(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045977
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】温度センサ付き水晶振動デバイス
(51)【国際特許分類】
H03H 9/02 20060101AFI20230327BHJP
【FI】
H03H9/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154628
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000149734
【氏名又は名称】株式会社大真空
(72)【発明者】
【氏名】森本 賢周
【テーマコード(参考)】
5J108
【Fターム(参考)】
5J108BB02
5J108CC04
5J108CC11
5J108DD02
5J108EE03
5J108EE07
5J108GG03
5J108GG10
5J108GG14
5J108GG20
5J108GG21
5J108JJ03
5J108JJ04
(57)【要約】
【課題】振動部と枠体部との機械的強度を安定させるとともに、振動部の振動特性を向上させた水晶振動板および水晶振動デバイスを提供する。
【解決手段】水晶振動板1はATカット水晶振動板からなり、全体として矩形の板状である。水晶振動板1は振動部11と、振動部と連結された保持部13,13tと、振動部の外周に配置され、保持部13と連結される枠体部12とからなる。振動部11と枠体部12間には保持部13,13t以外は周状に貫通部14が形成されている。第1保持部材上にサーミスタからなる温度センサ4が導電接合材にて面接合ざれ、この温度センサは熱伝導性の低い樹脂材で被覆されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶振動板と、前記水晶振動板の上面に接合される第1封止部材と、前記水晶振動板の下面に接合される第2封止部材と、からなる水晶振動デバイスと、前記水晶振動デバイスの第1封止部材に接合された温度センサと、を具備した温度センサ付き水晶振動デバイスであって、
前記第1封止部材と温度センサには各々電極パッドが形成され、両電極パッド同士は導電接合材により面接合されるとともに、前記第1封止部材に接合された温度センサは樹脂材で被覆され、前記樹脂材の熱伝導性は前記導電接合材の熱伝導性より小さいことを特徴とする温度センサ付き水晶振動デバイス。
【請求項2】
前記温度センサは、板状のサーミスタ素子と、前記サーミスタ素子の一方の主面に形成された一対の電極パッドと、前記一対の電極パッドに対向した、他方の主面に形成された共通電極からなる構成であり、前記一対の電極パッドが前記第1封止部材の電極パッドに導電接合されていることを特徴とする請求項1記載の温度センサ付き水晶振動デバイス。
【請求項3】
前記水晶振動板は、一対の励振電極が形成された振動部と、前記振動部の少なくとも一カ所から突出形成された保持部と、前記振動部の外周を貫通部を介して取り囲むと共に、前記保持部と連結される枠体部とからなる構成であり、
前記第1封止部材と第2封止部材は板状構成であるとともに、前記水晶振動板と前記第1封止部材および第2封止部材とは前記枠体部により機械的に接合されていることを特徴とする請求項1または2に記載の温度センサ付き水晶振動デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶振動デバイスに温度センサが取り付けられた温度センサ付き水晶振動デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器の高精度化に伴い、環境温度の変化に伴う周波数変動を補償する温保補償型の水晶発振回路が求められており、これに対応する水晶振動デバイスとして、水晶振動子にサーミスタ等の温度センサが取り付けられた温度センサ付き水晶振動子が幅広く使用されている。
【0003】
このような温度センサ付き水晶振動子はセラミックからなるパッケージに水晶振動子が収納されるとともに、その外側にサーミスタが取り付けられ、水晶振動子を取り巻く環境温度を検出する構成となっている。特許文献1参照。
【0004】
また、上記電子機器はその用途によっては小型化、薄型化が求められる場合があり、このような場合超小型化あるいは超薄型化の水晶振動デバイスが要求される。例えばモバイル機器、ウェアラブル機器等においては、超小型化あるいは超薄型化の水晶振動デバイスが要求される。
【0005】
