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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045889
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】便器装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/08 20060101AFI20230327BHJP
   E03D 9/08 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
E03D11/08
E03D9/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154500
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】河津 拓
(72)【発明者】
【氏名】石間 匠
【テーマコード(参考)】
2D038
2D039
【Fターム(参考)】
2D038JC02
2D038JH00
2D038KA14
2D038ZA00
2D039AA02
2D039AD00
2D039AD01
2D039AE04
2D039DA00
2D039DB05
(57)【要約】
【課題】便鉢部内の洗浄範囲を広範囲化できる技術を提供する。
【解決手段】本開示の便器装置は、便鉢部16を有する便器本体と、便鉢部内に洗浄水を吐き出すことによって、便鉢部内を旋回する主洗浄水流を形成する主吐水部と、便鉢部16の内周面において主洗浄水流により洗浄される主洗浄領域Raよりも上方の上方領域Rbに、連続する水流を副洗浄水流Fbとして供給する副吐水部40Aとを備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
便鉢部を有する便器本体と、
前記便鉢部内に洗浄水を吐き出すことによって、前記便鉢部内を旋回する主洗浄水流を形成する主吐水部と、
前記便鉢部の内周面において前記主洗浄水流により洗浄される主洗浄領域よりも上方の上方領域に、連続する水流を副洗浄水流として供給する副吐水部とを備える便器装置。
【請求項2】
前記副吐水部は、前記便鉢部の径方向外側に向けて前記副洗浄水流をガイドすることで、前記上方領域に前記副洗浄水流を供給するガイド部を備える請求項1に記載の便器装置。
【請求項3】
前記副吐水部は、前記便鉢部の上端開口部よりも径方向内側に配置される請求項1から2のいずれかに記載の便器装置。
【請求項4】
前記副吐水部は、副吐水孔から洗浄水を吐き出すことによって、前記上方領域に前記副洗浄水流を供給し、
前記副吐水孔は、前記便鉢部の周方向に延びるスリットである請求項1から3のいずれか1項に記載の便器装置。
【請求項5】
複数の前記副吐水部を備え、
前記複数の前記副吐水部は、前記便鉢部の周方向に間隔を空けた箇所に設けられる請求項1から4のいずれか1項に記載の便器装置。
【請求項6】
前記主吐水部は、主吐水孔から前記便鉢部内に洗浄水を吐き出すことによって、前記主洗浄水流を形成し、
前記主吐水孔から前記主洗浄水流の旋回方向に向かって前記便鉢部の半周に亘る範囲を前半範囲といい、前記便鉢部の残りの半周に亘る範囲を後半範囲というとき、
前記副吐水部は、前記後半範囲において前記上方領域に前記副洗浄水流を供給する請求項1から5のいずれか1項に記載の便器装置。
【請求項7】
前記便鉢部に搭載されるケーシングを備え、
前記副吐水部は、前記便鉢部の内周面において前記ケーシングと上下方向に重なる箇所に前記副洗浄水流を供給する請求項1から6のいずれか1項に記載の便器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、便器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、便鉢部を有する便器本体と、便鉢部内に洗浄水を吐き出すことによって、便鉢部内を旋回する洗浄水流を形成する吐水部とを備える便器装置が提案される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-291608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
