(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045853
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】スピニングリール
(51)【国際特許分類】
A01K 89/015 20060101AFI20230327BHJP
A01K 89/01 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
A01K89/015 H
A01K89/01 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154456
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】新妻 翔
(72)【発明者】
【氏名】川俣 敦史
【テーマコード(参考)】
2B108
【Fターム(参考)】
2B108BH02
2B108BH07
2B108EG04
2B108EG07
(57)【要約】
【課題】トルク制限構造を構成するウォームシャフトギアを小型化することができるスピニングリールを、提供する。
【解決手段】スピニングリール1は、リール本体3と、スプール軸15と、オシレーティング機構21と、トルク制限構造34と、を備える。トルク制限構造34は、ウォームシャフト23と、ウォームシャフトギア27と、トーションバネ35と、を有する。トーションバネ35は、ウォームシャフト23及びウォームシャフトギア27の間に配置される。トーションバネ35は、ウォームシャフト23に接触することによって、摩擦力を周方向に発生させる。トーションバネ35は、摩擦力によって、ウォームシャフトギア27からウォームシャフト23へのトルク伝達を許可又は解除する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体と、
前記リール本体に支持されるスプール軸と、
前記スプール軸に装着されるスライダと、前記スプール軸及び前記スライダを軸方向に往復移動させるために回転するウォームシャフトと、を有する往復移動機構と、
前記ウォームシャフトと、前記ウォームシャフトに対して回転可能に支持されるウォームシャフトギアと、前記ウォームシャフト及び前記ウォームシャフトギアの間に配置され前記ウォームシャフト及び前記ウォームシャフトギアの少なくともいずれか一方に接触することによって摩擦力を周方向に発生させ、前記摩擦力によって前記ウォームシャフトギアから前記ウォームシャフトへのトルク伝達を許可又は解除する摩擦力発生部材と、を有するトルク制限構造と、
を備えるスピニングリール。
【請求項2】
前記摩擦力発生部材は、前記ウォームシャフトギアに係止され前記ウォームシャフトの外周面に摺動可能に配置されるトーションバネである、
請求項1に記載のスピニングリール。
【請求項3】
前記トーションバネは、第1巻き方向に巻かれる第1バネ部を有し、
前記第1巻き方向が前記ウォームシャフトギアの釣糸巻取方向と反対になるように、前記第1バネ部は前記ウォームシャフトの外周面に配置される、
請求項2に記載のスピニングリール。
【請求項4】
前記トーションバネは、前記第1巻き方向とは反対の第2巻き方向に巻かれ前記第1バネ部に連結される第2バネ部をさらに有し、
前記第2巻き方向が前記ウォームシャフトギアの釣糸巻取方向と同じになるように、前記第2バネ部は前記ウォームシャフトの外周面に配置される、
請求項3に記載のスピニングリール。
【請求項5】
前記ウォームシャフトギアは、軸方向に延びる孔部を有し、
前記トーションバネは、前記孔部に係止される係止部を有する、
請求項2から4のいずれか1項に記載のスピニングリール。
【請求項6】
前記係止部は、前記孔部に挿通される挿通部と、前記挿通部から前記ウォームシャフトギアの側面に沿って延びる爪部と、を有する、
請求項5に記載のスピニングリール。
【請求項7】
前記ウォームシャフトギアは、軸方向に突出する突起を有し、
前記トーションバネは、前記突起に係止される係止部を有する、
請求項2から4のいずれか1項に記載のスピニングリール。
【請求項8】
前記ウォームシャフトギアは、前記ウォームシャフトが挿通される挿通孔を有し、
前記トルク制限構造は、前記ウォームシャフトの外周面及び前記挿通孔の内周面の間に配置されるOリングをさらに有する、