このような需要に対応する水晶振動デバイスとして、水晶振動板を薄板封止部材で上下から気密封止した三層構成の水晶振動デバイスが提案されている。(特許文献2参照)
なお、特許文献2においては、三層構成の水晶振動子にファンクション部としてサーミスタが用いられた例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5900582号
【特許文献2】特許第5888347号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1においては、上下方向に開口した収納部を形成したセラミック製のパッケージを用いている。そして、上部開口部分には水晶振動子を収納し、パッケージに導電接合するとともに、下部開口部分にサーミスタを収納し、パッケージに導電接合した構成を採用している。
【0008】
本構成ではセラミック製のパッケージを用い、かつ2つの収納部を有する構成であるので、小型化および薄型化が困難であるという問題があった。また特許文献2においては、三層構成の水晶振動子にサーミスタが形成された構成であるが、水晶振動子とサーミスタの接合部分について、図面を参照すると極めて小さな領域で接合されているとともに、水晶振動子の上面に位置するサーミスタの上方が開放した構成であるので、伝わった熱が放散しやすく、適切な温度検出ができない場合があり、最終的には水晶振動子に係る温度が正確に検出できず、適切な温度補償ができないことがあった。このような場合、この水晶振動デバイスの電気的特性が不安定となり、ひいてはこれを用いた電子機器の動作が不安定になることになり、電子機器の信頼性を低下させることがあった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、超小型化、超薄型化に対応するともに、水晶振動デバイスに係る温度変動を安定して適切に検出し、電気的特性に優れた温度センサ付き水晶振動デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による温度センサ付き水晶振動デバイスは、水晶振動板と、前記水晶振動板の上面に接合される第1封止部材と、前記水晶振動板の下面に接合される第2封止部材と、からなる水晶振動デバイスと、前記水晶振動デバイスの第1封止部材に接合された温度センサと、を具視した温度センサ付き水晶振動デバイスであって、前記第1封止部材と温度センサには各々電極パッドが形成され、両電極パッド同士は導電接合材により面接合されるとともに、前記第1封止部材に接合された温度センサは樹脂材で被覆され、前記樹脂材の熱伝導性は前記導電接合材の熱伝導性より小さいことを特徴としている。
【0011】
前記導電接合材は、樹脂接合材に金属粉、金属小片等からなる導電フィラーを添加した構成でもよいし、ハンダ等の金属ろう材であってもよい。これら導電接合材は前記両電極パッドを面接合していること、および金属材の良好な熱伝導性により、温度センサはタイムラグが少なく水晶振動デバイスの温度変化を検出することができる。
【0012】
そして、温度センサは前記樹脂材で被覆されていることにより、温度センサに伝わった熱は無用に放熱することがないので水晶振動デバイスにおける温度を正確に検出することができる。上述のとおり、水晶振動板と第1封止部材と第2封止部材による三層構成の水晶振動デバイスであるので、水晶振動板は環境温度変化に追従しやすくなるが、温度センサも前記各電極パッドの面接合による良好な熱伝導性により、水晶振動板の温度変動に対応した温度情報を検出することができる。
【0013】
なお、この温度センサが検出した温度情報(例えば電流値、電圧値、抵抗値等)は独立した端子により外部と接続される。そして外部補償回路等により、水晶振動デバイスにおける周波数情報を適切に温度補償し、正確な周波数を得ることができる。
【0014】
前記温度センサの第1封止部材との接合面は複数の電極パッドが形成され、各電極パッドの合計面積は温度センサの面積の40%~85%の大きさであってもよい。ここでいう面積は投影面積を指し、前記面積比率は温度センサの投影面積に対する各電極パッドの合計した投影面積を指している。
【0015】
温度センサは水晶振動デバイスとの接触面積が大きいほど、水晶振動デバイスに係る温度を正確に検出することができる。従って温度センサに形成された電極パッドは温度センサの面積に対して大きいほうが良いが、大きすぎると隣接する電極パッドの短絡や導電接合材による短絡が生じやすくなる。前記接触面積が小さくなると水晶振動デバイスの温度検出精度が低下する。従って、各電極パッドの合計面積は温度センサの面積の40%~85%の大きさであると、安定的な温度検出を行うことができる。
