(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045578
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】圧入沈設装置及び圧入沈設方法
(51)【国際特許分類】
E02D 23/00 20060101AFI20230327BHJP
E02D 23/08 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
E02D23/00 C
E02D23/08 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154085
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000140694
【氏名又は名称】株式会社加藤建設
(71)【出願人】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【弁理士】
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】濱田 良幸
(72)【発明者】
【氏名】高橋 達也
(72)【発明者】
【氏名】内山 敬二
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 茂
(72)【発明者】
【氏名】原 翔悟
(57)【要約】
【課題】揚重機の大型化を抑制し、かつ土留壁の組み立て作業性を向上させることができる圧入沈設装置及び圧入沈設方法を提供する。
【解決手段】本発明は、沈設用土留壁1を構成するリングピース11の上端側において、リングピース11の重心位置Gを通る直線上であり、かつ重心位置Gから等間隔となる複数の箇所よりも外周側の重心外領域に圧入桁21を配置した。そして、リングピース11の重心位置Gを通る直線上であり、かつ重心位置Gから等間隔となる複数の箇所にワイヤロープ3を接続することにより、リングピース11の重心位置Gにおいて真上からリングピース11を揚重可能とした。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割組立型土留壁を構成する概ね円弧状に形成された複数のリングピースを水平方向及び鉛直方向にそれぞれ連結することによって組み立てられた筒状の土留壁を圧入し沈設する圧入沈設装置であって、
前記複数のリングピースを揚重することにより前記筒状の土留壁の組み立てに供する索条体と、
前記鉛直方向に昇降可能に設けられ、前記索条体により揚重されて前記筒状の土留壁として連結された前記複数のリングピースの前記鉛直方向の最上段に並列に配置された各リングピースの上端面を押圧することによって前記筒状の土留壁を圧入する圧入桁と、
を備え、
前記索条体は、前記各リングピースの上端側において、前記各リングピースの重心位置となる単一の箇所、又は前記重心位置を通る直線上の前記重心位置から等間隔となる複数の箇所に接続され、この接続された箇所から前記鉛直方向に延びて前記各リングピースを揚重し、
前記圧入桁は、前記各リングピースの上端面において、前記各リングピースの重心位置よりも径方向外側の重心外領域に当接する、
ことを特徴とする圧入沈設装置。
【請求項2】
請求項1に記載の圧入沈設装置であって、
前記各リングピースには、前記鉛直方向における前記各リングピースの連結に供する連結穴が設けられていて、
前記索条体は、前記連結穴を介して前記各リングピースに接続される、
ことを特徴とする圧入沈設装置。
【請求項3】
請求項1に記載の圧入沈設装置であって、
前記各リングピースの上端面に取り付けられ、前記索条体を接続して前記各リングピースの揚重に供する吊り治具をさらに備え、
前記索条体は、前記吊り治具における前記各リングピースの重心位置となる単一の箇所、又は前記重心位置を通る直線上の前記重心位置から等間隔となる複数の箇所に接続され、この接続された箇所から前記鉛直方向に延びて前記各リングピースを揚重する、
ことを特徴とする圧入沈設装置。
【請求項4】
請求項3に記載の圧入沈設装置であって、
前記各リングピースには、前記鉛直方向における前記各リングピースの連結に供する連結穴が設けられていて、
前記吊り治具は、前記連結穴を介して前記各リングピースに取り付けられる、
ことを特徴とする圧入沈設装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の圧入沈設装置であって、
前記吊り治具は、前記圧入桁と対向する面に、補強リブを有する、
ことを特徴とする圧入沈設装置。
【請求項6】
請求項5に記載の圧入沈設装置であって、
前記索条体は、前記補強リブに接続される、
ことを特徴とする圧入沈設装置。
【請求項7】
分割組立型土留壁を構成する概ね円弧状に形成された複数のリングピースを索条体によって揚重することにより前記複数のリングピースを水平方向及び鉛直方向にそれぞれ連結してなる筒状の土留壁の前記鉛直方向の最上段に並列に配置された各リングピースの上端面のうち径方向外側の領域を圧入桁により押圧して前記筒状の土留壁を圧入し沈設する圧入沈設方法であって、
前記各リングピースの上端側において、前記圧入桁とは重ならない位置で、かつ前記各リングピースの重心位置となる単一の箇所、又は前記重心位置を通る直線上の前記重心位置から等間隔となる複数の箇所に前記索条体を接続し、前記各リングピースから前記鉛直方向に延びる前記索条体により前記各リングピースを揚重して前記筒状の土留壁を組み立てる、
