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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045715
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/06 20060101AFI20230327BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20230327BHJP
   F25B 13/00 20060101ALI20230327BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
H02P27/06
H02M7/48 E
F25B13/00 M
F25B1/00 351U
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154272
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内山 嘉隆
(72)【発明者】
【氏名】金森 正樹
【テーマコード(参考)】
3L092
5H505
5H770
【Fターム(参考)】
3L092AA08
3L092BA08
3L092FA05
5H505AA06
5H505BB06
5H505CC05
5H505DD03
5H505DD08
5H505EE49
5H505FF05
5H505HA06
5H505HA10
5H505HB01
5H505HB05
5H505LL43
5H505MM07
5H770AA17
5H770BA01
5H770BA05
5H770DA03
5H770DA21
5H770DA41
5H770EA01
5H770FA11
5H770HA06Z
(57)【要約】
【課題】モータが回転を始めることなくモータ巻線を十分に加熱することができ、かつインバータのスイッチ素子の寿命が短くなる不具合を解消できる信頼性にすぐれた冷凍サイクル装置を提供する。
【解決手段】互いに非接続状態の複数の相巻線を有する圧縮機駆動用のモータ、前記各相巻線の一端への通電を制御する第1インバータ、前記各相巻線の他端への通電を制御する第2インバータ、および制御手段を備える。制御手段は、前記モータの停止時、前記各相巻線の一端から他端へ流れる零軸電流および前記各相巻線の他端から一端へ流れる零軸電流が交互に生じるよう、前記第1および第2インバータを制御する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに非接続状態の複数の相巻線を有する圧縮機駆動用のモータと、
前記各相巻線の一端への通電を制御する第1インバータと、
前記各相巻線の他端への通電を制御する第2インバータと、
前記モータの停止時、前記各相巻線の一端から他端へ流れる零軸電流および前記各相巻線の他端から一端へ流れる零軸電流が交互に生じるよう、前記第1および第2インバータを制御する制御手段と、
を備える冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記モータの停止時、外気温度が閾値未満の場合に、前記各零軸電流が交互に生じるよう、前記第1および第2インバータを制御する、
請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記各零軸電流の値を前記外気温度に応じて変える、
請求項2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記第1インバータは、複数の第1スイッチ素子を有し、
前記第2インバータは、複数の第2スイッチ素子を有し、
前記制御手段は、前記モータの停止時、前記各相巻線の一端から他端へ向け互いに同じ値で流れる零軸電流および前記各相巻線の他端から一端へ向け互いに同じ値で流れる零軸電流が交互に生じるよう、前記各第1スイッチ素子および前記各第2スイッチ素子をオン,オフ制御する、
請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記各第1スイッチ素子および前記各第2スイッチ素子のオン,オフ制御において、それぞれが逆位相の正弦波状に変化するオン,オフデューティで駆動した
