(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045801
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/16 20060101AFI20230327BHJP
【FI】
G03G15/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154376
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096426
【弁理士】
【氏名又は名称】川合 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100116207
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 俊明
(72)【発明者】
【氏名】古川 貴朗
【テーマコード(参考)】
2H200
【Fターム(参考)】
2H200FA02
2H200JB13
2H200JB39
2H200JB49
2H200JC04
2H200JC15
2H200JC17
2H200MA03
2H200MA06
2H200MC01
2H200MC11
2H200PA13
2H200PA14
2H200PA19
(57)【要約】
【課題】長期間放置されても転写不良が発生することがなく、画像品位を向上させることができるようにする。
【解決手段】環状ベルトと、第1の回動軸を備え、断面が円形の形状を有する接触部材と、第2の回動軸を備え、断面が円形の形状を有する転写部材と、接触部材及び転写部材のうちのいずれか一方を環状ベルトの走行方向に移動自在に保持する保持部材と、環状ベルトを駆動する走行用の駆動部と、環状ベルトが駆動されていないときに、駆動されているときより第1、第2の回動軸間の距離を短くする回動軸間距離変更処理部とを有する。印刷が行われる際に、画像形成装置が長期間放置されて発生した環状ベルトの変形の形状と、下流側の接触部材及び転写部材のニップ部の形状とが一致しなくなる。逆転写量を少なくすることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)環状ベルトと、
(b)該環状ベルトの外側に配設され、第1の回動軸を備え、断面が円形の形状を有する接触部材と、
(c)前記環状ベルトを介して前記接触部材に接触させられ、第2の回動軸を備え、断面が円形の形状を有する転写部材と、
(d)前記接触部材及び前記転写部材のうちのいずれか一方を前記環状ベルトの走行方向に移動自在に保持する保持部材と、
(e)前記環状ベルトを駆動する走行用の駆動部と、
(f)前記環状ベルトが駆動されていないときに、駆動されているときより前記第1、第2の回動軸間の距離を短くする回動軸間距離変更処理部とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記保持部材は前記転写部材を移動自在に保持する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
(a)前記環状ベルトが駆動されていないときに、前記転写部材は第1の位置に置かれ、
(b)前記環状ベルトが駆動されているときに、前記転写部材は前記第1の位置より前記環状ベルトの走行方向における下流側に置かれる請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
(a)前記環状ベルトが駆動されていないときの環境情報を取得する環境情報取得処理部を有するとともに、
(b)前記回動軸間距離変更処理部は、画像形成装置が特定環境下に放置されたときに前記第1、第2の回動軸間の距離を変更する請求項1~3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
(a)前記環状ベルトが駆動されていないときの環境情報を取得する環境情報取得処理部を有するとともに、
(b)前記回動軸間距離変更処理部は、画像形成装置が放置された環境情報に応じて前記第1、第2の回動軸間の距離を変更する請求項1~3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
(a)前記接触部材及び前記転写部材は前記環状ベルトの走行方向において複数配設され、
(b)前記保持部材は前記各転写部材を一括して保持する請求項1~5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記保持部材は前記接触部材を移動自在に支持する請求項1に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタ、複写機、ファクシミリ装置、複合機等の画像形成装置、例えば、電子写真式のカラーのプリンタは複数の画像形成ユニットを備え、該各画像形成ユニットにおいて、帯電ローラによって一様に帯電させられた感光体ドラムの表面が露光装置によって露光されて静電潜像が形成され、現像ローラによって静電潜像が現像されて感光体ドラム上に各色のトナー像が形成されるようになっている。そして、中間転写部材として転写ベルトを使用するプリンタにおいては、一次転写部において各色のトナー像が転写ベルトに順次重ねて転写されてカラーのトナー像が形成され、該カラーのトナー像が、二次転写部において用紙に転写され、続いて、定着器において用紙に定着させられてカラーの画像が形成される(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のプリンタにおいては、前記一次転写部において転写ベルトが感光体ドラムと一次転写ローラとによって挟持されるので、プリンタを長期間放置すると、転写ベルトが局部的に変形してしまい、変形した転写ベルトを使用して印刷を行った場合に、転写不良が発生し、画像品位が低下してしまう。
【0005】