ことを特徴とする圧入沈設方法。
【請求項8】
請求項7に記載の圧入沈設方法であって、
前記各リングピースには、前記鉛直方向における前記各リングピースの連結に供する連結穴が設けられていて、
前記索条体は、前記連結穴を介して前記各リングピースに接続される、
ことを特徴とする圧入沈設方法。
【請求項9】
請求項7に記載の圧入沈設方法であって、
前記各リングピースの上端面に、前記索条体を接続して前記各リングピースの揚重に供する吊り治具を取り付け、
前記吊り治具のうち、前記圧入桁とは重ならない位置で、かつ前記各リングピースの重心位置となる単一の箇所、又は前記重心位置を通る直線上の前記重心位置から等間隔となる複数の箇所に前記索条体を接続して、前記吊り治具から前記鉛直方向に延びる前記索条体によって前記各リングピースを揚重する、
ことを特徴とする圧入沈設方法。
【請求項10】
請求項9に記載の圧入沈設方法であって、
前記各リングピースには、前記鉛直方向における前記各リングピースの連結に供する連結穴が設けられていて、
前記吊り治具は、前記連結穴を介して前記各リングピースに取り付けられる、
ことを特徴とする圧入沈設方法。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の圧入沈設方法であって、
前記吊り治具は、前記圧入桁と対向する面に、補強リブを有する、
ことを特徴とする圧入沈設方法。
【請求項12】
請求項11に記載の圧入沈設方法であって、
前記索条体は、前記補強リブに接続される、
ことを特徴とする圧入沈設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分割組立型土留壁の圧入沈設装置及び圧入沈設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の分割組立型土留壁の圧入沈設装置としては、例えば以下の特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
概略を説明すれば、この圧入沈設装置は、分割組立型土留壁を構成する複数のリングピースを水平・鉛直方向にそれぞれ結合してなる筒状の土留壁を圧入沈設するものである。そして、当該圧入沈設装置では、同文献の例えば
図17に示すように、天秤状の吊り具を用いて各リングピースを揚重することにより、当該各リングピースの組み立てを行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の圧入沈設装置では、前記天秤状の吊り具を用いてリングピースを揚重していたため、リングピースが大きいものになると、このリングピースの大型化に伴い当該リングピースとのバランスを取るための錘が拡大してしまうことになる。これにより、錘の拡大分だけ前記天秤上の治具に吊られる揚重物の重量が増大し、この揚重物を揚重する揚重機の大型化を招来してしまうおそれがあった。
【0006】
また、前記リングピースの大型化に伴い前記天秤状の吊り具の錘が拡大することで、土留壁の内側に配設される足場にて土留壁の組み立て(リングピースの組み立て)を行う作業者の動線と干渉し、当該作業者の作業の妨げとなってしまうおそれがあった。
【0007】
本発明は、かかる技術的課題に着目して案出されたものであって、揚重機の大型化を抑制し、かつ土留壁の組み立て作業性を向上させることができる圧入沈設装置及び圧入沈設方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る圧入沈設装置は、その一態様として、分割組立型土留壁を構成する概ね円弧状に形成された複数のリングピースを水平方向及び鉛直方向にそれぞれ連結することによって組み立てられた筒状の土留壁を圧入し沈設する圧入沈設装置であって、前記複数のリングピースを揚重することにより前記筒状の土留壁の組み立てに供する索条体と、前記鉛直方向に昇降可能に設けられ、前記索条体により揚重されて前記筒状の土留壁として連結された前記複数のリングピースの前記鉛直方向の最上段に並列に配置された各リングピースの上端面を押圧することによって前記筒状の土留壁を圧入する圧入桁と、を備え、前記索条体は、前記各リングピースの上端側において、前記各リングピースの重心位置となる単一の箇所、又は前記重心位置を通る直線上の前記重心位置から等間隔となる複数の箇所に接続され、この接続された箇所から前記鉛直方向に延びて前記各リングピースを揚重し、前記圧入桁は、前記各リングピースの上端面において、前記各リングピースの重心位置よりも径方向外側の重心外領域に当接する、ことが望ましい。
【0009】
このように、本発明によれば、リングピースの上端側において、圧入桁を、リングピースの重心位置となる単一の箇所、又は前記重心位置を通る直線上の前記重心位置から等間隔となる複数の箇所よりも外周側(径方向外側)の重心外領域に配置した。そして、索条体を、リングピースの重心位置となる単一の箇所、又は前記重心位置を通る直線上の前記重心位置から等間隔となる複数の箇所に接続することによって、リングピースを重心位置にて揚重可能とした。これにより、前記従来のような天秤状の吊り具を用いなくとも、リングピースを真上から揚重することができ、リングピースが大型化した場合でも、これに伴う前記天秤状の吊り具に吊るす錘の大型化を招来するおそれがなくなる。