請求項4に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに非接続状態の複数の相巻線を有するいわゆるオープン巻線モータを圧縮機駆動用のモータとして備える冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機や熱源機などの冷凍サイクル装置では、圧縮機の停止時、冷媒が圧縮機内に溜まり込んで液化するいわゆる寝込みを生じる。とくに、外気温度の低下が著しい冬季の夜間や寒冷地では、温度低下した液冷媒が圧縮機内の潤滑油(冷凍機油ともいう)に溶け込んだり、潤滑油の粘度が高くなることから、圧縮機駆動用のモータの始動に際して過剰な軸トルクが発生し、そのためモータの始動に失敗したり圧縮機の内部に損傷が生じる可能性がある。
【0003】
対策として、圧縮機が停止しているとき、インバータからモータに電流(モータ電流という)を流すことでモータの巻線(モータ巻線という)を発熱させ、その発熱によって圧縮機内の寝込み冷媒および潤滑油を予熱する制御が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭58-140571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記予熱の制御では、モータ電流の値をモータが回転を始めない程度に抑える必要がある。ただし、抑え過ぎると、十分な予熱ができなかったり、予熱に長い時間がかかるなどの不具合を生じる。また、予熱のためのモータ電流は、インバータにおける複数のスイッチ素子のうち特定のスイッチ素子を通してモータ巻線に流れる。このため、特定のスイッチ素子だけ動作期間が延びて、寿命が短くなるおそれがあるという不具合もある。
【0006】
本発明の実施形態の目的は、モータが回転を始めることなく圧縮機を十分に予熱することができ、しかもインバータのスイッチ素子の寿命が短くなる不具合を解消できる信頼性にすぐれた冷凍サイクル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態の冷凍サイクル装置は、互いに非接続状態の複数の相巻線を有する圧縮機駆動用のモータと;前記各相巻線の一端への通電を制御する第1インバータと;前記各相巻線の他端への通電を制御する第2インバータと;前記モータの停止時、前記各相巻線の一端から他端へ流れる零軸電流および前記各相巻線の他端から一端へ流れる零軸電流が交互に生じるよう、前記第1および第2インバータを制御する制御手段と;を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態の構成を示す図。
図2図2は、一実施形態におけるモータ駆動部の構成および各相巻線に流れる正方向の零軸電流の経路を示す図。
図3図3は、一実施形態の巻線加熱制御条件を示す図。
図4図4は、一実施形態におけるモータ制御部の制御を示すフローチャート。
図5図5は、一実施形態における巻線加熱動作時の各インバータのオン,オフデューティ変化を示す図。
図6図6は、一実施形態における巻線加熱動作時の各インバータのオン,オフパターンを示す図。
図7図7は、一実施形態における各相巻線に流れる負方向の零軸電流の経路を示す図。
図8図8は、一実施形態における各相巻線に流れる各零軸電流の波形を示す図。
図9図9は、一実施形態における各相巻線に流れる交流零軸電流の値と外気温度との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、モータ1Mを駆動用モータとして内蔵する密閉型の圧縮機1の吐出口に、四方弁2を介して室外熱交換器3の一端が配管接続され、その室外熱交換器3の他端に減圧器である電動膨張弁4を介して室内熱交換器11の一端が配管接続されている。そして、室内熱交換器11の他端が上記四方弁2を介して圧縮機1の吸込口に配管接続されている。これら冷凍サイクル部品の配管接続により、冷房および暖房が可能な空気調和機用のヒートポンプ式冷凍サイクルが構成されている。
【0010】
モータ1Mは、複数の相巻線を有する永久磁石同期モータであり、例えば後述する3つの相巻線Lu,Lv,Lwを互いに非接続状態とした構成のオープン巻線モータ(Open-Windings Motor)である。電動膨張弁4は、供給される駆動パルスの数に応じて開度が連続的に変化するパルス・モータ・バルブ(PWM)である。
【0011】
