(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045611
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】根巻き構造及び根巻きの施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20230327BHJP
E04B 1/24 20060101ALI20230327BHJP
B27M 3/00 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
E04B1/58 511H
E04B1/24 R
B27M3/00 D
B27M3/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154136
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 勇二
【テーマコード(参考)】
2B250
2E125
【Fターム(参考)】
2B250AA02
2B250BA04
2B250CA01
2B250EA03
2B250EA14
2B250FA14
2B250FA16
2B250FA31
2B250FA41
2B250FA42
2B250GA05
2B250HA03
2E125AA03
2E125AA45
2E125AB16
2E125AC04
2E125AG03
2E125AG43
2E125BA02
(57)【要約】
【課題】施工の手間を削減することができる根巻き構造及び根巻きの施工方法を提供する。
【解決手段】柱(鉄骨柱1)の側面1aに固定される下地材20と、前記下地材20に固定され、前記柱(鉄骨柱1)の側面1aとの間に隙間が形成されるように前記柱(鉄骨柱1)の側面1aを全周に亘って覆い、側面が前記柱(鉄骨柱1)の根巻きの仕上げ面を構成するパネル40と、前記柱(鉄骨柱1)の側面1aと前記パネル40との間の隙間を下方から塞ぐように前記柱に固定される底部(プレート30)と、前記柱(鉄骨柱1)の側面1a、前記パネル30及び前記底部(プレート30)により区画される空間Aに充填されるコンクリート4と、を具備する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱の側面に固定される下地材と、
前記下地材に固定され、前記柱の側面との間に隙間が形成されるように前記柱の側面を全周に亘って覆い、側面が前記柱の根巻きの仕上げ面を構成するパネルと、
前記柱の側面と前記パネルとの間の隙間を下方から塞ぐように前記柱に固定される底部と、
前記柱の側面、前記パネル及び前記底部により区画される空間に充填されるコンクリートと、
を具備する根巻き構造。
【請求項2】
前記パネルは、金属製である、
請求項1に記載の根巻き構造。
【請求項3】
前記下地材は、溶接により前記柱に固定される、
請求項1又は請求項2に記載の根巻き構造。
【請求項4】
前記底部は、
前記根巻きの下方のスラブとの間に隙間が形成されるように設けられる、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の根巻き構造。
【請求項5】
前記パネルは、
水平方向に分割された複数の分割部材により構成され、
前記分割部材の端部には、他の前記分割部材と接続される接続部が形成され、
複数の前記分割部材は、
各接続部同士が重ね合わされた状態で、前記下地材と一体的に固定される、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の根巻き構造。
【請求項6】
前記接続部は、
前記仕上げ面において前記柱側に凹む凹部を構成する、
請求項5に記載の根巻き構造。
【請求項7】
柱を保護する根巻きの施工方法であって、
前記柱の側面に、下地材を固定する下地材固定工程と、
前記柱に、前記根巻きの底面を構成する底部を固定する底部固定工程と、
前記根巻きの下方のスラブのコンクリートを打設する前に、前記柱の側面を全周に亘って覆うパネルを前記底部に載置すると共に、前記下地材に前記パネルを固定するパネル固定工程と、
前記柱の側面、前記パネル及び前記底部により区画される空間に、コンクリートを打設するコンクリート打設工程と、
を具備する根巻きの施工方法。
【請求項8】
前記コンクリート打設工程は、
前記スラブのコンクリートの打設と同時期に行われる、