便鉢部内での汚れ残りを減らすうえで、洗浄範囲の広範囲化が要請される。これを実現するうえで、洗浄水流の流量を増大してしまうと、便鉢部外への飛沫の飛び散りが懸念される。本願発明者は、この観点から、特許文献1の技術に関して、改良の余地があるとの認識を得た。
【0005】
本開示の目的の1つは、便鉢部内の洗浄範囲を広範囲化できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の便器装置は、便鉢部を有する便器本体と、前記便鉢部内に洗浄水を吐き出すことによって、前記便鉢部内を旋回する主洗浄水流を形成する主吐水部と、前記便鉢部の内周面において前記主洗浄水流により洗浄される主洗浄領域よりも上方の上方領域に、連続する水流を副洗浄水流として供給する副吐水部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】便器装置の平面図である。
図2】便器装置の側面断面図である。
図3】ケーシングの一部の斜視図である。
図4】ケーシングの一部の正面図である。
図5図4のA-A断面図である。
図6図4のB-B断面図である。
図7】ケーシング内での水の流れ方に関する説明図である。
図8図1のC-C断面の一部を示す図である。
図9】便器装置に用いられる一部の機能を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態を説明する。同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面では、説明の便宜のため、適宜、構成要素を省略、拡大、縮小する。図面は符号の向きに合わせて見るものとする。本明細書での「取り付け」とは、特に明示がない限り、言及する条件を二者が直接的に満たす場合の他に、他の部材を介して満たす場合も含む。
【0009】
図1図2を参照する。便器装置10は、便器本体12と、便器本体12の後部に搭載されるケーシング14と、を備える。
【0010】
便器本体12の素材は、例えば、陶器である。便器本体12の素材は特に限定されず、例えば、樹脂等でもよい。本図では、便器本体12の詳細な内部構造は省略する。
【0011】
便器本体12は、便鉢部16を備える。以下、便鉢部16の周方向、径方向を用いて説明する。「周方向」は、平面視において、便鉢部16の上端開口部16aの中心CL周りを回る方向をいう。「径方向」は、その中心CLを通る鉛直線に直交する方向をいう。
【0012】
便鉢部16は、汚物を受ける汚物受け面18と、汚物受け面18の外周端部18aから上方の範囲において便鉢部16の上端側部分を形成するリム部20と、を備える。汚物受け面18は、後述する主洗浄水流Faを受けて旋回方向Daに導く棚面22を備える。棚面22は、汚物受け面18の外周端部18aから径方向内側に向かう一部の範囲に設けられる。
【0013】
リム部20は、汚物受け面18の外周端部18aから立ち上がる立ち面24を備える。立ち面24は、径方向に沿った切断面において、下側変曲点24aから上側変曲点24bまでの全範囲で水平面に対して45°以上の角度をなす面をいう。ここでの変曲点24a、24bには、例えば、曲率の異なる一対の曲線間の境界、曲線と直線の境界等が含まれる。本実施形態において、下側変曲点24aは汚物受け面18の外周端部18aに設けられ、上側変曲点24bは便鉢部16の上端開口部16aに設けられる。本実施形態の立ち面24は、便鉢部16の上端開口部16aまで連続しており、その上下方向Zの全範囲において、上方に向かうに連れて径方向内側に向かう傾斜部分を備えていない。この他にも、立ち面24は、少なくとも一部において、上方に向かうに連れて径方向内側に向かう傾斜部分を備えていてもよい。この他にも、リム部20は、リム部20の径方向内側に突き出るオーバーハング部を備えていてもよい。
