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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045613
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】空調制御システムおよび空調制御方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/56 20180101AFI20230327BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20230327BHJP
【FI】
F24F11/56
F24F11/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154138
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】会津 宏幸
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260BA64
3L260EA19
3L260FA03
3L260JA12
(57)【要約】
【課題】クラウドサーバを利用しつつ、クラウドサーバと空調機の間で通信不良が発生しても空調制御を継続する。
【解決手段】実施形態の空調制御システムは、空調機、および、空調機を操作するための空調操作端末と通信するゲートウェイ装置と、ゲートウェイ装置と通信するクラウドサーバと、を備える空調制御システムである。ゲートウェイ装置は、空調機を制御する空調コントローラと、空調操作端末から受信した空調機制御用命令を、空調機およびクラウドサーバのいずれに配送するのかを判定して配送処理を行う配送処理部と、を備える。クラウドサーバは、ゲートウェイ装置から受信した空調機制御用命令に基づいて空調機制御目標値を決定する決定処理部を備える。ゲートウェイ装置の配送処理部は、クラウドサーバから受信した空調機制御目標値を、空調コントローラを介して空調機に配送する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調機、および、前記空調機を操作するための空調操作端末と通信するゲートウェイ装置と、前記ゲートウェイ装置と通信するクラウドサーバと、を備える空調制御システムであって、
前記ゲートウェイ装置は、
前記空調機を制御する空調コントローラと、
前記空調操作端末から受信した空調機制御用命令を、前記空調機および前記クラウドサーバのいずれに配送するのかを判定して配送処理を行う配送処理部と、を備え、
前記クラウドサーバは、前記ゲートウェイ装置から受信した前記空調機制御用命令に基づいて空調機制御目標値を決定する決定処理部を備え、
前記ゲートウェイ装置の前記配送処理部は、前記クラウドサーバから受信した前記空調機制御目標値を、前記空調コントローラを介して前記空調機に配送する、空調制御システム。
【請求項2】
前記ゲートウェイ装置の前記配送処理部は、前記クラウドサーバと通信可能状態の場合、前記空調操作端末から受信した前記空調機制御用命令を前記クラウドサーバに配送する、請求項1に記載の空調制御システム。
【請求項3】
前記ゲートウェイ装置の前記配送処理部は、前記クラウドサーバと通信不能状態の場合、前記空調操作端末から受信した前記空調機制御用命令を前記空調機に配送する、請求項2に記載の空調制御システム。
【請求項4】
前記クラウドサーバは、
情報を記憶する記憶部と、
前記ゲートウェイ装置から受信した前記空調機制御用命令を前記記憶部に履歴データとして記憶させる遠隔設定処理部と、
前記遠隔設定処理部から受け取った前記空調機制御用命令を前記決定処理部に渡して、前記決定処理部から受け取った前記空調機制御目標値を、前記ゲートウェイ装置に送るために前記遠隔設定処理部に渡す判定部と、をさらに備える請求項1に記載の空調制御システム。
【請求項5】
前記決定処理部は、前記記憶部に記憶されている前記履歴データであって、少なくともPMV(Predicted Mean Vote)制御および省エネ制御のいずれかに関する前記履歴データにおける前記空調機制御用命令に対応する前記空調機制御目標値に基づいて、前記ゲートウェイ装置から受信した前記空調機制御用命令に基づいて決定した前記空調機制御目標値を補正する、請求項4に記載の空調制御システム。
【請求項6】
前記空調機制御目標値は、温度設定値であり、
前記決定処理部は、前記ゲートウェイ装置を介して前記空調操作端末からの温度設定変更要求値を受信した場合、所定時間の間は前記温度設定変更要求値を用い、前記所定時間の経過後は補正後の前記空調機制御目標値を用いる、請求項5に記載の空調制御システム。
【請求項7】
