(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045631
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】積層フィルムの切断方法および切断装置
(51)【国際特許分類】
B26D 5/06 20060101AFI20230327BHJP
B26D 7/26 20060101ALI20230327BHJP
B26D 3/00 20060101ALI20230327BHJP
B26D 1/06 20060101ALI20230327BHJP
B26D 7/18 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
B26D5/06 Z
B26D7/26
B26D3/00 601B
B26D1/06 Z
B26D7/18 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154162
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】505361347
【氏名又は名称】株式会社ファインテック
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】本木 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】永尾 暁
(72)【発明者】
【氏名】東山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】戸川 雄貴
【テーマコード(参考)】
3C021
3C027
【Fターム(参考)】
3C021FC02
3C021JA04
3C021JA09
3C027HH01
3C027HH03
3C027HH11
3C027HH14
(57)【要約】
【課題】少なくとも基材フィルムの裏面側にハードコート層が形成された積層フィルムの切断の際に、ハードコート層に発生する亀裂の長さを抑え、所望とする形状に切断することを可能とする積層フィルムの切断方法および切断装置を提供する。
【解決手段】切断装置1は、基材フィルムの切断方向の裏面側にハードコート層を有する積層フィルムFを切断する刃物(第1の刃物10,第2の刃物20)を備えている。刃物は、積層フィルムFを試験切断して測定された最大幅であり、亀裂が発生した切断面からの領域の最大幅を少なくとも除去幅として、本切断の第1の刃物10による1回目の切断の切断面から確保して、本切断の第2の刃物20による2回目の切断を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの切断方向の裏面側に少なくともハードコート層が積層された積層フィルムを切断する積層フィルムの切断方法であり、
前記積層フィルムを試験切断して、前記ハードコート層に亀裂が発生した切断面からの亀裂領域の最大幅を測定する工程と、
前記積層フィルムに対して、本切断の1回目を行う工程と、
前記1回目の切断による切断面から、少なくとも前記最大幅を除去幅として確保して、本切断の2回目を行う工程とを含む積層フィルムの切断方法。
【請求項2】
前記試験切断として2回切断を行うものであり、1回目の切断により発生した亀裂領域の最大幅から、2回目の切断位置として除去幅を増加させて、2回目の切断時に発生する亀裂領域の最大幅が急激に増加する前の位置以下となる除去幅を、本切断のときの除去幅とする請求項1の積層フィルムの切断方法。
【請求項3】
前記1回目の切断は、前記積層フィルムの一部を残して切断するものであり、
前記2回目の切断により前記積層フィルムを切り抜く請求項1または2記載の積層フィルムの切断方法。
【請求項4】
前記1回目の切断を行った刃物の位置から前記刃物を2回目の切断の位置まで移動して、前記2回目の切断を前記刃物により行う請求項1から3のいずれかの項に記載の積層フィルムの切断方法。
【請求項5】
前記1回目の切断位置にある第1の刃物により切断し、前記積層フィルムの位置を変えずに、前記2回目の切断位置にある第2の刃物により切断する請求項1から3のいずれかの項に記載の積層フィルムの切断方法。
【請求項6】
基材フィルムの切断方向の裏面側に少なくともハードコート層を有する積層フィルムを切断する刃物を備えた積層フィルムの切断装置であり、
前記刃物は、前記積層フィルムを試験切断して前記ハードコート層に
亀裂が発生した切断面からの亀裂領域の最大幅を少なくとも除去幅として、本切断の1回目の切断面から確保して、本切断の2回目を行う積層フィルムの切断装置。
【請求項7】
前記刃物は、前記1回目の切断を行う第1の刃物と、前記2回目の切断を行う第2の刃物とを備え、
前記第1の刃物の前記第2の刃物側には、前記第2の刃物の一部が収容される切り欠き部が、前記第1の刃物の厚みを薄くして形成された請求項6記載の積層フィルムの切断装置。
【請求項8】
前記刃物は、片刃により形成され、前記1回目の切断を行う第1の刃物と、前記2回目の切断を行う第2の刃物とを備え、
