IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電産トーソク株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電磁ポンプ 図1
  • 特開-電磁ポンプ 図2
  • 特開-電磁ポンプ 図3
  • 特開-電磁ポンプ 図4
  • 特開-電磁ポンプ 図5
  • 特開-電磁ポンプ 図6
  • 特開-電磁ポンプ 図7
  • 特開-電磁ポンプ 図8
  • 特開-電磁ポンプ 図9
  • 特開-電磁ポンプ 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045919
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】電磁ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04B 17/04 20060101AFI20230327BHJP
【FI】
F04B17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154539
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】日本電産トーソク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(74)【代理人】
【識別番号】100092853
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮一
(72)【発明者】
【氏名】小川 槙也
(72)【発明者】
【氏名】倉持 健太
【テーマコード(参考)】
3H069
【Fターム(参考)】
3H069AA03
3H069BB02
3H069CC04
3H069DD15
3H069DD16
3H069DD48
3H069EE02
3H069EE05
3H069EE12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ピストンの下死点を正確に規定して流体の吐出圧と吐出量を一定に保つことができる電磁ポンプを提供する。
【解決手段】ボビン4と、コイル5と、プランジャ6と、プランジャピン7と、固定コア8とを有するソレノイドアッシSAと、樹脂カバー11と、ソレノイド収容体2と、板状部材3と、を備えるソレノイド装置と、ピストン22をプランジャピン7側に付勢するコイルスプリング(付勢手段)24と、を含んで構成される電磁ポンプ1において、スリーブ23の貫通孔(23a~23d)の軸方向一方側に設けられ、軸方向に交わる面を有した段部23eと、ピストン22の軸方向一方側に設けられ、段部23eに対向したフランジ部22aと、を備え、フランジ部22aの軸方向一方側が段部23eに接触することによってピストン22の下死点を規定する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に往復動してポンピング作用を行う柱状のピストンと、前記ピストンを軸方向に摺動可能に保持する貫通孔が形成されたスリーブと、前記ピストンを軸方向に往復動させるピストン駆動手段を備え、
前記ピストン駆動手段は、
筒状のボビンと、前記ボビンに巻回されたコイルと、前記ボビンの軸中心を貫通する貫通孔の軸方向一方側に軸方向に移動可能に配置されたプランジャと、前記プランジャに軸方向一方側が固定されて軸方向他方側が前記プランジャから軸方向に突出し、前記ピストンを移動させるプランジャピンと、前記プランジャピンを軸方向に移動可能に案内する固定コアと、を有するソレノイドアッシと、
前記ソレノイドアッシを覆う樹脂カバーと、
前記樹脂カバーの軸方向他端側に接触する天井部と前記天井部の径方向外側から軸方向他方側に延びる壁部とを備えたソレノイド収容体と、
前記ソレノイドアッシの天井部に対向して前記ソレノイドアッシの軸方向他方側に接触する板状部材と、
を備えるソレノイド装置と、
前記ピストンを前記プランジャピン側に付勢する付勢手段と、
を含んで構成される電磁ポンプであって、
前記スリーブの前記貫通孔の軸方向一方側に設けられ、軸方向に交わる面を有した段部と、
前記ピストンの軸方向一方側に設けられ、前記段部に対向したフランジ部と、を備え、前記フランジ部の軸方向一方側が前記段部に接触することによって前記ピストンの下死点が規定されることを特徴とする電磁ポンプ。
【請求項2】