請求項7に記載の根巻きの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、根巻き構造及び根巻きの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、柱を保護する根巻きが知られている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、根巻きによって鋼管柱を保護する柱脚構造が記載されている。
【0004】
上記柱脚構造の根巻きは、鉄筋コンクリートで形成されている。このような根巻きは、柱の下方のスラブを形成した後でなければ施工に着手することができなかった。すなわち、スラブコンクリートを打設してスラブを形成した後、当該スラブ上で根巻きの配筋及び型枠の施工を行い、その後に根巻きのコンクリートを打設して根巻きの施工を行う必要があった。
【0005】
しかしながら、上述のようにして根巻きを施工する場合には、施工に様々な工種の作業者が関わることが必要であり、多くの手間がかかっていた。このため、施工の手間を削減することができる根巻き構造及び根巻きの施工方法が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、施工の手間を削減することができる根巻き構造及び根巻きの施工方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、柱の側面に固定される下地材と、前記下地材に固定され、前記柱の側面との間に隙間が形成されるように前記柱の側面を全周に亘って覆い、側面が前記柱の根巻きの仕上げ面を構成するパネルと、前記柱の側面と前記パネルとの間の隙間を下方から塞ぐように前記柱に固定される底部と、前記柱の側面、前記パネル及び前記底部により区画される空間に充填されるコンクリートと、を具備するものである。
【0010】
請求項2においては、前記パネルは、金属製であるものである。
【0011】
請求項3においては、前記下地材は、溶接により前記柱に固定されるものである。
【0012】
請求項4においては、前記底部は、前記根巻きの下方のスラブとの間に隙間が形成されるように設けられるものである。
【0013】
請求項5においては、前記パネルは、水平方向に分割された複数の分割部材により構成され、前記分割部材の端部には、他の前記分割部材と接続される接続部が形成され、複数の前記分割部材は、各接続部同士が重ね合わされた状態で、前記下地材と一体的に固定されるものである。
【0014】
請求項6においては、前記接続部は、前記仕上げ面において前記柱側に凹む凹部を構成するものである。
【0015】
請求項7においては、柱を保護する根巻きの施工方法であって、前記柱の側面に、下地材を固定する下地材固定工程と、前記柱に、前記根巻きの底面を構成する底部を固定する底部固定工程と、前記根巻きの下方のスラブのコンクリートを打設する前に、前記柱の側面を全周に亘って覆うパネルを前記底部に載置すると共に、前記下地材に前記パネルを固定するパネル固定工程と、前記柱の側面、前記パネル及び前記底部により区画される空間に、コンクリートを打設するコンクリート打設工程と、を具備するものである。
【0016】
請求項8においては、前記コンクリート打設工程は、前記スラブのコンクリートの打設と同時期に行われるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0018】
請求項1においては、根巻きの施工の手間を削減することができる。
【0019】
請求項2においては、根巻きの仕上げ面及び型枠を兼ねるものとして適した材料でパネルを形成することができる。
【0020】
請求項3においては、下地材を柱に強固に固定することができる。
【0021】
請求項4においては、スラブと根巻きの間に、柱が傾いたとき等のためのクリアランスを形成することができる。
【0022】
請求項5においては、柱に対してパネルを取り付け易くすることができる。
【0023】
請求項6においては、スラブ上を移動する物等がパネルに接触した場合に、分割部材同士の接続部分に引っ掛かることを抑制することができる。
【0024】
請求項7においては、根巻きの施工の手間を削減することができる。
【0025】
請求項8においては、スラブ及び根巻きの施工を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る根巻き構造及び鉄骨柱を示した平面図。
【
図2】根巻き構造、鉄骨柱及びスラブを示した側面図。
【
