(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045630
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】レーザ加工装置およびレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/38 20140101AFI20230327BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20230327BHJP
B23K 26/122 20140101ALI20230327BHJP
【FI】
B23K26/38 A
B23K26/00 M
B23K26/122
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154161
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】394019082
【氏名又は名称】コマツ産機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 義博
(72)【発明者】
【氏名】高田 伸浩
(72)【発明者】
【氏名】野崎 茂
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD07
4E168CA13
4E168CB03
4E168CB15
4E168DA02
4E168DA03
4E168DA23
4E168DA28
4E168FA01
4E168FB01
4E168FB07
4E168HA07
4E168JA02
4E168KA16
(57)【要約】
【課題】液体を用いたレーザ加工において作業の効率が良好なレーザ加工装置およびレーザ加工方法を提供する。
【解決手段】レーザヘッド10は、レーザ光を射出する。液槽1は、個別に透過抑制液LIを貯留可能なように互いに分けられた容器1F、1S、1Tを有する。容器1F、1S、1Tの各々は、レーザヘッド10により加工される被加工材WO1、WO2、WO3を支持可能である。容器1F、1S、1Tの各々は個別に液位調整機構47を有し、容器1F、1S、1Tの各々における透過抑制液LIの液位は独立に調整される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を射出するレーザヘッドと、
個別に液体を貯留可能なように互いに分けられた第1容器および第2容器を有し、前記第1容器および前記第2容器の各々において前記レーザヘッドにより加工される被加工材を支持可能な液槽と、
前記第1容器に貯留された液体の液位を調整する第1液位調整機構と、
前記第1液位調整機構とは独立して動作し、前記第2容器に貯留された液体の液位を調整する第2液位調整機構と、を備えた、レーザ加工装置。
【請求項2】
前記液槽は、本体と、前記第1容器と前記第2容器とを分ける隔壁とを有し、
前記隔壁は、前記本体に着脱可能に構成されている、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記隔壁の下端および両側端の各々は、前記本体に係合可能である、請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記隔壁の上端の高さ位置は、前記第1容器および前記第2容器の各々に支持された被加工材の上面よりも高い位置である、請求項2または請求項3に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記第1容器内における液体の液位の前記第1液位調整機構による調整と前記第2容器内における液体の液位の前記第2液位調整機構による調整とを独立して制御するコントローラをさらに備えた、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記第1容器内における液体の液位を検出する第1液位検出センサと、
前記第2容器内における液体の液位を検出する第2液位検出センサと、をさらに備えた、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
レーザ光を用いて被加工材を加工するレーザ加工方法であって、
互いに分けられた第1容器および第2容器の各々に液体を貯留するステップと、
前記第1容器および前記第2容器の各々に被加工材が支持された状態で、前記第1容器内における液体の液位と前記第2容器内における液体の液位とを互いに独立して調整するステップと、を備えた、レーザ加工方法。
【請求項8】
前記第1容器および前記第2容器の各々における液体の液位を互いに独立して調整するステップにおいて、レーザ加工を実施していない被加工材を支持する前記第1容器における液体の液位は前記第1容器に支持された被加工材の上面よりも低く、レーザ加工を実施している被加工材を支持する前記第2容器における液体の液位は前記第2容器に支持された被加工材の上面よりも高い、請求項7に記載のレーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ加工装置およびレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工装置において水を用いた装置が、たとえば特開平8-132270号公報(特許文献1)、特開昭62-168692号公報(特許文献2)などに開示されている。
【0003】
特許文献1では、加工テーブルの水槽内において被加工材の下部が冷却水に浸けられた状態でレーザ加工が行なわれる。これにより、被加工材の全体を下部から冷却し、安定した加工が可能になる。
【0004】
特許文献2では、剣山ピンの取付箱に水を入れた状態で、剣山ピンに支持された被加工材がレーザ加工される。水槽に入った水は、レーザ切断中に被加工材を冷却し、粉塵の飛散を抑える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-132270号公報
【特許文献2】特開昭62-168692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レーザ加工装置における一連の加工工程は、被加工材のレーザ加工装置への搬入、レーザ加工装置による加工、およびレーザ加工装置からの搬出の順で行なわれる。このためレーザ加工装置に対して被加工材を搬入または搬出する際には加工作業が中断される。よって液体を用いたレーザ加工における作業の効率が悪い。
【0007】
