(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045908
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】エアバッグ及びエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/206 20110101AFI20230327BHJP
【FI】
B60R21/206
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154523
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187193
【弁理士】
【氏名又は名称】林 司
(74)【代理人】
【識別番号】100181766
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 均
(72)【発明者】
【氏名】佐野 圭
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA02
3D054AA03
3D054AA08
3D054AA14
3D054BB08
3D054CC34
3D054CC43
3D054DD13
3D054FF17
(57)【要約】
【課題】インフレーター又はリテーナをエアバッグ内に挿入して取り付ける作業を行い易くして、作業性を向上させることが可能なエアバッグを提供する。
【解決手段】本発明のエアバッグ(10)は、袋状のエアバッグ本体部(11)を有し、エアバッグ本体部(11)は、インフレーター(70)を挿入する挿入口(16)と、インフレーター(70)の一部を突出させる突出口(17)とを有し、エアバッグ本体部(11)内に、インフレーター(70)を突出口(17)に案内するガイド布部(60)が配され、ガイド布部(60)の一部は、エアバッグ本体部(11)における突出口(17)の周辺部に固定され、ガイド布部(60)は、突出口(17)の周辺部からエアバッグ本体部(11)の内側に延びて配されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスが導入される気室を備えた袋状のエアバッグ本体部を有するエアバッグにおいて、
前記エアバッグ本体部は、前記ガスを発生させるインフレーターを前記エアバッグ本体部内に挿入する挿入口と、前記エアバッグ本体部内に挿入された前記インフレーターの一部を前記エアバッグ本体部の外側に突出させる突出口とを有し、
前記エアバッグ本体部の内部に、前記インフレーターを前記突出口に案内するガイド布部が配され、
前記ガイド布部の一部は、前記エアバッグ本体部における前記突出口の周辺部に固定され、
前記ガイド布部は、前記突出口の前記周辺部から前記エアバッグ本体部の内側に延びて配されている
ことを特徴とするエアバッグ。
【請求項2】
前記エアバッグ本体部内に、インナー布部が設けられ、
前記インナー布部は、前記インナー布部の一端部と他端部とに開口部を有する筒状の形状を有し、
前記インナー布部の一端部は、前記エアバッグ本体部の前記挿入口から挿入される前記インフレーターを前記インナー布部の内部に挿入可能なように、前記エアバッグ本体部における前記挿入口の近傍に配され、
前記ガイド布部は、前記インナー布部に接続され、又は前記インナー布部と一体的に形成されている
請求項1に記載のエアバッグ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の前記エアバッグと、前記エアバッグの内部に取り付けられる前記インフレーターとを有する
ことを特徴とするエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、袋状のエアバッグ本体部を有するエアバッグ、及び、そのエアバッグとインフレーターとを有するエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車には、自動車の衝突時等に乗員への衝撃を緩和するエアバッグ装置が装着されている。エアバッグ装置は、通常、ガスを発生させるインフレーターと、インフレーターからガスが供給されて膨張する袋状のエアバッグ本体部とを有する。エアバッグ装置としては、例えば、ステアリングホイールに設けられる運転席エアバッグ装置、インストルメントパネルに設けられる助手席エアバッグ装置、シートの外側に膨張するサイドエアバッグ装置、ルーフサイド部分から膨張するカーテンエアバッグ装置、ステアリングホイール又はインストルメントパネルの下側から膨張する膝用のニーエアバッグ装置等が知られている。