前記スリーブの軸方向一方側に大小異径の円穴を形成し、大径側の円穴の底部に前記段部を設け、小径側の円穴に前記付勢手段を収容したことを特徴とする請求項1に記載の電磁ポンプ。
【請求項3】
前記スリーブの大径側の前記円穴に前記固定コアの軸方向一端部を嵌め込み、前記ピストンの前記フランジ部の軸方向他端面が前記固定コアの軸方向一端面に接触することによって前記ピストンの上死点が規定されることを特徴とする請求項1または2に記載の電磁ポンプ。
【請求項4】
前記スリーブの前記貫通孔内に前記ピストンとの間で画成されるポンプ室と吸入通路とを選択的に連通させる連通路を形成したことを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の電磁ポンプ。
【請求項5】
前記連通路は、前記ピストンの前記ポンプ室側の軸方向一方側に軸方向に沿って形成された連通孔と、前記ピストンの軸方向一方側外周の一部に形成された溝と前記スリーブの前記貫通孔との間に形成される円筒状隙間とで構成され、
前記コイルへの通電を遮断した状態では、前記吸入通路と前記ポンプ室とを連通させ、前記コイルへの通電を開始すると、前記吸入通路と前記ポンプ室との連通を遮断することを特徴とする請求項4に記載の電磁ポンプ。
【請求項6】
前記ポンプ室と吐出通路との間に設けられるチェック弁と前記ピストンとを前記ピストンの移動方向に同軸に配置したことを特徴とする請求項4または5に記載の電磁ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストンの往復動によるポンピング作用によって流体を圧送するための電磁ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両用エンジンにおいては、ピストンとシリンダとの摺動部を潤滑及び冷却するために当該摺動部にオイルが供給されるが、このオイルの供給には、電磁駆動力によって動作する電磁ポンプが用いられている。この種の電磁ポンプに関しては、今までに種々の提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。ここで、特許文献1において提案された電磁ポンプを図10に示す。なお、以下の説明では、図10の矢印方向をそれぞれ「上」、「下」方向とする。
【0003】
図10は特許文献1において提案された電磁ポンプ101の縦断面図であり、図示の電磁ポンプ101は、軸方向(図10の上下方向)に往復動してポンピング作用を行う複数のピストン122と、各ピストン122を上下方向に摺動可能に保持する貫通孔121aが形成されたポンプボディ121と、ピストン122を軸方向に往復動させるピストン駆動手段としてのソレノイド装置110を備えている。
【0004】
ここで、ソレノイド装置110は、円筒状のボビン104と、該ボビン104に巻回されたコイル105と、ボビン104の軸中心を貫通する円孔状の貫通孔104aの上端部に上下方向に移動可能に配置されたプランジャ106と、該プランジャ106に上端部が固定されて下端部がプランジャ106から下方に突出するプランジャピン107と、該プランジャピン107を上下方向に移動可能に案内する固定コア108を主な構成要素としている。そして、このソレノイド装置110においては、ボビン104、コイル105、プランジャ106、プランジャピン107、固定コア108などは有底筒状のソレノイドカバー102によって覆われおり、該ソレノイドカバー102の開口部は、板状部材(プレート)103によって塞がれている。
【0005】
他方、ポンプボディ121内の上部には、板状部材103によって区画された駆動室S1が形成されており、この駆動室S1には、流入通路141と、各ピストン122の周囲の一部に形成された吸入通路131が連通している。そして、ポンプボディ121の各ピストン122によって区画された各ポンプ室Pは、吐出口125とチェック弁126を介して吐出通路127にそれぞれ選択的に連通する。
【0006】
ここで、複数のピストン122の上端部は、円板状のディスク150に連結されており、ディスク150の上面中央には、プランジャピン107の下端面が当接している。また、ディスク150とこれに連結された複数のピストン122は、各ピストン122の周囲にそれぞれ配されたコイルスプリング124によって常時上方に付勢されている。
【0007】