本開示の目的は、液体を用いたレーザ加工において作業の効率が良好なレーザ加工装置およびレーザ加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のレーザ加工装置は、レーザヘッドと、液槽と、第1液位調整機構と、第2液位調整機構とを備える。レーザヘッドは、レーザ光を射出する。液槽は、個別に液体を貯留可能なように互いに分けられた第1容器および第2容器を有し、第1容器および第2容器の各々においてレーザヘッドにより加工される被加工材を支持可能である。第1液位調整機構は、第1容器に貯留された液体の液位を調整する。第2液位調整機構は、第1液位調整機構とは独立して動作し、第2容器に貯留された液体の液位を調整する。
【0009】
本開示のレーザ加工方法は、レーザ光を用いて被加工材を加工するレーザ加工方法であって、以下のステップを有する。
【0010】
互いに分けられた第1容器および第2容器の各々に液体が貯留される。第1容器および第2容器の各々に被加工材が支持された状態で、第1容器内における液体の液位と第2容器内における液体の液位とが互いに独立して調整される。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、液体を用いたレーザ加工において作業の効率が良好なレーザ加工装置およびレーザ加工方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態におけるレーザ加工装置の構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1のレーザ加工装置に用いられる容器の内部構成を示す断面斜視図である。
【
図3】
図1のレーザ加工装置に用いられる加工ヘッドの構成を示す断面図である。
【
図4】
図1のレーザ加工装置に用いられるレーザ光遮光部材の構成を示す断面図である。
【
図5】
図1のレーザ加工装置に用いられる液位調整機構などの構成を示す断面図である。
【
図6】容器から着脱可能な隔壁の構成を説明するための斜視図である。
【
図7】
図5に示されるコントローラの機能ブロック図である。
【
図8】隔壁を取り外して被加工材を加工する様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、明細書および図面において、同一の構成要素または対応する構成要素には、同一の符号を付し、重複する説明を繰り返さない。また、図面では、説明の便宜上、構成を省略または簡略化している場合もある。
【0014】
以下の説明における平面視とは、複数の載置部2cが位置する面に対して直交する方向から見た視点を意味する。また平面形状とは、平面視における形状を意味する。
【0015】
<レーザ加工装置の構成>
本実施形態におけるレーザ加工装置の構成について
図1~
図6を用いて説明する。
【0016】
図1は、一実施形態におけるレーザ加工装置の構成を示す斜視図である。
図2は、
図1のレーザ加工装置に用いられる容器の内部構成を示す断面斜視図である。
図3、
図4および
図5のそれぞれは、
図1のレーザ加工装置に用いられる加工ヘッド、レーザ光遮光部材および液位調整機構の構成を示す断面図である。
図6は、容器から着脱可能な隔壁の構成を説明するための斜視図である。
【0017】
図1に示されるように、本実施形態のレーザ加工装置20は、被加工材WO(WO1~WO3)をレーザ光を用いて加工する。被加工材WO(WO1~WO3)は、たとえば鋼材よりなる。
【0018】
レーザ加工装置20は、液槽1を有している。液槽1は、たとえば長方形の平面形状を有している。液槽1は、たとえば3個の容器1F、1S、1Tを有している。液槽1に含まれる容器の個数は3個に限定されず、2個または4個以上であってもよく、複数個であればよい。
【0019】
容器1F、1S、1Tの各々は、平面視において長手方向(X方向)の辺と、短手方向(Y方向)の辺とを有する長方形状を有している。容器1F、1S、1Tの各々の平面形状は長方形状に限定されず、正方形状であってもよい。3個の容器1F、1S、1Tは、たとえば容器1F、容器1S、容器1Tの順でX方向に並んで配置されている。
【0020】
容器1F、1S、1Tの各々における長手方向(X方向)の辺は平面視において一つの直線上に沿って並んでいる。容器1Fおよび容器1Sの間と、容器1Sおよび容器1Tの間との各々には、短手方向(Y方向)の辺が位置している。
【0021】
容器1F、1S、1Tのそれぞれは被加工材WO1、WO2、WO3を支持することができる。
【0022】
レーザ加工装置20は、駆動機構25を有している。駆動機構25は、レーザヘッド10を、X方向(液槽1の長手方向)、Y方向(液槽1の短手方向)およびZ方向(上下方向)に移動させる。駆動機構25は、左右1対の支持台21と、X方向可動台22と、Y方向可動台23と、レーザヘッド10とを主に有している。
【0023】
左右1対の支持台21は、液槽1をY方向に挟み込むように配置されている。左右1対の支持台21の各々は、X方向に延びている。X方向可動台22は、Y方向に延びることにより、左右1対の支持台21に跨って配置されている。X方向可動台22は、X軸モータ(図示せず)により支持台21に沿ってX方向に駆動される。
【0024】
Y方向可動台23は、たとえばラックピニオン機構により、X方向可動台22に対してY方向に移動可能に支持されている。Y方向可動台23は、Y軸モータ(図示せず)によりY方向に駆動される。
【0025】
レーザヘッド10は、たとえばラックピニオン機構により、Y方向可動台23に対してZ方向に移動可能に支持されている。レーザヘッド10は、Z軸モータ(図示せず)によりZ方向に駆動される。
【0026】
駆動機構25によりレーザヘッド10は、複数の容器1F、1S、1Tの各々の上を移動可能である。これによりレーザヘッド10は、複数の容器1F、1S、1Tの各々に支持された被加工材WO(WO1~WO3)を加工することが可能である。なお、レーザ加工装置20は、複数のY方向可動台23を有し、Y方向可動台23のそれぞれにレーザヘッド10を有していてもよい。また、レーザ加工装置20は、1つのY方向可動台23に複数のレーザヘッド10を有していてもよい。すなわち、レーザ加工装置20は複数のレーザヘッド10を有していてもよい。
【0027】
操作盤30は、被加工材WO(WO1~WO3)の形状、材質、加工速度などの加工条件の入力を受け付ける。操作盤30は、ディスプレイ、スイッチ、報知器などを有している。ディスプレイには、加工条件の入力画面、レーザ加工装置20の稼働状況を示す画面などが表示される。
【0028】
図2に示されるように、複数の容器1F、1S、1Tの各々における内部構成は、互いに同じ構成を有している。複数の容器1F、1S、1Tの各々には、切断パレット2と、スラッジトレイ3と、液位調整タンク4とが配置されている。
【0029】