図3】根巻き構造及び鉄骨柱を示した拡大平面断面図。
【
図5】パネルを下地部材に取り付ける様子を示した分解平面図。
【
図6】本発明の第一実施形態に係る施工方法を示したフローチャート。
【
図7】下地材にパネルを固定する前の状態を示した側面図。
【
図8】下地材にパネルを固定した状態でパネル内の空間にコンクリートを打設する様子を示した側面図。
【
図9】本発明の第二実施形態に係る根巻き構造及び鉄骨柱を示した平面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、
図1から
図8までを用いて、本発明の第一実施形態に係る根巻き構造10について説明する。また、以下では、図中の矢印に基づいて、前後方向、左右方向及び上下方向を定義して説明を行う。
【0028】
根巻き構造10は、鉄骨柱1の下部(スラブ2側部分)において、鉄骨柱1を保護する根巻きの構造である。
【0029】
以下ではまず、鉄骨柱1及びスラブ2について説明する。
【0030】
図1及び
図2に示す鉄骨柱1は、鋼材(鉄材)からなる柱である。鉄骨柱1は、例えば鉄骨造の建物に用いられる。鉄骨柱1は、平面視における外郭形状が四角形状(略正方形状)の筒形状(角筒形状)に形成される。鉄骨柱1としては、例えば500mm×500mmの寸法の鋼管を採用可能である。
図1に示すように、鉄骨柱1は、前後左右に向く4つの側面1aを有する。鉄骨柱1は、長手方向を上下方向へ向けて配置される。鉄骨柱1は、建物の所定の階に複数設けられる。
【0031】
スラブ2は、鉄骨柱1の下部における床を構成するものである。スラブ2は、鉄筋コンクリートにより形成される。すなわち、スラブ2は、鉄筋3が配筋された型枠(不図示)内にコンクリート4が打設されることで形成される。コンクリート4は、鉄骨柱1の下端部を埋めるように打設される(
図2を参照)。
【0032】
次に、
図1から
図5まで、並びに
図7を用いて、根巻き構造10の詳細について説明する。
【0033】
根巻き構造10は、鉄骨柱1の下部における側面1aを覆うことで、当該鉄骨柱1を保護する。根巻き構造10は、スラブ2の上方に位置するように配置される。根巻き構造10は、複数の鉄骨柱1にそれぞれ設けられる。根巻き構造10は、主として、下地材20、プレート30、パネル40及びコンクリート4を具備する。
【0034】
図1から
図3まで、並びに
図5及び
図7に示す下地材20は、鉄骨柱1の下部における側面1aに固定されると共に、後述するパネル40が固定されるものである。下地材20は、断面視略C字形状の長尺な金属製の部材(リップ溝形鋼)である。下地材20は、長手方向を上下方向へ向けて配置される。
【0035】
下地材20は、溶接により鉄骨柱1の側面1aに固定される。
図1に示すように、下地材20は、1つの側面1a(平面視における鉄骨柱1の一辺を構成する側面1a)に、互いに水平方向(前後方向又は左右方向)に間隔を空けて2つずつ配置される。すなわち、本実施形態では、合計8つの下地材20が鉄骨柱1に設けられる。下地材20には、第一下地材21及び第二下地材22が含まれる。
【0036】
図1及び
図3に示す第一下地材21は、後述するパネル40の接続部(接続部42a及び接続部43a)が固定されるものである。第一下地材21は、鉄骨柱1の側面1aのうち一対の側面1a(前面及び後面)に、それぞれ1つずつ設けられる。各第一下地材21は、鉄骨柱1の平面視中央を中心とした点対称な位置に配置される。より詳細には、第一下地材21は、後方に向く側面1aにおける右部と、前方に向く側面1aにおける左部と、それぞれに配置される。
【0037】
第二下地材22は、後述するパネル40のうち接続部(接続部42a及び接続部43a)を除く部分が固定されるものである。第二下地材22は、鉄骨柱1の側面1aにおいて下地材20が設けられる箇所(8箇所)のうち、第一下地材21が設けられていない部分に設けられる。すなわち、第二下地材22は、後方に向く側面1aにおける左部と、前方に向く側面1aにおける右部と、にそれぞれ1つずつ設けられ、左方に向く側面1a及び右方に向く側面1aのそれぞれに2つずつ設けられる。第二下地材22の側面1aに対する突出寸法(前後寸法又は左右寸法)は、第一下地材21の側面1aに対する突出寸法(前後寸法)よりも大きく形成される。
【0038】
図1、
図2、
図5及び
図7に示すプレート30は、後述するパネル40が載置されるものである。プレート30は、根巻きの底面を構成する。プレート30は、板面を上下方向に向けた板形状に形成される。プレート30は、平面視において略四角形状(略正方形状)に形成される。プレート30は、開口部31を具備する。
