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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004562
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】アーチェリー弓用測定装置
(51)【国際特許分類】
   F41B 5/00 20060101AFI20230110BHJP
【FI】
F41B5/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106345
(22)【出願日】2021-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】506134939
【氏名又は名称】株式会社成興技研
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 成之
(72)【発明者】
【氏名】池谷 真人
(57)【要約】
【課題】例えばアーチェリー弓の特性を調整するため、アーチェリー弓のボウウェイトなどを手軽に測定可能なアーチェリー弓用測定装置を提供する。
【解決手段】本発明のアーチェリー弓用測定装置は、アーチェリー弓のリムポケットを接触保持する基準保持突起を有して測定時にライザーが載置される載置部と、載置部に対してアーチェリー弓のストリングがドローイングされる方向に沿って配置される移動用シャフトと、移動用シャフト上を移動可能であってストリングを保持するストリング保持部を有するボウウェイト測定器と、ボウウェイト測定器を移動用スクリュー上で移動させる移動機構と、を含み、基準保持突起は移動用シャフトの軸線上には配置されず軸線から所定距離だけ偏って配置される。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リムポケットを有するハンドルとしてのライザーと、このライザーから両側に延びるリムを備えたアーチェリー弓のドローイング時におけるボウウェイトを測定するアーチェリー弓用測定装置であって、
前記アーチェリー弓の前記リムポケットを接触保持する基準保持突起を有し、測定時に前記ライザーが載置される載置部と、
前記載置部に対して前記アーチェリー弓のストリングがドローイングされる方向に沿って配置される移動用シャフトと、
前記移動用シャフト上を移動可能であって前記ストリングを保持するストリング保持部を有するボウウェイト測定器と、
前記ボウウェイト測定器を前記移動用スクリュー上で移動させる移動機構と、を含み、
前記基準保持突起は、前記移動用シャフトの軸線上には配置されず、前記軸線から所定距離だけ偏って配置されてなる、
ことを特徴とするアーチェリー弓用測定装置。
【請求項2】
前記載置部は、前記アーチェリー弓が載置された際に前記リムの変形を確認可能な少なくとも1つの変位検出突起をさらに有する、
請求項1に記載のアーチェリー弓用測定装置。
【請求項3】
前記ボウウェイト測定器を搭載する測定台をさらに有し、
前記移動用シャフトはスクリューシャフトであり、
前記測定台が前記スクリューシャフトに螺合されてなる、
請求項1又は2に記載のアーチェリー弓用測定装置。
【請求項4】
前記移動用シャフトと並行して配置されて、前記測定台の前記軸線上の移動をガイドするガイドシャフトをさらに有する、
請求項3に記載のアーチェリー弓用測定装置。
【請求項5】
前記移動機構は、
前記スクリューシャフトの端部に設置された第1かさ歯車と、
前記第1かさ歯車と螺合する第2かさ歯車と、
前記第2かさ歯車と連結した操作用ハンドルと、で構成されてなる、
請求項1~4のいずれか一項に記載のアーチェリー弓用測定装置。
【請求項6】
前記ストリング保持部は、前記移動用シャフト上に配置されたピンフックであり、
前記ストリングを前記ピンフックに引っ掛けた状態で前記ボウウェイト測定器が前記軸線上を移動することで、前記アーチェリー弓の前記ボウウェイトが測定される、
請求項1~5のいずれか一項に記載のアーチェリー弓用測定装置。
【請求項7】
前記アーチェリー弓のストリングを引いた際の引っ張り長さを計測可能なドローレングス測定機構をさらに有する、
請求項1~6のいずれか一項に記載のアーチェリー弓用測定装置。
【請求項8】
前記ドローレングス測定器は、
前記載置部および前記移動機構が搭載された本体フレームに設置されたスケールと、
