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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045952
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】車両内装部材
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/70 20060101AFI20230327BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
B29C65/70
B60R13/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154579
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】596002767
【氏名又は名称】トヨタ自動車九州株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】中村 健吾
(72)【発明者】
【氏名】川原田 真実
(72)【発明者】
【氏名】猿渡 勇太
【テーマコード(参考)】
3D023
4F211
【Fターム(参考)】
3D023BA01
3D023BD27
3D023BE07
3D023BE31
4F211AG03
4F211AG20
4F211AH26
4F211TA06
4F211TC03
4F211TH18
4F211TH20
4F211TN83
(57)【要約】
【課題】従来、コンソールボックス蓋体などの車両内装部材においては、内装部材としての蓋体の基材とその表面を被覆した表皮との間に発泡樹脂を注入して構成しており、具体的にはコンソールボックス蓋体においては蓋体の基本形状に構成した蓋体基材の表面に裏側スラブウレタン加工した表皮をステッチ縫製してコンソールボックス蓋体の周縁部のフレーム処理をし、その後発泡ウレタン樹脂を蓋体基材と表皮との間に注入して構成する。
【解決手段】本発明は、車両内装部材の基本構成を形成する基材とその表面側を被覆した表皮との間に形成された発泡樹脂充填空間内に発泡樹脂を注入して構成した車両内装部材において、基材は、発泡樹脂充填空間に向けて開口する貫通孔部、および発泡樹脂充填空間に対する凹部の少なくとも一方を有し、発泡樹脂充填空間に注入された発泡樹脂により形成された発泡樹脂部により、基材と表皮とが互いに接合されていることとした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内装部材の基本構成を形成する基材とその表面側を被覆した表皮との間に形成された発泡樹脂充填空間内に発泡樹脂を注入して構成した車両内装部材において、
前記基材は、前記発泡樹脂充填空間に向けて開口する貫通孔部、および前記発泡樹脂充填空間に対する凹部の少なくとも一方を有し、
前記発泡樹脂充填空間に注入された発泡樹脂により形成された発泡樹脂部により、前記基材と前記表皮とが互いに接合されている
ことを特徴とする車両内装部材。
【請求項2】
前記貫通孔部および前記凹部の少なくとも一方は、前記発泡樹脂充填空間に向かって先細のテーパー形状としてなることを特徴とする請求項1に記載の車両内装部材。
【請求項3】
前記貫通孔部は、前記発泡樹脂充填空間に対する発泡樹脂の注入用の孔部であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両内装部材。
【請求項4】
前記表皮の裏側に設けられ、スラブ樹脂により形成されたスラブ樹脂層部と、
前記スラブ樹脂層部と前記発泡樹脂部との間に介在し、前記スラブ樹脂層部および前記発泡樹脂部に対して接着されたフィルム層部と、を有する
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の車両内装部材。
【請求項5】