【0010】
また、前記圧入沈設装置の別の態様として、前記各リングピースには、前記鉛直方向における前記各リングピースの連結に供する連結穴が設けられていて、前記索条体は、前記連結穴を介して前記各リングピースに接続される、ことが望ましい。
【0011】
このように、リングピースに設けられている連結穴を介して索条体をリングピースに接続することにより、索条体を接続するための接続孔等を別途設ける必要がない。これにより、リングピースの加工工数が削減され、土留壁の設置コストの増大化を抑制することができる。
【0012】
また、前記圧入沈設装置のさらに別の態様として、前記各リングピースの上端面に取り付けられ、前記索条体を接続して前記各リングピースの揚重に供する吊り治具をさらに備え、前記索条体は、前記吊り治具における前記各リングピースの重心位置となる単一の箇所、又は前記重心位置を通る直線上の前記重心位置から等間隔となる複数の箇所に接続され、この接続された箇所から前記鉛直方向に延びて前記各リングピースを揚重する、ことが望ましい。
【0013】
このように、吊り治具を用いてリングピースを揚重することにより、リングピースに設けられる連結穴など、索条体をリングピースに接続するための接続孔が鉛直方向において圧入桁と重なってしまう場合でも、リングピースの重心位置に索条体を接続してリングピースを鉛直方向に揚重することが可能となる。これにより、圧入桁によるリングピースの被押圧領域の範囲や連結穴の配置等に制約されることなくリングピースを真上から揚重可能となり、圧入沈設装置の汎用性を高めることができる。
【0014】
また、前記圧入沈設装置のさらに別の態様として、前記各リングピースには、前記鉛直方向における前記各リングピースの連結に供する連結穴が設けられていて、前記吊り治具は、前記連結穴を介して前記各リングピースに取り付けられる、ことが望ましい。
【0015】
このように、吊り治具を、リングピースに設けられた連結穴を介してリングピースに接続することにより、当該吊り治具を接続するための接続孔等を別途設ける必要がない。これにより、リングピースの加工工数が削減され、土留壁の設置コストの増大を抑制することができる。
【0016】
また、前記圧入沈設装置のさらに別の態様として、前記吊り治具は、前記圧入桁と対向する面に、補強リブを有する、ことが望ましい。
【0017】
このように、吊り治具の圧入桁と対向する面に、吊り治具を補強するための補強リブが設けられていることで、当該吊り治具の剛性を高めることができる。これにより、リングピースを揚重する際に、索条体による引っ張り力によって吊り治具が鉛直上側へと捲れ上がる変形が抑制され、リングピースの適切かつ安定した揚重に寄与することができる。また、補強リブが設けられていることで、吊り治具の耐久性の向上にも寄与することができる。
【0018】
また、前記圧入沈設装置のさらに別の態様として、前記索条体は、前記補強リブに接続される、ことが望ましい。
【0019】
このように、索条体を、比較的剛性の高い補強リブに接続することにより、リングピースの揚重安定性の向上が図れると共に、吊り治具の耐久性の向上を図ることができる。
【0020】
また、別の観点から、本発明は、その一態様として、分割組立型土留壁を構成する概ね円弧状に形成された複数のリングピースを索条体によって揚重することにより前記複数のリングピースを水平方向及び鉛直方向にそれぞれ連結してなる筒状の土留壁の前記鉛直方向の最上段に並列に配置された各リングピースの上端面のうち径方向外側の領域を圧入桁により押圧して前記筒状の土留壁を圧入し沈設する圧入沈設方法であって、前記各リングピースの上端側において、前記圧入桁とは重ならない位置で、かつ前記各リングピースの重心位置となる単一の箇所、又は前記重心位置を通る直線上の前記重心位置から等間隔となる複数の箇所に前記索条体を接続し、前記各リングピースから前記鉛直方向に延びる前記索条体により前記各リングピースを揚重して前記筒状の土留壁を組み立てる、ことが望ましい。
【0021】
このように、本発明によれば、各リングピースの上端側において、圧入桁を、各リングピースの重心位置となる単一の箇所、又は前記重心位置を通る直線上の前記重心位置から等間隔となる複数の箇所よりも外周側に配置すると共に、索条体をリングピースの重心位置となる単一の箇所、又は前記重心位置を通る直線上の前記重心位置から等間隔となる複数の箇所に接続してリングピースを揚重することにより、土留壁を組み立てる。このため、前記従来のような天秤状の吊り具を用いることなく、リングピースの真上から揚重することができる。これにより、リングピースが大型化した場合であっても、前記天秤状の吊り具に吊るす錘の大型化を招来するおそれがなくなる。
【0022】
また、前記圧入沈設方法の別の態様として、前記各リングピースには、前記鉛直方向における前記各リングピースの連結に供する連結穴が設けられていて、前記索条体は、前記連結穴を介して前記各リングピースに接続される、ことが望ましい。
【0023】
このように、リングピースに設けられている連結穴を介して索条体をリングピースに接続することにより、索条体を接続するための接続孔等を別途設ける必要がない。これにより、リングピースの加工工数が削減され、土留壁の設置コストの増大を抑制することができる。
【0024】
