柱22とし、nFの柱22の下端(柱脚)を連結した梁(見下げ)をnFの床梁24とする。また、nFの床を構成するスラブをnFの床版26として、nFの床版26はnFの床梁24で支えられている(
図7)。
また、nFの柱22の上端(柱頭)を連結した梁(見上げ)を(n+1)F、またはPHFの床梁24とする。また、(n+1)F、またはPHFの床梁24に支えられたスラブを(n+1)F、またはPHFの床梁24とする(
図7)。
【0017】
【0018】
(1)仮床ユニット30は、隣接する外床梁24Ba、24Baの間に架設する仮床フレーム31と、仮床フレーム31上に架設され仮床フレーム31を上面側から塞ぐフラットデッキ36とを備える(
図4)。
【0019】
(2)仮床フレーム31は以下のように構成される(
図4(a))。
隣接する外床梁24Ba、24Baの間に架設配置できるフラットデッキ張材32、32aを備える。フラットデッキ張材32、32aは、剛性を備え、外床梁24Baの最外壁20側に位置するフラットデッキ張材32と、外床梁24Baの自由端側に位置するフラットデッキ張材32aの少なくとも2つが並列できるように構成する(
図4(a))。また、フラットデッキ張材32、32aの間に1つまたは2つ以上の他のフラットデッキ張材を配置することもできる(図示していない)。ここで、。また、フラットデッキ張材32、32aの両端部付近に、外床梁24Ba、24Baがそれぞれ位置する。
また、両フラットデッキ張材32、32aに、剛性を備える第一補強材33、33aの両端部を連結する。したがって、2つのフラットデッキ張材32、32aとこれに略直角に固定される第一補強材33、33aとで、長方形が形成される(
図4(a))。また、フラットデッキ張材32、32aは、設置する外周部EXで残置される外床梁24Baと略直角に配置される。
また、最外周壁20側のフラットデッキ張材32の一端部側と他のフラットデッキ張材32aの他端部側とに第二補強材34の他端部とを連結する。同様に、最外壁側のフラットデッキ張材32の他端部側と他のフラットデッキ張材32aの一端部側とに第二補強材34aの両端部とを連結する。両第二補強材34、34aはブレース状(X字状)に交差して配置される(
図4(a))。第二補強材34、43aも剛性を備える。
前記において、両第一補強材33、33aは、フラットデッキ張材32、32aの長さ方向で端縁よりも中心側に位置し、両第二補強材34はそれぞれ両第一補強材33、33aと交差する。
以上のような構造の仮床フレーム31が一体構造で形成される(
図4(a)(b))。
【0020】
(3) フラットデッキ36は、仮床フレーム31を上方から覆う構造で、仮床フレーム31に形成される開口41(フラットデッキ張材32、32a、第一補強材33、33aとで形成される)は、フラットデッキ36により塞がれる(
図4(a))。
【0021】
(4) 各仮床ユニット30の内端側(仮床フラットデッキ36の内端側、仮床フレーム31の内端側)に手すり37を固定する(
図4(a)(b))。手すり37に沿うように、落下防止用の手すりネット(図示していない)を取り付けることもできる。
以上のような仮床フレーム21にフラットデッキ36が固定され、さらには手すり37など必要な部材も固定されて一体となった仮床ユニット20は予め地上などで構築される。
【0022】
(5)前記において、仮床フレーム31は、構造的にフラットデッキ36を安全に支えることができれば、第二補強材33、33aを省略して、フラットデッキ張材32、32aと第一補強材32、32aとから構成することもできる(図示していない)。
また、仮床ユニット30は、外床梁24Ba、24Ba間に架設して、下記のようにフラットデッキ36の上面に作業者が乗って作業をするものであり、下記のような作業を安全に行うことができれば、仮床フレーム31の構造は任意であり(図示していない)、また仮床フレーム31を省略して、フラットデッキ36のみから構成することもできる(図示していない)。
また、仮床ユニット30は、隣接する2つの外床梁24ba、外床梁24Baに架設する構造としたが(
図4(a))、3つ以上の外床梁24ba、外床梁24Baに架設する構造とすることもできる(図示していない)。
【0023】
【0024】
解体対象の建造物50の周囲に従来のように、組立式の足場6、6を仮設し、従来のように飛散防止用の外周シート(図示していない)を敷設する。また、組み立て式の足場6、6の外周側に、タワークレーン1が設置され、タワークレーン1のマスト3は、建造物50(足場6、6)の周辺に配置され(
図1~
図3)、タワークレーン1のジブ(図示していない)は、建造物50の屋上階(PHF)より上方に位置され、タワークレーン1のマスト3は通常の手段により建造物50に固定されている。
【0025】
A.内部INの解体
【0026】