冷房運転時、図1中に実線矢印で示すように、圧縮機1から吐出されるガス冷媒が四方弁2を介して室外熱交換器3に流れる。室外熱交換器3に流れた高温のガス冷媒は、外気に熱を放出して凝縮する。この室外熱交換器(凝縮器)3から流出する液冷媒は、電動膨張弁4で減圧された状態で室内熱交換器11に流れる。室内熱交換器11に流れた液冷媒は、室内空気から熱を奪って蒸発する。この室内熱交換器(蒸発器)11から流出するガス冷媒は、四方弁2を通って圧縮機1に吸い込まれる。暖房運転時は、四方弁2の流路が切換わることにより、図1中に破線矢印で示すように、圧縮機1から吐出される高温のガス冷媒が四方弁2を介して室内熱交換器11に流れる。室内熱交換器11に流れたガス冷媒は、室内空気に熱を放出して凝縮する。この室内熱交換器(凝縮器)11から流出する液冷媒は、電動膨張弁4で減圧されて室外熱交換器3に流れる。室外熱交換器3に流れた液冷媒は、外気から熱を奪って蒸発する。この室外熱交換器(蒸発器)3から流出するガス冷媒は、四方弁2を通って圧縮機1に吸い込まれる。
【0012】
室外熱交換器3の近傍に室外ファン5が配置され、その室外ファン5の外気吸込み風路に、外気温度Toを検知する外気温度センサ6が配置されている。室内熱交換器11の近傍に室内ファン12が配置され、その室内ファン12の室内空気吸込み風路に、室内温度Taを検知する室内温度センサ13が配置されている。
【0013】
上記圧縮機1、四方弁2、室外熱交換器3、電動膨張弁4、室外ファン5などの冷凍サイクル部品および外気温度センサ6は、室外制御部7と共に室外ユニットAに収容されている。上記室内熱交換器11、室外ファン12などの冷凍サイクル部品および室内温度センサ13は、室内制御部14と共に室内ユニットBに収容されている。
【0014】
室外制御部7は、図2に示すように圧縮機1を駆動するモータ駆動部20を備える。このモータ駆動部20の構成について説明する。
3相交流電源10にノイズフィルタ21を介してダイオードブリッジ回路や平滑コンデンサ等からなる直流電源回路22が接続され、その直流電源回路22の出力端とモータ1Mの相巻線Lu,Lv,Lwの一端との間に、相巻線Lu,Lv,Lwの一端への通電を制御するインバータ(第1インバータやマスタインバータともいう)30が接続されている。モータ1Mは圧縮機1内部に収納され、圧縮機構部を回転駆動する。
【0015】
直流電源回路22の出力端とモータ1Mの相巻線Lu,Lv,Lwの他端との間に、相巻線Lu,Lv,Lwの他端への通電を制御するインバータ(第2インバータやスレーブインバータともいう)40が接続されている。このモータ駆動部20は、インバータ30,40を共通の直流電源回路22に接続する電源共通方式を採用している。電源共通方式に限らず、インバータ30,40を別々の直流電源回路に接続する電源絶縁方式を採用してもよい。
【0016】
インバータ30は、スイッチ素子である例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)31,32を直列接続しそのIGBT31,32の相互接続点が相巻線Luの一端に接続されるU相直列回路、IGBT33,34を直列接続しそのIGBT33,34の相互接続点が相巻線Lvの一端に接続されるV相直列回路、IGBT35,36を直列接続しそのIGBT35,36の相互接続点が相巻線Lwの一端に接続されるW相直列回路を主回路として含む。IGBT31~36には、回生用ダイオード(フリー・ホイール・ダイオードともいう)31a~36aが逆並列接続されている。
【0017】
インバータ40は、IGBT41,42を直列接続しそのIGBT41,42の相互接続点が相巻線Luの他端に接続されるU相直列回路、IGBT43,44を直列接続しそのIGBT43,44の相互接続点が相巻線Lvの他端に接続されるV相直列回路、IGBT45,46を直列接続しそのIGBT45,46の相互接続点が相巻線Lwの他端に接続されるW相直列回路を主回路として含む。IGBT41~46には、回生用ダイオード41a~46aが逆並列接続されている。
【0018】
インバータ30は、3相インバータであり、2つのスイッチ素子の直列回路を3組並列に接続してなる主回路と、この主回路の6つのスイッチ素子を駆動する駆動回路などの周辺回路とを、単一のパッケージに収納したモジュールいわゆるIPM(Intelligent Power Module)である。インバータ40も、同じ構成のIPMからなる。
【0019】
