(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045657
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
F25D 9/00 20060101AFI20230327BHJP
【FI】
F25D9/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154203
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】510288460
【氏名又は名称】エーシー・フードテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134669
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 道彰
(72)【発明者】
【氏名】大橋 康弘
【テーマコード(参考)】
3L044
【Fターム(参考)】
3L044BA04
3L044BA05
3L044CA04
3L044DB02
3L044FA05
3L044KA04
(57)【要約】
【課題】 装置規模をコンパクトに抑え、低コストで稼働できる冷却装置を提供する。
【解決手段】 冷却用液体120が満たされた冷却用液体槽110と、移動機構140を含む。被冷却物200の搬送は、被冷却物200そのものや包装体または包装箱に充填された被冷却物200や搬送枠体130に載置された状態があり得る。移動機構140は被冷却物200や搬送枠体130に当接しながら移動させる浸漬移動体142と、浸漬移動体142を流路に沿って移動させる架空索道機構(図示せず)と、架空索道機構を配設するレール線141を備えている。投入機構150で被冷却物を充填した搬送枠体130ごと喫水線下に沈めて行き、搬送枠体130が浮遊しながら移動機構140により押し流されることにより被冷却物の冷却処理を実行し、冷却処理時間が経過すれば搬送枠体130を回収機構160で喫水線上に取り出す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却用液体を用いて被冷却物を冷却する冷却装置であって、
流路が形成され、前記流路内に前記冷却用液体が満たされた冷却用液体槽と、
前記被冷却物を前記冷却用液体槽の中に投入する投入機構と、
前記被冷却物を前記冷却用液体槽の前記流路に沿って移動させる移動機構と、
前記被冷却物を前記冷却用液体槽の中から回収する回収機構を備え、
前記移動機構が前記流路に沿って前記冷却用液体中に浸漬している前記被冷却物を押しながら移動させることを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記移動機構が、少なくともその一部が前記流路内に浸漬しながら移動する浸漬移動体と、前記浸漬移動体を前記流路に沿って移動させる架空索道機構と、前記架空索道機構を配設するレール線を備えたことを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記移動機構の前記レール線の配設ルートが、前記投入機構の一部、前記冷却用液体槽の前記流路、前記回収機構の一部、前記回収機構の一部から前記投入機構の一部まで帰還させる帰還路を周回するものとなっており、
前記移動機構の前記レール線の配設高さが、前記投入機構の一部から前記冷却用液体槽の前記流路に向かって低くなるよう傾斜されており、前記冷却用液体槽の前記流路では低い一定の高さであり、前記冷却用液体槽の前記流路から前記回収機構の一部に向かって高くなるよう傾斜されており、前記回収機構の一部から前記投入機構の一部まで帰還させる前記帰還路は高い一定の高さであることを特徴とする請求項2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記流路が、前記冷却用液体槽の中で、つづら折りに蛇行したものであり、前記冷却用液体槽の設置面積に対して、前記流路の長さが長く確保されたものであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項5】
前記帰還路において前記レール線が空中においてつづら折りに蛇行したものであり、前記浸漬移動体が空中にある時間を長く確保したものであることを特徴とする請求項4に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記投入機構が、進行方向に対して仕切る仕切板が立設され、下降する下降コンベア機構を含み、
前記下降コンベア機構の高低差が、前記投入機構の上で並走している前記移動機構の前記レール線から吊架している前記浸漬移動体の先端が空中にある高さから前記冷却用液体に浸漬する高さにまで下降した位置までに、冷却用液体の喫水線に到達する高低差が設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項7】
前記浸漬移動体の先端が空中にある範囲では、前記被冷却物が前記下降コンベア機構および前記仕切板に当接された状態で前記投入機構により移動しており、
前記浸漬移動体の先端が前記冷却用液体の中に浸漬している範囲では、前記被冷却物が前記冷却用液体に浮遊した状態で前記移動機構により移動することを特徴とする請求項6に記載の冷却装置。
【請求項8】
前記回収機構が、進行方向に対して仕切る仕切板が立設され、上昇する上昇コンベア機構を含み、
前記上昇コンベア機構の高低差が、前記回収機構の上で並走している前記移動機構の前記レール線から吊架している前記浸漬移動体の先端が前記冷却用液体に浸漬している高さから空中に脱する高さまで上昇した位置までに、冷却用液体の喫水線から上に来るような高低差が設けられていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項9】
前記浸漬移動体の先端が前記冷却用液体の中に浸漬している範囲では、前記被冷却物が前記冷却用液体に浮遊した状態で前記移動機構により移動しており、
前記浸漬移動体の先端が空中から脱した範囲では、前記被冷却物が前記上昇コンベア機構および前記仕切板に当接された状態で前記回収機構により移動することを特徴とする請求項8に記載の冷却装置。
【請求項10】
前記冷却用液体槽の中に、前記浸漬移動体の移動ルートの側面を仕切る側壁を設け、前記浸漬移動体の移動に伴って前記冷却用液体槽の中に発生し得る乱流を抑える構造であることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項11】
前記被冷却物が包装袋体または包装箱体の中に包装された状態であり、
前記投入機構が、前記包装袋体または前記包装箱体に包装された前記被冷却物を前記冷却用液体槽の中に投入するものであり、
前記移動機構が、前記冷却用液体槽の前記流路に沿って前記冷却用液体中に浸漬している前記包装袋体または前記包装箱体に包装された前記被冷却物を押しながら移動させるものであり、
前記回収機構が、前記包装袋体または前記包装箱体に包装された前記被冷却物を前記冷却用液体槽の中から回収するものである、請求項1から10のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項12】
前記被冷却物を収納できるフレームと開口を備えた複数個の搬送枠体を備え、
前記投入機構が、前記搬送枠体に充填された前記被冷却物を前記搬送枠体ごと前記冷却用液体槽の中に投入するものであり、
前記移動機構が、前記冷却用液体槽の前記流路に沿って前記冷却用液体中に浸漬している前記搬送枠体に入れられた前記被冷却物を押しながら移動させるものであり、
前記回収機構が、前記被冷却物を前記搬送枠体ごと前記冷却用液体槽の中から回収するものである、請求項1から10のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項13】
前記搬送枠体が前記冷却用液体中で浮遊する浮力が生じるものであり、