【0016】
前記温度センサは、板状のサーミスタ素子(NTCサーミスタ素子)と、前記サーミスタ素子の一方の主面に形成された一対の電極パッドと、前記一対の電極パッドに対向した、他方の主面に形成された1つの電極パッドからなる構成であり、前記一対の電極パッドが第1封止部材の電極パッドに導電接合されている構成であってもよい。
【0017】
板状のサーミスタは、スクリーン印刷技術あるいはドクターブレード技術等の厚膜形成技術並びに焼成技術により製造した構成で、Mn-Fe-Ni-Ti系材料を板状サーミスタウェハに焼結成形している。この板状サーミスタウェハに対して、電極膜(金属膜)をスパッタリングにて形成し、フォトリソグラフィ技術を用いてパターニングを行う。最終的にはサーミスタウェハを個割して、個別の板状サーミスタを得る。なお、サーミスタの材料はMn-Fe系材料等であってもよい。
【0018】
汎用されているサーミスタ(NTCサーミスタ)は、積層技術によりサーミスタ素材を電極(金属)膜を介して複数層積層した構成であるが、上記構成においては単層の板状サーミスタ素材の表裏に電極(金属)膜を形成した構成である。この板状サーミスタ素子の一方の主面に一対の電極パッドを形成するとともに、前記一対の電極パッドに対向した、他方の主面に形成された1つの電極パッドを形成した構成とすることにより、極めて薄型の板状サーミスタを得ることができる。これら電極膜はスパッタリング等のPVDによる成膜技術により形成する。
【0019】
このような板状のサーミスタを水晶振動デバイスの電極パッドに導電接合する構成により、薄型化並びに小型化に対応した温度センサ付き水晶振動デバイスを得ることができる。
【0020】
さらに前記水晶振動板は、一対の励振電極が形成された振動部と、前記振動部の少なくとも一カ所から突出形成された保持部と、前記振動部の外周を貫通部を介して取り囲むと共に、前記保持部と連結される枠体部とからなる構成であり、前記第1封止部材と第2封止部材は板状構成であるとともに、前記水晶振動板と前記第1封止部材および第2封止部材とは前記枠体部により機械的に接合されている構成であってもよい。
【0021】
上記構成によれば、各々板状の水晶振動板、第1封止部材、第2封止部材が接合された構成であり、薄型の水晶振動デバイス構成であり、この水晶振動デバイスにサーミスタ等の温度センサを接合する構成であるので、薄型化並びに小型化に対応した温度センサ付き水晶振動デバイスを得ることができる。振動部は少なくとも一カ所から突出形成される保持部によりつながっているので、外部応力に対して影響を受けにくくなる。特に、サーミスタを接合する際に生じる導電性接合材や樹脂材による外部応力の影響を振動部に伝えにくくするため、振動部の特性が安定する。
【0022】
なお、前記水晶振動板はATカットまたはSCカットの水晶振動板であってもよく、X-Yカットの水晶振動板等であってもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、超小型化、超薄型化に対応するともに、水晶振動デバイスに係る温度変動を適切に検出し、電気的特性に優れた温度センサ付き水晶振動デバイスを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本実施の形態にかかる温度センサ付き水晶振動デバイスの各構成を示した分解斜視図である。
【
図3】第2封止部材の他方の主面(底面)の平面図である。
【
図4】
図1の各構成部を組み立てた際のA-A断面図である。
【
図5】板状サーミスタの一方の主面の平面図である。
【
図6】板状サーミスタの他方の主面の平面図である。
【
図7】板状サーミスタの他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
第一の実施形態
第一の実施形態にかかる温度センサ付き水晶振動デバイスXtlは、水晶振動デバイスと温度センサからなり、
図1に示すように、水晶振動デバイスXtlは水晶振動板1、第1封止部材2、第2封止部材3からなり、第1封止部材2、水晶振動板1、第2封止部材3の順に重ね合わせて積層した構成である。また、温度センサ4は水晶振動デバイスの上面に導電接合されている。
【0027】
水晶振動板1はATカット水晶振動板からなり、全体として矩形の板状である。水晶振動板1は振動部11と、振動部11の2つの角部と連結された保持部13、13tと、振動部の外周に配置され、前記保持部13,13tと連結される枠体部12とからなる。なお、振動部11と枠体部12間には保持部13,13t以外は周状に貫通部14が形成されている。