また、前記圧入沈設方法のさらに別の態様として、前記各リングピースの上端面に取り付けられ、前記索条体を接続して前記各リングピースの揚重に供する吊り治具をさらに備え、前記索条体は、前記吊り治具における前記各リングピースの重心位置となる単一の箇所、又は前記重心位置を通る直線上の前記重心位置から等間隔となる複数の箇所に接続され、この接続された箇所から前記鉛直方向に延びて前記各リングピースを揚重する、ことが望ましい。
【0025】
このように、吊り治具を用いてリングピースを揚重することにより、リングピースに設けられる連結穴など、索条体をリングピースに接続するための接続孔が鉛直方向において圧入桁と重なってしまう場合でも、リングピースの重心位置に索条体を接続してリングピースを鉛直方向に揚重することが可能となる。これにより、圧入桁によるリングピースの被押圧領域の範囲や連結穴の配置等に制約されることなくリングピースを真上から揚重可能となり、圧入沈設装置の汎用性を高めることができる。
【0026】
また、前記圧入沈設方法のさらに別の態様として、前記各リングピースには、前記鉛直方向における前記各リングピースの連結に供する連結穴が設けられていて、前記吊り治具は、前記連結穴を介して前記各リングピースに取り付けられる、ことが望ましい。
【0027】
このように、吊り治具を、リングピースに設けられた連結穴を介してリングピースに接続することにより、当該吊り治具を接続するための接続孔等を別途設ける必要がない。これにより、リングピースの加工工数が削減され、土留壁の設置コストの増大を抑制することができる。
【0028】
また、前記圧入沈設方法のさらに別の態様として、前記吊り治具は、前記圧入桁と対向する面に、補強リブを有する、ことが望ましい。
【0029】
このように、吊り治具の圧入桁と対向する面に、吊り治具を補強するための補強リブが設けられていることで、当該吊り治具の剛性を高めることができる。これにより、リングピースを揚重する際に、索条体による引っ張り力によって吊り治具が鉛直上側へと捲れ上がる変形が抑制され、リングピースの適切かつ安定した揚重に寄与することができる。また、補強リブが設けられていることで、吊り治具の耐久性の向上にも寄与することができる。
【0030】
また、前記圧入沈設方法のさらに別の態様として、前記索条体は、前記補強リブに接続される、ことが望ましい。
【0031】
このように、索条体を、比較的剛性の高い補強リブに接続することにより、リングピースの揚重安定性の向上が図れると共に、吊り治具の耐久性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、従来のような天秤状の吊り具が不要となり、リングピースの真上から揚重することが可能となる。このため、リングピースが大型化してしまった場合でも、前記天秤状の吊り具に吊るす錘の大型化を招来するおそれがなくなる。その結果、かかる天秤状の吊り具に吊るす錘の大型化に伴う揚重機の大型化を回避することができる。
【0033】
また、揚重時におけるリングピースとのバランスに供する前記天秤状の吊り具に吊るす錘の大型化が回避されることで、リングピースの内側に配設される足場にて土留壁の組み立て(リングピースの組み立て)を行う作業者の適切な動線が確保され、当該作業者の作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図2】本発明の第1実施形態を示し、
図1に示すリングピースの揚重状態を斜め上方から見た斜視図である。
【
図3】
図2に示すリングピースの揚重状態を真上から見た平面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態を示し、リングピースの揚重状態を斜め上方から見た斜視図である。
【
図6】リングピースの揚重状態を真上から見た平面図である。
【
図7】
図5に示すリングピースの揚重状態を側方から見た側面図である。
【
図10】
図9に示す吊り治具をリングピースに取り付けた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、本発明に係る圧入沈設装置及び圧入沈設方法の実施形態を、図面に基づいて詳述する。なお、下記の各実施形態では、本発明を、RCセグメントのリングピースを組み立ててなる沈設用土留壁の圧入沈設に適用したものを例示する。
【0036】
〔第1実施形態〕
図1~
図4は、本発明の第1実施形態に係る圧入沈設装置及び圧入沈設方法を示す。
図1は、本実施形態に係る圧入沈設装置の概略図を示している。また、
図2は、
図1に示すリングピースの揚重状態を斜め上方から見た斜視図を示し、
図3は、
図2に示すリングピースの揚重状態を真上から見た平面図を示し、
図4は、
図3のA-A線に沿って切断した圧入桁及びリングピースの断面図を示している。なお、各図の説明では、沈設用土留壁1の圧入方向に直交する方向を「径方向」とし、沈設用土留壁1の圧入方向周りの方向を「周方向」として説明する。
【0037】
図1に示すように、この圧入沈設装置は、円筒状の分割組立型土留壁を構成する概ね円弧状に形成された複数(本実施形態では5つ)のリングピース11(