前記ボウウェイト測定器と一体的に前記スケール上を移動可能なスケール針と、で構成されてなる、
請求項7に記載のアーチェリー弓用測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばアーチェリー競技などに好適なアーチェリー弓のボウウェイトなどを測定可能なアーチェリー弓用測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アーチェリーは、射手がアーチェリー弓のストリングを引いて矢を射程内の標的に射るスポーツとして親しまれている。かようなアーチェリーの競技者は、定期的にアーチェリー弓を調整することで、射的の正確さと再現性を高める努力を継続して行っている。
【0003】
このように各競技者が自身のスキルを高めるのと同様に、カスタマイズ可能なアーチェリー弓も提案されている。
例えば特許文献1において、アーチェリー用弓10は、ライザー14、リム部12、12aおよび弦18からなることが記載されている。そしてこのライザー14は、構造体中に成形されたポート21を有し、リム12、12aも、構造体中に成形されたポート20、20aを有していることが記載されている。また、特許文献1では、リム部12は、結合された複数の複合管で形成されており、ポート12、12aを管の間に成形して、弓の剛性、強度、弾性、制御性および空力特性を改善することなどが提案されている。
【0004】
一方で、例えば特許文献2に例示するように、アーチェリー弓の組み立て装置も提案されている。この特許文献2においては、リムポケットを有するライザーと、前記ライザーの反対側の遠位端部、並びに前記ライザーの前記リムポケット内に保持されるとともにライザーに面する表面および外側に面する表面を有する近位端部を有するリムと、前記リムポケット内に配置され、前記リムの前記ライザーに面する表面上の複数の位置のうちの1つにおいて前記リムに接触するリム接触部材と、を備えるアーチェリー用弓組立体であり、前記リム接触部材は、前記リムポケット内の前記複数の位置のうちの1つにおいて位置調整可能であり、前記リムポケットに対する前記リム接触部材の取り付け位置に基づいて、前記アーチェリー用弓組立体の弦張力を変化させる、アーチェリー用弓組立体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-304179号公報
【特許文献2】特開2020-183861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した各特許文献に限らず現在の技術では市場のニーズを適切に満たしているとは言えず、上記各手法では以下に述べるごとき課題が存在する。
すなわちアーチェリー弓に関しては、上記した弓自体やその組み立て装置における改良が比較的多く為されている反面、アーチェリー弓の調整を行える装置については提案が少ない現状となっている。
【0007】
例えばアーチェリー弓の競技者は、一般的にリーチの長さや腕力など各自の特徴に基づいてストリングのボウウェイトを調整することが想定できる。たしかにアーチェリー弓を新品で購入した時の弓本体やその構成部品に劣化はないが、例えばこれら本体や部品に付随する金属(アルミ合金など)は経過劣化することも考えられる。
【0008】
この点に関し、たとえ経年劣化が起こったとしても、劣化した部品を新品に交換するとともに過去の使用状態に出来るだけ近づけたいというニーズが充分に想定できる。さらには、単純に劣化した部品を新品に交換しただけでは、他の部品も多少は変形している可能性があることから、部品交換後における調整はアーチェリー弓の性能維持にとって重要な作業となり得る。
【0009】
また、競技者自身においても、競技を長年続けていれば、体重など体型変化や腕力などの体力変化も生じてくることがあり得る。このような場合においては、所有するアーチェリー弓における過去(新品時など)の使用状態を基準としてアーチェリー弓の特性(ボウウェイトなど)を手軽に調整したいというニーズも想定できる。
【0010】