【0014】
便器本体12は、便鉢部16の底部に接続される便器排水路26と、便鉢部16の上端開口部16aが開口する上面部28と、を備える。便器排水路26は、建物に設置される排水管(不図示)に接続される。便器排水路26は、便鉢部16内から排水管に排出される汚物等の通り道となる。上面部28には、便鉢部16よりも後方において凹部28aが設けられる。凹部28aには、ケーシング14の一部が収容される。
【0015】
便器装置10は、便鉢部16内に洗浄水を供給する主吐水部30を備える。本実施形態の主吐水部30は、便器本体12の一部として便器本体12に設けられる。主吐水部30は、便鉢部16の内周面に開口する主吐水孔32と、第1主水路62(後述する)から供給された洗浄水を主吐水孔32に供給する通水路34とを備える。主吐水部30は、便鉢部16内に主吐水孔32から洗浄水を吐き出すことによって、便鉢部16内を旋回する主洗浄水流Faを形成する。図1では、主洗浄水流Faの主な流れ方向に矢印を付す。主洗浄水流Faによって、便鉢部16内が洗浄されるとともに、便鉢部16内の汚物が便器排水路26を通して排出される。
【0016】
ケーシング14は、不図示の便座とは別体の機能装置の一部として設けられる。ケーシング14は、ネジ止め等を用いて、便器本体12に取り付けられる。ケーシング14には、不図示の内部機器が収容される。内部機器は、例えば、局部洗浄装置、乾燥装置、脱臭装置、給水装置、給泡装置等の少なくとも一つである。
【0017】
図3図4を参照する。図4は、図1の矢視Vaからケーシング14の一部を見た図でもある。ケーシング14は、ケーシング14の下壁部を構成する板状のベース部36と、ベース部36の上方に配置され、ベース部36上の内部機器を覆うカバー部38とを備える。
【0018】
便器装置10は、便鉢部16内に洗浄水を供給する副吐水部40A、40Bを備える。本実施形態の副吐水部40A、40Bは、第1副吐水部40Aと、第2副吐水部40Bとを含む。複数の副吐水部40A、40Bは、便鉢部16の周方向に間隔を空けた箇所に設けられる。各副吐水部40A、40Bは、ケーシング14に設けられる。副吐水部40A、40Bは、便器本体12とは別体に設けられることになる。副吐水部40A、40Bは、平面視において、便鉢部16の上端開口部16aに対して径方向内側に配置される(図1参照)。
【0019】
ケーシング14は、後述する副水路70の下流側端部から吐き出される水Wを受ける水受け部42を備える。水受け部42は、ベース部36の内下面において下向きに凹む凹部である。水受け部42には、副水路70から吐き出される水Wを先に受ける第1壁部分42aと、第1壁部分42aに連続する第2壁部分42bとを備える。第2壁部分42bは、前方に向かうにつれて下り勾配となるように傾斜している。第2壁部分42bの上方には局部洗浄装置のノズル(図示せず)が配置される。第2壁部分42bの前端部は、シャッターによって開閉される開口部を構成し、その開口部を通してノズルが進退可能となる。
【0020】
図3図6を参照する。第1副吐水部40Aは、ケーシング14の第1壁部分42aに設けられる第1副吐水孔44Aを備える.第2副吐水部40Bは、ケーシング14の第2壁部分42bに設けられる第2副吐水孔44Bを備える。各副吐水孔44A、44Bは、ケーシング14のベース部36を上下方向に貫通する貫通孔として設けられる。各副吐水孔44A、44Bは、便鉢部16の周方向に延びるスリットである。これは、細長なスリットの長手方向の主成分が、径方向ではなく、周方向であることを意味する。
【0021】
各副吐水部40A、40Bは、副吐水孔44A、44Bの径方向内側かつ下側の内縁部において下向きに突き出るリブ状のガイド部46を備える。ガイド部46は、径方向外側に延びるように設けられる。本実施形態のガイド部46は、径方向外側に向かうに連れて、下方に延びるように設けられる。
【0022】