相巻線Luの他端と相巻線Lvの他端との相互間に、開閉器たとえばリレー51の常開形接点(リレー接点という)51aが接続されている。相巻線Lvの他端と相巻線Lwの他端との相互間に、開閉器たとえばリレー52の常開形接点(リレー接点という)52aが接続されている。リレー51,52は、後述のモータ制御部23により、付勢および消勢が互いに同期した状態で制御される。リレー接点51a,52aが閉成すると、相巻線Lu,Lv,Lwの他端が相互接続されて相巻線Lu,Lv,Lwが星形結線状態となる。リレー接点51a,52aが開放すると、相巻線Lu,Lv,Lwが非接続状態(オープン状態)となって各相巻線Lu,Lv,Lwが電気的に分離する。
【0020】
インバータ30と相巻線Lu,Lv,Lwの一端との間の各通電ラインに電流センサ53u,53v,53wが配置され、これら電流センサ53u,53v,53wの検知信号がモータ制御部23に送られる。このモータ制御部23に、リレー51,52を付勢または消勢するリレー駆動部24が接続されている。
【0021】
モータ制御部23は、モータ1Mの停止時(圧縮機1の停止時)はリレー接点51a,52aを開放して相巻線Lu,Lv,Lwの非接続状態を保つが、モータ1Mの起動に際してはリレー接点51a,52aを閉成して相巻線Lu,Lv,Lwを星形結線しかつインバータ30を単独でスイッチングする星形結線モードを設定する。そして、モータ制御部23は、インバータ30による強制転流等の通電によるモータ1Mの起動後、電流センサ53u,53v,53wの検知結果からモータ1Mの速度(回転数)を推定し、その推定速度がモータ制御部23から指令される目標速度となるようにインバータ30の単独スイッチングを制御する、いわゆるセンサレスベクトル制御を実行する。このインバータ30の単独スイッチング中、インバータ40は、オフ状態、すなわちすべてのスイッチング素子がオフ状態に保持される。目標速度が低い間は、モータ1Mはインバータ30のみで駆動され、空調運転が継続される。続いて、モータ制御部23は、目標速度が増加して、モータ1Mの推定速度が上昇して所定の高速度運転域に入った段階で、リレー接点51a,52aを開放して相巻線Lu,Lv,Lwを非接続状態としかつインバータ30,40を互いに協調してスイッチングするオープン巻線モードを設定し、推定速度が目標速度となるようにそのインバータ30,40の協調スイッチングを制御するセンサレスベクトル制御を実行する。但し、このオープン巻線モードの場合、星形結線状態等で用いられる一般的な駆動波形では零軸電流が発生する。この零軸電流はモータ1Mの運転中においては、単にロスとなるため、各インバータ30,40のスイッチング波形を制御することで、極力零軸電流を流さないように制御している。
【0022】
なお、目標速度は空気調和機の負荷の大きさに基づいて室外制御部7において決定される。負荷の大きさは、例えば室内温度センサ13で検知される室内温度Taと予め定められた設定温度の差やその差の変化に基づき判別される。
【0023】
圧縮機1の停止時(モータ1Mが停止し相巻線Lu,Lv,Lwが非接続状態)、外気温度センサ6で検知される外気温度Toが閾値To2(例えば0℃)未満にある場合(低外気温度状態)、モータ制御部23は、モータ1Mの停止中の圧縮機1の予熱運転として、リレー駆動部24によってリレー52,51を開放状態に維持したまま、相巻線Lu,Lv,Lwの一端から他端へ向け互いに同じ値で流れる零軸電流Iu0,Iv0,Iw0および相巻線Lu,Lv,Lwの他端から一端へ向け互いに同じ値で流れる零軸電流Iu0,Iv0,Iw0が交互に生じるよう、インバータ30,40の各スイッチ素子をオン,オフ制御する。この零軸電流Iu0,Iv0,Iw0が流れることで、相巻線Lu,Lv,Lwが発熱する。モータ1Mはその相巻線Lu,Lv,Lwを含め、圧縮機構とともに圧力容器でなる圧縮機1の内部に収納されている、このため、相巻線Lu,Lv,Lwが加熱されれば圧縮機1内部の冷媒や圧縮機構のための潤滑油の温度が上昇する。
【0024】
つぎに、圧縮機1の停止時にモータ制御部23が実行する制御を図3の巻線加熱制御条件および図4のフローチャートを参照しながら説明する。フローチャート中のステップS1,S2…については、単にS1,S2…と略称する。
【0025】
モータ制御部23は、外気温度Toが閾値To2未満であるか否かを判定する(S1)。外気温度Toが閾値To2未満でない場合(S2のNO)、モータ制御部23は、外気温度Toが閾値“To2+ΔT”以上であるか否かを判定する(S3)。外気温度Toが閾値“To2+ΔT”以上でない場合(S3のNO)、モータ制御部23は、上記S1の判定に戻る。
【0026】