本発明は、上記した課題を一例に鑑みて為されたものであり、例えばアーチェリー弓の特性を調整するため、アーチェリー弓のボウウェイトなどを手軽に測定可能なアーチェリー弓用測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の一実施形態にかかるアーチェリー弓用測定装置は、(1)リムポケットを有するハンドルとしてのライザーと、このライザーから両側に延びるリムを備えたアーチェリー弓のドローイング時におけるボウウェイトを測定するアーチェリー弓用測定装置であって、前記アーチェリー弓の前記リムポケットを接触保持する基準保持突起を有し、測定時に前記ライザーが載置される載置部と、前記載置部に対して前記アーチェリー弓のストリングがドローイングされる方向に沿って配置される移動用シャフトと、前記移動用シャフト上を移動可能であって前記ストリングを保持するストリング保持部を有するボウウェイト測定器と、前記ボウウェイト測定器を前記移動用スクリュー上で移動させる移動機構と、を含み、前記基準保持突起は、前記移動用シャフトの軸線上には配置されず、前記軸線から所定距離だけ偏って配置されてなることを特徴とする。
【0012】
なお上記した(1)に記載のアーチェリー弓用測定装置においては、(2)前記載置部は、前記アーチェリー弓が載置された際に前記リムの変形を確認可能な少なくとも1つの変位検出突起をさらに有することが好ましい。
【0013】
また、上記した(1)又は(2)に記載のアーチェリー弓用測定装置においては、(3)前記ボウウェイト測定器を搭載する測定台をさらに有し、前記移動用シャフトはスクリューシャフトであり、前記測定台が前記スクリューシャフトに螺合されてなることが好ましい。
【0014】
また、上記した(3)に記載のアーチェリー弓用測定装置においては、(4)前記移動用シャフトと並行して配置されて、前記測定台の前記軸線上の移動をガイドするガイドシャフトをさらに有することが好ましい。
【0015】
また、上記した(1)~(4)のいずれかに記載のアーチェリー弓用測定装置においては、(5)前記移動機構は、前記スクリューシャフトの端部に設置された第1かさ歯車と、前記第1かさ歯車と螺合する第2かさ歯車と、前記第2かさ歯車と連結した操作用ハンドルと、で構成されてなることが好ましい。
【0016】
また、上記した(1)~(5)のいずれかに記載のアーチェリー弓用測定装置においては、(6)前記ストリング保持部は、前記移動用シャフト上に配置されたピンフックであり、前記ストリングを前記ピンフックに引っ掛けた状態で前記ボウウェイト測定器が前記軸線上を移動することで、前記アーチェリー弓の前記ボウウェイトが測定されることが好ましい。
【0017】
また、上記した(1)~(6)のいずれかに記載のアーチェリー弓用測定装置においては、(7)前記アーチェリー弓のストリングを引いた際の引っ張り長さを計測可能なドローレングス測定機構をさらに有することが好ましい。
【0018】
また、上記した(1)~(7)のいずれかに記載のアーチェリー弓用測定装置においては、(8)前記ドローレングス測定器は、前記載置部および前記移動機構が搭載された本体フレームに設置されたスケールと、前記ボウウェイト測定器と一体的に前記スケール上を移動可能なスケール針と、で構成されてなることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、アーチェリー弓のボウウェイトなどを手軽に測定することができ、例えば体型や体力が変化した際や部品を交換した際などにアーチェリー弓の特性を調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態に好適なアーチェリー弓の一例を示す模式図である。
図2】実施形態におけるアーチェリー弓用測定装置の構成を示した模式図である。
図3】実施形態におけるアーチェリー弓用測定装置のうち移動機構の構成を示した模式図である。
図4】実施形態におけるアーチェリー弓用測定装置のうちボウウェイト測定器の構成を示した模式図である。
図5】実施形態におけるアーチェリー弓用測定装置のうちドローレングス測定機構の構成を示した模式図である。
図6】実施形態におけるアーチェリー弓用測定装置のうち載置部の構成を示した模式図である。
図7】実施形態における、基準保持突起とボウウェイト測定器との位置関係を説明するための模式図である。
図8】実施形態におけるアーチェリー弓用測定装置にアーチェリー弓がセットされたときの状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を実施するための実施形態について説明する。
以下の説明では、便宜的に、アーチェリー弓用測定装置100におけるスクリューシャフトSS(移動用シャフト)が延在する方向をY方向とし、このアーチェリー弓用測定装置100の鉛直方向である高さ方向をZ方向、これらY方向とZ方向とに直交する方向(アーチェリー弓AWがアーチェリー弓用測定装置100にセットされた際のストリングSTが延びる方向)をX方向として便宜的に設定した。しかしながら本発明は上述した方向の定義付けに左右されるものではなく、特許請求の範囲を不当に減縮するものでないことは言うまでもない。