複数の容器1F、1S、1Tの各々は、矩形状の底壁1aと、底壁1aの4辺の各々から立ち上がる4つの側壁1bとを有している。複数の容器1F、1S、1Tの各々は、上方が開口した有底筒形状を有している。複数の容器1F、1S、1Tの各々は、上端の開口部と、その開口部から複数の容器1F、1S、1Tの各々の内部へ延びる内部空間とを有している。
【0030】
複数の容器1F、1S、1Tの各々は、内部に液体(透過抑制液LI:
図4)を貯留できるように構成されている。側壁1bには、パレット支持部1cが設けられている。パレット支持部1cは、側壁1bの壁面から複数の容器1F、1S、1Tの各々の内部空間に向かって側方へ突き出している。
【0031】
液位調整タンク4は、複数の容器1F、1S、1Tの各々の内部空間内にそれぞれ独立して配置されている。つまり容器1Fの内部空間に配置された液位調整タンク4と、容器1Sの内部空間に配置された液位調整タンク4と、容器1Tの内部空間に配置された液位調整タンク4とは、互いに分離されることにより独立している。容器1F、1S、1Tの各々に配置される液位調整タンク4は、下端に開口部を持つ箱形状を有している。この開口部を通じて、液位調整タンク4の内部空間は複数の容器1F、1S、1Tの各々の内部空間と繋がっている。
【0032】
液位調整タンク4は、液位調整タンク4の内部空間にガスを貯留できるように構成されている。液位調整タンク4の内部空間に対してガスを供給または排出することが可能である。液位調整タンク4の内部空間にガスを供給することにより、液位調整タンク4内の透過抑制液LIを液位調整タンク4の外部へ押し出すことができる。また液位調整タンク4の内部空間からガスを排出することにより、液位調整タンク4の外部から内部へ透過抑制液LIを取り入れることができる。これにより、複数の容器1F、1S、1Tの各々内の液位を個別に調整することが可能である。
【0033】
このように複数の容器1F、1S、1Tの各々に個別に液位調整タンク4が配置されているため、複数の容器1F、1S、1Tの各々で独立して透過抑制液LIの液位を調整することが可能である。
【0034】
スラッジトレイ3は、液位調整タンク4の上方に配置されている。スラッジトレイ3は、上端に開口部を有する箱形状を有している。スラッジトレイ3は、レーザ加工で被加工材WO(
図5)を切断した際に生じるスラッジを溜めることが可能である。レーザ加工の際に生じたスラッジは、被加工材WOから落下し、スラッジトレイ3の上端における開口部を通じてスラッジトレイ3の内部に溜められる。
【0035】
切断パレット2は、パレット支持部1cにより容器1F、1S、1Tの各々に支持されている。切断パレット2は、容器1F、1S、1Tの各々の内部空間内であって、スラッジトレイ3の上方に配置されている。切断パレット2は、複数の第1支持板2aと、複数の第2支持板2bとを有している。複数の第1支持板2aと複数の第2支持板2bとは、縦横に配置されることにより格子状に組み上げられている。
【0036】
切断パレット2は、被加工材WO(
図5)の下面を支持する載置部2cを有している。切断パレット2の載置部2cは、たとえば複数の第2支持板2bの各々の上端により構成されている。載置部2cは、液槽1の上端(側壁1bの上端)よりも低い位置にある。容器1F、1S、1Tの各々の上端は、載置部2cに被加工材WOを載置した状態で、被加工材WOの上面よりも高い位置にある。これにより、載置部2cに被加工材WOが載置された状態で容器1F、1S、1Tの各々内に透過抑制液LIを満たした場合、透過抑制液LIの液位を被加工材WOの上面より高くすることができる。
【0037】
図3に示されるように、レーザヘッド10は、ヘッド本体5と、集光レンズ6aとを主に有している。ヘッド本体5は、本体部5aを有している。
【0038】
本体部5aは、中空の円筒形状を有している。集光レンズ6aは、本体部5aの中に収納されている。集光レンズ6aは、レーザ光RLを被加工材WOに集光する。集光レンズ6aによって集光されたレーザ光RLは、本体部5aのレーザ射出口5aaから被加工材WOに向かって射出される。
【0039】
本実施形態のレーザ加工装置20に用いられるレーザ光RLは、可視光、近赤外光、中赤外光および遠赤外光のいずれかの波長を有し、0.7μm以上10μm以下の波長を有する。このレーザ光RLは、たとえばファイバレーザを光源とするレーザ光であり、YAG(Yttrium Aluminum Garnet)を含む固体レーザを光源とするレーザ光であってもよい。ファイバレーザとは、光ファイバを増幅媒体とする固体レーザの一種である。ファイバレーザでは、光ファイバの中心にあるコアに希土類元素Yb(イッテルビウム)がドープされている。ファイバレーザを光源とするレーザ光RLは、約1.06μmの波長を有する近赤外光である。ファイバレーザでは、炭酸ガスレーザよりもランニングコスト、メンテナンスコストが安い。
【0040】
本体部5aは、ガス吹出口5aaと、ガス供給部5abとを有している。ガス供給部5abから本体部5a内にアシストガスが供給される。本体部5a内に供給されたアシストガスは、ガス吹出口5aaから被加工材WOに向かって吹き出される。ガス吹出口5aaは、レーザ射出口5aaを兼ねている。
【0041】
ヘッド本体5は、アウターノズル5bをさらに有してもよい。アウターノズル5bは、本体部5aのガス吹出口5aaの周囲を取り囲むように本体部5aに取り付けられている。アウターノズル5bの内周面と本体部5aの外周面との間には、隙間空間が設けられている。
【0042】
アウターノズル5bは、ガス吹出口5baと、ガス供給部5bbとを有している。ガス吹出口5baおよびガス供給部5bbの各々は、上記隙間空間に繋がっている。ガス吹出口5baは、ガス吹出口5aaの外周に配置され、円環形状を有している。
【0043】
ガス供給部5bbから本体部5aとアウターノズル5bとの間の隙間空間に2次ガス(シールドガス)が供給される。隙間空間内に供給された2次ガスは、ガス吹出口5baから被加工材WOに向かって吹き出される。これによりガス吹出口5aaから吹き出されるアシストガスの外周側に、ガス吹出口5baから2次ガスが吹き出される。
【0044】
上記のようにレーザヘッド10は、ガス吹出口5aa、5baを有する。ガス吹出口5aa、5baは、アシストガスを吹き出すガス吹出口5aaと、2次ガスを吹き出すガス吹出口5baとを含んでいてもよい。ガス吹出口5aaとガス吹出口5baとは、2重ノズル構造を構成している。
【0045】
図4に示されるように、レーザヘッド10は、遮光カバー7を有している。遮光カバー7は、レーザ射出口5aa(ガス吹出口5aa)の周囲を取り囲んでいる。遮光カバー7は、たとえばゴムシートよりなっている。遮光カバー7は、周壁部7aと、第1上板7bと、第2上板7cとを有している。周壁部7aは、ヘッド本体5の外周を取り囲む円筒形状を有する。
【0046】