【0003】
例えば特開2017-81248号公報(特許文献1)には、サイドエアバッグ装置が記載されている。この特許文献1に記載されているサイドエアバッグ装置のエアバッグには、インフレーターを挿入するためのスリットが形成されている。また、そのエアバッグには、スリットの少なくとも一部を覆うカバークロスが設けられている。
【0004】
特許文献1には、エアバッグに設けたカバークロスがスリットを押さえ付けてスリットとインフレーター外周面との隙間を覆うため、エアバッグ膨張時にスリットからのガス漏れを抑制し、ガス流出量を低減することができると説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エアバッグ装置では、インフレーターとインフレーターの作動を制御する制御装置とが例えばワイヤーハーネスで接続される。このため、インフレーターをエアバッグ内に挿入して取り付けるときに、例えばインフレーターの一部(例えば、コネクター部)を、エアバッグに設けた突出口からエアバッグの外側に突出させる作業が行われることがある。
【0007】
またエアバッグ装置では、エアバッグ内の所定の位置にインフレーターを設置するために、インフレーターに、又はインフレーターを保持するリテーナに取付ボルトが設けられており、エアバッグには、インフレーター又はリテーナに設けた取付ボルトを挿通させるためのボルト挿通孔部が設けられていることがある。
【0008】
この場合、インフレーター又はリテーナをエアバッグ内に挿入してから、エアバッグ内でインフレーター又はリテーナを所定の位置まで移動させた後に、インフレーター又はリテーナに設置した取付ボルトを、エアバッグの内側から、エアバッグに形成したボルト挿通孔部を介して外側に突出させる作業が行われる。
【0009】
しかし、従来のエアバッグ装置又はエアバッグの構造において、インフレーター又はリテーナをエアバッグ内に挿入した後、エアバッグ内でのインフレーター又はリテーナの位置や向き(姿勢)を正確に把握できない又は把握し難いことから、インフレーターの一部をエアバッグの突出口から外側に突出させる作業や、インフレーター又はリテーナの取付ボルトをエアバッグの内側からボルト挿通孔部に通す作業を行うことが難しかった。特に、インフレーター又はリテーナをエアバッグ内に挿入した後は、そのインフレーター又はリテーナをエアバッグの外側から目視で確認できない状態で取付作業が行われることが多いため、作業性の低下や作業時間の遅延を招いていた。
【0010】
更に例えば、インフレーター又はリテーナをエアバッグ内に挿入するエアバッグの挿入口の位置と、エアバッグに設ける突出口の位置又はボルト挿通孔部の位置とが互いに離れている場合や、エアバッグ内でインフレーター又はリテーナをその設置位置まで迂回させるように移動させる場合等では、インフレーター又はリテーナをエアバッグに取り付ける作業が更に困難になることもあった。
【0011】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、インフレーター又はリテーナをエアバッグ内に挿入して取り付ける作業を行い易くして、作業性を向上させることが可能なエアバッグ、及びそのエアバッグ及びインフレーターを有するエアバッグ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明により提供されるエアバッグは、ガスが導入される気室を備えた袋状のエアバッグ本体部を有するエアバッグにおいて、前記エアバッグ本体部は、前記ガスを発生させるインフレーターを前記エアバッグ本体部内に挿入する挿入口と、前記エアバッグ本体部内に挿入された前記インフレーターの一部を前記エアバッグ本体部の外側に突出させる突出口とを有し、前記エアバッグ本体部の内部に、前記インフレーターを前記突出口に案内するガイド布部が配され、前記ガイド布部の一部は、前記エアバッグ本体部における前記突出口の周辺部に固定され、前記ガイド布部は、前記突出口の前記周辺部から前記エアバッグ本体部の内側に延びて配されていることを特徴とする。
【0013】
本発明に係るエアバッグにおいて、前記エアバッグ本体部内に、インナー布部が設けられ、前記インナー布部は、前記インナー布部の一端部と他端部とに開口部を有する筒状の形状を有し、前記インナー布部の一端部は、前記エアバッグ本体部の前記挿入口から挿入される前記インフレーターを前記インナー布部の内部に挿入可能なように、前記エアバッグ本体部における前記挿入口の近傍に配され、前記ガイド布部は、前記インナー布部に接続され、又は前記インナー布部と一体的に形成されていることが好ましい。
