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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045944
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】生地およびこの生地を用いた衣類
(51)【国際特許分類】
   A41D 31/00 20190101AFI20230327BHJP
   A41D 31/04 20190101ALN20230327BHJP
   A41D 31/06 20190101ALN20230327BHJP
   A41D 31/14 20190101ALN20230327BHJP
【FI】
A41D31/00 502C
A41D31/00 502R
A41D31/00 503G
A41D31/00 502M
A41D31/04 F
A41D31/06 100
A41D31/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154568
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】500367067
【氏名又は名称】株式会社カインズ
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】片桐 誠文
(72)【発明者】
【氏名】施 建軍
(57)【要約】
【課題】蒸れ難いことに加えて保温性に優れ、さらに肌触りの良い生地およびこの生地を用いた衣類を提供する。
【解決手段】生地10は、表面層11と、裏面層12と、中間層13と、を備えている。表面層は、ポリエステルの中空糸により構成されている。中間層は、ポリエステル糸により構成されている。裏面層は、ポリプロピレン糸により構成され、裏面に起毛18が形成されている。中空糸のフィラメント数がポリプロピレン糸に比べて多く設定されている。また、中空糸およびポリプロピレン糸のフィラメント数をポリエステル糸に比べて多く設定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルの中空糸により構成された表面層と、
ポリエステル糸により構成された中間層と、
ポリプロピレン糸により構成され、裏面に起毛が形成された裏面層と、を備え、
前記表面層および前記裏面層の間に前記中間層が配置され、三層が丸編みにより積層され、
前記中空糸のフィラメント数が前記ポリプロピレン糸に比べて多く設定され、
前記中空糸および前記ポリプロピレン糸のフィラメント数が前記ポリエステル糸に比べて多く設定されている、
ことを特徴とする生地。
【請求項2】
前記中空糸は、太さが65~85デニール、フィラメントの本数が90~110フィラメントに設定され、
前記ポリプロピレン糸は、太さが65~85デニール、フィラメントの本数が60~80フィラメントに設定されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の生地。
【請求項3】
前記中空糸は、太さが75デニール、フィラメントの本数が100フィラメントに設定され、
前記ポリエステル糸は、太さが30デニール、フィラメントの本数が24フィラメントに設定され、
前記ポリプロピレン糸は、太さが75デニール、フィラメントの本数が72フィラメントに設定されている、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の生地。
【請求項4】
前記三層に積層された生地は、目付けが100~150gである、
ことを特徴とする請求項3に記載の生地。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の前記生地を用いて縫製されたことを特徴とする衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生地およびこの生地を用いた衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