第1副吐水部40Aは、第1副吐水孔44Aの径方向内側かつ上側の内縁部において上向きに突き出るリブ状の堰止部48を備える。堰止部48は、第2壁部分42bにおいて下り勾配に従って流れる水Wを堰き止めて、その水Wを第1副吐水孔44Aにガイド可能である。第1副吐水部40Aは、第1副吐水孔44Aの径方向外側かつ下側の外縁部において下向きに突き出るリブ部50を備える。
【0023】
図5図7を参照する。図7では、副水路70から吐き出される水Wの主な流れ方向に矢印を付す。副水路70から吐き出される水Wは、水受け部42によって受けられる。水受け部42上で受けられた水は各副吐水孔44A、44Bのそれぞれに向かって流れ、各副吐水孔44A、44Bに供給される。この過程で、第2壁部分42b上の水は、第2壁部分42bの勾配に従って下向きに流れる。
【0024】
上流側から副吐水孔44A、44Bに供給された水は、副吐水孔44A、44Bから吐き出される。これにより、副吐水部40A、40Bは、便鉢部16内に連続する水流を副洗浄水流Fbとして供給する。ここでの「連続する水流」とは、水を粒化した複数の水滴からなるミストを意味するのではなく、連続したひとかたまりの水流を意味する。「連続する水流」の条件は、副吐水部40A、40Bから離れる直前において満たされていればよく、副吐水部40A、40Bから離れた後に表面張力等の影響で分断されてもよい。
【0025】
本実施形態のガイド部46は、副吐水孔44A、44Bの径方向内側の内側面に連続しており、副吐水孔44A、44Bから吐き出された副洗浄水流Fbを受けることができる。ガイド部46は、ガイド部46上を伝わる副洗浄水流Fbを便鉢部16の径方向外側に向けてガイド可能である。これにより、副洗浄水流Fbがガイド部46を離れるとき、副洗浄水流Fbに径方向外向きの速度成分を持たせることができる。
【0026】
図5図6図8を参照する。便鉢部16の内周面において主洗浄水流Faにより洗浄される領域を主洗浄領域Raといい、その内周面において主洗浄水流Faよりも上方にある領域を上方領域Rbという。主洗浄領域Raは、一回の便器洗浄において、便鉢部16の内周面において主洗浄水流Faの伝わる領域である。上方領域Rbは、一回の便器洗浄において、便鉢部16の内周面において主洗浄水流Faの伝わらない領域である。上方領域Rbは、便鉢部16の内周面において主洗浄水流Faによって洗浄されない非洗浄領域と捉えることができる。
【0027】
副吐水部40A、40Bは、便鉢部16の内周面における上方領域Rbに副洗浄水流Fbを供給する。この上方領域Rbは、本実施形態では、便鉢部16の立ち面24に設けられる。図8では、便鉢部16の内周面において副洗浄水流Fbの伝わる範囲にハッチングを付す。副吐水部40A、40Bは、便鉢部16の内周面においてケーシング14と上下方向に重なる箇所に副洗浄水流Fbを供給する。副吐水部40A、40Bを離れた水流は、便器本体12の他の箇所(たとえば、上面部28)を経由せずに、便鉢部16の内周面に直接に当てられることで、上方領域Rbに供給される。
【0028】
上方領域Rbに当たった副洗浄水流Fbは、その当たり位置から便鉢部16の底部に向かって便鉢部16の内面を伝わり落ちる。これにより、上方領域Rbに付いている汚れを副洗浄水流によって洗い落とすことができる。
【0029】
図1図8を参照する。主吐水孔32から主洗浄水流Faの旋回方向Daに向かって便鉢部16の半周に亘る範囲を前半範囲Rc1といい、便鉢部16の残りの半周に亘る範囲を後半範囲Rc2という。本実施形態の副吐水部40A、40Bは、後半範囲Rc2において、上方領域Rbに副洗浄水流Fbを供給する。本実施形態では、便鉢部16の中心CLよりも後方において上方領域Rbに副洗浄水流Fbを供給する。
【0030】
ここまで説明した条件は、各副吐水部40A、40Bのいずれもが満たす。本実施形態の副吐水孔44A、44Bはスリットであるため、副吐水部40A、40Bは周方向に延びる帯状の副洗浄水流Fbを供給する。
【0031】
以上の便器装置10の効果を説明する。
【0032】