【0014】
次に、本発明により提供されるエアバッグ装置は、上述した構成を備える前記エアバッグと、前記エアバッグの内部に取り付けられるインフレーターとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のエアバッグ及びエアバッグ装置によれば、インフレーター又はリテーナをエアバッグ内に挿入して取り付ける作業を行い易くして、作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施例に係るエアバッグ装置のエアバッグを模式的に示す平面図である。
【
図2】
図1に示したII-II線における断面を模式的に示す模式図である。
【
図3】
図1に示したエアバッグに取り付けられるインフレーターを示す模式図である。
【
図4】インフレーターをエアバッグ本体部の挿入口からインナー布部内に挿入した状態を示す模式図である。
【
図5】エアバッグ本体部内に挿入したインフレーターをエアバッグ本体部内のカバー布部を越える位置まで移動させた状態を示す模式図である。
【
図6】エアバッグのガイド布部によるインフレーターの案内を説明する模式図である。
【
図7】エアバッグの突出口からインフレーターの一部を外側に突出させた状態を示す模式図である。
【
図8】本発明の変形例に係るエアバッグとインフレーターを模式的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態について、実施例を挙げて図面を参照しながら説明する。
【実施例0018】
図1は、本実施例に係るエアバッグ装置のエアバッグを模式的に示す平面図である。
図2は、
図1に示したII-II線における断面を模式的に示す模式図である。
図3は、本実施例のエアバッグに取り付けられるインフレーターを示す模式図である。なお、本実施例のエアバッグについては、便宜上、
図1の紙面における上下方向及び左右方向を、エアバッグ本体部の上下方向及び左右方向として説明を行う。
【0019】
本実施例のエアバッグ装置1は、自動車の衝突時等にステアリングホイール又はインストルメントパネルの下方から膨張、展開することによって、乗員の膝への衝撃を緩和するニーエアバッグ装置1であり、例えばインストルメントパネルの下部又は下方に装着される。
【0020】
このエアバッグ装置1は、エアバッグ10と、エアバッグ10の内部に取り付けられるインフレーター70とを有する(
図7を参照)。
本実施例のエアバッグ10は、
図1に示すように、インフレーター70から発生するガスにより膨張するエアバッグ本体部11と、エアバッグ本体部11が折り畳まれたときの形状を保持するラッピング布部20とを有する。
【0021】
エアバッグ本体部11には、インフレーター70をエアバッグ本体部11内に挿入する挿入口16と、エアバッグ本体部11内に挿入されたインフレーター70の一部(後述するコネクター部73)を外側に突出させる突出口17と、インフレーター70に設けた後述する取付ボルト74及び突起部75を挿通させる3つの挿通孔部18とが設けられている。
【0022】
また、本実施例のエアバッグ10は、
図2に示すように、エアバッグ本体部11における突出口17の周縁部を補強する補強布部30と、エアバッグ本体部11の挿入口16をエアバッグ本体部11内から覆うカバー布部40と、インフレーター70から発生したガスの熱や圧力に対する補強とガスの整流とを行うインナー布部50と、インフレーター70を突出口17に案内するガイド布部60とを有する。エアバッグ10の補強布部30、カバー布部40、インナー布部50、及びガイド布部60は、エアバッグ本体部11の内部に取着されている。
【0023】
エアバッグ本体部11は、1枚の基布又は複数枚の基布を縫い合わせることによって袋状に形成されている。なお本発明において、エアバッグ本体部11を形成する基布の枚数は特に限定されない。また、エアバッグ本体部11の形状及び大きさも特に限定されない。
【0024】
エアバッグ本体部11は、ガスが導入されて膨らむ気室12を有する。また、本実施例のエアバッグ本体部11には、縫製糸で形成されるとともに基布を縫い合わせる外周縫製部(外周接合部)5が、気室12の少なくとも一部を囲むように設けられている。更に、エアバッグ本体部11には、エアバッグ本体部11を形成する基布が折り返されることによって形成される直線状の折り返し側縁部4が設けられている。なお、本実施例のエアバッグ本体部11は、折り返し側縁部4に代えて、縫製部(外周縫製部)が左右の外周縫製部5に連続するように形成されていてもよい。