【0022】
なお、以下で詳述するアーチェリー弓やアーチェリー弓用測定装置の要素以外の機構・構造については、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、例えば上記した特許文献を含む公知のアーチェリー弓やその組み立て装置の構成や機能などを適宜組み入れて実施することができる。
【0023】
<アーチェリー弓AW>
図1に、本実施形態に好適なアーチェリー弓AWの一例を示す。
アーチェリー弓AWは、例えばアーチェリーなどの競技や趣味などの非競技で好適に用いることができる公知の弓(BOW、ボウ)が例示できる。同図に示すように、本実施形態のアーチェリー弓AWは、それぞれ公知の、リムポケットLPを有するハンドルとして機能するライザーRSと、このライザーRSの両端で固定部Fxを介して接続された一対のリムLMと、このリムLMの外端部で設置されて引っぱり強度を矢に伝えるストリングSTなどを有して構成されている。
【0024】
このうちリムポケットLPは、ストリングSTをドローイングする際にアーチェリー弓が安定するように、持ち手(例えば右利きの場合は左手)の親指と人差し指の間の指間腔が接触する部位となっている。
なお図示は省略したが、このライザーRSには、例えばレストやスタビライザーなど公知の各種要素が搭載されていてもよい。このように図1ではアーチェリー弓の一例としてベアボウが例示されているが、本発明はこのベアボウに限られず、例えばリカーブボウやコンパウンドボウなど他の公知のアーチェリー弓を適用してもよい。
【0025】
<アーチェリー弓用測定装置100>
次に図2図7を参照しつつ、本実施形態におけるアーチェリー弓用測定装置100の詳細な構成および機能について説明する。
本実施形態のアーチェリー弓用測定装置100は、上記したリムポケットLPを有するハンドルとしてのライザーRSと、このライザーRSから両側に延びるリムLMを備えたアーチェリー弓AWのドローイング時におけるストリングSTのボウウェイトを測定する機能を有して構成されている。
【0026】
より具体的にアーチェリー弓用測定装置100は、図2に示すように、載置部10と、移動用シャフト20と、ボウウェイト測定器30と、移動機構40と、を少なくとも含んで構成されている。なお同図に示すように、本実施形態のアーチェリー弓用測定装置100は、さらに、測定台50、ガイドシャフト60、ドローレングス測定機構70および金属製の本体フレーム80などを適宜含んで構成されていることが好ましい。
【0027】
なお本体フレーム80の具体的な構造としては、上記した載置部10や移動機構40などを搭載可能であれば特に制限はなく、例えば公知の金属または樹脂で形成された公知のフレームを適用できる。また図2に示すように、本実施形態の本体フレーム80は、設置面(床面)上を移動可能なように公知のキャスター81が底部に設けられていてもよい。
【0028】
載置部10は、図2及び図6から理解されるとおり、前記したアーチェリー弓AWのリムポケットLPを接触保持する基準保持突起11を有して構成された公知の支持台である。この載置部10は、上面の少なくとも一部が平坦となっており、上記したボウウェイトなどの測定時にアーチェリー弓AWのライザーRSが載置可能に構成されている。
【0029】
基準保持突起11は、上記した測定時にアーチェリー弓AWが安定して載置部10に保持されるように、載置部10から立設されてアーチェリー弓AWのリムポケットLPを接触保持する棒状の部材が例示できる。
また図6に示すように、前記した本実施形態の載置部10は、アーチェリー弓AWが載置された際にリムLMの変形を確認可能な少なくとも1つの変位検出突起12をさらに有することが好ましい。
【0030】
すなわちこの変位検出突起12は、例えば載置部10から立設された棒状の部材であり、上記したボウウェイトなどの測定時において、アーチェリー弓AWのライザーRSと接触しておらず所定の間隙を有するように設けられている。これにより作業者は、この所定の間隙における大小を把握することで、ライザーRSの歪みや変形もチェックすることが可能となっている。
【0031】