本実施形態の便器装置10は、主洗浄領域Raとは異なる上方領域Rbに副洗浄水流Fbを供給する副吐水部40A、40Bを備える。よって、副洗浄水流Fbによって、便鉢部16内の洗浄範囲を広範囲化できる。このように洗浄範囲を広範囲化するうえで、主洗浄水流Faの流量の増大が不要である。よって、主洗浄水流Faの流量の増大に伴う飛沫の飛び散りを防止しつつ、洗浄範囲の広範囲化を企図できる。
【0033】
副吐水部40A、40Bは、径方向外側に向けて副洗浄水流Fbをガイドするガイド部46を備える。よって、上方領域Rbに対して径方向内側に副吐水部40A、40Bが配置される場合に、上方領域Rbの届き難い箇所に副洗浄水流Fbを届かせ易くなる。ひいては、便鉢部16の洗浄範囲を更に広範囲化できる。ここでの「届き難い箇所」とは、たとえば、便鉢部16の上端開口部16a寄りの箇所(図5図6も参照)である。
【0034】
副吐水部40A、40Bは、便鉢部16の上端開口部16aよりも径方向内側に配置される。よって、副吐水部40A、40Bを離れた副洗浄水流Fbを便鉢部16の内面に直接に当てることができ、勢いを持った副洗浄水流Fbによって汚れを洗い落とし易くなる。
【0035】
副吐水孔44A、44Bは、便鉢部16の周方向に延びるスリットである。よって、副吐水部40A、40Bから帯状の副洗浄水流Fbを供給でき、副洗浄水流Fbによる洗浄範囲を周方向に広範囲化できる。
【0036】
複数の副吐水部40A、40Bは、便鉢部16の周方向に間隔を空けた箇所に設けられる。よって、副洗浄水流Fbによる洗浄範囲を周方向に広範囲化できる。
【0037】
便鉢部16の後半範囲Rc2では、重力の影響によって主洗浄水流Faが高位置まで届き難くなり、主洗浄領域Raと上方領域Rbの境界位置Bp(図5図6参照)が低くなり易い。つまり、上方領域Rbの上下方向範囲が広くなり易くなり、汚れ残りが生じ易くなる。このような汚れ残りの生じ易い箇所に副洗浄水流Fbを供給することによって、汚れ残りを効果的に洗い落とすことができる。
【0038】
便鉢部16の内周面においてケーシング14と上下方向Zに重なる箇所は、手が届きにくく、その汚れを拭き取り難い。副吐水部40A、40Bは、このような箇所に副洗浄水流Fbを供給する。よって、手の届きにくい箇所にある汚れを副洗浄水流Fbによって洗い落とし易くすることができる。
【0039】
図9を参照する。便器装置10は、第1給水源60から供給される水を洗浄水として主吐水部30に供給する第1主水路62と、第2給水源64から供給される水を水利用部品66に供給する第2主水路68と、を備える。
【0040】
第1給水源60、第2給水源64は、例えば、上水道、タンク等である。第2給水源64は、第1給水源60を共用してもよいし、第1給水源60とは別体でもよい。各給水源60、64には、湯水混合弁を通して温度調整された水を供給してもよい。
【0041】
水利用部品66は、水を利用して機能する部品である。本実施形態の水利用部品66は、ケーシング14内に配置される。水利用部品66は、例えば、局部洗浄装置の一部としてケーシング14内に配置されるノズルである。水利用部品66は、この他にも、給泡装置のエゼクタの他、タンク等でもよい。
【0042】
便器装置10は、第2給水源64から供給される水を洗浄水として副吐水部40A、40Bに供給する副水路70を備える。副水路70は、第2主水路68から分岐している。
【0043】
便器装置10は、第1主水路62を開閉可能な第1主バルブ72と、第2主水路68を開閉可能な第2主バルブ74と、副水路70を開閉可能な副バルブ76と、第2主水路68を流れる水の温度を検知する温度センサ78とを備える。各バルブ72、74、76は、電磁弁、電動弁等の電気駆動弁である。
【0044】
便器装置10は、各バルブ72、74、76の開閉状態を制御可能な制御装置80を備える。制御装置80は、CPU、ROM、RAM等のハードウェアとソフトウェアを組み合わせたコンピュータである。
【0045】