周壁部7aの上部には第1上板7bおよび第2上板7cが取り付けられている。第1上板7bには、1つまたは複数の第1孔7baが設けられている。第2上板7cは、第1上板7bの上に隙間7dを挟んで配置されている。
【0047】
第2上板7cには、1つまたは複数の第2孔7caが設けられている。第1上板7bの下方に位置する周壁部7aの内部空間7eは、第1孔7baと第2孔7caとを通じて遮光カバー7の外部空間と繋がっている。このため遮光カバー7の内部空間7eにおけるガスは、
図4中の破線矢印で示すように、第1孔7baと第2孔7caとを通じて遮光カバー7の外部へ抜ける。よって、レーザ加工時に遮光カバー7の周壁部7aの下端7Lより高い位置まで透過抑制液LIの液面が位置しても、このような構造により内部空間7eのガスは、第1孔7baと第2孔7caとを通じて遮光カバー7の外部へ抜けることができる。
【0048】
第1孔7ba、隙間7dおよび第2孔7caは、レーザ光に対してラビリンス構造を構成している。具体的には
図4中の実線矢印で示すように、レーザヘッド10のレーザ射出口5aaから射出されて被加工材WOにて反射したレーザ光が第1孔7baを通過した後に隙間7d内を直線状に進んだ先に第2孔7caが位置しない。第2孔7caは、ヘッド本体5を中心とする径方向の位置において、第1孔7baよりもたとえば内周側に位置している。
【0049】
第1孔7baを通過して隙間7dに入ったレーザ光は、第1上板7bと第2上板7cとの間で反射を繰り返すことにより(多重反射することにより)遮光カバー7に吸収される。これにより遮光カバー7の内部から外部へレーザ光が漏れることはない。
【0050】
図5に示されるように、容器1Fと容器1Sとは互いに接続されている。また、
図5では図示を省略しているが、容器1Tは容器1Sに接続されている。容器1Tと容器1Sとの接続構造は容器1Fと容器1Sとの接続構造とほぼ同じである。
【0051】
容器1Fと容器1Sとの間には、側壁1bとして1つの側壁1baが位置している。側壁1baにより、容器1Fと容器1Sとは互いに分離されている。同様に、容器1Sと容器1Tとの間にも側壁1baと同様の側壁が位置している。容器1Sと容器1Tとの間に位置する側壁により、容器1Sと容器1Tとは互いに分離されている。
【0052】
容器1F、1S、1Tの各々には、各容器毎に、液体供給部34、液位検出センサ41、液位調整機構47および液体排出部(図示せず)が設けられている。以下においては、容器1Fを例に挙げて、容器1Fに設けられる液体供給部34、液位検出センサ41、液位調整機構47および液体排出部について説明する。
【0053】
容器1Fの液体供給部34は、容器1Fの内部に透過抑制液LI(
図4)を供給する。液体供給部34は、供給配管36と、供給バルブ31とを有している。供給配管36には、供給バルブ31が取り付けられている。供給バルブ31を開くことにより容器1Fの内部空間への透過抑制液LIの供給が開始され、供給バルブ31を閉じることにより容器1Fの内部空間への透過抑制液LIの供給が停止される。
【0054】
容器1Fの液位検出センサ41は、容器1F内に貯留された透過抑制液LIの液位を検出する機能を有している。液位検出センサ41は、たとえばガイドパルス型のレベルセンサである。
【0055】
容器1Fの液位調整機構47は、液位検出センサ41の検出結果に基づいて容器1F内における透過抑制液LIの液位を調整する。液位調整機構47は、液位調整タンク4、ガス配管37、加圧バルブ32および減圧バルブ33を有している。
【0056】
容器1F内の液位調整タンク4には、容器1Fの外部からガス配管37が接続されている。ガス配管37には加圧バルブ32と、減圧バルブ33とが取り付けられている。加圧バルブ32を開くことにより液位調整タンク4内にガスが供給され、加圧バルブ32を閉じることにより液位調整タンク4内へのガスの供給が停止される。減圧バルブ33を開くことにより液位調整タンク4内のガスが外部へ排出され、減圧バルブ33を閉じることにより液位調整タンク4内からのガスの排出が停止される。
【0057】
容器1Fの液体排出部(図示せず)は、オーバーフロー配管と、貯液槽と、液排出配管と、排出バルブとを有している。
【0058】
容器1Fには、オーバーフロー配管が取り付けられている。容器1F内の透過抑制液LIの液位が所定液位以上になった場合に、容器1F内の透過抑制液LIがオーバーフロー配管を通じて貯液槽へ排出される。貯液槽は、液槽1の外部に配置されている。
【0059】
容器1Fには、液排出配管が取り付けられている。液排出配管には排出バルブが取り付けられている。排出バルブを開くことにより容器1F内の透過抑制液LIが貯液槽に排出され、排出バルブを閉じることにより容器1Fからの透過抑制液LIの排出が停止される。
【0060】
容器1Sおよび容器1Tの各々に設けられた液体供給部34、液位検出センサ41、液位調整機構47および液体排出部は、容器1Fに設けられたものと同様の構成を有する。このため同一の要素については同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0061】
容器1F、1S、1Tの各々は、少なくとも載置部2cの高さ位置HLまで透過抑制液LIを貯留可能に構成されている。また容器1F、1S、1Tの各々は、載置部2cに載置された被加工材WO(WO1、WO2、WO3)の上面US1、US2よりも高い位置PLまで透過抑制液LIを貯留可能である。容器1F、1S、1Tの各々における透過抑制液LIの液位は、各容器に独立して設けられた液位調整機構47を用いて、互いに独立に制御することができる。
【0062】
容器1F、1S、1Tの各々に貯留される透過抑制液LIは、光を吸収してレーザ光の透過を抑制する。透過抑制液LIは、たとえば波長が0.7μm以上10μm以下である光の透過を抑制する。
【0063】
透過抑制液LIにおける0.7μm以上10μm以下の波長域における光の透過率は、たとえば10%/cm以下である。また透過抑制液LIにおける0.7μm以上10μm以下の波長域における光の透過率は、たとえば5%/cm以下であることが好ましい。また透過抑制液LIにおける0.7μm以上10μm以下の波長域における光の透過率は、たとえば3%/cm以下であることがより好ましい。
【0064】
透過抑制液LIは、0.7μm以上10μm以下の波長域における光の透過を抑制するため、0.7μm以上10μm以下の波長域における光を吸収または散乱する添加剤を含む。この添加剤はたとえば炭素を含む。添加剤は、黒色であることが好ましい。透過抑制液LIは、たとえば水に炭素を添加した水溶液である。透過抑制液LIは、たとえば水に0.1容積%の墨汁を加えた水溶液である。本明細書における水とは、水道水であってもよく、純水であってもよい。墨汁は、膠またはその他の水溶性樹脂の水溶液に、カーボンブラック(炭素)を分散させてなるものであり、カーボンブラックの混合比率は全量に対して4.0~20.0重量%であり、好ましくは5.0~10.0重量%である。墨汁は、たとえば市販の「呉竹 濃墨墨滴 BA7-18」である。