以上のように構成された電磁ポンプ101において、コイル105への通電が遮断されている状態では、プランジャ106とプランジャピン107には電磁駆動力が作用しないため、ディスク150とこれに連結された複数のピストン122は、各コイルスプリング124の付勢力によって上方に移動し、図10に鎖線にて示すように、ディスク150の上面が固定コア108の下端面に当接した位置(上死点)で停止する。このとき、オイルは、図10に矢印にて示すように、流入通路141から駆動室S1及び吸入通路131を通ってポンプ室Pへと流入する。
【0008】
上記状態からコイル105へと通電されると該コイル105に磁界が発生し、この磁界によってプランジャ106とプランジャピン107が磁化される。このため、これらのプランジャ106とプランジャピン107が電磁駆動力によってコイルスプリング124の付勢力に抗して下動し、プランジャピン107がディスク150を押圧する。すると、このディスク150とこれに連結された複数のピストン122も同時に下動してポンピング作用がなされ、ポンプ室Pのオイルが圧縮されてその圧力が高められる。
【0009】
そして、ポンプ室Pの高圧のオイルは、その圧力で各チェック弁126を押し開くため、この高圧のオイルが各吐出口125を通って各吐出通路127へと吐出され、例えば、エンジンの摺動部へと供給されて該摺動部の潤滑と冷却に供される。この場合、各ピストン122は、図10に実線にて示すように、ディスク150の下面がポンプボディ121のストッパ121bに当接する位置(下死点)で停止する。
【0010】
以上の作用が連続的に繰り返されることによって、当該電磁ポンプ101から所定量のオイルが吐出されてエンジンの摺動部などへと継続的に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008-025398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図10に示す電磁ポンプ101においては、各ピストン122のポンピング作用時のストローク、つまり、ディスク150の上面が固定コア108の下端面に当接する上死点とディスク150の下面がストッパ121bに当接する下死点との間の距離によって決定され、このストロークによってオイルの圧縮比(吐出圧)や吐出量が決定されるが、各ピストン122自体に下死点を規定する位置決め機構がない。このため、プランジャピン107とディスク150及びディスク150とピストン122との各取付誤差が集積され、この誤差のために各ピストンの122下死点位置にバラツキが生じ、このバラツキのためにピストン122のストロークにもバラツキが発生し、オイルの吐出圧や吐出量が安定しないという問題がある。
【0013】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、ピストンの下死点を正確に規定して流体の吐出圧と吐出量を一定に保つことができる電磁ポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明は、
軸方向に往復動してポンピング作用を行う柱状のピストンと、前記ピストンを軸方向に摺動可能に保持する貫通孔が形成されたスリーブと、前記ピストンを軸方向に往復動させるピストン駆動手段を備え、
前記ピストン駆動手段は、
筒状のボビンと、前記ボビンに巻回されたコイルと、前記ボビンの軸中心を貫通する貫通孔の軸方向一方側に軸方向に移動可能に配置されたプランジャと、前記プランジャに軸方向一方側が固定されて軸方向他方側が前記プランジャから軸方向に突出し、前記ピストンを移動させるプランジャピンと、前記プランジャピンを軸方向に移動可能に案内する固定コアと、を有するソレノイドアッシと、
前記ソレノイドアッシを覆う樹脂カバーと、
前記樹脂カバーの軸方向他端側に接触する天井部と前記天井部の径方向外側から軸方向他方側に延びる壁部とを備えたソレノイド収容体と、
前記ソレノイドアッシの天井部に対向して前記ソレノイドアッシの軸方向他方側に接触する板状部材と、
を備えるソレノイド装置と、
前記ピストンを前記プランジャピン側に付勢する付勢手段と、
を含んで構成される電磁ポンプであって、
前記スリーブの前記貫通孔の軸方向一方側に設けられ、軸方向に交わる面を有した段部と、
前記ピストンの軸方向一方側に設けられ、前記段部に対向したフランジ部と、を備え、前記フランジ部の軸方向一方側が前記段部に接触することによって前記ピストンの下死点が規定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、軸方向の往復動によってポンピング作用を行うピストン自体に下死点を規定する位置決め機構が設けられているため、該ピストンの下死点位置にバラツキが生じす、ピストンのストロークが一定に保たれて流体の吐出圧や吐出量が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る電磁ポンプの斜視図である。