前記第2の刃物の刃裏面には、刃先から傾斜面を含む範囲に、厚みを薄くする切り欠き部が形成された請求項6記載の積層フィルムの切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ティスプレイ部品等で使用される積層フィルムの切断に関し、特に、基材フィルムの切断方向の裏面側に少なくともハードコート層を有する積層フィルムを切断する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層フィルムは、液晶テレビ、有機ELテレビ、電子ペーパー、タッチパネル、スマートフォン等の光学ディスプレイ用部品等で広く使用される。ここで、積層フィルムの一例を
図13に基づいて説明する。
【0003】
図13に示す積層フィルムFは、単層または複数層から形成された機能フィルムである基材フィルムF1と、基材フィルムF1を挟み込むように、おもて面および裏面の両面に積層された保護層となるハードコート層F21,F22と、ハードコート層F21,F22に塗布され、積層フィルムFを被接着体に貼り付けるための接着層F31,F32と、被接着体に貼り付けられるときには剥離されるセパレータF41,F42とから形成されている。
【0004】
このような積層フィルムを切断する技術に関し、特許文献1に記載されたものが知られている。
この特許文献1の「積層体の切断方法、積層体の切断装置および積層体の切断用台座」には、積層体を載置する載置面が積層体の幅方向に延在した突条の形状を有し、または積層体の幅方向に延在する軸心を中心として凸の曲面を有した切断用台座が使用されることが記載されている。凸の曲面を有する台座が積層体の表面側に引張応力を生じさせる表面形状であるため、切断刃により積層体の表面を押圧する際に、その押圧部分での切断刃による圧縮応力を相殺することができ、積層体に引張応力や圧縮応力が生じない平衡状態とすることができる。従って、切断刃に対する糊付着、ブロッキング、クラック及び切断面に於ける欠け等の発生を防止することができる。
【0005】
また、また積層フィルムではなく光ファイバーではあるが、切断における切断面の改善に関する技術して特許文献2に記載されたものが知られている。
この特許文献2の「プラスチック光ファイバーケーブルの切断方法」は、第1次の切断を行うと、光ファイバーが引張り力によって引き裂かれ、破断した状態で切断されるので切断面が平滑とはなり難いが、第1次の切断を終了した段階で、光ファイバーを移動させるか、または切断刃を移動させて切断することにより、切り屑の厚みが小さい(0.1mm~0.3mm程度)ため、屈曲しながら切り離れていくので高い平滑性をもった切断面が得られる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-142445号公報
【特許文献2】特開昭62-170904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の「積層体の切断方法、積層体の切断装置および積層体の切断用台座」では、積層体の表面に加わる押圧部分においては、積層体に引張応力や圧縮応力が生じない平衡状態とすることができるので、切断時に発生する亀裂の低減に一定の効果があると推定される。
しかし、切断機の切断刃は、切断用台座の頂部の上方に、光学フィルムの搬送方向に対して略垂直となるように配置されている。
従って、帯状の積層フィルムを幅方向に直線状に切断するときには有効であるが、製品を一度に切り抜くような場合には、所望の製品形状に切り抜くために形成された抜き型状の切断刃で切断が行われるため、凸曲面を有する切断用台座では困難であり、切断の自由度が小さい。
【0008】
また、特許文献2に記載の「プラスチック光ファイバーケーブルの切断方法」では、2回目の切断時に、切り屑の厚みが小さくなるところで切断することにより、切り屑が屈曲しながら切り離れていくので、破断を起こすことなく平坦な切断面が得られるとしている。
【0009】
これは、光ファイバーは、切断面から出射される光信号への影響が重要であることから切断面が平滑に切断できることが問題となるためである。
光ファイバーは、芯材となる高屈折率のリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート、ポリスチレンなどから形成されたコアと、コアを被覆する低屈折率のポリビニリデンフルオライド(PVDF)などのフッ素系ポリマーなどから形成されたクラッドとから形成されている。クラッドは、光ファイバーが曲げられれば、コアと共に曲げられるため、ある程度の引張性を有している。
【0010】
しかし、積層フィルムは、湾曲した状態で使用されることはないため、トリアセチルセルロース(TAC)やポリエチレンテレフタレート(PET)、環状オレフィンポリマー(COP)などから形成された基材フィルムを保護するためのハードコート層は、例えば、紫外線硬化性樹脂を硬化させることで形成されるため、硬度が高い。
【0011】
積層フィルムを刃物で切断する際に亀裂が発生することがある。この亀裂は、積層フィルムの材質や各層の構成、厚みなどにより、発生する場所や大きさが異なる。
特に、単層または複数層からなる基材フィルムの片面または両面に、基材フィルムを保護するためのハードコート層が積層された積層フィルムでは、切断時に刃物が侵入すると、まず、刃物の侵入体積により基材フィルムF1が破断する。そして、刃先がハードコート層F22に至るが、ハードコート層F22は基材フィルムF1と接着されているので、基材フィルムF1の破断に引っ張られてハードコート層F22に刃先が接触する前に、ハードコート層F22が破断する。このとき、この破断は、破断により分離されたハードコート層F22の双方に切断面(端面)の位置から延びるように亀裂となって発生する。