前記基材の周縁部下部に樹脂貫通孔を形成し、前記発泡樹脂部のうち、前記基材の周縁部下部で折り返した表皮折り返し部の裏側の発泡樹脂層部分と前記発泡樹脂充填空間側の発泡樹脂層部分とを前記樹脂貫通孔を介して連通させたことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の車両内装部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンソールボックス蓋体などの車両内装部材において、基材とその表面側を被覆した表皮との間に形成された発泡樹脂充填空間内に発泡樹脂を注入して構成した車両内装部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンソールリッド等と称されるコンソールボックス蓋体などの車両内装部材においては、蓋体の基材とその表面側を被覆した表皮との間に発泡樹脂を注入した構成のものがある。具体的には、コンソールボックス蓋体においては蓋体の基本形状に構成した基材の表面に裏側スラブウレタン加工した表皮をステッチ縫製してコンソールボックス蓋体の周縁部のフレーム処理をし、その後発泡ウレタン樹脂を蓋体基材と表皮との間に注入して構成する。
【0003】
特に、表皮の裏側スラブウレタンと注入ウレタンとの面境に接着剤を介在させて接着をしており、また基材の材質等によっては、コンソールボックス蓋体の周縁部では表皮折り曲げ部分のフレーム処理を行い、更には蓋体側面の下縁部では表皮裏面のスラブウレタンが表皮と共に折り返されて折返し部を基材たる蓋体側面の下縁部にタッカーや溶着手段で固定して基材に表皮を緊締被覆した構成としている(例えば、特許文献1乃至3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-144455号公報
【特許文献2】特開2001-260765号公報
【特許文献3】特開平2-57307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところがかかるコンソールボックス蓋体などの車両内装部材において、蓋体の基材とその表面側を被覆した表皮との間に発泡樹脂を注入した構造では、表皮の裏側と注入した発泡樹脂との面境に接着剤を介在させて接着する工程と構成が必要となり、また基材の材質等によってはコンソールボックス蓋体の周縁部では表皮折り曲げ部分のフレーム処理工程が必要であり、更には蓋体側面の下縁部では表皮の折返し部を基材たる蓋体側面の下縁部にタッカーや溶着手段で固定する工程が必要であり、このように煩雑な手間や工程を付加しなければならず製造コストが不利である等の課題があった。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、車両内装部材の基本構成を形成する基材とその表面側を被覆した表皮との間に形成された発泡樹脂充填空間内に発泡樹脂を注入して構成した車両内装部材において、基材の表面側の所定箇所に発泡樹脂充填空間内に向けて開口する貫通孔部、および凹部を備えた構成としたことにより上記課題を解決した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来の課題を解決するために、本発明は、車両内装部材の基本構成を形成する基材とその表面側を被覆した表皮との間に形成された発泡樹脂充填空間内に発泡樹脂を注入して構成した車両内装部材において、前記基材は、前記発泡樹脂充填空間に向けて開口する貫通孔部、および前記発泡樹脂充填空間に対する凹部の少なくとも一方を有し、前記発泡樹脂充填空間に注入された発泡樹脂により形成された発泡樹脂部により、前記基材と前記表皮とが互いに接合されていることを特徴とする。
【0008】
また、前記貫通孔部および前記凹部の少なくとも一方は、前記発泡樹脂充填空間に向かって先細のテーパー形状としてなることにも特徴を有する。
【0009】
また、前記貫通孔部は、前記発泡樹脂充填空間に対する発泡樹脂の注入用の孔部であることにも特徴を有する。
【0010】
また、前記表皮の裏側に設けられ、スラブ樹脂により形成されたスラブ樹脂層部と、前記スラブ樹脂層部と前記発泡樹脂部との間に介在し、前記スラブ樹脂層部および前記発泡樹脂部に対して接着されたフィルム層部と、を有することにも特徴を有する。
【0011】
前記基材の周縁部下部に樹脂貫通孔を形成し、前記発泡樹脂部のうち、前記基材の周縁部下部で折り返した表皮折り返し部の裏側の発泡樹脂層部分と前記発泡樹脂充填空間側の発泡樹脂層部分とを前記樹脂貫通孔を介して連通させたことにも特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、車両内装部材の基本構成を形成する基材とその表面側を被覆した表皮との間に形成された発泡樹脂充填空間内に発泡樹脂を注入して構成した車両内部材において、前記基材は、前記発泡樹脂充填空間に向けて開口する貫通孔部、および前記発泡樹脂充填空間に対する凹部の少なくとも一方を有し、前記発泡樹脂充填空間に注入された発泡樹脂により形成された発泡樹脂部により、前記基材と前記表皮とが互いに接合されているため、スラブ樹脂と注入発泡樹脂との癒合により特に接着剤などのバインダーを必要とすることなく両樹脂の一体化を図ることができその分の作業の煩雑さを回避できる効果がある。