図2】本発明に係る電磁ポンプの破断斜視図である。
図3】本発明に係る電磁ポンプの板状部材の平面図である。
図4】(a)~(c)は本発明に係る電磁ポンプにおけるソレノイド収容体と板状部材とを連結一体化する方法をその工程順に示す部分側面図である。
図5】本発明に係る電磁ポンプの通電OFF時の状態を示す縦断面図である。
図6図5のA部拡大詳細図である。
図7図6のB-B線断面図である。
図8】本発明に係る電磁ポンプの通電ON時の状態を示す縦断面図である。
図9図8のC部拡大詳細図である。
図10】特許文献1において提案された電磁ポンプの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は本発明に係る電磁ポンプの斜視図、図2は同電磁ポンプの破断斜視図、図3は同電磁ポンプの板状部材の平面図、図4(a)~(c)は同電磁ポンプにおけるソレノイド収容体と板状部材とを連結一体化する方法をその工程順に示す部分側面図、図5は本発明に係る電磁ポンプの通電OFF時の状態を示す縦断面図、図6図5のA部拡大詳細図、図7図6のB-B線断面図、図8は本発明に係る電磁ポンプの通電ON時の状態を示す縦断面図、図9図8のC部拡大詳細図である。なお、以下の説明においては、図1図3に示す矢印方向をそれぞれ「前後」、「左右」及び「上下」方向とする。
[電磁ポンプの構成]
本実施の形態に係る電磁ポンプ1は、不図示の車両用エンジンの摺動部にオイル(潤滑油)を供給するためのものであって、大きくはピストン駆動手段を構成する本発明に係るソレノイド装置10と、該ソレノイド装置10によって駆動されて所要のポンピング作用を行うポンプ部20とを備えている。
【0019】
本発明に係るソレノイド装置10は、図2及び図5に示すように、矩形枠状のソレノイド収容体2と該ソレノイド収容体2の下面に取り付けられた矩形平板状の板状部材(プレート)3によって形成される空間内に、ボビン4、コイル5、プランジャ6、プランジャピン7、固定コア8などによって構成されるソレノイドアッシ(ソレノイド組立体)SAを収容して構成されている。なお、ソレノイド装置10の構成の詳細については後述する。
【0020】
また、ポンプ部20は、図2及び図5に示すように、矩形ブロック状のポンプボディ21を備えており、このポンプボディ21内には、上下に往復動可能な円柱状のピストン22と、該ピストン22を軸方向に摺動可能に保持するスリーブ23などが収容されている。なお、ポンプ部20の構成の詳細についても後述する。
【0021】
(ソレノイド収容体と板状部材との連結一体化構造)
ここで、ソレノイド装置10に設けられたソレノイド収容体2と板状部材3との連結一体化構造を図1図4に基づいて以下に説明する。
【0022】
本実施の形態に係るソレノイド装置10においては、ソレノイド収容体2と板状部材3とはカシメによって互いに連結一体化され、ソレノイドアッシSAは、ソレノイド収容対2と板状部材3によって挟持されている。具体的には、図1及び図2に示すように、ソレノイド収容体2の天井部2aの左右両端部から下方に向かって垂直に延びる一対の壁部2bの下端中央部(前後方向中央部)には、二股状の突片部2c(図1及び図2には一方のみ図示)が下方に向かって一体に突設されている。
【0023】
他方、図3に示すように、板状部材3の左右端縁の前後方向中央部には、突片収容部を構成する矩形の切欠き孔3aがそれぞれ形成されている。また、板状部材3の対角線上の左右2箇所のコーナー部には、平面視三角状のブラケット3bがそれぞれ一体に突設されており、各ブラケット3bの中央部には、円孔状のボルト挿通孔3cがそれぞれ形成されている。
【0024】
そして、ソレノイド収容体2と板状部材3とは、ソレノイド収容体2の左右の壁部2bの下端部に形成された突片部2cを板状部材3の左右の切欠き孔3aに上方から嵌め込んで通し、各突片部2cを水平方向(軸直角方向)に押し開いて拡幅させる(カシメる)ことによって互いに連結一体化される。
【0025】
ここで、ソレノイド収容体2と板状部材3とをカシメによって連結一体化する方法を図4(a)~(c)にしたがって工程順に説明する。
【0026】
ソレノイド収容体2の左右の壁部2bの下端部にそれぞれ突設された二股状の突片部2cは、該ソレノイド収容体2を板状部材3に連結する前の状態では、図4(a)に示すように、拡幅することなく下方に向かってストレートに延びている。ここで、突片部2cの幅bは、板状部材3の切欠き孔3aの幅Bよりも若干小さく設定されている(b<B)。
