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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045671
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】入浴介助用キャリー装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 1/003 20060101AFI20230327BHJP
   A61G 5/00 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
A61G1/003 702
A61G1/003 701
A61G5/00 701
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154220
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】501362906
【氏名又は名称】積水ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】京 小太郎
(72)【発明者】
【氏名】杉 茂人
(72)【発明者】
【氏名】小田 眞弘
(57)【要約】
【課題】入浴介助用の椅子を支持して移動させるキャリー装置において、チルトさせた椅子から大きな負荷が付与されたときでも、可動柱部の角度及び位置を保持する。
【解決手段】入浴介助用キャリー装置10の車輪13付き走行架台11に支柱30に立設する。支柱30の固定柱部31を走行架台11に固定し、可動柱部32を固定柱部31に対して高さ調節可能に設ける。可動柱部32の上端部に椅子支持部33を設ける。これら柱部31,32を連結手段39によって連結して固定する。さらに、規制手段40を設けることによって、椅子21からの負荷によって可動柱部32が連結手段39の固定力に抗して変位するのを規制する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チルト可能な椅子を移動可能に支持する入浴介助用のキャリー装置であって、
車輪を有する走行架台と、
前記走行架台に立設された支柱と、
を備え、前記支柱が、
前記走行架台に固定された固定柱部と、
上端部が前記固定柱部より突出されて該上端部に前記椅子を支持する椅子支持部が設けられるとともに前記固定柱部に対して高さ調節可能な可動柱部と、
前記可動柱部に前記固定柱部への固定力を付与してこれら柱部どうしを連結する連結手段と、
前記椅子からの負荷によって前記可動柱部が前記固定力に抗して変位するのを規制する規制手段と、
を含むことを特徴とする入浴介助用キャリー装置。
【請求項2】
前記規制手段が、前記固定柱部の側部に設けられて、前記可動柱部の側部に後方から突き当たる当接部を含むことを特徴とする請求項1に記載の入浴介助用キャリー装置。
【請求項3】
前記支柱が上へ向かって後方へ傾斜されており、前記当接部が前記固定柱部に対して上へ向かって前方へ位置調節可能かつ前記可動柱部に後方から突き当て可能であることを特徴とする請求項2に記載の入浴介助用キャリー装置。
【請求項4】
前記規制手段が、前記固定柱部の側部に形成された規制長孔と、前記規制長孔に通されて締め付けられることによって前記固定柱部に固定された規制ボルトと、前記規制ボルトの外周に嵌められた当接リングとを含み、前記当接リングが、前記可動柱部の側部と突き当て可能であり前記当接部を構成していることを特徴とする請求項2又は3に記載の入浴介助用キャリー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入浴介助用の椅子を支持して移動させるキャリー装置に関し、特にチルト可能な椅子に好適な入浴介助用キャリー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
要介助者を入浴介助用の椅子に座らせて移動させるキャリー装置は公知である。例えば特許文献1に開示されたキャリー装置は、車輪付きの走行架台に支柱が立設され、その上端部に支持レールを介して椅子が支持される。支柱は、走行架台に固定された固定柱部と、該固定柱部に対して昇降可能な可動柱部とを有し、高さ調節可能である。支柱の左右両側部における上下2箇所には、固定柱部及び可動柱部どうしを止める連結ボルトが設けられている。
さらに、特許文献1の椅子は、座部が前方へスライドして前端部が上へ傾くようにチルト可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-029617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
椅子をチルトさせると、荷重位置が前方へ変位されるために、支柱に前かがみ方向の過大なモーメント(負荷)がかかり、連結用ボルトだけでは支えきれず、可動柱部と固定柱部との間のクリアランスの範囲内で、可動柱部が回転されたり位置ずれしたりすることがある。
本発明は、前記のような事情に鑑み、入浴介助用の椅子を支持して移動させるキャリー装置において、チルトさせた椅子から大きな負荷が付与されたときでも、可動柱部の角度及び位置を保持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明は、チルト可能な椅子を移動可能に支持する入浴介助用のキャリー装置であって、
車輪を有する走行架台と、
前記走行架台に立設された支柱と、
を備え、前記支柱が、
前記走行架台に固定された固定柱部と、