【0028】
振動部11は各々対向する長辺と短辺とを有する矩形状であり、4つの角部を有している。なお、振動部は平面で見て正方形であってもよい。また振動部11のほぼ中央部には一主面と他主面(表裏主面)に矩形の励振電極111,112が形成されている。各励振電極111,112の角部には帯状の引出電極111a,112aが接続され、一端辺の両端(振動部の角部)に向かって引き出されている。なお、引出電極111aは保持部13を、引出電極112aは保持部13tをそれぞれ経由して、各々枠体部に引き出され、最終的には後述する第2封止部材3に形成された外部接続端子31,32に引き出されている。
【0029】
具体的には、引出電極111aは保持部13の表面を通り、枠体部に形成された金属ビア(貫通金属)V1を介して、他方の主面に引き出され、さらに後述の第2封止部材3に形成された金属ビアV2に接続されている。そして前記金属ビアV2は第2封止部材3の他の主面に形成された端子電極31に電気的に接続されている。また、引出電極112aは保持部13tの裏面を通り、水晶振動板1の他方の面に引き出されており、対向する第2封止部材3に形成された金属ビアV3に電気的接続される。なお、前記金属ビアV3は第2封止部材3の他の主面に形成された端子電極32に電気的に接続されている。
【0030】
これら励振電極111,112および引出電極111a,112aは複数層の金属膜からなり、例えば水晶振動板に接してTi膜が形成され、その上部にAu膜が形成された多層構成である。具体的な各金属膜の厚さの例として、例えばTi膜5nm、Au膜200nmをあげることができるが、所望の特性によりこれらを変更すればよい。
【0031】
振動部11の一端辺には、厚肉部11aが形成されている。当該厚肉部11aはX軸方向の一端辺で、Z´軸方向に伸び前記一端辺全体に渡って形成されている。厚肉部11aは振動部11の厚さよりも厚く形成されている。
【0032】
図2に示すように、振動部11の一つの角部C1には保持部13が設けられ、またもう一つの角部C2には保持部13tが設けられ、各保持部13,13tは枠体部12とつながっている。本実施の形態においては、振動部、保持部、枠体部が水晶板からフォトリソグラフィ技術並びにウェットエッチング技術を用いて一体的に形成されている。なお、ウェットエッチングに代えて、ドライエッチング技術を用いてもよい。
【0033】
図1および
図4に示すように、保持部13は振動部11および厚肉部11aよりも厚く構成され、かつ厚肉部11aから保持部13の上面は斜面上のテーパT2が、振動部11から保持部13へも斜面上のテーパT3が各々形成されている。また保持部13は枠体部12に接続されているが、保持部13から枠体部12の上面はテーパT1が形成されている。このような構成によりそれぞれの厚さは、振動部<厚肉部<保持部<枠体部、のとおりに設定されている。なお、厚肉部11aと保持部13の厚さは等しくてもよい。これら各テーパの形成により、境界領域を鈍角化することができる。なお、前記境界領域の段差が小さい場合等断線のリスクが低い場合においては、前記テーパを形成しなくても実用上問題ない。
【0034】
水晶振動板の具体的寸法例を以下に示す。水晶振動板は矩形ATカット水晶板を用い、その外形寸法は横1.2mm、縦が1.0mm、振動部の外形寸法は横0.7mm、縦0.7mm、枠体部の幅は横0.2mm、縦0.1mm、保持部の寸法は横0.05mm、縦0.15mmであり、各構成部の厚さについては、枠体部の厚さが、0.04mm、保持部の厚さが0.03mm、厚肉部の厚さが0.017mm(17μm)、振動部は0.005mm(5μm)とした。なお、厚肉部の厚さは振動部の厚さに対して10数μm以上の厚さを有することが、機械的強度を確保する点で好ましい。
【0035】
なお、本実施の形態においては、水晶振動板1の一方の主面のみから薄肉化を行った構成を採用しており、例えば一方の主面側のみからエッチング技術により、所望の周波数(厚さ)にまで薄肉加工を行っている。この場合、他方の主面側はエッチングを行わないので、エッチングによる表面の粗面化による振動特性の低下を抑制することができる。なお、両主面から薄肉加工を行う構成を採ってもよい。
【0036】
枠体部12の表裏外周端部には周状にシール膜S11,S21が形成され、これらシール膜は前述の電極膜と同様、水晶振動板に接してTi膜が形成され、その上部にAu膜が形成された多層構成である。
【0037】