衣類のなかには、例えば、表面層にポリエステルの中空糸、裏面層にポリプロピレン糸を使用した二重編の吸汗速乾性丸編地(生地)を使用したものが知られている。ポリエステルの中空糸は吸収性(親水性)を有し、ポリプロピレン糸は疎水性を有する。よって、吸汗速乾性丸編地を使用することにより、吸汗性および乾燥性を高め、蒸れ難い衣類を提供できる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、その他の衣類のなかには、例えば、ポリエステル糸の表面層とポリプロピレン糸の裏面層との間に中間層が形成された生地を使用したものが知られている。この生地を使用することにより、吸汗性および乾燥性を高め、蒸れ難い衣類を提供できる(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-68602号公報
【特許文献2】実用新案登録第3214392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、衣類は、蒸れ難いことに加えて肌触りが良いことが好ましい。また、例えば、冬用の衣類は、保温性に優れていることが好ましい。しかし、特許文献1や特許文献2の衣類は、肌触りや保温性についての記載がなく、蒸れ難いことに加えて、肌触りや保温性に優れた機能を備えた衣類の商品化が望まれている。
【0006】
本発明は、蒸れ難いことに加えて保温性に優れ、さらに肌触りの良い生地およびこの生地を用いた衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
(1)本発明に係る生地は、ポリエステルの中空糸により構成された表面層と、ポリエステル糸により構成された中間層と、ポリプロピレン糸により構成され、裏面に起毛が形成された裏面層と、を備え、前記表面層および前記裏面層の間に前記中間層が配置され、三層が丸編みにより積層され、前記中空糸のフィラメント数が前記ポリプロピレン糸に比べて多く設定され、前記中空糸および前記ポリプロピレン糸のフィラメント数が前記ポリエステル糸に比べて多く設定されている。
【0008】
この構成によれば、生地を表面層、中間層、および裏面層により三層に形成した。また、表面層をポリエステルの中空糸により構成し、中間層をポリエステル糸により構成した。さらに、裏面層をポリプロピレン糸により構成した。ポリエステルの中空糸は吸収性(親水性)を有し、ポリプロピレン糸は疎水性を有する。これにより、表面層、中間層、および裏面層により三層に形成された生地は、吸汗性および乾燥性を高めることができる。
さらに、中空糸のフィラメント数をポリプロピレン糸に比べて多く設定した。よって、表面層の糸自体の密度を裏面層の糸自体の密度に比べて高く設定できる。これにより、表面層の汗が裏面層に戻ることを防止できる。
【0009】
これにより、裏面層から吸収された汗を、中間層を経て表面層に素早く吸水し、かつ表面層から蒸発させることが可能となる。したがって、裏面層に汗が留まることを防止でき、蒸れ難い生地を得ることができる。生地を蒸れ難くすることにより、ドライ感を維持し、汗冷えを防止できる。
【0010】
また、表面層をポリエステルの中空糸を使用し、裏面層の裏面に起毛を形成した。よって、体から発せられた熱などを中空糸の内部や、複数の起毛の間に溜めることができる。これにより、体から発せられた熱などを表面層や裏面層に溜めることができ、保温性に優れた生地を得ることができる。
【0011】
さらに、表面層の中空糸および裏面層のポリプロピレン糸のフィラメント数を、中間層のポリエステル糸に比べて多くした。これにより、肌触り(手触り)が良い生地を得ることができる。
すなわち、この生地によれば、蒸れ難いことに加えて保温性に優れ、さらに肌触りの良い3つの機能を得ることができる。
【0012】
(2)前記中空糸は、太さが65~85デニール、フィラメントの本数が90~110フィラメントに設定され、前記ポリプロピレン糸は、太さが65~85デニール、フィラメントの本数が60~80フィラメントに設定されていてもよい。
【0013】
この構成によれば、中空糸の太さを65~85デニールと設定し、かつ、フィラメント数を90~110と設定した。また、ポリプロピレン糸の太さを65~85デニールと設定し、フィラメント数を60~80と設定した。
よって、中空糸のフィラメント数をポリプロピレン糸に比べて多く設定できる。これにより、表面層の糸自体の密度を裏面層の糸自体の密度に比べて高く設定できる。したがって、表面層の汗が裏面層に戻ることを防止でき、裏面層から吸収された汗を、中間層を経て表面層に素早く吸水し、かつ表面層から蒸発させることが可能となる。