前記決定処理部は、前記ゲートウェイ装置を介して前記空調操作端末から同じ前記温度設定変更要求値を2回以上受信した場合、同じ前記温度設定変更要求値を受信した回数が多いほど前記所定時間を増やす、請求項6に記載の空調制御システム。
【請求項8】
前記空調機制御目標値は、温度設定値であり、
前記決定処理部は、前記ゲートウェイ装置を介して前記空調操作端末から同じ温度設定変更要求値を2回以上受信した場合、同じ前記温度設定変更要求値を受信した回数が多いほど補正後の前記空調機制御目標値の補正幅を小さくする、請求項5に記載の空調制御システム。
【請求項9】
前記空調制御システムは、前記空調操作端末を含み、
前記ゲートウェイ装置は、空調制御のモードとして、前記クラウドサーバによる制御を優先させるクラウド優先モード、および、前記空調操作端末による制御を優先させるローカル優先モードのいずれかで動作し、
前記空調操作端末は、前記ゲートウェイ装置から取得した現在のモード情報としての前記クラウド優先モード、および、前記ローカル優先モードのいずれかを表示する表示部を備える、請求項1に記載の空調制御システム。
【請求項10】
前記空調操作端末は、操作部を用いて利用者によって選択された前記クラウド優先モード、および、前記ローカル優先モードのいずれかの情報を前記ゲートウェイ装置に送信する、請求項9に記載の空調制御システム。
【請求項11】
空調機、および、前記空調機を操作するための空調操作端末と通信するゲートウェイ装置と、前記ゲートウェイ装置と通信するクラウドサーバと、を備える空調制御システムであって、
前記ゲートウェイ装置は、前記空調操作端末から受信した空調機制御用命令を、前記ゲートウェイ装置の外部に設けられていて前記空調機を制御する空調コントローラ、および、前記クラウドサーバのいずれに配送するのかを判定して配送処理を行う配送処理部を備え、
前記クラウドサーバは、前記ゲートウェイ装置から受信した前記空調機制御用命令に基づいて空調機制御目標値を決定する決定処理部を備え、
前記ゲートウェイ装置の前記配送処理部は、前記クラウドサーバから受信した前記空調機制御目標値を、前記空調コントローラを介して前記空調機に配送する、空調制御システム。
【請求項12】
空調機、および、前記空調機を操作するための空調操作端末と通信するゲートウェイ装置と、前記ゲートウェイ装置と通信するクラウドサーバと、を備える空調制御システムによる空調制御方法であって、
前記ゲートウェイ装置は、前記空調操作端末から受信した空調機制御用命令を、前記空調機および前記クラウドサーバのいずれに配送するのかを判定して配送処理を行い、
前記クラウドサーバは、前記ゲートウェイ装置から受信した前記空調機制御用命令に基づいて空調機制御目標値を決定し、
前記ゲートウェイ装置は、前記クラウドサーバから受信した前記空調機制御目標値を、前記空調機に配送する、空調制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、空調制御システムおよび空調制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビル等の空調制御システムにおいては、空調の品質(快適性、CO濃度等)やエネルギー効率の最適化を保つように、システム内のマルチエアコン(ビルマルチエアコン等)、外調機、熱源機など、複数種類、複数台の空調関連設備それぞれの制御目標値を算出して与える必要がある。各制御目標値は、建物の空間モデル、外気温湿度などの天候・外気条件、建物内の人の活動による熱負荷情報等に基づいて、将来予測を行いながら算出する。そして、複数年にわたる長期間の天候情報などの外部の情報や、建物に関して蓄積した過去の各種実績情報を活用するため、クラウドサーバによる処理を利用するのが有効である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】田丸慎悟、朝妻智裕、“スマートBEMSのモデルベース空調制御によるビルの省エネ効果検証”、[online]、2015年、東芝、[令和3年9月2日検索]、インターネット<URL:https://www.global.toshiba/content/dam/toshiba/migration/corp/techReviewAssets/tech/review/2015/02/70_02pdf/a06.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のクラウドサーバを利用した空調制御システムでは、クラウドサーバと空調機の間で通信不良が発生すると空調制御が不能になるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、クラウドサーバを利用しつつ、クラウドサーバと空調機の間で通信不良が発生しても空調制御を継続できる空調制御システムおよび空調制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の空調制御システムは、空調機、および、前記空調機を操作するための空調操作端末と通信するゲートウェイ装置と、前記ゲートウェイ装置と通信するクラウドサーバと、を備える空調制御システムである。