前記移動機構が、前記浮力で浮いた状態の前記搬送枠体ごと前記浸漬移動体により押しながら前記冷却用液体槽の前記流路に沿って移動させるものであることを特徴とする請求項12に記載の冷却装置。
【請求項14】
前記浸漬移動体の先端が空中にある範囲では、前記被冷却物が前記下降コンベア機構および前記仕切板に当接された状態で前記投入機構により移動しており、
前記浸漬移動体の先端が前記冷却用液体の中に浸漬している範囲では、前記搬送枠体に充填された前記被冷却物が前記搬送枠体ごと前記冷却用液体に浮遊した状態で前記移動機構により移動することを特徴とする請求項13に記載の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷却用液体を用いて被冷却物を冷却する冷却装置に関する。特に、被冷却物が搬送されつつ冷却用液体中で冷却されていく冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、被冷却物である肉類や野菜等を冷却する方式には様々な方式がある。例えば、冷却器で冷やされた空気を被冷却物に当てるように庫内を循環させる空気冷却(エアーブラスト)方式がある。また、冷却用液体が満たされた冷却用液体槽内に被冷却物を収納した籠体を沈下させて冷却する液体冷却(ブライン冷却)方式がある。いずれもバッチ式の装置が多く用いられてきた。
【0003】
図16は、従来のバッチ式で液体冷却式の冷却装置の模式図である。
冷却用液体としては、冷却温度でも凍結しないブライン液と呼ばれる塩化カルシウム水溶液やアルコール水溶液等からなる冷却用液体が満たされた冷却用液体槽内に、被冷却物が多段に収められた籠体を沈めて冷却する。冷却用液体は、冷却用液体槽の底部に設けられた冷却用コイルを介して冷却され、攪拌機によって攪拌・流動促進されることによって冷却用液体槽内の温度の均一化が図られている。
しかし、このバッチ式の液体冷却式の冷却装置は、連続処理ではないために処理能力が小さく大量の被冷却物を冷却する業務用の冷却には適しないものであった。バッチ式で処理能力を大きくするためには冷却用液体槽を過剰に大きくし、大量の籠体を一気に沈める必要があり、現実的には難しい。
そこで、従来技術において、事例は少ないものの、被冷却物を次々と搬送して連続して冷却処理する連続処理式の冷却装置が開発されている。
【0004】
図17は、特開2000-55526号公報(特許文献1)に開示された、冷却用液体の喫水線下の液中を走行するコンベアを用いた連続冷却処理方式の冷却装置を示す図である。
図17に示すように、特開2000-55526号公報に開示された連続冷却処理方式の冷却装置は、冷却槽52に満たされた冷却用液体54の喫水線下の液中をコンベア66が走行するようにされており、被冷却物58は、投入口68から走行するコンベア66上に乗せられて冷却槽52に投入され、冷却用液体54に一定時間浸漬された後、取り出し口70から取り出される仕組みとなっている。無限軌道のコンベア66を連続的に稼働するものである。また、個々の被冷却物は、投入口68から取り出し口70に至るまで同一の軌道にて冷却用液体中を通過するので、冷却製品の品質均一性も向上している。
【0005】
図18は、特開2020-56520公報(特許文献2)に開示された、冷却用液体の喫水線下の液中を走行するコンベアを用いた連続冷却処理方式の冷却装置を示す図である。
図18に示すように、特開2020-56520号公報に開示された連続冷却処理方式の冷却装置は、冷却槽120に満たされた冷却用液体の喫水線下の液中をコンベア130が走行するようにされており、被冷却物は食品収納体110に投入され、食品投入箇所160から上下移動機構140を介して一旦冷却槽120の枠壁よりも上に上昇した後に冷却槽120の上に水平移動し、その後下降することにより冷却槽120に投入され、冷却槽120内で走行するコンベア装置130に載置された状態で冷却用液体中を走行し、冷却用液体に一定時間浸漬された後、食品排出箇所170から取り出される仕組みとなっている。無限軌道のコンベア装置130を用いて連続的に稼働するものである。また、個々の被冷却物は、食品投入箇所160から食品排出箇所170に至るまで同一の軌道にて冷却用液体中を通過するので、冷却製品の品質均一性も向上している。
【0006】
【特許文献1】特開2000-55526号公報
【特許文献2】特開2020-56520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来技術に述べた特許文献1に開示されたコンベアを用いた連続冷却処理方式の冷却装置、特許文献2に開示したコンベアを用いた連続冷却処理方式の食品加工処理装置には、改善すべき問題がある。
それは装置が大きくなる問題がある。
主たる搬送機構がコンベア機構であれば、コンベア機構は一般には直線状の無限軌道である。特に、冷却用液体中であれば、液体中を走行するコンベア機構を曲線状の無限軌道とすることは技術的に難しい。
冷却用液体槽は入れ替えることが困難であるため一度固設されるとそのままとなることが前提である。冷却処理に必要な時間は被冷却物の種類や内容によって異なるため、想定し得る被冷却物の中でもっとも冷却処理時間が長いものにも対応できるように冷却用液体槽の長さや大きさが設計される。そのため、装置が大きくなる傾向にある。
特許文献1や特許文献2に開示した従来技術のコンベアを主たる搬送機構とする連続冷却処理方式の冷却装置では、冷却用液体槽の長さが十数メートルから二十数メートルに及ぶことが多く、装置が大型化する傾向が強かった。
【0008】
第2の問題として、被冷却物の移動における高さ変化のコンベア機構の開発が難しい問題である。冷却用液体槽を用いて被冷凍物をコンベア機構で搬送しつつ連続冷却するためには、投入時の下降軌道、冷却時の水平移動の水平軌道、回収時の上昇軌道が必要であり、コンベアを主たる搬送機構とする連続冷却処理方式の冷却装置では、そのような下降軌道、水平軌道、上昇軌道という高さの変化を持たせるには搬送系が複雑であり、それを1本の無限軌道のコンベアとすることが難しいという問題があった。また、装置を小さくするには、下降軌道や上昇軌道を短くする必要があるが、搬送傾斜が大きくなってしまい、被冷却物がその傾斜の影響で落下したりずれ動いたりして姿勢が安定しないおそれがある。
【0009】
第3の問題として、冷却用液体中に浸漬される被冷却物が比重により、冷却用液体中の姿勢が様々である問題である。被冷却物の比重が小さい場合は、被冷却物が冷却用液体中に浮いて浮遊したり、被冷却物の比重が大きい場合は、被冷却物が冷却用液体中に沈んだりするため、冷却用液体中の姿勢が様々である。従来技術であれば、箱体の中に被冷却物を閉じ込めた状態とすることで冷却用液体中の姿勢を安定させるが、それは、連続冷却処理方式の冷却装置の使用において、投入時に箱体の中への被冷却物の閉じ込め処理と、回収時に箱体からの被冷却物の取り出しという前処理、後処理が必要となり、冷却装置の使用に手間がかかり、コストが上昇してしまうという問題がある。
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、装置サイズが小型であり、小さな設置面積で十分な冷却時間が確保できるコンパクトな冷却装置を提供することを目的とする。また、本発明は、複雑な曲線軌道で被冷却物を冷却しながらも搬送系の構造が簡単で作業効率の良い冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の冷却装置は、冷却用液体を用いて被冷却物を冷却する冷却装置であって、流路が形成され、前記流路内に前記冷却用液体が満たされた冷却用液体槽と、前記被冷却物を前記冷却用液体槽の中に投入する投入機構と、前記被冷却物を前記冷却用液体槽の前記流路に沿って移動させる移動機構と、前記被冷却物を前記冷却用液体槽の中から回収する回収機構を備え、前記移動機構が前記流路に沿って前記冷却用液体中に浸漬している前記被冷却物を押しながら移動させることを特徴とする冷却装置である。