【0025】
エアバッグ本体部11は、エアバッグ本体部11が折り畳まれる前のフラットな状態に保持されたときに、折り返し側縁部4からエアバッグ本体部11の一方側の面(例えば、
図1の手前側の面)を形成する第1面部11aと、第1面部11aの反対側の面(例えば、
図1の奥側の面)を形成する第2面部11bとを有する(
図2を参照)。
【0026】
エアバッグ本体部11の第1面部11aと第2面部11bとは、上述した外周縫製部5によって縫い合わせられている。この場合、外周縫製部5は、エアバッグ本体部11の折り返し側縁部4における一端部(左側端部)及び他端部(右側端部)から、第1面部11a及び第2面部11bの外縁部に沿って形成されている。また、このエアバッグ本体部11の第1面部11aには、挿入口16、突出口17、及び3つの挿通孔部18が形成されている。
【0027】
エアバッグ本体部11の挿入口16は、インフレーター70を挿入可能な大きさで、スリット状に形成されている。突出口17は、楕円形又はそれに近い形状に形成されている。
【0028】
エアバッグ本体部11に設けられる3つの挿通孔部18は、それぞれ円形に形成されている。また、3つの挿通孔部18は、インフレーター70の後述するコネクター部73を突出口17から突出させたときに、そのインフレーター70の取付ボルト74及び突起部75の位置に対応するように配置されている。なお本発明において、エアバッグ本体部11の挿入口16、突出口17、及び挿通孔部18のそれぞれの形成位置、大きさ、及び形状は特に限定されず、インフレーター70の形状、構造、大きさ等に応じて変更可能である。また、挿通孔部18の設置数は、インフレーター70に設けられる取付ボルト74及び/又は突起部75の個数に対応していれば特に限定されない。
【0029】
エアバッグ本体部11の第1面部11aには、
図2に示すように、ラッピング布部20、補強布部30、カバー布部40、インナー布部50、及びガイド布部60が、縫製糸により形成される複数の取付縫製部6によって取り付けられている。この場合、ラッピング布部20は、エアバッグ本体部11における第1面部11aの外面に取着されている。補強布部30、カバー布部40、インナー布部50、及びガイド布部60は、エアバッグ本体部11における第1面部11aの内面に取着されている。
【0030】
ラッピング布部20は、エアバッグ10の平面視(
図1)において、エアバッグ本体部11の一部の領域と重なるように、特に本実施例では、エアバッグ本体部11における挿入口16、突出口17、及び3つの挿通孔部18を含む領域と重なるように取り付けられている。
【0031】
ラッピング布部20には、エアバッグ本体部11に設けた挿入口16、突出口17、及び3つの挿通孔部18に対応する挿入口16、突出口17、及び3つの挿通孔部18が、エアバッグ本体部11と同様に設けられている。なお本発明において、ラッピング布部20の形状、大きさ、材質等は特に限定されない。また、エアバッグ10は、ラッピング布部20を用いることなく形成されていてもよい。
【0032】
補強布部30は、エアバッグ本体部11の内面における突出口17の周縁部の一部に、取付縫製部6によって、エアバッグ本体部11の第1面部11aとガイド布部60の間に挟まれた状態で取り付けられている。補強布部30は、1枚の生地により形成されていてもよく、複数枚の生地が重ねられて形成されていてもよい。
【0033】
カバー布部40は、略矩形状の生地によって形成されており、エアバッグ本体部11の挿入口16をエアバッグ本体部11の内側から覆うように配されている。カバー布部40には、インフレーター70の取付ボルト74を挿通させる1つの挿通孔部18が、エアバッグ本体部11に設けられる挿通孔部18の位置に対応して設けられている。
【0034】
また、カバー布部40は、後述するようにエアバッグ10にインフレーター70を取り付けたときに、エアバッグ本体部11の第1面部11aとインフレーター70とに挟持され、それによって、挿入口16をエアバッグ本体部11の内側から覆って塞ぐことができる。その結果、インフレーター70からガスが供給されてエアバッグ本体部11が膨張するときに、挿入口16からのガス漏れを抑制し、ガス流出量を低減できる。
【0035】
カバー布部40は、