なお同図に示すように、本実施形態の変位検出突起12は、上記した基準保持突起11を上記X方向に関して挟むように複数設けられていてもよい。すなわち本実施形態の変位検出突起12は、基準保持突起11に対してアーチェリー弓AWの一端側に設けられる第1変位検出突起12Aと、他端側に設けられる第2変位検出突起12Bとで構成されていてもよい。
【0032】
また、上記した基準保持突起11や変位検出突起12の材質については、特に制限はなく、例えばPETなど比較的硬質の樹脂、オレフィン系樹脂やウレタン樹脂など比較的軟質の樹脂、木材、アルミニウムなど公知の金属、あるいは金属や木材に上記した樹脂が被覆された複合材などそれぞれ公知の材料で構成されていてもよい。
【0033】
移動用シャフト20は、前記した載置部10に対してアーチェリー弓AWのストリングSTがドローイングされる方向(図示ではY方向)に沿って配置される。また、移動用シャフト20のX方向(アーチェリー弓用測定装置100にアーチェリー弓AWが初期セットされた際のストリングSTが伸長する方向)における位置は、このストリングSTの中点に位置するように設定されている。
かような移動用シャフト20は、後述するボウウェイト測定器30をY方向に沿って移動させるレールとして機能する。
【0034】
より具体的に本実施形態の移動用シャフト20は、図2などから理解されるとおり、送りネジが外周面に形成された公知のスクリューシャフトSSが好適である。これにより、後述するように、移動機構40としてのハンドルを作業者が回転させることで、スクリューシャフトSSに螺合された測定台50(ボウウェイト測定器30)がスクリューシャフトSSの軸方向に沿って軸線上を移動可能となっている。
【0035】
ボウウェイト測定器30は、前記した移動用シャフト20上を移動可能であってアーチェリー弓AWのストリングSTを保持するストリング保持部31を有して構成されている。より具体的に本実施形態のボウウェイト測定器30は、図4に示すように、ストリングSTのドローイングによって増加する引っ張り力(ボウウェイト)を測定可能なロードセルやフォースゲージなどの公知の測定器が例示できる。
【0036】
なお、上記したストリング保持部31は、本実施形態では、移動用シャフト20上に配置されたピンフックが好適である。かようなピンフックとしては、金属製または樹脂製の公知の鉤部材が例示できる。
そして本実施形態では、後述するとおり、アーチェリー弓AWのストリングSTを前記したピンフックに引っ掛けた状態でボウウェイト測定器30が上記した軸線上を移動することで、アーチェリー弓の特性(ボウウェイトなど)が測定される。
【0037】
移動機構40は、前記したボウウェイト測定器30を移動用シャフト20上で移動させる機能を有して構成されている。より具体的に本実施形態の移動機構40は、図3に示すように、前記したスクリューシャフトSSの端部に連結して設置された第1かさ歯車41と、この第1かさ歯車41と螺合する第2かさ歯車42と、この第2かさ歯車42と連結した操作用ハンドル43と、で構成されている。
【0038】
そして作業者が操作用ハンドル43を回転させることで、この回転力が上記した第1かさ歯車41及び第2かさ歯車42を介してスクリューシャフトSSに伝達される。これにより、作業者が操作用ハンドル43を適宜回転することで、スクリューシャフトSSに螺合されたボウウェイト測定器30が当該スクリューシャフトSSの軸線上を移動することが可能となっている。
【0039】
なお本実施形態の移動機構40は、ボウウェイト測定器30をスクリューシャフトSS上でストリングSTに対して進退可能に移動させることが可能となっているが、本発明はこの形態には限定されない。すなわち移動機構40は、アーチェリー弓AWの特性測定時にボウウェイト測定器30を少なくともストリングSTから離間させる方向に移動させることができればよく、上記した送りネジ機構の他に例えばシリンダ機構など公知の機構で代替することもできる。
【0040】
測定台50は、前記したボウウェイト測定器30を搭載する機能を有して構成されている。図2図4及び図5などから理解されるとおり、本実施形態のボウウェイト測定器30は、上記したスクリューシャフトSSに直接螺合されておらず、このスクリューシャフトSSに螺合された測定台50を介してスクリューシャフトSSの軸線上を移動可能となっている。かような測定台50は、ボウウェイト測定器30を載置する載置板と、スクリューシャフトSSの送りネジと螺合する螺子部が形成された直方体状の部材である。測定台50の材質としては、上記した機能を発揮する限りにおいて特に制限はなく、例えばそれぞれ公知のアルミニウムなどの金属材やアクリルなどの樹脂材が例示できる。