【0065】
透過抑制液LIは、防錆剤を含むことが好ましい。防錆剤は、鋼材などの腐食を抑制する腐食抑制剤である。防錆剤は、たとえば水溶性である。防錆剤としては、たとえば沈殿皮膜型インヒビター、不動態型インヒビター、脱酸素型インヒビターなどが用いられてもよい。
【0066】
透過抑制液LIは、水置換剤(水切り剤)を含むことが好ましい。水置換剤は、被加工材WOの水切り性を改善する。水置換剤とは、水などの液体に濡れた物質の表面から、その液体を剥がすための溶剤である。水置換剤は、たとえば物質の表面に単分子状の薄膜を形成することで、水などの液体を弾くように作用するものであってもよい。
【0067】
レーザ加工装置20は、コントローラ50と、加工開始スイッチ52とをさらに有している。加工開始スイッチ52は、たとえば操作者などによる外部からの操作によって、レーザ加工装置20によるレーザ加工開始の指令を発する。加工開始スイッチ52は、操作盤30(
図1)に設けられてもよい。加工開始スイッチ52は、操作盤30に設けられたタッチパネルであってもよい。
【0068】
加工開始スイッチ52は、コントローラ50に接続されている。コントローラ50は、加工開始スイッチ52から加工開始の信号を受ける。コントローラ50は、容器1F、1S、1Tの各々の液位検出センサ41に接続されている。コントローラ50は、容器1F、1S、1Tの各々の液位検出センサ41により検出された各容器1F、1S、1T内における透過抑制液LIの液位を示す信号を受ける。
【0069】
コントローラ50は、取得した加工開始の信号に基づいて、各部を制御する。コントローラ50は、容器1F、1S、1Tの各々における供給バルブ31、加圧バルブ32、減圧バルブ33および排出バルブを開閉するよう制御する。コントローラ50は、レーザヘッド10がX、Y、Z方向へ移動するように駆動機構25(
図1)を制御する。コントローラ50は、レーザヘッド10からのレーザ射出を制御する。
【0070】
コントローラ50は、液位検出センサ41の検出結果に基づいて、加圧バルブ32または減圧バルブ33の開閉を制御する。これにより液位調整タンク4内に貯留されるガスの量が調整され、容器1F、1S、1Tの各々に貯留される透過抑制液LIの液位が調整される。このようにコントローラ50は、加圧バルブ32または減圧バルブ33の開閉を制御することにより、各容器1F、1S、1T内に貯留される透過抑制液LIの液位を調整する。
【0071】
コントローラ50の制御により、容器1F、1S、1Tの各々の液位調整機構47は互いに独立に動作する。これにより容器1F、1S、1Tの各々の内部に貯留される透過抑制液LIの液位は互いに個別に調整可能である。
【0072】
コントローラ50は、レーザヘッド10と駆動機構25(
図1)とを制御する。これにより容器1F、1S、1Tの各々に支持された被加工材WO1、WO2、WO3の各々は、レーザヘッド10によりレーザ加工される。またコントローラ50は、レーザ加工時(レーザヘッド10がレーザ光を射出する時)において、被加工材WO1、WO2、WO3の各々において、予め設定された移動軌跡に沿ってレーザヘッド10を移動させる。
【0073】
コントローラ50は、たとえばプロセッサであり、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。
【0074】
なお
図5に示されるように、容器1Fと容器1Sとの間の側壁1baは下壁LPと上壁UPとを有し、上壁UPは下壁LPに対して着脱可能であってもよい。以下、側壁1baの構成について
図6を用いて説明する。
【0075】
図6に示されるように、下壁LPは、底壁1aに接続されており、底壁1aからZ方向の上方に立ち上がっている。側壁1baのY方向における両端部は、X方向に沿って延びる側壁1bbに接続されている。下壁LPの上端の高さ位置は、側壁1bbの上端の高さ位置よりも低い。側壁1bbおよび下壁LPの各々は、パレット支持部1cを有している。側壁1bb、下壁LPおよび底壁1aは、液槽1の本体に含まれている。
【0076】
上壁UPは、下壁LPに対して着脱可能である。上壁UPは、下壁LPの上端上に配置される。上壁UPは、容器1Fと容器1Sとを分ける隔壁であり、液槽1の本体(側壁1bb、下壁LP、底壁1a)に対して着脱可能に構成されている。
【0077】
上壁UPと液槽1の本体との各々は、上壁UPが本体に取り付けられた状態において互いに係合するように構成されている。具体的には本体は挟持部SAを有しており、上壁UPは挟持部SBを有している。挟持部SAおよび挟持部SBの各々は、隙間をあけて互いに対向する2つの板部材により構成されている。
【0078】
本体の挟持部SAは、下壁LPの上において側壁1bbに取り付けられている。本体の挟持部SAを構成する2つの板部材の各々は、側壁1bbから液槽1の内部に向かって突き出している。本体の挟持部SAを構成する2つの板部材間の隙間に、上壁UPのY方向における端部が挿入可能である。
【0079】
上壁UPの挟持部SBは、上壁UPの下部に位置している。挟持部SBを構成する2つの板部材の各々は、上壁UPの下方に向かって突き出している。上壁UPの挟持部SBを構成する2つの板部材の隙間に、下壁LPの上端が挿入可能である。
【0080】
上壁UPのY方向における両端の各々が挟持部SAに挿入され、かつ下壁LPの上端が挟持部SBに挿入されることにより、上壁UPは液槽1の本体に係合し、取り付けられる。
【0081】
液槽1の本体と上壁UPとの上記係合により、容器1Fおよび容器1Sの一方の容器から他方の容器へ透過抑制液LIが流れ込むことが抑制される。液槽1の本体と上壁UPとの上記係合部にパッキンなどのシーリング部材が配置されてもよい。
【0082】
なおレーザ加工動作においては、容器1Fと容器1Sとの液位の差を数時間程度保持できればよい。このため、液槽1の本体と上壁UPとの上記係合部は完全な液体シールでなくてもよい。
【0083】
図5に示されるように、下壁LPの上端の高さ位置は、たとえば切断パレット2の載置部2cの高さ位置HLよりも低い位置に設定されている。また液槽1の本体に取り付けられた上壁UPの上端の高さ位置は、詳細を後述する、レーザ切断時における透過抑制液LIの液位1Lよりも高い位置(被加工材WO1の上面よりも高い位置)とされ、たとえばX方向に沿う側壁1b(1bb)の上端の高さ位置とほぼ同じである。
【0084】
容器1Sと容器1Tとを分ける側壁1bが、上記のように下壁LPと上壁UPとを有する側壁1baと同じ構成を有していてもよい。
