(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045673
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】鋳砂落とし装置、打撃音の周波数調整方法及びワーク台
(51)【国際特許分類】
B22D 29/00 20060101AFI20230327BHJP
【FI】
B22D29/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154225
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】510155210
【氏名又は名称】アピュアン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】渡部 幸雄
(57)【要約】
【課題】鋳造品であるワークの鋳砂を効率的に落とすことのできる装置を提供する。
【解決手段】鋳砂落とし装置1は、床面に設置される装置本体10を備え、装置本体10は、ワークWが載置されるワーク台50と、ワーク台50が載置される載置部40と、ワーク台50を上下動させ衝撃を付与する昇降打撃装置30と、ワーク台50に載置されたワークWの上方に配置され、上下方向を弾縮方向とされた複数のコイルスプリング71からなるコイルスプリング群70と、を備え、ワーク台50は、上下方向に積層された複数の基板部材51と、当該複数の基板部材51を上下方向で挟持するボルト55及びナット56と、を具備し、ワーク台50が上昇した上昇状態で昇降打撃装置30によって繰り返し打撃されることによりワークWに付着した鋳砂が落下する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造品であるワークの鋳砂を落とす鋳砂落とし装置であって、
床面に設置される装置本体を備え、
前記装置本体は、
前記ワークが載置されるワーク台と、
前記ワーク台が載置される載置部と、
前記ワーク台を上下動させる移動手段と、
前記ワーク台を打撃する打撃手段と、
前記ワーク台に載置されたワークの上方に配置され、上下方向を弾縮方向とされたコイルスプリングと、
を備え、
さらに前記ワーク台は、上下方向に積層された複数の基板部材と、当該複数の基板部材を上下方向で挟持する挟持手段と、を具備し、
前記ワーク台が前記載置部に載置され、かつ前記ワークが前記コイルスプリングに接していない下降状態と、
前記下降状態から、前記移動手段によって前記ワーク台が上昇することで前記載置部から離間し、かつ前記ワークが前記コイルスプリングに圧接する上昇状態と、
の各状態に状態変化自在とされてなり、
前記上昇状態で、前記ワーク台が前記打撃手段によって繰り返し打撃されることにより当該ワークに衝撃が付与されて当該ワークに含まれる鋳砂が落下してなる
ことを特徴とする鋳砂落とし装置。
【請求項2】
請求項1に記載の鋳砂落とし装置を用いた打撃音の周波数調整方法であって、
前記挟持手段における前記複数の基板部材を挟持する力を調整することにより、前記打撃手段が前記ワーク台を打撃した際に発生する打撃音の周波数を変化させる
ことを特徴とする打撃音の周波数調整方法。
【請求項3】
鋳造品であるワークの鋳砂を落とす鋳砂落とし装置に備えられるものであり、前記ワークが載置されることとなるワーク台であって、
上下方向に積層された複数の基板部材と、当該複数の基板部材を上下方向で挟持する挟持手段と、を具備し、
前記ワークが載置された状態で前記鋳砂落とし装置に備えられた打撃手段によって繰り返し打撃されてなる
ことを特徴とするワーク台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造品であるワークに振動を与えてワークに付着した鋳砂を落とす鋳砂落とし装置、鋳砂落とし装置を用いた打撃音の周波数調整方法及び鋳砂落とし装置に用いられるワーク台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鋳造品の鋳砂を落とすために振動を与える装置は様々な構成が知られている。例えば発明者らも、鋳造品であるワークに振動を与えてワークの鋳砂を落とす装置として、ワークが置かれるテーブル部をバネ定数の異なる複数のコイルバネによって支持し、複雑な振動を与えることのできる鋳砂落とし用ワーク支持装置を提供している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者らは、さらに研鑽を進め、より騒音を低減して鋳造品であるワークの鋳砂を落とすことのできる装置を開発するに至った。
【0005】
本発明は、騒音を低減して鋳造品であるワークの鋳砂を落とすことのできる装置を提供することを目的とする。
【0006】
また本発明は、騒音を低減して鋳造品であるワークの鋳砂を落とすことのできる装置を用いた打撃音の周波数調整方法を提供することを目的とする。
【0007】