【0039】
開口部31は、プレート30の平面視中央において上下に開口する部分である、開口部31は、平面視における鉄骨柱1の形状と概ね同様な形状(略正方形状)に形成される。
【0040】
プレート30は、開口部31を鉄骨柱1に挿通させた状態で、溶接により鉄骨柱1の側面1aに固定される。
図2に示すように、プレート30は、下地材20よりも下方に位置するように設けられる。また、プレート30は、スラブ2のレベルよりも上方に位置するように(スラブ2の上面との間に隙間が形成されるように)設けられる。
【0041】
図1から
図5までに示すパネル40は、鉄骨柱1の側面1aを全周に亘って覆うものである。パネル40は、金属製の板材を適宜折り曲げて形成される。パネル40は、プレート30に載置されると共に下地材20に固定される。パネル40は、鉄骨柱1の側面1aとの間に、下地材20の突出寸法分の隙間が形成されるように配置される。
【0042】
パネル40は、上下に開口する略角筒形状に形成される。パネル40の平面視における外郭形状は、プレート30の平面視における外郭形状(略正方形状)と概ね同形状に形成される。パネル40は、水平方向(左右方向)に分割された複数の部材である右側パネル40A及び左側パネル40Bが組み合わされることで形成される。
【0043】
右側パネル40A及び左側パネル40Bは、互いに同一に形成され、鉄骨柱1の平面視中央を中心とした点対称な位置に配置される。
【0044】
以下では、右側パネル40Aについて説明する。右側パネル40Aは、
図4に示すように、平面視において略コ字(C字)形状に形成される。右側パネル40Aは、第一部分41、第二部分42及び第三部分43を具備する。
【0045】
図1及び
図4に示す第一部分41は、鉄骨柱1の1つの側面1a(右方に向く側面1a)の全体を覆う部分である。第一部分41は、板面を左右方向に向けて配置される。第一部分41は、
図1及び
図5に示すように、右方に向く側面1aに設けられた一対の第二下地材22と当接するように配置される。
【0046】
第二部分42は、第一部分41の後端部から左方に延出する部分である。第二部分42は、鉄骨柱1の後方に向く側面1aの一部(右部)を覆う。第二部分42は、板面を前後方向に向けて配置される。第二部分42は、接続部42aを有する。
【0047】
接続部42aは、後述する左側パネル40Bの接続部43aと接続される部分である。接続部42aは、第二部分42の延出方向先端部(左端部)に形成される。接続部42aは、第一延出部42b及び第二延出部42cを具備する。
【0048】
第一延出部42bは、第二部分42の左端部から前方に向けて延出する部分である。第一延出部42bは、板面を左右方向に向けて配置される。
【0049】
第二延出部42cは、第一延出部42bの前端部から左方に向けて延出する部分である。第二延出部42cは、板面を前後方向に向けて配置される。第二延出部42cは、
図1及び
図5に示すように、後方に向く側面1aに設けられた第一下地材21に対して所定の隙間(後述する第二延出部43cの厚さ分の隙間)を空けて配置される。
【0050】
第三部分43は、第一部分41の前端部から左方に延出する部分である。第三部分43は、鉄骨柱1の前方に向く側面1aの一部(右部)を覆う。第三部分43は、板面を前後方向に向けて配置される。第三部分43の延出寸法は、第二部分42の延出寸法よりも大きく形成される。第三部分43は、
図1及び
図5に示すように、前方に向く側面1aに設けられた第一下地材21及び第二下地材22と当接するように配置される。第三部分43は、接続部43aを有する。
【0051】
接続部43aは、後述する左側パネル40Bの接続部42aと接続される部分である。接続部43aは、第三部分43の延出方向先端部(左端部)に形成される。接続部43aは、第一延出部43b及び第二延出部43cを具備する。
【0052】
第一延出部43bは、第三部分43の左端部から後方に向けて延出する部分である。第一延出部43bは、板面を左右方向に向けて配置される。
【0053】
第二延出部43cは、第一延出部43bの後端部から左方に向けて延出する部分である。第二延出部43cは、板面を前後方向に向けて配置される。第二延出部43cは、
図1及び
図5に示すように、前方に向く側面1aに設けられた第一下地材21と当接するように配置される。
【0054】
上述の如き右側パネル40Aは、