請求項1から7のいずれか1項に記載のスピニングリール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピニングリールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスピニングリールは、リール本体と、スプール軸と、往復移動機構と、トルク制限構造と、を備えている(特許文献1を参照)。往復移動機構は、スプール軸に装着されるスライダと、スプール軸及びスライダを前後方向に移動させるために回転するウォームシャフトと、を有する。
【0003】
トルク制限構造は、ウォームシャフトと、ウォームシャフトに対して回転可能に支持されるウォームシャフトギアと、複数の係止凹部と、ピン部材と、付勢部材と、を有する。複数の係止凹部は、ウォームシャフトギアの内周面に形成される。
【0004】
ピン部材及び付勢部材は、ウォームシャフトに配置される。ピン部材は、ウォームシャフトギアの内周面に対向して配置される。付勢部材は、ピン部材をウォームシャフトギアの内周面に向けて付勢する。
【0005】
ピン部材の頭部が複数の係止凹部のいずれか1つに係合した状態では、ウォームシャフトギアのトルクがウォームシャフトに伝達される。一方で、ウォームシャフトギアのトルクが許容トルクより大きくなった場合、複数の係止凹部に対するピン部材の係合及び離脱が繰り返され、ウォームシャフトギアがウォームシャフトに対して間欠的に回転する。この状態では、ウォームシャフトギアのトルクがウォームシャフトに伝達されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のトルク制限構造では、ピン部材を係止凹部に係止させることによって、許容トルクを大きくすることができる。このように、ウォームシャフトギアに作用するトルクが大きい状態で、ウォームシャフトギアのトルクが許容トルクより大きくなった場合、ウォームシャフトギアは間欠的にウォームシャフトギアに対して回転する。
【0008】
この場合、この間欠動作時の衝撃に対してウォームシャフトギアは耐える必要があるので、ウォームシャフトギアの強度を確保する必要がある。すなわち、従来のトルク制限構造では、ウォームシャフトギアが大型化するという問題がある。
【0009】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、トルク制限構造を構成するウォームシャフトギアを小型化することができるスピニングリールを、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面に係るスピニングリールは、リール本体と、スプール軸と、往復移動機構と、トルク制限構造と、を備える。スプール軸は、リール本体に支持される。往復移動機構は、スプール軸に装着されるスライダと、スプール軸及びスライダを軸方向に往復移動させるために回転するウォームシャフトと、を有する。
【0011】
トルク制限構造は、ウォームシャフトと、ウォームシャフトギアと、摩擦力発生部材と、を有する。ウォームシャフトギアは、ウォームシャフトに対して回転可能に支持される。摩擦力発生部材は、ウォームシャフト及びウォームシャフトギアの間に配置される。摩擦力発生部材は、ウォームシャフト及びウォームシャフトギアの少なくともいずれか一方に接触することによって、摩擦力を周方向に発生させる。摩擦力発生部材は、摩擦力によって、ウォームシャフトギアからウォームシャフトへのトルク伝達を許可又は解除する。
【0012】
本スピニングリールでは、ウォームシャフトギアのトルクが許容トルク以下である場合、摩擦力発生部材と、ウォームシャフト及びウォームシャフトギアの少なくともいずれか一方との間には、摩擦力が周方向に発生する。この状態で、ウォームシャフトギアのトルクが許容トルクより大きくなった場合、ウォームシャフトギアは、ウォームシャフトに対して連続的に回転する。
【0013】
このため、本スピニングリールでは、従来技術のようにウォームシャフトに対して間欠的に回転するウォームシャフトギアと比較して、トルク制限構造を構成するウォームシャフトギアを小型化することができる。
【0014】