【0014】
また、中空糸のフィラメント数を90~110、ポリプロピレン糸のフィラメント数を60~80と大きく設定した。これにより、肌触り(手触り)が良い生地を得ることができる。
さらに、中空糸の太さを65~85デニールと太く設定し、ポリプロピレン糸の太さを65~85デニールと太く設定した。よって、例えば、生地の耐久性を高めることができる。これにより、例えば、生地を用いて縫製された衣類を作業着の下に着た場合でも、作業中に生地が破れることを防止できる。
【0015】
(3)前記中空糸は、太さが75デニール、フィラメントの本数が100フィラメントに設定され、前記ポリエステル糸は、太さが30デニール、フィラメントの本数が24フィラメントに設定され、前記ポリプロピレン糸は、太さが75デニール、フィラメントの本数が72フィラメントに設定されていてもよい。
【0016】
この構成によれば、中空糸を75デニールと設定し、かつ、フィラメント数を100と設定した。また、ポリプロピレン糸を75デニールと設定し、フィラメント数を72と設定した。
よって、中空糸のフィラメント数をポリプロピレン糸に比べて多く設定できる。これにより、表面層の糸自体の密度を裏面層の糸自体の密度に比べて高く設定できる。したがって、表面層の汗が裏面層に戻ることを防止でき、裏面層から吸収された汗を、中間層を経て表面層に素早く吸水し、かつ表面層から蒸発させることが可能となる。
【0017】
また、中空糸のフィラメント数を100、ポリプロピレン糸のフィラメント数を72と大きく設定した。これにより、肌触り(手触り)が良い生地を得ることができる。
さらに、中空糸を75デニールと太く設定し、ポリプロピレン糸を75デニールと太く設定した。これにより、例えば、生地を用いて縫製された衣類を作業着の下に着た場合でも、作業中に生地が破れることを防止できる。
【0018】
加えて、中間層を形成するポリエステル糸の太さを30デニール、フィラメント数を24と設定した。このように、中間層のポリエステル糸を細く設定し、フィラメント数を少なく設定することにより、例えば、中間層を柔らかく形成できる。これにより、生地のごわつき(こわばり)を抑えて、生地の表面層や裏面層に触れた際に感触をよくして肌触りをよくできる。
【0019】
さらに、中間層のポリエステル糸を細く設定し、フィラメント数を少なく設定することにより、例えば、汗を浸透させやすくできる。これにより、裏面層の汗を、中間層を経て表面層まで良好に浸透させることができる。
【0020】
(4)前記三層に積層された生地は、目付けが100~150gであってもよい。
【0021】
この構成によれば、三層に積層された生地の目付けを100~150gと設定した。よって、中空糸を75デニール、100フィラメントに設定し、ポリプロピレン糸を75デニール、72フィラメントに設定することが可能になる。
これにより、中空糸のフィラメント数をポリプロピレン糸に比べて多く設定できる。よって、表面層の糸自体の密度を裏面層の糸自体の密度に比べて高く設定できる。したがって、表面層の汗が裏面層に戻ることを防止でき、裏面層から吸収された汗を、中間層を経て表面層に素早く吸水し、かつ表面層から蒸発させることが可能となる。
【0022】
また、中空糸のフィラメント数を100、ポリプロピレン糸のフィラメント数を72と大きく設定することが可能になる。これにより、肌触り(手触り)が良い生地を得ることができる。
さらに、中空糸を75デニールと太く設定し、ポリプロピレン糸を75デニールと太く設定することが可能になる。これにより、例えば、作業着の下に着た場合でも、作業中に破れることを防止できる。
【0023】
加えて、中間層を形成するポリエステル糸の太さを30デニール、フィラメント数を24と設定することが可能になる。このように、中間層のポリエステル糸を細く設定し、フィラメント数を少なく設定することにより、例えば、中間層を柔らかく形成できる。これにより、生地のごわつき(こわばり)を抑えて、生地の表面層や裏面層に触れた際に感触をよくして肌触りをよくできる。
【0024】
さらに、中間層のポリエステル糸を細く設定し、フィラメント数を少なく設定することにより、例えば、汗を浸透させやすくできる。これにより、裏面層の汗を、中間層を経て表面層まで良好に浸透させることができる。