コンベア機構ではなく、いわゆる流路を作り冷却用液体の流れを利用して被冷却物を搬送するので、複雑なコンベア機構が不要とあり、シンプルな構成で装置サイズが小型化できる。
【0012】
ここで、上記構成において、前記流路が、前記冷却用液体槽の中で、つづら折りに蛇行したものとすれば、前記冷却用液体槽の設置面積に対して、前記流路の長さを長く確保することができる。小さな設置面積で十分な冷却時間が確保できるコンパクトな冷却装置を提供することができる。
同様に、前記帰還路において前記レール線が空中においてつづら折りに蛇行したものであり、前記浸漬移動体が空中にある時間を長く確保することができる。装置全体として小さな設置面積となり、コンパクトな連客装置を提供することができる。
【0013】
上記構成において、移動機構が、少なくともその一部が前記流路内に浸漬しながら移動する浸漬移動体と、前記浸漬移動体を前記流路に沿って移動させる架空索道機構と、前記架空索道機構を配設するレール線を備えたものとすることができる。
上記構成により、少なくともその一部(先端など)が流路内に浸漬しながら浸漬移動体が架空索道機構に沿って移動することにより、流路方向に浸漬移動体で仕切られつつ被冷却物が押されて移動することとなり、所定ペースで流れるように制御することができる。
【0014】
なお、上記構成において、架空索道機構が無限ループで周回することが好ましい。そこで、前記移動機構において、前記レール線が、前記投入機構上から、前記冷却用液体槽上、前記回収機構上を通り、さらに、前記投入機構まで戻るよう周回状に形成されており、前記浸漬移動体も前記レール線に沿って周回状に移動する構造とすることが好ましい。
上記構成により、浸漬移動体も無限ループの周回軌道を移動し、被冷却物は、投入箇所から浸漬移動体の移動に合流し、浸漬移動体の移動に伴って移動し、回収箇所において、浸漬移動体の移動から離脱することで、浮遊状態で推進力のない流路上では、浮遊した状態のまま浸漬移動体から推進力を得ることができる。
ここで、移動機構の前記レール線の配設ルートが、前記投入機構の一部、前記冷却用液体槽の前記流路、前記回収機構の一部、前記回収機構の一部から前記投入機構の一部まで帰還させる帰還路を周回するものとなっており、前記移動機構の前記レール線の配設高さが、前記投入機構の一部から前記冷却用液体槽の前記流路に向かって低くなるよう傾斜されており、前記冷却用液体槽の前記流路では低い一定の高さであり、前記冷却用液体槽の前記流路から前記回収機構の一部に向かって高くなるよう傾斜されており、前記回収機構の一部から前記投入機構の一部まで帰還させる前記帰還路は高い一定の高さとすることができる。
【0015】
次に、被冷却物の投入時に用いる投入機構と、被冷却物の回収時に用いる回収機構の工夫について述べる。
投入機構として、進行方向に対して仕切る仕切板が立設され、下降する下降コンベア機構を含む構成とし、前記投入機構の上における前記移動機構の前記レール線において、前記レール線から吊下している前記浸漬移動体の先端が、空中にある高さから前記浸漬移動体の少なくとも先端が前記冷却用液体に浸漬する高さにまで下降するように、高低差が設けられている構造とする。
上記構成により、投入作業箇所では、被冷却物が投入機構の下降コンベアに載置されており、下降コンベアの運搬により、冷却用液体槽中の冷却用液体中に運ばれて行き、やがて冷却用液体の喫水線下に導かれて行く。
浸漬移動体の先端が空中にある範囲では、前記被冷却物が前記下降コンベア機構および前記仕切板に当接された状態で前記投入機構により移動しており、浸漬移動体の先端が前記冷却用液体の中に浸漬している範囲では、前記被冷却物が前記移動機構により押されて移動することによりスムーズな搬送を可能とする。
【0016】
一方、回収機構として、進行方向に対して仕切る仕切板が立設され、上昇する上昇コンベア機構を含む構成とし、前記回収機構の上における前記移動機構の前記レール線において、前記レール線から吊下している前記浸漬移動体の先端が前記冷却用液体に浸漬している高さから空中に脱する高さまで上昇するように、高低差が設けられている構造とする。
上記構成により、回収作業箇所では、上昇コンベアの運搬により、被冷却物が回収機構の上昇コンベアに載置されて運搬されており、冷却用液体槽中の冷却用液体中の喫水線から引き揚げて回収できる。
浸漬移動体の先端が前記冷却用液体の中に浸漬している範囲では、前記被冷却物が前記冷却用液体に浮遊した状態で前記移動機構により移動しており、前記浸漬移動体の先端が空中から脱した範囲では、前記被冷却物が前記上昇コンベア機構および前記仕切板に当接された状態で前記回収機構により移動することによりスムーズな搬送を可能とする。
【0017】
次に、上記構成において、前記冷却用液体槽の中に、前記浸漬移動体の移動ルートの側面を仕切る側壁を設ける構造が好ましい。
流路がつづら折りなどであれば、隣接して逆方向へ移動する浸漬移動体同士がすれ違うため、側壁を設けておけば、浸漬移動体の移動に伴って冷却用液体槽の中に発生し得る乱流を抑えることができる。
【0018】
次に、被冷却物の搬送状態について述べる。被冷却物のタイプにより下記の複数の搬送状態、搬送単位があり得る。
第1の搬送状態は、搬送単位が被冷却物であり、被冷却物がそのままの状態で搬送されるものである。被冷却物が冷却用液体よりも比重が小さければ浮遊した状態で搬送され、被冷却物が冷却用液体よりも比重が大きければ沈んだ状態で搬送される。
つまり、投入機構が被冷却物を冷却用液体槽の中に直接投入するものであり、移動機構が冷却用液体槽の流路に沿って冷却用液体中に浸漬している被冷却物を直接押しながら移動させるものであり、回収機構が被冷却物を冷却用液体槽の中から直接回収するものである。
【0019】
第2の搬送状態は、搬送単位が包装袋体または包装箱体の中に被冷却物が包装されたものであり、その状態で搬送されるものである。包装袋体または包装箱体の中に包装された被冷却物が冷却用液体よりも比重が小さければ浮遊した状態で搬送され、包装袋体または包装箱体の中に包装された被冷却物が冷却用液体よりも比重が大きければ沈んだ状態で搬送される。
つまり、投入機構が包装袋体または包装箱体に包装された被冷却物を冷却用液体槽の中に投入するものであり、移動機構が冷却用液体槽の流路に沿って冷却用液体中に浸漬している包装袋体または包装箱体に包装された被冷却物を押しながら移動させるものであり、回収機構が包装袋体または包装箱体に包装された被冷却物を冷却用液体槽の中から回収するものである。
【0020】
第3の搬送状態は、搬送単位が被冷却物を収納できるフレームと開口を備えた搬送枠体であり、被冷却物が搬送枠体の中に投入された状態で搬送されるものである。この搬送枠体が冷却用液体より比重が小さければ浮遊した状態で搬送され、冷却用液体より比重が大きければ浮遊した状態で搬送される。
つまり、被冷却物を搬送枠体の開口から充填したものが搬送の単位となり、投入機構としては被冷却物が充填された搬送枠体ごと冷却用液体槽の中に投入する構成が可能となる。移動機構としては、被冷却物が充填された搬送枠体ごと冷却用液体槽の流路に沿って移動させるもので良い。また、回収機構としては、被冷却物が充填された搬送枠体を冷却用液体槽の中から回収するものであれば良い。
【0021】
ここで、上記の第1の搬送状態、第2の搬送状態、第3の搬送状態において、被冷却物の比重が冷却用液体の比重より大きく、冷却用液体の中で沈降して移動する場合について述べる。
移動機構としては、少なくとも浸漬移動体の先端が流路内の底面に接近しながら移動すれば、流路内の底面近くに沈降している被冷却物を押して搬送することができる。
なお、この場合、浸漬移動体の先端と冷却用液体槽の底面との間にはわずかな隙間(クリアランス)が存在するように制御することも可能であるし、敢えて隙間(クリアランス)を設けずに底面に軽く触れるように制御することも可能である。前者の場合は、隙間(クリアランス)が大きくなり過ぎると、比重が大きく沈降する被冷却物が隙間(クリアランス)に入り込む可能性もあるので十分に小さくなるように配慮する必要がある。また、後者の場合は浸漬移動体を用いた搬送に影響が出ないように浸漬移動体の先端を摩擦の少ない滑らかな形状(丸みづけなど)、素材(ステンレス製など)とし、冷却用液体槽の底面も滑らかな形状(平面など)、素材(ステンレス製など)とすることが好ましい。