前記ゲートウェイ装置は、前記空調機を制御する空調コントローラと、前記空調操作端末から受信した空調機制御用命令を、前記空調機および前記クラウドサーバのいずれに配送するのかを判定して配送処理を行う配送処理部と、を備える。前記クラウドサーバは、前記ゲートウェイ装置から受信した前記空調機制御用命令に基づいて空調機制御目標値を決定する決定処理部を備える。前記ゲートウェイ装置の前記配送処理部は、前記クラウドサーバから受信した前記空調機制御目標値を、前記空調コントローラを介して前記空調機に配送する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1実施形態の空調制御システムの全体構成図である。
図2図2は、第1実施形態のゲートウェイ装置の機能構成図である。
図3図3は、第1実施形態のクラウドサーバの機能構成図である。
図4図4は、第1実施形態の空調操作端末の機能構成図である。
図5図5は、第1実施形態の空調制御システムによる基本動作時のシーケンス図である。
図6図6は、第1実施形態の空調制御システムによるクラウド通信エラー時のシーケンス図である。
図7図7は、第1実施形態の空調制御システムによるフェイクレスポンス使用時のシーケンス図である。
図8図8は、第1実施形態の空調制御システムによるパススルーレスポンス使用時のシーケンス図である。
図9図9は、第2実施形態の空調制御システムの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の空調制御システムおよび空調制御方法の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の空調制御システムSの全体構成図である。空調制御システムSは、ゲートウェイ装置10と、クラウドサーバ20と、空調操作端末30と、空調機40と、を備える。
【0010】
ゲートウェイ装置10は、通信経路1を介して空調機40と接続され、空調機運転状態や、温度、湿度、風量に代表される空調機各制御の目標値の設定や、空調機40の各パラメータの取得を行う。通信経路1は、空調制御用通信回線や一般の通信ネットワークである。
【0011】
空調機40が複数存在していても、ゲートウェイ装置10は識別子(ID(Identifier))によって個別の空調機40を識別して通信可能である。ゲートウェイ装置10は、通信経路2を介してクラウドサーバ20と通信可能である。通信経路2は、インターネット回線を用いた通信経路であり、光ファイバ通信網やイーサーネット(登録商標)接続に代表される有線接続でもよいし、あるいは、携帯通信キャリア回線に代表される無線通信網でもよい。また、インターネット接続によりTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)、UDP/IP(User Datagram Protocol/Internet Protocol)、HTTP(Hyper Text Transfer Protocol)/HTTPS(Hyper Text Transfer Protocol Secure)に代表される各種通信プロトコルによる通信のいずれを用いてもよい。
【0012】
ゲートウェイ装置10は、空調機40を操作するための空調操作端末30と、通信経路3を介して通信可能である。通信経路3は、空調制御用通信回線でもよいし、BACnet (Building Automation and Control Networking protocol)(BACnet/IP(Internet Protocol)、BACnet/WS(Web Services))に代表されるビル設備機器接続通信回線でもよい。利用者による空調操作端末30の操作に基づく空調機40に対する設定値変更要求や、要求に対する応答は、通信経路3を介してゲートウェイ装置10と空調操作端末30の間で送受信される。
【0013】
図2は、第1実施形態のゲートウェイ装置10の機能構成図である。ゲートウェイ装置10は、通信経路1、2、3を介して通信するための通信手段として、それぞれ、通信部101、102、103を備える。通信部101~103は、それぞれ、対応する通信経路1~3固有の通信処理手段で、通信先と通信を行うための通信プロトコル処理を行う。ゲートウェイ装置10は、記憶部110を備え、通信経路1の先の空調機40を管理するための空調機管理表111を記憶する。空調機管理表111は、空調機40ごとの通信経路1における識別子と、通信経路2および通信経路3における通信規格における空調機40ごとの識別子を対応づけた管理表である。空調機管理表111は、ゲートウェイ装置10の設定時に設置者が設定してもよいし、通信経路1の識別子をそのまま用いてもよい。また、通信経路1の識別子を元にして変換ルールに基づいて変換して生成してもよい。