本発明の他の側面に係るスピニングリールでは、摩擦力発生部材が、ウォームシャフトギアに係止されることが好ましい。この場合、摩擦力発生部材は、ウォームシャフトの外周面に摺動可能に配置されるトーションバネである。この構成によって、摩擦力発生部材とウォームシャフトとの間に、摩擦力を安定的に発生させることができる。
【0015】
本発明の他の側面に係るスピニングリールでは、トーションバネが、第1巻き方向に巻かれる第1バネ部を、有することが好ましい。この場合、第1巻き方向がウォームシャフトギアの釣糸巻取方向と反対になるように、第1バネ部はウォームシャフトの外周面に配置される。
【0016】
この構成によって、ウォームシャフトギアが釣糸巻取方向に回転した場合、トーションバネの第1バネ部が締まるので、トルクを、ウォームシャフトギアからウォームシャフトに好適に伝達することができる。
【0017】
本発明の他の側面に係るスピニングリールでは、トーションバネが、第1巻き方向とは反対の第2巻き方向に巻かれる第2バネ部を、さらに有することが好ましい。この場合、第2バネ部は、第1バネ部に連結される。第2巻き方向がウォームシャフトギアの釣糸巻取方向と同じになるように、第2バネ部はウォームシャフトの外周面に配置される。
【0018】
ここで、スプール軸が進む方向とは反対の方向に向けて外力がスプール軸に作用した場合、ウォームシャフトギアが釣糸巻取方向とは反対の方向に回転する。この場合、第1バネ部が緩むおそれがある。しかし、上記の第2バネ部を第1バネ部に連結することによって、ウォームシャフトギアが釣糸巻取方向とは反対の方向に回転したとしても、第2バネ部によって第1バネ部の緩み抑えることができる。
【0019】
本発明の他の側面に係るスピニングリールでは、ウォームシャフトギアが、軸方向に延びる孔部を有することが好ましい。この場合、トーションバネは、孔部に係止される係止部を有する。この構成によって、トーションバネをウォームシャフトギアに好適に係止させることができる。
【0020】
本発明の他の側面に係るスピニングリールでは、係止部が、孔部に挿通される挿通部と、挿通部からウォームシャフトギアの側面に沿って延びる爪部と、を有することが好ましい。この構成によって、トーションバネをウォームシャフトギアにより好適に係止させることができる。
【0021】
本発明の他の側面に係るスピニングリールでは、ウォームシャフトギアが、軸方向に突出する突起を有することが好ましい。この場合、トーションバネは、突起に係止される係止部を有する。この構成によって、トーションバネをウォームシャフトギアに好適に係止させることができる。
【0022】
本発明の他の側面に係るスピニングリールでは、ウォームシャフトギアが、ウォームシャフトが挿通される挿通孔を有することが好ましい。この場合、トルク制限構造は、ウォームシャフトの外周面及び挿通孔の内周面の間に配置されるOリングを、さらに有する。
【0023】
この構成では、Oリングをウォームシャフトの外周面及び挿通孔の内周面の間に配置することによって、上述した第1バネ部の緩みをOリングによって補助することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明では、スピニングリールにおいて、ウォームシャフトギアを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態によるスピニングリールの側面図。
【
図2】スピニングリールの側カバー及び本体ガードを取り外した側面図。
【
図3】オシレーティング機構を説明するための分解斜視図。
【
図6】トルク制限構造を説明するための分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の一実施形態が採用されたスピニングリール1は、
図1に示すように、リール本体3と、ハンドル5と、スプール7と、ロータ9と、を備える。
図2に示すように、スピニングリール1は、ハンドル軸11と、駆動ギア13と、スプール軸15と、ピニオンギア17と、減速機構19と、オシレーティング機構21と、トルク制限構造34(
図6を参照)と、をさらに備える。なお、
図2は、
図1に示すスピニングリール1の側カバー1a及び本体ガード1bが取り外された図である。
【0027】
図1に示すように、ハンドル5は、リール本体3に回転可能に支持される。本実施形態では、ハンドル5がリール本体3の左側に配置される場合の例が示される。ハンドル5はリール本体3の右側に配置されてもよい。ハンドル5は、ハンドル軸11に装着される。