図2に示したように、エアバッグ本体部11の挿入口16と突出口17の間の位置で、カバー布部40の一端部をエアバッグ本体部11の第1面部11aに重ね合わせて、取付縫製部6によって固定されている。また、カバー布部40は、取付縫製部6によって固定されている部分からエアバッグ本体部11の内側に向けて延びている。更に、エアバッグ本体部11内に延びるカバー布部40は、筒状のインナー布部50の内側に挿入されている。この場合、カバー布部40のインナー布部50内に挿入される部分は、カバー布部40におけるエアバッグ本体部11に固定される側の端部とは反対側の端部を含む部分である。本実施例において、カバー布部40は、1枚の生地により形成されていてもよく、複数枚の生地が重ねられて形成されていてもよい。
【0036】
このようなカバー布部40がエアバッグ本体部11内に設置されていることにより、インフレーター70をエアバッグ本体部11の挿入口16から挿入し、更に、そのインフレーター70の一部をエアバッグ本体部11の突出口17から突出させるためには、挿入口16から挿入されたインフレーター70を、カバー布部40を迂回するように挿入口16まで移動させること、具体的には、インフレーター70を、カバー布部40を越える位置まで移動させ(
図5を参照)、更に、インナー布部50内でカバー布部40の裏側を通して、エアバッグ本体部11の挿入口16まで移動させることが必要である。
【0037】
インナー布部50は、インナー布部50の一端部と他端部とに開口部が設けられた筒状の形状に形成されている。この場合、インナー布部50の挿入口16に近い側に配される開口部を第1開口部51とし、挿入口16から離れた側に配される開口部を第2開口部52とする。
【0038】
このような筒状のインナー布部50は、例えば
図7に示したように、インナー布部50内に保持されるインフレーター70のガス噴出部72からガスを発生させたときに、インナー布部50内でガスの整流を行うとともに、そのガスをインナー布部50の第1開口部51と第2開口部52とからエアバッグ本体部11内に流通させることができる。また、インナー布部50には、インフレーター70の取付ボルト74及び突起部75を挿通させる2つの挿通孔部18が、エアバッグ本体部11に設けられる挿通孔部18の位置に対応して設けられている。
【0039】
このインナー布部50は、取付縫製部6によって、エアバッグ本体部11の第1面部11aの内面に固定されている。また本実施例では、インナー布部50の一端部に設けた第1開口部51が、エアバッグ本体部11に設けたスリット状の挿入口16を開いたときに、エアバッグ本体部11の外側から挿入口16を介して見えるように、インナー布部50の一端部が、エアバッグ本体部11の挿入口16の近傍の位置に、好ましくは挿入口16に隣接する位置に配されている。これにより、インフレーター70を挿入口16からエアバッグ本体部11内に挿入するときに、そのインフレーター70を筒状のインナー布部50の内側に容易に且つ円滑に進入させることができる。
【0040】
ガイド布部60は、エアバッグ本体部11内において、エアバッグ本体部11の挿入口16から挿入されたインフレーター70を突出口17に向けて案内するように、エアバッグ本体部11における突出口17の周辺部とインナー布部50との間に亘って連続的に配されている。
【0041】
この場合、ガイド布部60の一部は、
図2に示すように、エアバッグ本体部11の前記周辺部において、具体的には、エアバッグ本体部11における突出口17と左側の外周縫製部5の間の位置において、エアバッグ本体部11の第1面部11aに取付縫製部6で固定されている。
【0042】
また、ガイド布部60は、エアバッグ本体部11内で、エアバッグ本体部11との固定位置(すなわち、エアバッグ本体部11の突出口17と外周縫製部5の間の位置)からガイド布部60に向けて延びている。更に、ガイド布部60の先端部は、インナー布部50の第1開口部51が設けられている側の端部に、縫製糸で形成される固定縫製部7によって縫い付けられている。この場合、ガイド布部60の先端部は、インナー布部50の一端部におけるエアバッグ本体部11の第2面部11bに近い位置の外面に縫着されている。
【0043】
本実施例のエアバッグ10に取り付けられるインフレーター70は、
図3に示したように、略円筒状に形成されたシリンダ型のインフレーター70である。このインフレーター70は、インフレーター本体部71と、インフレーター本体部71の一端部(
図3の右側端部)から延びるガス噴出部72と、インフレーター本体部71の他端部(
図3の左側端部)に設けられるコネクター部73とを有する。インフレーター70のコネクター部73は、衝突等を検知するセンサーの信号を出力するセンサー側コネクター部78と接続される(