図2参照)を水平方向及び鉛直方向にそれぞれ連結することにより組み立てられた筒状の沈設用土留壁1を圧入し、沈設するものである。沈設用土留壁1は、ピット最下部に設置された刃口リング12の上に所定の単位高さを有するリングピース11を周方向に接続してなる概ね円筒状の単位土留壁10を鉛直方向に重ねるかたちで組み立てることによって形成される。この際、単位土留壁10を構成する各リングピース11は、地上に配置されたクローラクレーン24のジブ25に接続するフック26に掛けられた索条体であるワイヤロープ3を介して吊り下げられることで、単位土留壁10の上に重ねて配置される。なお、各単位土留壁10は、周方向において適宜数に分割された概ね円弧状の分割素片である各リングピース11をもって組み立てられ、各リングピース11同士は、図示外の継手板等を用いて図示外のボルト及びナットによって締結される。
【0038】
すなわち、圧入沈設装置は、圧入桁21の上に、グラウンドアンカー22を反力受けとする複数の油圧ジャッキ23が立設されていて、この油圧ジャッキ23の作動に応じて、組み立てられた単位土留壁10の上端面に圧下力を作用させることで、沈設用土留壁1が圧入沈設される。また、圧入沈設装置の上方には、クローラクレーン24のジブ25から吊り下げられた図示外のバケット系掘削手段(例えばクラムシェル)を待機させておき、単位土留壁10の内側において前記図示外のクラムシェルの投入と吊り上げを繰り返すことにより、単位土留壁10の内側の掘削と排土(揚土)が行われることになる。
【0039】
このように、圧入沈設装置は、単位土留壁10を継ぎ足すように沈設用土留壁1を組み立てつつ、その内部を掘削して排土し、その上で最上段の単位土留壁10を円環状の圧入桁21で押し込むことにより、沈設用土留壁1を段階的に地中へ圧入沈設するものである。そして、この沈設用土留壁1の組み立てと、内部の掘削・排土処理と、沈設用土留壁1の圧入沈設動作とを繰り返すことで、沈設用土留壁1が所定深度まで沈設されて、立坑が構築される。なお、沈設用土留壁1を形成する際には、
図2に示すように、鉛直方向に重なる単位土留壁101,102について、一方の単位土留壁101の各リングピース11の周方向の接合部J1と、他方の単位土留壁102の各リングピース11の周方向の接合部J2とが鉛直方向に一列に並ばないように、周方向に位置をずらして配置される。
【0040】
また、
図2~
図3に示すように、リングピース11の上端側には、径方向幅の概ね中間位置に、鉛直方向に重なり合うリングピース11の接続(連結)に供する複数の連結穴110が、周方向に沿って概ね等間隔に設けられている。各連結穴110は、内側にねじ部が形成された雌ねじ穴であって、各連結穴110にねじ込まれた前記図示外のボルトにより前記図示外の継手板等がリングピース11に固定されることで、隣接するリングピース11同士が相互に連結される。ここで、リングピース11の揚重にあたり、例えば
図3に示すように、リングピース11の連結穴110のうちリングピース11の重心位置Gとなる単一の箇所、又は重心位置Gを通る直線L上であって重心位置Gから等間隔となる複数の箇所(本実施形態では、重心位置Gを通る直線L上に位置する一対の連結穴110a,110b)に、例えばアイボルトなど、ワイヤロープ3を接続してリングピース11を吊り下げ可能な、ボルト状の吊り具4が取り付けられる。そして、このリングピース11にねじ込まれた吊り具4に接続されるワイヤロープ3によってリングピース11が揚重される。
【0041】
なお、本実施形態では、例えば
図3に示すように、リングピース11の上端面に設けられた、リングピース11の連結に供する連結穴110を用いて当該連結穴110に吊り具4を取り付ける態様を例示して説明するが、吊り具4の取り付け箇所は、必ずしもリングピース11の連結穴110に限定されるものではない。換言すれば、リングピース11の仕様等によっては、リングピース11の連結穴110がリングピース11の重心位置Gとなる単一の箇所、又は重心位置Gを通る直線L上であって重心位置Gから等間隔となる複数の箇所に配置されていない場合がある。この場合には、リングピース11の上端面に、リングピース11の連結穴110とは別に、リングピース11の重心位置Gとなる単一の箇所、又は重心位置Gを通る直線L上であって重心位置Gから等間隔となる複数の箇所に、吊り具4を取り付けるための取付穴(図示外)を設け、当該取付穴に吊り具4を取り付けることによってリングピース11を揚重することとしてもよい。このように、吊り具4を取り付け箇所については、リングピース11の連結穴110に限定されるものではなく、必要に応じて別途形成することも可能である。
【0042】
また、本実施形態に係る圧入沈設装置では、特に
図3~
図4に示すように、リングピース11の上端側のうち、前記沈設用土留壁1の圧入沈設時に圧入桁21によって押圧される被押圧領域が、連結穴110とオーバーラップしないように連結穴110よりも外周側(径方向外側)に設定されている。より具体的には、前記沈設用土留壁1の圧入沈設時に圧入桁21がリングピース11の重心位置Gとなる単一の箇所、又は重心位置Gを通る直線L上の重心位置Gから等間隔となる複数の箇所(本実施形態では一対の連結穴110a,110b)と重ならない領域に、前記被押圧領域が設定されている。
【0043】