また、枠体部12の前記保持部から離れた位置であって、内周側には接続電極121,122が形成されている。前記接続電極121,122は各々枠体部の上面から内側面を通って枠体部12の下面に渡って形成された帯状の金属膜からなる。これら接続電極121,122は各々後述の温度センサの電極パッド41,42と電気的につながり、また第2封止部材の端子電極33,34とも電気的につながっている。
【0038】
第1封止部材2は、矩形で板状のATカット水晶板からなり、水晶振動板2と同様の外形形状並びに外形サイズである。第1封止部材2の他方の主面(水晶振動板1と対向する面)には、シール膜S11に対応した周状のシール膜S12が形成されている。
【0039】
また第1封止部材2の一方の主面は、長辺と短辺を有する矩形上の電極パッド21,22が並列して設けられ、前記電極パッド21は接続電極21aから金属ビアを介して他方の主面に電極が引き出されており、前記電極パッド22は接続電極22aから金属ビアを介して他方の主面に電極が引き出されている。
【0040】
第2封止部材3は、矩形で板状のATカット水晶板からなり、水晶振動板2と同様の外形形状および外形サイズである。第2封止部材3の水晶振動板1と対向する面には、シール膜S21に対応した周状のシール膜S22が形成されている。
【0041】
また第2封止部材3の水晶振動板1と対向しない面には、端子電極31,32,33,34が形成されている。各端子電極31,32,33,34は矩形形状で、第2封止部材の各角部に形成されている。端子電極31,32は各々励振電極111,112と電気的につながっており、端子電極33,34は後述の温度センサの端子41,42と電気的につながっている。なお、これら端子電極を構成する金属膜はTi膜とNiTi膜とAu膜の積層構成を採っている。
【0042】
また第2封止部材3には前記保持部13に対応する領域近傍に表裏に貫通する金属ビアV2が形成され、前述した金属ビアV1と電気的につながっている。また保持部13tに対応する領域近傍に表裏に貫通する金属ビアV3が形成されている。このような構成により上記水晶振動板1に形成された引出電極111aは金属ビアV2を介して端子電極31に、引出電極112aは金属ビアV3を介して端子電極32に、各々接続されている。さらに前記接続電極121,122にそれぞれ対応する金属ビアV4,V5が形成され、金属ビアV4,V5はそれぞれ端子電極33,34に電気的につながっている。このような構成により、水晶振動デバイスの端子電極31,32と温度センサの端子電極33,34はそれぞれ長辺側に並んで、相互に対向する構成となっている。なお、電極配線の設計変更により、水晶振動デバイスの2つの端子電極と温度センサの2つの端子電極とを各々対角に配置する構成としてもよい。
【0043】
第1封止部材2の電極パッド21,22には温度センサ4が電気的機械的に接続されている。温度センサ4は矩形形状で板状のNTCサーミスタであり、矩形板状のサーミスタ素子40は厚さG2を有しており、前記サーミスタ素子40の一方の主面全面に共通電極43が形成され、他方の主面には長辺方向に一定の間隔G1を持って矩形の電極パッド41,42が形成されている。
【0044】
前記温度センサ4は、サーミスタ素子40に形成された一方の電極パッド41と他方の電極パッド42で抵抗体としての端子を構成するが、導電経路は前記一方の電極パッド41から共通電極43を介して前記他方の電極パッドに流れる。このような構成により導電経路の断面積を大きく増し、また電極パッドと共通電極の面同士で対向する経路と出来る為、少ない面積で抵抗値を下げ、特性が安定しやすく、耐電圧も向上させることができる。
【0045】
ところで、電極パッド41,42が接近した構成とした場合、印加する電圧にも依存するが、導電経路が電極パッド41から42への流路が支配的になり、所望の抵抗値が得られないことがあった。従って、実施においては、電極パッド41と共通電極43間の距離G2aと電極パッド42と共通電極43間の距離G2b、並びに電極パッド41,42間距離G1とは、G2a+G2b<G1を満たすような設定としている。このような設定により、所望の抵抗値が得られ、温度センサとしての精度を安定化させることができる。
【0046】