【0012】
そのため、積層フィルムの端部を2回切断すると、異なる硬度の基材フィルムとハードコート層とが積層された積層フィルムは、1回目の切断と同様に、2回目の切断時にも、ハードコート層に、切断位置から両側に亀裂が発生する。
【0013】
従って、プラスチック光ファイバーとは異なり、切断面よりも、切断面から延びるようにして発生するハードコート層の亀裂の方が問題となるため、2回目の切断時に、積層フィルムの切り屑の厚みが薄くなるように切断することだけでは、望ましい切断品質が得られるものではない。
【0014】
積層フィルムは、切断するときに、基材フィルムの切断方向の裏側のハードコート層に発生する亀裂の長さを短く抑えることが、切断品質を向上させる上では重要である。また、帯状の積層フィルムを幅方向に沿って直線状に切断するだけでなく、所望とされる輪郭形状に切り抜くような高い切断の自由度が確保できることも重要である。
【0015】
そこで、本発明は、少なくとも基材フィルムの裏面側にハードコート層が形成された積層フィルムの切断の際に、ハードコート層に発生する亀裂の長さを抑え、所望とする形状に切断することを可能とする積層フィルムの切断方法および切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の積層フィルムの切断方法は、基材フィルムの切断方向の裏面側に少なくともハードコート層が積層された積層フィルムを切断する積層フィルムの切断方法であり、前記積層フィルムを試験切断して、前記ハードコート層に亀裂が発生した切断面からの亀裂領域の最大幅を測定する工程と、前記積層フィルムに対して、本切断の1回目を行う工程と、前記1回目の切断による切断面から、少なくとも前記最大幅を除去幅として確保して、本切断の2回目を行う工程とを含むことを特徴としたものである。
【0017】
本発明の積層フィルムの切断装置は、基材フィルムの切断方向の裏面側に少なくともハードコート層を有する積層フィルムを切断する刃物を備えた積層フィルムの切断装置であり、前記刃物は、前記積層フィルムを試験切断して前記ハードコート層に亀裂が発生した切断面からの亀裂領域の最大幅を少なくとも除去幅として、本切断の1回目の切断面から確保して、本切断の2回目を行うことを特徴としたものである。
【0018】
本発明によれば、まず、積層フィルムを試験切断する。そして、ハードコート層に発生した亀裂について、切断面からの亀裂領域の最大幅を測定する。次に、本切断の1回目を行う。1回目の切断では、刃物の刃先が、基材フィルムを押し退けながら侵入し、ハードコート層に至ると、ハードコート層に試験切断時と同等の最大幅の亀裂領域で亀裂が生じる。この亀裂により基材フィルムとハードコート層の接着が弱くなり、ハードコート層がこの領域では剥がれ易くなる。そして、2回目の切断を行うときには、1回目の切断による切断面から、この最大幅以上の除去幅を少なくとも確保する。そうすることで、2回目の切断を行ったときに、刃物の侵入で基材が切り離れ、途中から破断しても、ハードコート層は基材から剥がれるため影響がなく、ハードコート層に刃先が当たることにより切断される。これにより、1回目に発生する亀裂より短い亀裂に抑えることができる。
また、本切断を2回に分けて切断するだけなので、積層フィルムを平坦な基台に搭載して切断することができるので、所望の製品形状に切り抜くために形成された抜き型状の刃物にも使用することができる。
【0019】
前記試験切断として2回切断を行うものであり、1回目の切断により発生した亀裂領域の最大幅から、2回目の切断位置として除去幅を増加させて、2回目の切断時に発生する亀裂領域の最大幅が急激に増加する前の位置以下となる除去幅を、本切断のときの除去幅とすることができる。そうすることで、本切断で発生する亀裂領域の幅を抑えることができるので、高品質のフィルム片を製造することができる。
【0020】
前記1回目の切断は、前記積層フィルムの一部を残して切断するものであり、前記2回目の切断により前記積層フィルムを切り抜くことができる。
1回目の切断時に切り抜くと2回目の切断時に、除去幅の切り屑が発生する。しかし、1回目の切断時に積層フィルムの一部を残して切断すると、除去側が繋がった状態となるため、切り屑の発生を防止することができる。
【0021】
前記1回目の切断を行った刃物の位置から前記刃物を2回目の切断の位置まで移動して、前記2回目の切断を前記刃物により行うことができる。
【0022】
また、前記1回目の切断位置にある第1の刃物により切断し、前記積層フィルムの位置を変えずに、前記2回目の切断位置にある第2の刃物により切断することも可能である。
【0023】
本発明の積層フィルムの切断装置にあっては、前記刃物は、前記1回目の切断を行う第1の刃物と、前記2回目の切断を行う第2の刃物とを備え、前記第1の刃物の前記第2の刃物側には、前記第2の刃物の一部が収容される切り欠き部が、前記第1の刃物の厚みを薄くして形成されたものとすることができる。
第1の刃物の第2の刃物側に厚みを薄くすることで切り欠き部が形成されている。この切り欠き部には、第2の刃物の一部が収容される。そうすることで、第1の刃物と第2の刃物とを重ね合わせたときの刃先の間隔が除去幅を確保できない場合でも、切り欠き部に第2の刃物を収容することで、第1の刃物と第2の刃物との刃先同士を接近させることができる。