図1及び
図5に示すように、鉄骨柱1の右側部分を覆う。なお、左側パネル40Bは、右側パネル40Aに対して点対称な位置に配置され、鉄骨柱1の左側部分を覆う点を除いて右側パネル40Aと概ね同様である。従って、左側パネル40Bの詳細な説明は省略する。
【0055】
以下では、
図1、
図3及び
図5を用いて、下地材20に対するパネル40の取り付けの様子について説明する。
【0056】
まず、
図1及び
図5に示すように、パネル40(右側パネル40A及び左側パネル40B)をプレート30に載置させると共に、各下地材20に当接させるように配置する。本実施形態においては、パネル40を左右方向に分割しているので、鉄骨柱1を左右から挟み込むようにして右側パネル40A及び左側パネル40Bを組み付けることができる。この際には、
図1及び
図3に示すように、右側パネル40A及び左側パネル40Bの一方の第二延出部42cは、他方の第二延出部43cと前後方向に重複するように配置される。また、この状態では、パネル40の下方の開口はプレート30により閉塞される。
【0057】
次に、
図3及び
図5に示すように、適宜のビス等の止具を用いて、下地材20に対してパネル40を固定する。具体的には、パネル40の外側から下地材20まで達するように止具を貫通させることで各部材を固定する。
【0058】
ここで、
図3に示すように、右側パネル40A及び左側パネル40Bの一方の第二延出部42cと、他方の第二延出部43cと、は互いに前後方向に重複した状態で、共通の止具により第一下地材21に対して一体的に固定される。これにより、右側パネル40A及び左側パネル40Bは互いに接続される。
【0059】
本実施形態では、
図3に示すように、右側パネル40A及び左側パネル40Bの互いに接続される部分(接続部42a及び接続部43a)により、パネル40の側面40aにおいて凹む凹部40bが形成される。また、本実施形態では、右側パネル40A及び左側パネル40Bの一方の第二延出部42cと、他方の第二延出部43cと、が重なる部分が、凹部40bの内部に位置する。これにより、右側パネル40A及び左側パネル40Bの接続部分(第二延出部42c及び第二延出部43cが重なる部分)が、パネル40の側面40aよりも内側(平面視における中心側)に位置することになる。このため、スラブ2上を移動する物等がパネル40に接触した場合に、第二延出部42c及び第二延出部43cが重なる部分に引っ掛かることを抑制することができる。また、右側パネル40A及び左側パネル40Bの接続部分を目立ち難くすることができる。
【0060】
図1に示すように、上述のようにして下地材20に固定されたパネル40と、鉄骨柱1の側面1aと、プレート30と、により上方に開口する空間Aが区画される。また、パネル40の側面40aは、適宜の塗装がされると共に根巻きの仕上げ面を構成する。
【0061】
図1に示すコンクリート4は、空間Aに充填(打設)されるものである(
図8を参照)。コンクリート4は、スラブ2のコンクリート4と同じ品質(配合)である。
【0062】
次に、
図6から
図8までを用いて、上述の如き根巻き構造10を施工する方法(根巻きの施工方法)について説明する。根巻きの施工方法は、
図6に示すように、下地材固定工程(ステップS10)、プレート固定工程(ステップS11)、パネル固定工程(ステップS12)、コンクリート打設工程(ステップS13)、塗装工程(ステップS14)を具備する。
【0063】
下地材固定工程(ステップS10)は、鉄骨柱1の側面1aに、下地材20を溶接により固定する工程である(
図7を参照)。下地材固定工程は、例えば、鉄骨柱1が施工現場に搬入される前の段階で、所定の工場で行われる。
【0064】
プレート固定工程(ステップS11)は、鉄骨柱1の側面1aに、プレート30を溶接により固定する工程である(
図7を参照)。プレート固定工程は、下地材固定工程と同様に所定の工場で行われる。
【0065】
図7は、下地材20及びプレート30が固定された鉄骨柱1を、施工現場において設置した状態を示している。なお、この状態では、スラブ2のコンクリート4は打設されていない。
【0066】
パネル固定工程(ステップS12)は、下地材20に対してパネル40を固定する工程である。パネル固定工程は、スラブ2のコンクリート4の打設前に行われる。パネル固定工程においては、上述したように、プレート30にパネル40を載置した状態で、止具を用いて下地材20に対してパネル40を固定する(
図5を参照)。
【0067】