【0027】
上記状態から、ソレノイド収容体2の各突片部2cを板状部材3の各切欠き孔3aにそれぞれ合わせ、図4(b)に示すように、ソレノイド収容体2を板状部材3に対して下方へと移動させて各突片部2cを各切欠き孔3aに上方から嵌め込んでそれぞれ通す。この場合、前述のように、切欠き孔3aに通す前の突片部2cの幅bは、切欠き孔3aの幅Bよりも小さいため(b<B)、突片部2cを切欠き孔3aに容易に通すことができる。
【0028】
そして、図4(c)に示すように、各突片部2cの板状部材3の下面から下方へと突出する下端部を専用の不図示の治具を用いてそれぞれ左右方向(軸直角方向)に押し広げることによって該下端部を塑性変形させる。すると、突片部2cの板状部材3の下方へと突出する下端部が拡幅されて板状部材3の各切欠き孔3aの左右の下端縁にそれぞれ接触し、その最大幅bmaxが板状部材3の切欠き孔3aの幅Bよりも大きくなるため(bmax>B)、各突片部2cの切欠き孔3aからの抜けが防がれ、ソレノイド収容体2と板状部材3がボルトなどの締結具を用いることなくカシメによって簡単に連結一体化される。この結果、ソレノイドアッシSA(図1及び図2参照)がソレノイド収容体2と板状部材3によって挟持される。なお、ソレノイド収容体2の突片部2cは、板状部材3の切欠き孔3aを通過した後に前述のように塑性変形によって拡幅されるため、その拡幅状態が維持され、ソレノイド収容体2と板状部材3とのカシメによる連結一体化が長期に亘って維持され、ソレノイドアッシSAがソレノイド収容体2と板状部材3によって安定的に挟持される。
【0029】
以上のように、本実施の形態では、ソレノイド収容体2の壁部2bに突設された突片部2cを板状部材3の切欠き孔3aに通した後に当該突片部2cを拡幅させることによって、ソレノイド収容体2と板状部材3とをボルトなどの締結具を用いることなくカシメによって連結一体化するため、ソレノイド収容体2に、ボルトなどの締結具を通すための径方向に拡がるブラケットなどを設ける必要がない。このため、ソレノイド収容体2とこれを備えるソレノイド装置10を小型コンパクトに構成することができる。
【0030】
(ソレノイド装置の取付構造)
次に、以上のようにしてソレノイド収容体2と板状部材3とが連結一体化され、これらのソレノイド収容体2と板状部材3によってソレノイドアッシSAが挟持されたソレノイド装置10のポンプ部20への取付構造について説明する。
【0031】
ソレノイド装置10は、図1に示すように、ポンプ部20のポンプボディ21の取付面(上面)に載置されるが、ポンプボディ21の取付面の左右2箇所(ソレノイド収容体2の2つの突片部2cに対応する2箇所)には、ソレノイド収容体2の突片部2cとの干渉を避けるための平面視矩形の凹部21aがそれぞれ形成されている。
【0032】
上記状態から、図1に示すように、ソレノイド装置10の板状部材3の2箇所に突設されたブラケット3のボルト挿通孔3c(図3参照)に上方から挿通するボルト9(図1には1本のみ図示)を、ポンプボディ21の取付面の2箇所(ボルト挿通孔3cに対応する2箇所)にそれぞれ形成された不図示のネジ孔にねじ込むことによって、ソレノイド装置10がポンプ部20のポンプボディ21にワンタッチで簡単に取り付けられる。この場合、ポンプボディ21の取付面には、突片部2cとの干渉を避けるための凹部21aが形成されているため、ソレノイド装置10の板状部材3から突出する突片部2cの一部(下端部)がポンプボディ21と干渉することがなく、ソレノイド装置10をポンプボディ21に確実に取り付けることができる。
【0033】
以上のように、本実施の形態においては、ソレノイド装置10をポンプボディ21に取り付ける前の状態において、ソレノイド収容体2と板状部材3は、前述のように既にカシメによって連結一体化されているため、ソレノイド装置10を取り付けるまでの間に、ソレノイド収容体2内に収容されているボビン4やコイル5、プランジャ6、プランジャピン7、固定コア8などの各種部品の脱落を防ぐための工夫が不要となり、ソレノイド装置10の取付作業性が高められる。
【0034】
また、板状部材3の対角線上のコーナー部の2箇所にブラケット3bをそれぞれ突設し、各ブラケット3bに形成されたボルト挿通孔3cに挿通するボルト9によってソレノイド装置10をポンプボディ21に取り付けるようにしたため、取付スペースを十分確保することができない狭小な場所であっても、ソレノイド装置10をポンプボディ21に作業性良く簡単に取り付けることができる。