また、投入機構においては、下降コンベアに載置されていた状態から冷却用液体中に沈降してゆく状態となる。この載置から沈降の切り替わりのタイミングと、浸漬移動体の先端が上空から冷却用液体中の底面近くに接するよう降下するタイミングが同期するよう制御すれば良い。つまり、浸漬移動体の先端が未だ冷却用液体槽の底面に届いていない範囲では、被冷却物が下降コンベア機構に載置された状態で投入機構により下降移動しており、浸漬移動体の先端が冷却用液体の底面に届くまで下降した範囲では、被冷却物が冷却用液体に沈降した状態で移動機構により移動する構成とする。
上記構成により、被冷却物や搬送枠体が冷却用液体槽の底面近くまで沈降したタイミングに同期して、浸漬移動体の先端が冷却用液体槽の底面に届いて移動を始めれば、沈降状態となって推進力を失った被冷却物やトレイやカゴのような搬送枠体に対して、浸漬移動体の壁面により押下することで、所定の流路に沿って移動するよう推進力を与えることができる。
また、回収機構においては、沈降している状態から上昇コンベアに載置される状態となるが、この沈降状態から載置状態の切り替わりのタイミングと、浸漬移動体の先端が冷却用液体槽の底面から上昇するタイミングが同期するよう制御すれば良い。つまり、浸漬移動体の先端が冷却用液体槽の底面に届いている範囲では、被冷却物が冷却用液体に沈降した状態で移動機構により移動しており、浸漬移動体の先端が底面から上昇した範囲では、被冷却物が上昇コンベア機構および仕切板に載置された状態で回収機構により移動する構成とする。
上記構成により、被冷却物や搬送枠体が冷却用液体中で沈降して流路に沿った推進力がない状態では浸漬移動体により押下されて推進力を得ていて、上昇コンベアに載置され始めるタイミングに同期して、浸漬移動体の先端が冷却用液体の底面から脱すれば、上昇コンベアのコンベア面や立設されている仕切板から推進力を得て回収作業箇所まで上昇することができる。
【0022】
次に、上記の第1の搬送状態、第2の搬送状態、第3の搬送状態において、冷却用液体の中で浮遊して移動する場合について述べる。
移動機構としては、少なくとも浸漬移動体の一部が流路内に浸漬しながら移動すれば、喫水線近くを浮遊する被冷却物を押して搬送することができる。なお、第3の搬送状態として搬送枠体130を用いる場合、搬送枠体130としては例えば、冷却用液体に浮く樹脂製のトレイやカゴのようなものや、ステンレス製やアルミニウム製のトレイやカゴのようなものがあり得る。それらの底面や側方に孔が多数開いていて外部の冷却用液体が内部に簡単に流入するものであれば、トレイやカゴ内に冷却用液体が満たされるので被冷却物はトレイやカゴ内で冷却用液体に浸漬して冷却され得る。
また、投入機構においては、下降コンベアに載置されていた状態から冷却用液体中に浮遊する状態となる。この載置から浮遊の切り替わりのタイミングと、浸漬移動体の先端が上空から冷却用液体中の喫水線下に浸漬されるタイミングが同期するよう制御すれば良い。つまり、前記浸漬移動体の先端が空中にある範囲では、前記被冷却物が前記下降コンベア機構および前記仕切板に当接された状態で前記投入機構により移動しており、前記浸漬移動体の先端が前記冷却用液体の中に浸漬している範囲では、前記被冷却物が前記冷却用液体に浮遊した状態で前記移動機構により移動する構成とする。
上記構成により、被冷却物や搬送枠体が浮力により冷却用液体中で浮いて浮遊を始めるタイミングに同期して、前記浸漬移動体の先端が前記冷却用液体の中に浸漬し始めれば、浮遊状態となって推進力を失ったトレイやカゴのような搬送枠体に対して、浸漬移動体の壁面により押下することで、所定の流路に沿って移動するよう推進力を与えることができる。
また、回収機構においては、浮力により冷却用液体中で浮いて浮遊している状態から上昇コンベアに載置される状態となるが、この浮遊状態から載置状態の切り替わりのタイミングと、浸漬移動体の先端が冷却用液体中の喫水線下から空中に脱するタイミングが同期するよう制御すれば良い。つまり、前記浸漬移動体の先端が前記冷却用液体の中に浸漬している範囲では、前記被冷却物が前記冷却用液体に浮遊した状態で前記移動機構により移動しており、前記浸漬移動体の先端が空中から脱した範囲では、前記被冷却物が前記上昇コンベア機構および前記仕切板に当接された状態で前記回収機構により移動する構成とする。
上記構成により、搬送枠体が浮力により冷却用液体中で浮いて流路に沿った推進力がない状態では浸漬移動体により押下されて推進力を得ていて、上昇コンベアに載置され始めるタイミングに同期して、前記浸漬移動体の先端が前記冷却用液体から脱すれば、上昇コンベアのコンベア面や立設されている仕切板から推進力を得て回収作業箇所まで上昇することができる。
【0023】
次に、上記構成において、前記冷却用液体への浸漬と引き揚げを繰り返す浸漬移動体に付着する冷却用液体を冷却用液体槽へ効率よく回収する工夫を追加することが好ましい。
第1の方式として、前記移動機構において、前記浸漬移動体が前記レール線に沿って、前記回収機構上から前記投入機構まで戻る移動の間において、前記浸漬移動体に軽く衝突するまたは叩く振動子を備え、前記振動子により前記浸漬移動体に振動を与え、前記浸漬移動体表面に残る前記冷却用液体を落下させて前記冷却用液体槽に回収する構造がある。
第2の方式として、前記移動機構において、前記浸漬移動体が前記レール線に沿って、前記回収機構上から前記投入機構まで戻る移動の間において、前記浸漬移動体に風を吹き付けるブロワーを備え、前記ブロワーの吹き付け風により前記浸漬移動体表面に残る前記冷却用液体を落下させて前記冷却用液体槽に回収する構造がある。
上記構成により、前記冷却用液体への浸漬と引き揚げを繰り返す浸漬移動体に付着する冷却用液体を冷却用液体槽へ効率よく回収することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明にかかる冷却装置によれば、コンベア機構ではなく、いわゆる流路を作り冷却用液体の流れを利用して被冷却物を搬送するので、複雑なコンベア機構が不要とあり、シンプルな構成で装置サイズが小型化できる。
例えば、流路をつづら折りなどにすることが容易であり、設置面積を小さく抑えつつ十分な冷却時間を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施例1にかかる本発明の冷却装置100の基本構成を示す図である。
【
図2】
図1の状態から冷却用液体を除いて装置構成を示した図である。
【
図3】実施例1に係る本発明の冷却装置100の基本構成の斜視図である。
【
図4】被冷却物200を冷却用液体120に沈降させて浸漬移動体142により押しながら移動中に冷却している様子を簡単に示す図である。
【
図5】浸漬移動体142の走行軌跡に沿って側壁111が設けられてレーンが形成されている例を簡単に示す図である。
【
図6】搬送枠体130に被冷却物200を載置した状態で冷却用液体120に沈降させて搬送する様子を簡単に示す図である。
【
図7】沈降する搬送枠体130を用いた搬送において、側壁111を設けて流路をレーン化する工夫を施した搬送状態の例を示す図である。
【
図8】被冷却物200を冷却用液体120に浮遊させつつ浸漬移動体142により押しながら移動中に冷却している様子を簡単に示す図である。
【
図9】浸漬移動体142の走行軌跡に沿って、レーンを設けて側壁111を設ける工夫を施した例を示す図である。
【
図10】搬送枠体130に被冷却物200を載置した状態で冷却用液体120に浮遊させて搬送する様子を簡単に示す図である。
【
図11】浮遊する搬送枠体130を用いた搬送において、側壁111を設けて流路をレーン化する工夫を施した搬送状態の例を示す図である。
【
図12】沈降する被冷却物の場合における投入機構150とレール線141の構造例を簡単に示す図である。
【