【0085】
<コントローラの機能ブロック>
次に、
図5に示されるコントローラ50の機能ブロックについて
図7を用いて説明する。
【0086】
図7は、
図5に示されるコントローラの機能ブロック図である。
図7に示されるように、コントローラ50は、第1液位判定部51aと、第1液位出力部52aと、第2液位判定部51bと、第2液位出力部52bとを有している。
【0087】
第1液位判定部51aは、第1液位検出センサ41の検出信号を取得する。第1液位検出センサ41は、たとえば容器1Fに設けられた液位検出センサである。第1液位判定部51aは、第1液位検出センサ41の検出信号に基づいて、たとえば容器1Fにおける透過抑制液LIの液位を判定する。第1液位判定部51aは、判定結果を示す信号を第1液位出力部52aへ出力する。
【0088】
第1液位出力部52aは、第1液位判定部51aから取得した判定結果を示す信号に基づいて、たとえば容器1Fにおける透過抑制液LIの目標液位を算出する。第1液位出力部52aは、算出した目標液位となるように第1液位調整機構47を制御する制御信号を第1液位調整機構47へ出力する。
【0089】
第1液位調整機構47は、たとえば容器1Fに設けられた液位調整機構47である。第1液位調整機構47により、たとえば容器1F内の透過抑制液LIの液位を調整することができる。
【0090】
第2液位判定部51bは、第2液位検出センサ41の検出信号を取得する。第2液位検出センサ41は、たとえば容器1Sに設けられた液位検出センサである。第2液位判定部51bは、第2液位検出センサ41の検出信号に基づいて、たとえば容器1Sにおける透過抑制液LIの液位を判定する。第2液位判定部51bは、判定結果を示す信号を第2液位出力部52bへ出力する。
【0091】
第2液位出力部52bは、第2液位判定部51bから取得した判定結果を示す信号に基づいて、たとえば容器1Sにおける透過抑制液LIの目標液位を算出する。第2液位出力部52bは、算出した目標液位となるように第2液位調整機構47を制御する制御信号を第2液位調整機構47へ出力する。
【0092】
第2液位調整機構47は、たとえば容器1Sに設けられた液位調整機構47である。第2液位調整機構47により、たとえば容器1S内の透過抑制液LIの液位を調整することができる。
【0093】
コントローラ50が上記の構成を有することにより、2つの容器(たとえば容器1F、1S)における透過抑制液LIの液位を独立して調整することができる。
【0094】
なお3個の容器1F、1S、1Tの各々における透過抑制液LIの液位を独立して調整する場合には、コントローラ50は、第3液位判定部および第3液位出力部を追加で有する。第3液位判定部は、容器1Tに設けられた液位検出センサ41の検出信号を取得する。第3液位判定部は、容器1Tに設けられた液位検出センサ41の検出信号に基づいて、容器1Tにおける透過抑制液LIの液位を判定する。第3液位出力部は、第3液位判定部から取得した判定結果を示す信号に基づいて、容器1Tにおける透過抑制液LIの目標液位を算出する。第3液位出力部は、算出した目標液位となるように、容器1Tに設けられた液位調整機構47を制御することにより、容器1T内における透過抑制液LIの液位を調整する。
【0095】
<レーザ加工方法>
次に、本実施形態におけるレーザ加工装置20を用いたレーザ加工方法について
図1、
図4および
図5を用いて説明する。
【0096】
図1に示されるように、レーザ加工装置20の各容器1F、1S、1T内に、透過抑制液LIが供給される。この際、
図5に示されるように、コントローラ50は、容器1F、1S、1Tの各々の供給バルブ31を開くように制御する。これにより各容器1F、1S、1Tの供給配管36から透過抑制液LIが容器1F、1S、1Tの各々の内部に個別に供給される。
【0097】
この際、コントローラ50は、各容器1F、1S、1Tの液位検出センサ41により各容器1F、1S、1T内の透過抑制液LIの液位を検出する。コントローラ50は、液位検出センサ41の検出結果に基づいて各容器1F、1S、1T内の透過抑制液LIの液位が所望の液位SLになったと判断したら、各容器1F、1S、1Tの供給バルブ31を閉じるように制御する。このとき、透過抑制液LIは、たとえば切断パレット2の載置部2cの高さ位置HLよりも低い位置SLまで供給される。
【0098】
図1に示されるように、この後、容器1F、1S、1Tのそれぞれに、被加工材WO1、WO2、WO3が搬入される。被加工材WO1、WO2、WO3の各々の搬入は、たとえばクレーンを用いて行なわれる。被加工材WO1、WO2、WO3の各々における平面形状のサイズは、容器1F、1S、1Tのそれぞれの平面形状のサイズの範囲内である。この状態で、レーザ加工装置20によるレーザ加工動作が開始される。
【0099】
図5に示されるように、レーザ加工装置20におけるレーザ加工動作の開始は、たとえば加工開始スイッチ52を操作することにより行なわれる。レーザ加工動作が開始されると、コントローラ50は、被加工材WO1、WO2、WO3の各々を順にレーザ加工するようにレーザ加工装置20を制御する。
【0100】
図1に示されるように、レーザヘッド10は、たとえば容器1Fに支持された被加工材WO1を最初にレーザ加工する。被加工材WO1のレーザ加工が終了すると、レーザヘッド10は移動して、容器1Sに支持された被加工材WO2をレーザ加工する。被加工材WO2のレーザ加工が終了すると、レーザヘッド10は移動して、容器1Tに支持された被加工材WO3をレーザ加工する。
【0101】
被加工材WO1、WO2、WO3の各々をレーザ加工する際には、容器1F、1S、1Tの各々の透過抑制液LIの液位が上昇される。
図4に示されるように、透過抑制液LIの液位が被加工材WO1、WO2、WO3の上面よりも高い位置となった状態でレーザ加工が行なわれる。また被加工材WO1、WO2、WO3の各々のレーザ加工が終了した後、容器1F、1S、1T内の透過抑制液LIの液位が下降される。
【0102】
容器1Fと容器1Sとの間および容器1Sと容器1Tとの間には、液槽1の本体に上壁UPが装着されている。このため容器1F、1S、1T内の透過抑制液LIの液位は個別に調整可能である。
【0103】
容器1F上での被加工材WO1のレーザ加工が終了し、容器1F内の透過抑制液LIの液位が下降された後、加工された被加工材WO1が容器1Fから搬出される。容器1F上の被加工材WO1の搬出は、他の容器におけるレーザ加工工程の間に行われる。すなわち、容器1S(または容器1T)内の透過抑制液LIの液位の上昇時、容器1Sでの被加工材WO2(または容器1Tでの被加工材WO3)のレーザ加工時、および容器1S(または容器1T)内の透過抑制液LIの液位の下降時の少なくともいずれかのタイミングで行なわれる。