なお、本実施形態では、リングピース11が、リングピース11の圧入沈設時に圧入桁21が連結穴110よりも外周側(径方向外側)を押圧しても圧入桁21から作用するせん断応力によってリングピース11が破損しない強度に設定されている。例えば、リングピース11が本実施形態で例示するRCセグメントである場合には、リングピース11全体が、前記沈設用土留壁1の圧入沈設時に圧入桁21が連結穴110よりも外周側(径方向外側)の領域を押圧したときに圧入桁21から受けるせん断応力によってリングピース11が変形ないし破損しない強度を具備するように設定されていて、リングピース11の外周側に偏倚して配置された圧入桁21の押圧力に対抗することが可能となっている。一方、リングピース11が周知のスチールセグメントである場合には、リングピース11の内部に縦方向(鉛直方向)に沿って埋設された金属製の縦方向リブ(図示外)が圧入桁21によって押圧される前記被押圧領域と重なる(オーバーラップ)するように設定されていて、リングピース11の外周側に偏倚して配置された圧入桁21の押圧力に対抗することが可能となっている。
【0044】
以上のように、本実施形態に係る圧入沈設装置及び圧入沈設方法は、リングピース11の上端側において、圧入桁21とは重ならない位置で、かつリングピース11の重心位置Gを通る直線L上に設けられ当該重心位置Gから等間隔となる複数の箇所(一対の連結穴110a,110b)に吊り具4をねじ込む。そして、リングピース11に取り付けた吊り具4にワイヤロープ3を接続することで、リングピース11の真上に延びるワイヤロープ3によって重心位置G上にてリングピース11を揚重し、沈設用土留壁1を組み立てることができる。
【0045】
(第1実施形態の作用効果)
以下、本実施形態に係る圧入沈設装置及び圧入沈設方法の特徴的な作用効果について具体的に説明する。
【0046】
図11に示すように、前記従来の圧入沈設装置によれば、圧入桁21が単位土留壁10よりも内側まで延設されていた。このため、リングピース11の真上にワイヤロープ3を接続して揚重することが困難であった。そこで、前記従来の圧入沈設装置では、天秤状の吊り具40を用いてリングピース11を揚重する位置を圧入桁21の内周縁よりも内側にオフセットさせることで、リングピース11の揚重を可能としていた。ところが、かかる天秤状の吊り具40の場合、リングピース11の反対側に錘41を配置してリングピース11の重量をバランスさせる必要がある。このため、リングピース11の大型化(重量増)に伴い錘41の重量も増大し、揚重機であるクローラクレーン24の大型化を招来してしまう点で改善の余地を残していた。また、リングピース11の大型化(重量増)に伴い錘41が大型化することによって、沈設用土留壁1の内側に配設される足場Bにおいて沈設用土留壁1の組み立て(リングピース11の組み立て)作業を行う作業者Mの動線を制約し、当該作業者Mの作業性が悪化してしまう点でも改善の余地があった。
【0047】
これに対し、本実施形態では、リングピース11の上端側において、圧入桁21が、リングピース11の重心位置Gとなる単一の箇所、又は重心位置Gを通る直線L上であって重心位置Gから等間隔となる複数の箇所(一対の連結穴110a,110b)よりも外周側に配置されている。そして、ワイヤロープ3が一対の連結穴110a,110bに吊り具4を介して接続されることで、リングピース11を重心位置Gにおいて揚重可能となっている。これにより、前記従来のような天秤状の吊り具40を用いなくともリングピース11を真上から揚重可能となり、リングピース11が大型化した場合でも、これに伴って天秤状の吊り具40に吊るす錘41の大型化を招来してしまうおそれがない。その結果、前記天秤状の吊り具40に吊るされる錘41の大型化に伴う揚重機(クローラクレーン24)の大型化を回避することができる。
【0048】
さらには、揚重時のリングピース11とのバランスに供する天秤状の吊り具40に吊るす錘41の大型化が回避されることにより、沈設用土留壁1の内側に配設される足場Bにおいて沈設用土留壁1の組み立て(リングピース11の組み立て)作業を行う作業者Mの適切な動線が確保され、当該作業者Mの作業性の向上を図ることができる。
【0049】
また、本実施形態では、リングピース11に設けられた連結穴110に吊り具4を取り付けることにより、連結穴110を介してワイヤロープ3をリングピース11に接続している。このため、ワイヤロープ3を接続する吊り具4を取り付けるための取付穴等を別途設ける必要がない。その結果、リングピース11の加工工数が削減され、沈設用土留壁1の設置コストの増大化を抑制することができる。
【0050】
〔第2実施形態〕
図5~
図10は本発明に係る圧入沈設装置及び圧入沈設方法の第2実施形態を示しており、本実施形態は、前記第1実施形態におけるリングピース11に対するワイヤロープ3の接続態様を変更したものである。本実施形態は、とりわけ、圧入桁21に押圧される被押圧領域が各連結穴110とオーバーラップするようなリングピース11に有効なものである。なお、かかる変更点以外の基本的な構成については前記第1実施形態と同様である。そのため、前記第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すことにより、その説明を省略する。
【0051】
図5は、リングピース11の揚重状態を斜め上方から見た斜視図を示し、
図6は、リングピース11の揚重状態を真上から見た平面図を示している。また、
図7は、
図5に示すリングピース11の揚重状態を側方から見た側面図を示し、
図8は、
図6のB-B線に沿って切断した圧入桁及びリングピースの断面図を示している。また、
図9は、
図5に示す吊り治具5を単体で表した斜視図を示し、
図10は、
図9に示す吊り治具5をリングピース11に取り付けた状態を現した斜視図を示している。