【0035】
(ソレノイド装置)
ここで、本発明に係るソレノイド装置10の構成の詳細を図5に基づいて以下に説明する。
【0036】
ソレノイド装置10は、前述のようにソレノイド収容体2と板状部材3によってソレノイドアッシSAを挟持して構成されているが、ソレノイドアッシSAは、次のように構成されている。
【0037】
すなわち、ソレノイドアッシSAは、図5に示すように、円筒状のボビン4と、該ボビン4に巻回されたコイル5と、ボビン4の軸中心を貫通する円孔状の貫通孔4aの上端部に上下方向に移動可能に嵌挿されたプランジャ(可動コア)6と、該プランジャ6に上端部が固定されて下端部がプランジャ6から下方へと垂直に突出する円柱状のプランジャピン7と、該プランジャピン7を上下方向に移動可能に案内する固定コア8とを備えている。ここで、固定コア8は、板状部材3に固定支持されている。
【0038】
そして、ソレノイドアッシSAの全体は、ポリエステル樹脂やエポキシ樹脂などの絶縁樹脂によって構成された樹脂カバー11によって覆われており、この樹脂カバー11の上面にソレノイド収容体2の天井部2aの下面が接触している。ここで、ソレノイドアッシSAの全体は、樹脂カバー11によってモールドされて金属製のソレノイド収容体2と板状部材3とは電気的に絶縁されている。なお、図1及び図2に示すように、樹脂カバー11の外周の一部には、コイルに電流を供給するためのバッテリなどの不図示の電源を電気的に接続するための絶縁樹脂製のカプラー12が一体に形成されている。
【0039】
また、図5に示すように、ソレノイド収容体2の上部中央には円孔2dが形成されており、この円孔2dには、ハット状のエンドキャップ13が嵌め込まれている。そして、このエンドキャップ13内のプランジャ6との間に形成された空間には、付勢手段としてのコイルスプリング14が圧縮状態で収容されている。なお、このコイルスプリング14は、プランジャ6を常時下方へと付勢することによって該プランジャ6のガタツキを防ぐためのものである。
【0040】
さらに、図5に示すように、固定コア8は、板状部材3の中央部に挿通固定されており、この固定コア8の下端部は、その一部が板状部材3の下面から下方へと突出している。なお、プランジャ6と固定コア8との間には、プランジャ6とプランジャピン7の上下移動量(ストローク)よりも大きな隙間が形成されている。
【0041】
ここで、ソレノイド収容体2と板状部材3は、磁性金属であるSPC材(冷間圧延鋼板)などで構成されており、コイル5が発生する磁界の通り道として機能する。また、プランジャ6とプランジャピン7及び固定コア8は、鉄などの磁性金属によって構成されており、コイル5には、銅線を樹脂で覆ったエナメル線などが使用されている。なお、図5において、15,16はOリングなどのシールリングである。
【0042】
(ポンプ部)
次に、ポンプ部20の構成の詳細を図5図7に基づいて以下に説明する。
【0043】
図5に示すように、ポンプ部20のポンプボディ21には、ソレノイド装置10のプランジャピン7と同軸に円筒状のスリーブ23が配置されており、このスリーブ23の中心部には、後述の大小異径の円穴23a,23bと円孔23c,23dによって構成される貫通孔が形成されている。この貫通孔の一部を構成する円孔23c,23dに円柱状のピストン22が上下往復動可能に嵌め込まれて収容されている。
【0044】
より詳細には、スリーブ23の軸中心部の上端部には大小異径の円穴23a,23bが形成されるとともに、これらの円穴23a,23bの下方には、大小異径の円孔23c,23dが形成されている。ここで、ピストン22は、その上端に円板状のフランジ部22aが一体に形成されており、このフランジ部22aの下方には、円柱状の大径部22bと小径部22cがそれぞれ形成されている。そして、このピストン22は、大径部22bと小径部22cがスリーブ23の円孔23c,23dにそれぞれ嵌め込まれることによってスリーブ23内に上下に往復動可能に収容されている。なお、スリーブ23の大径側の円穴23aの上端部には、固定コア8の下端部が嵌め込まれている。また、大径側の円穴23aの底面には、水平方向(軸直角方向の面)を有する段部23eが形成されている。
【0045】
また、ピストン22のフランジ部22aとスリーブ23の大径側の円穴23aの段部(底面)23eとの間には、付勢手段を構成するコイルスプリング24が圧縮状態で収容されており、ピストン22は、コイルスプリング24によって常時上方(プランジャピン7方向)に付勢されている。そして、ピストン22のフランジ部22aの上面中央部には、ソレノイド装置10のプランジャピン7の下端面が常時当接している。