本発明は、前記従来のプリンタの問題点を解決して、長期間放置されても転写不良が発生することがなく、画像品位を向上させることができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのために、本発明の画像形成装置においては、環状ベルトと、該環状ベルトの外側に配設され、第1の回動軸を備え、断面が円形の形状を有する接触部材と、前記環状ベルトを介して前記接触部材に接触させられ、第2の回動軸を備え、断面が円形の形状を有する転写部材と、前記接触部材及び前記転写部材のうちのいずれか一方を前記環状ベルトの走行方向に移動自在に保持する保持部材と、前記環状ベルトを駆動する走行用の駆動部と、前記環状ベルトが駆動されていないときに、駆動されているときより前記第1、第2の回動軸間の距離を短くする回動軸間距離変更処理部とを有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、画像形成装置においては、環状ベルトと、該環状ベルトの外側に配設され、第1の回動軸を備え、断面が円形の形状を有する接触部材と、前記環状ベルトを介して前記接触部材に接触させられ、第2の回動軸を備え、断面が円形の形状を有する転写部材と、前記接触部材及び前記転写部材のうちのいずれか一方を前記環状ベルトの走行方向に移動自在に保持する保持部材と、前記環状ベルトを駆動する走行用の駆動部と、前記環状ベルトが駆動されていないときに、駆動されているときより前記第1、第2の回動軸間の距離を短くする回動軸間距離変更処理部とを有する。
【0008】
この場合、環状ベルトが駆動されていないときに、駆動されているときより第1、第2の回動軸間の距離が短くされるので、印刷が行われる際に、画像形成装置が長期間放置されて発生した環状ベルトの変形の形状と、下流側の接触部材及び転写部材のニップ部の形状とが一致しなくなる。
【0009】
したがって、環状ベルトの変形した部分が接触部材と接触する接触面積が小さくなるので、逆転写量を少なくすることができ、転写不良が発生することがない。その結果、画像品位を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態におけるプリンタの制御ブロック図である。
【
図2】本発明の実施の形態におけるプリンタの概念図である。
【
図3】転写ベルトの変形の第1の例を示す図である。
【
図4】感光体ドラムと第1の例のように変形した転写ベルトとの接触状態を示す図である。
【
図5】転写ベルトの変形の第2の例を示す図である。
【
図6】感光体ドラムと第2の例のように変形した転写ベルトとの接触状態を示す図である。
【
図7】本発明の実施の形態におけるプリンタを放置状態及び印刷状態に置いたときの軸ずらし量と、軸ずらし量の増加量と白スジレベルとの関係を示す図である。
【
図8】本発明の実施の形態における軸ずらし量の増加量ごとに白スジレベルをプロットした図である。
【
図9】本発明の実施の形態における制御部の動作を示すフローチャートである。
【
図10】本発明の実施の形態におけるプリンタが放置状態に置かれたときの感光体ドラムと一次転写ローラとの関係を説明するための図である。
【
図11】本発明の実施の形態における転写ベルトの変形を示す図である。
【
図12】本発明の実施の形態におけるプリンタが印刷状態に置かれたときの感光体ドラムと一次転写ローラとの関係を説明するための図である。
【
図13】本発明の実施の形態におけるプリンタが放置された環境に応じて変更される軸ずらし量の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この場合、転写装置及び画像形成装置としてのプリンタについて説明する。
【0012】
図2は本発明の実施の形態におけるプリンタの概念図である。
【0013】
図において、10は長尺状の媒体としての用紙Pに対して印刷を行うプリンタ、11は用紙Pに画像を形成する印刷部、12は該印刷部11に用紙Pを供給する給紙部としてのフィーダ部、Cs1は印刷部11の筐体である主筐体部、Cs2はフィーダ部12の筐体である副筐体部、Bdは印刷部11の本体部、すなわち、装置本体である。前記フィーダ部12は、前記用紙Pをロール状に巻くことによって形成されたロール紙14がセットされたロール紙収容部16を備え、該ロール紙収容部16から用紙Pが、フィーダ部12及び印刷部11にわたって延在させて形成された媒体搬送路としての用紙搬送路Rt1に繰り出される。
【0014】
前記主筐体部Cs1は、前壁Wf、背壁Wr、頂壁Wt、並びに前壁Wf側から後方を見たときの図示されない左側の第1の側壁及び図示されない右側の第2の側壁を備える。
【0015】
次に、装置本体Bdについて説明する。
【0016】
該装置本体Bdの下部には、前壁Wfに形成された供給口h1と背壁Wrに形成された排出口h2との間に延在させて前記用紙搬送路Rt1が配設され、供給口h1にフィーダ部12が接続され、排出口h2の装置本体Bd外側に、媒体積載部としてのスタッカskが取り付けられる。
【0017】
また、前記装置本体Bdの上部には、特色、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの各色の画像形成ユニット20S、20Y、20M、20C、20Bkが、背壁Wr側から前壁Wf側にかけて並べて配設され、各画像形成ユニット20S、20Y、20M、20C、20Bkに配設された像担持体としての、第1の回転体としての、かつ、接触部材としての各感光体ドラム21より上方に、各感光体ドラム21と対向させて、露光装置(露光部)としてのLEDヘッドHdが配設される。該各LEDヘッドHdは、画像データに対応するパターンの光を各感光体ドラム21の表面に照射して感光体ドラム21の表面を露光し、潜像としての静電潜像を形成する。
【0018】
次に、各画像形成ユニット20S、20Y、20M、20C、20Bkについて説明する。