また本発明は、騒音を低減して鋳造品であるワークの鋳砂を落とすことのできる装置に用いられるワーク台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、鋳造品であるワークの鋳砂を落とす鋳砂落とし装置であって、床面に設置される装置本体を備え、前記装置本体は、前記ワークが載置されるワーク台と、前記ワーク台が載置される載置部と、前記ワーク台を上下動させる移動手段と、前記ワーク台を打撃する打撃手段と、前記ワーク台に載置されたワークの上方に配置され、上下方向を弾縮方向とされたコイルスプリングと、を備え、さらに前記ワーク台は、上下方向に積層された複数の基板部材と、当該複数の基板部材を上下方向で挟持する挟持手段と、を具備し、前記ワーク台が前記載置部に載置され、かつ前記ワークが前記コイルスプリングに接していない下降状態と、前記下降状態から、前記移動手段によって前記ワーク台が上昇することで前記載置部から離間し、かつ前記ワークが前記コイルスプリングに圧接する上昇状態と、の各状態に状態変化自在とされてなり、前記上昇状態で、前記ワーク台が前記打撃手段によって繰り返し打撃されることにより当該ワークに衝撃が付与されて当該ワークに含まれる鋳砂が落下してなることを特徴とする鋳砂落とし装置である。また、本発明は、鋳造品であるワークの鋳砂を落とす鋳砂落とし装置に備えられるものであり、前記ワークが載置されることとなるワーク台であって、上下方向に積層された複数の基板部材と、当該複数の基板部材を上下方向で挟持する挟持手段と、を具備し、前記ワークが載置された状態で前記鋳砂落とし装置に備えられた打撃手段によって繰り返し打撃されてなることを特徴とするワーク台である。
【0009】
かかる構成にあっては、ワークが載置される前記ワーク台が、上下方向に積層された複数の基板部材によって構成され、かつこれらを前記挟持手段で上下方向に挟持(緊締)することにより、前記打撃手段によって与えられる衝撃によって発生する打撃音の周波数を下げる効果が得られる。これによって、例えば耳障りな高音の打撃音を低減して作業環境を改善することができる。また、打撃手段で衝撃を付与する状態では、前記ワーク台は前記載置台から離間した状態となるため、当該ワーク台が前記装置本体における他の部位と共鳴してしまって騒音を増大させてしまう、ということが抑制される。また、前記鋳砂落とし装置は、ワークを直接打撃する構成でないため、誤ってワークを破損させるおそれも抑制されている。また、ワークとコイルスプリングとが圧接した状態で当該ワークに衝撃が付与されるため、複雑な振動や揺らぎをワークに付与することが可能となって、鋳砂を好適に崩壊させたり、崩壊した鋳砂のかたまりを好適にワークから飛散させたりすることが可能となる。
【0010】
また本発明は、前記鋳砂落とし装置を用いた打撃音の周波数調整方法であって、前記挟持手段における前記複数の基板部材を挟持する力を調整することにより、前記打撃手段が前記ワーク台を打撃した際に発生する打撃音の周波数を変化させることを特徴とする打撃音の周波数調整方法である。
【0011】
かかる構成にあっては、前記挟持手段における前記複数の基板部材を挟持する力を増減させることにより、打撃音の周波数を調整して作業環境において最も騒音が小さくなる条件を特定することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
以上に述べたように、本発明の鋳砂落とし装置は、騒音を低減することのできる優れた効果がある。
【0013】
また、本発明の打撃音の周波数調整方法は、騒音を低減することのできる優れた効果がある。
【0014】
また、本発明の鋳砂落とし装置用ワーク台は、騒音を低減することのできる優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】ワーク台が下降状態にある装置の斜視図である。
【
図2】ワーク台が下降状態にある装置の正面図である。
【
図3】ワーク台が上昇状態にある装置の斜視図である。
【
図4】ワーク台が上昇状態にある装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態を、以下の実施例に従って説明する。
【0017】
図1,
図2に示すように、装置1(鋳砂落とし装置)は、床面に設置されたフレーム枠を備える装置本体10を有している。
【0018】
装置本体10の下端部には、フレーム枠の一部で構成される基台部20が設けられている。また、基台部20には、例えばエアーハンマー工具で構成された昇降打撃装置30が2個並べて配置されている。
【0019】
昇降打撃装置30は、上下方向に昇降するピストン部31を備え、さらにピストン部31の上端(先端)には先端具が取り付けられている。そして、ピストン部31の内部に装填されたハンマーが先端部の基端を繰り返し打撃することにより、当該先端具を介して対象物に衝撃を付与する機能を有している。なお、かかる昇降打撃装置30によって、本発明に係る移動手段及び打撃手段が構成される。