図13】沈降する被冷却物の場合における回収機構160とレール線141の構造例を簡単に示す図である。
【
図14】浮遊する被冷却物の場合における投入機構150とレール線141の構造例を簡単に示す図である。
【
図15】浮遊する被冷却物の場合における回収機構160とレール線141の構造例を簡単に示す図である。
【
図16】従来のバッチ式で液体冷却式の冷却装置の模式図である。
【
図17】特開2000-55526号公報に開示された、連続冷却処理方式の冷却装置を示す図である。
【
図18】特開2020-56520公報(特許文献2)に開示された、冷却用液体の喫水線下の液中を走行するコンベアを用いた連続冷却処理方式の冷却装置を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の連続冷却処理式の冷却装置の実施例を説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下、説明に用いられる各図において、本発明の冷却装置100以外にも被冷却物200が描かれている場合があるが、ここで被冷却物200として図示されたものは、被冷却物200そのものの場合と、被冷却物200が袋などの包装体や包装箱に包装された状態の場合の被冷却物200もあり得るところ、同様に付番を200として示している。
【実施例0027】
図1は、実施例1にかかる本発明の冷却装置100の基本構成を示す図である。
図1は、平面図で上面の断熱体を取り除いて冷却用液体槽110の内部の様子を示した図である。なお、これらの構成は一例に過ぎず配列などは様々な装置構成があり得る。
図1においてハッチングが付されている部分は、冷却用液体120(ブライン液)となっている。冷却用液体の上に出ている部分にはハッチングは施されていない。
図2は、
図1の状態から冷却用液体を除いて装置構成を示した図である。
図3は、
図2の斜視図となっている。なお、浸漬移動体の移動ルートの側面を仕切る側壁は除外して示している。
いずれも動作原理が分かりやすいように構造を簡単に描いている。
本実施例1にかかる本発明の冷却装置100は、冷却用液体槽110、冷却用液体120、移動機構140、レール線141、浸漬移動体142、架空索道機構(図示せず)、投入機構150、回収機構160、帰還路170を備えた構造となっている。
また、詰め込み作業箇所S、回収作業箇所Eも併せて示されている。詰め込み作業箇所Sにおいて被冷却物を投入し、回収作業箇所Eにおいて被冷却物を回収する。これらの設置箇所は限定されず他の位置に設けることは可能であることは言うまでもない。
また、投入機構150、回収機構160はオプションであり、作業員の手作業による冷却用液体槽110への被冷却物の投入、冷却用液体槽110から被冷却物の作業員の手作業による回収も可能である。しかし、冷却用液体120は極低温であるので、作業員の手作業によらず、投入機構150、回収機構160を設けることが好ましい。
以下、各構成要素の説明を行う。
【0028】
冷却用液体槽110は、流路が形成される容器槽であり、冷却用液体120が満たされた容器槽である。
冷却用液体槽110の外形は、
図1から
図3のものに限らず、矩形、直線状、円形周回状、楕円周回状、多角形周回状など様々なものがあり得る。
この例では、
図1から
図3に示すように、冷却用液体槽110は外形がいわゆる櫛状の槽となっている。1つの櫛枝で折り返して往復するようその内部につづら折り状の流路が設定されている例となっている。
冷却用液体槽110の大きさは特に制限されないが、移動機構140による浸漬移動体142の移動軌跡をカバーする大きさが必要である。また、内部構造が分かりやすいように図示は省略しているが、冷却用液体槽110の上面や周囲は断熱体で囲んでおき、冷却効率を向上することが好ましい。
冷却用液体槽110の冷却機構として、冷却用液体槽110の底部には冷却用コイル(図示せず)が設けられている。冷却用コイルは冷却機構のうち吸熱する蒸発器に相当するものであり、冷却機構のうち圧縮器など他の部材は外部に設けられており図示を省略している。冷却用コイルは冷却用液体槽110の中の冷却用液体120を所定温度まで冷却する能力を備えているものとする。
ここで、冷却用液体120は冷却用液体槽110の容量に応じて大量に蓄積されているが、冷却用液体120に対して冷却用コイルによる冷却効果が均質に与えられる必要がある。冷却用コイルによる冷却効果を均質化させる方法は限定されない。本実施例では浸漬移動体142が冷却用液体槽110の冷却用液体120に浸漬した状態で周回するので、冷却用液体120全体が冷却用液体槽110を周回することにより事実上撹拌されることが想定されるが、限定されず、例えば、スクリューやポンプなどにより冷却用液体120に運動エネルギーを与えて冷却用液体120全体が冷却用液体槽110を周回する周回流を形成するものでも良い。冷却用液体120全体が周回流を形成するものではないが、冷却用液体120を適宜撹拌するための攪拌機を設置する構成でもよい。
冷却用液体槽110の素材は限定されないが、ステンレス鋼板、アルミニウム板を基本素材とし、断熱材を取り付けることも良い。また、
図1から
図3には蓋体が省略されているが、蓋体を取り付けるものであっても良い。底面や側面の表面は滑らかな平面が好ましい。
【0029】
次に、冷却用液体120を説明する。
冷却用液体120は、被冷却物を冷却する温度よりも凍結温度が低い液体であればよいが、安定性、安全性などが確保されているものが好ましい。例えば、ブライン液と呼ばれる塩化カルシウム水溶液やアルコール水溶液等からなる冷却用液体で良い。冷却用液体120は、冷却用液体槽110の底部に設けられた冷却用コイル(図示せず)を介して冷却される。
本発明では、この冷却用液体120は特に限定されず、市販のものでも良い。
【0030】
次に移動機構140を説明する。
移動機構140は、被冷却物を冷却用液体槽110の流路に沿って移動させる機構である。移動手段は様々であるが、この例では、浸漬移動体142と、レール線141と、浸漬移動体142をレール線141により流路に沿って移動させる架空索道機構を備えた構成例となっている。なお、架空索道機構は簡単に図示しており、駆動機構や吊下機構や懸垂機構などは図示を省略している。
移動機構140のレール線141は、冷却用液体槽110の上方に張り巡らされているが、
図1から
図3の例では、その配設ルートが投入機構150の一部、冷却用液体槽110の流路上、回収機構160の一部、回収機構160の一部から投入機構150の一部まで帰還させる帰還路170を周回するものとなっている。
【0031】
移動機構140のレール線141の配設に注目して周回の流れを追って説明する。
まず、レール線141の配設高さは、投入機構150から冷却用液体槽110の流路にかけて低くなるよう傾斜されている。この高低差により被冷却物を冷却用液体120へ投入する。つまり、移動機構140のレール線141の配設高さは、
図1から
図3に見るように、冷却用液体槽110の流路に向けて低くなるよう傾斜されている
レール線141の配設高さは、冷却用液体槽110の流路に入ると、低いままの一定の高さで維持されている。
【0032】
この構成例では、流路におけるレール線141の配設は、
図1から
図3に示したように、冷却用液体槽110の中で、つづら折りに蛇行したものとなっている。
なお、移動機構140のレール線141がつづら折りになっている理由は以下の通りである。被冷却物が投入機構150により下降して冷却用液体120の喫水線下に浸漬した状態から冷却処理期間が始まり、浸漬移動体142により押されながら冷却用液体槽110内の流路に沿って移動し、回収機構160により被冷却物200が上昇して冷却用液体120の喫水線上に出る状態となれば冷却処理期間が終了する。この冷却処理期間を長く確保しようとすると、流路を長くとることが効果的であるが、直線状のものとすると冷却装置の大きさが多くなってしまう。そこで、つづら折りにすることにより流路を長く確保しつつ冷却装置の大きさを抑制する工夫を施しているからである。
【0033】