【0019】
画像形成ユニット20S、20Y、20M、20C、20Bkは、特色、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックのトナーをそれぞれ収容する現像剤収容体としての図示されないトナー収容部を備える。
【0020】
前記各画像形成ユニット20S、20Y、20M、20C、20Bkは、前記感光体ドラム21に当接させて回転自在に配設され、感光体ドラム21の回転に伴って連れ回りで回転させられ、感光体ドラム21の表面を一様に帯電させる帯電装置としての帯電ローラ22、感光体ドラム21に当接させて回転自在に配設され、LEDヘッドHdによって形成された静電潜像を現像して現像剤像としてのトナー像を形成する現像剤担持体としての現像ローラ23、該現像ローラ23に当接させて回転自在に配設され、現像ローラ23に現像剤としてのトナーを供給する供給部材としての供給ローラ24、転写後に感光体ドラム21の表面に残留したトナーを掻き取り除去する第1のクリーニング部材としてのクリーニングブレード25等を備える。なお、現像ローラ23、供給ローラ24等によって現像器が構成される。
【0021】
プリンタ10の図示されない電源部によって、帯電ローラ22に帯電電圧である帯電バイアスが印加され、現像ローラ23に現像電圧である現像バイアスが印加され、供給ローラ24に供給電圧である供給バイアスが印加される。
【0022】
なお、前記画像形成ユニット20S、20Y、20M、20C、20Bkは、後述される環状ベルトとしての転写ベルト44の走行方向における上流側から下流側にかけて並べて配設され、画像形成ユニット20Sが最も上流側に、画像形成ユニット20Bkが最も下流側に置かれる。
【0023】
前記画像形成ユニット20S、20Y、20M、20C、20Bkの下方には転写ユニットu1が配設される。該転写ユニットu1は、画像形成ユニット20Sの下方において回転自在に配設され、走行用の駆動部としての後述されるベルトモータM2(
図1)と連結され、該ベルトモータM2からの回転を受けて回転させられる第1のローラとしての駆動ローラR1、画像形成ユニット20Bkの下方において回転自在に配設され、前記駆動ローラR1の回転に伴って回転させられる第2のローラとしての従動ローラR2、駆動ローラR1及び従動ローラR2より下方において回転自在に配設され、駆動ローラR1の回転に伴って回転させられる第3のローラとしてのバックアップローラR3、前記駆動ローラR1、従動ローラR2及びバックアップローラR3によって走行自在に張設され、駆動ローラR1、従動ローラR2及びバックアップローラR3の回転に伴って、各画像形成ユニット20S、20Y、20M、20C、20Bkに沿って矢印A方向に走行させられる環状ベルトとしての、かつ、中間転写部材としての転写ベルト44、該転写ベルト44を介して画像形成ユニット20S、20Y、20M、20C、20Bkの各感光体ドラム21とそれぞれ対向させて配設された第2の回転体としての、第1の転写部材としての、かつ、第1の転写ローラとしての一次転写ローラ45、転写ベルト44を介して前記バックアップローラR3と対向させて配設された第2の転写部材としての、かつ、第2の転写ローラとしての二次転写ローラ46、転写ベルト44の走行方向におけるバックアップローラR3より下流側で、かつ、駆動ローラR1より上流側において、転写ベルト44の表面側から転写ベルト44に圧接させて回転自在に配設され、転写ベルト44の走行に伴って回転させられる逆屈曲部材としての逆屈曲ローラ53、前記転写ベルト44を介して逆屈曲ローラ53と対向させて配設され、転写ベルト44の走行に伴って連れ回りで回転させられる対向ローラ54、前記従動ローラR2より上流側及び下流側において回転自在に配設され、転写ベルト44にテンションを与えるテンションローラ55、56、逆屈曲ローラ53より下流側で、かつ、駆動ローラR1より上流側において、転写ベルト44の外面側から転写ベルト44に圧接させて配設され、転写ベルト44に残留したトナー等を掻き取り除去する第2のクリーニング部材としてのクリーニングブレード58、転写ベルト44を介してクリーニングブレード58と対向させて回転自在に配設された対向ローラ59、転写ベルト44を介して駆動ローラR1と対向させて配設され、転写ベルト44上の画像濃度を検出する濃度センサs1等を備える。
【0024】
前記各一次転写ローラ45は、各画像形成ユニット20S、20Y、20M、20C、20Bkにおいて感光体ドラム21上に形成される各色のトナー像を順次重ねて転写ベルト44に転写(一次転写)し、転写ベルト44上にカラーのトナー像を形成する。そのために、各一次転写ローラ45は、各感光体ドラム21に向けて付勢され、転写ベルト44を介して感光体ドラム21と接触させられ、各一次転写ローラ45と各感光体ドラム21との間に一次転写部が形成される。
【0025】
また、前記各一次転写ローラ45は保持部材としてのフレームFrによって一括して保持される。該フレームFr内に、各一次転写ローラ45の後述される回動軸C45(第2の回動軸)(
図10)を回転自在に支持する図示されない軸受、該軸受を介して一次転写ローラ45を感光体ドラム21の回動軸C21(第1の回動軸)の方向に付勢する付勢部材としての図示されないスプリング等が配設される。そして、前記フレームFrは、転写ベルト44の走行方向、すなわち、各一次転写ローラ45の回動軸C45に対して直交する矢印B方向(転写ベルト44の走行方向)に移動自在に配設される。そのために、装置本体Bd内に移動機構変換機構、本実施の形態においては、図示されないラックアンドピニオンが配設され、フレームFrにラックが取り付けられ、フレームFrの移動用の駆動部としての後述される軸移動モータM3にピニオンが連結される。軸移動モータM3を駆動し、回転させると、フレームFrが軸移動モータM3の回転に応じた量矢印B方向に移動させられ、各一次転写ローラ45が転写ベルト44の走行方向における下流側に移動させられる。なお、前記回動軸C21によって第1の中心位置が、前記回動軸C45によって第2の中心位置が構成される。