【0041】
ガイドシャフト60は、図2図5などから理解されるとおり、前記した移動用シャフト20と並行して本体フレーム80に配置されている。本実施形態のガイドシャフト60は、例えば公知の金属または樹脂製の棒状部材が用いられ、ボウウェイト測定器30を載置する測定台の前記軸線上の移動をガイドする機能を有して構成される。
【0042】
なおガイドシャフト60は、本実施形態では、上記した移動用シャフト20を挟むように、当該移動用シャフト20の軸方向両脇にそれぞれ第1ガイドシャフト60Aと第2ガイドシャフト60Bで1本ずつ配置されている。これにより、移動機構40を介して軸線上を移動する測定台50(ボウウェイト測定器30)の姿勢を安定させることが可能となっている。また、本実施形態のガイドシャフト60は、必ずしも上記した移動用シャフト20を挟むように一対設ける必要はなく、当該移動用シャフト20のいずれか側方に1本または複数本設けられていてもよい。
【0043】
ドローレングス測定機構70は、前記したアーチェリー弓AWのストリングSTを引いた際の引っ張り長さ(ドローレングス)を計測する機能を有して構成されている。本実施形態では、上記したボウウェイト測定器30によるアーチェリー弓AWのボウウェイトを測定するのと並行して、このボウウェイトに対応してドローレングス測定機構70によってドローレングスを測定可能となっている。
【0044】
より具体的に本実施形態のドローレングス測定機構70は、図5などから理解されるとおり、スケール71とスケール針72とで構成されている。
スケール71は、前記した載置部10や移動機構40などが搭載された本体フレーム80に設置されている。このスケール71は、測定方向が測定台50(ボウウェイト測定器30)の移動方向に沿うように、本体フレーム80において移動用シャフト20に対して並置されている。
【0045】
スケール針72は、上記したボウウェイト測定器3ー0と一体的にスケール71上を移動可能に構成されている。より具体的には、本実施形態のスケール針72は、スケール71の上方にスケール針72の探針が配置されるように、上記した測定台50に固定されている。従って、ボウウェイト測定器30を載置する測定台50がスクリューシャフトSSの軸線上を移動することで、この測定台50の移動に同期してスケール針72もスケール71上を移動することが可能となっている。
【0046】
なお、以下ではドローレングス測定機構70の一例として上記スケール71とスケール針72を用いた例について説明するが、本発明はこの形態に限られない。例えばドローレングス測定機構70の他の形態として、例えばボウウェイト測定器30に公知の測距センサー(レーザー距離計や超音波距離計など)を組み入れて、アーチェリー弓のボウウェイト測定時に上記した測距センサーでドローレングスを同時測定してもよい。
【0047】
[基準保持突起11と移動用シャフト20との位置関係]
次に、載置部10に設けられた基準保持突起11と、ボウウェイト測定器30がその軸線上を移動する移動用シャフト20と、の位置関係について説明する。
図7から理解されるとおり、本実施形態において、上記した基準保持突起11は、この移動用シャフト20(本例ではスクリューシャフトSS)の軸線BA上には配置されず、この軸線BAから所定距離σx(例えば1インチなど)だけ偏って配置(偏心配置)されている。
【0048】
これにより、競技者がアーチェリー弓AWをドローイングする際に最も安定した箇所で支持できるように設計されたリムポケットLPに対して、基準保持突起11が当該リムポケットLPを接触保持することが可能となる。これに加え、上述のとおり移動用シャフト20のX方向における位置は、初期セットされたアーチェリー弓AWのストリングSTにおけるほぼ中点(リムの外端同士を結ぶ直線における中点にほぼ相当)に位置するように設定されていることから、ボウウェイト測定器30を移動用シャフト20の軸線上で移動機構40を介してブレなく移動させることが可能となっている。
【0049】
<アーチェリー弓の調整方法>
次に図8も参照しつつ本実施形態におけるアーチェリー弓AWの調整方法の一例について説明する。
すなわち、上述のとおり、アーチェリー弓AWは、多数の金属部品や樹脂部品で構成されていることから、新品時の弓本体とその両端の湾曲調整部材などを構成する金属材(アルミ合金など)は、使用を重ねると経過劣化をすることが考えられる。