次に、レール線141の配設高さは、冷却用液体槽110の流路から回収機構160の一部に向かって高くなるよう傾斜されている。この高低差により被冷却物が冷却用液体120から引き揚げられる。
次に、回収機構160の一部から投入機構150の一部まで帰還させる帰還路は、レール線141の配設高さは高いままの一定の高さとなっている。
なお、このレール線141の配設高さと浸漬移動体142の底部先端の高さは、被冷却物の搬送状態によるが、この点は後述する。
このように、レール線141は高低しながら周回サイクルの初期段階である投入機構150付近に戻る。
【0034】
次に、浸漬移動体142を説明する。
浸漬移動体142は、冷却用液体120に浸漬しながら移動し、搬送単位に応じて、被冷却物200、または被冷却物を包装した包装体や包装箱、または後述する搬送枠体130に当接しながら押し流して流路に沿って進めるものである。
【0035】
浸漬移動体142による被冷却物200の搬送単位について説明する。
被冷却物200の搬送単位であるが、既に上記に説明したように、3つの搬送単位があり得る。
第1の搬送単位は、被冷却物200そのものを搬送単位とし、被冷却物がそのままの状態で搬送されるものである。被冷却物200が冷却用液体120よりも比重が小さければ浮遊した状態で搬送され、被冷却物200が冷却用液体120よりも比重が大きければ沈んだ状態で搬送される。
第2の搬送単位は、被冷却物200が包装袋体または包装箱体の中に包装されたものであり、その状態で搬送されるものである。包装袋体または包装箱体の中に包装された被冷却物200が冷却用液体120よりも比重が小さければ浮遊した状態で搬送され、包装袋体または包装箱体の中に包装された被冷却物200が冷却用液体よりも比重が大きければ沈んだ状態で搬送される。
第3の搬送単位は、被冷却物200を収納できるフレームと開口を備えた搬送枠体130であり、被冷却物200が搬送枠体130の中に投入された状態で搬送されるものである。この搬送枠体130が冷却用液体120より比重が小さければ浮遊した状態で搬送され、冷却用液体120より比重が大きければ浮遊した状態で搬送される。
被冷却物200は冷却用液体の中では沈降している方が全体を均一に冷却できるので、一般論としては沈降している方が好ましい場合が多いと拝察できるが、比重が軽く浮遊するものも本発明の冷却装置100で取り扱うことも可能である。
図4から
図11は、本発明の冷却装置100による様々な搬送状態のパターンを説明する図である。
以下、第1の搬送単位から第3の搬送単位をそれぞれ、比重が大きく沈降して搬送されるパターンと、比重が小さく浮遊して搬送されるパターンに分けて説明する。
【0036】
[被冷却物の比重が大きく冷却用液体槽内を沈降して搬送されるパターン]
まず、被冷却物の比重が大きく冷却用液体槽内を沈降して搬送されるパターンについて
図4から
図7を参照しつつ説明する。
各図で示される被冷却物200としては、第1の搬送単位である被冷却物200そのものの場合や、第2の搬送単位である被冷却物200が包装袋体または包装箱体の中に包装されている場合もあり得る。なお、搬送枠体130に載置されて搬送される例は
図6および
図7を参照しつつ後述する。
図4は、被冷却物200を冷却用液体120に沈降させて浸漬移動体142により押しながら移動中に冷却している様子を簡単に示す図である。つまり、この
図4の搬送状態の例は、被冷却物200の比重が冷却用液体120の比重より大きく、沈降状態で搬送される例である。
図4に示すように、冷却期間中、つまり、冷却用液体120の喫水線下に浸漬した状態で流路を進む間、浸漬移動体142は少なくともその先端が流路の冷却用液体槽110の底面近くに接近しながら移動すれば、流路内の底面近くに沈降している被冷却物を押して搬送することができる。
なお、この場合、浸漬移動体の先端と冷却用液体槽の底面との間にはわずかな隙間(クリアランス)が存在するように制御することも可能であるし、敢えて隙間(クリアランス)を設けずに底面に軽く触れるように制御することも可能である。前者の場合は、隙間(クリアランス)が大きくなり過ぎると、比重が大きく沈降する被冷却物が隙間(クリアランス)に入り込む可能性もあるので十分に小さくなるように配慮する必要がある。また、後者の場合は浸漬移動体を用いた搬送に影響が出ないように浸漬移動体の先端を摩擦の少ない滑らかな形状(丸みづけなど)、素材(ステンレス製など)とし、冷却用液体槽の底面も滑らかな形状(平面など)、素材(ステンレス製など)とすることが好ましい。
【0037】
本発明の冷却装置100のメリットとしては、被冷却物200を搬送しつつも、従来技術のように無端ベルトで挟持するなどの搬送手段であれば、被冷却物に押圧力が掛かったりストレスが掛かったりすることがあり得るが、本冷却装置100では、沈降しているものの被冷却物200が浮力で軽くなった状態にて冷却用液体120の中を穏やかに移動するだけであるので、挟持するような押圧力が掛かったりストレスが掛かったりすることがない。
【0038】
次に、浸漬移動体142の走行軌跡に沿って、レーンを設けて側壁111を設ける工夫を説明する。
図5は、浸漬移動体142の走行軌跡に沿って側壁111が設けられてレーンが形成されており、そのレーンに仕切られた流路に沿って被冷却物200を冷却用液体120中に沈降したままで浸漬移動体142により押しながら移動中に冷却している様子を簡単に示す図である。
図5に示すように、浸漬移動体142の移動ルートをレーン化することにより、浸漬移動体142の移動に伴って冷却用液体槽110の中に発生し得る乱流を抑えることができる。特につづら折りに設定されている場合は、流路に沿ってつづら折りにターンを繰り返す浸漬移動体142の移動に伴って冷却用液体槽110の中に発生し得る乱流を有効に抑えることができる。
【0039】
次に、第3の搬送単位である搬送枠体130を用いる例を説明する。
上記したように、第3の搬送単位は、被冷却物200を収納できるフレームと開口を備えた搬送枠体130であり、被冷却物200が搬送枠体130の中に投入された状態で搬送されるものである。被冷却物200およびこの搬送枠体130が冷却用液体120より比重が大きければ沈降した状態で搬送される。
図6は、搬送単位が第3の搬送単位である搬送枠体130に被冷却物200を載置した状態で冷却用液体120に沈降させて浸漬移動体142により押しながら移動中に冷却している様子を簡単に示す図である。
搬送枠体130は、被冷却物を内部空間に支持できるフレームを備えた枠体状のものであり、被冷却物200が直接または包装体や包装箱に充填された状態で載置されるものである。
搬送枠体130の形状には多様なものがあり得る。搬送枠体130は被冷却物を内部空間に支持できるフレームがあれば良く、周囲から冷却用液体120が入り込んで浸漬するものであれば良い。簡単な例としては、格子で囲んだゲージ、開口の多数開いた箱状のものなどがある。
この例では、搬送枠体130は、冷却用液体120より比重が大きく沈降するものとする。例えば、搬送枠体130としてステンレス材などの金属製のカゴを採用する場合、比重自体はブライン液の比重より大きくなるため、搬送枠体130は沈降する。また、ブライン液の比重より大きなプラスチック樹脂であれば沈降するものとなる。物品の搬送用に良く用いられているプラスチックコンテナ(通称プラ箱)なども素材によっては採用することができる。なお、内部に冷却用液体が浸水しやいように、底面及び側面がメッシュ状で多数の孔が開いており、上面は開口されたものが価格も安く利用しやすい。
【0040】
ここで、被冷却物自体の比重も考慮することができる。搬送枠体130は被冷却物が充填された状態で投入機構150を通じて冷却用液体槽110の冷却用液体120内に投入され、内部に冷却用液体120も搬送枠体130の内部に浸入してくるが、被冷却物200が重く冷却用液体120に沈むものであれば、被冷却物200は搬送枠体130とともに冷却用液体120に沈降した状態で冷却される。