【0025】
(5)本発明に係る生地を用いた衣類は、(1)から(4)のいずれか1項に記載の生地を用いて縫製されている。
【0026】
この構成によれば、(1)から(4)のいずれか1項に記載の生地を用いて衣類を縫製することにより、裏面層から吸収された汗を、中間層を経て表面層に素早く吸水し、かつ表面層から蒸発させることが可能となる。したがって、裏面層に汗が留まることを防止でき、蒸れ難い衣類を得ることができる。衣類を蒸れ難くすることにより、ドライ感を維持し、汗冷えを防止できる。
【0027】
また、表面層をポリエステルの中空糸を使用し、裏面層の裏面に起毛を形成した。よって、体から発せられた熱などを中空糸の内部や、複数の起毛の間に溜めることができる。これにより、体から発せられた熱などを表面層や裏面層に溜めることができ、保温性に優れた衣類を得ることができる。
【0028】
さらに、表面層の中空糸および裏面層のポリプロピレン糸のフィラメント数を、中間層のポリエステル糸に比べて多くした。これにより、肌触り(手触り)が良い衣類を得ることができる。
加えて、例えば、表面層の中空糸を太く設定し、裏面層のポリプロピレン糸を太く設定することにより、衣類を作業着の下に着た場合でも、作業中に衣類が破れることを防止できる。
すなわち、この衣類によれば、蒸れ難いことに加えて保温性に優れ、さらに肌触りの良い3つの機能を得ることができる。
【0029】
また、例えば、中間層13のポリエステル糸を細く設定し、フィラメント数を少なく設定することにより、中間層13を柔らかく形成できる。これにより、衣類のごわつき(こわばり)を抑えて、衣類の表面層11や裏面層12に触れた際に感触をよくして肌触りをよくできる。
【0030】
さらに、中間層13のポリエステル糸を細く設定し、フィラメント数を少なく設定することにより、例えば、汗を浸透させやすくできる。これにより、裏面層12の汗を、中間層13を経て表面層11まで良好に浸透させることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、蒸れ難いことに加えて保温性に優れ、さらに肌触りの良い生地およびこの生地を用いた衣類を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明に係る一実施形態の生地を概念的に示す斜視図である。
図2】一実施形態の生地において表面層を構成する中空糸を示す斜視図である。
図3】一実施形態の生地で裏面層から汗を吸収して中間層を経て表面層から蒸発させる例を概念的に説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る生地およびこの生地を用いた衣類(衣料)を説明する。
図1に示すように、生地10は、表面層11と、裏面層12と、中間層13と、を備えている。具体的には、生地10は、表面層11および裏面層12の間に中間層13が配置され、三層に構成された両面が丸編みにより積層されている。図1においては、生地10の構成の理解を容易にするために中間層13を表面層11や裏面層12より厚い層に図示しているが、実際には中間層13は表面層11や裏面層12より薄い層である。
丸編みとは、例えば、「丸編機」により糸をらせん状に走らせて生地を筒状に編むことをいう。この生地10は、蒸れ難いことに加えて保温性に優れ、さらに肌触りの良い3つの機能を備えている。
【0034】
図1図2に示すように、表面層11は、素材としてポリエステルの中空糸15を用いて構成されている。ポリエステルの中空糸15は、繊維の内部に、例えば中空率が30パーセントの連続または不連続の空洞16を有する。中空糸15は、繊維の内部に空洞16を有することにより、繊維の内部に水分を吸収しやすく吸収性(親水性)に優れている。また、中空糸15は、繊維の内部に空洞16を有することにより、軽くてふんわりして肌触りの良い繊維である。
【0035】
さらに、中空糸15は、空洞16を有するために吸水性が高く、速乾性に優れている。加えて、中空糸15は、体から発せられた熱などを繊維の内部(すなわち、空洞16)に溜めることができるので、保温性に優れている。なお、中空糸15の好ましい例としては、サーモライト(ザ ライクラ カンパニー ユーケー リミテッドの登録商標)が挙げられる。
【0036】
