(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045610
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】車両用ランプ
(51)【国際特許分類】
F21S 43/20 20180101AFI20230327BHJP
F21S 43/14 20180101ALI20230327BHJP
F21S 43/50 20180101ALI20230327BHJP
F21S 43/239 20180101ALI20230327BHJP
F21S 43/245 20180101ALI20230327BHJP
F21S 43/249 20180101ALI20230327BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20230327BHJP
F21W 103/25 20180101ALN20230327BHJP
【FI】
F21S43/20
F21S43/14
F21S43/50
F21S43/239
F21S43/245
F21S43/249
F21Y115:10
F21W103:25
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154135
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081433
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 章夫
(72)【発明者】
【氏名】今井 悠行
(57)【要約】
【課題】透光レンズを備えるランプの非点灯時における外観上の見栄えを改善した車両用ランプを提供する。
【解決手段】光源部2と、光源部2の光が内面に入射され、入射された光を外面から出射するアウターレンズ(透光レンズ)3を備える車両用ランプ1であって、アウターレンズ3は光を出射する光出射面部31と、光出射面部を透光レンズの板厚方向に屈曲させるための立壁部35を備える。さらに、立壁部35の内面に、外面から入射された光を外面に向けて再帰反射する光再帰部(再帰リブ)37を備える。ランプの非点灯時に、外部光を光再帰部37で再帰反射して外面から出射し、立壁部35が暗く見えることが回避され、ランプの外観上の見栄えが改善される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源部と、当該光源部の光が内面に入射され、入射された光を外面から出射する透光レンズを備える車両用ランプであって、前記透光レンズは前記光を出射する光出射面部と、この光出射面部を透光レンズの板厚方向に屈曲させるための立壁部を備え、この立壁部の内面に、外面から入射された光を当該外面に向けて再帰反射する光再帰部を備えることを特徴とする車両用ランプ。
【請求項2】
前記光出射面部は、入射された前記光源部の光を出射する主出射部を備え、前記立壁部はこの主出射部の周縁に沿って延在される請求項1に記載の車両用ランプ。
【請求項3】
前記光再帰部は立壁部の内面に一体に形成され、かつ立壁部の延在方向に沿って延長された断面が三角状をした再帰リブで構成される請求項2に記載の車両用ランプ。
【請求項4】
前記光再帰部は立壁部の内面に一体に形成され、かつ立壁部の延在方向に配列された複数個の錘状の再帰ステップで構成される請求項2に記載の車両用ランプ。
【請求項5】
前記主出射部は内面に複数個のレンズステップが配設されており、このレンズステップは、当該主出射部の外面から入射された光を反射して当該外面から出射させることが可能に構成される請求項3又は4に記載の車両用ランプ。
【請求項6】
前記レンズステップは錘状に形成され、その錘面は凸状又は凹状の球面又は自由曲面で形成される請求項5に記載の車両用ランプ。
【請求項7】
前記光源部は、発光素子と、この発光素子の光を導光しかつ導光した光を出射するインナーレンズを備えており、当該インナーレンズから出射された光を前記透光レンズの内面に入射させる構成である請求項1ないし6のいずれかに記載の車両用ランプ。
【請求項8】
前記インナーレンズは導光される光を内面反射する反射ステップを備えた光反射面と、当該反射ステップで反射された光を前記透光レンズに向けて出射する光出射面を備える請求項7に記載の車両用ランプ。
【請求項9】