【0052】
図6に示すように、本実施形態は、リングピース11の上端面において圧入桁21に押圧される被押圧領域がリングピース11の重心位置Gよりも外周側(径方向外側)であって、かつ前記第1実施形態で開示した吊り具4によってはワイヤロープ3を接続困難な、圧入桁21に押圧される被押圧領域が連結穴110とオーバーラップしたリングピース11に適用される。具体的には、本実施形態では、リングピース11の上端面に吊り治具5を取り付けて、かかる吊り治具5にワイヤロープ3を接続することによって揚重する。換言すれば、本実施形態では、吊り治具5によってワイヤロープ3の接続位置を圧入桁21の内周縁よりも内周側(径方向内側)にオフセットさせて、当該吊り治具5にワイヤロープ3を接続することで、リングピース11の重心位置Gにてワイヤロープ3を接続し、揚重可能としたものである。
【0053】
図5~
図10に示すように、吊り治具5は、鉄系材料によって概ねT字形状をなす板状に一体形成されたものであり、リングピース11の上端面に複数のボルト6によって締結される。具体的には、吊り治具5は、板状に形成された治具本体51と、治具本体51に設けられ、ボルト6の軸部が挿通する複数のボルト貫通孔52と、治具本体51の上面に治具本体51の形状に沿って概ねT字形状に配置された補強リブ53と、を有する。
【0054】
治具本体51は、
図6、
図9、
図10等に示すように、リングピース11の上端面とオーバーラップする取付基部511と、リングピース11の内周側に相当する取付基部511の側方に延設され、リングピース11の重心位置Gとオーバーラップする延長部512と、を有し、これらが一体に形成されている。なお、治具本体51は、単なる矩形状に形成されていてもよいが、本実施形態では、取付基部511に設けられるボルト貫通孔52の間隔と、延長部512に設けられる後述の第2リブ532の間隔と、を確保したうえで最小限の面積となる概ねT字形状に形成することによって、軽量化が図られている。これにより、リングピース11の揚重量(吊り治具5を含む総重量)の増加が最小限に抑えられていて、リングピース11の揚重量の増加に伴うクローラクレーン24(
図1参照)の大型化を抑制している。
【0055】
ボルト貫通孔52は、特に
図9、
図10に示すように、リングピース11の各連結穴110のうち重心位置Gを通る直線Lよりも外周側(径方向外側)に位置する一対の連結穴(図示外)と対向する位置に設けられている。なお、本実施形態では、リングピース11に設けられた前記一対の連結穴(図示外)を利用して吊り治具5を取り付けることとし、リングピース11の不要な穴あけが省略されてリングピース11の加工工数が削減されている。しかし、リングピース11の仕様等に応じて前記一対の連結穴(図示外)を含む連結穴110以外に設けられた取付穴(図示外)に吊り治具5を取り付ける場合は、ボルト貫通孔52を前記取付穴(図示外)に対応する位置に形成してもよい。
【0056】
補強リブ53は、
図6~
図10に示すように、治具本体51の上面に一体に設けられていて、治具本体51の取付基部511において長手方向に延びる横リブに相当する第1リブ531と、第1リブ531に対して直交するように、治具本体51の延長部512に沿って延びる縦リブに相当する第2リブ532と、で構成される。また、補強リブ53に加えて、治具本体51の下面側に、治具本体51の幅方向に沿って延びる概ね矩形板状をなす下方リブ54が突設されている。
【0057】
第1リブ531は、一対のボルト貫通孔52を挟んで両側に概ね同じ長さをもって平行に延びる第1内側リブ531a及び第1外側リブ531bからなる一対の突条により構成されていて、吊り治具5をリングピース11に取り付けた状態でリングピース11の円弧形状に対する接線方向に延びるように設けられている。また、第1内側リブ531aと第1外側リブ531bは、共に同じ高さを有していて、それぞれ吊り治具5をリングピース11に取り付けるためのボルト6の頭部の高さよりも若干高くなるように形成されている。
【0058】
第2リブ532は、それぞれ延長部512に臨む第1内側リブ531aの側面に接続され、幅方向中心線C(
図6参照)から等間隔となる位置に概ね同じ長さをもって延長部512の両側縁部に沿って平行に延びる第2左側リブ532a及び第2右側リブ532bからなる一対の突条によって構成されている。なお、第2リブ532は、第1リブ531と同じ高さに設定されている。また、第2左側リブ532a及び第2右側リブ532bには、ワイヤロープ3の接続に供する円形に形成された複数の接続孔533が、第2左側リブ532a及び第2右側リブ532bの長手方向に沿ってそれぞれ対向するように設けられている。そして、この左右一対の複数の接続孔533のうち、リングピース11の重心位置Gを通る直線L上に位置する一対の接続孔533にワイヤロープ3の端末が接続されることにより、リングピース11の真上から揚重することが可能となっている。
【0059】