この中空糸15は、生地10に蒸れ難く、保温性に優れ、肌触りの良い3つの機能を備えるために、太さが65~85デニール、フィラメントの本数が90~110フィラメントに設定されている。好ましくは、中空糸15は、太さが75デニール、フィラメントの本数が100フィラメントに設定される。
【0037】
裏面層12は、素材としてポリプロピレン糸を用いて構成され、裏面に起毛18が形成されている。起毛18は、例えば、裏面層12の裏面をサンドペーパなどでひっかくように加工して毛羽だしすることにより形成されている。以下、裏面の起毛18を「裏起毛18」ということもある。ポリプロピレン糸は疎水性を有する。裏起毛18は、体から発せられた熱などを複数の起毛18の間に溜めることができ、保温性に優れている。また、裏起毛18は、毛羽だしされることにより手触りが柔らかくなる。
【0038】
このポリプロピレン糸は、生地10に蒸れ難く、保温性に優れ、肌触りの良い3つの機能を備えるために、太さが65~85デニール、フィラメントの本数が60~80フィラメントに設定されている。好ましくは、ポリプロピレン糸は、太さが75デニール、フィラメントの本数が72フィラメントに設定される。
【0039】
中間層13は、素材としてポリエステル糸を用いて構成されている。ポリエステル糸は、表面層11の中空糸15と同様に吸収性(親水性)を有する。
このポリエステル糸は、生地10に蒸れ難く、保温性に優れ、肌触りの良い3つの機能を備えるために、太さが30デニール、フィラメントの本数が24フィラメントに設定されている。
【0040】
このように、表面層11、裏面層12、および中間層13の三層が積層されることにより生地10が形成されている。この生地10は、例えば、目付けが100~150gに設定されている。好ましくは、生地10は、目付けが140gに設定される。
また、生地10は、繊維の構成率がポリエステル58.3%、ポリプロプレン41.7%に設定されている。
【0041】
ここで、生地10の目付け、生地10の各層11,12,13の素材、各素材の太さ、各素材のフィラメント数を上述した範囲、あるいは上述した値に設定した理由について以下に説明する。
【0042】
すなわち、生地10に蒸れ難く、保温性に優れ、肌触りの良い3つの機能を備えるためには、中間層13のポリエステル糸を細く設定し、フィラメント数を少なく設定することが好ましい。中間層13のポリエステル糸を細く設定し、フィラメント数を少なく設定することにより、表面層11や裏面層12に触れた際の感触をよくして肌触りをよくし、さらに、裏面層12の汗を表面層11に浸透させやすくすることが可能になる。
そこで、ポリエステル糸を30デニールと細く設定し、フィラメント数を24フィラメントと少なく設定した。
【0043】
また、生地10に蒸れ難く、保温性に優れ、肌触りの良い3つの機能を備えるためには、表面層11の中空糸15を中間層13のポリエステル糸に比べて太く設定し、フィラメント数を多くすることが好ましい。さらに、裏面層12の中空糸15も中間層13のポリエステル糸に比べて太く設定し、フィラメント数を多くすることが好ましい。
加えて、表面層11の中空糸15のフィラメント数を裏面層12のポリプロピレン糸に比べて多くすることが好ましい。これにより、表面層11の糸自体の密度を裏面層12の糸自体の密度に比べて高くすることが好ましい。
このような観点から、表面層11の中空糸15や裏面層12のポリプロピレン糸の太さや、フィラメント数を設定した。
【0044】
具体的には、表面層11を構成するポリエステルの中空糸15を65~85デニールの範囲、90~110フィラメントの範囲において設定した。また、裏面層12のポリプロピレン糸を65~85デニールの範囲、60~80フィラメントの範囲において設定した。さらに、生地10の目付けを100~150gの範囲において設定した。
この生地10においては、蒸れ難く、保温性に優れ、肌触りの良い3つの機能を得ることができた。
【0045】
特に、表面層11を構成するポリエステルの中空糸15を75デニール、100フィラメントに設定することが好ましい。また、裏面層12のポリプロピレン糸を75デニール、72フィラメントに設定することが好ましい。さらに、表面層11のポリエステル糸を30デニール、24フィラメントに設定することが好ましい。加えて、生地10の目付けを140gに設定することが好ましい。