自動車のサイドターンシグナルランプとして構成されて自動車のサイドミラーのミラーカバーに内装され、前記アウターレンズの光出射面部は、当該ミラーカバーに開口された開口窓を通して外部に露呈されている請求項1ないし8のいずれかに記載の車両用ランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等の車両に配設されるランプに関し、特に光を出射する透光レンズを備えた車両用ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用ランプとして、透光レンズ(アウターレンズや透光性カバーとも称される)を有するランプハウジング内に光源又は光源ユニットが配設され、これら光源又は光源ユニットから出射された光を、透光レンズを透して出射する構成のものがある。特許文献1には、自動車のサイドミラー(ドアミラーとも称する)に配設されたサイドターンシグナルランプが記載されており、このサイドターンシグナルランプは光源と導光体で構成される光源を備え、この光源から出射される光を、アウターカバーを透して出射する構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のサイドターンシングナルランプ(以下、ランプと略称する)は、光源がドアミラーのカバーハウジング内に配設されており、アウターカバーはカバーハウジングに開口された開口窓を通して外部に露呈された状態に配設されている。そして、光源ユニットから出射されてアウターカバーを透して出射される光は、カバーハウジングの開口窓を透して自動車の側方から後方に向けて照射される。
【0005】
このようなランプでは、デザイン等の要求からアウターカバーの光出射面、すなわちランプが点灯されたときに発光面となる面をカバーハウジングの外面と面一とするために、アウターカバーには発光面を板厚方向に屈曲させるための立壁部が設けられる。この立壁部は光の出射方向に沿って厚み寸法が大きくなるので光吸収が他の部位よりも大きくなり、ランプの非点灯時に発光面を外部から観察したときに立壁部が暗く見える外観となり、ランプの外観上の見栄えが低下するという課題がある。
【0006】
また、一方で、アウターカバーの光出射面には、ランプの非点灯時における外部からの視認性を高めるために、ピラミッド型あるいは正四面体を構成するRR(リフレックス・リフレクター)と称する反射ステップが形成されている。この反射ステップは、通常ではピラミッド型あるいは正四面体を構成する複数の錘面がそれぞれ平面で構成されている。そのため、光を再帰反射する角度に制限を受け、ランプの非点灯時に左右斜め方向の大きな角度位置からランプを観察すると、見る角度によっては内部が透視されてしまうことがあり、ランプの外観上の見栄えが低下する。
【0007】
本発明の目的は、透光レンズを備えるランプの見栄え、特に非点灯時における外観上の見栄えを改善した車両用ランプを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、光源部と、当該光源部の光が内面に入射され、入射された光を外面から出射する透光レンズを備える車両用ランプであって、透光レンズは光を出射する光出射面部と、この光出射面部を透光レンズの板厚方向に屈曲させるための立壁部を備え、この立壁部の内面に、外面から入射された光を当該外面に向けて再帰反射する光再帰部を備える。ここで、光出射面部は、例えば、入射された光源部の光を出射する主出射部を備え、立壁部はこの主出射部の周縁に沿って延在される。
【0009】
本発明において、例えば、光再帰部は立壁部の内面に一体に形成され、かつ立壁部の延在方向に沿って延長された断面が三角状をした再帰リブで構成される。あるいは、光再帰部は立壁部の内面に一体に形成され、かつ立壁部の延在方向に配列された複数個の錘状の再帰ステップで構成される。
【0010】
また、本発明において、主出射部は内面に複数個のレンズステップが配設されており、このレンズステップは、当該主出射部の外面から入射された光を反射して当該外面から出射させることが可能に構成されることが好ましい。この場合において、レンズステップは錘状に形成され、その錘面は凸状又は凹状の球面又は自由曲面で形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ランプの非点灯時に、透光レンズの外面から立壁部に入射された外部光を、当該立壁部に設けられた光再帰部により再帰反射させ、透光レンズの外面から出射させる。これにより、立壁部が暗く見えることが回避でき、ランプの外観上の見栄えが改善される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のランプを適用した右ドアミラーの外観図。
【
図7】アウターレンズを内面側から見た一部を破断した斜視図。