【0013】
また、注入した発泡樹脂が表皮の裏側と接着すると共に貫通孔部または凹部内で硬化し、表皮が基材から剥離することを防止するアンカーとして機能するため、表皮と基材との接合構造をより堅牢にする効果がある。
【0014】
請求項2の発明によれば、前記貫通孔部および前記凹部の少なくとも一方は、前記発泡樹脂充填空間に向かって先細のテーパー形状としてなるため、表皮が基材から剥離することを防止するアンカーとしての機能をより高めることができ、表皮と基材との接合構造をより堅牢にする効果がある。
【0015】
請求項3の発明によれば、前記貫通孔部は、前記発泡樹脂充填空間に対する発泡樹脂の注入用の孔部であるため、樹脂の硬化後は樹脂充填空間から発泡樹脂注入孔のテーパー孔を介して基材外方に排出遺漏する恐れがなく内部の樹脂構造を強固に維持できる効果がある。
【0016】
請求項4の発明によれば、前記表皮の裏側に設けられ、スラブ樹脂により形成されたスラブ樹脂層部と、前記スラブ樹脂層部と前記発泡樹脂部との間に介在し、前記スラブ樹脂層部および前記発泡樹脂部に対して接着されたフィルム層部と、を有するため、発泡樹脂充填空間に注入された発泡樹脂のスラブ樹脂層部内への含浸を制御することができる。これにより、車両内層部材のクッション性を保持できる効果がある。
【0017】
請求項5の発明によれば、前記基材の周縁下部に樹脂貫通孔を形成し、前記発泡樹脂部のうち、前記基材の周縁部下部で折り返した表皮折り返し部の裏側の発泡樹脂層部分と前記発泡樹脂充填空間側の発泡樹脂層部分とを前記樹脂貫通孔を介して連通させたため、折返しの表皮を強固に基材に連設固定することができると共に、特に表皮の折返し部分を基材に一体固定する治具部材を必要とすることなく煩雑な固定作業をすることなく従来の基材と折返し表皮の構造のままで一体固定が行える効果がある。
【0018】
また、上記のような各構成による総合的な効果として従来の処理の工法に比較して、加熱処理によるコンソールボックス蓋体のフレーム処理や表皮被覆に必要な接着剤塗布作業や表皮の被覆仮止め作業や基材の端縁部における表皮の折返し部分の溶着やタッカー作業がなくなり加工費の削減が可能となる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態にかかる車両内装部材(コンソール蓋体)の構成を示す一部拡大断面図である。
図2】基材セットと表皮セットとを組み付けする作業工程(第1段階)を示す説明図である。
図3】基材セットの構造を示す説明図である。
図4】表皮セットの構造を示す説明図である。
図5】第1段階を説明する一部拡大断面図である。
図6】第1段階を説明する一部拡大断面図である。
図7】基材セットと表皮セットとをスライドで型締めする作業工程(第2段階)を示す説明図である。
図8】上型を省略した状態の第2段階を説明する平面図である。
図9】第2段階を説明する一部拡大断面図である。
図10】押し込め片によって表皮を基材に沿って折り返す作業工程(第3段階)を、上段を省略した状態で示す説明図である。
図11】第3段階を説明する一部拡大断面図である。
図12】貫通孔部から発泡樹脂を注入する作業工程(第4段階)を示す一部拡大断面図である。
図13】他の形状よりなる貫通孔部を備えたコンソール蓋体の一部拡大断面図である。
図14】凹部を備えたコンソール蓋体の一部拡大断面図である。
図15】他の実施形態にかかる車両内装部材(コンソール蓋体)の構成を示す一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明の要旨は、車両内装部材の基本構成を形成する基材とその表面側を被覆した表皮との間に形成された発泡樹脂充填空間内に発泡樹脂を注入して構成した車両内装部材において、前記基材は、前記発泡樹脂充填空間に向けて開口する貫通孔部、および前記発泡樹脂充填空間に対する凹部の少なくとも一方を有し、前記発泡樹脂充填空間に注入された発泡樹脂により形成された発泡樹脂部により、前記基材と前記基材とが互いに接合されていることにある。
【0021】
また、前記貫通孔および前記凹部の少なくとも一方は、前記発泡樹脂充填空間に向かって先細のテーパー形状としてなることにも特徴を有する。
【0022】
また、前記貫通孔部は、前記発泡樹脂充填空間に対する発泡樹脂の注入用の孔部であることにも特徴を有する。