図7を参照)。また、インフレーター70は、衝突等を検知したセンサーからの信号がセンサー側コネクター部78及びコネクター部73を介して入力されたときにインフレーター本体部71でガスを発生させ、そのガスをガス噴出部72から噴出させるように形成されている。
【0044】
インフレーター70には、インフレーター70を固定するために設けられる2本の取付ボルト74と、インフレーター70の位置決め及び固定に用いられる突起部75とが設けられている。この場合、突起部75は、円柱又は角柱の形状を有する。インフレーター70における2本の取付ボルト74と突起部75とは、例えばインフレーター70の長さ方向の一方側から見たときに(不図示)、インフレーター本体部71及びガス噴出部72から同じ方向に向けて突出している。なお本発明において、取付ボルト74及び突起部75の形状、大きさ、及び設置数は限定されない。また、本発明のインフレーター70は、突起部75を設けずに形成されていてもよい。
【0045】
次に、インフレーター70をエアバッグ本体部11の挿入口16から挿入して、インフレーター70のコネクター部73を突出口17から突出させた状態でエアバッグ本体部11に取り付ける方法について、
図4~
図7を参照しながら説明する。
【0046】
先ず、インフレーター70を、エアバッグ本体部11の挿入口16からエアバッグ本体部11の内部に挿入する。このとき、例えば作業者が、エアバッグ本体部11の第1面部11aの一部(具体的には、エアバッグ本体部11における挿入口16に対して挿入方向の奥側に近傍する部分)を持ち上げることによって、スリット状の挿入口16を開くとともに、その第1面部11aに固定されている筒状のインナー布部50の第1開口部51を開くことができる。
【0047】
更に
図4に示すように、インフレーター70を、そのガス噴出部72側からエアバッグ本体部11の挿入口16に挿し込んで、エアバッグ本体部11内に挿入し、更に、筒状のインナー布部50の内側(内部空間)に進入させる。このとき、インフレーター70は、インナー布部50において、カバー布部40の第1表面側(
図5におけるカバー布部40の上面側)に挿入される。ここで、カバー布部40の第1表面は、カバー布部40においてエアバッグ本体部11の第1面部11aに対向する側の表面を言う。また、カバー布部40の第2表面は、エアバッグ本体部11の第2面部11bに対向する側の表面を言う。
【0048】
続いて、インフレーター70を更に押し込むことにより、
図5に示したように、インフレーター70の全体をエアバッグ本体部11内に完全に挿入し、更に、カバー布部40を越える位置まで移動させる。このとき、インフレーター70のガス噴出部72側の端部が、インナー布部50の第2開口部52からインナー布部50の外側に飛び出してもよい。
【0049】
この場合、インナー布部50の第2開口部52が設けられている他端部と、エアバッグ本体部11の右側の外周縫製部5との間の距離が、インフレーター70の長さよりも短く設定されていることが好ましい。これにより、インフレーター70が、エアバッグ本体部11内で作業者により視認できない状態であっても、インナー布部50の第2開口部52側から抜け出してエアバッグ本体部11の奥深くまで必要以上に移動することを抑制し、インフレーター70の少なくとも一部をインナー布部50内に留めておくことができる。
【0050】
なお、インフレーター70に関して、上述したカバー布部40を越える位置とは、インフレーター70が、カバー布部40の上述した第1表面(上面)側から、カバー布部40の第2表面(下面)側に移動可能な位置と言うこともできる。また、インフレーター70の全体がエアバッグ本体部11内に挿入された後のインフレーター70の移動については、例えば、エアバッグ本体部11を保持して傾けることによってインフレーター70の自重を利用してインフレーター70を移動させることや、エアバッグ本体部11でインフレーター70が挿入されている部分を外側から触ってインフレーター70を移動方向に押すこと等によって、インフレーター70を移動させることが可能である。
【0051】
次に、
図5のようにカバー布部40を越える位置まで移動させたインフレーター70を、インナー布部50内でカバー布部40の第2表面(下面)側に移動させる。更に、そのインフレーター70を、インフレーター70のコネクター部73がインナー布部50の第1開口部51から突出するように移動させる(
図6を参照)。
【0052】
インフレーター70の一部をインナー布部50から飛び出させた後、そのインフレーター70を、