【
図8】(a)実施形態のランプの非点灯時の外部光の光路を示す断面図、(b)その模式的外観図。
【
図9】(a)比較例のランプの非点灯時の外部光の光路を示す断面図、(b)その模式的外観図。
【
図10】光再帰部の変形例を説明する
図8と同様の図。
【
図11】(a)実施形態のレンズステップにおける外部光の光路を示す断面図、(b)参照例のレンズステップにおける外部光の光路を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明を自動車の右ドアミラー100に組み込まれたサイドターンシグナルランプ(以下、STSランプと略称する)1に適用した実施形態の外観図である。右ドアミラー100はアーム部101により自動車の右ドア200に取り付けられており、当該右ドアミラー100のハウジングを構成しているミラーカバー102の外面の一部、すなわち自動車の側方から後方に向けられた部位に開口窓103が開設されている。STSランプ1は、このミラーカバー102内において当該開口窓103に臨む部位に配設されている。なお、以降において前後方向は、自動車ないしは右ドアミラー100を基準にした方向である。
【0014】
図2及び
図3は前記右ドアミラー100の概略の断面図であり、それぞれ
図1のII-II線、III-III線に沿った断面図である。なお、本発明と関連の少ないミラー内部の構造については図示を省略している。また、
図4はその要部の概略の分解斜視図である。右ドアミラー100は前記アーム部101に一体化されるランプボディ104を備えており、前記ミラーカバー102に覆われている。ランプボディ104とミラーカバー102は、それぞれ所要の色彩の非透光性樹脂、例えばABS樹脂で形成される。ランプボディ104の後方に向けられた後面側には、図示を省略したミラー傾動機構等を備えるミラー(反射鏡)105が取り付けられる。また、これと反対側のランプボディ104の前面側にはミラーカバー102によってランプ室が構成されており、このランプ室の内部に前記STSランプ1が配設されている。
【0015】
図2~
図4に示すように、STSランプ1は光源部2とアウターレンズ3を備えている。光源部2は、光源4と、この光源4から出射した光を導光する導光体(ここではインナーレンズと称する)5で構成されており、前記ランプボディ104の前面側に配設され、ランプボディ104に支持されている。前記アウターレンズ3は本発明における透光レンズであり、ミラーカバー102の外面の曲面形状に倣って湾曲されるとともに、その一部がミラーカバー102に開口されている開口窓103を通して外部に露呈され、ランプボディ104に支持されている。
【0016】
このSTSランプ1は、自動車の進路方向を変更する際や停車時に、運転者のスイッチ操作等によって点滅状態で点灯される。点灯されたときには、ミラーカバー102の開口窓103を通して外部に露呈されているアウターレンズ3の一部から光が出射され、この光出射される部位がSTSランプ1の発光面となる。そこで、以降においては、このSTSランプ1の点灯時に光が出射されて発光面となるアウターレンズ3の露呈された部位を光出射面部と称する。
【0017】
STSランプ1の詳細について説明する。
図5と
図6はそれぞれ
図2と
図3の要部の拡大図である。前記光源部2の光源4は、アンバー色の色光を発光する複数個、ここでは3個のLED(発光ダイオード)41を備えており、前記ボディ104に支持された光源基板42に搭載されている。この光源基板42には、図示は省略するが各LED41に電気接続された回路が構成されており、自動車の車体側から送られてくる所定の信号に基づいて各LED41に対して給電を行い、発光させるようになっている。
【0018】
前記光源部2のインナーレンズ5は、無色のアクリル等の透光性樹脂で形成されており、前端部から後端部に向けて断面寸法が徐々に小さくされた略テーパ状に形成されるとともに、前記したアウターレンズ3の湾曲形状に略沿うように湾曲された角ロッド状、ないしは角板状に形成されている。あるいは丸や楕円のロッド状やパイプ状であってもよい。このインナーレンズの前端部の端面51は光入射面として前記LED41の発光面に対向配置されている。この光入射面51にはLED41で発光した光が入射され、入射された光はインナーレンズ5の内部を導光されるようになっている。光入射面51には、LED41の光の入射効率を高めるための所要のステップが形成されているが、ここではその説明は省略する。
【0019】