【0023】
また、前記表皮の裏側に設けられ、スラブ樹脂により形成されたスラブ樹脂層部と、前記スラブ樹脂層部と前記発泡樹脂部との間に介在し、前記スラブ樹脂層部および前記発泡樹脂部に対して接着されたフィルム層部と、を有することにも特徴を有する。
【0024】
また、前記基材の周縁部下部に樹脂貫通孔を形成し、前記発泡樹脂部のうち、前記基材の周縁部下部で折り返した表皮折り返し部の裏側の発泡樹脂層部分と前記発泡樹脂充填空間側の発泡樹脂層部分とを前記樹脂貫通孔を介して連通させたことにも特徴を有する。
【0025】
本発明の実施の形態では、車両内装部材の一例として、自動車の内装構造であるコンソールボックス蓋体を例にとって説明する。ただし、本発明に係る車両内装部材は、自動車のコンソールボックス蓋体に限定されることなく、自動車のドアトリムやインストルメントパネル等の他の内装構造等、発泡体を含む車両内装部材に広く適用可能である。
【0026】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る車両内装部材としてのコンソールボックス蓋体(以下「コンソール蓋体」とする。)Aの内部構造を示す一部拡大断面図である。
【0027】
コンソール蓋体Aは、図1に示すように、下方開放の長方形の中空蓋体aで構成されており、中空蓋体aはコンソール蓋体Aの基本枠体を形成する略平坦の天井基材11とその周縁部の垂直壁体12よりなる基材10からなり、基材10上面には発泡ウレタンからなる発泡樹脂部14と、更にその表面を被覆するフィルム層部15と、更にその表面を被覆するスラブ樹脂からなるスラブ樹脂層部16と、更にその上面を被覆するコンソール外表面の樹脂シートからなる表皮17とより構成されている。基材10の天井基材11と垂直壁体12の角部分の外側においては、2枚の表皮17が継ぎ合わされており、2枚の表皮は、中空蓋体aの表面側に表れるステッチ25によりスラブ樹脂層部16とともに縫い付けられている。
【0028】
かかる構成のコンソール蓋体Aにおいて、本発明の実施形態の要旨は、コンソール蓋体Aの基本構成を形成する基材10とその表面側を被覆した表皮17との間に形成された発泡樹脂充填空間13に発泡樹脂を注入し、基材10は発泡樹脂充填空間13に向けて開口する貫通孔部18を有し、発泡樹脂充填空間13に注入された発泡樹脂により形成された発泡樹脂部14により、基材10と表皮17とが互いに接合されたことよりなる。
【0029】
基材10は、例えば、PP(ポリプロピレン)等の合成樹脂を素材として射出成形により形成された比較的硬質の成形部材である。基材2の板厚は、例えば3mm程度である。
【0030】
表皮17は、例えば、PVC(ポリ塩化ビニル)等の合成樹脂を素材としてスラッシュ成形や反応射出成形により形成された比較的軟質の成形部材である。表皮17は、その外表面によってコンソール蓋体Aの意匠面を形成する。表皮材3の板厚は、例えば1mm程度である。
【0031】
発泡樹脂部14は、例えばポリウレタン等の発泡樹脂材料により、基材2と表皮材3との間で発泡成形されたウレタンフォームである。発泡樹脂部14は、例えば、ポリオールとイソシアネートが反応することによって得られる高分子であるウレタン樹脂である。発泡樹脂部14は、基材10と表皮17との間において、例えば5~10mm程度の層厚の発泡層として形成される。なお、発泡樹脂部14としては、ウレタンフォームのほか、ポリプロピレンフォームやポリエチレンフォーム等が例示される。発泡樹脂部14は、後述する発泡成形用の型において基材10および表皮17を含む部材により形成される成形空間である発泡樹脂充填空間13内に注入・充填されて発泡・固化する発泡樹脂材料により発泡形成される。
【0032】
更には、貫通孔部18は、発泡樹脂充填空間13に向かって先細のテーパー形状とし、発泡樹脂充填空間13に対する発泡樹脂の注入用の孔部としている。つまり、貫通孔部18をなす内周面は、発泡樹脂充填空間13の外側から内側にかけて孔径を徐々に縮径させるように、円錐台形状に沿った形状を有する。貫通孔部18は、基材10の天井基材11において複数箇所に形成されている。例えば、貫通孔部18は、略矩形状の平面視形状を有する天井基材11における四隅および中央部に配置形成される。
【0033】
更には、表皮17の裏側に設けられ、ウレタン等のスラブ樹脂により形成されたスラブ樹脂層部16と、スラブ樹脂層部16と発泡樹脂部14との間に介在し、スラブ樹脂層部16と発泡樹脂部14に対して接着されたフィルム層部15とを有している。
【0034】