このように、本実施形態では、連結穴110を利用して吊り治具5をリングピース11の上端面に複数(本実施形態では2つ)ボルト6によって固定し、ワイヤロープ3の端末を吊り治具5の第2リブ532(第2左側リブ532a及び第2右側リブ532b)に設けられた左右一対の接続孔533にそれぞれ接続することにより、リングピース11を揚重する。具体的には、まず、治具本体51に設けられた各ボルト貫通孔52にボルト6を挿通させ、各ボルト6をリングピース11の上端面の連結穴110にねじ込むことにより、吊り治具5をリングピース11の上端面に固定する。その後、リングピース11に固定された吊り治具5の第2リブ532(第2左側リブ532a及び第2右側リブ532b)に設けられた前記左右一対の接続孔533に、クローラクレーン24のジブ25に接続したフック26に掛けられたワイヤロープ3の両端末を接続する。これにより、吊り治具5を介してリングピース11を重心位置Gにて真上から揚重し、リングピース11を組み立てることができる。
【0060】
(第2実施形態の作用効果)
以上のように、本実施形態では、リングピース11の上端面に吊り治具5を取り付け、この吊り治具5を介してリングピース11を揚重することとした。このように、吊り治具5を用いてリングピース11を揚重することによって、圧入沈設装置の圧入桁21が例えば連結穴110などワイヤロープ3をリングピース11に接続するための穴と重なってしまう場合でも、リングピース11の重心位置Gにワイヤロープ3を接続して鉛直方向に揚重することができる。これにより、圧入桁21により押圧されるリングピース11の被押圧領域の範囲や連結穴110の配置等に制約されることなくリングピース11を真上から揚重可能となり、汎用性を高めることができる。
【0061】
また、本実施形態では、吊り治具5が、リングピース11に設けられた連結穴110を介してリングピース11に取り付け可能となっている。このように、吊り治具5を、連結穴110を利用してリングピース11に接続することで、リングピース11の上端面において吊り治具5を接続するための穴などを別途設ける必要がなくなる。これにより、リングピース11の加工工数が削減され、沈設用土留壁1の設置コストの増大を抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態では、吊り治具5の上面、すなわち圧入桁21と対向する面に、補強リブ53が設けられている。このように、吊り治具5の圧入桁21と対向する面に、吊り治具5を補強するための補強リブ53が設けられていることで、吊り治具5の剛性を高めることができる。これにより、リングピース11を揚重する際、ワイヤロープ3による引っ張り力により吊り治具5が鉛直上側へと捲れ上がる変形が抑制され、リングピース11の適切かつ安定した揚重に寄与することができる。また、補強リブ53が設けられていることにより、吊り治具5の耐久性の向上にも寄与することができる。
【0063】
また、本実施形態では、ワイヤロープ3が、補強リブ53(第2リブ532の第2左側リブ532a及び第2右側リブ532b)に設けられた左右一対の接続孔533に接続可能に構成されている。このように、ワイヤロープ3を、比較的剛性の高い補強リブ53(第2リブ532の第2左側リブ532a及び第2右側リブ532b)に設けられた接続孔533に接続することで、リングピース11の揚重安定性の向上が図れると共に、吊り治具5の耐久性の向上を図ることができる。
【0064】
本発明は、前記実施形態において例示した構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適用対象の仕様等に応じて自由に変更することができる。
【0065】
前記各実施形態では、本発明に係る圧入沈設装置及び圧入沈設方法を、RCセグメントからなるリングピース11を組み立ててなる沈設用土留壁1に適用したものを例示している。しかしながら、本発明に係る圧入沈設装置及び圧入沈設方法は、上記RCセグメントからなるリングピース11に限定されるものではなく、例えば周知のスチールセグメントからなるリングピースを組み立ててなる沈設用土留壁にも適用可能であることは言うまでもない。なお、かかるスチールセグメントからなるリングピースは、前記各連結穴110がそれぞれ貫通孔によって構成されるため、吊り具4はナットにより締結され、吊り治具5はボルト・ナットにより締結される。
【0066】
また、前記各実施形態では、いずれもワイヤロープ3をリングピース11の重心位置Gを通る直線L上であって重心位置Gから概ね等間隔となる複数の箇所、すなわち前記第1実施形態では、一対の連結穴110a,110bに取り付けられた吊り具4に、また前記第2実施形態では、一対の連結穴(図示外)に固定した吊り治具5に設けられた一対の接続孔533に、それぞれ接続された態様を例示しているが、かかる態様に限定されるものではない。換言すれば、リングピース11の重心位置Gとなる単一の箇所、又は吊り治具5においてリングピース11の重心位置Gとなる単一の箇所にワイヤロープ3を接続する場合でも、リングピース11を真上から揚重することができる。
【符号の説明】
【0067】
1…沈設用土留壁(分割組立型土留壁)
10…単位土留壁
11…リングピース
12…刃口リング
110…連結穴
21…圧入桁
22…グラウンドアンカー
23…油圧ジャッキ
24…クローラクレーン(揚重機)
25…ジブ
26…フック
3…ワイヤロープ(索条体)
4…吊り具
5…吊り治具
51…治具本体
511…取付基部
512…延長部
52…ボルト貫通孔
53…補強リブ
531…第1リブ
531a…第1内側リブ
531b…第1外側リブ
532…第2リブ
532a…第2左側リブ
532b…第2右側リブ
533…接続孔
6…ボルト
C…幅方向中心線
G…重心位置
L…直線(重心位置を通る直線)