なお、内部の被冷却物は内部に浸水してきた冷却用液体120内に十分に浸漬することが好ましい。被冷却物を冷却用液体120により所定温度に冷却することが装置の目的だからである。
【0041】
図7は、搬送枠体130を用いる第3の搬送状態において、
図5で示したように側壁111を設けて流路をレーン化する工夫を施した搬送状態の例を示す図である。
図5と同様、浸漬移動体142の移動ルートをレーン化することにより、浸漬移動体142の移動に伴って冷却用液体槽110の中に発生し得る乱流を抑えることができる。
【0042】
[被冷却物の比重が小さく冷却用液体槽内を浮遊して搬送されるパターン]
次に、被冷却物200の比重が小さく冷却用液体槽110内を浮遊して搬送されるパターンについて
図8から
図11を参照しつつ説明する。
ここでも各図で示される被冷却物200としては、第1の搬送単位である被冷却物200そのものの場合や、第2の搬送単位である被冷却物200が包装袋体または包装箱体の中に包装されている場合もあり得る。なお、搬送枠体130に載置されて搬送される例は
図10および
図11を参照しつつ後述する。
なお、冷却用液体120中に浮遊していると冷却において冷却用液体の喫水線以下に浸漬している部分と、喫水線より上にある部分との間で温度差が生じる可能性があるが、被冷却物200の性質によっては上部食材が柔らかく浸漬させない方が良い場合などもあり得るため、本発明の冷却装置100としては、浮遊させて搬送する方法も排除されず、適用対象となることを示す。
【0043】
図8は、被冷却物200を冷却用液体120に浮遊させつつ浸漬移動体142により押しながら移動中に冷却している様子を簡単に示す図である。つまり、この
図8の搬送状態の例は、被冷却物200の比重が冷却用液体120の比重より小さく、浮遊状態で搬送される例である。
図8に示すように、冷却期間中、つまり、冷却用液体120の喫水線下に浸漬した状態で流路を進む間、浸漬移動体142は少なくともその先端が流路の冷却用液体槽110の喫水線以下まで浸漬しながら移動すれば、流路内の上面近くに浮遊している被冷却物を押して搬送することができる。
なお、この場合、浸漬移動体の先端が冷却用液体120に浸漬していれば、浮遊している被冷却物200との間に隙間(クリアランス)が存在せず、良好な搬送状態となるように制御することができる。
本発明の冷却装置100のメリットとしては、被冷却物200を搬送しつつも、従来技術のように無端ベルトで挟持するなどの搬送手段であれば、被冷却物に押圧力が掛かったりストレスが掛かったりすることがあり得るが、本冷却装置100では、冷却用液体120の中を穏やかに浮遊しつつ移動するだけであるので、挟持するような押圧力が掛かったりストレスが掛かったりすることがない。
【0044】
次に、
図9は、浸漬移動体142の走行軌跡に沿って、レーンを設けて側壁111を設ける工夫を施した例を示す図である。
図9は、
図5と同様、浸漬移動体142の走行軌跡に沿って側壁111が設けられてレーンが形成されており、そのレーンに仕切られた流路に沿って被冷却物200を冷却用液体120中に浮遊しつつ浸漬移動体142により押されながら搬送される。
図5と同様、浸漬移動体142の移動ルートをレーン化することにより、浸漬移動体142の移動に伴って冷却用液体槽110の中に発生し得る乱流を抑えることができる。
【0045】
次に、
図10は、第3の搬送単位である搬送枠体130に被冷却物200を載置した状態で冷却用液体120に浮遊しつつ浸漬移動体142により押されながら搬送されている様子を簡単に示す図である。
搬送枠体130の素材の比重自体がブライン液の比重より軽いプラスチック樹脂であれば浮力を付加することなく浮遊する浮力が得られる。物品の搬送用に良く用いられているプラスチックコンテナ(通称プラ箱)なども素材によっては採用することができる。なお、内部に冷却用液体が浸水しやいように、底面及び側面がメッシュ状で多数の孔が開いており、上面は開口されたものが価格も安く利用しやすい。
搬送枠体130として、ステンレス材などの金属製のカゴを採用する場合、比重自体はブライン液の比重より大きくなるため、搬送枠体130の一部に浮力を与えるための発泡スチロールなどの浮力体を取り付ける構成であっても良い。
図10に示すように、被冷却物200を充填した搬送枠体130の一部が冷却用液体120の喫水線より下に沈み、メッシュの間隙から内部に冷却用液体120が浸水し、被冷却物も冷却用液体120の中に沈んでいるが、全体として浮力で浮遊しており、搬送枠体130の上方の一部は冷却用液体120の喫水線より上に出ている。
図11は搬送枠体130を用いる搬送する第3の搬送状態において、流路に沿って側壁111を設けてレーン化した様子を示す図である。この搬送枠体130を用いる場合も、
図7に示したように流路にそって側壁111を設けてレーン化することも可能である。
以上が本発明の冷却装置100による様々な搬送状態のパターンである。
【0046】
次に、移動機構140の架空索道機構を説明する。
移動機構140の架空索道機構は、浸漬移動体142をレール線141に沿って移動させる機構である。レール線141と浸漬移動体142との間は鋼索または紐体が設けられており、鋼索または紐体に浸漬移動体142が吊架されている。架空索道機構が浸漬移動体142を駆動する原理は限定されないが、例えば、いわゆるケーブルカーのように、レール線141内にケーブル(図示せず)が摺動可能に埋設されており、当該ケーブルに駆動力を与えて摺動させるものである。例えば図示しない回転車輪などでケーブルに駆動力を与えるものでも良い。
このレール線141内のケーブルに所定間隔ごとに鋼索または紐体が設けられており、その先に浸漬移動体142が吊架されていると、レール線141内のケーブルが移動するのに従って浸漬移動体142が移動する。
【0047】
次に、冷却用液体槽110の一部に配置されている詰め込み作業箇所Sにおける投入機構150、回収作業箇所Eにおける回収機構160について説明する。これらも被冷却物200や搬送枠体130が冷却用液体120の中で沈降するか浮遊するかで構造を変えても良い。
【0048】
[被冷却物200等が冷却用液体120の中で沈降する場合]
まず、投入機構150を説明する。
投入機構150は、被冷却物200を冷却用液体槽110の中に投入する機構である。投入機構150の構造は限定されないが、一例としては以下のものがある。
図12は、投入機構150とレール線141の構造例を簡単に示す図である。
この例は、被冷却物200の比重が冷却用液体120の比重より大きく沈降するタイプへの適用例となっている。
図12に示す投入機構150は下降する下降コンベア機構を含み、被冷却物200、包装体や包装箱に充填された被冷却物200、搬送枠体130に載置された被冷却物200を載せて下降させることができる。
なお、下降コンベア機構は傾斜しているが、被冷却物200等が滑り落ちないようにベルトコンベアの表面摩擦係数は大きいものが好ましい。
また、この例では、下降コンベア機構には
図14等で後述する仕切板のようなものは特に設けられていないが、載置する被冷却物200の間隔が適切になるようにベルトに目印のようなものを付しておいても良い。
その理由であるが、1つの冷却単位が搬送枠体130に充填され、被冷却物200ごと又は搬送枠体130ごと被冷却物が投入機構150を介して順々に投入されてゆき、投入機構150から移動機構140に引き継がれて行くが、移動機構140の浸漬移動体142は所定の間隔で移動しているので、被冷却物200又は搬送枠体130を当該間隔で順々に投入してゆく必要があるからである。
【0049】
次に、下降コンベア機構151の高低差であるが、
図12に示すように、投入機構150の上で並走している移動機構140のレール線141から吊架している浸漬移動体142の先端の軌跡が、空中にある高さから冷却用液体120の底面に接近するタイミングに合わせて、冷却用液体120の底面に到達するように下降コンベア機構151の高低差が設けられている。
下降コンベア機構151の高低差が
図12のようであれば、投入機構150から移動機構140への被冷却物200または搬送枠体130ごとの受け渡しがうまく行く。