【0020】
また、基台部20には、テーブル構造の載置部40が設置されている。さらに、載置部40は、昇降打撃装置30の上方に位置しており、昇降打撃装置30のピストン部31が上昇したときに挿通される貫通孔部41を有している。
【0021】
さらに載置部40には、ワーク台50(鋳砂落とし装置用ワーク台)が載置される。ワーク台50は、平板状の基板部材51で構成されており、具体的には複数(3枚)の基板部材51が上下方向に積層されてなる。さらに、積層された基板部材51は、挟持手段であるボルト55及びナット56によって上下方向に緊締されて挟持されており、かかる状態でワークWが載置可能となっている。
【0022】
また、装置本体10の上端部には、天板60が配されており、天板60におけるワーク台50の上方となる位置には、上下方向を弾縮方向とする複数のコイルスプリング71からなるコイルスプリング群70が下向きに配置されている。
【0023】
次に、これまでに述べた装置1の作動状態について説明する。
装置1は、
図1、
図2に示すように、下降状態αを基本状態としている。すなわち、下降状態αでは、昇降打撃装置30のピストン部31は所定の下降位置に位置して、先端具は載置台40よりも低い位置に配置されている。また、載置台40の上にはワーク台50が載置され、さらにワーク台50の上にはワークWが載置されている。なお、この下降状態αにおいては、ワークWはコイルスプリング群70に接していない。
【0024】
そして、昇降打撃装置30に圧縮空気を導入すると、昇降打撃装置30のピストン部31が所定の上昇位置まで上昇し、
図3、
図4に示すように、先端具が載置部40の貫通孔部41を通過するとともに、貫通孔部41から露出していたワーク台50の下面に当接して、そのままワーク台50を下から持ち上げる。
【0025】
ワーク台50が所定の上昇位置に達するところでは、ワークWの上面がコイルスプリング群70におけるコイルスプリング71の下端に圧接し、装置1は上昇状態βとなる。
【0026】
そして上昇状態βにおいて、昇降打撃装置30が先端具を介してワーク台50を繰り返し下から打撃することにより、ワーク台50上のワークWに衝撃が付与され、ワークW内に固結した鋳砂が崩れたり飛散したりして落下する。また、ワークWは、ワーク台50とコイルスプリング群70とに挟まれた状態となるため、コイルスプリング群70のもつ弾性に基づいて複雑な振動が付与され、ワークWに含まれる鋳砂が好適に飛散して排出される。
【0027】
ここで、ワーク台50は、上述のように複数の基板部材51が積層されて互いに緊締されたものであり、このように複数の基板部材51同士が強く挟持されることで、ワーク台50を打撃する打撃音の周波数が下げられて、好適に高音の発生が防止されている。
【0028】
また、上昇状態βにおいて、ワーク台50はピストン部31に下から支持されているのみであり、装置本体10の他の部位に接触していない状態となる。したがって、ワーク台50を打撃する際に発生する打撃音が装置本体10と共鳴して騒音が増幅してしまうことが防止されている。
【0029】
なお、ワーク台50において、ボルト55及びナット56の締め付け強度を変化させて基板部材51を挟持する力を調整することで、打撃時に発生する打撃音の周波数を変化させることができる。これにより、耳障りな打撃音を低減し、作業環境の改善を図ることもできる。
【0030】
これまでに述べた実施例において、各部の寸法形状は適宜自由に選択可能である。
【0031】
また、ワーク台50を昇降させる移動手段が、ワーク台50に衝撃を付与する打撃手段とは別に配置されていても構わない。しかしながら、両機能を別々に配置した場合は、部品点数が増大したり、共鳴により騒音が大きくなったりするおそれがあるため、移動手段としての機能と打撃手段としての機能を併せ持った昇降打撃装置30を採用することが望ましい。
【0032】
ワーク台50において基板部材51を挟持する挟持手段は、ボルト55及びナット56以外にも、例えば
図5に示すような、クランプ80であってもよい。この場合、クランプ80のボルト81の締め付け具合を調整することによって打撃音の周波数を変化させることができる。
【0033】
複数の基板部材51は、それぞれ厚みが異なっていてもよい。また、基板部材51として、例えばパンチングメタル板を介在させて、ワーク台50の内部に空隙部を形成するようにしてもよい。
【0034】
また、コイルスプリング71の配列は、規則的でもよいし不規則的でもよいが、できる限り複雑な振動をワークWに付与すべく、不規則的な配列が望ましい。
【符号の説明】
【0035】
1 装置
10 装置本体
20 基台部
30 昇降打撃装置
31 ピストン部
40 載置部
41 貫通孔部
50 ワーク台
51 基板部材
55 ボルト
56 ナット
60 天板
70 コイルスプリング群
71 コイルスプリング
80 クランプ
81 ボルト
W ワーク
α 下降状態
β 上昇状態