この生地10においては、蒸れ難く、保温性に優れ、肌触りの良い3つの機能を十分に得ることができた。
【0046】
一方、表面層11の中空糸15が65~85デニールおよび90~110フィラメントの範囲から外れ、裏面層12のポリプロピレン糸が65~85デニールおよび60~0フィラメントの範囲から外れた場合、3つの機能を得ることが難しかった。
【0047】
そこで、表面層11を構成するポリエステルの中空糸15を65~85デニール、90~110フィラメントに設定し、好ましくは、中空糸15を75デニール、100フィラメントに設定した。また、裏面層12のポリプロピレン糸を65~85デニール、60~80フィラメントに設定し、好ましくは、ポリプロピレン糸を75デニール、72フィラメントに設定した。さらに、中間層13のポリエステル糸を30デニール、24フィラメントに設定した。また、生地10の目付けを100~150gに設定し、好ましくは、生地10の目付けを140gに設定した。
【0048】
以上説明したように、実施形態の生地10によれば、生地10の目付け、生地10を構成する各層11,12,13の素材、各素材の太さ、各素材のフィラメント数を好適に設定することにより、以下の作用効果が得られる。
特に、表面層11の中空糸15を75デニール、100フィラメントに設定し、裏面層12のポリプロピレン糸を75デニール、72フィラメントに設定する。また、中間層13のポリエステル糸を30デニール、24フィラメントに設定する。さらに、生地10の目付けを140gに設定する状態において、以下の作用効果を十分得られる。
【0049】
すなわち、表面層11をポリエステルの中空糸15により構成し、中間層13をポリエステル糸により構成した。さらに、裏面層12をポリプロピレン糸により構成した。ポリエステルの中空糸は吸収性(親水性)を有し、ポリプロピレン糸は疎水性を有する。これにより、表面層11、中間層13、および裏面層12により三層に形成された生地は、吸汗性および乾燥性を高めることができる。
【0050】
これにより、図2図3に示すように、裏面層12から吸収された汗を、中間層13を経て表面層11に矢印Aの如く素早く吸水し、かつ表面層11から矢印Bの如く蒸発させることが可能となる。
さらに、中空糸15のフィラメント数が裏面層12のポリプロピレン糸に比べて多く設定されている。よって、表面層11の糸自体の密度が裏面層12の糸自体の密度に比べて高く設定されている。これにより、表面層11の汗が裏面層12に矢印Cの如く戻ることを防止できる。
【0051】
加えて、中間層13のポリエステル糸を細く設定し、フィラメント数を少なく設定することにより、例えば、汗を浸透させやすくできる。これにより、裏面層12の汗を、中間層13を経て表面層11まで良好に浸透させることができる。
したがって、裏面層12に汗が留まることを防止でき、蒸れ難い生地を得ることができる。生地10を蒸れ難くすることにより、ドライ感を維持し、汗冷えを防止できる。
【0052】
また、表面層11の中空糸15および裏面層12のポリプロピレン糸のフィラメント数を、中間層13のポリエステル糸に比べて多くした。これにより、肌触り(手触り)が良い生地を得ることができる。
さらに、表面層11の中空糸を太く設定し、裏面層12のポリプロピレン糸を太く設定した。これにより、例えば、生地を用いて縫製された衣類を作業着の下に着た場合でも、作業中に生地が破れることを防止できる。
【0053】
また、中間層13を形成するポリエステル糸の太さを30デニール、フィラメント数を24と設定した。このように、中間層13のポリエステル糸を細く設定し、フィラメント数を少なく設定することにより、例えば、中間層13を柔らかく形成できる。これにより、生地10のごわつき(こわばり)を抑えて、生地10の表面層11や裏面層12に触れた際に感触をよくして肌触りをよくできる。
【0054】
さらに、表面層11をポリエステルの中空糸15を使用し、裏面層12の裏面に起毛18を形成した。よって、体から発せられた熱などを中空糸15の内部や、複数の起毛18の間に溜めることができる。これにより、体から発せられた熱などを表面層11や裏面層12に溜めることができ、保温性に優れた生地10を得ることができる。
以上説明したように、この生地10によれば、蒸れ難いことに加えて保温性に優れ、さらに肌触りの良い3つの機能を十分に得ることができる。
【0055】
(変形例)