【0014】
また、記憶部110は、クラウドサーバ20と通信する際に必要となる、ゲートウェイ装置10の識別子情報などのGW情報112と、通信すべきクラウドサーバ20のアドレスや、セキュアに通信するための暗号鍵に代表される秘密情報などのクラウドサーバ情報113を記憶する。
【0015】
配送処理部104は、通信部101~103を使用して、それぞれ、空調機40、クラウドサーバ20、空調操作端末30と通信可能である。配送処理部104は、空調操作端末30から受信した空調機制御用命令を、空調機40およびクラウドサーバ20のいずれに配送するのかを判定して配送処理を行う。また、配送処理部104は、クラウドサーバ20から受信した空調機40の制御目標値を、空調コントローラ105を介して空調機40に配送する。
【0016】
また、配送処理部104は、クラウドサーバ20と通信可能状態の場合、空調操作端末30から受信した空調機制御用命令をクラウドサーバ20に配送する。
【0017】
また、配送処理部104は、クラウドサーバ20と通信不能状態の場合、空調操作端末30から受信した空調機制御用命令を空調機40に配送する。
【0018】
空調コントローラ105は、複数の空調機40のそれぞれを個別に制御する。
【0019】
また、ゲートウェイ装置10は、空調制御のモードとして、クラウドサーバ20による制御を優先させるクラウド優先モード、および、空調操作端末30による制御を優先させるローカル優先モードのいずれかで動作する。
【0020】
図3は、第1実施形態のクラウドサーバ20の機能構成図である。クラウドサーバ20は、通信経路2を介してゲートウェイ装置10と通信するための通信部201を備える。ゲートウェイ装置10とクラウドサーバ20の間の通信経路2上の通信には、TCP/IP通信、HTTP/HTTPS、UDP/IP通信に代表されるインターネット通信を用いる。通信部201は、ゲートウェイ装置10と通信するのに用いる通信方式に必要な通信処理手段を備える。なお、通信経路2を介して複数のゲートウェイ装置10と通信を行い、複数の空調制御システムSを構成してもよい。その場合、それぞれのゲートウェイ装置10は、識別子で識別する。
【0021】
記憶部202は、ゲートウェイ装置10の識別子ごとに、ゲートウェイ情報や空調機40の管理情報と、空調制御に必要となる各種の空調機状態情報を記憶する。空調機状態情報は、最新状態値に加えて、日時情報を付与した時系列データとして過去情報も記憶してもよい。さらに、記憶部202は、空調操作端末30からゲートウェイ装置10を介して転送されてきた、空調設定変更要求情報を日時情報と共に履歴データとして記憶する。空調設定変更要求情報には、対象となる空調機40の識別子と、変更要求のパラメータ(目標値)などの情報が含まれる。記憶部202には、気象情報取得処理部206が取得した気象情報を格納してもよい。気象情報取得処理部206は、インターネットを介して、気象情報提供サービスから気象情報、天気予報情報を取得する手段を備える。
【0022】
遠隔設定処理部203は、ゲートウェイ装置10から受信した空調機40の制御用命令を記憶部202に履歴データとして記憶させる。具体的には、例えば、遠隔設定処理部203は、通信部201から受け取った各情報を記憶部202へ渡し保存する。さらに、遠隔設定処理部203は、受け取ったリクエストが空調設定変更要求情報だった場合は、判定部204に渡す。
【0023】
判定部204は、遠隔設定処理部203から受け取った空調設定変更要求情報(空調機制御用命令)を決定処理部205に渡して、決定処理部205から受け取った最新の空調機制御目標値を、ゲートウェイ装置10に送るために遠隔設定処理部203に渡す。
【0024】
決定処理部205は、ゲートウェイ装置10から受信した空調機制御用命令に基づいて空調機40の制御目標値を決定する。具体的には、例えば、決定処理部205は、記憶部202に記憶している、空調機器モデル情報、空調機状態情報、建物空間モデル情報、空間状態情報、設定変更履歴データ、気象情報などを元にして、空調機40の制御目標値を決定する。
【0025】
決定処理部205は、記憶部202に記憶されている履歴データであって、少なくともPMV(Predicted Mean Vote)制御および省エネ制御のいずれかに関する履歴データにおける空調機制御用命令に対応する空調機制御目標値に基づいて、ゲートウェイ装置10から受信した空調機制御用命令に基づいて決定した空調機制御目標値を補正する。つまり、人の快適な空調条件を定量化する指標として快適性指数PMVを算出し、このPMVを一定に保つような空調設定温度をモデルベース空調制御方式にて随時算出する。さらに、空間の熱収支モデルと空調モデルから、室温の推移をシミュレートして算出する方式でもよい。決定処理部205は、定期的に空調機40に対する制御目標値を算出する。判定部204は、前回算出値から目標値の変更が生じることを判定し、その空調機40に対して遠隔設定処理部203を介して、制御目標値の設定変更要求を送信する。