温度センサは水晶振動デバイスとの接触面積が大きいほど、水晶振動デバイスに係る温度を正確に検出することができる。従って温度センサに形成された電極パッドは温度センサの面積に対して大きいほうが良いが、大きすぎると隣接する電極パッドの短絡や導電接合材による短絡が生じやすくなる。前記接触面積が小さくなると水晶振動デバイスの温度検出精度が低下する。従って、所望する抵抗値にもよるが、各電極パッドの合計面積は温度センサの面積の40%~85%の大きさであると、安定的な温度検出を行うことができる。40%以下の大きさであると、温度センサの電極パッドが小さくなりすぎ、水晶振動デバイスの温度情報を正確に検出することができなくなるとともに、温度センサにサーミスタを用いた場合、その抵抗値が高くなりすぎ、温度センサとしての温度検出能が低下する可能性がある。また85%以上の大きさであると導電接合材を含めた短絡のリスクが増加し、短絡が生じると温度センサとして機能しなくなる。
【0047】
具体的な寸法例を以下に示す。温度センサの外形サイズ(サーミスタの外形サイズ)は長辺0.8mm、短辺0.6mm、厚さ0.05mmであり、その面積は0.48mm2となる。またサーミスタ素子に形成される各電極パッドの外形サイズは長辺0.52mm(サーミスタ素子の短辺側)、短辺0.3mm(サーミスタ素子の長辺側)であり、その面積は0.156mm2となる。このような構成により、各電極パッドの合計面積は温度センサの面積の65%程度に設定されており、また前記電極パッドと共通電極間の距離G2aと前記電極パッド42と共通電極43間の距離G2bはそれぞれ0.05mm、前記電極パッド間距離G1は0.12mmに設定しており、前記G2a+G2b<G1 が成り立つように設定している。
【0048】
他の具体例を以下に示す。温度センサの外形サイズ(サーミスタの外形サイズ)は長辺0.7mm、短辺0.6mm、厚さ0.04mmであり、その面積は0.42mm2となる。またサーミスタ素子に形成される各電極パッドの外形サイズは長辺0.58mm(サーミスタ素子の短辺側)、短辺0.3mm(サーミスタ素子の長辺側)であり、その面積は0.174mm2となる。このような構成により、各電極パッドの合計面積は温度センサの面積の83%程度に設定されており、また前記電極パッドと共通電極間の距離G2aと前記電極パッド42と共通電極43間の距離G2bはそれぞれ0.04mm、前記電極パッド間距離G1は0.09mmに設定しており、前記G2a+G2b<G1 が成り立つように設定している。なお、上記寸法は水晶振動デバイスのサイズ、特性や、温度センサ付き水晶振動デバイスの要求仕様に応じて適宜デザインすればよい。
【0049】
板状のサーミスタは、例えばMn-Fe-Ni-Ti系材料をバインダー等とともにスラリー状にし、スクリーン印刷技術あるいはドクターブレード技術等の厚膜形成技術を用いてサーミスタウェハのグリーンシートを作成し、これを焼成技術により板状のサーミスタウェハを焼結成形する。
【0050】
この板状サーミスタウェハに対して、電極膜(金属膜)をスパッタリングにて形成し、フォトリソグラフィ技術を用いてパターニングを行う。具体的な金属材料としては、端子電極を構成する金属膜と同様の、Ti膜とNiTi膜とAu膜の積層構成を採ってもよいし、他の金属膜構成としてもよい。前記Ti膜とNiTi膜とAu膜の積層構成を採用した場合、最終的にサーミスタを実装基板にハンダ接合した場合に、ハンダ喰われが生じにくく安定した導電接合を行うことができる。また、電極パッド41,42の金属膜構成と共通電極43の金属膜構成を異ならせてもよく、例えば、電極パッド41,42の金属膜構成を前記Ti膜とNiTi膜とAu膜の積層構成とし、共通電極の金属膜構成をTi膜とAu膜の積層構成としてもよい。
【0051】
このように単層の板状サーミスタ素子に、金属膜をスパッタリング等の薄膜形成手段で構成することにより、極めて薄肉の板状サーミスタを得ることができる。なお、板状サーミスタはサーミスタウェハ状態でその表面をラッピング研磨することにより、その表面粗さを小さくしてもよい。このような構成により、電極膜(金属膜)を安定的に成膜でき、製造精度を向上させることができるので、温度センサとしての性能を高精度にすることができる。
【0052】
図4に示すように、水晶振動デバイスXtlは第1封止部材2、水晶振動板1、第2封止部材3の順に重ね合わせて積層した構成である。前述のとおり、これら各構成部材は水晶板からなり、その表面は鏡面研磨により平滑面となっている。具体例としては、平均表面粗さRa=0.3~0.1nmであるのが好ましい。このような平滑な表面に前記シール膜S11、S12、S21,S22を形成することにより、その表面の金属膜(最上層Au膜)も非常に平滑な表面状態となっている。
【0053】
第1封止部材2と水晶振動板1、および水晶振動板と第2封止部材3の接合は、上記金属膜のAuに対して表面処理を行った後、拡散接合法により、両者を加圧接合することにより行う。これにより、水晶振動板の振動部は、シール部S1(シール膜S11,S12),S2(シール膜S21,S22)により各封止部材2,3並びに枠体部12に囲まれた状態で気密封止される。なお、気密封止の内部は真空または不活性ガス雰囲気としている。