【0026】
前記二次転写ローラ46は、転写ベルト44上に形成されたカラーのトナー像を用紙Pに転写(二次転写)し、用紙Pにカラーのトナー像を形成する。そのために、二次転写ローラ46はバックアップローラR3に向けて付勢され、二次転写ローラ46とバックアップローラR3との間に二次転写部が形成される。
【0027】
前記逆屈曲ローラ53及び対向ローラ54は、用紙P上に画像を形成するに当たり、位置ずれが生じるのを防止するために配設される。
【0028】
そして、前記用紙搬送路Rt1における前記二次転写部より下流側に、定着装置(定着ユニット)としての定着器61が配設される。該定着器61は、回転自在に配設され、内部にハロゲンランプ等の熱源としての図示されないヒータを備えた第1の定着部材としての加熱ローラ62、及び該加熱ローラ62に当接させて回転自在に配設された第2の定着部材としての加圧ローラ63を備え、二次転写部から送られた用紙P上のカラーのトナー像を加熱し、加圧することによって用紙Pに定着させ、カラーの画像を形成する。なお、該カラーの画像においては、各色のトナー像のうちの特色のトナー像が最も上に形成される。
【0029】
次に、プリンタ10の動作について説明する。
【0030】
各画像形成ユニット20S、20Y、20M、20C、20Bkにおいて、帯電ローラ23によって感光体ドラム21の表面が一様に帯電させられると、LEDヘッドHdによって、画像データに対応するパターンの光が感光体ドラム21の表面に照射され、静電潜像が形成される。
【0031】
また、トナー収容部から供給ローラ24を介して現像ローラ23に供給されたトナーが、感光体ドラム21上の静電潜像と現像ローラ23との電位差によって感光体ドラム21に付着させられ、これにより、感光体ドラム21上にトナー像が形成される。
【0032】
そして、転写ユニットu1において転写ベルト44が走行させられ、前記一次転写部において、一次転写ローラ45によって各色のトナー像が順次重ねて転写ベルト44に転写され、転写ベルト44上にカラーのトナー像が形成される。
【0033】
一方、フィーダ部12においてロール紙収容部16から用紙搬送路Rt1に繰り出された用紙Pは、供給口h1を介して印刷部11に供給され、用紙搬送路Rt1を搬送され、二次転写部に送られる。
【0034】
該二次転写部において、二次転写ローラ46によってカラーのトナー像が用紙Pに転写され、用紙P上にカラーのトナー像が形成される。なお、一次転写部においては、転写ベルト44に、特色、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックのトナー像が順次転写され、二次転写部においては、用紙Pに、ブラックのトナー像を最も下に、特色のトナー像を最も上にして各トナー像が転写される。
【0035】
このようにして、用紙Pにカラーのトナー像が形成されると、用紙Pは定着器61に送られ、該定着器61において、カラーのトナー像が、加熱ローラ62によって加熱されて溶融させられ、加圧ローラ63によって加圧されて用紙Pに定着させられ、用紙P上にカラーの画像が形成される。カラーの画像が形成された用紙Pは、装置本体Bd外に排出され、スタッカskに積載される。
【0036】
次に、前記転写ベルト44について説明する。
【0037】
転写ベルト44の材料、すなわち、ベルト材料としては、耐久性及び機械的特性の観点から、走行させるときの変形が一定範囲に収まり、また、駆動ローラR1、従動ローラR2等の各ローラとの摺動を繰り返し受けることによる、縁部の摩耗、折れ、割れ等の損傷を受けにくい材料を使用するのが望ましく、例えば、ヤング率が2000〔Mpa〕以上、好ましくは、3000〔Mpa〕以上のポリアミドイミド(PAI)が使用される。ポリアミドイミドのほかに、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等、又はこれらを混合した樹脂を使用することもできる。
【0038】
転写ベルト44を回転成型方法によって製造するに当たり、溶媒は使用されるベルト材料によって適宜決定されるが、非プロトン性極性溶媒、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルスルホキシド等のほかに、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ピリジン、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホン等が使用される。これらは単独で使用したり、混合溶媒として使用したりすることができる。
【0039】
また、ベルト材料に添加される導電剤としてカーボンブラックが使用され、カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等を、単独で、又は複数で使用することができるが、転写ベルト44に必要とされる導電性を考慮し、特に、チャンネルブラック又はファーネスブラックを使用するのが好ましい。必要に応じて、酸化処理、グラフト処理等の酸化・劣化防止を施したもの、溶媒への分散性を向上させたもの等が使用される。
【0040】
カーボンブラックの含有量は、転写ベルト44に必要とされる機械的強度等から、樹脂固形分に対し、3〔重量%〕以上、かつ、40〔重量%〕以下、好ましくは、3〔重量%〕以上、かつ、30〔重量%〕以下にされる。
【0041】
なお、転写ベルト44に導電性を与えるためには、カーボンブラックを使用するほかに、イオン導電剤を使用することもできる。イオン導電剤としては、過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、テトラフルオロボラン酸リチウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸リチウム等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、4級アンモニウム塩等を使用することができる。