つまり、浸漬移動体142の先端が冷却用液体槽110の底面から離れている範囲では、被冷却物200または搬送枠体130に充填されている被冷却物200が下降コンベア機構151により移動しており、次いで、浸漬移動体140の先端が冷却用液体槽110の底面近くに達したタイミングになると、
図12に示したように、被冷却物200または搬送枠体130に充填された被冷却物200が冷却用液体120に沈降した状態で移動機構140の浸漬移動体142に受け渡される状態となる。
【0050】
次に、回収機構160を説明する。
回収機構160は、被冷却物200または搬送枠体130に充填された被冷却物200を冷却用液体槽110から引き揚げて回収する機構である。
回収機構160の構造は限定されないが、一例としては以下のものがある。
図13は、回収機構160とレール線141の構造例を簡単に示す図である。
この例は、被冷却物200の比重が冷却用液体120の比重より大きく沈降するタイプへの適用例となっている。
図13に示す回収機構160は上昇する上昇コンベア機構を含み、被冷却物200、包装体や包装箱に充填された被冷却物200、搬送枠体130に載置された被冷却物200を載せて上昇させることができる。
なお、上昇コンベア機構は傾斜しているが、被冷却物200等が滑り落ちないようにベルトコンベアの表面摩擦係数は大きいものが好ましい。
また、この例では、上昇コンベア機構には
図15等で後述する仕切板のようなものは特に設けられていないが、ベルトの表面摩擦係数が大きいものであれば被冷却物200が滑ることなく引き揚げられ、次々と到来する被冷却物200を回収されてゆく。
【0051】
次に、上昇コンベア機構161の高低差であるが、
図13に示すように、回収機構160の上で並走している移動機構140のレール線141から吊架している浸漬移動体142の先端の軌跡が、冷却用液体槽110の底面近くの高さから喫水線の上に離脱するように上昇コンベア機構の高低差が設けられている。
上昇コンベア機構161の高低差が
図13のようであれば、移動機構140から回収機構160への被冷却物200または搬送枠体130ごとの受け渡しがうまく行く。
つまり、浸漬移動体142の先端が冷却用液体槽110の底面付近にある範囲では、被冷却物200または搬送枠体130に充填されている被冷却物200が冷却用液体120に沈降した状態で移動機構140により移動しており、次いで、被冷却物200または搬送枠体130に充填されている被冷却物200が上昇コンベア機構に到達すれば回収機構160により被冷却物200または搬送枠体130に充填された被冷却物200が上昇移動できる状態となる。
【0052】
[被冷却物200等が冷却用液体120の中で浮遊している場合]
まず、投入機構150を説明する。
図14は、投入機構150とレール線141の構造例を簡単に示す図である。この例では、
図14に示す投入機構150は下降する下降コンベア機構を含み、その下降コンベア機構151において進行方向に対して仕切る仕切板152が立設された例となっている。仕切板152同士の間隔は限定されないが、移動機構140で吊架されている浸漬移動体142同士の間隔に相当するものとすることができる。
このように仕切板152が設けられていれば、下降コンベア機構の傾斜があっても下降コンベア機構の進行方向に仕切板152を立設することで滑り落ちることがなくなり、また、被冷却物200または搬送枠体130が投入機構150から移動機構140に引き継がれて行くが、その間隔が正しく制御できる。つまり、投入機構150の処理単位長さがこの仕切板152同士の間隔となり、一方、移動機構140の処理単位長さは浸漬移動体142同士の間隔となるので、両者が対応し合う間隔となるように制御できるからである。
被冷却物200または搬送枠体130は下降コンベア機構により下降してゆき、冷却用液体120に到達すれば、浮遊を始め、移動機構140に受け渡され、浸漬移動体142により搬送されてゆく。
【0053】
次に、回収機構160を説明する。
図15は、回収機構160とレール線141の構造例を簡単に示す図である。この例では、
図15に示す回収機構160は上昇する上昇コンベア機構を含み、その上昇コンベア機構において進行方向に対して仕切る仕切板161が立設された例となっている。仕切板1161同士の間隔は限定されないが、移動機構140で吊架されている浸漬移動体142同士の間隔に相当するものとすることができる。
このように仕切板161が設けられていれば、上昇コンベア機構の傾斜があっても上昇コンベア機構の進行方向に仕切板161を立設することで滑り落ちることがなくなり、また、被冷却物200または搬送枠体130が移動機構140から回収機構160に引き継がれて行くが、その間隔が正しく制御できる。つまり、移動機構140の処理単位長さは浸漬移動体142同士の間隔であり、一方、回収機構160の処理単位長さがこの仕切板161同士の間隔となり、両者が対応し合う間隔となるように制御できるからである。
被冷却物200または搬送枠体130は回収機構160の上昇コンベア機構に到達すれば、浮遊している状態から上昇コンベア機構に受け渡され、上昇コンベア機構により回収されてゆく。
【0054】
次に、帰還路170について説明する。
この帰還路は、被冷却物200等が冷却用液体120の中で沈降している場合も浮遊している場合も同様で良い。
本実施例1の構成例は、逐次連続式で被冷却物を冷却処理するので、回収作業箇所Eにおいて回収機構160で被冷却物200または搬送枠体130ごと被冷却物200が回収された後、浸漬移動体142を再び詰め込み作業箇所Sに循環させ、投入機構150で被冷却物200または搬送枠体130ごと被冷却物200が投入されたものを受け継ぐ。そこで、帰還路170が形成されている。
図1や
図2に分かりやすいように、冷却用液体120の喫水線上に帰還路170が形成されており、回収作業箇所E付近で、レール線141が上昇して、吊架している浸漬移動体142の先端が冷却用液体中から離脱するよう高く携挙された高さにある。この高さを維持したまま、詰め込み作業箇所Sにまで循環させる。
【0055】
ここで、帰還路170においてレール線141が空中においてつづら折りに蛇行したものとすることもできる。つまり、帰還する浸漬移動体142が空中にある時間を長く確保した構造とすることができる。
本発明の冷却装置100は、帰還路170を設けることにより、連続処理として、詰め込み作業、冷却作業、取り出し作業という一連の処理を次々と連続処理にて行う場合に使用できる。
以上が装置構成の各部分の説明である。
【0056】
次に、本発明の冷却装置100における冷却処理時間の調整方法として少なくとも以下の方法がある。
第1は、冷却用液体槽110内の流路の長さの調整である。
この冷却用液体槽110の流路の長さの調整は、装置の設計時に設計することが好ましい。つまり、必要とする流路の長さ、冷却用液体槽110の大きさを設計時に決め、冷却用液体槽110内に流路が収まるように、つづら折りの回数などを定めれば良い。
第2は、移動機構140による浸漬移動体142の移動速度の調整により行うことができる。
この移動機構140による浸漬移動体142の移動速度の調整は、レール線141の内部にある埋設されているケーブルを移動させる架空索道機構の駆動速度により調整することができる。
なお、冷却時間を一時的に短縮する場合では、被冷却物が充填された搬送枠体130を所定の回収機構160の位置まで流さずに、流路の途中の所定位置において、搬送枠体130ごと手作業により取り出すことで対処することも可能である。
【0057】
なお、回収作業箇所Eにいる作業員は、空中に携挙された搬送枠体130が到来すれば内部の被冷却物を回収するが、回収した被冷却物の種類に応じて仕分けてその後の後工程に引き継ぐことが好ましい。
【0058】
以上、本発明の連続冷却処理式の冷却装置の構成例における好ましい実施形態を図示して説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。