【0054】
上記構成の水晶振動デバイスXtlの上面、すなわち第1封止部材2の一方の主面には温度センサ4が搭載される。具体的には水晶振動デバイスXtlの上面に形成された電極パッド21,22と、板状サーミスタからなる温度センサ4に形成された電極パッド41,42を導電接合材R1、R1で面接合する。前記電極パッド21,22は前記電極パッド41,42より面積が広く構成されており、これにより導電接合材R1,R1はフィレットを有する状態で水晶振動デバイスXtlと温度センサ4を導電接合することができるので、両者間の接合強度を向上させることができる。前記導電接合材R1は、ペースト状のシリコーン系樹脂接合材に銀粉や銀片等の導電フィラーを添加した構成で、熱伝導性に優れている。これにより前記電極パッド同士が面接合していることと相まって、熱伝導が良好であり、温度センサによる水晶振動デバイスの温度検出をタイムラグが少ない状態で高精度に測定することができる。なお、前記導電接合材は、シリコーン系樹脂以外にウレタン系樹脂やエポキシ系樹脂等の他の樹脂を用いてもよい。
【0055】
図4に示すように、本実施の形態においては板状サーミスタからなる温度センサ4を樹脂材R2で被覆する構成としている。樹脂材R2は水晶振動デバイスの上面を覆う構成で、温度センサ4や水晶振動デバイスに設けられた電極パッド21,22や導電接合材R1を被覆する構成としている。ここで用いる樹脂材R2はエポキシ系樹脂にシリカ(SiO2)フィラーを添加した構成で、前記導電接合材R1より熱伝導率が低い構成としている。なお、樹脂材R2はエポキシ系樹脂以外にウレタン系樹脂や、シリコーン系樹脂等の他の樹脂材を用いてもよい。このような構成により、温度センサで検出した熱が外部に逃げることを抑制する効果を得ることができる。
【0056】
以上の構成により、水晶振動デバイスの温度変動を前記電極パッドと導電接合材介してタイムラグが少なく温度センサにて検出することができ、また温度センサが導電接合材より熱伝導率の低い樹脂材で被覆されていることにより、温度センサの吸熱した温度も外部に漏れることがない。これにより水晶振動デバイスの動作している温度を正確に検出することができるので、高精度な温度検出を行うことができる。なお、水晶振動デバイスの上面には温度センサに加えて、発振回路や温度補償回路を備えたIC部品を搭載し、水晶振動デバイスや温度センサと導電接合してもよい。このような構成により温度補償型水晶発振器を構成した水晶振動デバイスを得ることができる。
【0057】
本実施の形態によれば、振動部11において保持部13,13tの形成された一端辺のほぼ全域に沿って厚肉部11aが形成されている構成となっており、他の端辺は高周波数に対応した薄肉の振動板の厚さの構成となる。従って、振動部11で励起された振動は、厚肉部11aによる境界条件の影響を受けにくい状態で振動を行わせることができ、これによりスプリアス等が生じにくく、またCI値(直列共振抵抗)も良好な状態に保つことができる水晶振動板を得ることができる。また厚肉部11aにより振動部11の機械的強度も向上させることができる。
【0058】
また、前述のとおり、保持部13は厚肉部11aより厚いかあるいは同じ厚さを有し、かつ枠体部12と保持部13間、厚肉部11aと振動部11間にはテーパ部が形成された構成としている。前述のとおりこのテーパ形成により境界を鈍角化することができる。これにより励振電極111,112から水晶振動板の一端辺に引き出された引出電極111a,112aはこのテーパ部上に形成されており、鋭角な角部領域(段差部)を通らない構成となっているので、電極の導通低下や電極断線を防ぐことができる。これにより良好な電気的特性の水晶振動板を得ることができる。
【0059】
本実施の形態によれば、枠体部12と振動部11は複数の保持部13,13tによりつながった構成であるが、保持部13tの厚さは、保持部13の厚さより小さい構成を採っている。従って、複数の保持部による保持により機械的強度を安定させるとともに、厚さの小さい(薄い)保持部を設けることにより、振動部の振動を阻害することを抑制することができる。これにより水晶振動デバイスとしての電気的特性低下を抑制し、実用的な電気的性能を確保することができる。また、本実施の形態に限らず、保持部13の一カ所のみで振動部11をつないだ構成としてもよい。
【0060】
なお、水晶振動板において、前記貫通部に代えてこれを薄肉部で構成してもよい。この場合、保持部と薄肉部により振動部が枠体部とつながった構成となる。