従って、例えば新品から所定期間経過した後あるいは新品から定期的に、使用者(競技者など)の特徴に合わせて本実施形態におけるアーチェリー弓用測定装置100を用いてアーチェリー弓AWを次のように調整することが好ましい。
【0050】
以下、競技者Iが所有するアーチェリー弓における調整態様の一例を説明する。
まず新品時のアーチェリー弓AWのリムポケットLPが基準保持突起11と接触するように載置部10にアーチェリー弓AWをセットする。
そして移動機構40を介して、例えばストリングSTが基準状態(例えば装置へのセット時を基準とする)から50cm引いたときの引っ張り力(ボウウェイト)をボウウェイト測定器30で計測する。
【0051】
なお、上記した50cmは例えば競技者Iが試行した当時の最適なドローレングスであり、競技者Iが適宜試行することで当時の体型や体力に応じた値を適宜設定できる。
また、基準状態からのストリングSTのドローレングスは、上述のとおりドローレングス測定機構70で計測できる。
【0052】
このときボウウェイト測定器30が示したボウウェイトが40kgであったとすると、作業者はこのときのドローレングス(50cm)とボウウェイト(40kg)を対応させて記録することが可能となる。なお、このようなドローレングスに対応したボウウェイトの記録態様は、公知の紙面(ノート)に記録してもよいし、公知のパーソナルコンピューターに記録してもよいし、ボウウェイト測定器30内に公知のメモリを搭載することで当該メモリ内に記録してもよい。
以上のようにして設定したドローレングス(50cm)とボウウェイト(40kg)が競技者Iにとっての新品時のアーチェリー弓の特徴として記録される。
【0053】
その後、所定の使用期間が経過後に上記した金属材が劣化した弓を調整するときに、本実施形態におけるアーチェリー弓用測定装置を再び次のように用いることができる。
すなわち少なくとも一部が劣化したアーチェリー弓AWをアーチェリー弓用測定装置100にセットした後で、上記した新品時のアーチェリー弓の特徴を再現するように調整していく。まず上記した競技者Iとしては、ドローレングスが50cmでボウウェイトが40kgの特性がベストコンディションであるので、この最適なドローレングスが示す位置に移動機構40を介してストリングSTをセットする。
【0054】
このとき、上記した劣化などが原因で例えばアーチェリー弓AWのリムLMの湾曲度は初期状態(上記新品のとき)とは変わっている可能性がある。例えばリムLMが使用によって内側に向けて湾曲度合いを強めていた場合、上記した変位検出突起12とリムLMとの距離(接触の有無や距離の大小)で上記劣化の程度を確認することができる。
【0055】
例えば上記劣化によってリムLMが変位検出突起12と接触した場合には、接触しないようにストリングSTの張力(テンション)を抑えることが好ましい。かようなテンション調整の一例としては、例えばリムLMやライザーRSに設けられる公知の湾曲度調整部材(公知のリムボルトやリムLM端部のカム調整機構など)で、上記したドローレングスを50cmとしつつボウウェイトを40kgとなるように調整することができる。
【0056】
上記した実施形態は、各実施形態を組み合わせたりするなど本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上説明したように、本発明のアーチェリー弓用測定装置は、アーチェリー弓のボウウェイトやドローレングスなどを手軽に測定することに好適であり、例えば競技者のみならずアーチェリーのインストラクターなども利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
100 アーチェリー弓用測定装置
10 載置部
11 基準保持突起
12 変位検出突起
20 移動用シャフト
30 ボウウェイト測定器
31 ピンフック
40 移動機構
41 第1かさ歯車
42 第2かさ歯車
43 操作用ハンドル
50 測定台
60 ガイドシャフト
70 ドローレングス測定機構
71 スケール
72 スケール針
80 本体フレーム
81 キャスター
AW アーチェリー弓
RS ライザー
LP リムポケット
LM リム
ST ストリング

図1
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図3
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図5
図6
図7
図8