(1) タワークレーン1などにより、解体用の重機10を屋上階(PHF)に揚上する(
図1(a))。
【0027】
(2) 重機10により屋上階(PHF)の床版に穴をあけ、従来と同様の重機昇降開口を形成する(図示していない)。解体用の重機10を、屋上階(PHF)の重機昇降開口から通常の方法により最上階(n階)のフロア(床版)に降ろす(
図1(b))。通常は破壊したコンクリート殻によりスロープを形成して解体用の重機10を自走で降ろすが、解体用の重機10を降ろす方法は任意である。
【0028】
(3) nFのフロア上に位置する解体用の重機10で、屋上階(PHF)の内部INの床版、内部INの中床梁24C、n階の中柱22Cを解体してそれらを当該階から撤去する(
図1(b))。
また、屋上階(PHF)の外床梁24Bは線Pの位置で(
図6)、外周部EXの外床梁24Baと内部INの外床梁24Bcとに分割され、外床梁24Bcのみが解体され、外周部EXの外床梁24Baは残置される。また、外周部EXの床版(外床梁24Ba、24Ba間の床版など)も重機10で解体され、床梁24Baは露出した状態となる。また、外柱22A、最外周壁20も残置される。以下の各階の解体でも同様である。
また、通常の方法により撤去したガラを地上に降ろす。
【0029】
(4) 次に(2)と同様に、nFの床版に穴をあけ、重機昇降開口を形成し((図示していない)、解体用の重機10を、nFの重機昇降開口から通常の方法により(n-1)Fのフロア(床版)に降ろす(
図1(c))。
【0030】
(5) (n-1)Fのフロア上の解体用の重機10により、(3)と同様に解体作業を行う。すなわち、(n―1)Fのフロア上に位置する解体用の重機10で、nFの内部INの床版、内部の中床梁24C、(n―1)Fの中柱22Cを解体してそれらを当該階から撤去する(
図1(c))。
また、nFの外床梁24Bは線Pの位置で(
図6)、外周部EXの外床梁24Baと内部INの外床梁24Bcとに分割され、外床梁24Bcのみが解体され、外周部EXの外床梁24Baは残置される。また、外周部EXの床版(外床梁24Ba、24Ba間の床版など)も重機10で解体され、床梁24Baは露出した状態となる。また、外柱22A、最外周壁20も残置される。また、通常の方法により撤去したガラを地上に降ろす。
【0031】
(6) 次に(2)と同様に、(n-1)Fの床版に穴をあけ、重機昇降開口を形成し((図示していない)、解体用の重機10を、(n-1)Fの重機昇降開口から通常の方法により(n-2)Fのフロアに降ろす(
図2(a))。
【0032】
(7) 次に、(n-2)Fのフロア上に位置する解体用の重機10で、上記(3)(5)と同様に、解体作業を行う。すなわち、(n―2)Fのフロア上に位置する解体用の重機10で、(n-1)Fの内部の床版、内部INの中床梁24C、(n―2)Fの中柱22Cを解体してそれらを当該階から撤去する(
図2(a))。
また、(n―1)Fの外床梁24Bは線Pの位置で(
図6)、外周部EXの外床梁24Baと内部INの外床梁24Bcとに分割され、外床梁24Bcのみが解体され、外周部EXの外床梁24Baは残置される。また、外周部EXの床版(外床梁24Ba、24Ba間の床版など)も重機10で解体され、外床梁24Baは露出した状態となる。また、外柱22A、最外周壁20も残置される。また、通常の方法により撤去したガラを地上に降ろす。
【0033】
(8) 以下同様に、下の階での内部INの全体と外周部EXの床版が解体され(
図2(b)(c))、さらに下方の階で順次、内部INの全体と外周部EXの床版が解体される(
図3)。
以上の内部INにおける重機10での解体作業で、外周部の外床梁24Ba、最外周壁20が残置されるが、これに接続された外柱22Aも残置されるので、これらは自立できる。また、外部の最外周壁20が残置されるので、最外周壁20が飛散防止用のネットと同等の役割を果たす。また、この実施形態では、外周部EXの解体に先行して、内部INを4階程度解体したが、残置される外周部EXが自立できる範囲で任意である。
【0034】
B.外周部EXの解体
【0035】
(9) 各階の内部INなどの解体作業(
図1(a)~(b))、解体用の重機10を(n-2)Fにおろして(n-1)Fの内部INなどの解体作業(
図2(a))と並行して、内部INの解体作業により、解体対象のPHFの外周部EXが露出し、さらに解体対象の階の1つ下の階であるnFの外梁24Baが露出したならば、タワークレーン1で吊り上げた仮床ユニット30を、nFの外周部EXに降ろす(
図2(a))。仮床ユニット30を、残置された外床梁24Ba、外床梁24Ba間に架設して外床梁24Baに動かないように固定をする。
この際、隣接する仮床フレーム31のフラットデッキ張材32、32aの端部が重なり、重なった部分(すなわち外床梁24Baの上方)に鋼板からなるふた板38を固定することもできる。また、最外壁20(外周梁24A)とフラットデッキ36との間に隙間があった場合には、落下防止用の水平ネット39を取り付けることもできる(