【0028】
図2に示すように、ハンドル軸11は、リール本体3に回転可能に支持される。駆動ギア13は、ハンドル軸11と一体的に回転可能なようにハンドル軸11に装着される。駆動ギア13は、ピニオンギア17に噛み合う。
【0029】
スプール7には、釣り糸が巻き付けられる。
図2に示すように、スプール7は、スプール軸15とともにリール本体3に対して前後方向に移動可能に構成される。スプール7は、スプール軸15に連結される。例えば、スプール7は、図示しないドラグ機構を介して、スプール軸15の先端部に連結される。スプール7がスプール軸15に連結された状態において、スプール7の中心軸心は、後述するスプール軸心X1と同軸である。
【0030】
図2に示すように、スプール軸15は、リール本体3に対して前後方向に移動可能に支持される。スプール軸15は、筒状のピニオンギア17の内周部に挿通される。スプール軸15は、オシレーティング機構21の作動によって、リール本体3に対して前後方向に往復移動する。
【0031】
スプール軸15は、スプール軸心X1を有する。前後方向は、スプール軸心X1が延びる方向である。特に記載がない場合は、軸方向は、スプール軸心X1が延びる方向である。径方向は、スプール軸心X1から離れる方向である。周方向及び回転方向は、スプール軸心X1まわりの方向である。
【0032】
オシレーティング機構21は、ハンドル軸11の回転に連動してスプール軸15を前後方向に移動させる。オシレーティング機構21は、リール本体3の内部空間に配置される。
図2及び
図3に示すように、オシレーティング機構21は、ウォームシャフト23と、スライダ25と、ウォームシャフトギア27と、を有する。
【0033】
ウォームシャフト23は、スプール軸15及びスライダ25を前後方向に移動させるために回転する。ウォームシャフト23は、スプール軸15と平行に配置される。ウォームシャフト23は、リール本体3に回転可能に支持される。ウォームシャフト23は、回転軸心W1を有する。
【0034】
ウォームシャフト23は、軸本体23aと、溝部23bと、バネ配置部23cと、を有する。軸本体23aは、一方向に長い軸部材である。軸本体23aは、回転軸心W1が延びる軸方向に延びる。溝部23bは、軸本体23aの外周面に設けられる。溝部23bには、後述する爪部材26が係合する。
【0035】
バネ配置部23cは、トルク制限構造34のトーションバネ35(後述する)が配置される。バネ配置部23cは円柱状に形成される。バネ配置部23cは、回転軸心W1が延びる軸方向において溝部23bに隣接するように、軸本体23aに設けられる。
【0036】
スライダ25は、スプール軸15に装着される。例えば、スライダ25は、スプール軸15の後端に固定される。スライダ25は、ウォームシャフト23の回転によって前後方向に移動する。
【0037】
例えば、
図3に示すように、スライダ25には爪部材26が装着される。爪部材26は、スプール軸15及びスライダ25に回動可能に装着される。爪部材26は、ウォームシャフト23の溝部23bに係合する。これにより、ウォームシャフト23が回転すると、爪部材26がウォームシャフト23の溝部23bに沿って移動する。これにより、スライダ25が前後方向に移動する。
【0038】
図2及び
図3に示すように、ウォームシャフトギア27は、ウォームシャフト23に配置される。ウォームシャフトギア27は、ウォームシャフト23に対して回転可能に支持される。以下では、釣り糸が巻き取られる際にウォームシャフトギア27が回転する方向を、釣糸巻取方向R1と記す。
【0039】
ウォームシャフトギア27は、回転軸心W2を有する。例えば、ウォームシャフトギア27の回転軸心W2がウォームシャフト23の回転軸心W1と同心になるように、ウォームシャフトギア27はウォームシャフト23に配置される。
【0040】
図3、
図4A、及び
図4Bに示すように、ウォームシャフトギア27は、ギア本体27aと、環状凸部27bと、挿通孔27cと、環状の段差部27dと、少なくとも1つの係止孔27e(孔部の一例)と、少なくとも1つの案内溝27fと、を有する。
【0041】
ギア本体27aは、円板状に形成される。ギア本体27aは、減速機構19の第2小径ギア33b(後述する)に噛み合う。