以下、実施形態の変形例を図1から図3に基づいて説明する。なお、変形例において、実施形態と同一類似の素材については同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
図1図2に示すように、変形例の生地10は、例えば、表面層11を構成するポリエステルの中空糸15が150デニール、200フィラメントに設定されている。また、裏面層12のポリプロピレン糸が150デニール、144フィラメントに設定されている。さらに、中間層13のポリエステル糸が50デニール、68フィラメントに設定されている。加えて、生地10の目付けが160~300gに設定されている。
【0056】
すなわち、変形例の生地10は、表面層11を形成する中空糸15が実施形態と比べて2倍の太さ、2倍のフィラメント数に設定されている。また、変形例の裏面層12を形成するポリプロピレン糸が実施形態と比べて2倍の太さ、2倍のフィラメント数に設定されている。
さらに、変形例の中間層13を形成するポリエステル糸は、変形例の中空糸15および変形例のポリプロピレン糸に合わせて、実施形態と比べて太く、フィラメント数が多く設定されている。加えて、変形例の生地10は、変形例の中空糸15、変形例のポリプロピレン糸、および変形例のポリエステル糸に合わせて、厚くなり、目付けが重く設定されている。
変形例の生地10においても、実施形態と同様に、蒸れ難いことに加えて保温性に優れ、さらに肌触りの良い3つの機能を十分に得ることができる。
【0057】
以上説明した生地10を用いて衣類が縫製される。衣類としては、例えば、冬用のTシャツやスパッツなどが挙げられる。なお、衣類は冬用のTシャツやスパッツに限らない。
図3に示すように、この衣類によれば、裏面層12から吸収された汗を、中間層13を経て表面層11に矢印Aの如く素早く吸水し、かつ表面層11から矢印Bの如く蒸発させることが可能となる。
さらに、中空糸15のフィラメント数が裏面層12のポリプロピレン糸に比べて多く設定されている。よって、表面層11の糸自体の密度が裏面層12の糸自体の密度に比べて高く設定されている。これにより、表面層11の汗が裏面層12に矢印Cの如く戻ることを防止できる。
加えて、中間層13のポリエステル糸を細く設定し、フィラメント数を少なく設定することにより、例えば、汗を浸透させやすくできる。これにより、裏面層12の汗を、中間層13を経て表面層11まで良好に浸透させることができる。
したがって、裏面層12に汗が留まることを防止でき、蒸れ難い衣類を得ることができる。生地10を蒸れ難くすることにより、ドライ感を維持し、汗冷えを防止できる。
【0058】
また、表面層11の中空糸15および裏面層12のポリプロピレン糸のフィラメント数を、中間層13のポリエステル糸に比べて多くした。これにより、肌触り(手触り)が良い衣類を得ることができる。
さらに、表面層11の中空糸を太く設定し、裏面層12のポリプロピレン糸を太く設定した。これにより、例えば、衣類を作業着の下に着た場合でも、作業中に衣類が破れることを防止できる。
【0059】
また、中間層13を形成するポリエステル糸の太さを、例えば30デニール、フィラメント数を24と設定した。このように、中間層13のポリエステル糸を細く設定し、フィラメント数を少なく設定することにより、例えば、中間層13を柔らかく形成できる。これにより、衣類のごわつき(こわばり)を抑えて、衣類の表面層11や裏面層12に触れた際に感触をよくして肌触りをよくできる。
【0060】
さらに、表面層11をポリエステルの中空糸15を使用し、裏面層12の裏面に起毛18を形成した。よって、体から発せられた熱などを中空糸15の内部や、複数の起毛18の間に溜めることができる。これにより、体から発せられた熱などを表面層11や裏面層12に溜めることができ、保温性に優れた衣類を得ることができる。
以上説明したように、この衣類によれば、蒸れ難いことに加えて保温性に優れ、さらに肌触りの良い3つの機能を十分に得ることができる。
【0061】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0062】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 生地
11 表面層
12 裏面層
13 中間層
15 中空糸
18 裏起毛(起毛)
図1
図2
図3