【0104】
容器1S上での被加工材WO2のレーザ加工が終了し、容器1S内の透過抑制液LIの液位が下降された後、加工された被加工材WO2が容器1Sから搬出される。容器1S上の被加工材WO2の搬出は、他の容器におけるレーザ加工工程の間に行われる。すなわち、容器1T内の透過抑制液LIの液位の上昇時、容器1Tでの被加工材WO3のレーザ加工時、および容器1T内の透過抑制液LIの液位の下降時の少なくともいずれかのタイミングで行なわれる。
【0105】
容器1T上での被加工材WO3のレーザ加工が終了し、容器1T内の透過抑制液LIの液位が下降された後、加工された被加工材WO3が容器1Tから搬出される。
【0106】
このように被加工材WO1、WO2、WO3の各々が各容器1F、1S、1Tに搬入されてから、加工された被加工材WO3が容器1Tから搬出されるまでの工程が1ターンとされ、この1ターンが完了した時点で、レーザ加工動作が完了する。また上記1ターンが複数回繰り返された後にレーザ加工動作が完了されてもよい。これにより、一の容器における被加工材の搬出後であって他の容器におけるレーザ加工中に当該一の容器への新たな被加工材の搬入を繰り返すことによって、複数の容器におけるレーザ加工が連続して行なわれてもよい。
【0107】
上記のように本実施形態のレーザ加工は、各容器ごとに見た場合、被加工材の搬入、透過抑制液LIの液位の上昇、被加工材のレーザ加工、透過抑制液LIの液位の下降、被加工材の搬出の順で行なわれる。以下に、透過抑制液LIの液位の上昇、レーザ加工および透過抑制液LIの液位の下降について具体的に説明する。
【0108】
被加工材WO1、WO2、WO3の各々を加工する際には、
図5に示されるようにコントローラ50は、容器1F、1S、1Tの各々に貯留される透過抑制液LIの液位を目標液位PLまで上昇させる。この際、コントローラ50は、容器1F、1S、1Tの各々の液位検出センサ41の検出結果に基づいて、透過抑制液LIの液位を調整する。
【0109】
透過抑制液LIの目標液位PLは、載置部2cの高さ位置HL以上の高さである。本実施形態においては、透過抑制液LIの目標液位PLは、たとえば被加工材WO1、WO2、WO3の各々の上面よりも高い位置PLに調整される。これにより被加工材WO1、WO2、WO3の各々の全体は、レーザ加工時には透過抑制液LI内に沈む(浸漬される)。
【0110】
透過抑制液LIの液位を目標液位PLまで上昇させる際には、コントローラ50が液位調整機構47を制御する。具体的には、コントローラ50は、たとえば加圧バルブ32を開くように制御する。これにより液位調整タンク4内にガスが供給され、容器1F、1S、1Tの各々に貯留される透過抑制液LIの液位が目標液位PLまで高くなるように調整される。
【0111】
液位検出センサ41により透過抑制液LIの液位が目標液位PLに達したことが検出された場合、被加工材WO1、WO2、WO3の加工が開始される。被加工材WO1、WO2、WO3のレーザ加工時には、レーザヘッド10から被加工材WO1、WO2、WO3に向けてレーザ光が照射される。またレーザヘッド10からアシストガスが被加工材WO1、WO2、WO3に向けて吹き出される。
【0112】
また被加工材WO1、WO2、WO3のレーザ加工時には、コントローラ50が駆動機構25を制御する。これによりレーザヘッド10がたとえば製品形状に沿って移動する。
【0113】
図4に示されるように、アシストガスの吹き出し力により、被加工材WO1、WO2、WO3の加工点において透過抑制液LIが押しのけられる。これにより被加工材WO1、WO2、WO3の加工点において被加工材WO1、WO2、WO3の上面が透過抑制液LIから露出する。
【0114】
透過抑制液LIから露出した被加工材WO1、WO2、WO3の上面にレーザ光が照射される。このレーザ光の照射により被加工材WO1、WO2、WO3が加工される。これにより被加工材WO1、WO2、WO3が、たとえば切断などされる。被加工材WO1、WO2、WO3を切断することにより被加工材WO1、WO2、WO3を貫通したレーザ光は、被加工材WO1、WO2、WO3の下方に貯留された透過抑制液LIに入射する。
【0115】
レーザ加工時において透過抑制液LIの液位は遮光カバー7の下端7Lよりも高くなっている。このためレーザヘッド10から吹き出されたアシストガスは、透過抑制液LIに遮られて、遮光カバー7の下端7Lと被加工材WOの上面との間から遮光カバー7の外部へ抜けることはない。しかしレーザヘッド10から吹き出されたアシストガスは、第1上板7bの第1孔7baと第2上板7cの第2孔7caとを通じて遮光カバー7の内部から外部へ抜ける。このためアシストガスの吹き出しによって、遮光カバー7の内部においてガスの圧力が上昇することは防止される。
【0116】
レーザ加工により被加工材WO1、WO2、WO3を切断した際に生じたスラッジは透過抑制液LI内に沈み、スラッジトレイ3(
図5)内に溜まる。スラッジとは、たとえば溶融鉄が固まった酸化鉄の粒である。このように被加工材WO1、WO2、WO3が透過抑制液LI内に浸漬された状態でレーザ加工が行なわれることにより、加工時に生じるスラッジの周囲への飛散が防止される。
【0117】
上記のレーザ加工が終了すると、
図5に示されるように、コントローラ50は、液位検出センサ41の検出結果に基づいて、液槽1に貯留される透過抑制液LIの液位を被加工材WO1、WO2、WO3の下面よりも低い位置に下降させる。これにより被加工材WO1、WO2、WO3の全体は、透過抑制液LIから露出する。
【0118】
透過抑制液LIの液位を被加工材WO1、WO2、WO3の下面よりも低い位置に下降させる際には、
図5に示されるように、コントローラ50は減圧バルブ33が開くように制御する。これにより液位調整タンク4内に貯留されるガスの量が減ぜられ、液位調整タンク4内に透過抑制液LIが流れ込む。このため液槽1内における透過抑制液LIの液位が下がる。この際、コントローラ50は、液位検出センサ41により液槽1内の透過抑制液LIの液位を検出する。コントローラ50は、液槽1内の透過抑制液LIの液位が所望の液位SLになったと判断したら、減圧バルブ33を閉じるように制御する。
【0119】
一連のレーザ加工動作が完了した後、切断パレット2およびスラッジトレイ3が容器1F、1S、1Tの各々から取り出される。この後、スラッジトレイ3内のスラッジが撤去される。
【0120】
以上のように本実施形態におけるレーザ加工装置20を用いたレーザ加工が行なわれる。
【0121】
<本実施形態の効果>
次に、本実施形態の効果について比較例との対比で説明する。
【0122】