前記インナーレンズ5の一つの側面、すなわち前記アウターレンズ3と反対側に向けられた側面52は、長さ方向に沿って多数の格子状の微細凹凸形状をした反射ステップ54が長さ方向に配列形成されている。この反射ステップ54は、インナーレンズ5内を導光される光を内面反射させるので当該側面52はインナーレンズ5の光反射面として構成されている。
【0020】
また、この光反射面52に対面するインナーレンズ5の反対側の側面53は、光反射面52の反射ステップ54で内面反射された光を外部に出射させる光出射面として構成されている。この光出射面53はアウターレンズ3に対向配置されており、光出射面53から出射された光がアウターレンズ3に入射される構成とされている。
【0021】
アウターレンズ3は透明アクリル等の無色の透光性部材で形成され、
図4に示したように、少なくともインナーレンズ5の光出射面53を覆うことができる形状、サイズに形成されている。そして、アウターレンズ3の一部、すなわちインナーレンズ5の光出射面53に対向されている部位は、ミラーカバー102に開口された開口窓103と同じ形状をした光出射面部31として構成されており、この光出射面部31が前記開口窓103の内部に配設されている。この光出射面部31は、前記したようにSTSランプ1の発光面となる。また、アウターレンズ3は、光出射面部31の周囲に非光出射面部32が形成されており、この非光出射面部32の周囲が支持部33として構成され、この支持部33において前記ランプボディ104に支持されている。
【0022】
図7はアウターレンズ3を内面側から見た一部を破断した斜視図であり、アウターレンズ3の光出射面部31には、その周縁に沿って立壁部35が形成されている。この立壁部35は光出射面部31の周縁部位をレンズ板厚方向に所要の寸法で屈曲させるために形成されており、この立壁部35により光出射面部31は周縁においてレンズ板厚方向に屈曲されて非光出射面部32よりも板厚方向に突出された形状とされている。そして、この光出射面部31はミラーカバー102の内面側から開口窓103に内挿され、当該開口窓103を内側から塞ぐように配設されることにより、光出射面部31の外面はミラーカバー102の外面とほぼ面一の構成とされて外部に露呈される。
【0023】
前記光出射面部31は、周縁の立壁部35で囲まれた領域が主出射部34として構成されている。この主出射部34の内面には、角錐状をした多数個のレンズステップ36が枡目状に配列した状態で突出形成されている。ここではレンズステップ36は略ピラミッド状に形成されているが、正四面体ないしはこれに近い形状であってもよい。また、各レンズステップ36の角錐を構成している三角形をした錘面は所要の曲率半径の凸球面、あるいは凸自由曲面として形成されている。このレンズステップ36の頂角は、アウターレンズ3を構成している透光性樹脂の光屈折率によって設定されるが、基本的には略直角ないしこれに近い角度に設定されている。
【0024】
前記光出射面部31の周縁に沿った立壁部35の内面には光再帰部37が形成されている。この光再帰部37は、ここでは断面形状が三角形に形成され、かつ立壁部35の周方向に沿って延在された凸状の再帰リブとして構成されている。この再帰リブ37はアウターレンズ3の外面から入射された光を180度反対方向に向けて内面反射し、当該外面から出射する構成である。なお、この再帰リブ37は立壁部35の内面に形成されているが、この実施形態のように主光反射面部31の周縁の一部に立壁部が存在していない箇所には形成されていない。この再帰リブ37の頂角は略60~90度の角度に設定される。
【0025】
この実施形態では、STSランプ1の点灯時には、
図5と
図6に実線矢印で示すように、LED41が点滅状態で発光されると、発光されたアンバー色光はインナーレンズ5の光入射面51に入射され、インナーレンズ5の内部を後端部に向けて導光される。アンバー色光は、この導光される途中において光反射面52の反射ステップ54により内面反射され、光出射面53から出射される。反射ステップ54は光反射面53の長さ方向に配列されているので、インナーレンズ5から出射されるアンバー色光は光出射面53の長さ方向にわたってほぼ均一な明るさ(光度)で出射される。なお、LED41は白色光を発光するLEDで構成されてもよく、その場合にはインナーレンズ5はアンバー色の透光性樹脂で形成され、インナーレンズ5の光出射面53からアンバー色光が出射されるように構成してもよい。
【0026】