【0042】
転写ベルト44を製造する際に、まず、前記ベルト材料とカーボンブラックとを適量配合し、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)によって攪拌混合し、回転成型によって、所定の膜厚、及び所定の内径になるように成型し、ベルト基材を作製する。
【0043】
次に、作製したベルト基材を金型の外周面にセットし、スプレー塗装、ローラ塗装、ディップ塗装等の塗装方法によってベルト基材の表面に表面コート層を形成する。表面コート層の膜厚は塗布する材料の濃度、塗布量等によって調整される。
【0044】
そして、表面コート層が形成されたベルト基材を、UV照射又は加熱によって硬化させた後、所定の幅に切断することによって転写ベルト44が形成される。
【0045】
ところで、前記一次転写部において、各一次転写ローラ45は、転写ベルト44の走行方向において感光体ドラム21よりわずかに下流側に配設され、スプリングの付勢力によって感光体ドラム21に押し付けられるようになっている。感光体ドラム21及び一次転写ローラ45は、いずれも断面が円形の形状を有し、転写ベルト44を挟持するので、プリンタ10を長期間放置すると、転写ベルト44が局部的に変形して巻き癖が付く場合がある。
【0046】
すなわち、本実施の形態においては、各画像形成ユニット20S、20Y、20M、20C、20Bkにおいて、感光体ドラム21及び一次転写ローラ45の形状、硬度等の特性が等しくされるので、前述されたように、プリンタ10が、印刷が行われることなく、長期間放置されると、転写ベルト44が感光体ドラム21と一次転写ローラ45との間のニップ部で局部的に変形し、巻き癖が付くことがある。
【0047】
特に、プリンタ10が高温・高湿(HH)環境下において長期間放置されると、転写ベルト44は変形し、巻き癖が付きやすい。
【0048】
そして、変形し、巻き癖が付いた部分が転写ベルト44の走行に伴い、下流側の画像形成ユニットに到達すると、変形した分だけ感光体ドラム21との接触面積が大きくなり、ニップ部における転写ベルト44上のトナーが感光体ドラム21に付着する量、すなわち、逆転写量が多くなって、画像に横方向の白スジが形成されてしまう。
【0049】
図3は転写ベルトの変形の第1の例を示す図、
図4は感光体ドラムと第1の例のように変形した転写ベルトとの接触状態の例を示す図、
図5は転写ベルトの変形の第2の例を示す図、
図6は感光体ドラムと第2の例のように変形した転写ベルトとの接触状態を示す図である。
【0050】
図において、21は感光体ドラム、44は転写ベルト、45は一次転写ローラである。
【0051】
図3に示されるように、プリンタ10が長期間放置されたときに所定の画像形成ユニットにおいて転写ベルト44に付いた巻き癖ε1が小さい場合、
図4に示されるように、印刷が行われる際に下流側の画像形成ユニットにおいて、転写ベルト44の巻き癖ε1が付いた領域Ar1が感光体ドラム21と接触する。
【0052】
また、
図5に示されるように、プリンタ10が長期間放置されたときに所定の画像形成ユニットにおいて転写ベルト44に付いた巻き癖ε2が大きい場合、
図6に示されるように、印刷が行われる際に下流側の画像形成ユニットにおいて、転写ベルト44の巻き癖ε2が付いた領域Ar2が感光体ドラム21と接触する。
【0053】
そして、転写ベルト44に付いた巻き癖が大きいほど、転写ベルト44の巻き癖がついた領域の感光体ドラム21との接触面積が大きくなり、トナーの逆転写量が多くなる。
【0054】
そこで、本実施の形態においては、プリンタ10が長期間放置される場合に、ニップ部において転写ベルト44に大きい巻き癖が付くのが抑制されるようになっている。
【0055】
次に、プリンタ10の制御装置について説明する。
【0056】
図1は本発明の実施の形態におけるプリンタの制御ブロック図である。
【0057】
図において、10はプリンタ、PCは、有線又は無線のLAN等によってプリンタ10に接続された上位装置としてのホストコンピュータである。
【0058】
また、70は制御部、IFは、プリンタ10とホストコンピュータPCとを接続し、ホストコンピュータPCから印刷データ等を受信したり、プリンタ10のステータス情報をホストコンピュータPCに送信したりする通信部としてのインタフェース部、73は第1の記憶部としてのROM(Read Only Memory)、74は第2の記憶部としてのRAM(Random Access Memory)、76は操作・表示部としての操作パネル、s1は濃度センサ、s2は、前記装置本体Bd(
図2)内の温度を検出する第1の環境情報取得部としての、かつ、温度検出部としての温度センサ、s3は、装置本体Bd内の湿度を検出する第2の環境情報取得部としての、かつ、湿度検出部としての湿度センサである。
【0059】
前記温度センサs2及び湿度センサs3は画像形成ユニット20Sの近傍において転写ベルト44と対向させて配設される。
【0060】
また、22は帯電ローラ、23は現像ローラ、24は供給ローラ、45は一次転写ローラ、Dr1はLEDヘッドHdを駆動するヘッドドライバ、Dr2は、感光体ドラム21等を回転させる画像形成用の駆動部としての駆動モータM1を駆動するモータドライバ、Dr3は、ベルトモータM2を駆動し、転写ベルト44を走行させるモータドライバ、Dr4は軸移動モータM3を駆動するモータドライバである。前記駆動モータM1が駆動されると、感光体ドラム21が回転させられ、感光体ドラム21の回転に伴って帯電ローラ22が連回りで回転させられるとともに、現像ローラ23及び供給ローラ24が連動して回転させられる。