【0024】
前記刃物は、片刃により形成され、前記1回目の切断を行う第1の刃物と、前記2回目の切断を行う第2の刃物とを備え、前記第2の刃物の刃裏面には、刃先から傾斜面を含む範囲に、厚みを薄くする切り欠き部が形成されたものとすることができる。
第2の刃物に、厚みを薄くする切り欠き部が形成されていることで、刃先からの刃裏面の位置を、本体の刃裏面の位置より、第1の刃物側に寄せることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、1回目に発生する亀裂より短い亀裂に抑えることができ、製品の輪郭形状に形成された抜き型状の刃物であっても、切断するための刃物として使用することができる。よって本発明は、少なくとも基材フィルムの裏面側にハードコート層が形成された積層フィルムの切断の際に、ハードコート層に発生する亀裂の長さを抑え、所望とする形状に切断することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る切断装置を示す図である。
【
図3】積層フィルムを切断したときに発生する切断面からの亀裂領域を説明するための図である。
【
図4】本発明の実施の形態2に係る切断装置を示す図である。
【
図5】(A)から(D)は除去幅を1回目の亀裂領域の幅未満としたときの2回目の切断の状態を説明する図である。
【
図6】
図1に示す切断装置により切断したときの結果であり、(A)は第1の刃物と第2の刃物との刃先間隔を変えたときの亀裂領域の幅を示す表であり、(B)は(A)を示すグラフである。
【
図7】本発明の実施の形態3に係る切断装置の刃物を示す図であり、(A)は第1の刃物に切り欠き部を形成した図、(B)は第2の刃物に切り欠き部を形成した図である。
【
図8】本発明の実施の形態4に係る切断装置を示す図あり、(A)は切断装置の正面図、(B)は切断装置の奥行き方向における中間位置の断面図である。
【
図9】
図8に示す切断装置に装着された刃物を示す図であり、(A)は
図8(B)に示す刃物が抜き型状に形成された刃物の斜視図であり、(B)は(A)の一部を切り欠いた断面図である。
【
図10】
図8に示す切断装置に装着可能な刃物を示す図であり、(A)は
図8(A)に示す刃物が抜き型状に形成された刃物の斜視図であり、(B)は(A)の一部を切り欠いた断面図である。
【
図11】本発明の実施の形態5に係る切断装置の奥行き方向における中間位置の断面図である。
【
図12】本発明の実施の形態6に係る切断装置の奥行き方向における中間位置の断面図である。
【
図13】積層フィルムの構成を説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[実施の形態1]
本発明の実施の形態に係る積層フィルムの切断方法および切断装置について図面に基づいて説明する。
本実施の形態1に係る積層フィルムの切断方法および切断装置は、帯状に形成された
図13に示す積層フィルムFから、実装される機器が要求するサイズに、積層フィルムFの長さ方向に順次切断して、フィルム片を切り出すものである。
積層フィルムFは、例えば、光学的な機能を有する偏光フィルムとすることができる。この積層フィルムFは、基材フィルムF1の切断方向の裏面側に少なくともハードコート層F22を有しており、本実施の形態1では、基材フィルムの両面にハードコート層が設けられている。
【0028】
[積層フィルムの切断装置の説明]
まず、本実施の形態に係る積層フィルムの切断方法に用いられる切断装置について説明する。
図1に示す切断装置1は、第1の刃物10と、第2の刃物20と、積層フィルムFが設置される基台30と、第1の刃物10および第2の刃物20を昇降させる昇降装置(図示せず)と、積層フィルムFを移動方向M1に向かって移動させる搬送装置(図示せず)とを備えている。
【0029】
第1の刃物10と隣接する第2の刃物20は、移動方向M1の下流側に一対、切り出されるフィルム片となる長さL0を挟んで、上流側に一対設けられている。
第1の刃物10は、試験切断の1回目および本切断の1回目の切断を行うものであり、第2の刃物20は、試験切断の1回目および本切断の2回目の切断を行うものである。
第1の刃物10と第2の刃物20とは、積層フィルムFの除去側に、刃物の本体10m,20mの厚みを薄くする傾斜面10i,20iが形成された片刃である。また、第1の刃物10と第2の刃物20とは、刃先10e,20eが直線状の直刃である。
本実施の形態1では、第1の刃物10と第2の刃物20とは、超硬合金製の刃物を使用している。
【0030】
基台30は、積層フィルムFが載置される載置面30sが平坦面に形成されている。載置面30sには、第1の刃物10および第2の刃物20が積層フィルムFを切り抜いたときの刃先10e,20eを受け止めるための緩衝材が配置されている。緩衝材は、例えば、軟質フィルムすることができ、軟質フィルムは、例えば、100μm~200μmのPETフィルムとすることができる。
【0031】
昇降装置は、第1の刃物10と、第2の刃物20とを、切断時に下降させたり、切断後に上昇させたりすることができる。
搬送装置は、2回目の切断後に、帯状に形成された積層フィルムFを水平方向である移動方向M1(
図1においては左方から右方)に移動させる。