図6に矢印9aで示すように、エアバッグ本体部11の突出口17に向けて更に移動させる。このとき、インナー布部50の第1開口部51が設けられている端部とエアバッグ本体部11の突出口17の周辺部との間には、ガイド布部60が連続的に配されている。
【0053】
ここで、例えばエアバッグ本体部11に本実施例のガイド布部60が配されていなかった場合を想定する。この場合、インフレーター70をインナー布部50の第1開口部51から外側に移動させたときに、作業者はインフレーター70を目視できないため、インフレーター70が、作業者の意図に反して、例えばエアバッグ本体部11の第2面部11bに近付く方向(例えば、
図6に示す仮想線の矢印9bの方向)等のように、突出口17に向かう方向以外の方向に移動する可能性があり、その場合、インフレーター70がエアバッグ本体部11の奥深くまで入り込むことがある。このようにインフレーター70が移動してしまうと、インフレーター70のコネクター部73をエアバッグ本体部11の突出口17から外側に突出させる作業を滞らせ、その結果、作業時間の遅延等を招く原因となる。
【0054】
これに対し、本実施例のエアバッグ10では、ガイド布部60が上述のように設置されていることにより、インナー布部50の第1開口部51から飛び出したインフレーター70を移動させるときに、作業者がインフレーター70を直接目視できなくても、インフレーター70がガイド布部60に沿って進むことにより、ガイド布部60でインフレーター70の移動が補助されるため、インフレーター70を突出口17に向けて案内できる。従って、インフレーター70を、インナー布部50の第1開口部51から突出口17まで円滑に、また短時間で移動させることができる。
【0055】
インフレーター70を突出口17の位置又はその近傍位置まで移動させた後、インフレーター70のコネクター部73を突出口17からエアバッグ本体部11の外側に突出させる(
図7を参照)。このとき、インフレーター70の少なくともガス噴出部72を含む部分は、インナー布部50内に保持される。また、突出口17から突出させたインフレーター70のコネクター部73には、その後、センサー側コネクター部78が接続される。
【0056】
インフレーター70のコネクター部73をエアバッグ本体部11の外側に突出させた後、作業者がインフレーター70を保持して、インフレーター70の取付ボルト74及び突起部75を、
図7に示すように、カバー布部40、インナー布部50、エアバッグ本体部11、及びラッピング布部20に設けた挿通孔部18に挿通させて、エアバッグ本体部11の外側に突出させる。なお、
図7と後述する変形例を示す
図8とにおいては、インフレーター70の取付ボルト74及び突起部75をエアバッグ本体部11等に挿通させる作業を判り易く示すために、取付ボルト74及び突起部75を、
図3~
図6よりも長さが伸びたように示しているが、実際の取付ボルト74及び突起部75は、所定の長さを有しており、エアバッグ本体部11等に挿通させるときに
図7及び
図8のように長く伸びることはない。
【0057】
このようにインフレーター70の取付ボルト74及び突起部75をエアバッグ10の挿通孔部18に挿通させる作業では、作業者が、インフレーター70の一部を直接保持しながら、取付ボルト74及び突起部75を各挿通孔部18に挿通させることができるため、その作業を比較的容易に行うことができる。また、エアバッグ本体部11の外側に突出させた取付ボルト74及び突起部75は、その後、例えばインストルメントパネル等に取り付けられる。
【0058】
以上のように、本実施例のエアバッグ装置1では、インフレーター70を案内する専用のガイド布部60が、エアバッグ本体部11内でインナー布部50とエアバッグ本体部11の突出口17の周辺部との間を繋ぐように連続的に配されていることにより、インフレーター70をエアバッグ本体部11の内部で挿入口16から突出口17まで円滑に且つ短時間で移動させることができる。また、インフレーター70がエアバッグ本体部11の奥深くまで入り込むことも抑制できる。
【0059】
従って、本実施例のエアバッグ10によれば、インフレーター70の取付作業がガイド布部60によって補助されるため、例えば従来の一般的なエアバッグに比べて、インフレーター70を滞りなくエアバッグ10に取り付けることができる。それによって、インフレーター70の取り付け作業の作業性を向上させること、また、その作業時間を短縮させることが可能となる。その結果、作業者の負担を軽減でき、また、製造コストの削減を図ることができる。
【0060】