外気温度Toが閾値To2未満に低下した場合(S1のYES)、モータ制御部23は、巻線加熱動作を開始する(S2)。すなわち、モータ制御部23は、図5に示すように、外気温度Toが閾値To2に近い高めの領域にあれば、キャリア信号の一周期Tにおいて52%から48%の範囲で正弦波状に変化するオン,オフデューティで、インバータ30の上流側のIGBT31,33,35と下流側の32,34,36をオン,オフし、そのインバータ30側のオン,オフとは逆位相の48%から52%の範囲で正弦波状に変化するオン,オフデューティで、インバータ40の上流側のIGBT41,43,45と下流側の42,44,46をオン,オフする。外気温度Toが閾値To2から離れた低めの領域にあれば、キャリア信号の一周期Tにおいて58%から42%の広い範囲で正弦波状に変化するオン,オフデューティで、インバータ30の上流側のIGBT31,33,35と下流側の32,34,36をオン,オフし、そのインバータ30側のオン,オフとは逆位相の48%から52%の範囲で正弦波状に変化するオン,オフデューティで、インバータ40の上流側のIGBT41,43,45と下流側の42,44,46をオン,オフする。
【0027】
インバータ30の上流側のIGBT31,33,35と下流側の32,34,36が52%のオン,オフデューティでオン,オフし、インバータ40の上流側のIGBT41,43,45と下流側の42,44,46が48%のオン,オフデューティでオン,オフするタイミングでは、図6に示すように、インバータ30の上流側のIGBT31,33,35がオンして下流側のIGBT32,34,36がオフする期間の中心(キャリア信号の一周期Tの1/2のタイミング)と、インバータ40の上流側のIGBT41,43,45がオンして下流側のIGBT42,44,46がオフする期間の中心(キャリア信号の一周期Tの1/2のタイミング)とが重なり、かつインバータ30の上流側のIGBT31,33,35がオンして下流側のIGBT32,34,36がオフする期間の両側が、インバータ40の上流側のIGBT41,43,45がオンして下流側のIGBT42,44,46がオフする期間の両側よりも、デューティ差で決まるΔt時間ずつ長くなる。
【0028】
これらΔt時間において、図2に破線矢印で示すように、直流電源回路22の正側出力端からインバータ30のIGBT31,33,35を通る経路で相巻線Lu,Lv,Lwの一端から他端へ正方向の零軸電流Iu0,Iv0,Iw0が流れ、その相巻線Lu,Lv,Lwの他端を経た零軸電流Iu0,Iv0,Iw0がインバータ40のIGBT42,44,46を通る経路で直流電源回路22の負側出力端へと流れる。
【0029】
インバータ30の上流側のIGBT31,33,35と下流側の32,34,36が58%のオン,オフデューティでオン,オフし、インバータ40の上流側のIGBT41,43,45と下流側の42,44,46が42%のオン,オフデューティでオン,オフする外気温低めの領域では、Δt時間がそれぞれ長くなり、その分だけ、正方向の零軸電流Iu0,Iv0,Iw0の値が大きくなる。
【0030】
インバータ30の上流側のIGBT31,33,35と下流側の32,34,36が48%のオン,オフデューティでオン,オフし、インバータ40の上流側のIGBT41,43,45と下流側の42,44,46が52%のオン,オフデューティでオン,オフするタイミングでは、インバータ40の上流側のIGBT41,43,45がオンして下流側のIGBT42,44,46がオフする期間の両側が、インバータ30の上流側のIGBT31,33,35がオンして下流側のIGBT32,34,36がオフする期間の両側よりも、Δt時間ずつ長くなる。これらΔt時間において、図7に破線矢印で示すように、直流電源回路22の正側出力端からインバータ40のIGBT41,43,45を通る経路で相巻線Lu,Lv,Lwの他端から一端へ負方向の零軸電流Iu0,Iv0,Iw0が流れ、その相巻線Lu,Lv,Lwの一端を経た零軸電流Iu0,Iv0,Iw0がインバータ30のIGBT32,34,36を通って直流電源回路22の負側出力端へと流れる。
【0031】
インバータ40の上流側のIGBT41,43,45と下流側の42,44,46が58%のオン,オフデューティでオン,オフし、インバータ30の上流側のIGBT31,33,35と下流側の32,34,36が42%のオン,オフデューティでオン,オフする外気温低めの領域では、Δt時間がそれぞれ長くなり、その分だけ、負方向の零軸電流Iu0,Iv0,Iw0の値が大きくなる。