【0061】
前記制御部70は、図示されない演算装置としてのCPU(Central Processing Unit)、入出力ポート、タイマ等を備え、プリンタ10の全体の制御を行うとともに、ROM73に記録されたプログラム(ソフトウェア)、制御データ等に基づいて各種の処理を行う。
【0062】
前記ROM73には、前記プログラムのほかに、制御部70が前記各種の処理を行うために必要な設定値、閾値等が記録される。さらに、ROM73には、後述される環境情報取得処理部Pr4よって取得された温度及び湿度が記録される。なお、本実施の形態においては、ROM73として、書き換え可能なフラッシュROM等が使用される。
【0063】
また、前記RAM74には、前記印刷データに基づいて生成され、印刷を行うための画像データのほかに、プログラムの実行に伴って生成される各種情報が一時的に記録される。なお、前記RAM74は、前記CPUが演算を行う際にワークエリアとして機能する。
【0064】
前記操作パネル76は、操作者がプリンタ10への指示を入力するためのスイッチ、キー等から成る操作部78、及びプリンタ10の状態を表示するためのLED画面等から成る表示部79を備える。なお、操作パネル76がタッチパネルによって形成されている場合、表示部79は操作部としても機能する。
【0065】
また、前記制御部70は、印刷処理部Pr1、軸ずらし量変更条件判定処理部Pr2、回動軸間距離変更処理部としての軸ずらし量変更処理部Pr3、環境情報取得処理部Pr4等を備える。
【0066】
前記印刷処理部Pr1は、印刷処理を行い、ホストコンピュータPCから印刷データを受信すると、印刷データを画像データに変換し、該画像データに基づいて各LEDヘッドHdを駆動して用紙に画像を形成し、印刷を行う。
【0067】
前記軸ずらし量変更条件判定処理部Pr2は、軸ずらし量変更条件判定処理を行い、プリンタ10の置かれている状態が変化するかどうかによって、プリンタ10が軸ずらし量を変更する条件、すなわち、軸ずらし量変更条件が成立するかどうかを判断する。なお、軸ずらし量は、感光体ドラム21の回動軸C21と一次転写ローラ45の回動軸C45との距離(軸間距離)を表す。
【0068】
ここで、プリンタ10の電源がオフになっていて、プリンタ10がシャットダウン状態にある場合、又はプリンタ10の電源がオンになっていて、所定の時間、プリンタ10において印刷が行われておらず、転写ベルト44が走行させられていない場合を、プリンタ10が放置状態に置かれているとし、プリンタ10の電源がオンになっていて、印刷が行われ、転写ベルト44が走行させられている場合を、プリンタ10が印刷状態に置かれているとしたとき、前記軸ずらし量変更条件判定処理部Pr2は、現在、印刷状態に置かれているプリンタ10が放置状態に置かれる場合、及び現在、放置状態に置かれているプリンタ10が印刷状態に置かれる場合に、軸ずらし量変更条件が成立すると判断し、プリンタ10の置かれている状態が変化しない場合に、軸ずらし量変更条件が成立しないと判断する。
【0069】
前記軸ずらし量変更処理部Pr3は、回動軸間距離変更処理としての軸ずらし量変更処理を行い、軸ずらし量変更条件が成立する場合に、プリンタ10が置かれている状態が変化する直前に、フレームFr(
図2)を転写ベルト44の走行方向に移動させる。
【0070】
例えば、現在、印刷状態に置かれているプリンタ10が放置状態に置かれる場合、軸ずらし量変更処理部Pr3は、プリンタ10が放置状態に置かれる直前に、フレームFrを転写ベルト44の走行方向における上流側に移動させ、一次転写ローラ45の回動軸C45を転写ベルト44の走行方向における上流側に移動させて軸ずらし量を小さくする。
【0071】
これにより、感光体ドラム21の回動軸C21と一次転写ローラ45の回動軸C45との軸間距離である、第1、第2の回動軸間の距離が短くされる。
【0072】
また、現在、放置状態に置かれているプリンタ10が印刷状態に置かれる場合、軸ずらし量変更処理部Pr3は、プリンタ10が印刷状態に置かれる直前に、フレームFrを転写ベルト44の走行方向における下流側に移動させ、一次転写ローラ45の回動軸C45を転写ベルト44の走行方向における下流側に移動させて軸ずらし量を大きくする。
【0073】
これにより、前記第1、第2の回動軸間の距離が長くされる。
【0074】
前記軸ずらし量変更処理部Pr3は、軸ずらし量変更条件が成立しない場合、軸ずらし量を変化させないので、前記第1、第2の回動軸間の距離は変化させられない。
【0075】
なお、一次転写ローラ45は感光体ドラム21に向けてスプリングによって付勢されているので、前記軸ずらし量が変化するのに伴って、回動軸C45の位置は、転写ベルト44の走行方向だけでなく、高さ方向においても移動する。前記環境情報取得処理部Pr4は、環境情報取得処理を行い、プリンタ10が放置状態に置かれているときに、温度センサs2によって検出された温度、及び湿度センサs3によって検出された湿度から成る環境情報を取得し、ROM73に記録したり、ROM73から読み出したりする。
【0076】
次に、プリンタ10を放置状態及び印刷状態に置き、軸ずらし量を異ならせて9〔回〕の実験を行い、用紙Pに画像を形成したときの画像品位について説明する。
【0077】
この場合、所定の画像形成ユニットにおいて、感光体ドラム21と一次転写ローラ45との間に厚さの異なる各シムを挟むことによって、各画像形成ユニットにおける軸ずらし量を異ならせ、プリンタ10を、温度が28〔℃〕、湿度が80〔%〕の高温・高湿環境下に1週間放置した後、温度が28〔℃〕、湿度が80〔%〕の高温・高湿環境下に置いたまま、100〔%〕のベタ画像(印刷画像密度が100〔%〕の画像)を形成し、用紙Pに形成された画像の白スジを目視によって観察し、10段階にレベル付けをし、白スジレベル1~10における画像品位を評価した。
【0078】