図4Bに示すように、環状凸部27bは、ウォームシャフトギア27の回転軸心W2が延びる軸方向において、ギア本体27aの外周部から環状に突出する。
【0042】
図3、
図4A、及び
図4Bに示すように、挿通孔27cは、ギア本体27aに設けられる。例えば、挿通孔27cは、ウォームシャフトギア27の回転軸心W2が延びる軸方向において、ギア本体27aを貫通する。挿通孔27cには、ウォームシャフト23が挿通される。
【0043】
図3及び
図4Aに示すように、環状の段差部27dは、ギア本体27aの内周部に設けられる。環状の段差部27dは、ウォームシャフトギア27の回転軸心W2まわりの径方向において、挿通孔27cの外側に設けられる。環状の段差部27dは、ウォームシャフトギア27の回転軸心W2まわりの周方向に延びる。
【0044】
少なくとも1つの係止孔27eは、複数の係止孔27eを含む。本実施形態では、複数(例えば3個)の係止孔27eが、ギア本体27aの外周部に設けられる。複数の係止孔27eは、ウォームシャフトギア27の回転軸心W2まわりの周方向において互いに間隔を隔てて配置される。複数の係止孔27eは、ウォームシャフトギア27の回転軸心W2が延びる軸方向にギア本体27aを貫通する。
図4Bに示すように、複数の係止孔27eは、環状凸部27bの径方向内側に配置される。
【0045】
図3及び
図4Aに示すように、少なくとも1つの案内溝27fは、複数(例えば3個)の案内溝27fを含む。本実施形態では、複数(例えば3個)の案内溝27fが、ギア本体27aに設けられる。例えば、複数の案内溝27fは、ウォームシャフトギア27の回転軸心W2まわりの周方向において互いに間隔を隔てて配置される。複数の案内溝27fは、環状の段差部27dから複数の係止孔27eに向けて各別に延びる。
【0046】
図2に示すように、ピニオンギア17は筒状に形成される。ピニオンギア17は、リール本体3に回転可能に支持される。ピニオンギア17は、スプール軸15の径方向外側に配置される。ピニオンギア17は、スプール軸15に対して回転する。ピニオンギア17は、スプール軸心X1まわりに回転する。
【0047】
図5に示すように、減速機構19は、ピニオンギア17の回転を減速してオシレーティング機構21に伝達する。
図5では、各ギアのギア歯は省略されている。減速機構19は、ピニオンギア17及びオシレーティング機構21の間に配置される。例えば、減速機構19は、ピニオンギア17及びウォームシャフトギア27の間に配置される。
【0048】
減速機構19は、少なくとも2つの中間ギア31,33を有する。例えば、減速機構19は、第1中間ギア31と、第2中間ギア33と、を有する。第1中間ギア31は、スプール軸心X1と平行な第1軸A1まわりに回転可能に設けられる。第1中間ギア31は、リール本体3に回転可能に支持される。第1中間ギア31は、第1大径ギア31aと、第1小径ギア31bと、を有する。
【0049】
第1大径ギア31aは、ピニオンギア17に噛み合う。第1大径ギア31aの回転軸心は、第1軸A1である。第1小径ギア31bは、第1大径ギア31aよりも小径に形成される。第1小径ギア31bは、第1大径ギア31aと一体に形成され、第1大径ギア31aと一体的に回転する。第1小径ギア31bの回転軸心は、第1軸A1である。
【0050】
第2中間ギア33は、第1軸A1と平行な第2軸A2まわりに回転可能に設けられる。第2中間ギア33は、リール本体3に回転可能に支持される。第2中間ギア33は、第2大径ギア33aと、第2小径ギア33bと、を有する。
【0051】
第2大径ギア33aは、第1小径ギア31bに噛み合う。第2大径ギア33aの回転軸心は、第2軸A2である。第2小径ギア33bは、第2大径ギア33aよりも小径に形成される。第2小径ギア33bは、第2大径ギア33aと一体に形成され、第2大径ギア33aと一体的に回転する。第2小径ギア33bの回転軸心は、第2軸A2である。第2小径ギア33bは、ウォームシャフトギア27に噛み合う。
【0052】
ハンドル5の回転操作によってハンドル軸11が回転すると、駆動ギア13が回転する。駆動ギア13の回転は、ピニオンギア17に伝達される。ピニオンギア17の回転は、減速機構19を介してウォームシャフトギア27に伝達される。ウォームシャフトギア27の回転は、