【0032】
こうして、相巻線Lu,Lv,Lwの一端から他端へ向け流れる正方向の零軸電流Iu0,Iv0,Iw0と相巻線Lu,Lv,Lwの他端から一端へ向け流れる負方向の零軸電流Iu0,Iv0,Iw0からなる交流零軸電流Ioにより、相巻線Lu,Lv,Lwが発熱する。この発熱により、圧縮機1内の寝込み冷媒および潤滑油が予熱される。この予熱により、次の圧縮機1の起動に際し、圧縮機1に加わる起動負荷が軽減され、圧縮機1が滑らかにかつ速やかに起動する。
【0033】
零軸電流Iu0,Iv0,Iw0の波形、およびこれら零軸電流Iu0,Iv0,Iw0からなる交流零軸電流Ioの波形の例を図8に示す。
正方向の零軸電流Iu0,Iv0,Iw0の値は互いに同じであり、負方向の零軸電流Iu0,Iv0,Iw0の値も互いに同じであり、しかもオン,オフデューティの大きい方のインバータの巻線通電期間にオン,オフデューティの小さい方のインバータの巻線通電期間が収まった状態で重なるので、モータ1Mに回転トルクが生じない。よって、モータ1Mを回転させることなく、相巻線Lu,Lv,Lwを発熱させることができる。
【0034】
モータ1Mが回転を始めないので、零軸電流Iu0,Iv0,Iw0の値を圧縮機1の予熱に十分な値に高めることができる。しかも、零軸電流Iu0,Iv0,Iw0の生成に際して正弦波状に変化するオン,オフデューティで、インバータ30,40を駆動したため、インバータ30,40の全てのIGBTが均等の時間ずつオン,オフ動作するので、特定のIGBTのみに電流が流れてその特定のIGBTだけ寿命が短くなるという不具合は生じない。
【0035】
上記S2の巻線加熱動作の開始後、外気温度Toがまだ閾値To2未満の場合(S1のYES)、モータ制御部23は、巻線加熱を継続する(S2)。
上記S2の巻線加熱動作の実行中、外気温度Toが閾値To2以上に上昇した場合(S2のNO)、モータ制御部23は、外気温度Toが閾値“To2+ΔT”以上であるか否かを判定する(S3)。外気温度Toが閾値“To2+ΔT”以上でない場合(S3のNO)、モータ制御部23は、上記S1の判定に戻る。
【0036】
外気温度Toが閾値To2以上で(S2のNO)、かつ外気温度Toが閾値“To2+ΔT”以上の場合(S3のYES)、モータ制御部23は、巻線加熱動作を終了もしくは巻線加熱不動作状態を維持する(S4)。
【0037】
なお、巻線加熱動作時の零軸電流Iu0,Iv0,Iw0の値については、図9に示すように、外気温度Toが閾値To2とそれより低い閾値To1との間で線形的に変化させる制御を採用してもよい。すなわち、モータ制御部23は、巻線加熱動作時、外気温度Toが低いほど各IGBTのオン,オフデューティを大きくして零軸電流Iu0,Iv0,Iw0の値を増やす。これにより、圧縮機1の予熱にかかる時間を外気温度Toの高低にかかわらずほぼ一定の状態に保つことができる。また、極端な低外気温状況においても必要十分な熱量を供給することができる。
【0038】
さらに、圧縮機1の内部や外表面の温度を検出するセンサを設けてその検出温度が一定となるように各IGBTのオン,オフデューティを変化させても良い。
また、巻線加熱時にはインバータ30とインバータ40の各スイッチング素子であるIGBTを逆位相の正弦波状に変化するオン,オフデューティで駆動した。騒音振動発生などの面からは正弦波状で駆動することが好ましいと考えられるが、インバータ30とインバータ40の各スイッチング素子にほぼ均等な電流が流れるオン,オフパターンであれば正弦波状でなくとも良い。
【0039】
上記実施形態および変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な各実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、書き換え、変更を行うことができる。これら実施形態や変形は、発明の範囲は要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
A…室外ユニット、1…圧縮機、1M…オープン巻線モータ、Lu,Lv,Lw…相巻線、6…外気温度センサ、7…室外制御部、20…モータ駆動部、23…モータ制御部、30…インバータ(第1インバータ)、40…インバータ(第2インバータ)、51a,52a…リレー接点(開閉器)。
図1
図2
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図7
図8
図9