パネル固定工程を実行した後、パネル40の側面40aには錆び止め塗装が行われる。また、塗装後のパネル40の側面40aは、適宜のフィルムによって保護(養生)される。
【0068】
図8に示すコンクリート打設工程(ステップS13)は、鉄骨柱1の側面1aと、プレート30と、パネル40と、により区画された空間Aにコンクリート4を打設する工程である。コンクリート4は、パネル40の上方の開口から打設される。
【0069】
コンクリート打設工程は、少なくとも(遅くとも)スラブ2のコンクリート4が、スラブ2上での作業が可能な程度に硬化する前(例えばコンクリート4の養生期間が経過する前)に行われる。本実施形態では、コンクリート打設工程は、スラブ2のコンクリート4を打設する工程と同時期(例えば同じ日における所定の時間帯)に行われる。より具体的には、本実施形態では、スラブ2のコンクリート4を打設する前に、空間Aにコンクリート4を打設している。なお、スラブ2のコンクリート4を打設した後に、空間Aにコンクリート4を打設してもよい。
【0070】
また、本実施形態においては、スラブ2のコンクリート4を打設する際には、コンクリート4の上面がプレート30よりも下方に位置するようにコンクリート4を打設する(
図2を参照)。
【0071】
塗装工程(ステップS14)は、養生用のフィルムを外したパネル40の側面40aに対して、仕上げの塗装を施す工程である。塗装工程は、空間Aへ打設したコンクリート4(スラブ2のコンクリート4)の硬化後に行われる。
【0072】
上述の如き工程を行うことで、根巻きの施工が完了する。本実施形態に係る根巻きの施工方法によれば、スラブ2のコンクリート4を打設する前にパネル固定工程を実行し、コンクリート4が充填される空間Aを形成することができる。これにより、スラブ2を形成した後に、スラブ2上で根巻きの配筋及び型枠の施工を行い、その後に型枠内にコンクリート4を打設するような方法とは異なり、スラブ2の形成を待つことなく空間Aへコンクリート4を打設して根巻きの施工を行うことができ、工期の短縮を図ることができる。
【0073】
また、本実施形態に係る根巻きの施工方法によれば、パネル40の側面40aが根巻きの仕上げ面となる。従って、鉄筋コンクリートにより根巻きを施工する場合とは異なり、コンクリート4の硬化後、型枠を解体した後にコンクリート4の表面の補修等を行う手間を省くことができる。
【0074】
このように、本実施形態に係る根巻きの施工方法によれば、鉄筋コンクリートにより根巻きを施工する場合とは異なり、型枠の組み立てや配筋、型枠の解体、コンクリート4の表面の補修等の複数の工種の作業者が関わることによる施工の手間を削減することができる。
【0075】
また、上記根巻き構造10では、鉄骨柱1の1つの側面1aに下地材20を2つずつ設けている。これにより、1つの側面1aに単一の下地材20を設けたものと比べて効果的にパネル40を固定することができ、空間Aにコンクリート4を打設した際の負荷によりパネル40が変形すること等を抑制することができる。
【0076】
また、上記根巻き構造10は、右側パネル40A及び左側パネル40Bを、互いに同一な形状に形成している。これにより、空間Aにコンクリート4を打設した際の負荷が、右側パネル40A及び左側パネル40Bに均等にかかる。これにより、右側パネル40A及び左側パネル40Bのうちの一方に過剰に負荷がかかりパネル40が変形すること等を抑制することができる。
【0077】
また、上記根巻き構造10は、プレート30が、スラブ2との間に隙間が形成されるように設けられる。これにより、スラブ2と根巻きの間に、柱(鉄骨柱1)が傾いたとき等のためのクリアランスを形成することができる。
【0078】
以上のように、本発明の第一実施形態に係る根巻き構造10は、
柱(鉄骨柱1)の側面1aに固定される下地材20と、
前記下地材20に固定され、前記柱(鉄骨柱1)の側面1aとの間に隙間が形成されるように前記柱(鉄骨柱1)の側面1aを全周に亘って覆い、側面が前記柱(鉄骨柱1)の根巻きの仕上げ面を構成するパネル40と、
前記柱(鉄骨柱1)の側面1aと前記パネル40との間の隙間を下方から塞ぐように前記柱に固定される底部(プレート30)と、
前記柱(鉄骨柱1)の側面1a、前記パネル40及び前記底部(プレート30)により区画される空間Aに充填されるコンクリート4と、
を具備するものである。
【0079】