制御装置80は、所定の洗浄条件を満たしたとき、便鉢部16内を主洗浄水流Faによって洗浄するための洗浄動作を実行する。洗浄条件は、例えば、リモートコントローラ等から出力される洗浄指令を制御装置80が取得することである。洗浄動作は、予め定められた時間の間、第1主バルブ72を開状態に維持することで実行される。これにより、第1主水路62から主吐水部30に洗浄水が供給されることで、便鉢部16内が主洗浄水流Faによって洗浄される。
【0046】
制御装置80は、所定の開始条件を満たしたとき、水利用部品66を動作させる給水動作を実行する。開始条件は、例えば、リモートコントローラ等から出力される開始指令を制御装置80が取得することである。この給水動作において、第2給水源64から適温範囲の洗浄水を供給しようとするとき、第2主水路68内に冷たい滞留水が残留していることがある。この冷たい滞留水が水利用部品66に供給される事態、つまり、冷たい滞留水がノズルから噴射される事態を防ぐため、制御装置80は、給水動作において捨て水制御を実行する。
【0047】
この捨て水制御は、温度センサ78の検知結果に基づいて、第2主バルブ74及び副バルブ76の開閉状態を切り替えることで行われる。詳しくは、制御装置80は、温度センサ78による検知温度が所定の適温範囲外にあるとき、第2主バルブ74を閉じた状態のまま副バルブ76を開く。これにより、適温範囲外の水(例えば、冷たい滞留水)が副水路70を通して副吐水部40A、40Bに捨て水として供給される。一方、制御装置80は、検知温度が適温範囲内にあるとき、副バルブ76を閉じた状態のまま第2主バルブ74を開く。これにより、適温範囲内の水が第2主水路68を通して水利用部品66に供給され、その水が水利用部品66に用いられる。
【0048】
以上の捨て水制御によって副吐水部40A、40Bに捨て水が供給されると、副吐水部40A、40Bは捨て水を用いて副洗浄水流Fbを供給する。副吐水部40A、40Bは、洗浄動作とは異なるタイミングで供給される水を用いて、副洗浄水流Fbを供給することになる。ここでの「捨て水」とは、ケーシング14内で生じた外部に捨てられるべき水をいう。本実施形態の捨て水には、水利用部品66で利用されることなく捨てられる水が用いられる。
【0049】
各構成要素の他の変形例を説明する。
【0050】
ケーシング14は、実施形態とは異なり、不図示の便座によって構成されていてもよい。
【0051】
主吐水部30の数は特に限定されない。主吐水部30は、例えば、二つ以上あってもよい。主吐水部30は、便器本体12とは別体に設けられてもよい。
【0052】
副吐水部40A、40Bは、ケーシング14の一部としてケーシング14に設けられる例を説明した。この他にも、副吐水部40A、40Bは、ケーシング14とは別体のノズルに設けられてもよい。副吐水部40A、40Bは、便鉢部16の上方領域Rbに副洗浄水流Fbを当てることで、その上方領域Rbに副洗浄水流Fbを供給する例を説明した。これに限定されず、副吐水部40A、40Bは、便器本体12の凹部28aに当てた水を伝わせることで、便鉢部16の上方領域Rbまで副洗浄水流Fbを供給してもよい。
【0053】
副吐水部40A、40Bのガイド部46は、副吐水孔44A、44Bとは別体に設けられる例を説明した。この他にも、ガイド部46は、副吐水孔44A、44Bの一部として設けられてもよい。ガイド部46は、径方向外側に向けて副洗浄水流Fbをガイドできればよく、副洗浄水流Fbを上向きにガイドしてもよいし、上下方向にガイドしなくともよい。ガイド部46は、径方向外側に向かうにつれて上方に延びてもよいし、上下方向に延びていなくともよいということである。
【0054】
副吐水部40A、40Bは、便鉢部16の上端開口部16aよりも径方向外側に配置されてもよい。これは、例えば、便器本体12の凹部28aに当てた水を伝わせることで、便鉢部16の上方領域Rbまで副洗浄水流Fbを供給する場合を想定している。
【0055】
副吐水孔44A、44Bの形状は特に限定されない。副吐水孔44A、44Bは、たとえば、実施形態とは異なり、丸孔でもよい。
【0056】
副吐水部40A、40Bの数は特に限定されない。副吐水部40A、40Bは、単数でもよいし、三つ以上でもよい。