【0026】
空調機制御目標値は、例えば、温度設定値である。決定処理部205は、ゲートウェイ装置10を介して空調操作端末30からの温度設定変更要求値を受信した場合、所定時間の間(例えば15分間)は温度設定変更要求値を用い、所定時間の経過後は補正後の空調機制御目標値を用いるようにしてもよい。
【0027】
また、決定処理部205は、ゲートウェイ装置10を介して空調操作端末30から同じ温度設定変更要求値を2回以上受信した場合、同じ温度設定変更要求値を受信した回数が多いほど所定時間を増やすようにしてもよい。
【0028】
また、決定処理部205は、ゲートウェイ装置10を介して空調操作端末30から同じ温度設定変更要求値を2回以上受信した場合、同じ温度設定変更要求値を受信した回数が多いほど補正後の空調機制御目標値の補正幅を小さくするようにしてもよい。
【0029】
図4は、第1実施形態の空調操作端末30の機能構成図である。空調操作端末30は、通信経路3を介してゲートウェイ装置10と通信可能であり、通信処理を行う通信部301を備える。通信は、例としてビル設備ネットワークで広く使われるBACnet方式や、空調機固有の通信方式のいずれでも構わない。利用者が操作部303を介して空調機40の操作を行う。
【0030】
操作処理部302は、空調機40への設定変更リクエストを発行し、通信部301を介して、ゲートウェイ装置10へ送出する。その結果、レスポンスがゲートウェイ装置10から返され、それを受け取った操作処理部302は、表示処理部304へ操作結果を表示するように指令を出す。表示処理部304は、表示部305を介して表示に反映する。表示部305は、ディスプレイ装置でもよいし、簡易な液晶表示や、LED(Light Emitting Diode)ランプ表示などでもよい。また、表示は、文字、アイコン、表示色の変更等のいずれを用いてもよい。
【0031】
また、表示処理部304は、ゲートウェイ装置10から取得した現在のモード情報としてのクラウド優先モード、および、ローカル優先モードのいずれかを表示部305に表示させる。
【0032】
また、通信部301は、操作部303を用いて利用者によって選択されたクラウド優先モード、および、ローカル優先モードのいずれかの情報をゲートウェイ装置10に送信する。
【0033】
図5は、第1実施形態の空調制御システムSによる基本動作時のシーケンス図である。利用者が空調操作端末30を操作した結果、空調機40の設定変更リクエストが発行され、通信経路3を介してゲートウェイ装置10に送信される(S11。図1の(1))。リクエストを受け取ったゲートウェイ装置10は、配送処理部104によって、通信経路2を介してリクエストをクラウドサーバ20へ送信する(S12。図1の(2))。
【0034】
リクエストを受け取ったクラウドサーバ20は、内部で上述の処理を行い(図1の(3))、快適性、省エネ性を考慮した空調機40の制御目標値を算出して、改変リクエストをゲートウェイ装置10へ返す(S13。図1の(4))。ゲートウェイ装置10の配送処理部104は、受け取った改変リクエストを、設定対象の空調機40へ送信する(S14。図1の(5))。
【0035】
リクエストを受け取った空調機40がレスポンスを返した場合(S15)、ゲートウェイ装置10は、一旦、レスポンスをクラウドサーバ20へ送信する(S16)。クラウドサーバ20内の判定部204にて、空調操作端末30へ返すレスポンスについて、レスポンスの種類毎に、空調機40から返されたレスポンスをそのままで返すか、改変前の本来のリクエストで期待されるレスポンスと矛盾を生じない値に改変するか判定する。判定部204は、改変する必要があると判定した場合は、レスポンスを改変して、ゲートウェイ装置10へ渡す(S17)。ゲートウェイ装置10は、クラウドサーバ20から渡されたレスポンスを、空調操作端末30へ返す(S18)。空調操作端末30は、レスポンスを表示画面上の表示に反映する。
【0036】
図6は、第1実施形態の空調制御システムSによるクラウド通信エラー時のシーケンス図である。空調操作端末30は設定変更リクエストをゲートウェイ装置10に送信する(S21)。リクエストを受け取ったゲートウェイ装置10は、クラウドサーバ20へリクエスト情報を送る際、もしくは、クラウドサーバ20が改変したリクエストを返す際に、なんらかの原因で通信経路2が途絶した場合や、通信エラーが発生した場合は(S22、S23)、空調操作端末30から受け取ったリクエストをそのまま、通信経路1を介して空調機40へ送信する(S24)。また、ゲートウェイ装置10は、空調機40からレスポンスを受け取り(S25)、そのレスポンスを、クラウドサーバ20へ送ることなく、そのまま空調操作端末30へ返す(S26)。この方法により、ゲートウェイ装置10がクラウドサーバ20と通信できない場合でも、空調制御システムSの運用は維持可能となる。