上端部が前記固定柱部より突出されて該上端部に前記椅子を支持する椅子支持部が設けられるとともに前記固定柱部に対して高さ調節可能な可動柱部と、
前記可動柱部に前記固定柱部への固定力を付与してこれら柱部どうしを連結する連結手段と、
前記椅子からの負荷によって前記可動柱部が前記固定力に抗して変位するのを規制する規制手段と、
を含むことを特徴とする。
当該入浴介助用キャリー装置によれば、椅子のチルトによる荷重位置の前方変位によって、支柱に前かがみ方向の大きなモーメントがかかり、その負荷が連結手段による固定力を上回ったとしても、規制手段によって、可動柱部の変位を規制できる。したがって、可動柱部の角度及び位置をチルト前の状態のまま保持することができる。
【0006】
前記規制手段が、前記固定柱部の側部に設けられて、前記可動柱部の側部に後方から突き当たる当接部を含むことが好ましい。前記当接部は、前記荷重による前記可動柱部の回転変位の回転中心より下方に配置されていることが好ましい。前記当接部によって、可動柱部が前かがみ側へ回転変位するのを確実に防止できる。
【0007】
前記支柱が上へ向かって後方へ傾斜されており、前記当接部が前記固定柱部に対して上へ向かって前方へ位置調節可能かつ前記可動柱部に後方から突き当て可能であることが好ましい。
これによって、当接部を可動柱部に確実に突き当てることができ、過大な負荷による可動柱部の前かがみ側への回転変位や沈下(下降方向への変位)を確実に阻止できる
【0008】
前記規制手段が、前記固定柱部の側部に形成された規制長孔と、前記規制長孔に通されて締め付けられることによって前記固定柱部に固定された規制ボルトと、前記規制ボルトの外周に嵌められた当接リングとを含み、前記当接リングが、前記可動柱部の側部と突き当て可能であり前記当接部を構成していることが好ましい。前記規制長孔は、上へ向かって前方へ傾斜していることが好ましい。
これによって、規制ボルトに可動柱部が直接当たらないようにでき、規制ボルトの損傷を防止できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、チルト機能を有する椅子から大きな負荷が付与されたときでも、可動柱部の角度及び位置をチルト前の状態のまま保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る入浴介助用キャリー装置及び椅子装置を含む入浴用車椅子の側面図である。
図2図2は、前記椅子装置をチルト状態にした入浴用車椅子の側面図である。
図3図3は、前記入浴介助用キャリー装置を後方から見た斜視図である。
図4図4は、前記入浴介助用キャリー装置における支柱辺りを拡大して示す側面図である。
図5図5は、前記支柱に設けられた規制部材の分解斜視図である。
図6図6は、図4のVI-VI線に沿う、前記入浴介助用キャリー装置の走行架台の平面断面図である。
図7図7は、図4のVII-VII線に沿う平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1及び図2は、要介助者Aの入浴介助に用いられる入浴用車椅子1を示したものである。入浴用車椅子1は、入浴介助用キャリー装置10と、椅子装置20を備えている。キャリー装置10によって、椅子装置20が移動可能に支持されている。図3に示すように、キャリー装置10は、走行架台11と、支柱30を含む。走行架台11は、架台部12と車輪13を含み、走行可能である。
【0012】
図4に示すように、架台部11の中央部に支柱30が立設されている。支柱30は、架台部11から上へ向かって後方へ傾斜されるとともに、高さ調節可能である。詳しくは、図5に示すように、支柱30は、固定柱部31と可動柱部32を有している。図6に示すように、固定柱部31は、例えば断面がコ字状に形成され、下端部が架台部11に固定されている。
【0013】
図7に示すように、可動柱部32は、固定柱部31よりひとまわり大きな断面コ字状に形成され、固定柱部31の前面及び左右側面に昇降可能に被さっている。図4に示すように、可動柱部32の上端部は、固定柱部31より上方へ突出されている。該上端部に支持レール33(椅子支持部)が設けられている。
【0014】
支持レール33は、左右方向(図4において紙面と直交する方向)へ水平に延びている。図1に示すように、支持レール33に椅子装置20が支持されている。椅子装置20は、椅子21と、リフト機構24と、チルト機構29とを有している。椅子21は、座部22及び背凭れ23を含み、支柱30の前方に配置されている。背凭れ23の背部にリフト機構24が設けられている。リフト機構24は、支持レール33に水平スライド可能に搭載されている。リフト機構24によって、椅子21が昇降可能に支持されている。
【0015】
椅子21のフレームにチルト機構29が組み込まれている。チルト機構29によって、椅子21がチルト(傾斜)可能である。図2に示すように、チルトされた状態においては、チルト前(図1)に対して、座部22が前方へスライドされるとともに前端部が上方へ傾斜される。さらに、背凭れ23の中間高さより下側部分が仰向け側へ傾けられるとともに上側部分が下降されてもよく、背凭れ23全体が仰向け側へ傾けられてもよい。
【0016】
図4に示すように、前記柱部30の固定柱部31と可動柱部32とは、連結手段39によって高さ調節可能に連結されている。連結手段39は、次のように構成されている。
図5に示すように、可動柱部32の左右両側部には、それぞれ2つ(複数)の長孔32a,32bが形成されている。長孔32a,32bは、可動柱部32の長手方向に沿って延びるとともに、互いに上下に離れて配置されている。下側の長孔32bの幅が、上側の長孔32aの幅より大きい。
【0017】