レーザ加工装置の液槽が1個の容器からなる比較例においては、レーザ加工動作は、1個の容器への被加工材の搬入、レーザ加工、搬出の順で行なわれる。この比較例においては、被加工材の容器への搬入作業および容器からの搬出作業時にレーザ加工が中断する。このためレーザ加工作業の効率が良くない。
【0123】
また上記比較例において、黒色の透過抑制液が用いられ、かつレーザ加工時において被加工材の上面よりも高い位置まで透過抑制液の液位を上昇させる場合には、透過抑制液の液位を被加工材の上面よりも低くしないと被加工材の搬出作業を行なうことができない。なぜなら搬出作業を行なう作業者が液体で濡れるし、黒色の透過抑制液により作業者が足下を確認できないためである。このように透過抑制液の液位を被加工材の上面よりも低くするまで被加工材の搬出作業ができないということからも、比較例においてはレーザ加工作業の効率が良くない。
【0124】
これに対して本実施形態においては
図1に示されるように、レーザ加工装置20は複数(たとえば3個)の容器1F、1S、1Tを有している。また複数の容器1F、1S、1Tの各々に設けられた液位調整機構47は、互いに独立に制御され動作する。このため、複数の容器1F、1S、1Tの各々において個別に透過抑制液LIの液位を調整してレーザ加工を行なうことが可能となる。よって複数の容器の内のいずれか1つの容器(たとえば容器1F、1T)にて被加工材WO(たとえば被加工材WO1、WO3)を搬入または搬出する際に、複数の容器の内の他の容器(たとえば容器1S)にてレーザ加工を行なうことができる。これによりレーザ加工の中断時間が短縮されるため、比較例に対してレーザ加工作業の効率を高めることが可能となる。
【0125】
また複数の容器の内のいずれか1つの容器(たとえば容器1S)にて透過抑制液LIの液位を下降させる際に、複数の容器の内の他の容器(たとえば容器1F、1T)にて被加工材の搬入または搬出を行なうこともできる。これにより、比較例に対してレーザ加工作業の効率をさらに高めることが可能となる。
【0126】
また本実施形態においては
図6に示されるように、液槽1は、容器1Fと容器1Sとを分ける上壁UPを有している。上壁UPは、液槽1の本体(側壁1bb、下壁LPおよび底壁1aを含む)に対して着脱可能に構成されている。これにより上壁UPを液槽1の本体に取り付けた状態では、
図5に示されるように、容器1Fと容器1Sとの各々において個別に透過抑制液LIの液位を調整することができる。たとえば容器1Fにおいては被加工材WO1の上面よりも高い位置1Lに透過抑制液LIの液位を調整でき、容器1Sにおいては被加工材WO2の上面よりも低い位置2Lに透過抑制液LIの液位を調整できる。これにより上記のとおり、たとえば容器1Fにおいて被加工材WO1のレーザ加工を行なうことができ、また容器1Sにおいて被加工材WO2の搬入または搬出を行なうことができる。
【0127】
また上壁UPを液槽1の本体から取り外した状態では、
図8に示されるように、複数の容器(たとえば容器1Fと容器1S)に亘って1つの被加工材WOを載置することができる。このためサイズの大きな(長尺の)被加工材WOのレーザ加工に対応することが可能となる。
【0128】
また本実施形態においては
図6に示されるように、上壁UPの下端および両側端の各々は液槽1の本体に係合可能である。具体的には、本体の挟持部SAを構成する2つの板部材間の隙間に、上壁UPのY方向における端部が挿入可能である。また上壁UPの挟持部SBを構成する2つの板部材の隙間に、下壁LPの上端が挿入可能である。これにより上壁UPは液槽1の本体に強固に支持される。また2つの容器(たとえば容器1F、1S)の一方から他方へ透過抑制液LIが漏れることが抑制される。
【0129】
また本実施形態においては
図5に示されるように、上壁UPの上端の高さ位置は、容器1F、1S、1Tの各々に支持された被加工材WO1、WO2、WO3の上面よりも高い位置である。これによりレーザ加工時に容器1F、1S、1Tの各々における透過抑制液LIの液位が被加工材WO1、WO2、WO3の上面よりも高くなる場合でも、各容器1F、1S、1T内の透過抑制液LIの液位を個別に調整することが可能となる。
【0130】
また本実施形態においては
図5に示されるように、コントローラ50は、容器1Fに設けられる液位調整機構47と、容器1Sに設けられる液位調整機構47と、容器1Tに設けられる液位調整機構47との各々を独立して制御する。これにより容器1F、1S、1Tの各々の内部に貯留された透過抑制液LIの液位を独立して調整してレーザ加工を行なうことが可能となる。
【0131】
また本実施形態においては
図5に示されるように、レーザ加工装置20は、容器1Fの液位を検出する液位検出センサ41と、容器1Sの液位を検出する液位検出センサ41と、容器1Tの液位を検出する液位検出センサ41とを有している。このため複数の容器1F、1S、1Tの各々の液位を個別に検出することが可能となる。
【0132】
また本実施形態においては
図5に示されるように、レーザ加工を実施していない被加工材WO2を支持する容器1Sにおける透過抑制液LIの液位2Lは、容器1Sに支持された被加工材WO2の上面US2よりも低い。またレーザ加工を実施している被加工材WO1を支持する容器1Fにおける透過抑制液LIの液位は容器1Fに支持された被加工材WO1の上面US1よりも高い。これによりレーザ加工を実施していない被加工材WO2を搬出することが容易となる。またレーザ加工を実施している被加工材WO1ではレーザ加工時に照射されるレーザ光が透過抑制液LIなどで吸収されるためレーザ加工装置20の外部へ漏れ出すことが抑制される。
【0133】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0134】
1 液槽、1F,1S,1T 容器、1a 底壁、1b,1ba,1bb 側壁、1c パレット支持部、2 切断パレット、2a 第1支持板、2b 第2支持板、2c 載置部、3 スラッジトレイ、4 液位調整タンク、5 ヘッド本体、5a 本体部、5aa,5ba ガス吹出口、5ab,5bb ガス供給部、5b アウターノズル、6a 集光レンズ、7 遮光カバー、7L 下端、7a 周壁部、7b 第1上板、7ba 第1孔、7c 第2上板、7ca 第2孔、7d 隙間、7e 内部空間、10 レーザヘッド、20 レーザ加工装置、21 支持台、22 X方向可動台、23 Y方向可動台、25 駆動機構、30 操作盤、31 供給バルブ、32 加圧バルブ、33 減圧バルブ、34 液体供給部、36 供給配管、37 ガス配管、41 液位検出センサ、47 液位調整機構、50 コントローラ、51a 第1液位判定部、51b 第2液位判定部、52 加工開始スイッチ、52a 第1液位出力部、52b 第2液位出力部、LI 透過抑制液、LP 下壁、RL レーザ光、SA,SB 挟持部、UP 上壁、US1,US2 上面、WO,WO1,WO2,WO3 被加工材。