このような構成により、根巻きの施工の手間を削減することができる。すなわち、根巻きの仕上げ面及び型枠を兼ねるパネル40の内の空間Aにコンクリート4を充填(打設)して根巻きの施工を行うことができる。これにより、型枠の組み立てや配筋、型枠の解体、コンクリート4の表面の補修等の作業を行うことなく根巻きを施工することができ、施工の手間を削減することができる。
【0080】
また、前記パネル40は、金属製であるものである。
【0081】
このような構成により、根巻きの仕上げ面及び型枠を兼ねるものとして適した材料でパネル40を形成することができる。また、根巻きの強度を向上させることができる。
【0082】
また、前記下地材20は、溶接により前記柱(鉄骨柱1)に固定されるものである。
【0083】
このような構成により、下地材20を柱(鉄骨柱1)に強固に固定することができる。また、これにより、空間Aにコンクリート4を打設した際の負荷によりパネル40が変形すること等を抑制することができる。
【0084】
また、前記底部(プレート30)は、
前記根巻きの下方のスラブ2との間に隙間が形成されるように設けられるものである。
【0085】
このような構成により、スラブ2と根巻きの間に、柱(鉄骨柱1)が傾いたとき等のためのクリアランスを形成することができる。
【0086】
また、前記パネル40は、
水平方向に分割された複数の分割部材(右側パネル40A及び左側パネル40B)により構成され、
前記分割部材(右側パネル40A)の端部には、他の前記分割部材(左側パネル40B)と接続される接続部(接続部42a及び接続部43a)が形成され、
複数の前記分割部材(右側パネル40A及び左側パネル40B)は、
各接続部(接続部42a及び接続部43a)同士が重ね合わされた状態で、前記下地材20と一体的に固定されるものである。
【0087】
このような構成により、柱(鉄骨柱1)に対してパネル40を取り付け易くすることができる。また、複数の分割部材(右側パネル40A及び左側パネル40B)の接続部(接続部42a及び接続部43a)同士を重ね合わせた状態で下地材20と一体的に固定することで、各部材同士を強固に固定することができる。
【0088】
また、前記接続部(接続部42a及び接続部43a)は、前記仕上げ面(側面1a)において前記柱(鉄骨柱1)側に凹む凹部40bを構成するものである。
【0089】
このような構成により、複数の分割部材(右側パネル40A及び左側パネル40B)が重ね合わされる部分が凹部40b内に位置する。このため、スラブ2上を移動する物等がパネル40に接触した場合に、分割部材(右側パネル40A及び左側パネル40B)同士の接続部分(接続部42a及び接続部43a)に引っ掛かることを抑制することができる。また、分割部材(右側パネル40A及び左側パネル40B)同士の接続部分を目立ち難くすることができる。
【0090】
また、柱(鉄骨柱1)を保護する根巻きの施工方法であって、
前記柱(鉄骨柱1)の側面1aに、下地材20を固定する下地材固定工程(ステップS10)と、
前記柱(鉄骨柱1)に、前記根巻きの底面を構成する底部(プレート30)を固定する底部固定工程(プレート固定工程)(ステップS11)と、
前記根巻きの下方のスラブ2のコンクリート4を打設する前に、前記柱(鉄骨柱1)の側面1aを全周に亘って覆うパネル40を前記底部(プレート30)に載置すると共に、前記下地材20に前記パネル40を固定するパネル固定工程(ステップS12)と、
前記柱(鉄骨柱1)の側面1a、前記パネル40及び前記底部(プレート30)により区画される空間Aに、コンクリート4を打設するコンクリート打設工程(ステップS13)と、
を具備するものである。
【0091】
このような構成により、根巻きの施工の手間を削減することができる。すなわち、根巻きの仕上げ面及び型枠を兼ねるパネル40の内の空間Aにコンクリート4を打設して根巻きの施工を行うことができる。これにより、型枠の組み立てや配筋、型枠の解体、コンクリート4の表面の補修等の作業を行うことなく根巻きを施工することができ、施工の手間を削減することができる。また、スラブ2のコンクリート4を打設する前にパネル固定工程を実行し、コンクリート4が充填される空間Aを形成することができる。これにより、スラブ2を形成した後に、スラブ2上で型枠の組み立て等を行うような方法とは異なり、スラブ2の形成を待つことなく空間Aへコンクリート4を打設して根巻きの施工を行うことができ、工期の短縮を図ることができる。
【0092】
また、前記コンクリート打設工程は、前記スラブ2のコンクリート4の打設と同時期に行われるものである。
【0093】
このような構成により、スラブ2及び根巻きの施工を効率的に行うことができる。