【0046】
ここで、コイルスプリング24は、小径側の円穴23bにコンパクトに収容されているが、このコイルスプリング24のばね定数(付勢力)は、前記コイルスプリング14のばね定数(付勢力)よりも大きく設定されているため、ピストン22とこれに当接するプランジャピン7および該プランジャピン7が取り付けられたプランジャ6は、ピストン22と共にコイルスプリング24によって常時上方に付勢されている。
【0047】
そして、スリーブ23の小径側の円孔23dには、ピストン22の小径部22cの下端部が嵌め込まれており、円孔23d内には、ピストン22の下端面によって区画されるポンプ室Pが形成されている。このポンプ室Pは、吐出口25と該吐出口25を選択的に開閉するチェック弁26を介して吐出通路27に選択的に連通する。ここで、チェック弁26は、スリーブ23の下端部に形成された弁室S内に収容されており、吐出口25に選択的に着座して該吐出口25を選択的に開閉する弁体26aと、該弁体26aを常時上方(吐出口25を閉じる方向)に付勢するバルブスプリング(コイルスプリング)26bによって構成されている。そして、このチェック弁26とピストン22とは、ピストン22の移動方向(上下方向)に同軸に配置されている。
【0048】
また、前記吐出通路27は、スリーブ23の下端部に横方向(水平方向)に形成されており、スリーブ23の外周側にポンプボディ21との間に形成される円筒状の油路28を経て図1に示すようにポンプボディ21の前面に円孔状の吐出口29として開口している。
【0049】
他方、スリーブ23の大径側の円孔23cとピストン22の小径部22cとの間には、円筒状の油路30が形成されており、この油路30には、スリーブ23の中間高さ位置に横方向(水平方向)に形成された吸入通路31が開口している。そして、この吸入通路31は、スリーブ22の上部外周とポンプボディ21との間に形成された円筒状の油路32に連通しており、油路32は、スリーブ23の上端部に横方向(水平方向)に形成された油路33を経てスリーブ23の上端部に形成された大径側の円穴23aに連通している。なお、吸入通路31は、油路32を経て図1に示すようにポンプボディ21の左端面に円孔状の吸入口34として開口している。なお、図5において、35,36はOリングなどのシールリングである。
【0050】
ここで、ピストン22の下部構造(オイルの連通路構造)の詳細を図6及び図7に基づいて説明する。
【0051】
図6に示すように、ピストン22の下端部の軸中心には円穴状の連通孔37が形成されており、この連通孔37の上端には、図7に示すように、該連通孔37に直交する円孔状の油孔38が形成されている。また、ピストン22の小径部22cの外周の一部には、溝22dが全周に亘って形成されており、この溝22dとスリーブ23の小径側の円孔23dとの間には、円筒状隙間δが形成されている。そして、図7に示すように、円筒状隙間δには、ピストン22の下端部に形成された前記油孔38が開口している。ここで、ピストン22に形成された連通孔37と油孔38、円筒状隙間δは、後述のように、コイル5への通電OFF時にポンプ室Pと吸入通路31とを連通させる連通路を構成している。
[電磁ポンプの作用]
次に、以上のように構成された電磁ポンプ1の作用について説明する。
【0052】
車両に搭載されたバッテリなどの不図示の電源から電磁ポンプ1のコイル5に通電されていないとき(通電OFF時)には、図5に示すように、ソレノイド装置10のプランジャ6とプランジャピン7には電磁駆動力が作用しないため、コイルスプリング24によって上方に付勢されたピストン22とこれに当接するプランジャピン7及び該プランジャピン7が固定されたプランジャ6は、一体的に上動し、ピストン22のフランジ部22aの上面が固定コア8の下端面に当接する位置(上死点)で停止する。
【0053】
上記状態では、図6及び図7に示すように、ピストン22の小径部22bの外周の一部に形成された溝22dが吸入通路31に連通するため、オイルは、図6及び図7に矢印にて示すように、吸入通路31から円筒状隙間δと油孔38及び連通孔37を通ってポンプ室Pへと流れ込んで該ポンプ室Pに充填される。なお、このとき、チェック弁26は、吐出口25を閉じている。
【0054】
次に、不図示の電源から電磁ポンプ1のコイル5に通電されると(通電ON)、コイル5に磁界が発生し、この磁界によってプランジャ6とプランジャピン7が磁化され、図8に示すように、これらのプランジャ6とプランジャピン7が磁気駆動力によってコイルスプリング24の付勢力に抗して下動する。このようにプランジャピン7が下動すると、このプランジャピン7が当接するピストン22も一体に下動する。