図6に示すトルク制限構造34を介してウォームシャフト23に伝達される。ここで、ウォームシャフト23が回転した場合、スライダ25及びスプール軸15が前後方向に移動する。
【0053】
図1及び
図2に示すように、ロータ9は、スプール7に釣り糸を巻き付けるために用いられる。ロータ9は、リール本体3の前部に配置される。ロータ9は、リール本体3に対して回転可能に構成される。ロータ9は、ピニオンギア17の径方向外側に配置される。ロータ9は、ピニオンギア17に対して一体的に回転可能に装着される。
【0054】
ハンドル5の回転操作によってハンドル軸11が回転すると、駆動ギア13が回転する。駆動ギア13の回転は、ピニオンギア17に伝達される。ロータ9は、ピニオンギア17の回転に連動して回転する。
【0055】
図6に示すように、トルク制限構造34は、ウォームシャフト23と、ウォームシャフトギア27と、トーションバネ35(摩擦力発生部材の一例)と、を有する。トルク制限構造34は、トーションバネ35の摩擦力によって、ウォームシャフトギア27からウォームシャフト23へのトルク伝達を許可又は解除する。
【0056】
トーションバネ35は、ウォームシャフト23及びウォームシャフトギア27の少なくともいずれか一方に接触することによって、ウォームシャフトギア27の回転軸心W2まわりの周方向に摩擦力を発生させる。本実施形態では、トーションバネ35は、ウォームシャフト23に接触することによって、ウォームシャフト23の回転軸心W1まわりの周方向に摩擦力を発生させる。
【0057】
図6に示すように、トーションバネ35は、ウォームシャフト23の外周面に摺動可能に配置される。
図4Bに示すように、トーションバネ35は、ウォームシャフトギア27に係止される。
【0058】
図6に示すように、トーションバネ35は、第1バネ部37と、係止部39と、を有する。第1バネ部37は、コイルバネである。第1バネ部37は、第1巻き方向C1に巻かれる。第1巻き方向C1は、係止部39を始点として第1バネ部37の線材が巻かれる方向である。
【0059】
第1巻き方向C1がウォームシャフトギア27の釣糸巻取方向R1と反対になるように、第1バネ部37はウォームシャフト23の外周面に配置される。例えば、第1巻き方向C1がウォームシャフトギア27の釣糸巻取方向R1と反対になるように、第1バネ部37はウォームシャフト23のバネ配置部23cの外周面に配置される。第1バネ部37の内周面は、ウォームシャフト23のバネ配置部23cの外周面に接触する。
【0060】
これにより、ウォームシャフトギア27が釣糸巻取方向R1に回転した場合に、第1巻き方向C1に巻かれた第1バネ部37は締まる。第1バネ部37の内周面及びウォームシャフト23のバネ配置部23cの外周面の間には、摩擦力が発生する。この摩擦力によってトルクがウォームシャフトギア27からウォームシャフト23に伝達される。
【0061】
なお、ウォームシャフトギア27の釣糸巻取方向R1は、ウォームシャフトギア27の回転軸心W2まわりに定義される。例えば、ウォームシャフトギア27の釣糸巻取方向R1は、スライダ25及びスプール軸15が前後方向に移動する際にウォームシャフト23が回転する方向と同じである。
【0062】
図4A及び
図4Bに示すように、係止部39は、係止孔27eに係止される。例えば、係止部39は、ウォームシャフト23の回転軸心W1から離れる方向に、第1バネ部37から延びる。係止部39は、複数の係止孔27eのいずれか1つに係止される。
図6に示すように、係止部39は、腕部39aと、挿通部39bと、爪部39cと、を有する。腕部39aは、第1バネ部37から延びる。挿通部39bは、腕部39aと一体に形成される。爪部39cは、挿通部39bと一体に形成される。
【0063】
図4Aに示すように、第1バネ部37の端部は、ウォームシャフトギア27の環状の段差部27dに配置される。係止部39の腕部39aは、ウォームシャフトギア27の案内溝27fに配置される。挿通部39bは、複数の挿通孔27cのいずれか1つに挿通される。
【0064】
図4Bに示すように、爪部39cは、ウォームシャフトギア27のギア本体27aの側面に沿って延びる。爪部39cの先端は、ウォームシャフトギア27の環状凸部27bの内周面に接触する。爪部39cの先端をウォームシャフトギア27の環状凸部27bの内周面に接触させることによって、トーションバネ35の回り止めを行うことができる。