図4(a))。
【0036】
(10) 続いて、nFの仮床ユニット30、30上に乗った作業者が、タワークレーン1の吊り下げワイヤー3に、PHFの外床梁24Ba、nFの外柱22A、外周壁20などを吊り上げられるように固定する(
図2(b))。
【0037】
(11) 続いて、nFの仮床ユニット30、30上に乗った作業者が、nFの外周部EXで、外周壁20および外柱22Aで、nFの床版上からやや上方の高さH(任意であるが通常はH=50cm程度)の溶断位置12で、溶断する(
図4(b)、
図5)。また、適宜位置で、外周梁24Aも溶断する。これにより溶断位置12で、PHFの外床梁24Ba、nFの外柱22A、外周壁20などが建築物50から分離されるので、これらがつながれたワイヤー3でタワークレーン1により吊り上げる(
図2(c))。解体される建造物50から分離されたnFの外周壁20などをタワークレーン1で地上に降ろす。
【0038】
(12) 続いて、この仮床ユニット30、30と外床梁24Ba、外床梁24Baとの固定を解除して、タワークレーン1などでこの仮床ユニット30、30を吊り上げて平行移動して、同じnFの外周部EXで、他の外床梁24Ba、外床梁24Baに移動して、仮床ユニット30、30を他の外床梁24Ba、外床梁24Baに固定して、(10)(11)と同様の作業をして、その平面位置で、建築物50から分離されたPHFの外床梁24Ba、nFの外柱22A、外周壁20などをワイヤー3でタワークレーン1により地上に降ろす。
【0039】
(13) このように、この仮床ユニット30、30を平行移動しながら、nFの外周部EXの全体で行い、PHFの外床梁24Ba、nFの外柱22A、外周壁20などの全体の全体を解体する。
なお、この際、(n-3)Fのフロア上で、重機10が(n-2)Fの内部INなどの解体を進めている(
図2(b)(c))。
【0040】
(14) 次に、このこの仮床ユニット30、30を(n-1)Fの外床梁24Ba、外床梁24Baに移動して固定して(図示していない)、、同様に、nFの外床梁24Ba、(n―1)Fの外柱22A、外周壁20などの全体の全体を解体する。
以下、順次この仮床ユニット30、30を水平移動、垂直移動をしながら外周部EXの解体を下方に進める。
この場合、予め多数の仮床ユニット30、30を用意して、同じフロアのすべての外床梁24Ba、24Baに仮床ユニット30、30を架設して、上の階の外周部EXの解体作業を同時に行うこともできる(図示していない)。
【0041】
(15) 以下同様、仮床ユニット30、30を降ろしながら、上方の外周部EXを解体し、これと並行して、より下方の階に位置する重機10で内部を解体して(
図3)、建造物50の全てを解体する。
【0042】
C.他の方法
【0043】
(1) 前記解体方法で、内部INを解体する際に、常に上方の階の外周璧が残置されているので、飛散防止用の外周シートは省略し、あるいは軽減できる。
【0044】
(2) また、前記解体方法で、外周部EXを1階づつ解体したが、1回飛びで仮床ユニット30、30を下降して、上方の2階分をまとめて解体することもできる(図示していない)。
【0045】
(3) また、前記解体方法で、解体用の重機10を複数台導入して、同じ階または異なる階で内部の解体作業をさせることもできる(図示していない)。
【0046】
(4) また、前記解体方法で、外床梁24Bの中間部を線Pで分離して、外周部EXの外床梁24Baと内部INの外床梁24Bcに分離し(
図6)、内部INの解体作業で、外周部EXの外床梁24Baを残した。この場合、外床梁24Baは、人が乗って作業をする仮床ユニット30、30を支える作用があり、この作用を果たすことができるような自立できる長さがあれば、線Pでの分離位置は任意である。
【0047】
(5) この発明は、階数が多いいいわゆる超高層ビルで、柱や梁が鉄骨構造あるいは鉄骨を主とする構造の場合に特に有効であるが、階数や構造に限定されず、適用することもできる。
【符号の説明】
【0048】
1 タワークレーン
2 クレーンのマスト
3 クレーンのワイヤー
6 足場
10 重機
12 溶断ライン
20 外周壁(最外周璧)
22 柱
22A 外柱
22C 中柱
24 床梁(梁)
24A 外周床梁(外周梁)
24B 外床梁(外梁)
24Ba 外床梁(外梁)(外周部側)
24Bc 外床梁(外梁)(内部側)
26 床版
30 仮床ユニット
31 仮床フレーム
32、32a フラットデッキ張材
33、33a 第1補強材
34、34a 第2補強材
36 フラットデッキ
37 手すり
38 ふた板
39 水平ネット
41 仮床フレームの開口
50 建造物
EX 外周部
IN 内部