インナーレンズ5から出射されたアンバー色光は、アウターレンズ3の内面に入射される。入射された光のうち光出射面部31に入射された光はミラーカバー102の開口窓103を通してアウターレンズ3の外面から出射される。これにより、光出射面部31による照明が行われ、サイドミラー100の外部から見たときにSTSランプ1が点灯状態とされる。なお、インナーレンズ5から出射されてアウターレンズ3の非光出射面部32に入射された光はミラーカバー102により遮光されるのでSTSランプ1の点灯に寄与することはない。
【0027】
ここで、インナーレンズ5からアウターレンズ3の光出射面部31に入射されるアンバー色光は、主出射部34に設けられた多数のレンズステップ36において屈折される。レンズステップ36はピラミッド状ないしはこれに類する形状であるので、屈折された光は拡散状態で主出射部34から出射される。また、インナーレンズ5から立壁部35に入射されるアンバー色光は、立壁部35の再帰リブ37において幾分拡散されながら立壁部35を透過してアウターレンズ3の外部に出射される。このように、アウターレンズ3の光出射面部31を透過して外面から出射されるアンバー光は、自動車の側方ないし前後方向の広い領域に向けられた配光特性とされる。
【0028】
一方、STSランプの非点灯時に、自動車の外部からSTSランプを観察すると、開口窓を通して露呈されているアウターレンズ3の光出射面部31が視認される。このときの外観上の見栄えについて、
図8(a)に示すように、光出射面部31の主出射部34は内面に略ピラミッド状ないしは正四面体状をしたレンズステップ36が形成されているので、この主出射部34の外面から入射された外部光はレンズステップ36による反射によって主出射部34の外面から出射される。これにより、主出射部34は枡目状に配列された多数のレンズステップがそれぞれ明るく光っている外観となる。
【0029】
また、光出射面部31の立壁部35には内面に再帰リブ37が形成されているので、立壁部35の外面から入射された外部光は、立壁部35の内部を導光された上で再帰リブ37により反対方向に向けて反射され、立壁部35の外面から出射される。これにより光出射面部31の立壁部35の領域も明るく光る外観となる。結果として、
図8(b)に模式的に示すように、主出射部34と立壁部35からなる光出射面部31の全体が明るく光る外観となり、STSランプ1の非点灯時の見栄えの向上が図られる。再帰リブ37は、その頂部を曲面で構成することにより、反射された光に再帰リブの頂部の稜線による陰が生じることもなく、さらなる見栄えの向上が図られる。
【0030】
仮に、
図9(a)に示すように、光出射面部31の立壁部35の内面に再帰リブが形成されていないと、光出射面部31の外面から立壁部35に入射された外部光の大部分は、立壁部35を透過した後に内面からミラーカバー102の内部に向けて出射される。そのため、
図9(b)に模式的に示すように、外部から観察したときに、立壁部35の領域は黒い帯状の外観を呈し、光出射面部31の周縁に沿って黒い帯状が確認され、立壁部35の部分は穴が開いているような外観となって見栄えが低下されてしまう。
【0031】
このように、実施形態では、立壁部35の略全周にわたって内面に光を再帰反射する再帰リブ37が形成され、この再帰リブ37によってアウターレンズ3の外面から入射される外部の光を外部に向けて再帰反射しているので、立壁部35が黒い帯び状に観察されることが防止される。したがって、光出射面部31の主出射部31と、その周囲の立壁部35がそれぞれ明るい外観を呈することになり、STSランプ1の非点灯時における見栄えの向上が図られる。
【0032】
ここで、実施形態では、光再帰部は立壁部35の延長方向に沿って均一な断面形状の再帰リブ37で形成されているが、
図10のように、それぞれ独立した構成の複数個の再帰ステップ37Aを立壁部35の延長方向に配列した構成とされてもよい。この場合には、主出射部34に形成されているレンズステップ36と同じピッチ寸法で配列されてもよい。このようにすることで、STSランプ1の非点灯時において、光出射面部31の周縁に沿った立壁部35は、主出射部34の周方向に沿って多数の再帰ステップ37Aがそれぞれ明るく光っている外観となる。したがって、再帰ステップ37Aは、主出射部34において枡目状に配列された多数のレンズステップ36がそれぞれ明るく光っている外観と渾然一体となり、統一化された外観となる。
【0033】
立壁部35の内面に設けられた光再帰部37は外部から入射された光を再帰反射する構成であればよいので、前記した再帰リブ37や再帰ステップ37Aに限られるものではない。すなわち、単なる光反射面として構成されてもよく、例えば、図示は省略するが、立壁部35の内面にアルミニウム等の光反射材を塗布した構成、あるいは光反射材を接着した構成であってもよい。