【0065】
上述したトルク制限構造34では、
図6に示すように、トーションバネ35の第1バネ部37の第1巻き方向C1がウォームシャフトギア27の釣糸巻取方向R1と反対であるので、ウォームシャフトギア27が回転すると、トーションバネ35の第1バネ部37が締まる。
【0066】
これにより、ウォームシャフトギア27のトルクが、トーションバネ35の第1バネ部37の内周面及びウォームシャフト23の外周面の間の摩擦力によって、ウォームシャフト23に伝達される。
【0067】
ここで、ウォームシャフトギア27のトルクが許容トルクより大きくなると、トーションバネ35の第1バネ部37の内周面がウォームシャフト23の外周面上を摺動する。この状態では、トルクはウォームシャフトギア27からウォームシャフト23に伝達されない。
【0068】
上述したスピニングリール1は、以下のような特徴を有する。スピニングリール1では、ウォームシャフトギア27のトルクが許容トルク以下である場合、トーションバネ35とウォームシャフト23の間には、ウォームシャフトギア27の回転軸心W2まわりの周方向に摩擦力が発生する。
【0069】
この状態で、ウォームシャフトギア27のトルクが許容トルクより大きくなった場合、ウォームシャフトギア27は、ウォームシャフトギア27に対して連続的に回転する。これにより、従来技術と比較して、トルク制限構造34を構成するウォームシャフトギア27を小型化することができる
スピニングリール1では、トーションバネ35は、ウォームシャフトギア27に係止された状態で、ウォームシャフト23の外周面に摺動可能に配置される。この構成によって、トーションバネ35とウォームシャフト23との間に、摩擦力を安定的に発生させることができる。
【0070】
スピニングリール1では、第1巻き方向C1がウォームシャフトギア27の釣糸巻取方向R1と反対になるように、トーションバネ35の第1バネ部37はウォームシャフト23の外周面に配置される。この構成によって、ウォームシャフトギア27が釣糸巻取方向R1に回転した場合、トーションバネ35の第1バネ部37が締まるので、トルクを、ウォームシャフトギア27からウォームシャフト23に好適に伝達することができる。
【0071】
スピニングリール1では、トーションバネ35の係止部39がウォームシャフトギア27の係止孔27eに係止される。この構成によって、トーションバネ35をウォームシャフトギア27に好適に係合させることができる。
【0072】
スピニングリール1では、トーションバネ35の係止部39において、挿通部39bはウォームシャフトギア27の係止孔27eに挿通され、爪部39cはウォームシャフトギア27の側面に沿って延びる。これにより、トーションバネ35をウォームシャフトギア27により好適に係合させることができる。
【0073】
(変形例)
(A)前記実施形態では、トーションバネ35が第1バネ部37を有する場合の例が、示された。この場合、ウォームシャフト23の溝部23bの形状によっては、スプール軸15が進む方向とは反対の方向に向けて外力がスプール軸15に作用した場合、ウォームシャフト23が釣糸巻取方向R1と反対に回転し、第1バネ部37が緩むおそれがある。
【0074】
この問題を解決するために、
図7に示すように、トーションバネ35は、第2バネ部41をさらに有していてもよい。第2バネ部41は、コイルバネである。第2バネ部41は、第1バネ部37に連結される。第2バネ部41は、第1バネ部37と一体に形成される。例えば、第2バネ部41は、連結部42を介して第1バネ部37と一体に形成される。
【0075】
第2バネ部41は、第1巻き方向C1とは反対の第2巻き方向C2に巻かれる。第2巻き方向C2は、第1バネ部37の終端例えば連結部42を始点として、第2バネ部41の線材が巻かれる方向である。
【0076】
第2巻き方向C2がウォームシャフトギア27の釣糸巻取方向R1と同じになるように、第2バネ部41はウォームシャフト23のバネ配置部23cの外周面に配置される。第2バネ部41の内周面は、ウォームシャフト23のバネ配置部23cの外周面に接触する。
【0077】
これにより、ウォームシャフト23が釣糸巻取方向R1と反対に回転する場合、第2バネ部41は締まる。第2バネ部41の内周面及びウォームシャフト23のバネ配置部23cの外周面の間には、摩擦力が発生する。この摩擦力によって、第1バネ部37の緩みを、Oリング43の摩擦力によって抑えることができる。