【0055】
上述のようにピストン22が下動すると、図9に鎖線にて示すように、ピストン22の小径部22cの外周の一部に形成された溝22dが閉じられた時点でポンプ室Pと吸入通路31との連通が遮断され、ポンプ室Pが密閉状態となり、このポンプ室Pにオイルが密封される。この状態からピストン22がさらに下動すると、ポンプ室P内のオイルがピストン22のポンピング作用によって圧縮されて加圧され、このオイルは、その圧力でチェック弁26の弁体26aをバルブスプリング26bの付勢力に抗して押し下げて吐出口25を開き、吐出通路27と油路28を通って最終的にポンプボディ21の前面に開口する吐出口29(図1参照)からポンプボディ21外へと吐出され、不図示の車両用エンジンの摺動部へと供給される。
【0056】
ところで、ピストン22の下動は、図8に示すように、該ピストン22のフランジ部22aの下面がスリーブ23の上端部に形成された大径側の円穴23aの段部(底面)23eに当接した時点で停止する。すなわち、ピストン22の下死点位置は、当該ピストン22のフランジ部22aとスリーブ23の段部23eとの当接によって規定される。この場合、ピストン22の下死点を規定する位置決め機構は、該ピストン22自体に形成されたフランジ部22aとスリーブ23に形成された段部23eによって構成されるため、従来のように多部品との間の取付誤差が集積されることによってピストン22の下死点にバラツキが発生することがない。したがって、ピストン22の下死点位置に製品ごとのバラツキが生じす、ピストン22の下死点位置が正確に規定される。
【0057】
他方、ピストン22の上限位置、つまり、上死点位置は、図5に示すように、該ピストン22のフランジ部22aの上面が固定コア8の下端面に当接する位置によって正確に規定される。
【0058】
以上のように、上下方向の往復動によってポンピング作用を行うピストン22の上死点位置と下死点位置が正確に規定されるため、該ピストン22の往復動のストロークが一定となって製品ごとにバラツキが発生することがない。このため、電磁ポンプ1の吐出圧と吐出量が変動なく一定に保たれ、安定したオイルの供給が可能となる。
【0059】
そして、この電磁ポンプ1において、ソレノイド装置10のコイル5に対する通電のON/OFFが交互に連続的に繰り返されることによって、ピストン22の往復動によるポンピング作用が連続してなされ、当該電磁ポンプ1から所定圧のオイルが所定量だけ車両用エンジンの摺動部へと安定的に供給されて該摺動部の潤滑と冷却に供される。
【0060】
ところで、本実施の形態に係る電磁ポンプ1においては、ポンプ室Pと吐出通路27との間に設けられたチェック弁26とピストン22とをピストン22の移動方向に同軸に配置したため、ポンプ室Pの容積を小さく抑えて該ポンプ室Pでのオイルの圧縮比を高めることができ、エアロックの発生が防がれてチェック弁26の作動安定性が高められる。また、1回のオイルの吐出量を小さく抑えることができるため、微量のオイルを制御性良く確実に供給することができる。
【0061】
なお、以上は本発明を車両用エンジンの摺動部にオイル(潤滑油)を供給するための電磁ポンプに対して適用した形態について説明したが、本発明は、オイル以外の他の任意の流体を供給するための電磁ポンプに対しても同様に適用可能である。
【0062】
その他、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0063】
1 電磁ポンプ
2 ソレノイド収容体
2a ソレノイド収容体の天井部
3 板状部材
4 ボビン
4a ボビンの貫通孔
5 コイル
6 プランジャ
7 プランジャピン
8 固定コア
11 樹脂カバー
10 ソレノイド装置(ピストン駆動手段)
20 ポンプ部
22 ピストン
22a ピストンのフランジ部
22b ピストンの大径部
22c ピストンの小径部
22d ピストンの溝
23 スリーブ
23a スリーブの大径側の円穴
23b スリーブの小径側の円穴
23c スリーブの大径側の円孔
23d スリーブの小径側の円孔
23e スリーブの段部
24 コイルスプリング(付勢手段)
26 チェック弁
27 吐出通路
37 連通孔
38 油孔
P ポンプ室
SA ソレノイドアッシ
δ 円筒状隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10