【0094】
なお、本実施形態に鉄骨柱1は、本発明に係る柱の一形態である。
また、本実施形態に係る右側パネル40A及び左側パネル40Bは、本発明に係る分割部材の一形態である。また、本実施形態に係る接続部42a及び接続部43aは、本発明に係る接続部の一形態である。
また、本実施形態にプレート30は、本発明に係る底部の一形態である。
また、本実施形態にプレート固定工程は、本発明に係る底部固定工程の一形態である。
【0095】
以上、本発明の第一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0096】
例えば、本実施形態では、根巻き構造10が設けられる鉄骨柱1を、筒形状の鋼管とした示したが、このような態様に限られない。例えば、
図9に示す第二実施形態のように、H型鋼である鉄骨柱1Aに根巻き構造10を設けるようにしてもよい。
【0097】
鉄骨柱1Aは、板面を左右方向に向けた一対のフランジ5と、フランジ5同士を接続する板面を前後方向に向けたウェブ6と、を有する。
【0098】
第二実施形態に係る根巻き構造10では、フランジ5の前後方向の両端部における外面(左右方向外側面)に、2つの第二下地材22を固定している。
【0099】
また、本実施形態では、フランジ5の前後方向の両端部における内面(左右方向内側面)に、他の下地材20を固定するための支持部材50を固定している。
【0100】
支持部材50は、断面視略L字形状の長尺な金属製の部材(アングル材)である。支持部材50は、板面を左右方向に向けた部分がフランジ5の内面に固定され、板面を前後方向に向けた部分に下地材20(第一下地材21又は第二下地材22)が固定される。支持部材50は、鉄骨柱1Aの平面視における四隅に設けられる。上記鉄骨柱1A、支持部材50及び下地材20は、互いに溶接により固定される。
【0101】
また、本実施形態では、プレート30の開口部31は、平面視における鉄骨柱1Aの形状と概ね同様な形状(略H字形状)に形成される。
【0102】
上述の如き第二実施形態に係る根巻き構造10においても、第一実施形態に係る根巻き構造10と概ね同様な効果を奏する。
【0103】
なお、上記各実施形態では、鉄骨柱1(鉄骨柱1A)の1つの側面1aに下地材20を2つずつ設けた例を示したが、このような態様に限られない。例えば、1つの側面1aに3つ以上の下地材20を設けてもよく、1つの側面1aに単一の下地材20を設けてもよい。
【0104】
また、上記各実施形態では、下地材20を鉄骨柱1や支持部材50に対して溶接で固定した例を示したが、このような態様に限られない。例えば、ボルト及びナット等の止具を用いて下地材20を鉄骨柱1や支持部材50に固定してもよい。また、支持部材50も、ボルト及びナット等の止具を用いて鉄骨柱1Aに固定してもよい。
【0105】
また、上記各実施形態では、下地材固定工程及びプレート固定工程において、工場で下地材20及びプレート30を鉄骨柱1に固定する例を示したが、このような態様に限られない。例えば、施工現場で下地材20及びプレート30を鉄骨柱1に固定するようにしてもよい。
【0106】
また、上記各実施形態では、スラブ2のコンクリート4を打設する前に下地材20にパネル40を固定する例を示したが、このような態様に限られない。例えば、スラブ2のコンクリート4を打設した後に、下地材20にパネル40を固定するようにしてもよい。
【0107】
また、上記各実施形態では、パネル40を、右側パネル40A及び左側パネル40Bの2つの部材により形成した例を示したが、このような態様に限られない。例えば、3つ以上の部材によりパネル40を形成してもよい。また、パネル40を単一の筒形状の部材により形成してもよい。
【0108】
また、根巻き構造10を構成する各部材(下地材20、プレート30及びパネル40)の形状としては、上記各実施形態で示したものに限られない。下地材20、プレート30及びパネル40の形状は、鉄骨柱1(鉄骨柱1A)の形状に応じて適宜変更可能である。例えば、鉄骨柱1が円柱形状の柱である場合には、パネル40を円筒形状に形成してもよい。
【0109】
また、上記各実施形態では、鉄骨柱1(鉄骨柱1A)を鉄骨造の建物に用いられるものとした例を示したが、このような態様に限られない。例えば、鉄骨柱1をコンクリート充填鋼管構造(CFT構造)の建物に用いられるものとしてもよい。
【符号の説明】
【0110】
1 鉄骨柱
10 根巻き構造
20 下地材
30 プレート
40 パネル