更に本実施例のエアバッグ10では、ガイド布部60によって、インナー布部50の第1開口部51側の端部とエアバッグ本体部11の突出口17の周辺部とが接続されていることにより、インナー布部50内でインフレーター70のガス噴出部72からガスが噴き出したときに、膨張するエアバッグ本体部11内でのインナー布部50の位置を安定させるとともに、インナー布部50の第1開口部51がガス圧力で拡がることを抑制できる。
【0061】
特に本実施例の場合、エアバッグ本体部11内において、例えば
図2に示すように、インナー布部50の第1開口部51側の端部とエアバッグ本体部11の左側の外周縫製部5との間の間隔D1が、インナー布部50の第2開口部52側の端部と右側の外周縫製部5との間の間隔D2よりも広く確保されている。
【0062】
ここで、例えば本実施例のガイド布部60がエアバッグ本体部11内に設けられていなかった場合を想定したとき、インフレーター70のガス噴出部72から噴き出すガスは、前記間隔D1が広くなるインナー布部50の第1開口部51側に流れ易くなる。またそれによって、インナー布部50の第1開口部51は、ガスの圧力で第2開口部52よりも拡がり易くなり、その結果、ガスが、インナー布部50の第1開口部51側に更に流れ易くなる可能性がある。
【0063】
これに対し、本実施例のエアバッグ10では、ガイド布部60がインナー布部50の第1開口部51側の端部とエアバッグ本体部11の突出口17の周辺部とに接続されていることにより、ガイド布部60でガスの流れを部分的に遮ることができ、それによって、インナー布部50の第1開口部51から流出するガスの流量を低下させることができる。また、ガイド布部60でインナー布部50の第1開口部51側の端部の位置を安定させることができるため、インナー布部50の第1開口部51が、ガスの圧力によって第2開口部52よりも拡がることや、インナー布部50がガスの圧力の変動によって部分的に折れ曲がること等を抑制できる。その結果、インナー布部50の第1開口部51から流出するガスの流量と、第2開口部52から流出するガスの流量との差を低減でき、それによって、エアバッグ10を効率的に膨張展開させ易くすることができる。
【0064】
なお、本発明は、上述した実施例に何ら限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。
例えば上述した実施例において、ガイド布部60は、インナー布部50と別体に形成されており、且つ、インナー布部50の第1開口部51側の一端部に固定縫製部7によって固定されているとともに、エアバッグ本体部11の突出口17の周辺部に取付縫製部6によって固定されている。
【0065】
しかし本発明では、例えば
図8に変形例に係るエアバッグ10aを模式的に示すように、ガイド布部60aが、インナー布部50aの基布が部分的に延ばされることによって、インナー布部50aと一体的に形成されていてもよい。この場合、実施例のエアバッグ10で設けたような固定縫製部7を省略できる。また、インナー布部50aから延びたガイド布部60aの先端部は、前述の実施例のエアバッグ10と同様に、エアバッグ本体部11の突出口17の周辺部に取付縫製部6によって固定されている。
【0066】
なお、この変形例に係るエアバッグ10aは、ガイド布部60a及びインナー布部50aの形態が異なることを除いて、上記実施例で説明したエアバッグ10と実質的に同様に形成されている。従って、この変形例のエアバッグ10aにおいて、上述した実施例のエアバッグ10と実質的に同じ部材及び部位は、同じ符号を用いて示すことによって、その詳しい説明を省略する。
【0067】
この
図8に示した変形例のエアバッグ10aにおいても、前述した実施例のエアバッグ10の場合と同様の効果を得ることができる。
【0068】
また前述した実施例では、取付ボルト74及び突起部75を備えたインフレーター70が、エアバッグ本体部11内に挿入されて取り付けられている。しかし本発明では、例えば取付ボルト及び突起部が設けられたリテーナに、コネクター部、インフレーター本体部、及びガス噴出部を備えたインフレーターを取り付けて保持し、そのインフレーターをリテーナとともにエアバッグ本体部内に挿入して取り付けることも可能である。
【0069】
更に、前述した実施例のエアバッグ装置1は、ニーエアバッグ装置1として形成されている。しかし、本発明のエアバッグ装置は、これに限定されるものではなく、例えば運転席エアバッグ装置、助手席エアバッグ装置、サイドエアバッグ装置、又はカーテンエアバッグ装置等として形成されていてもよい。また、エアバッグの全体形状及び大きさ等も特に限定されず、例えば自動車の種類や形態、エアバッグ装置の装着位置等に応じて変更することが可能である。