更に、基材10の周縁部を形成する垂直壁体12の下部には垂直壁体12を貫通する樹脂貫通孔19を形成し、発泡樹脂部14のうち、基材10の垂直壁体12で折り返した先端側である表皮折り返し部20の裏側の発泡樹脂層部分14bと発泡樹脂充填空間13側の発泡樹脂層部分14aとを樹脂貫通孔19を介して連通させている。つまり、発泡樹脂部14のうち、垂直壁体12の両面側に位置する発泡樹脂層部分14aと発泡樹脂層部分14bとが、樹脂貫通孔19内を埋める貫通部分14cにより互いにつながっている。
【0035】
具体的には、表皮17の裏側には予めスラブ樹脂をコーティングしてなるスラブ樹脂層部16を形成し、更にスラブ樹脂層部16の表面を樹脂よりなるフィルムで被覆してフィルム層部15を形成している。フィルム層部15は、スラブ樹脂層部16に対して、例えば加熱することで溶着されている。フィルム層部15を構成するフィルム部材として、例えばウレタンフィルムを用いることで、発泡樹脂部14およびウレタンにより形成されたスラブ樹脂層部16それぞれに対するフィルム層部15の良好な密着性を得ることができる。ただし、フィルム層部15を構成するフィルム部材の材質は特に限定されるものではない。また、スラブ樹脂層部16を構成する材料についてもウレタン以外の材料が用いられてもよい。また、スラブ樹脂層部16と発泡樹脂部14との間にフィルム層部15を介在させることにより、スラブ樹脂層部16に発泡樹脂部14が含浸することを抑制ないし防止することができる。これにより、スラブ樹脂層部16が硬くなることを抑制することができ、表皮17に対する外側からの良好な触感を得ることができる。かかるフィルム層部15と基材10の表面側との間の空間を発泡樹脂充填空間13として発泡樹脂を注入充填する構造としている。
【0036】
かかる構造により基材10の天井基材11の所定箇所には、発泡樹脂充填空間13に発泡樹脂を注入するための貫通孔部18が穿設されている。貫通孔部18は、発泡樹脂充填空間13に向かって先細のテーパー形状としている。
【0037】
このような構成とすることにより、貫通孔部18は、液状樹脂の注入が容易になると共に、注入した樹脂が貫通孔部18を介して基材10外に遺漏しにくくなる。更に、一旦硬化した発泡樹脂が貫通孔部18中でアンカーとしての機能を果たすため、発泡樹脂部14の浮き上がりや基材10の表面側との剥離などを防止することができる。特に、上述のとおり貫通孔部18を天井基材11における四隅および中央部に配置形成することにより、基材10から発泡樹脂部14が剥がれることを効果的に抑制することができる。なお、本実施形態では、貫通孔部18は、発泡樹脂充填空間13に対する発泡樹脂の注入用の孔部であるが、注入用の孔部とは別に形成された孔部であってもよい。
【0038】
なお、貫通孔部18は、内側周壁を平坦なテーパー形状とする他に、図13に示すように、テーパー中途に段部21を形成してもよい。図13に示す貫通孔部18は、発泡樹脂充填空間13に対して段部21よりも外側の部分を、比較的孔径が大きい拡径部とし、段部21よりも内側の部分を、比較的孔径が小さい縮径部としている。貫通孔部18の拡径部および縮径部は、いずれも発泡樹脂充填空間13に向かってテーパーした孔形状を有する。かかる段部21を有する貫通孔部18によれば、上記したアンカーとしての機能をより向上することができる効果がある。
【0039】
また、図14に示すように、基材10の天井基材11の所定箇所には、発泡樹脂充填空間13に対する凹部22を形成することもできる。凹部22は、天井基材11の発泡樹脂充填空間13側に臨んで開口した非貫通状の穴部である。凹部22は、発泡樹脂充填空間13に向かって先細のテーパー形状に形成されている。かかる凹部22を備えた基材10によれば、貫通孔部18から発泡樹脂充填空間13内に注入した発泡樹脂が凹部22の内部にも充填されて硬化するため、上記したアンカーとしての機能をより向上することができる効果がある。
【0040】
基材10の周縁部を構成する垂直壁体12の下部には樹脂貫通孔19を形成し、垂直壁体12に沿って折り返したスラブ樹脂層部16と一体の表皮17の端部からなる表皮折り返し部20の裏側の発泡樹脂層部分14bと発泡樹脂充填空間13側の発泡樹脂層部分14aとを樹脂貫通孔19を介して連通させている。
【0041】