【0078】
(B)前記実施形態のトルク制限構造34は、
図8に示すように、Oリング43をさらに有していてもよい。Oリング43は、ウォームシャフト23の外周面及びウォームシャフトギア27の挿通孔27cの内周面の間に配置される。例えば、ウォームシャフト23は、第1リング配置部23dをさらに有する。第1リング配置部23dは、軸本体23aの外周面に設けられる。第1リング配置部23dは環状溝である。
【0079】
ウォームシャフトギア27は、第2リング配置部27gをさらに有する。第2リング配置部27gは、挿通孔27cの内周面に設けられる。第2リング配置部27gは、環状溝である。第2リング配置部27gは、第1リング配置部23dの径方向外側に配置される。
【0080】
Oリング43は、ウォームシャフト23の回転軸心W1から離れる径方向において、第1リング配置部23d及び第2リング配置部27gの間に配置される。Oリング43は、第1リング配置部23dの底部及び第2リング配置部27gの底部に接触する。なお、Oリング43は、圧縮された状態で、第1リング配置部23d及び第2リング配置部27gの径方向間に配置されることが好ましい。
【0081】
この構成によって、上記の変形例(A)で説明した第1バネ部37の緩みを、Oリング43の摩擦力によって抑えることができる。
【0082】
(C)前記実施形態では、トルク制限構造34においてトーションバネ35が摩擦力発生部材として用いられる場合の例が、示された。トルク制限構造34では、ウォームシャフト23及びウォームシャフトギア27の少なくともいずれか一方に接触することができれば、摩擦力発生部材はどのように構成してもよい。
【0083】
例えば、
図9に示すように、トーションバネ35を用いることなく、変形例(B)で用いたOリング43を摩擦力発生部材として用いてもよい。この場合、Oリング43は、圧縮された状態で、ウォームシャフト23の回転軸心W1から離れる径方向において第1リング配置部23d及び第2リング配置部27gの間に配置される。
【0084】
この構成では、ウォームシャフトギア27のトルクが許容トルク以下である場合、ウォームシャフトギア27のトルクが、Oリング43を介して、ウォームシャフト23に伝達される。ここで、ウォームシャフトギア27のトルクが許容トルクより大きくなった場合、Oリング43が、第1リング配置部23d及び第2リング配置部27gの少なくともいずれか一方と摺動する。この状態では、トルクはウォームシャフトギア27からウォームシャフト23に伝達されない。このように構成しても、前記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0085】
(D)前記実施形態では、トーションバネ35がウォームシャフトギア27の係止孔27eに係止される場合の例が、示された。
図10に示すように、トーションバネ35は、ウォームシャフトギア27の突起27hに係止されてもよい。この場合、突起27hは、ギア本体27aの側面から軸方向に突出する。
【0086】
トーションバネ35は、第1バネ部37と、係止部139と、を有する。第1バネ部37の構成は、前記実施形態の構成と同じである。係止部139は、腕部39aと、鉤部139cと、を有する。腕部39aの構成は、前記実施形態の構成と同じである。
【0087】
鉤部139cは、腕部39aと一体に形成される。鉤部139cは、鉤状に形成される。鉤部139cは突起27hに係止される。このように構成しても、前記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、スピニングリールに利用することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 スピニングリール
3 リール本体
15 スプール軸
25 スライダ
23 ウォームシャフト
21 オシレーティング機構
27 ウォームシャフトギア
27c 挿通孔
27e 係止孔
27g 突起
34 トルク制限構造
35 トーションバネ
37 第1バネ部
39,139 係止部
39b 挿通部
39c 爪部
41 第2バネ部
43,45 Oリング
C1 第1巻き方向
C2 第2巻き方向
R1 ウォームシャフトギアの釣糸巻取方向