【0032】
[積層フィルムの切断方法の説明]
次に、この切断装置1による切断方法を図面に基づいて説明する。なお、
図1に示すように、積層フィルムFは、第1の刃物10および第2の刃物20の下方に位置しているものとする。
まず、第1の刃物10による試験切断を行う(
図2のステップS10参照)。この試験切断は、
図1に示す切断装置1の設計段階にて行われるものであり、試験切断により決定された除去幅が刃先間隔L1として切断装置1の製造時に設定される。
図3に示すように、この試験切断により亀裂が発生した切断面Cからの領域S(以下、亀裂領域Sと称す。)の最大幅L
MAXを測定する(ステップS20参照)。
【0033】
次に、
図1に示す第1の刃物10と第2の刃物20との刃先間隔L1について、少なくとも最大幅L
MAX(
図3参照)を除去幅として設定する(ステップS30参照)。
ここで、第1の刃物10と第2の刃物20との刃先間隔L1とは、第1の刃物10の刃先10eと第2の刃物20の刃先20eとの間の距離である。
【0034】
試験切断が完了すれば、次に、製品となるフィルム片を切り出す新たな積層フィルムFを基台30にセットして本切断を行う(ステップS40参照)。
本切断では、まず、第1の刃物10による1回目の切断を行う(ステップS41参照)。このとき、第1の刃物10は、積層フィルムFを切り抜く。そして、積層フィルムFは、位置を変えずに、そのままの状態とする。
図3に示すように、この1回目の切断では、試験切断と同様に、積層フィルムFに切断面Cから最大幅L
MAXの亀裂領域Sが発生する。
【0035】
次に、第2の刃物20による2回目の切断を行う(ステップS42参照)。
積層フィルムFの亀裂領域Sでは、1回目の切断により、
図13に示す基材フィルムF1とハードコート層F22との間が剥離し易い状態となっている。従って、第2の刃物20により2回目の切断を行うと、第2の刃物20の刃先20eが基材フィルムF1に侵入して圧力が掛かり、基材フィルムF1が変形しても、ハードコート層F22にはこの変形が伴わない。そのため、ハードコート層F22が破断することなく第2の刃物20の刃先20eがハードコート層F22に達して切断されるため、1回目に発生する亀裂より短い亀裂に抑えることができる。
【0036】
この2回目の切断により、帯状の積層フィルムFから長さ方向の2箇所が切断されるので、製品となるフィルム片が切り出される。
次に、所定枚数のフィルム片を切り出したか否かを判定する(ステップS43参照)。
所定枚数を切り出した場合には、処理を終了する。
所定枚数を切り出していない場合には、搬送装置により、積層フィルムFを移動方向M1に移動させる(ステップS44参照)。そして、次のフィルム片の切り出しのため、ステップS41に移行する。
【0037】
このようにして、2回目の切断を行ったときに、1回目に発生する亀裂より短い亀裂に抑えることができるので、少なくとも基材フィルムの裏面側にハードコート層が形成された積層フィルムの切断の際に、ハードコート層に発生する亀裂の長さを抑えることができる。
また、帯状フィルムを基台30の平坦な載置面30sに配置して移動方向M1に移動しながら、本切断を2回に分けて切断するだけなので、第1の刃物10および第2の刃物20が、
図1に示す直刃であっても、また、製品の輪郭形状に形成された枠形状の刃物であっても、切断するための刃物として使用することができる。
従って、切断装置1は、積層フィルムFを所望とする形状に切断することが容易である。
【0038】
なお、本実施の形態1では、ステップS20でも試験切断により得た亀裂領域Sの最大幅L
MAX(
図3参照)を除去幅とすると、除去幅を最小限に抑えることができ、積層フィルムFを有効活用することができる。しかし、2回目の亀裂の発生長さは、除去幅の長さによって変わる。
そこで、試験切断として2回切断して亀裂領域の幅が1回目よりも狭くなる傾向を観察する。まず、試験切断の1回目の切断により亀裂が発生した亀裂領域の最大幅を測定する。次に、2回目の切断位置となる除去幅を、1回目の亀裂領域の最大幅から増加させながら、2回目の切断位置を変更する。これにより、2回目の切断時に発生する亀裂領域の最大幅を測定する。そして、この亀裂領域の最大幅が急激に増加する前の位置以下となる除去幅を、本切断のときの除去幅とする。
このように、2回目の切断位置の上限を、亀裂領域の最大幅が急激に増加する前の位置とすることで、1回目の亀裂領域の幅よりも2回目の亀裂領域の幅を抑え、切断品質の向上を図りつつ、無駄となる除去幅を小さい幅に抑えることができる。
【0039】
昇降装置は、第1の刃物10と第2の刃物20とを別々に昇降させたり、第1の刃物10が第2の刃物20より先に積層フィルムに切断し始めるように、第1の刃物10の刃先10eの位置を第2の刃物20の刃先20eより低く設定して、第1の刃物10と第2の刃物20とを同時に昇降させたりすることができる。
第1の刃物10と第2の刃物20とを別々に昇降させるときには、第1の刃物用と第2の刃物用の2台の昇降装置が必要である。しかし、第2の刃物20により2回目の切断を行ったときに除去幅の切り屑が発生するが、第1の刃物10と第2の刃物20とが独立して昇降するため、切り屑を取り除くのが容易である。