すなわち、基材10としてコンソール蓋体Aの周縁部である垂直壁体12下部に穿設した樹脂貫通孔19を介して、発泡樹脂充填空間13内に注入された発泡樹脂は、コンソール蓋体Aの垂直壁体12の内側へ滲出し、折り返したスラブ樹脂層部16と一体の表皮折り返し部20の裏側へと含浸して、基材10の垂直壁体12の下部とそこで折り返したスラブ樹脂層部16と一体の表皮17との間に発泡樹脂が介入して基材10と表皮折り返し部20との一体接着を可能としている。かかる基材10と表皮折り返し部20との一体密着構造によって特に接着部材を介することなく一体に構成することができる効果がある。
【0042】
次に、発泡樹脂充填空間13内に注入された発泡樹脂が、かかる樹脂貫通孔19を介してコンソール蓋体Aの垂直壁体12内側へ滲出し、折り返したスラブ樹脂層部16と一体の表皮折り返し部20の裏側へ回り込ませ、基材10の垂直壁体12の下部と、それに沿って折り返したスラブ樹脂層部16と一体の表皮17との間に発泡樹脂が介在して基材10と表皮折り返し部20との一体接着を可能とする作業工程を基材セット30と表皮セット32とにより行う状態を図2図12に基づき詳細に説明する。
【0043】
すなわち、図2に示すように、第1段階では基材セット30において基材10を留置固定するための上型31(図3を参照)と、表皮セット32において表皮17を留置固定するための下型33(図4を参照)とを使用し、それぞれが留置固定する基材10と表皮17とを組付けて基材10の表面側に表皮17を被覆する。表皮17の裏側には、スラブ樹脂層部16およびフィルム層部15が張設されている。なお、図5および図6は、基材セット30と表皮セット32との各セットを組付けした状態における一部拡大断面図である。
【0044】
上型31は、矩形板状の上型基部31aと、上型基部31aの下面側に突設され基材10のセットを受ける成形面を有する上成形型部31bとを備える。下型33は、矩形板状の下型基部33aと、下型基部33aの上面側に突設され表皮17のセットを受ける成形面を有する下成形型部33bとを備える。下型基部33aは、上型基部31aと略同じ外形寸法を有する。下型基部33aの上面側の四隅には、支柱部33cが立設されている。
【0045】
上型31と下型33は、型合わせされた状態(型閉じ状態)で、上成形型部31bおよび下成形型部33bを互いに対向させ、基材10および表皮17がセットされた各成形型部の成形面により成形空間を形成する。上型31と下型33の型閉じ状態においては、四隅の支柱部33cが上型31の上型基部31aの四隅に対する接触部となり、四隅の支柱部33cにより、下型33に対して上型31が支持された状態となる。したがって、上型31と下型33の型閉じ状態において、上型基部31aと下型基部33aの矩形状の外形における四方の側面部においては、隣り合う支柱部33c間に、支柱部33cの高さ分の上下寸法を有する開口部36が形成される。各開口部36は、上型基部31aと下型基部33aとの間において、隣り合う一対の支柱部33c間に形成された横長矩形状の空間部分である。
【0046】
第2段階では、図7および図8に示すように、組付けした基材セット30と表皮セット32とをスライド34を用いて四側面から型締めして基材10と表皮17とを組付ける。スライド34は、開口部36の上下方向の寸法に対応した板厚を有する板状の型部材であり、上型31と下型33の型閉じ状態において四方の側面に開口した開口部36に対して差し込まれる。スライド34の先端側には、成形面34aが形成されている。スライド34が開口部36から差し込まれることで、上型31と下型33の型閉じ状態で下型33から上方に延出した状態の表皮17およびスラブ樹脂層部16の縁部が(図6参照)、スライド34により内側に押し込まれ、略直角状に折り曲げられた状態となる(図9、矢印X1参照)。
【0047】
この段階を経て、図9に示すように、スライド34で型締めした基材セット30と表皮セット32とにおいて、表皮セット32内のスラブ樹脂層部16と一体の表皮17を基材セット30内の基材10の垂直壁体12に沿って、押し込め片35によって折り返す前の四方折り曲げ状態とすることができる。
【0048】
第3段階では、図10および図11に示すように、基材10の垂直壁体12の内側に沿う大きさと形状に構成した押し込め片35を基材セット30側から表皮セット32側に向けて押し込み、スライド34によって四方折り曲げ状態となったスラブ樹脂層部16と一体の表皮17を基材10の垂直壁体12の内側に位置するように折り返した状態とする。
【0049】
図10に示すように、押し込め片35は、上型31の上成形型部31bの平面視外形に沿って、上成形型部31bを囲繞するリング状ないし扁平な四角筒状の型部材である。押し込め片35の先端縁側には、成形面35aが形成されている。押し込め片35は、上成形型部31bに外嵌した状態で上成形型部31bの外周面に沿ってスライドし、下型33側へと押し込まれることで(図11、矢印X2参照)、スラブ樹脂層部16と一体の表皮17に作用する。