なお、一次転写ローラ45に印加される一次転写電圧を1000〔V〕とし、バックアップローラR3に印加される二次転写電圧を1000〔V〕とした。
【0079】
実験結果を
図7及び8に示す。白スジレベルが8以上で画像品位は良好とされ、白スジレベルが7以下で画像品位は不良とされる。
【0080】
図7は本発明の実施の形態におけるプリンタを放置状態及び印刷状態に置いたときの軸ずらし量と、軸ずらし量の増加量と白スジレベルとの関係を示す図、
図8は本発明の実施の形態における軸ずらし量の増加量ごとに白スジレベルをプロットした図である。なお、
図8において、横軸に軸ずらし量の増加量Δeを、縦軸に白スジレベルを採ってある。
【0081】
各実験においては、プリンタ10を放置状態に置いたときの軸ずらし量をe1とし、プリンタ10を印刷状態に置いたときの軸ずらし量をe2とし、軸ずらし量e2から軸ずらし量e1を減算した値、すなわち、軸ずらし量の増加量をΔe
Δe=e2-e1
とし、軸ずらし量e1、e2を異ならせ、軸ずらし量の増加量Δeごとの白スジレベルを求めた。
【0082】
実験結果から、軸ずらし量の増加量Δeが大きくなるほど、白スジレベルが大きくなり、軸ずらし量の増加量Δeが小さくなるほど、白スジレベルが小さくなることが分かる。
【0083】
また、
図7に示されるように、実験1及び8のように軸ずらし量の増加量Δeが0〔mm〕である場合、白スジレベルがいずれも5になり、実験2及び9のように軸ずらし量の増加量Δeが1〔mm〕である場合、白スジレベルがいずれも7になる。このことから、放置状態の軸ずらし量e1及び印刷状態の軸ずらし量e2が異なっていても、軸ずらし量の増加量Δeが同じであれば白スジレベルが一致することがわかる。
【0084】
軸ずらし量の増加量Δeが1.5〔mm〕以上において白スジレベルが8以上になり、画像品位が向上する。軸ずらし量の増加量Δeが2.0〔mm〕より大きくなると、白スジレベルが10になり、画像に白スジが形成されることがなくなる。
【0085】
したがって、画像品位を向上させるためには、軸ずらし量の増加量Δeを、
1.5〔mm〕≦Δe
にするのが好ましい。
【0086】
なお、軸ずらし量の増加量Δeを大きくしすぎると、供給ローラ24が定位置からずれ、転写不良が生じるので、軸ずらし量の増加量Δeの最大値を5.0〔mm〕とする。
【0087】
したがって、軸ずらし量の増加量Δeを、
1.5〔mm〕≦Δe≦5.0〔mm〕
にするのが好ましい。
【0088】
なお、印刷状態の軸ずらし量e2が放置状態の軸ずらし量e1より小さく、軸ずらし量の増加量Δeが負の値を採る場合、プリンタ10を長期間放置すると、転写ベルト44に付く巻き癖が大きくなり、転写ベルト44が感光体ドラム21に巻き付いたようになり、感光体ドラム21との接触面積が一層大きくなり、トナーの逆転写量が一層多くなって白スジレベルが小さくなる。
【0089】
次に、プリンタ10の制御部70の動作について説明する。
【0090】
図9は本発明の実施の形態における制御部の動作を示すフローチャート、
図10は本発明の実施の形態におけるプリンタが放置状態に置かれたときの感光体ドラムと一次転写ローラとの関係を説明するための図、
図11は本発明の実施の形態における転写ベルトの変形を示す図、
図12は本発明の実施の形態におけるプリンタが印刷状態に置かれたときの感光体ドラムと一次転写ローラとの関係を説明するための図である。
【0091】
図において、21は感光体ドラム、C21は該感光体ドラム21の回動軸、44は転写ベルト、45は一次転写ローラ、C45は該一次転写ローラ45の回動軸である。
【0092】
まず、プリンタ10の電源がオフであり、プリンタ10が放置状態に置かれている場合、軸ずらし量変更処理部Pr2は、
図10に示されるように、一次転写ローラ45を、初期位置(第1の位置、例えば、軸ずらし量s1が2〔mm〕の位置)に置く(ステップS1)。初期位置において一次転写ローラ45の軸ずらし量は小さくされ、e1にされるので、
図11に示されるように、転写ベルト44に付いた巻き癖εは小さくされる。
【0093】
次に、軸ずらし量変更条件判定処理部Pr2は、プリンタ10が印刷状態に置かれるかどうかを判断する(ステップS2)。プリンタ10が印刷状態に置かれる場合、軸ずらし量変更処理部Pr3は、
図12に示されるように、一次転写ローラ45を初期位置から転写ベルト44の走行方向の下流側に移動させ、軸ずらし量を大きくし(ステップS3)、e2にし、基準位置(第2の位置、例えば、軸ずらし量e2が3.5〔mm〕の位置)に置く。
【0094】
続いて、印刷処理部Pr1は印刷処理を行う(ステップS4)。プリンタ10が放置状態に置かれているときに転写ベルト44に付いた巻き癖εが小さいので、転写ベルト44の走行方向における下流側の画像形成ユニットにおいて、巻き癖εの形状と感光体ドラム21と一次転写ローラ45との間のニップ部の形状とが一致しなくなる。したがって、一次転写ローラ45の巻き癖εの付いた部分が感光体ドラム21と接触する接触面積が小さくなるので、逆転写量を少なくすることができ、転写不良が発生することがなくなる。
【0095】
次に、軸ずらし量変更条件判定処理部Pr2は、プリンタ10が放置状態に置かれるかどうかを判断する(ステップS5)。プリンタ10が放置状態に置かれる場合、軸ずらし量変更処理部Pr3は、一次転写ローラ45を初期位置に戻し、軸ずらし量を小さくし(ステップS6)、e1にする。
【0096】
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS1 軸ずらし量変更処理部Pr3は一次転写ローラ45を初期位置に置く。
ステップS2 軸ずらし量変更条件判定処理部Pr2はプリンタ10が印刷状態に置かれるかどうかを判断する。プリンタ10が印刷状態に置かれる場合はステップS3に進み、プリンタ10が印刷状態に置かれない場合は処理を終了する。
ステップS3 軸ずらし量変更処理部Pr3は一次転写ローラ45の軸ずらし量を大きくする。