【0037】
図7は、第1実施形態の空調制御システムSによるフェイクレスポンス使用時のシーケンス図である。空調操作端末30は設定変更リクエストをゲートウェイ装置10に送信する(S31)。ゲートウェイ装置10はリクエストをクラウドサーバ20に送信する(S32)。
【0038】
次に、クラウドサーバ20は、改変リクエストと、対となる空調操作端末30へ返すレスポンスを、一緒にゲートウェイ装置10へ返す(S33)。ゲートウェイ装置10の配送処理部104は、レスポンスを空調操作端末30に返す(S34)。ゲートウェイ装置10は、改変リクエストを該当する空調機40へ送出し(S35)、空調機40から返されたレスポンス(S36)をクラウドサーバ20に伝え(S37)、空調操作端末30には伝えない。これにより、空調操作端末30にとって、矛盾なく応答を返すことが可能になる。例えば、S31のリクエストが25℃の要求でS33の改変リクエストが27℃の要求であった場合、S34のレスポンスは25℃の応答となる。
【0039】
次に、図8は、第1実施形態の空調制御システムSによるパススルーレスポンス使用時のシーケンス図である。ここでは、空調機40から返されたレスポンスをクラウドサーバ20で改変処理することなく、そのまま空調操作端末30へ返す場合のシーケンス例について説明する。
【0040】
空調操作端末30は設定変更リクエストをゲートウェイ装置10に送信する(S41)。ゲートウェイ装置10はリクエストをクラウドサーバ20に送信する(S42)。
【0041】
次に、クラウドサーバ20は、改変リクエストをゲートウェイ装置10へ返す(S43)。ゲートウェイ装置10の配送処理部104は、改変リクエストを該当する空調機40へ送出し(S44)、空調機40から返されたレスポンス(S45)をクラウドサーバ20に伝え(S46)、空調操作端末30にも伝える(S47)。これにより、実際の空調機40の情報をそのまま空調操作端末30に返すため、空調機40の実際の状態と空調操作端末30における表示に乖離を生まないメリットがある。例えば、S41のリクエストが25℃の要求でS43の改変リクエストが27℃の要求であった場合、S47のレスポンスは27℃の応答となる。
【0042】
なお、レスポンスの扱いについて、図6図8で説明した3方式を、リクエストの種類によって使い分けてもよい。
【0043】
このように、第1実施形態の空調制御システムSによれば、上述のようにゲートウェイ装置10がクラウドサーバ20、空調操作端末30、空調機40と通信することによって、クラウドサーバ20を利用しつつ、クラウドサーバ20と空調機40の間(通信経路2)で通信不良が発生しても空調制御を継続することができる。
【0044】
例えば、ゲートウェイ装置10は、クラウドサーバ20と通信可能であれば、空調操作端末30から受信した空調機制御用命令をクラウドサーバ20に配送する。また、ゲートウェイ装置10は、クラウドサーバ20と通信不能であれば、空調操作端末30から受信した空調機制御用命令を空調機40に配送する。
【0045】
また、クラウドサーバ20は、空調機制御用命令のPMV制御や省エネ制御に関する履歴データを記憶していることで、空調機制御目標値を的確に補正することができる。つまり、クラウドサーバ20上で蓄積された過去の空調運転実績データからより実環境にあった空調機モデルと空間モデルを作成し、さらに気象情報や利用者に関する即時情報や、将来予測情報を用いることで、精度の高い空調制御を行うことが可能となる。
【0046】
なお、従来技術のモデルベース空調制御システムでPMVを用いたものがあるが、ビル内の空調機コントローラ(リモコン)側で行う温度設定は受け付けないか、常時上書きされ、空調制御には反映されないという問題があった。つまり、ビル内の空調機操作端末側で利用者が行う温度設定変更が無視されてしまうことで、利用者の満足度が下がり問題となっていた。一方、第1実施形態によれば、空調操作端末30で行う温度設定も柔軟に反映でき、そのような問題は生じない。
【0047】
また、クラウドサーバ20は、空調操作端末30からの温度設定変更要求値を受信した場合、所定時間の間(例えば15分間)は温度設定変更要求値を用い、所定時間の経過後は補正後の空調機制御目標値を用いるようにしてもよい。これにより、利用者の満足度を向上させることができる。
【0048】
また、クラウドサーバ20は、空調操作端末30から同じ温度設定変更要求値を2回以上受信した場合、同じ温度設定変更要求値を受信した回数が多いほど所定時間を増やすようにしてもよい。これにより、空調操作端末30で同じ温度設定変更要求値を2回以上行っている利用者に不満を抱かせる可能性を低減できる。