第1の刃物10と第2の刃物20とを同時に昇降させるときには、第2の刃物20により2回目の切断を行ったときに発生する除去幅の切り屑が、第1の刃物10と第2の刃物20の間に挟まり除去し難いおそれがある。しかし、昇降装置が1台あれば両方の刃物を昇降させることができるので制御が容易であり、コストを抑えることができる。
【0040】
[実施の形態2]
本発明の実施の形態2に係る積層フィルムの切断方法および切断装置について
図4に基づいて説明する。なお、
図4においては、
図1と同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。また、
図4では、一方の第1の刃物10と第2の刃物20との組み合わせを図示しており、他方の刃物の組み合わせは省略している。
【0041】
図2に示す切断方法では、ステップS41に示す本切断における1回目の切断は、積層フィルムFを切り抜いていた。そのため、1回目の切断と2回目の切断との間隔に応じた切り屑が発生する。
本実施の形態2に係る切断装置2(
図4参照)では、1回目の切断として、第1の刃物10が積層フィルムFの厚み方向の一部を残して切断している(以下、積層フィルムの一部を残して切断することを「ハーフカット」と称することがある。)。そして、2回目の切断により、第2の刃物20が積層フィルムFを切り抜く。
そうすることで、1回目の切断で積層フィルムFの不要部分である除去側が切り離せず、2回目の切断で積層フィルムFの除去幅分が、第2の刃物20の切断により分離されるので、1回目と2回目の刃の間隔に応じた切り屑が発生しない。積層フィルムFの一部を残す方法としては、積層フィルムFの切断方向の裏面側のセパレータF21を残す方法がある。
【0042】
この切断方法は、第1の刃物10の昇降を制御する昇降装置が、第1の刃物10の下降位置について、積層フィルムの厚みを考慮して下降させることで、実現することができる。
【0043】
(実施例)
図4に示す切断装置2により積層フィルムを切断した。
積層フィルムFは、
図13に示す構造のものである。また、切断装置としては、放電精密製4軸直動式サーボプレス機を使用した。
また、
図1に示す第1の刃物10および第2の刃物20とは、本体10m,20mの厚みが1.0mm、刃先10e,20eの刃角θが20°の片刃を使用した。なお、刃物20の本体10m,20mの厚みや、刃先10e,20eの刃角θは、切断する積層フィルムに応じて決定することができ、例えば、厚みは0.4mm~1.0mmとすることができる。本実施例では、切断速度を3mm/Sとした。刃厚の関係から、第1の刃物10と第2の刃物20とをμmオーダーで接近させることができないため、同一の刃物を使用して、1回目の切断が終了した後に、刃物を2回目の切断位置まで移動させ、2回目の切断を行った。
【0044】
試験切断では、まず、積層フィルムFの端面から数cmのところを第1の刃物10により切断した。この切断は、積層フィルムFの一部を残して切断する。本実施例では、基材フィルムF1を切り抜き、ハードコート層F22に至るまでとしたハーフカットである。
【0045】
そうしたところ、切断面から亀裂が発生した最大幅(
図3に示す亀裂領域S)が40μmの亀裂(クラック)が発生した。従って、除去幅として、無駄を最小限に抑えた40μmを設定することができる。
そして、2回目の切断を行って、発生する亀裂の長さ(亀裂領域の幅)を測定するときに、除去幅を増加させて、除去幅(刃先間隔)と、亀裂領域の幅との関係を測定した。
この測定は、第1の刃物10と第2の刃物20との刃先10e,20e同士の間隔を、亀裂が発生した亀裂領域の最大幅40μmより小さい30μmから始め、100μmまで変えた。
【0046】
刃先間隔を除去幅40μmより短い30μmとしたときには、
図5(A)に示すように刃先20eが積層フィルムFの端部T表面から侵入しようとするが、
図5(B)に示すように軟質な積層フィルムFの端部Tが刃先20eの押圧による弾性変形により潰れ、積層フィルムFに侵入できない。そして、
図5(C)に示すように積層フィルムFの端部Tが押し潰されながら刃先20eが端部に侵入して切り抜くと、
図5(D)に示すように、押し潰された端部Tが弾性復帰する。
このようにして、除去幅を試験切断ときに得られた亀裂領域の幅より狭い30μmとしたときには、断面が乱れ切断失敗となった。
【0047】
また、
図6(A)に示すように、刃先間隔を40μmにすると亀裂領域の幅は16μmであった。刃先間隔を50μmにすると亀裂領域の幅は15μmであった。刃先間隔を60μmにすると亀裂領域の幅は17μmであった。刃先間隔を70μmにすると亀裂領域の幅は23μmであった。
そして、更に、刃先間隔を増加させると発生する亀裂領域の幅は、当初、徐々に増加するものと想定していたが、
図6(B)に示すように、刃先間隔を80μmとしたときに亀裂領域の幅が急激に増加して37μmとなった。
従って、除去幅の最大幅は、第2の刃物20の刃先20e位置として、亀裂領域が急激に増加する前の位置以下(刃先間隔が70μm以下)を除去幅の最大値とすることが望ましい。そうすることで、亀裂領域の幅を抑えることができるので、高品質のフィルム片を製造することができ、捨てられ、無駄となる除去幅を抑えることができる。
そして、除去幅は、亀裂領域が最小となる位置(刃先間隔が50μm)が更に望ましい。
【0048】
[実施の形態3]
本発明の実施の形態3に係る積層フィルムの切断装置に用いられる刃物について
図7に基づいて説明する。