【0057】
副吐水部40A、40Bは、便鉢部16の前半範囲Rc1において上方領域Rbに副洗浄水流Fbを供給してもよい。
【0058】
副吐水部40A、40Bは、便鉢部16の内周面においてケーシング14と上下方向に重ならない箇所に副洗浄水流Fbを供給してもよい。
【0059】
副吐水部40A、40Bに供給される捨て水の具体例は、特に限定されない。捨て水は、例えば、ノズルの洗浄に用いられた捨て水でもよいし、エアギャップ装置に用いられる開放式タンクからオーバーフローした捨て水でもよい。この他にも、副吐水部40A、40Bには、捨て水ではなく、副洗浄水流Fbに専用の水が供給されてもよい。
【0060】
副吐水部40A、40bに供給される水の水温は特に限定されず、冷水及び温水のいずれが用いられてもよい。副吐水部40A、40Bに供給される水の成分は特に限定されない。副吐水部40A、40Bに供給される水は、例えば、除菌成分、抗菌成分、消臭成分、洗剤成分等を含有していてもよい。副吐水部40A、40Bに供給される水は除菌水等でよいともいえる。
【0061】
副吐水部40A、40Bは、洗浄動作とは異なるタイミングで供給される水を用いて、副洗浄水流Fbを供給する例を説明した。副吐水部40A、40Bは、洗浄動作及び予備動作の何れかのタイミングに合わせて、便鉢部16に副洗浄水流Fbを供給してもよい。洗浄動作は、前述の通り、便器本体12に用便した後に、主吐水部30に洗浄水を供給することで、便鉢部16内を洗浄する動作をいう。予備動作は、便器本体12に用便する前に、便鉢部16内に水を予め供給することで、便鉢部16内を濡らす動作をいう。予備動作は、便鉢部16内を予め濡らしておくことで、便鉢部16に汚物を付着させ難くするために行われる。
【0062】
洗浄動作のタイミングに合わせて便鉢部16に副洗浄水流Fbを供給する場合、便鉢部16に主洗浄水流Fa及び副洗浄水流Fbのそれぞれを供給するタイミングの先後関係は特に問わない。例えば、主吐水部30が便鉢部16に主洗浄水流Faを先に供給してから、副吐水部40A、40Bが副洗浄水流Fbを供給してもよい。この他にも、副吐水部40A、40Bが副洗浄水流Fbを先に供給してから、主吐水部30が主洗浄水流Faを供給してもよい。この他にも、主吐水部30及び副吐水部40A、40Bは主洗浄水流Fa及び副洗浄水流Fbを同時に供給してもよい。
【0063】
副吐水部40A、40Bから供給される副洗浄水流Fbの流速(m/s)は、主吐水部30から供給される主洗浄水流Faの流速よりも遅くすることが好ましい。これにより、この条件を満たさない場合と比べ、便鉢部16外への洗浄水の飛び跳ねを抑えることができる。特に、洗浄動作のタイミングに合わせて便鉢部16に副洗浄水流Fbを供給する場合、便鉢部16内での主洗浄水流Fa及び副洗浄水流Fbの合流による飛沫の飛び跳ねを抑える観点で有効となる。「主洗浄水流Faの流速」は、主吐水部30から吐き出された時点での流速をいう。「副洗浄水流Fbの流速」は、副吐水部40A、40Bから吐き出された時点での流速をいう。
【0064】
以上の実施形態及び変形例は例示に過ぎない。これらを抽象化した技術的思想は、実施形態及び変形例の内容に限定的に解釈されるべきではない。実施形態及び変形例において言及している構造には、寸法誤差等の誤差の分だけずれた構造も当然に含まれる。実施形態及び変形例の内容は、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態」との表記を付して強調している。しかしながら、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【符号の説明】
【0065】
10…便器装置、12…便器本体、14…ケーシング、16…便鉢部、16a…上端開口部、30…主吐水部、32…主吐水孔、40A、40B…副吐水部、44A、44B…副吐水孔、46…ガイド部、Ra…主洗浄領域、Rb…上方領域。
図1
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図9