【0034】
光出射面部31の主出射部34に設けられている多数のレンズステップ36は、
図11(a)の断面図に示すように、各レンズステップ36を構成している三角形をした4つの錘面36aは所要の曲率半径をした凸球面、あるいは自由な凸曲面で形成されている。そのため、STSランプ1の点灯時に、インナーレンズ5からアウターレンズ3に入射されるアンバー色光は、レンズステップ36により屈折されるが、錘面36aが凸球面、凸曲面で構成されているので、実線矢印で示すように、錘面が平面で構成されている場合に比較して屈折光は収束され、かつその後に発散されるので光の拡散効果が高められる。これにより、点灯時における光出射面部31での明るさの均一性が向上される。
【0035】
STSランプ1の非点灯時においても、レンズステップ36の錘面36aが凸球面、凸曲面で構成されていることにより、破線矢印で示すように、アウターレンズ3の外面から入射されてレンズステップ36において反射される光束(光の束)は、反射によってその光束が収束ないしは発散される。したがって、一部の光は内面反射の条件を満たすことができず、アウターレンズ3の外部に出射され、さらにその一部の光は隣のレンズステップ36を通してアウターレンズ3に再度入射される。この再度入射された光は、当該レンズステップ36において反射され、アウターレンズ3の外面から出射される。これにより、外部からアウターレンズ3に入射された光は、レンズステップ36により反射されて外面から出射される光の出射領域が拡大され、STSランプ1を左右及び上下方向の広い角度領域から観察しても光出射面部31が明るい外観となり、見栄えが向上される。
【0036】
因みに、
図11(b)に参照例の断面図を示すように、錘面36bが平面で構成されているレンズステップ36では、STSランプ1の点灯時にインナーレンズからアウターレンズ3に入射されるアンバー色光は、実線矢印で示すように、レンズステップ36により屈折された屈折光の角度範囲が拡大されることは少なく、光の拡散効果は少ない。そのため、点灯時における光出射面部31での明るさの均一性を得ることが難しいことがある。
【0037】
また、STSランプ1の非点灯時にアウターレンズ3の外面から入射される光は、破線矢印で示すように、レンズステップ36の錘面36bで反射される光はその光束が略一定で拡大されることは殆どなく、またアウターレンズ3の内面側に透過されて再入射される光も殆どない。そのため、アウターレンズ3の光出射面部31から出射される光の出射方向は制限され、STSランプ1を左右斜め方向及び上下斜め方向から観察したときに、光出射面部31の明るさの均一性が損なわれることがあり、外観上の見栄えの向上が制限されることがある。
【0038】
本発明において、アウターレンズの形状、特に光出射面部の主出射部や立壁部の構成は実施形態の構成に限られるものではない。特に、立壁部に設けられた光再帰部は、光を再帰反射ないし単に反射する構成であれば、実施形態の再帰リブや再帰ステップ、光反射面に限られるものではない。
【0039】
また、アウターレンズの主出射部に形成されたレンズステップは、アウターレンズの外面から入射された光を発散あるいは収束状態で反射する機能を有しており、反射した光を主出射部から広い角度範囲に向けて出射させる機能を有していればよい。例えばレンズステップの角錐を構成する錘面は凹球面または凹自由曲面であってもよい。あるいは、レンズステップは円錐として構成され、その錘面が凸状または凹状の曲面で構成されてもよい。
【0040】
本発明は実施形態に記載した構成のSTSランプに限られるものではなく、光源部からの光を、透光レンズを透過させて出射させる構成のランプに適用できる。したがって、光源部としてインナーレンズを備えておらず、光源の光を直接に、あるいはリフレクタで反射して透光レンズを透過させる構成のランプにも適用できる。また、本発明における透光レンズは、実施形態に記載のアウターレンズはもとより、透光性カバーとも称される透光性部材を含むものである。
【符号の説明】
【0041】
1 STSランプ(サイドターンシグナルランプ:車両用ランプ)
2 光源部
3 アウターレンズ(透光レンズ)
4 光源
5 インナーレンズ
31 光出射面部
32 非光出射面部
33 支持部
34 主出射部
35 立壁部
36 レンズステップ
36a,36b 錘面
37 再帰リブ(光再帰部)
37A 再帰ステップ(光再帰部)
41 LED(発光ダイオード:光源)
51 光入射面
52 光反射面
53 光出射面
100 サイドミラー
102 ミラーカバー
103 開口窓
104 ランプボディ
105 ミラー