図7(A)に示すように、本実施の形態3に係る切断装置の刃物においては、第1の刃物11の刃裏面11bに切り欠き部11nが形成されている。
切り欠き部11nは、第1の刃物11の第2の刃物20側に、第2の刃物20の一部を収容するように、第1の刃物11の厚みを薄くすることで形成されている。
本実施の形態3に係る第1の刃物11では、切り欠き部11nに、第2の刃物20の傾斜面20iを含む刃おもて面20fが収容される。
そうすることで、第1の刃物と第2の刃物とを重ね合わせたときの刃先の間隔が除去幅を確保できない場合でも、第1の刃物11の刃先11eと第2の刃物20の刃先20eとの刃先間隔を接近させることができ、第1の刃物11の刃先11eの刃角と傾斜面11i(鎬)部分の厚みとを確保することができる。
従って、除去幅が微小でも、第1の刃物11および第2の刃物20により対応させることができる。
【0049】
この第1の刃物11では、切り欠き部11nに第2の刃物20の傾斜面20iを下方から当接する顎部11jが形成されている。従って、第1の刃物11が1回目の切断の後に積層フィルムの上方で待機していると、第2の刃物20が下降できず、2回目の切断ができない。
従って、第1の刃物11による1回目の切断時には、積層フィルムを切断すると、下降したそのままの状態で待機し、第2の刃物20による2回目の切断を行う。
そうすることで、第2の刃物20は、第1の刃物11が邪魔になることなく、切断を行うことができる。
【0050】
図7(B)に示す刃物においては、第2の刃物21における刃裏面21bには、刃先21eから傾斜面21iを含む範囲に、厚みを薄くする切り欠き部21nが形成されている。
このように第2の刃物21に、切り欠き部21nが形成されていることで、刃先21eから垂直に立ち上がる、切り欠き部21nによる刃裏面21bの位置を、本体21mの刃裏面21bの位置より、第1の刃物10側に寄せることができる。
従って、第1の刃物10の刃先10eと第2の刃物21の刃先21eとの刃先間隔を接近させることができるので、除去幅が微小でも、第1の刃物10および第2の刃物21により対応させることができる。
【0051】
[実施の形態4]
本発明の実施の形態4に係る積層フィルムの切断装置を図面に基づいて説明する。
図8(A)および同図(B)に示す本実施の形態4に係る切断装置3は、第1の刃物と第2の刃物とが、製品となる切り出されるフィルム片の輪郭の形状とした抜き形状(枠形状)に形成されている。
【0052】
切断装置3は、基台30が天面に設置された一方のダイ(下型41L)と、刃物(第1の刃物,第2の刃物)が刃先を下方に向けて配置された他方のダイ(上型41U)とにより形成されたダイセット41を有している。上型41Uは、ダイセット41の4つの角部の位置に、下型41Lと上型41Uとの間に配置されたガイドポスト42により案内され、図示しない昇降装置により昇降する。
【0053】
上型41Uに配置された、
図9(A)および同図(B)に示す刃物は、
図7(B)に示す第1の刃物10および第2の刃物21により形成されている。
第1の刃物10と第2の刃物21とが矩形の枠形状に形成されているため、フィルム片が矩形状に切り出される。
【0054】
図9(A)および同図(B)に示すように、第1の刃物10と第2の刃物21とは、傾斜面10i,21i(刃おもて面10f,21f)を外側に向けると共に、切断方向(上下方向)に沿った刃裏面10b,21bが内側に向けられて形成されている。
【0055】
このように第1の刃物10と第2の刃物21とが形成されていることで、1回の本切断により、製品となるフィルム片を切り出すことができる。
また、積層フィルムFは、基台30の平坦な載置面30sに配置されるため、第1の刃物10と第2の刃物21とが枠形状に形成されていても、使用することができる。
【0056】
本実施の形態4では、切り出されるフィルム片が矩形状であるため、第1の刃物10と第2の刃物21とが矩形枠形状に形成されていたが、第1の刃物と第2の刃物とは、フィルム片の輪郭形状に合わせた枠形状に形成することができる。そうすることで、所望とする形状のフィルム片を切り出すことができる。
【0057】
図8(A)および同図(B)に示す実施の形態4に係る切断装置3は、
図9(A)および同図(B)に示す刃物が、
図7(B)に示す第1の刃物10および第2の刃物21により形成されていたが、
図10(A)および同図(B)に示す刃物により形成することもできる。
この刃物は、
図7(A)に示す第1の刃物11および第2の刃物20を組み合わせたものである。
【0058】
このように、切断装置3の刃物を、
図7(A)に示す第1の刃物11および第2の刃物20の組み合わせとしたり、
図7(B)に示す第1の刃物10および第2の刃物21の組み合わせとしたりすることができる。そうすることで、刃先11e,20e同士および刃先10e,21e同士を接近して配置することができるので、除去幅が微小でも、所望とする形状のフィルム片の切断が可能である。
【0059】
[実施の形態5]
本発明の実施の形態5に係る積層フィルムの切断方法および切断装置を図面に基づいて説明する。
図1,
図4,
図7,
図8に示す実施の形態1~4では、1回目の切断を行う第1の刃物10,11と、2回目の切断を行う第2の刃物20,21とにより2回の切断を行う際に、刃物と積層フィルムとの両方とも移動させずに切断を行っていた。しかし、