【0050】
第4段階では、図12に示すように、図示せぬ注入ヘッド等によって貫通孔部18から発泡樹脂を注入する。発泡樹脂材料は、例えばポリオールとイソシアネートが攪拌されながら注入される。貫通孔部18から発泡樹脂充填空間13内に注入された材料は、発泡樹脂充填空間13内に充填され、同空間内で反応して発泡し固化することで、発泡樹脂充填空間13に発泡体としての発泡樹脂部14が形成されると共に表皮折り返し部20の内側に発泡樹脂層部分14a、14bが形成される。
【0051】
そして、発泡樹脂充填空間13において発泡樹脂部14が形成された後、型開きおよび脱型が行われる。これにより、発泡樹脂部14を有するコンソール蓋体Aが得られる。コンソール蓋体Aにおいて、発泡樹脂部14は、基材10の内面、および表皮17に対してスラブ樹脂層部16を介して設けられたフィルム層部15に密着した状態で設けられ、基材10と表皮17とを一体化させる接着材となる。つまり、発泡樹脂部14により、基材10と、フィルム層部15およびスラブ樹脂層部16を設けた表皮17とが、互いに接合された状態となっている。
【0052】
特に、第4段階において、基材10の垂直壁体12に形成した樹脂貫通孔19にも発泡樹脂を充填することにより、表皮折り返し部20の裏側の発泡樹脂層部分14bと発泡樹脂充填空間13側の発泡樹脂層部分14aとを樹脂貫通孔19を介して連通させ、両者をつなぐ貫通部分14cを形成することができるため、折返した表皮17を強固に基材10に連設固定することができると共に、表皮折り返し部20を基材10に一体固定する治具部材を必要とすることなく煩雑な固定作業をすることなく従来の基材と折返し表皮の構造のままで一体固定を行うことができる。
【0053】
このように基材10と表皮17とその間の発泡樹脂充填空間13からなる型材構造を変形加工しながら最終的に貫通孔部18から発泡樹脂充填空間13に発泡樹脂を注入し、また、基材10の周縁部の垂直壁体12に樹脂貫通孔19を形成し、垂直壁体12に沿って折り返したスラブ樹脂層部16と一体の表皮折り返し部20の裏側の発泡樹脂層部分14bと発泡樹脂充填空間13側の発泡樹脂層部分14aとを樹脂貫通孔19を介して注入して車両内装部材としてのコンソール蓋体Aを形成することによって、本件発明の実施形態では上述した第1段階~第4段階の工程により従来の複雑な工程を可及的に削減して加工費を削減し強度的、経済的、作業工程的に有利な車両内装部材を提供するものである。
【0054】
上述した各種効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0055】
例えば、上述した本実施形態おいては、コンソール蓋体Aは、図1に示すように、表皮17側から順にスラブ樹脂層部16、フィルム層部15、発泡樹脂部14、基材10で構成されているが、例えば、表皮17と基材10との間に発泡樹脂部14のみを有する構成であってもよい。この場合、例えば、図15に示すように、スラブ樹脂層部16およびフィルム層部15が省略され、表皮17に対して発泡樹脂部14が形成されている。このような構成においては、例えば、表皮17として、裏面側に例えば不織布等からなる裏基布(図示略)を有する構成のものが用いられ、発泡樹脂部14が裏基布に対して含浸した状態となる。また、フィルム層部15を省略し、スラブ樹脂層部16と発泡樹脂部14とを有する構成としてもよい。このような構成において、発泡樹脂部14は、スラブ樹脂層部16に対して含浸した状態で密着することになる。ただし、車両内装部材のクッション性を保持する観点からは、スラブ樹脂層部16と発泡樹脂部14とを有し、これらの間にフィルム層部15を介在させた構成が好ましい。
【符号の説明】
【0056】
A コンソール蓋体
a 中空蓋体
10 基材
11 天井基材
12 垂直壁体
13 発泡樹脂充填空間
14 発泡樹脂部
15 フィルム層部
16 スラブ樹脂層部
17 表皮
18 貫通孔部
19 樹脂貫通孔
20 表皮折り返し部
21 段部
22 凹部
25 ステッチ
30 基材セット
31 上型
32 表皮セット
33 下型
34 スライド
35 押し込め片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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