【0049】
また、クラウドサーバ20は、空調操作端末30から同じ温度設定変更要求値を2回以上受信した場合、同じ温度設定変更要求値を受信した回数が多いほど補正後の空調機制御目標値の補正幅を小さくするようにしてもよい。例えば、最初の要求が25℃でそれに対する補正後の目標値が27℃の場合、2回目の要求が同じ25℃だとそれに対する補正後の目標値を26.5℃とする。さらに、3回目の要求が同じ25℃だとそれに対する補正後の目標値を26℃とする。このようにして、利用者の要求を踏まえて補正後の空調機制御目標値を温度設定変更要求値に次第に近づけることで、利用者が不満を覚える可能性を低減することができる。
【0050】
また、空調制御のモードとしてクラウド優先モードとローカル優先モードを設け、空調操作端末30によって選択可能かつ表示可能にしたことで、利用者の利便性が向上する。
【0051】
また、既存製品で用いられている空調操作端末30や、空調操作端末30と空調コントローラ105の間の通信規格を変更することなく、利用者操作によるフィードバック情報を取得し空調機制御目標値算出に反映、補正を行うことで、より満足度の高い快適な空調を実現することができる。そして、空調操作端末30と空調コントローラ105の間の通信規格を変更する必要がないことから、既存製品を用いた空調システムに対しても適用可能ことがさらなる利点となる。
【0052】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第1実施形態と同様の事項については、重複する説明を適宜省略する。図9は、第2実施形態の空調制御システムSの全体構成図である。
【0053】
第1実施形態ではゲートウェイ装置10の内部に空調コントローラ105(図2)が設けられていたが、第2実施形態では、ゲートウェイ装置10の外部に空調コントローラ41(空調コントローラ105と同等)が設けられている。ゲートウェイ装置10は、空調コントローラ41を介してそれぞれの空調機40を制御可能である。制御の流れは、(1)→(2)→(3)→(4)→(15)→(16)の順となる。
【0054】
このように、第2実施形態によれば、第1実施形態の場合の作用効果のほかに、以下の作用効果を奏する。つまり、すでに空調機40や空調コントローラ41が設置されている場合、それらの通信プロトコル等を変更しないで、ゲートウェイ装置10とクラウドサーバ20を適用することができるので、導入の手間やコストが少なくて済む。
【0055】
なお、上述した実施形態における、上記情報処理を実行するためのプログラムを、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)、USB(Universal Serial Bus)メモリ等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するようにしてもよい。また、当該プログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するようにしてもよい。また、当該プログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するようにしてもよい。
【0056】
また、当該プログラムは、上記各機能構成を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしては、例えば、CPU(プロセッサ回路)がROMまたはHDDから当該プログラムを読み出して実行することにより、上述した各機能部がRAM上にロードされ、上述した各機能部がRAM上に生成されるようになっている。なお、上述した各機能部の一部または全部を、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)などの専用のハードウェアを用いて実現することも可能である。
【0057】
なお、実施形態について説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上記新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
1~4…通信経路、10…ゲートウェイ装置、20…クラウドサーバ、30…空調操作端末、40…空調機、41…空調コントローラ、101~103…通信部、104…配送処理部、105…空調コントローラ、110…記憶部、111…空調機管理表、112…GW情報、113…クラウドサーバ情報、201…通信部、202…記憶部、203…遠隔設定処理部、204…判定部、205…決定処理部、206…気象情報取得処理部、301…通信部、302…操作処理部、303…操作部、304…表示処理部、305…表示部、S…空調制御システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9