図11に示す本実施の形態5に係る切断装置4では、第1の刃物12と第2の刃物22とが、積層フィルムFが搬送される方向(移動方向M2)に沿って横並びに配置されている。
【0060】
第1の刃物12は、移動方向M2の上流側の第1のダイセット43における上型43Uに、刃先12eを下に向けて配置されている。また、第1のダイセット43は、上型43Uの下方となる位置に、上型43Uに対向させて配置された下型43Lを備えている。
第2の刃物22は、移動方向M2の下流側の第2のダイセット44における上型44Uに、刃先22eを下に向けて配置されている。第2のダイセット44は、上型44Uの下方となる位置に、上型44Uに対向させて配置された下型44Lを備えている。
【0061】
第1のダイセット43および第2のダイセット44は、上型43U,44Uと、下型43L,44Lとの間には、上型43U,44Uの昇降を案内するガイドポスト45が設けられている。このガイドポスト45により、第1のダイセット43および第2のダイセット44はそれぞれ独立して昇降することが可能である。
【0062】
下型43Lおよび下型44Lの天面には、下型43Lおよび下型44Lの天面に跨る基台31が配置されている。この基台31に積層フィルムFが載置され、積層フィルムFは図示しない搬送装置によって、基台31上を滑って移動方向M2に送られる。
【0063】
このように本実施の形態5に係る切断装置4が構成されていることで、次のような切断方法により動作させることができる。
まず、第1の刃物12の下方に位置した積層フィルムFを、第1の刃物12が下降することで1回目の切断を行う。この時の切断は積層フィルムFの下側のセパレータF41(
図13参照)を残すハーフカットとする。次に、積層フィルムFを移動方向M2に送り、第1の刃物12でハーフカットした箇所を第2の刃物22の下方に位置させる。そして、第2の刃物22が下降することで2回目の切断を行うことができる。
【0064】
この第1の刃物12および第2の刃物22の昇降および積層フィルムFの搬送と切断位置決めは、図示しない制御部により制御される。
そうすることで、切断装置4は、ロール状に巻かれた帯状の積層フィルムを一方向(搬送方向)に繰り出しながら切断を行ってフィルム片を切り出すことができる。
【0065】
[実施の形態6]
本発明の実施の形態6に係る積層フィルムの切断方法および切断装置を図面に基づいて説明する。
図12に示す本実施の形態5に係る切断装置5では、第1の刃物12と第2の刃物22とが、移動方向M3に沿って往復移動する移動テーブル50に配置されている。
積層フィルムFは基台30に載置され、図示しない搬送装置によって基台30上を滑べらせて、
図12においては手前から奥行方向に送られる。
【0066】
第1の刃物12および第2の刃物22は、ダイセット46の上型46Uに、刃先12eを下に向けて配置されている。また、ダイセット46は、上型46Uの下方となる位置に、上型46Uに対向させて配置された下型46Lを備えている。
【0067】
ダイセット46は、上型46Uと、下型46Lとの間には、上型46Uの昇降を案内するガイドポスト47が設けられている。このガイドポスト47により、ダイセット46は昇降することが可能である。
【0068】
このように本実施の形態6に係る切断装置5が構成されていることで、次のような切断方法により動作させることができる。
まず、第1の刃物12の下方に位置した積層フィルムFを、第1の刃物12が下降することで1回目の切断を行うことができる。このときの切断は積層フィルムFの下側のセパレータF41を残すハーフカットとする。次に、積層フィルムFの第1の刃物でハーフカットした箇所が第2の刃物22の下方に位置するように、積層フィルムFを送る。そして、第2の刃物22が下降することで2回目の切断を行うことができる。
【0069】
そうすることで、実施の形態5と同様に、切断装置5は、ロール状に巻かれた帯状の積層フィルムを一方向(搬送方向)に繰り出しながら切断を行ってフィルム片を切り出すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、基材フィルムの切断方向の裏面側に少なくともハードコート層を有する積層フィルムを切断する際に亀裂が発生した亀裂領域の幅を抑えることができるため、光学ティスプレイ部品等で使用される高品質な積層フィルムの製造に好適である。
【符号の説明】
【0071】
1,2,3,4,5 切断装置
10,11,12 第1の刃物
20,21,22 第2の刃物
10b,11b,21b 刃裏面
10e,11e,12e,20e,21e,22e 刃先
10f,20f,21f 刃おもて面
10i,20i,21i 傾斜面
10m,20m,21m 本体
11n,21n 切り欠き部
11j 顎部
30,31 基台
30s 載置面
41 ダイセット
41L 下型
41U 上型
42 ガイドポスト
43 第1のダイセット
43L 下型
43U 上型
44 第2のダイセット
44L 下型
44U 上型
45 ガイドポスト
46 ダイセット
46L 下型
46U 上型
47 ガイドポスト
50 移動テーブル
C 切断面
S 領域(亀裂領域)
F 積層フィルム
F1 基材フィルム
F21,F22 ハードコート層
F31,F32 接着層
F41,F42 セパレータ
T 端部
L0 長さ
L1 刃先間隔
M1,M2,M3 移動方向