固定柱部31には、上下2つの連結シャフト34,35が設けられている。各連結シャフト34,35は、左右へ水平に延びている。図7に示すように、上側の連結シャフト34の両端部は、固定柱部31の側部の上端縁に形成された半円状凹部31aに嵌め込まれるとともに、可動柱部32の側部に突き当てられている。かつ、連結ボルト36が、長孔32aを通して連結シャフト34の端部にねじ込まれることによって、可動柱部32の側部がワッシャ36wと連結シャフト34との間に強く挟み付けられている。
【0018】
図6に示すように、下側の連結シャフト35の両端部は、固定柱部31の中間部に形成された円孔31bに嵌め込まれるとともに、可動柱部32の側部に突き当てられている。かつ、連結ボルト37が、長孔32bを通して連結シャフト35の端部にねじ込まれることによって、可動柱部32の側部がワッシャ37wと連結シャフト35との間に強く挟み付けられている。
【0019】
これによって、可動柱部32が固定柱部31に固定されている。言い換えると、連結手段39が、可動柱部32に固定柱部31への固定力を付与している。
連結ボルト36,37を緩めると、前記固定力が解除され、可動柱部32が固定柱部31に対して高さ調節できる。
【0020】
図6に示すように、上下の連結ボルト36,37の首下部の直径は、互いに等しく、かつ上側の長孔32aの幅と同等又はそれより少しだけ小さい。したがって、下側の連結ボルト37と長孔32bの幅方向の両縁との間には隙間32dが形成されている。当該隙間32dの分だけ、可動柱部32が、連結シャフト34を回転軸にして角度を微調整できる。
【0021】
さらに、柱部30には、規制手段40が設けられている。規制手段40は、椅子装置20からの負荷によって可動柱部32が連結手段39の固定力に抗して変位するのを規制する。
詳しくは、図4に示すように、固定柱部31の両側の側部には、規制長孔49が形成されている。規制長孔49は、円孔31bより後方に配置されている。規制長孔49の長手方向は、上へ向かって前方へ傾斜されている。規制長孔49に規制部材41が設けられている。規制部材41は、規制ボルト42と、当接リング44(当接部)を含む。規制ボルト42が規制長孔49に通されている。規制ボルト42に袋ナット43がねじ込まれることによって、規制ボルト42が、締め付けられて、固定柱部31の側部に固定されている。
【0022】
図6に示すように、規制ボルト42の首下部の外周には、当接リング44(当接部)が嵌められている。当接リング44は、規制ボルト42の頭部と固定柱部31の側部の外面との間に挟まれている。当接リング44が、可動柱部32の側部の縁部に後方から突き当たっている。
規制ボルト42を緩めると、規制部材41を規制長孔49の長手方向へ位置調節できる。
【0023】
入浴用車椅子1は、要介助者Aを入浴させる際、次のように使用される。
あらかじめ、支柱30を高さ調節して連結ボルト36,37を緊締しておく。該支柱30の可動柱部32に当接リング44を後方から突き当てた状態で、規制ボルト42を緊締する。
【0024】
その後、要介助者Aを椅子21に座らせ、入浴用車椅子1を浴室まで運ぶ。これと相前後して、椅子21をチルトさせる(図2)。すなわち、座部22を前方へスライドさせるとともにその前端部を上方へ傾斜させる。
このため、要介助者Aの体重を加えた椅子21の荷重位置(重心)が、チルトによって、チルト前(図1)よりも前方へ変位する。したがって、連結シャフト34を中心として前かがみ方向(図4において左回り)の回転モーメントが増大する。この回転モーメントが過度に大きくなると、連結手段39の固定力だけでは耐え切れず、可動柱部32が連結シャフト34を回転中心にして前かがみ側へ回転変位しようとする。すなわち、可動柱部32における連結シャフトより下側部分が後方へ変位しようとする。すると、可動柱部32が当接リング44に強く押し当たる。これによって、可動柱部32の回転変位を阻止できる。さらに、当接リング44が可動柱部32に後方から斜めに当接されることによって、椅子装置20からの荷重により可動柱部32が沈下しようとするのを規制できる。この結果、可動柱部32可動柱部32をチルト前と同じ角度及び位置に保持することができる。
【0025】
当接リング33が可動柱部32に突き当たることによって、規制ボルト42が可動柱部32と直接、当接されるのを防止でき、規制ボルト42のネジ部の損傷を防止できる。
【0026】
図示は省略するが、チルト姿勢の椅子装置20を支持レール33から浴槽框上のレールユニットへ移して、下降させて浴槽に入れることで、要介助者Aを入浴させる。その後、入槽時とは逆の手順で出槽される。
【0027】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、椅子からの回転モーメントによる可動柱部の回転中心よりも上側、かつ可動柱部の前方に、規制手段の当接部を配置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、例えば要介助者の入浴介助用の車椅子に適用できる。
【符号の説明】
【0029】
1 入浴用車椅子
10 入浴介助用キャリー装置
11 走行架台
12 架台部
13 車輪
20 椅子装置
30 支柱
31 固定柱部
31a 半円状凹部
31b 円孔
32 可動柱部
32a、32b 長孔
33 支持レール(椅子支持部)
34,35 連結シャフト
36,37 連結ボルト
39 連結手段
40 規制手段
41 規制部材
42 規制ボルト
43 袋ナット
44 当接リング(当接部)
49 規制長孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7