【0061】
なお、本実施の形態において、励振電極の金属膜および封止用の金属膜の例にTi、Auの多層構成を例示したが、この金属膜に限定されるものではない。例えば、Ti、NiTi、Auの多層構成でもよい。
【0062】
また各封止部材と水晶振動板との接合を拡散接合法により行ったが、例えば、AuSn合金ろう材によるろう接であってもよいし、また他のろう材、例えばSn合金ろうを用いてもよい。このろう接の場合は、金属膜構成も異なり、例えば、Cr下地層に、AgやCu膜を形成した構成、あるいはAuとの合金膜を形成した構成であってもよい。
【0063】
上述の説明において、第1封止部材、第2封止部材の材料は水晶板を用いたが、水晶板に代えてガラス材あるいはセラミック材を用いてもよい。またその形状も板状構成を例示したが、水晶振動板と対向する位置に凹部を設けてもよい。このように凹部を設けた場合は、振動部と封止部材の接触の機会を低下させることができるので、水晶振動デバイスとしての特性を安定化させることができる。
【0064】
他の実施の形態を
図7とともに説明する。
図7においては水晶振動デバイスの詳細な構成は割愛して示している。水晶振動デバイスの上面に温度センサ4が搭載された構成であるが、温度センサの構成並びに配置が異なっている。
【0065】
第1保持部材の上面には電極パッド23,24が形成されている。これら電極パッドは上記実施例と異なって、図面の向かって左側に偏って形成されている。その結果、第1保持部材の上面には電極パッドが形成されない領域が確保できる。当該領域は調整領域25として用いることができる。調整領域25は第1保持部材が透光性材料からなる場合、レーザービーム等のエネルギービームBを透過させることができる。よって、当該エネルギービームを水晶振動板に形成された金属膜に照射することでこれら金属膜を一部除去する等により、水晶振動デバイスの周波数を調整することができる。
【0066】
また、予め調整用金属膜を第1保持部材の内側に形成しておき、この調整用金属膜にエネルギービームを照射することにより、調整用金属膜を気化させ水晶振動板に形成された金属膜に付着させることにより、水晶振動デバイスの周波数を調整することができる。
【0067】
温度センサ4は、サーミスタ素子の他方の主面に電極パッド43,44が形成された構成であり、電極間ギャップG3が形成されているが、一方の主面には電極膜が形成されていない。従って、電極パッド43.44間で導電経路が形成され、サーミスタとして機能する。
【0068】
前記電極パッド43,44を前記電極パッド23,24とをハンダからなる導電接合材R1にて接合することにより、両電極パッドが導電的に面接合され、これにより熱伝導性の良好な状態で両者を接合する。なお本実施の形態においては、導電接合材間に熱伝導性の良好な絶縁樹脂材R3を充てんしている。これら構成により、温度センサ4の他方の主面は全面に渡って水晶振動デバイスと面接合された状態となっている。
【0069】
そして、第1保持部材2の上面(一方の主面)全体に渡って樹脂材R2を被覆形成している。これにより温度センサ全体も樹脂材R2に被覆された構成となる。なお前記樹脂材R2は、温度センサR2搭載領域のみに形成してもよい。この場合前記調整領域25が樹脂材に被覆されないので、温度センサ接合後にエネルギービームBによる周波数調整を行うことができるという利点を有する。
【0070】
本実施の形態によれば、温度センサが水晶振動デバイスとほぼ他方の主面全面に渡って、導電接合材(ハンダ)R1と絶縁樹脂材R3で接合ざれているので、水晶振動デバイスの温度変化を正確に温度センサ4が確実かつ正確に捕捉することができる。また樹脂材R2により、被覆することにより、熱の放散も抑制できる。これら構成により、高精度な温度検出を行うことができる温度センサ付き水晶振動デバイスを得ることができる。さらに調整領域25により、水晶振動デバイスの周波数を気密封止後あるいは温度センサ取付後に調整することができるので、電気的特性を向上させることができる。
【0071】
今回開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0072】
1 水晶振動板
11 振動部
111,112 励振電極
111a,112a 引出電極
12 枠体部
13、13t 保持部
14 貫通部
2 第1封止部材
3 第2封止部材
4 温度センサ
S11、S12、S21,S22 シール膜
S1,S2 シール部
T1,T2,T3 テーパ部
V1,V2,V3、V4,V5 金属ビア
R1 導電接合材
R2 樹脂材
R3 絶縁樹脂材