ステップS4 印刷処理部Pr1は印刷処理を行う。
ステップS5 軸ずらし量変更条件判定処理部Pr2はプリンタ10が放置状態に置かれるかどうかを判断する。プリンタ10が放置状態に置かれる場合はステップS6に進み、プリンタ10が放置状態に置かれない場合は処理を終了する。
ステップS6 軸ずらし量変更処理部Pr3は一次転写ローラ45の軸ずらし量を小さくし、処理を終了する。
【0097】
このように、本実施の形態においては、転写ベルト44が走行させられていない、すなわち、プリンタ10が放置状態に置かれているときに、走行させられている、すなわち、プリンタ10が印刷状態に置かれているときより感光体ドラム21の回動軸C21と一次転写ローラ45の回動軸C45との間の距離が短くされるので、印刷が行われる際に、プリンタ10が長期間放置されて転写ベルト44に付いた巻き癖εの形状と下流側の画像形成ユニットにおける感光体ドラム21及び一次転写ローラ45のニップ部の形状とが一致しなくなる。
【0098】
したがって、巻き癖εの付いた部分が感光体ドラム21と接触する接触面積が小さくなるので、逆転写量を少なくすることができ、転写不良が発生することがなくなり、画像品位を向上させることができる。
【0099】
また、一次転写ローラ45は、印刷が行われる際に、転写ベルト44を引っ張りながら下流側に移動するので、転写ベルト44に付いた巻き癖εを矯正することができる。したがって、画像品位を一層向上させることができる。
【0100】
本実施の形態において、前記軸ずらし量変更処理部Pr3は、プリンタ10が高温・高湿環境下に放置されたときに、軸ずらし量e1を短くするようになっているが、プリンタ10が放置された環境に応じて、プリンタ10が放置状態に置かれているときの軸ずらし量e1を変更することもできる。
【0101】
図13は本発明の実施の形態におけるプリンタが放置された環境に応じて変更される軸ずらし量の例を示す図である。
【0102】
プリンタ10が、温度センサs2によって温度が、湿度センサs3によって湿度が検出された特定環境下、例えば、温度が28〔℃〕、湿度が80〔%〕の高温・高湿環境下に放置されると、転写ベルト44に巻き癖が強く付くのに対して、プリンタ10が、温度が20〔℃〕、湿度が50〔%〕の中温・中湿(NN)環境下に放置されると、転写ベルト44に巻き癖が付きやすくなり、プリンタ10が、温度が10〔℃〕、湿度が20〔%〕の低温・低湿(LL)環境下に放置されると、転写ベルト44に巻き癖が付きにくくなる。これは、転写ベルト44に樹脂材料が使用されていて、放置された環境の影響を受けやすいからと考えられる。
【0103】
したがって、前記環境情報取得処理部Pr4が、温度センサs2によって検出された温度、及び湿度センサs3によって検出された湿度を取得すると、軸ずらし量変更条件判定処理部Pr2は、プリンタ10がどのような環境下に放置されているかを判断し、軸ずらし量変更処理部Pr3は、軸ずらし量変更条件判定処理部Pr2による判断結果に応じて、
図13に示されるように軸ずらし量の増加量Δeを変更する。
【0104】
プリンタ10が、温度が10〔℃〕以下であり、しかも、湿度が20〔%〕以下である環境下に放置されている場合、軸ずらし量の増加量Δeは0〔mm〕にされ、温度が10〔℃〕より高く、かつ、20〔℃〕未満であるか、又は湿度が20〔%〕より高く、かつ、50〔%〕未満である環境下に放置されている場合、軸ずらし量の増加量Δeは0〔mm〕より多く、0.75〔mm〕未満にされる。
【0105】
また、プリンタ10が、温度が20〔℃〕より高く、かつ、28〔℃〕未満であるか、又は湿度が50〔%〕より高く、かつ、80〔%〕未満である環境下に放置されている場合、軸ずらし量の増加量Δeは0.75〔mm〕より多く、かつ、1.5〔mm〕未満にされ、プリンタ10が、温度が28〔℃〕であり、しかも、湿度が80〔%〕である環境下に放置されている場合、軸ずらし量の増加量Δeは1.5〔mm〕にされる。
【0106】
なお、
図13には記載されていないが、プリンタ10が、温度が28〔℃〕より高いか、又は湿度が80〔%〕より高い環境下に放置されている場合、軸ずらし量の増加量Δeは2.0〔mm〕にされる。
【0107】
本実施の形態においては、温度及び湿度に基づいて軸ずらし量を変更するようになっているが、温度及び湿度のうちのいずれか一方に基づいて軸ずらし量を変更することもできる。
【0108】
本実施の形態においては、各一次転写ローラ45を転写ベルト44の走行方向に移動させることによって軸ずらし量e1を変更するようになっているが、各感光体ドラム21を保持部材としての図示されない保持機構によって転写ベルト44の走行方向に移動自在に保持し、転写ベルト44の走行方向に移動させることによって軸ずらし量e1を変更することもできる。
【0109】
なお、本実施の形態においては、一次転写ローラ45の回動軸C45を転写ベルト44の走行方向に移動させることによって軸ずらし量を変更するようになっているが、一次転写ローラ45の回動軸C45をプリンタ10の高さ方向に移動させると、転写ベルト44のテンションが変化してしまう。その場合、転写ベルト44を走行させている間に、転写ベルト44が蛇行しやすくなり、駆動ローラR1、従動ローラR2等のフランジに乗り上げる等してしまい、その結果、転写ベルト44が破損してしまう。
【0110】
本実施の形態においては、プリンタ10について説明しているが、本発明を複写機、ファクシミリ装置、複合機等の画像形成装置に適用することができる。
【0111】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【符号の説明】
【0112】
10 プリンタ
21 感光体ドラム
44 転写ベルト
45 一次転写ローラ
C21、C45 第1、第2の回動軸
Fr フレーム
M2 ベルトモータ
Pr3 軸ずらし量変更処理部